特許第6944807号(P6944807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944807
(24)【登録日】2021年9月15日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】防潮堤および防潮堤構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20210927BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20210927BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   E02B3/04
   E02D27/12 Z
   E02D29/02 302
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-80544(P2017-80544)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-178562(P2018-178562A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河NSエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関口 修史
(72)【発明者】
【氏名】松尾 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】池田 真
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲憲
(72)【発明者】
【氏名】吉原 健郎
(72)【発明者】
【氏名】乙志 和孝
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−196983(JP,A)
【文献】 特開平09−316995(JP,A)
【文献】 特開2014−159675(JP,A)
【文献】 特開2014−163064(JP,A)
【文献】 特許第3430410(JP,B2)
【文献】 特開2015−169019(JP,A)
【文献】 特開2006−233463(JP,A)
【文献】 米国特許第05125765(US,A)
【文献】 特開2005−097855(JP,A)
【文献】 特開平11−280183(JP,A)
【文献】 特開2009−102804(JP,A)
【文献】 特開2005−097946(JP,A)
【文献】 特開2010−031564(JP,A)
【文献】 特開2015−200130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04
E02D 27/12
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部と、
前記基礎部の上に固定され、互いに幅方向端面が接するように配置された複数のコンクリートブロックと、
前記コンクリートブロックの上に固定され、互いに幅方向端面が接するように配置された複数の防潮堤パネルとを備え、
前記防潮堤パネルは、
パネル本体と、
前記パネル本体の高さ方向に延びるように前記パネル本体の下部に一部が埋め込まれ、残部が前記パネル本体の下端から下方に突出した接続部材とを備え、
前記接続部材の部位のうち、前記パネル本体の下端面よりも上方の部位は、その外面が全面にわたって前記パネル本体に埋め込まれ、
前記コンクリートブロック同士が互いに接する箇所においては、前記防潮堤パネルは少なくとも2本の前記接続部材を有し、かつ、両コンクリートブロックに跨って固定されていることを特徴とする、防潮堤。
【請求項2】
前記防潮堤パネルの幅は前記コンクリートブロックの幅の1/2であり、
前記コンクリートブロックの幅を均等に4分割した際に、前記コンクリートブロックの幅の1/4の位置から3/4の位置までに配置された第1の防潮堤パネルと、
前記第1の防潮堤パネルが配置されたコンクリートブロックの幅の3/4の位置から隣接するコンクリートブロックの幅の1/4の位置までに配置された第2の防潮堤パネルとを有することを特徴とする、請求項1に記載の防潮堤。
【請求項3】
前記基礎部は地中に打ち込まれた複数の鋼管杭であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の防潮堤。
【請求項4】
前記コンクリートブロックは、ブロック本体の下部に複数の柱部材の一部が埋め込まれ、残部が前記ブロック本体の下端より下方に突出し、
前記柱部材が前記基礎部に挿し込まれ、前記基礎部の内方がコンクリート又はモルタルで充填されることで前記基礎部と前記コンクリートブロックとが固定されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防潮堤。
【請求項5】
前記コンクリートブロックは、上面に前記防潮堤パネルを接合するための複数の挿込み孔を有し、
前記接続部材が前記挿込み孔に挿入され、前記挿込み孔の内方がコンクリート又はモルタルで充填されることで前記コンクリートブロックと前記防潮堤パネルとが固定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の防潮堤。
【請求項6】
前記パネル本体の前記接続部材が埋め込まれた部分に、隣り合う接続部材を連結する連結部材が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の防潮堤。
【請求項7】
前記防潮堤パネルの下部の厚さが上部の厚さよりも厚いことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の防潮堤。
【請求項8】
前記防潮堤パネルの下部の厚さが該防潮堤パネルの下端に向かって漸増し、
前記コンクリートブロックの上部の厚さが該コンクリートブロックの上端に向かって漸減し、前記防潮堤パネルと前記コンクリートブロックの接続部で厚さが連続して変化するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の防潮堤。
【請求項9】
基礎部を設置し、
前記基礎部の上に、複数のコンクリートブロックを互いに幅方向端面が接するように配置して、前記基礎部と前記コンクリートブロックとを固定し、
前記コンクリートブロックの上に、複数の防潮堤パネルを互いに幅方向端面が接するように配置し、
前記防潮堤パネルは、
パネル本体と、
前記パネル本体の高さ方向に延びるように前記パネル本体の下部に一部が埋め込まれ、残部が前記パネル本体の下端から下方に突出した接続部材とを備え、
前記接続部材の部位のうち、前記パネル本体の下端面よりも上方の部位は、その外面が全面にわたって前記パネル本体に埋め込まれ、
前記コンクリートブロック同士が互いに接する箇所に配置される前記防潮堤パネルは少なくとも2本の前記接続部材を有し、該防潮堤パネルを両コンクリートブロックに跨るように配置して、該防潮堤パネルと前記コンクリートブロックとを固定することで防潮堤を構築することを特徴とする、防潮堤構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海岸線に沿って設置され、地震発生時の津波や台風の来襲時の高波に対する護岸や海水の陸地への浸水を抑制する防潮堤および防潮堤構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本においては大地震に伴う津波の被害を最小限に抑制することが喫緊の課題である。また、近年は地球温暖化に伴う台風の強大化が指摘されており、台風による高波被害も深刻さを増している。これら自然災害に対して海岸に沿って設置される防潮堤が、海岸の浸食や海水の内陸部への浸水を防ぐ手段として期待されている。
【0003】
従来の防潮堤として、特許文献1には杭頭部の中空部に結合鋼管下部を挿入し、モルタル類を中詰めして固定し、結合鋼管上部をフーチングコンクリート内に定着させることで構築する防潮堤が開示されている。また、特許文献2にはPHC杭の頭部に接合鋼管を固定し、フーチングに埋設された鋼材柱の柱脚部を接合鋼管内に差し込み、接合鋼管内にコンクリートを充填することで構築する防潮堤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−27197号公報
【特許文献2】特開2007−100337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
周囲を海洋に囲まれた日本の海岸線の延長距離は膨大であり、また、工事は天候にも左右されるため、防潮堤の設置や保全には大きなコストと工期が必要であり、工事の効率化が求められてきた。しかしながら、特許文献1の防潮堤は、結合鋼管の下部を杭頭部に固定する工程と、結合鋼管の上部をフーチングに定着させる工程とがそれぞれ別の工程であるため、防潮堤の構築に時間がかかり、工事期間の長期化を招いていた。また、特許文献2の防潮堤も、PHC杭の頭部に接合鋼管を固定する工程と、フーチングに埋設された鋼材柱の柱脚部を接合鋼管内に挿し込んで接合鋼管内にコンクリートを充填する工程とがあり、工事期間の長期化を招いていた。
【0006】
そのような問題を解決する防潮堤として、いわゆるプレキャストパネル方式の防潮堤がある。プレキャストパネル方式の防潮堤は、H鋼等の接続部材の一部が埋設された防潮堤パネルをあらかじめ工場などで製造し、防潮堤パネルの下端から突出する接続部材を海岸線に設置された杭に固定することで構築される。プレキャストパネル方式の防潮堤は、工事期間の短縮、保全時に不具合が生じた防潮堤パネルの交換が容易である等の優れたメリットがある。
【0007】
一方、鋼管杭や鋼管矢板等の杭の上に構造物を構築する場合、プレキャストパネル方式であっても、隣り合う杭の頭部を巻き込んだコンクリート打設処理(コーピング)を行う必要がある。コーピングは型枠の設置作業や解体作業を伴うこともあり、工事期間が長期化する問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、防潮堤基礎部への防潮堤パネルの取り付けを効率化し、工事期間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の防潮堤は、基礎部と、前記基礎部の上に固定され、互いに幅方向端面が接するように配置された複数のコンクリートブロックと、前記コンクリートブロックの上に固定され、互いに幅方向端面が接するように配置された複数の防潮堤パネルとを備え、前記防潮堤パネルは、パネル本体と、前記パネル本体の高さ方向に延びるように前記パネル本体の下部に一部が埋め込まれ、残部が前記パネル本体の下端から下方に突出した接続部材とを備え、前記接続部材の部位のうち、前記パネル本体の下端面よりも上方の部位は、その外面が全面にわたって前記パネル本体に埋め込まれ、前記コンクリートブロック同士が互いに接する箇所においては、前記防潮堤パネルは少なくとも2本の前記接続部材を有し、かつ、両コンクリートブロックに跨って固定されていることことを特徴としている。
【0010】
別の観点による本発明は、防潮堤構築方法であって、基礎部を設置し、前記基礎部の上に、複数のコンクリートブロックを互いに幅方向端面が接するように配置して、前記基礎部と前記コンクリートブロックとを固定し、前記コンクリートブロックの上に、複数の防潮堤パネルを互いに幅方向端面が接するように配置し、前記防潮堤パネルは、パネル本体と、前記パネル本体の高さ方向に延びるように前記パネル本体の下部に一部が埋め込まれ、残部が前記パネル本体の下端から下方に突出した接続部材とを備え、前記接続部材の部位のうち、前記パネル本体の下端面よりも上方の部位は、その外面が全面にわたって前記パネル本体に埋め込まれ、前記コンクリートブロック同士が互いに接する箇所に配置される前記防潮堤パネルは少なくとも2本の前記接続部材を有し、該防潮堤パネルを両コンクリートブロックに跨るように配置して、該防潮堤パネルと前記コンクリートブロックとを固定することで防潮堤を構築することことを特徴としている
【0011】
本発明によれば、コンクリートブロックに防潮堤パネルを固定する際に、隣接するコンクリートブロックに跨るように防潮堤パネルを固定するため、コーピングを実施しなくても、基礎部、コンクリートブロックおよび防潮堤パネルを連結することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防潮堤基礎部への防潮堤パネルの取り付けを効率化し、工事期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る防潮堤の概略構成を示す図である。
図2図1中のA−B−C−D断面図である。
図3図1中のE−E断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る防潮堤の概略構成を示す図である。
図5図4中のA−B−C−D断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る連結部材の概略構成を示す斜視図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る連結部材の概略構成を示す正面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る連結部材の概略構成を示す側面図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る別の形状の連結部材の概略構成を示す斜視図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る別の形状の連結部材の概略構成を示す正面図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る別の形状の連結部材の概略構成を示す側面図である。
図12】防潮堤パネルの下部形状およびコンクリートブロックの上部形状の一例を示す図である。
図13】防潮堤パネルの形状の一例を示す図である。
図14】防潮堤パネルの形状の一例を示す図である。
図15】基礎部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1図3に示すように第1の実施形態の防潮堤1は、海岸線に沿って設置された基礎部としての複数の鋼管杭2と、互いに幅方向Wの端面が接するように配置された複数のコンクリートブロック10と、互いに幅方向Wの端面が接するように配置された複数の防潮堤パネル20とを備えている。なお、本明細書における“海岸線”には海水が入り込む河川岸も含まれる。
【0016】
防潮堤パネル20は、略直方体形状のパネル本体21の下部に、コンクリートブロック10とパネル本体21を接続するための接続部材22が埋め込まれたプレキャストコンクリートである。パネル本体21の長手方向は鉛直方向に向いており、パネル本体21は内部に鉄筋および鋼材の片方または両方が設けられることで強化されたコンクリート構造を有している。図2に示すように第1の実施形態の防潮堤パネル20のパネル本体21は、下部の厚さdが上部の厚さdよりも厚くなっている。パネル本体21の厚さは均一であっても良いが、パネル本体21の下部の厚さdが上部の厚さdよりも厚くなることにより、防潮堤パネル20の下部の剛性を上げることができ、耐波抵抗力を向上させることができる。
【0017】
接続部材22は、パネル本体21の幅方向Wに沿って複数設けられており、接続部材22の一部はパネル本体21の下部に埋め込まれ、残部はパネル本体21の下端から下方に突出している。第1の実施形態では、1つの防潮堤パネル20に対して4つの接続部材22が設けられている。以降の説明においては接続部材22の、パネル本体21の下端から下方に突出している部分を“接続部材突出部22a”と称す。図3に示すように第1の実施形態では接続部材22としてH鋼が用いられ、接続部材22はフランジ面がパネル本体21の波を受ける面に平行となるような向きで配置されている。なお、接続部材22はH鋼に限定されず、柱状の部材であれば良い。
【0018】
コンクリートブロック10は、略直方体形状のブロック本体11の下部に、鋼管杭2とブロック本体11を接続するための柱部材12が埋め込まれたプレキャストコンクリートである。ブロック本体11は内部に鉄筋および鋼材の片方または両方が設けられることで強化されたコンクリート構造を有している。柱部材12は鋼管杭2の間隔に合わせて幅方向Wに複数設けられており、柱部材12の一部はブロック本体11の下部に埋め込まれ、残部はブロック本体11の下端から下方に突出している。第1の実施形態においては、1つのコンクリートブロック10に対して2つの柱部材12が埋め込まれている。以降の説明においては柱部材12の、ブロック本体11から下方に突出している部分を“柱部材突出部12a”と称す。図3に示すように第1の実施形態では柱部材12としてH鋼が用いられ、柱部材12はフランジ面がパネル本体21の波を受ける面に平行となるような向きで配置されている。なお、柱部材12はH鋼に限定されず、柱状の部材であれば良い。
【0019】
コンクリートブロック10の柱部材突出部12aは鋼管杭2の空洞部に挿入された状態にあり、柱部材突出部12aと鋼管杭2の内方との間隙はコンクリート3で充填されている。これにより鋼管杭2とコンクリートブロック10が固定されている。また、ブロック本体11の上部には、防潮堤パネル20の接続部材突出部22aが挿入されるための複数の挿込み孔13が形成されている。防潮堤パネル20の接続部材突出部22aは、それらの挿込み孔13に挿入された状態にあり、接続部材突出部22aと挿込み孔13の間隙はコンクリート3で充填されている。これによりコンクリートブロック10と防潮堤パネル20が固定されている。
【0020】
図1に示す例では、防潮堤パネル20がコンクリートブロック10の1/2の幅を有しており、次に説明する第1の防潮堤パネル20aと第2の防潮堤パネル20bとが幅方向Wに沿って交互に配置されている。第1の防潮堤パネル20aは、コンクリートブロック10の幅を均等に4分割した際にコンクリートブロック10の幅の1/4の位置から3/4の位置までに配置される防潮堤パネルである。第2の防潮堤パネル20bは、第1の防潮堤パネル20aが配置されたコンクリートブロック10の幅の3/4の位置から隣接するコンクリートブロック10の幅の1/4の位置までに配置される防潮堤パネルである。すなわち、第2の防潮堤パネル20bは2つのコンクリートブロック10のブロック本体11に跨るように配置されている。
【0021】
第1の実施形態の防潮堤1は以上のように構成されている。このような防潮堤1によれば、各防潮堤パネル20のパネル本体21が接続部材22を介してコンクリートブロック10に固定されることになるが、第2の防潮堤パネル20bは隣接するコンクリートブロック10に跨るように配置されているため、第2の防潮堤パネル20bに関してはそれぞれのコンクリートブロック10に対して固定されることになる。換言すると、隣接するコンクリートブロック10は、1つの第2の防潮堤パネル20bに対して固定されており、これにより両コンクリートブロック10の幅方向Wの位置が第2の防潮堤パネル20bで規制されることになる。したがって、従前実施されていたコーピングを実施することなく、隣り合う鋼管杭2同士、コンクリートブロック10同士および防潮堤パネル20同士が互いに連結されることになる。
【0022】
すなわち、第1の実施形態の防潮堤1を構築する際には、鋼管杭2頭部のコーピングを実施することが不要となり、コーピングを実施する際の型枠の設置作業や解体作業も省略することができる。その結果、防潮堤1の構築に必要な工事期間を短縮することが可能となる。また、防潮堤1は、防潮堤パネル20が隣接するコンクリートブロック10に跨って固定される構造であるため、津波が到達する前に発生する地震の揺れにも耐えられる強度を有している。このため、地震発生時の防潮堤の破壊に伴う耐波抵抗力の低下が起こりにくく、地震発生後に到達する津波に対し、防潮堤1が本来有する耐波抵抗力を発揮することができる。
【0023】
このような防潮堤1の構築方法は以下の通りである。
【0024】
(基礎工事)
まず、防潮堤1を設置する海岸の基礎工事として、海岸線に沿って複数の鋼管杭2を例えば等間隔で地中に打ち込む。鋼管杭2の地中への打ち込み方法は特に限定されない。
【0025】
(コンクリートブロック10の設置)
次に、コンクリートブロック10の柱部材突出部12aを鋼管杭2の空洞部に挿入して、コンクリートブロック10の幅方向端面を互いに接触させるようにコンクリートブロック10を鋼管杭2の上に置いていく。そして、コンクリートブロック10の柱部材突出部12aと鋼管杭2の内方との間隙にコンクリート3を充填し、コンクリートブロック10を鋼管杭2に対して固定する。
【0026】
(防潮堤パネル20の設置)
続いて、防潮堤パネル20の接続部材突出部22aをコンクリートブロック10のブロック本体11の上面に設けられた挿込み孔13に挿入し、防潮堤パネル20をコンクリートブロック10の上に置いていく。このとき、前述の第1の防潮堤パネル20aと第2の防潮堤パネル20bが交互に配置されるように各防潮堤パネル20を設置していく。その後、防潮堤パネル20の接続部材突出部22aとコンクリートブロック10の挿込み孔13との間隙にコンクリート3を充填し、防潮堤パネル20をコンクリートブロック10に対して固定する。これにより防潮堤1が構築される。
【0027】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の防潮堤1は、第1の実施形態の防潮堤1に対して防潮堤パネル20の構成が一部異なっており、それにより耐波抵抗力を向上させることが可能となる。
【0028】
図4図5に示すように第2の実施形態の防潮堤1は、パネル本体21の接続部材22が埋め込まれている部分に、隣り合う接続部材22同士を連結する連結部材23が設けられている。図6図8で示す例では連結部材23はH鋼であり、同様にH鋼である接続部材22に組み付けられている。また、図9図11で示す例では連結部材23は角柱状の鋼材であり、H鋼である接続部材22のウェブに幅方向Wの貫通孔24が設けられ、その内方に連結部材23が挿入されている。また、図9図11のような貫通孔24を設けずに、例えばH鋼である接続部材22のウェブ面に角柱状の連結部材23を溶接しても良い。いずれの場合も、防潮堤パネル20が有する接続部材22が互いに連結された状態となる。なお、これらの連結部材23を備える防潮堤パネル20は、パネル本体21と共に各接続部材22と連結部材23とが組み付けられた状態で、あらかじめ工場等で製造される。
【0029】
第2の実施形態の防潮堤パネル20は、隣り合う接続部材22が連結部材23により一体となっていることで、接続部材22同士の連結力が強化され、第1の実施形態の防潮堤パネル20に対して耐波抵抗力を向上させることができる。なお、連結部材23の形状や接続部材22に対する固定方法等は、隣り合う接続部材22を連結することが可能であれば特に限定されない。
【0030】
以上、本発明に係る第1〜第2の実施形態について説明したが、防潮堤1の構成は上記実施形態で説明したものに限定されない。例えば上記実施形態では、鋼管杭2の空洞部とコンクリートブロック10の柱部材突出部12aの間隙や、コンクリートブロック10の挿込み孔13と防潮堤パネル20の接続部材突出部22aとの間隙にコンクリート3を充填することとしたが、コンクリート3に代えてモルタルを使用しても良い。
【0031】
また、上記実施形態ではコンクリートブロック10のブロック本体11の形状を直方体形状としたが、図12のようにパネル本体21の下部の厚さがパネル本体21の下端に向かって漸増し、ブロック本体11の上部の厚さがブロック本体11の上端に向かって漸減するように防潮堤パネル20とコンクリートブロック10を構成し、両者の接続部の厚さが連続的に変化するようにしても良い。これにより防潮堤1の剛性が上がり、耐波抵抗力を更に向上させることができる。また、例えば図2のように防潮堤パネル20とコンクリートブロック10の接続部の厚さが連続的に変化しておらず段差状になっている場合には、防潮堤1で波を受けた際にその段差部が選択的に破壊される可能性もあるが、図12のように防潮堤パネル20とコンクリートブロック10の接続部の厚さが連続的に変化する場合には、そのような段差部が存在せず、波を受けた際に防潮堤1が破壊されにくくなる。
【0032】
また、上記実施形態のように防潮堤パネル20がコンクリートブロック10の1/2の幅を有している場合、例えば図13のように第1の防潮堤パネル20aを、コンクリートブロック10の幅を均等に6分割した際のコンクリートブロック10の幅の1/6の位置から4/6の位置までに配置し、第2の防潮堤パネル20bを、第1の防潮堤パネル20aが配置されたコンクリートブロック10の幅の4/6の位置から隣接するコンクリートブロック10の幅の1/6の位置までに配置するようにしても良い。このような配置の場合であっても、各防潮堤パネル20a、20bと各コンクリートブロック10を固定する際には、第2の防潮堤パネル20bが2つのコンクリートブロック10に跨って固定される。このため、上記実施形態と同様にコーピングを省略し、工事期間を短縮することができる。すなわち、コーピングを省略し、工事期間を短縮するという効果を得るためには、コンクリートブロック10が互いに接する箇所において、防潮堤パネル20の一部の接続部材22で、ある1つのコンクリートブロック10との固定がなされ、残りの接続部材22で、当該コンクリートブロック10に隣接するコンクリートブロック10との固定がなされることが重要である。
【0033】
また、上記実施形態では、防潮堤パネル20の幅をコンクリートブロック10の幅の1/2にすることとしたが、例えば図14のように防潮堤パネル20の幅を更に短くしても良い。また、各防潮堤パネル20の幅は全て同一でなくても良い。また、防潮堤パネル20の接続部材22や、コンクリートブロック10の柱部材12の本数も特に限定されない。いずれの場合であっても、コンクリートブロック10同士が互いに接する箇所において防潮堤パネル20が両コンクリートブロック10に跨るように固定されていれば、コーピングが不要となり、工事期間を短縮することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、防潮堤1の基礎部として鋼管杭2を用いることとしたが、基礎部の構成は特に限定されず、図15のような鋼管矢板2aで基礎部を構成しても良い。また、基礎部とコンクリートブロック10の固定方法は特に限定されず、基礎部の上部にコンクリートブロック10を固定することができれば他の固定方法であっても良い。同様に、コンクリートブロック10と防潮堤パネル20の固定方法についても特に限定されず、コンクリートブロック10の上部において、隣接するコンクリートブロック10に跨るように防潮堤パネル20を固定することができれば他の固定方法であっても良い
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、海岸線に沿って設置される防潮堤として有用である。また、擁壁として機能させることも可能であるため、擁壁兼防潮堤として利用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 防潮堤
2 鋼管杭
2a 鋼管矢板
3 コンクリート
10 コンクリートブロック
11 ブロック本体
12 柱部材
12a 柱部材突出部
13 挿込み孔
20 防潮堤パネル
20a 第1の防潮堤パネル
20b 第2の防潮堤パネル
21 パネル本体
22 接続部材
22a 接続部材突出部
23 連結部材
24 貫通孔
W 幅方向
図1
図2
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