特許第6944891号(P6944891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944891
(24)【登録日】2021年9月15日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】3次元空間の位置の特定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   G01B11/00 H
   G01B11/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-24687(P2018-24687)
(22)【出願日】2018年2月15日
(65)【公開番号】特開2019-138859(P2019-138859A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕太
【審査官】 松下 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−047503(JP,A)
【文献】 特開2017−033063(JP,A)
【文献】 特開2010−286355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面に照射光を照射する光源と、
前記対象物の様子を撮像して画像データを得る撮像部と、
前記画像データに基づいて演算する情報処理部と、
を用いた3次元空間の位置の特定方法であって、
前記光源から前記対象物の表面に向けて前記照射光を照射して、前記表面に前記照射光が照射された様子を前記撮像部で撮像して第1画像データを得る第1撮像工程と、
前記第1画像データにおける前記照射光の位置に基づいて前記対象物の表面の3次元空間の位置を前記情報処理部で演算して特定する表面特定工程と、
前記対象物の表面に設けられた所定の特徴部を前記撮像部で撮像して第2画像データを得る第2撮像工程と、
前記第2画像データの前記所定の特徴部の外周からエッジを前記情報処理部で抽出するエッジ抽出工程と、
前記表面特定工程で特定した前記対象物の表面の3次元空間の位置における前記エッジの位置を前記情報処理部で演算して特定する位置特定工程と、
を備え
前記表面特定工程は、前記第1画像データにおける前記所定の特徴部の周囲から離れた位置であって、前記所定の特徴部の外周縁から離れる方向に所定の寸法まで広がる領域内の前記照射光を用いることを特徴とする3次元空間の位置の特定方法。
【請求項2】
対象物の表面に照射光を照射する光源と、
前記対象物の様子を撮像して画像データを得る撮像部と、
前記画像データに基づいて演算する情報処理部と、
を用いた3次元空間の位置の特定方法であって、
前記光源から前記対象物の表面に向けて前記照射光を照射して、前記表面に前記照射光が照射された様子を前記撮像部で撮像して第1画像データを得る第1撮像工程と、
前記第1画像データにおける前記照射光の位置に基づいて前記対象物の表面の3次元空間の位置を前記情報処理部で演算して特定する表面特定工程と、
前記対象物の表面に設けられた所定の特徴部を前記撮像部で撮像して第2画像データを得る第2撮像工程と、
前記第2画像データの前記所定の特徴部の外周からエッジを前記情報処理部で抽出するエッジ抽出工程と、
前記表面特定工程で特定した前記対象物の表面の3次元空間の位置における前記エッジの位置を前記情報処理部で演算して特定する位置特定工程と、
前記位置特定工程において位置が特定された前記エッジに基づいて、前記所定の特徴部の特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、
を備えることを特徴とする3次元空間の位置の特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3次元空間の位置の特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の表面に設けられる特徴部の三次元空間位置を確認する方法として光切断法が知られている。特許文献1には、孔を特徴部として光切断法を用いて、孔の外周とレーザ光との交点を抽出する抽出工程を経て、孔の三次元空間の位置を得る方法が開示されている。そして、この抽出工程でさらに正確に孔の外周を抽出するために、孔に照明を当てて孔、及び孔の周囲をカメラ撮影し、その画像から孔のエッジを抽出する技術が知られている。このエッジとレーザ光との交点を抽出することでより正確にエッジとレーザ光との交点の3次元座標点を求めることができ、この交点に基づいて算出することで、より正確に孔の3次元空間の位置を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−47503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、孔を形成する際にパンチ加工等によって孔の外周の形状がダレた場合、孔に照明を当ててカメラ撮影すると、ダレの向きや角度によって、照明の光がダレを介して直接カメラに反射して、孔の一部が正確にカメラ撮影できないおそれがある。この場合、カメラ撮影した画像から孔のエッジを抽出する際に、孔の一部について正確にエッジを抽出できないおそれがある。
また、切削加工で孔を加工すると孔の周辺にバリが生じ得る。バリが生じた状態で孔、及び孔の周囲をカメラ撮影すると、カメラ撮影した画像からエッジを抽出する際に、バリが孔の一部であると誤認識して孔のエッジが抽出されるおそれがあり、孔の一部について正確にエッジが抽出できないおそれがある。そして、エッジが正確に抽出できていない部分とレーザ光との交点を抽出した場合、交点に基づいて算出された孔の三次元位置が正確に得られなくなる。この点を改善するには、孔とレーザ光との交点をなるべく多く抽出することが考えられるが、多くの交点を抽出するためにはスリット状のレーザ光を照射する位置を変更し、その度に画像を取り込んで演算する必要があるため、処理時間が大幅に増加することになる。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、処理時間の大幅な増加なしに対象物の表面に設けられた特徴部の3次元空間の位置を正確に特定する3次元空間の位置の特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の3次元空間の位置の特定方法は、光源、撮像部、及び情報処理部を用いて実行される。光源は対象物の表面に照射光を照射する。撮像部は対象物の様子を撮像して画像データを得る。情報処理部は画像データに基づいて演算する。
また、本発明の3次元空間の位置の特定方法は、第1撮像工程、表面特定工程、第2撮像工程、エッジ抽出工程、及び位置特定工程を備えている。
第1撮像工程は、光源から対象物の表面に向けて照射光を照射して、表面に照射光が照射された様子を撮像部で撮像して第1画像データを得る。
表面特定工程は、第1画像データにおける照射光の位置に基づいて対象物の表面の3次元空間の位置を情報処理部で演算して特定する。
第2撮像工程は、対象物の表面に設けられた所定の特徴部を撮像部で撮像して第2画像データを得る。
エッジ抽出工程は、第2画像データの所定の特徴部の外周からエッジを情報処理部で抽出する。
位置特定工程は、表面特定工程で特定した対象物の表面の3次元空間の位置におけるエッジの位置を情報処理部で演算して特定する。
表面特定工程は、第1画像データにおける所定の特徴部の周囲から離れた位置であって、所定の特徴部の外周縁から離れる方向に所定の寸法まで広がる領域内の前記照射光を用いる。
【0007】
この3次元空間の位置の特定方法は、表面特定工程において、第1画像データに基づいて対象物の表面の3次元面を特定した後、位置特定工程において、第2画像データに基づいて表面特定工程で特定した対象物の表面の3次元面の位置における、特徴部から抽出したエッジの位置を求めることができる。つまり、この3次元空間の位置の特定方法は、予め所定の特徴部が設けられた対象物の表面の3次元面を先に演算して特定する。そして、所定の特徴部におけるエッジが、3次元面の位置のいずれかに位置するかを特定する。つまり、この3次元空間の位置の特定方法は、対象物の表面に設けられた所定の特徴部のエッジと照射光との交点を複数取得するための複数の画像データを得る手間が掛からない。また、所定の特徴部の外縁部が加工等によって変形していても、この変形の影響を受けることなく正確に対象物の表面の3次元空間の位置を特定することができる。
【0008】
したがって、本発明の3次元空間の位置の特定方法は、処理時間の大幅な増加なしに対象物の表面に設けられた特徴部の3次元空間の位置を正確に特定することができる。
【0010】
第2発明の3次元空間の位置の特定方法は、光源、撮像部、及び情報処理部を用いて実行される。光源は対象物の表面に照射光を照射する。撮像部は対象物の様子を撮像して画像データを得る。情報処理部は画像データに基づいて演算する。
また、本発明の3次元空間の位置の特定方法は、第1撮像工程、表面特定工程、第2撮像工程、エッジ抽出工程、位置特定工程、及び特徴量抽出工程を備えている。
第1撮像工程は、光源から対象物の表面に向けて照射光を照射して、表面に照射光が照射された様子を撮像部で撮像して第1画像データを得る。
表面特定工程は、第1画像データにおける照射光の位置に基づいて対象物の表面の3次元空間の位置を情報処理部で演算して特定する。
第2撮像工程は、対象物の表面に設けられた所定の特徴部を撮像部で撮像して第2画像データを得る。
エッジ抽出工程は、第2画像データの所定の特徴部の外周からエッジを情報処理部で抽出する。
位置特定工程は、表面特定工程で特定した対象物の表面の3次元空間の位置におけるエッジの位置を情報処理部で演算して特定する。
特徴量抽出工程は、位置特定工程において位置が特定されたエッジに基づいて、所定の特徴部の特徴量を抽出する。
この3次元空間の位置の特定方法は、表面特定工程において、第1画像データに基づいて対象物の表面の3次元面を特定した後、位置特定工程において、第2画像データに基づいて表面特定工程で特定した対象物の表面の3次元面の位置における、特徴部から抽出したエッジの位置を求めることができる。つまり、この3次元空間の位置の特定方法は、予め所定の特徴部が設けられた対象物の表面の3次元面を先に演算して特定する。そして、所定の特徴部におけるエッジが、3次元面の位置のいずれかに位置するかを特定する。つまり、この3次元空間の位置の特定方法は、対象物の表面に設けられた所定の特徴部のエッジと照射光との交点を複数取得するための複数の画像データを得る手間が掛からない。また、例えば所定の特徴部の外形が円形である場合、特徴量として直径や、中心の座標を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の3次元空間の位置の特定方法を実施する装置を示す概略的に示す回路図である。
図2】本発明の3次元空間の位置の特定方法を実施する装置を示す概略図である。
図3】(A)は対象物の表面に設けられた所定の特徴部にスリット光が照射された様子を撮像した第1画像データであり、(B)は対象物の表面に設けられた所定の特徴部にスリット光を照射する位置を(A)の第1画像データに対して変更し、撮像した第1画像データであり、(C)は対象物の表面に設けられた所定の特徴部を撮像した第2画像データである。
図4】対象物の表面の領域にのみスリット光が照射された様子を撮像した第1画像データである。
図5】本発明の3次元空間の位置の特定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の3次元空間の位置の特定方法を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<実施形態>
先ず、本発明の3次元空間の位置の特定方法を実行する装置1について、図1、2を参照しつつ説明する。装置1は公知の光切断法を実行することができる。装置1は、図1に示すように、光源L、撮像部であるカメラC、及び情報処理部12を備えている。また、光源Lは、情報処理部12によって動作が制御されるサーボモータMによって所定の一方向に移動自在に構成されている。装置1では、対象物であるワークWの表面に設けられた特徴部のワークWの表面における位置を特定することができる。ここで、ワークWの表面に形成された所定の特徴部とは、例えば、孔、突起、溝、リブ、及び塗装や印刷による文字や模様の形状等である。本実施形態ではワークWの表面に形成された所定の特徴部として孔Sを例示して説明する。また、3次元面を特定する方法として、公知の「光レーダ法」等の他の方法も挙げられるが、本実施形態において光切断法を例示して説明する。
【0014】
光源Lは、図2に示すように、例えば、照射口L1から面状に拡がるレーザL2をワークW等に照射する構成となっている。つまり、光源Lで発生した面状に拡がるレーザL2はワークWに照射されると照射光であるスリット状の光L3(以降、スリット光L3という)になる。つまり、光源LはワークWの表面にスリット光L3を照射する。また、光源Lは、情報処理部12によって動作が制御されるサーボモータMによって、所定の方向L4に往復移動自在に構成されている。所定の方向L4は、例えば、ワークWの表面に照射されたスリット光L3が、スリット光L3が伸びる方向に対して直角方向に移動する方向である。これによって、ワークWの表面に照射されたスリット光L3のワークWの表面に対する位置を変更することができる。
【0015】
カメラCは、例えば、CCD等で構成された撮像素子C1、及びレンズC2等を有している。カメラCはワークW等の様子を、レンズC2を介して撮像素子C1の表面に結像し、この結像を撮像素子C1によって撮像して画像データを得ることができる。つまり、カメラCはワークWの様子を撮像して画像データを得る。
【0016】
ここで、光源L、カメラC、撮像素子C1、及びレンズC2の位置関係について説明する。光源Lは所定の方向L4に往復移動自在である。このため、光源LとカメラCのレンズC2との間の寸法Dは光源Lの往復移動に伴い変化する。ここで寸法Dは、カメラCのレンズC2の中心Ccと光源Lの照射口L1の中心との間の寸法である。また、レンズC2の中心Ccと光源Lの照射口L1の中心とを通る架空の直線Aと、レーザL2を照射する方向とが成す角度は、予め所定の角度θLに調整されている。光源Lが移動する所定の方向L4は架空の直線Aが伸びる方向と同じである。
また、レンズC2の中心Ccと撮像素子C1との間の寸法Fも予め所定の大きさに調整されている。具体的には、撮像素子C1のレンズC2に対向する側の面(以降、撮像素子C1の表面という)に対して直角で撮像素子C1の中心を通る撮像素子C1の軸線とレンズC2の中心軸とが互いに架空の直線Bに位置している。寸法Fは架空の直線Bにおける、レンズC2の中心Ccと撮像素子C1の表面の中心との間の寸法である。また、架空の直線Bと架空の直線Aとが成す角度は予め所定の角度θcに調整されている。
【0017】
情報処理部12は本発明の3次元空間の位置の特定方法を実行することができる。具体的には、情報処理部12はROM(リードオンリメモリ)、CPU(中央演算処理装置)、及びRAM(ランダムアクセスメモリ)等を有している(図示せず。)。ROMはCPUで実行される制御プログラム等を予め記憶する。CPUはROMに格納されたプログラム等を実行する。RAMはCPUによって実行されたプログラムにしたがって動作する。情報処理部12はカメラCの撮像素子C1で撮像された画像データに基づいてワークWの表面の3次元空間の位置や、ワークWの表面の3次元空間の位置における所定の特徴部の位置を演算して特定することができる。つまり、情報処理部12は画像データに基づいて演算する。
【0018】
次に、この装置1を用いてワークWの表面の3次元面における所定の特徴部の位置を特定する3次元空間の位置の特定方法について図2〜5を参照しつつ説明する。
【0019】
先ず、表面に孔Sが形成されたワークWを装置1の所定の位置に配置する。
具体的には、ワークWの表面に形成された孔S(以降、孔Sという)、及びこの孔Sの周囲にスリット光L3が照射される向きで、且つカメラCのレンズC2に孔Sを対向させてワークWを装置1の所定の位置に配置する。つまり、孔S、及びこの孔Sの周囲にスリット光L3が照射された状態がカメラCで撮像できる向きにしてワークWを装置1の所定の位置に配置する。
【0020】
次に、光源LからワークWの表面に設けられた孔Sに向けてスリット光L3を照射して、孔Sにスリット光L3が照射された様子をカメラCで撮像して第1画像データを得る第1撮像工程を実行する(ステップS1)。
具体的には、ステップS1では、光源LからワークWの表面にスリット光L3を照射する。このとき、図3(A)、(B)に示すように、ワークWの表面に照射されたスリット光L3は、孔S、及びこの孔Sの周囲に照射される。そして、カメラCの撮像素子C1でスリット光L3が照射された状態の孔S、及びこの孔Sの周囲を撮像して第1画像データである画像データ10Aを得る。そして、光源Lを所定の方向L4に移動させて寸法Dを変更する(図2参照。)。そして、再び光源LからワークWの表面にスリット光L3を照射して、カメラCの撮像素子C1で孔S、及びこの孔Sの周囲を撮像して第1画像データである画像データ10Bを得る。画像データ10A,10Bにはスリット光L3の形状に対応した像N(以降、像Nという)、及び孔Sの形状に対応した像T(以降、像Tという)が含まれている。
【0021】
次に、画像データ10A,10Bにおける像Nの位置に基づいてワークWの表面の3次元面の位置を情報処理部12で演算して特定する表面特定工程を実行する(ステップS2)。
具体的には、ステップS2では、図3(A)、(B)に示すように、情報処理部12によって、画像データ10A又は10Bにおける像Tの領域R1を把握する。そして、像Tの周囲であり、且つ内径が像Tの外周より僅かに大きい円環状の領域R2を決定する。領域R2は像Tの外形形状に基づいており、像Tを囲み、像Tの周囲から所定の距離を設けている。また、領域R2の外周縁は像Tの外周縁から離れる方向に所定の寸法まで広がった領域内に位置するように決定される。所定の寸法はワークWの表面における実際の大きさにおいておよそ30mmである。
【0022】
次に、像Nの中心線E1,E2を求める。具体的には、画像データ10A又は10Bの像Nの幅方向における中心位置を求める。中心位置を求める方法として、例えば、像Nの幅方向の中心を中心位置とする方法や、像Nの幅方向において最も明るい位置を中心位置とする方法等がある。こうして得られた像Nの中心線E1,E2は1列に並んだ複数の点Pの集合である。これら点Pのそれぞれは画像データ10A又は10Bにおける1ピクセルに対応している。また、1ピクセルの大きさはワークWの表面おける実際の大きさにおいて、およそ0.1mm〜0.2mmに対応している。
【0023】
次に、領域R2内に位置する中心線E1,E2の点Pを把握する。具体的には、図3(A)、(B)に示すように、中心線E1,E2を構成する複数の点Pの内、領域R2内に位置する任意の点Pxを把握する。ここで、xは任意の正の整数であり、点Pxが領域R2内に位置する点Pの内の任意の1点であることを示す。つまり、表面特定工程は画像データ10A,10Bにおける孔Sの周囲から所定の距離離れた位置のスリット光L3の形状に対応した像Nを用いる。
【0024】
次に、点Pxのそれぞれの3次元空間の位置の座標を求める。ここで、3次元空間の位置を表す座標系の基準(原点)はカメラCのレンズC2の中心Ccである。つまり、この座標系におけるカメラCのレンズC2の中心Ccの座標は(0,0,0)である。
【0025】
ここで、領域R2内に位置する任意の点Pxの3次元空間の位置の座標を求める方法について図2、3を参照しつつ説明する。先ず、レンズC2の中心Ccに対する点Pxの位置を把握する。点Pxは撮像素子C1の表面のいずれかに位置している。具体的には、点Pxは撮像素子C1の表面の中心から撮像素子C1の表面に沿う方向であるU方向、及びV方向にそれぞれpu,pv離れた場所に位置している。つまり、撮像素子C1の表面の中心が撮像素子C1の表面の座標系の基準(原点)であり、この座標系における点Pxの座標は(pu,pv)である。
また、レンズC2の中心Ccと撮像素子C1の表面の中心との間の寸法はFである。つまり、レンズC2の中心Ccに対する点Pxの位置、すなわち、点Pxの3次元空間の位置の座標は(pu,pv,F)である。
ここで、レンズC2の中心Ccと光源Lの照射口L1の中心との間の寸法はDである。また、レンズC2の中心Ccと光源Lの照射口L1とを通る架空の直線Aと、光源Lからスリット光L3を照射する方向とが成す角度はθLである。また、撮像素子C1の中心線とレンズC2の中心軸とが互いに位置する架空の直線Bと、架空の直線Aとが成す角度は予め所定の角度θcである。こうして得られた点Pxの座標(pu,pv,F)、寸法D、角度θL、及び角度θcを用いて公知の3角測量法を実行することによって、点Pxの3次元空間の位置の座標Kx(Kxx,Kxy,Kxz)を求めることができる。
こうして、領域R2内に位置する任意の点Pxのそれぞれについて上記の方法を実行して、各点Pxのそれぞれの3次元空間の位置の座標Kxを求めることができる。
【0026】
次に、座標KxからワークWの表面を近似する関数Gpを求める。ここで、孔Sが設けられたワークWの表面は平面である場合について説明する。平面は互いに1つの直線上に位置しない任意の3点で特定できる。このため、座標Kxの内の互いに1つの直線上に位置しない任意の少なくとも3つの座標を選ぶ。
具体的には、図3(A)、(B)に示すように、領域R2内に位置する任意の点Pxから、3つの点P1、P2、P3のそれぞれに対応する座標K1(K1x,K1y,K1z)、K2(K2x,K2y,K2z)、K3(K3x,K3y,K3z)を選ぶ。なお、3つの点P1、P2、P3は、互いの間の距離がより離れているほうが、ワークWの表面をより正確に近似する関数Gpを求めることができる。このため、3つの座標K1、K2、K3は、領域R2と像Nの中心線E1,E2とが交差する部分において、孔Sの一方側、及び他方側から1つずつ選ぶことが好ましい。こうして選んだ座標Kxの内の任意の3つの座標K1、K2、K3を用いて孔Sが形成されたワークWの表面を近似する平面の関数Gpを求めることができる。また、図4に示すように、スリット光L3が領域R2にのみ照射されている場合でも平面の関数Gpを求めることができる。そして、このとき、領域R2内に位置する任意の点Pxから3つの点P1、P2、P3を選ぶ場合、互いの点の間の距離がより離れているほうが、ワークWの表面をより正確に近似する関数Gpを求めることができる。
また、座標Kxの内の任意の他の少なくとも3つの座標(すなわち、K1、K2、K3でない任意の少なくとも3つの座標)を改めて選び、ワークWの表面を近似する関数Gpを求める工程を所定の回数繰り返す。そして、関数Gpが同じ、又は近い値の結果が出現する度合いを判別することによって、より正確にワークWの表面を近似する関数Gpを求めることができる。
【0027】
次に、孔SをカメラCで撮像して第2画像データを得る第2撮像工程を実行する(ステップS3)。
具体的には、ステップS3では、カメラCの撮像素子C1でスリット光L3が照射されていない状態の孔S、及びこの孔Sの周囲を撮像して第2画像データである画像データ10Cを得る(図3(C)参照。)。画像データ10Cには孔Sの形状に対応した像Tが含まれている。
そして、公知の方法を用いて像Tのエッジ(すなわち、所定の特徴部の外周である孔Sから抽出したエッジ)であるエッジTe(縁)を情報処理部12で抽出するエッジ抽出工程を実行する(ステップS4)。エッジTeは像Tの周縁に沿って並んだ複数の点Qの集合である。エッジTeである複数の点Qのそれぞれは画像データ10Cにおける1ピクセルに対応している。1ピクセルの大きさはワークWの表面おける実際の大きさにおいて、およそ0.1mm〜0.2mmに対応している。
【0028】
次に、表面特定工程で特定したワークWの表面の3次面の位置における画像データ10Cの像TのエッジTeの位置を情報処理部12で演算して特定する位置特定工程を実行する(ステップS5)。
具体的には、ステップS5では、複数の点Qのそれぞれの3次元空間の位置の座標を求める。この座標系の基準(原点)はカメラCのレンズC2の中心Ccである。この座標系におけるカメラCのレンズC2の中心Ccの座標は(0,0,0)である。
ここで、画像データ10CのエッジTeである複数の点Qの内の任意の点Qxの3次元空間の位置の座標を求める方法について図2、3を参照しつつ説明する。先ず、レンズC2の中心Ccに対する点Qxの位置を把握する。点Qxは撮像素子C1の表面のいずれかに位置している。具体的には、点Qxは撮像素子C1の表面の中心から撮像素子C1の表面に沿う方向であるU方向、及びV方向にそれぞれqu,qv離れた場所に位置している。つまり、撮像素子C1の表面の中心が撮像素子C1の表面の座標系の基準(原点)であり、撮像素子C1の表面の座標系における点Qxの座標は(qu,qv)である。
また、レンズC2の中心Ccと撮像素子C1の表面の中心との間の寸法はFである。つまり、レンズC2の中心Ccに対する点Qxの位置、すなわち、点Qxの3次元空間の位置の座標は(qu,qv,F)である。
次に、点Qx及びレンズC2の中心Ccを通る直線を表す関数Gsを求める。具体的には、直線の関数Gsは任意の2点を用いて求めることができる。つまり、点Qxの座標(qu,qv,F)、及びレンズC2の中心Ccの座標(0,0,0)を用いることによって点QxとレンズC2の中心Ccを通る直線を表す関数Gsを求めることができる。
そして、直線を表す関数Gsと、ワークWの表面を近似する関数Gpとが交差する点である座標Ex(Exx,Exy,Exz)を求める。
こうして、エッジTeを構成するQxのそれぞれについて上記の方法を実行して、各点Qxのそれぞれの3次元空間の位置の座標Exを求めることができる。
【0029】
次に、孔Sの特徴量を計算して抽出する特徴量抽出工程を実行する(ステップS6)。ここで、特徴量とは特徴部の特徴を示す代表的な数値をいう。本実施例のように特徴部が円形の孔である場合、代表的な数値はこの孔の中心の座標や直径等である。本実施例では、座標Exの内の任意の少なくとも3つの座標を用いて、孔Sの直径や、孔Sの中心の座標等を求める。つまり、特徴量は位置特定工程において位置が特定されたエッジTeに基づいて抽出される。
また、座標Exの内の任意の他の少なくとも3つの座標を改めて選び、孔Sの直径や、孔Sの中心の座標等を求める工程を所定の回数繰り返す。所定の回数は任意に設定される。そして、孔Sの直径や、孔Sの中心の座標等が同じ、又は近い値の結果が出現する度合いを判別することによって、より正確に孔Sの直径や、孔Sの中心の座標等を求めることができる。
【0030】
このように、この3次元空間の位置の特定方法は、表面特定工程において、画像データ10A又は10Bに基づいてワークWの表面の3次元面を特定した後、位置特定工程において、画像データ10Cに基づいて表面特定工程で特定したワークWの表面の3次元面の位置における、像TのエッジTeの位置を求めることができる。つまり、この3次元空間の位置の特定方法は、予め孔Sが設けられたワークWの表面の3次元面を先に演算して特定する。そして、孔Sに対応した像TにおけるエッジTeが、特定したワークWの表面の3次元面の位置のいずれかに位置するかを特定する。つまり、この3次元空間の位置の特定方法は、ワークWの表面に設けられた孔Sに対応した像TにおけるエッジTeを構成する点Q毎に、画像データを得て演算する手間が掛からない。
【0031】
したがって、本発明の3次元空間の位置の特定方法は、処理時間の大幅な増加なしにワークWの表面に設けられた孔SのワークWの表面における位置を正確に特定することができる。
【0032】
また、この表面特定工程は、画像データ10A又は10Bにおける像Tの周囲から所定の距離離れた位置の像Nを用いる。このため、この3次元空間の位置の特定方法は、孔Sの外縁部が加工等によって変形していても、この変形の影響を受けることなく正確にワークWの表面の3次元空間の位置を特定することができる。
【0033】
また、この3次元空間の位置の特定方法は、位置特定工程において位置が特定されたエッジTeに基づいて、像Tの特徴量を抽出する特徴量抽出工程とを備えている。これにより、外形が円形である像Tの特徴量である直径や、中心の座標を求めることができる。
【0034】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態では、光源がレーザを発生するが、電球やLED等を用いてスリット光を照射しても良い。この場合、スリットが設けられた板を介することによってワークの表面にスリット光が照射される。
(2)実施形態では、光源を所定の方向に移動させて、ワークにスリット光が照射される位置を変更して、複数の画像データを撮像しているが、ワークの表面に対して照射される位置が異なる複数のスリット光を同時にワークの表面に照射しても良い。
(3)実施形態では、スリット光が照射されていない状態のワークの孔、及びこの孔の周囲を撮像した画像データを用いてエッジを抽出しているが、スリット光が照射されている状態のワークの孔、及びこの孔の周囲を撮像した画像データを用いてエッジを抽出しても良い。
(4)実施形態では、ワークの表面が平面であるが、関数で近似できれば良く、曲面等の他の面であっても良い。
(5)実施形態では、撮像素子がCCDで構成されているが、CMOS等の他のデバイスで撮像素子を構成しても良い。
(6)実施形態では、第1画像データを2つ撮像しているが、3つ以上であってもよい。
(7)実施形態では、3次元面の特定に光切断法を用いているが、「光レーダ法」「アクティブスレテオ法」「モアレ法」「干渉法」「ステレオ法」等の公知の方法を用いてもよい。
(8)実施形態の第1撮像工程では、スリット光が孔に重なった状態で照射されているが、スリット光が孔に重なっていない状態で照射されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
C…カメラ(撮像部)、L…光源、S…孔(所定の特徴部)、Te…エッジ、W…ワーク(対象物)、10A,10B…画像データ(第1画像データ)、10C…画像データ(第2画像データ)、12…情報処理部
図1
図2
図3
図4
図5