特許第6944982号(P6944982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6944982赤外線バンドパスフィルター構造及び該構造を応用する赤外線バンドパスフィルター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944982
(24)【登録日】2021年9月15日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】赤外線バンドパスフィルター構造及び該構造を応用する赤外線バンドパスフィルター
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20210927BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20210927BHJP
【FI】
   G02B5/28
   G02B1/115
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-181536(P2019-181536)
(22)【出願日】2019年10月1日
(65)【公開番号】特開2021-56455(P2021-56455A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2019年10月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519355563
【氏名又は名称】晶瑞光電股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄒 政興
(72)【発明者】
【氏名】鄭▲うぇはお▼
(72)【発明者】
【氏名】倪 培元
【審査官】 酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0014838(US,A1)
【文献】 特開2018−120192(JP,A)
【文献】 特開2003−177237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 1/115
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水素化シアル(SiAl:H)層及び複数の低屈折率層を交互に積み重ねて形成し、 該複数の低屈折率層は酸化物又は窒化物であり、800nmから1600nmまでの波長範囲内において一つのパスバンド(passband)を具有し、該パスバンドは一つの中心波長を具有し、且つ該中心波長の光の入射角度が0°から30°に変わるとき、中心波長がシフト(shifts)する幅は11nmより小さいことを特徴とする赤外線バンドパスフィルター構造。
【請求項2】
前記赤外線バンドパスフィルター構造の厚みは3000〜5500nmとすることを特徴とする請求項1記載の赤外線バンドパスフィルター構造。
【請求項3】
可視光の範囲の少なくとも一部において、反射された可視光の色座標はRx Coordinate 0.2〜0.5、Ry Coordinate 0.2〜0.5の位置にあり、可視光反射率は20%より低いことを特徴とする請求項1記載の赤外線バンドパスフィルター構造。
【請求項4】
前記複数の低屈折率層は、二酸化シアル(SiAl:O)、窒化シアル(SiAl:N)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化チタン(TiO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)及びその混合物の中の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の赤外線バンドパスフィルター構造。
【請求項5】
基板、赤外線バンドパスフィルター構造、抗反射(AR)層を含み、該基板は一つの第一側面及び該第一側面の反対側に位置する一つの第二側面を同時に具有し、該基板の第一側面に形成し、複数の水素化シアル(SiAl:H)層及び複数の低屈折率層を交互に積み重ねて形成し、該複数の低屈折率層は酸化物又は窒化物であり、該赤外線バンドパスフィルター構造は、800nmから1600nmの波長範囲内において一つのパスバンド(passband)を具有し、該パスバンドには一つの中心波長を具有し、且つ該中心波長の光の入射角度が0°から30°に変わるとき、中心波長がシフト(shifts)する幅が11nmより小さく、及び、
該抗反射(AR)層は、該基板の第二側面に形成することを特徴とする赤外線バンドパスフィルター。
【請求項6】
前記赤外線バンドパスフィルター構造の厚みは3000〜5500nmであることを特徴とする請求項5記載の赤外線バンドパスフィルター。
【請求項7】
前記赤外線バンドパスフィルター構造は、可視光の範囲の少なくとも一部において、反射された可視光の色座標はRx Coordinate 0.2〜0.5、Ry Coordinate 0.2〜0.5の位置にあり、可視光反射率は20%より低いことを特徴とする請求項5記載の赤外線バンドパスフィルター。
【請求項8】
前記複数の低屈折率層は、二酸化シアル(SiAl:O)、窒化シアル(SiAl:N)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化チタン(TiO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)及びその混合物の中の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5記載の赤外線バンドパスフィルター。
【請求項9】
前記抗反射層は、複数個の高い屈折率の材料である水素化シアル(SiAl:H)と複数個の低屈折率の材料を積み重ねて形成し、該低屈折率の材料は二酸化シアル(SiAl:O)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化チタン(TiO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)及びその混合物の中の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5記載の赤外線バンドパスフィルター。
【請求項10】
前記抗反射層の厚みは、3000nm〜6000nmであることを特徴とする請求項5記載の赤外線バンドパスフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種の赤外線バンドパスフィルター構造及びフィルター構造の技術分野に係り、特にスパッタリング効率を上げ、大幅に生産コストを下げることができ、及び膜層の曲がり具合を減らすことで、後続の切断工程で角が欠けやすい問題を解決できる赤外線バンドパスフィルター構造及び該構造を応用する赤外線バンドパスフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
通常スペクトル特性に基づきバンドパスフィルター、短波カットフィルター、長波カットフィルターに分けられる。バンドパスフィルターとは、特定の波形の光の通過を指し、パスバンド以外の光カットは、帯域幅に基づきナローバンドとブロードバンドに分けられ、通常は帯域幅の中心波長の値で区別し、5%より小さい場合はナローバンド、5%より大きい場合はブロードバンドである。環境の可視光の干渉を減らすためには、通常ナローバンドの干渉フィルターを使用する。従来のRGB可視光カメラには、赤外線カットフィルターの使用は必須であり、不必要な低周波近赤外光をカットすることで、赤外線が可視光に影響を与え、偽色或いは波紋が生じるのを避けると共に、解像度とカラーの還元性を高めることができる。しかし、赤外線カメラが環境光線の干渉を受けないためには、ナローバンドフィルター(即ち赤外線バンドパスフィルター)を使用するのが必要であり、特定の帯域の近赤外光のみが通る。
【0003】
従来の赤外線バンドパスフィルターは、台湾公知の特許申請案第I576617号、第I648561号の「光学フィルターセンシングシステム」に示すように、主に複数の水素化層及び複数の低屈折率層が交互に積み重ねて形成するものである。該赤外線バンドパスフィルター構造は、800nmから1600nmまでの波長範囲内において、少なくとも一部が重なる一つのパスバンド(passband)を具有し、該パスバンドには一つの中心波長を具有し、且つ該中心波長の入射角度が0から30に変わるとき、マグニチュード(magnitude)にてシフト(shifts)する幅は約12.2〜20nmである。その中、複数の水素化層はそれぞれ800nmから1100nmまでの波長範囲内では3.5より大きい(近い)一つの屈折率を具有する。該複数の低屈折率層とは、一酸化物であり、800nmから1100nmまでの波長範囲内での屈折率は2より小さく、それに含まれるのは二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化チタン(TiO2)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、五酸化タンタル(Ta2O5)及びその混合物の中の少なくとも一つである。
【0004】
しかし、従来の赤外線バンドパスフィルターを実際に実施する際には、下記の欠点がある:
【0005】
1、従来の該複数の水素化層及び該複数の低屈折率層が交互に積み重ねて形成する赤外線帯域フィルターのパスバンドの中心波長は、入射角度が0から30に変わる際に、比較的大きなシフト(約12.2〜20nm)があるため、三次元画像システムに応用する際に、大きな角度から光を取り込む際に識別できない、或いは識別失敗の問題を引き起こし易くなる。
【0006】
2、該従来技術の赤外線バンドパスフィルターの膜層は、ピュアシリコンターゲットを利用してスパッタリング形成を行う。過大な仕事率ではピュアシリコンターゲットを割って使用不能になるため、ピュアシリコンターゲットは5−6KWの仕事率のみを使ってスパッタリングをするため、スパッタ膜層の部分で比較的多くの時間を費やすことになり、スパッタリングの効率が非常に悪く、それにより製造コスト(電気代、作業時間など)が増える。
【0007】
3、該従来技術の赤外線バンドパスフィルターの膜層は比較的厚みがあるため、ガラス基板にコーティングする際には、比較的大きく曲がるため、後続の切断工程の際に、角が欠けるなどの問題が起こりやすいことを鑑みて、更なる改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】台湾特許申請案第I576617号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、従来技術の赤外線バンドパスフィルターに存在するスパッタ効率が悪く、生産コストが高い、及び膜層の曲がりにより後続の切断工程において、角が欠けやすい問題などを解決する赤外線バンドパスフィルター構造及び該構造を応用する赤外線バンドパスフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を解決するために、本発明は赤外線バンドパスフィルター構造及び該構造を応用する赤外線バンドパスフィルターを提供するものである。本発明の赤外線バンドパスフィルター構造は、複数の水素化シアル(SiAl:H)層及び複数の低屈折率層を交互に積み重ねて形成し、該複数の低屈折率層は酸化物又は窒化物であり、800nmから1600nmまでの波長範囲内において一つのパスバンド(passband)を具有し、該パスバンドは一つの中心波長を具有し、且つ該中心波長の光の入射角度が0°から30°に変わるとき、中心波長がシフト(shifts)する幅は11nmより小さい。
【0011】
本発明にて述べる赤外線バンドパスフィルターは主に一つの基板の第一側面に、上述の赤外線バンドパスフィルター構造を形成し、該基板の該第一側面の反対側の一つの第二側面に一つの抗反射層を形成する。
【0012】
本発明が提供する赤外線バンドパスフィルター構造及び該構造を応用する赤外線バンドパスフィルターは、該複数の水素化シアル層及び該複数の低屈折率層を利用し、交互に積み重ねて形成赤外線バンドフィルター構造のパスバンドの中心波長の入射角度が0から30に変わるとき、11nmより小さい、比較的小さなシフト量が生じる。よって、3D映像システムに応用する際に、識別不能、或いは識別失敗の問題が起こりにくい。特にアルミニウム成分の混ざったシアルターゲットを使って該水素化シアルを作るときは、従来のピュアシリコンターゲットで作る水素化シリコンよりも、2倍以上の仕事率出力(約10−20KW)に耐えることができる。よって、コーティング時間を少なくとも半分に短縮することができ、相対的に同じ時間の生産高も倍以上になるため、工場全体の生産時間、人力、電力などの資源コストも半分に下がり、競争上の優位性を大きく引き上げる。しかも、該赤外線バンドパスフィルター構造の膜層は、アルミニウム成分の拡張性に優れた特徴を活かし、比較的薄い厚みに作ることができるため、ガラス基板にコーティングする際に、比較的薄い膜層で内部応力が相対的に小さくなる。内部応力が小さいと、後続の切断工程において、角が欠けやすい状況の発生を減少することができ、切断の良品率を上げることになり、進んではコストを下げる目的に達する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、該赤外線バンドパスフィルター構造の膜層の曲がり具合を減らすことで、後続の切断工程において、角が欠けやすい問題を解決し、切断の良品率を上げ、生産コストを下げる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の赤外線バンドパスフィルターの断面略図である。
図2】本発明が行うコーティングプロセスの真空スパッタリング反応コーティングシステムの構造略図である。
図3】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第一実施例の膜層の構造略図である。
図4】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第一実施例のスペクトログラムである。
図5】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第一実施例の膜層の構造略図である。
図6】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第二実施例の実験一のスペクトログラムである。
図7】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第二実施例の実験二の膜層の構造略図である。
図8】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第二実施例の実験二のスペクトログラムである。
図9】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第三実施例の膜層構造の略図である。
図10】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第三実施例のスペクトログラムである。
図11】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の可視光反射率実験の膜層の構造図である。
図12】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の可視光反射率実験のスペクトログラムである。
図13】本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の可視光反射率実験の色座標範囲図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【実施例1】
【0016】
図1に示すのは、本発明の赤外線バンドパスフィルターであり、それに含まれるのは基板10、一つの赤外線バンドパスフィルター構造20及び一つの抗反射層(AR)層30である。
【0017】
該基板10はガラスであり、且つ一つの第一側面及び該第一側面の反対側に位置する一つの第二側面を同時に具有する。
【0018】
該赤外線バンドパスフィルター構造20は該基板10の第一側面に形成し、複数の水素化シアル(SiAl:H)層21及び複数の低屈折率層22が交互に積み重ねて形成することで、該赤外線バンドパスフィルター構造20は、800nmから1600nmの波長範囲内において、少なくとも一部が重なる一つのパスバンド(passband)を具有する。該パスバンドには一つの中心波長を具有し、且つ該中心波長の入射角度が0から30に変わるとき、マグニチュード(magnitude)にてシフト(shifts)する幅が11nm(約10.3〜10.5nm)より小さい。また、該赤外線バンドパスフィルター構造20の厚みが3000〜5500nmであり、350nm〜1600nmの波長範囲内では高いOD値を具有し、800nmから1600nmの波長範囲内において高い浸透率を具有する。可視光の範囲において、色座標はRx Coordinate 0.2〜0.5、Ry Coordinate 0.2〜0.5の位置にあり、反射率は20%より低い。その中、該複数の水素化シアル層21が800nm〜1600nmの波長範囲内での屈折率は3.1〜3.6であり、吸光係数は1.E−4〜1.E−6、350nmから700nmの波長範囲内での吸光係数は0.005より大きい。その中、該低屈折率層22は一酸化物であり、二酸化シアル(SiAl:O2)、窒化シアル(SiAl:N)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化チタン(TiO2)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、五酸化タンタル(Ta2O5)及びその混合物の中の少なくとも一つを含む。しかも、該複数の低屈折率層22は800nmから1600nmの波長範囲内での屈折率は1.8より小さく、吸光係数は0.0005より小さい。350nmから700nmの波長範囲内での吸光係数は0.005より大きい。
【0019】
該抗反射層30は該基板10の第二側面に形成し、複数個の高い屈折率の材料である水素化シアル(SiAl:H)と複数個の低屈折率の材料が積み重ねて形成する。該低屈折率の材料は二酸化シアル(SiAl:O2)、窒化シアル(SiAl:N)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化チタン(TiO2)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、五酸化タンタル(Ta2O5)及びその混合物の中の少なくとも一つを含み、その厚みは3000nm〜6000nmである。
【0020】
図2に示すように、本発明の水素化シアル膜層21のスパッタ製造工程は、一つの真空スパッタリング反応コーティングシステム40の中で行う。それは主にアルミニウム成分を200ppm〜1500ppm混ぜた各結晶構造のシリコンロータリーターゲットSILICON ROTARY TARGET OF EACH CRYSTAL STRUCTURE或いはシリコン単結晶円柱ターゲットをスパッタのターゲット材45とし、製造工程において(A)ではクリーンな基板10をローラー41の上に置くことで、コーティング表面を外向きにする; (B)ローラー41をコーティングチャンバー42内にて一定の速度で回転させる。 (C)真空度が10−3から10−4Paの時、スパッタ源43を開けてアルゴンを通す。アルゴンはイオン化されてプラズマを形成し、電場磁場の作用の元でターゲット材45を打ち、シアル材料が該基板10の上にスパッタリングされてシアルの薄膜を形成する。 (D)ローラー41の回転に従い、基板10は反応源(RF/ICP)のエリア44に運ばれる。 (E)反応源エリア44に水素、酸素及びアルゴンを注入してプラズマを形成し、電場の作用の元で該基板10に向かって高速運動を行い、最終的に該基板10にあるシアル薄膜と反応を起こし、水素を含む水素化シアル膜層21に化学合成する。
その中、高い屈折率の薄膜を作る際、反応源エリア44に注入される混合気体の中で、水素の比例(流量)を調節することで、800nmから1600nmの最高の屈折率を3.1から4に次第に変化し、吸光係数は0.0005より薄い薄膜を作ることができる。反応源エリア44に注入される気体が酸素とアルゴンの混合気体である場合、350nmから1600nmの屈折率が1.46から1.7に次第に変化し、吸光係数が0.0005より薄い薄膜を作ることができる。
【0021】
図3図4に示すのは、本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第一実施例である(850 bandpass filter)。それは水素化シアル層及び二酸化シアル層が交互に計27層積み重ねて形成し、積み重ねた厚みは約3500nmである。その中、該水素化シアル層が800nmから1600nmの波長範囲内での屈折率が3より大きく、且つ3.6に近く、吸光係数は0.0005より小さく、350nmから700nmの波長範囲内での吸光係数は0.005より大きい。該二酸化シアル層が800nmから1600nmの波長範囲内での屈折率が1.8より小さく、吸光係数は0.0005より小さい。積み重ねて形成する該赤外線バンドパスフィルター構造は、800nmから1600nmの波長範囲内において、少なくとも一部が重なる一つのパスバンドを具有し、該パスバンドの中心波長の入射角度が0から30に変わるとき、シフト幅が11nmより小さい。3D画像システムに応用する場合、3D映像解析能力を高めることができる。
【実施例2】
【0022】
図5図6に示すのは、本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第二実施例の実験一(940 bandpass filter)である。それは水素化シアル層及び二酸化シアル層が交互に計31層積み重ねて形成するものであり、交互に積み重ねた厚みは約4000nmである。その中、該水素化シアル層が800nmから1600nmの波長範囲内での屈折率が3より大きく、且つ3.6に近く、吸光係数は0.0005より小さい。350nmから700nmの波長範囲内での吸光係数は0.005より大きい。該二酸化シアル層の800nmから1600nmの波長範囲内での屈折率が1.8より小さく、吸光係数が0.0005より小さい。積み重ねて形成する該赤外線バンドパスフィルター構造は、800nmから1600nmの波長範囲内において、少なくとも一部が重なるパスバンドを具有し、該パスバンドの中心波長の入射角度が0から30に変わる時、シフト幅は11nmより小さい。3D画像システムに応用する場合、3D映像解析能力を高めることができる。
【0023】
図7図8に示すのは、本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第二実施例の実験二(940 bandpass filter)である。それは水素化シアル層及び二酸化シアル層が交互に計35層積み重ねて形成するものであり、交互に積み重ねた厚みは約4000〜5500nmである。その中、該水素化シアル層が800nmから1600nmの波長範囲内での屈折率が3より大きく、且つ3.6に近く、吸光係数は0.0005より小さい。350nmから700nmの波長範囲内での吸光係数は0.005より大きい。該に二酸化シアル層の800nmから1600nmの波長範囲内での屈折率が1.8より小さく、吸光係数が0.0005より小さい。積み重ねて形成する該赤外線バンドパスフィルター構造は、800nmから1600nmの波長範囲内において、少なくとも一部が重なるパスバンドを具有し、該パスバンドの中心波長の入射角度が0から30に変わる時、シフト幅は11nmより小さい。そのT90〜T10%の斜率は、実施例一(実験一のslopeは8より小さく、実験二のslopeは7より小さい)より優れ、同じ位置のOD値も実施例一より優れる。
【実施例3】
【0024】
図9図10に示すのは、本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の第三実施例(1064 bandpass filter)である。それは水素化シアル層及び二酸化シアル層が交互に計33層積み重ねて形成するものであり、交互に積み重ねた厚みは5000nm以下である。その中、該水素化シアル層が800nmから1600nmの波長範囲内での屈折率が3より大きく、且つ3.6に近く、吸光係数は0.0005より小さい。350nmから700nmの波長範囲内での吸光係数は0.005より大きい。該に二酸化シアル層の800nmから1600nmの波長範囲内での屈折率が1.8より小さく、吸光係数が0.0005より小さい。積み重ねて形成する該赤外線バンドパスフィルター構造は、800nmから1600nmの波長範囲内において、少なくとも一部が重なるパスバンドを具有し、該パスバンドの中心波長の入射角度が0から7に変わる時、シフト幅は2nmより小さく、400から1000nm及び1120〜1600の波長範囲内でのパスバンドの入射角度は0から7に変わる時、OD3である。
【0025】
図11から図13に示すのは、本発明の赤外線バンドパスフィルター構造の可視光反射率の実験である。水素化シアル層及び二酸化シアル層を交互に計37層積み重ねて形成するものであり、可視光の範囲において、色座標はRx Coordinate 0.2〜0.5、Ry Coordinate 0.2〜0.5に位置し、反射率は20%より低い。
【0026】
本発明にて提供する赤外線バンドパスフィルター構造及び該構造を応用する赤外線バンドパスフィルターには下記のメリットを具有する:
【0027】
1、本発明は複数の水素化シアル層21及び該複数の低屈折率層22が交互に積み重ねて形成する赤外線バンドパスフィルター構造20のパスバンドの中心波長の入射角度が0から30に変わる時、11nmより小さい、比較的少ないシフト(約10.3〜10.5nm)があるため、3D画像システムに応用する際に、識別できない、或いは識別失敗の問題になりにくい。
【0028】
2、本発明にアルミニウム成分の混ざったシアルターゲットは、従来のピュアシリコンターゲットより2倍以上の仕事率出力(約10−20KW)に耐えることができるため、コーティング時間を少なくとも半分に短縮することができる。相対的に同じ時間の生産高も倍以上になるため、工場全体の生産時間、人力、電力などの資源コストも半分に下がり、競争上の優位性を大きく引き上げる。
【0029】
3、本発明の膜層は、アルミニウム成分の拡張性に優れた特徴を活かし、比較的薄い厚みに作ることができるため、ガラス基板にコーティングする際に、比較的薄い膜層で内部応力が相対的に小さくなる。内部応力が小さいと、後続の切断工程において、角が欠けやすい状況の発生を減少することができ、切断の良品率を上げることになり、進んではコストを下げる目的に達する。
【0030】
以上の実施例による本発明の詳細な説明は本発明の範囲を制限するものではない。本技術に熟知する者は、固定構造の変更などの適当な変更および調整を行うことができ、これらの変更および調整を行っても本発明の重要な意義は失われず、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
10 基板
20 赤外線バンドパスフィルター構造
21 水素化シアル層
22 低屈折率層
30 抗反射層
40 真空スパッタリング反応コーティングシステム
41 ローラー
42 コーティングチャンバー
43 スパッタ源
44 反応源エリア
45 ターゲット材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13