(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の二次電池の実施形態を説明する。
−第1の実施形態−
図1〜
図9を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、扁平捲回形の二次電池の外観斜視図である。二次電池100は、電池容器を形成する電池缶1および電池蓋6を備える。電池缶1は、扁平な箱型形状を有する角形二次電池であり、相対的に面積の大きい一対の対向する幅広側面1bと、相対的に面積の小さい一対の対向する幅狭側面1cと、底面1dを有し、その上方に開口部1a(
図2参照)を有する。
電池缶1内には、捲回電極群3が収納され、電池缶1の開口部1aが電池蓋6によって封止されている。電池蓋6は略矩形の平板状であって、電池缶1の開口部1aを塞いで溶接され、外部に対し電池缶1を封止している。電池蓋6には、正極外部端子14と、負極外部端子12が設けられている。正極外部端子14、負極外部端子12は、バスバー(図示せず)を介して外部機器に接続される。正極外部端子14と負極外部端子12を介して捲回電極群3に充電され、また外部負荷に電力が供給される。電池蓋6には、ガス排出弁10が一体的に設けられている。電池容器内の圧力が上昇すると、ガス排出弁10が開いて内部からガスが排出され、電池容器内の圧力が低減される。これによって、扁平捲回形の二次電池100の安全性が確保される。電池蓋6には、注液孔9(
図2参照)を封止する注液栓11が設けられている。
【0010】
図2は、
図1に図示された二次電池の分解斜視図である。
二次電池100の電池缶1内には、絶縁保護フィルム2を介して捲回電極群3が収容されている。
捲回電極群3は、負極電極32と正極電極34とを、両部材の間にセパレータ33、35を介して捲回して形成されている(
図3参照)。捲回電極群3は、扁平な平坦部36と、平坦部36の捲回方向の両端に形成された断面半円形状の湾曲部37を有する。平坦部36は厚さ方向に対向する一対の平坦面36U、36L(
図5等も参照)を有している。捲回電極群3は、捲回軸方向が電池缶1の横幅方向に沿うように、一方の湾曲部37側から電池缶1内に挿入され、他方の湾曲部37側が、電池缶1の開口部1a側に配置される。
【0011】
詳細は後述するが、正極電極34は、正極箔露出部34cを有し、負極電極32は、負極箔露出部32cを有する。
捲回電極群3の正極箔露出部34cは、正極集電板44を介して電池蓋6に設けられた正極外部端子14に電気的に接続されている。また、捲回電極群3の負極箔露出部32cは、負極集電板24を介して電池蓋6に設けられた負極外部端子12に電気的に接続されている。これにより、正極集電板44および負極集電板24を介して捲回電極群3から外部負荷へ電力が供給され、正極集電板44および負極集電板24を介して捲回電極群3へ外部発電電力が供給され充電される。
【0012】
電池蓋6の一面側にガスケット5が取付けられ、正極外部端子14および負極外部端子12が、それぞれ、電池蓋6と絶縁される。また、電池蓋6の他面側に絶縁板7が取付けられ、正極集電板44および負極集電板24は、それぞれ、電池蓋6と絶縁される。電池蓋6には、電池容器内に電解液を注入するための注液孔9が穿設されている。注液孔9から電池缶1内に電解液を注入した後、電池蓋6に注液栓11をレーザ溶接により接合して注液孔9を封止し、二次電池100を密閉する。
【0013】
正極外部端子14および正極集電板44の形成素材としては、例えばアルミニウム合金が挙げられ、負極外部端子12および負極集電板24の形成素材としては、例えば、銅合金が挙げられる。また、絶縁板7およびガスケット5の形成素材としては、例えばポリブチレンテレフタレートやポリフェニレンサルファイド、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂等の絶縁性を有する樹脂材が挙げられる。
【0014】
電池容器内に注入される電解液としては、例えばエチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩が溶解された非水電解液を適用することができる。電池容器内外の圧力を適切に調整すると、捲回電極群3内の空気と電解液の置換が促進されて、電池容器内に電解液を効率的に注入することができる。
【0015】
正極外部端子14および負極外部端子12には、それぞれ、下方に向かって突出する正極接続部14a、負極接続部12aが形成されている。正極接続部14aおよび負極接続部12aは、それぞれ、円柱形状を有しており、その先端が電池蓋6の正極側貫通孔46、負極側貫通孔26に挿入される。正極接続部14aは、電池蓋6を貫通して正極集電板44の正極集電板基部41よりも電池缶1の内部側に突出している。正極接続部14aの先端は、かしめられて、正極外部端子14と正極集電板44とを電池蓋6に一体に固定している。負極接続部12aは、電池蓋6を貫通して負極集電板24の負極集電板基部21よりも電池缶1の内部側に突出している。負極接続部12aの先端は、かしめられて負極外部端子12と、負極集電板24とを電池蓋6に一体に固定している。
【0016】
正極集電板44は、正極集電板基部41と、正極側接続端部42とを有している。正極側接続端部42は、正極集電板基部41の側端で折曲されて、電池缶1の幅広側面1bに沿って底面1d側に向かって延出され、捲回電極群3の正極箔露出部34cに対向して重ね合わされた状態で接続される。正極集電板基部41には、正極接続部14aが挿通される正極側開口穴43が形成されている。
負極集電板24は、負極集電板基部21と、負極側接続端部22とを有している。負極側接続端部22は、負極集電板基部21の側端で折曲されて、電池缶1の幅広側面1bに沿って底面1d側に向かって延出し、捲回電極群3の負極箔露出部32cに対向して重ね合わされた状態で接続される。負極集電板基部21には、負極接続部12aが挿通される負極側開口穴23が形成されている。
【0017】
絶縁保護フィルム2は、捲回電極群3の平坦部36の平坦面36U、36Lに沿う方向でかつ捲回電極群3の捲回軸方向に直交する方向を巻き付け中心として、捲回電極群3の周囲に巻き付けられている。絶縁保護フィルム2は、例えばPP(ポリプロピレン)などの合成樹脂製の一枚のシートまたは複数のフィルム部材からなり、捲回電極群3の平坦面36U、36Lと平行な方向でかつ捲回軸方向に直交する方向を巻き付け中心として巻き付けることができる長さを有している。
【0018】
図3は、
図2に図示された捲回電極群の分解斜視図である。
図3は、捲回電極群3の外周側を展開した状態で示している。
捲回電極群3は、負極電極32と正極電極34とを間にセパレータ33、35を介して扁平状に捲回することによって構成されている。つまり、捲回電極群3は、外周側から順に、セパレータ35、負極電極32、セパレータ33、正極電極34、セパレータ35、負極電極32、セパレータ33、正極電極34……を繰り返して捲回されている。セパレータ33、35は、正極電極34と負極電極32との間を絶縁する役割を有している。
【0019】
負極電極32は、負極箔32aの両面に塗布された負極合剤層32bと、負極箔32aが負極合剤層32bから露出する負極箔露出部32cを有する。正極電極34は、正極箔34aの両面に塗布された正極合剤層34bと、正極箔34aが正極合剤層34bから露出する正極箔露出部34cを有する。
負極合剤層32bは、正極合剤層34bよりも幅方向(捲回方向に直交する方向の長さ)に大きく、これにより正極合剤層34bは、負極合剤層32bの領域内に配置されている。正極箔露出部34c、負極箔露出部32cは、相互に、幅方向の反対側に配置されている。正極箔露出部34cおよび負極箔露出部32cは、平坦部36で隣接する内外周の部分が相互に積層される。正極箔露出部34cが積層された積層部では、隣接する内外周の部分が相互に溶接されると共に、正極集電板44が積層部の一面に溶接される。負極箔露出部32cが積層された積層部では、隣接する内外周の部分が相互に溶接されると共に、負極集電板24が積層部の一面に溶接される。
【0020】
セパレータ33、35の幅方向の長さは、負極合剤層32bよりも大きい。しかし、セパレータ33、35は、その端部が、正極箔露出部34cの端部および負極箔露出部32cの端部よりも内側に位置するように配置され、正極箔露出部34cおよび負極箔露出部32cそれぞれは、セパレータ33、35から幅方向の外側に露出する領域を有する。このため、正極箔露出部34cおよび負極箔露出部32cに、それぞれ、正極集電板44、負極集電板24を溶接する際の支障にはならない。
【0021】
負極電極32を下記の方法によって得ることができた。
負極活物質として非晶質炭素粉末100重量部に対して、結着剤として10重量部のポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFという。)を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルピロリドン(以下、NMPという。)を添加、混練した負極合剤を作製した。この負極合剤を厚さ10μmの銅箔(負極箔32a)の両面に溶接部(負極箔露出部32c)を残して塗布する。その後、乾燥、プレス、裁断工程を経て、銅箔を含まない負極活物質塗布部厚さ70μmの負極電極32を得た。
【0022】
なお、本実施形態では、負極活物質に非晶質炭素を用いる場合について例示したが、これに限定されるものではなく、リチウムイオンを挿入、脱離可能な天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークスなどの炭素質材料やSiやSnなどの化合物(例えば、SiO、TiSi2等)、またはそれの複合材料でもよく、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に制限されるものではない。
【0023】
正極電極34を下記の方法によって得ることができた。
正極活物質としてマンガン酸リチウム(化学式LiMn2O4)100重量部に対し、導電材として10重量部の鱗片状黒鉛と結着剤として10重量部のPVDFとを添加し、これに分散溶媒としてNMPを添加、混練した正極合剤を作製した。この正極合剤を厚さ20μmのアルミニウム箔(正極箔34a)の両面に溶接部(正極箔露出部34c)を残して塗布した。その後、乾燥、プレス、裁断工程を経て、アルミニウム箔を含まない正極活物質塗布部厚さ90μmの正極電極34を得た。
【0024】
本実施形態では、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いる場合について例示したが、スピネル結晶構造を有する他のマンガン酸リチウムや一部を金属元素で置換又はドープしたリチウムマンガン複合酸化物や層状結晶構造を有すコバルト酸リチウムやチタン酸リチウムやこれらの一部を金属元素で置換またはドープしたリチウム-金属複合酸化物を用いるようにしてもよい。
【0025】
また、本実施形態では、正極電極34、負極電極32における塗工部の結着材としてPVDFを用いる場合について例示したが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン、アクリル系樹脂などの重合体およびこれらの混合体などを用いることができる。
【0026】
また、軸芯としては例えば、正極箔34a、負極箔32a、セパレータ33、35のいずれよりも曲げ剛性の高い樹脂シートを捲回して構成したものを用いることができる。
【0027】
図4は、正・負極集電板と捲回電極群との接合状態を示す平面図である。
正極箔露出部34cと正極集電板44、および負極箔露出部32cと負極集電板24は、それぞれ、例えば超音波溶接により接合される。超音波溶接は、正・負極集電板44、24をアンビルで固定した状態で、正・負極箔露出部34c、32cにホーンを押し当てて、超音波振動により金属界面を接合する手法である。正極箔露出部34cと正極集電板44との接合面である正極集電部64、負極箔露出部32cと負極集電板24との接合面である負極集電部62では、正・負極集電板44、24をアンビルで固定し、ホーンを押し当てて振動させる過程で正・負極集電板44、24や正・負極露出部34c、32cが削られて金属異物を生じる。
なお、集電部の接合方法としては、抵抗溶接等の他の方法を適用しても良い。
【0028】
生じた金属異物の一部は、例えば、電解液を注入する工程で電解液の流れで捲回電極群3の内部に侵入する恐れがある。捲回電極群3の内部に侵入すると、金属異物の大きさや形状によってはセパレータを貫通して内部短絡に至ることがある。さらに、侵入した金属異物が負極箔32aや負極集電板24を構成する銅等の場合には、正極電位で酸化されて電解液中を拡散し、負極で還元析出する。析出した銅が負極と正極とを接続して微小な内部短絡回路を生じることがある。析出や成長形態は金属種等により異なるが、例えば、セパレータの空隙内を樹枝状に成長する場合には、物理的にセパレータを貫通しない小さな異物であっても内部短絡を生じることがある。
【0029】
つまり、異物により内部短絡の要因には、以下の2つがある。
要因1.負極側で発生した金属異物が電解液中を流動して正極側から捲回電極群3の内部に混入し、正極電位により酸化され、負極において還元析出され、正極と負極を短絡する。
要因2.正極側で発生した金属異物、または製造工程中に発生した異物が、正極側から捲回電極群3の内部に混入し、セパレータをほぼ貫通する状態となって正極と負極を短絡する。
内部短絡は二次電池の機能損失を招く重大な不具合である一方で、それを防ぐための異物混入対策は容易でない。
【0030】
図5(a)は、
図4のVa−Va線断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の領域Vbの拡大図である。
図5(a)は、正極電極34の溶接部側を図示している。
正極電極34の正極箔露出部34cは、捲回される内外周の平坦部の部分が相互に密着するように積層される。積層部38の厚さは、当然、捲回電極群3の平坦部36の厚さより薄い。
図5に図示された状態で、積層部38の一面に配置された正極集電板44をアンビルで固定し、積層部38を構成する正極箔露出部34cの他面側からホーンで加圧しながら超音波振動を与える。これにより、隣接する金属部材同士に摩擦熱が発生し、固相溶接状態が作り出される。この作用により、積層部38を構成する正極箔露出部34c同士が接合されると共に、正極集電板44が積層部38の一面に接合される。
【0031】
正極箔露出部34cの積層部38を形成する際、正極箔露出部34cには、積層部38と捲回電極群3の平坦部36との間に、平坦部36の各平坦面36U、36Lから積層部38に向かって湾曲する変形部39が形成される。
図5(b)に図示されるように、変形部39では、正極箔露出部34cとセパレータ33、35とは、積層部38に向かって、漸次、間隔が小さくなるように湾曲する。従って、変形部39においては、正極箔露出部34cとその両側に配置されたセパレータ33およびセパレータ35との隙間54a、54bの大きさは、先端で互いに接合される正極箔露出部34cにより制限される。
【0032】
一方、正極電極34の最外周部34dの外周には、内周側から外周側に向けて、セパレータ33の最外周部33a、負極電極32の最外周部32d、セパレータ35の最外周部35aが、この順に、1周、捲回されている。セパレータ33の最外周部33a、負極電極32の最外周部32dおよびセパレータ35の最外周部35aは、正極箔露出部34cの積層部38を形成するものではないので、積層部38側に向けて変形することはなく、平坦状のままである。
【0033】
このため、セパレータ33の最外周部33aと、変形部39、すなわち、捲回電極群3の最外周の正極箔露出部34cとの間には、大きな隙間54cが形成される。この隙間54cは、
図5(b)に図示されているように、外方に開放されている。このため、隙間54には、外部から金属異物が侵入する恐れが高い。
【0034】
図6は、
図4のVI−VI線拡大断面図である。
図6では、
図4に示す正極電極34の捲き終り部74を含む捲回電極群3の最外周近傍を示している。
正極電極34の捲き終りでは、正極電極34の外周に配置されているセパレータ33の最外周部33a、負極電極32の最外周部32dおよびセパレータ35の最外周部35aは、正極電極34の終端より、捲回方向に延在している。このため、特に、正極電極34の捲き終り部74では、隙間54dに外部から金属異物が侵入する恐れが高い。
【0035】
上述したように、捲回電極群3の正極箔露出部34cを積層して、正極集電板44に接合すると、変形部39とセパレータ33の最外周部33aとの間に形成される隙間54c、54dに外部から金属異物が混入される恐れが高くなる。そこで、捲回電極群3への金属異物の混入を抑制することができる本発明の一実施の形態を以下に示す。
【0036】
図7は、
図4に示された捲回電極群に、異物混入規制用のテープを設けた状態を示す平面図である。
図8(a)は、
図7のVIIIa−VIIIa線断面図であり、
図8(b)は、
図8(a)の領域VIIIbの拡大図である。
図8(a)、8(b)に図示されるように、セパレータ35の最外周部35aの上面に異物混入規制用のテープ200が貼られている。テープ200は、平坦部36における、積層部38に接合された正極集電板44が配置された平坦面36U側に配置されている。
また、
図7に図示されるように、テープ200は、正極集電板44側の一側縁を覆い、かつ、正極電極34の捲き終り部74を跨いで、捲回方向および捲回方向の逆方向に延在されている。また、テープ200は、捲回方向において、正極集電部64の領域64R内に配置されている。
【0037】
テープ200は、セパレータ35の最外周部35aを、セパレータ33の最外周部33a側に向けて変形させ、先端部側(幅方向の側縁部側)をセパレータのセパレータ33の最外周部33aに当接させる。テープ200は、さらに、セパレータ35の最外周部35aをセパレータ33の最外周部33aに押し付けて、セパレータ33の最外周部33aの先端部側を最外周の正極箔露出部34cに接近するように変形する。これにより、セパレータ33の最外周部33aと最外周の正極箔露出部34cとの間形成される隙間54cは縮減され、外方に対して閉鎖状になる。また、テープ200は、正極電極34の捲き終り部74の正極側端部74Tを覆って配置されている。このため、
図6に示す正極電極34の捲き終り部74の端部に形成される隙間54dは、正極集電板44側において縮減され閉鎖状になる。
従って、テープ200により隙間54cと隙間54dから捲回電極群3内部への金属異物の混入が抑制される。
【0038】
上記したテープ200により、捲回電極群3への金属異物の混入が抑制されることの効果を、以下に示す方法により確認した。
図7に図示される捲回電極群3に、捲回方向の長さが、下記条件1〜3のテープ200を貼り付けた試料を3個ずつ作製した。
条件1:テープの長さが捲回電極群3の平坦部36の長さの23%
条件2:テープの長さが捲回電極群3の平坦部36の長さの62%
条件3:テープの長さが捲回電極群3の平坦部36の長さの100%
なお、条件3の試料は、後述する第3の実施形態に相当する。
また、テープ200を貼り付けない捲回電極群3も作製した。
なお、各条件の試料では、テープ200は、平坦部36の正極集電板44が接合された側の平坦面36U側に配置されている。また、テープ200は全て正極電極34の捲き終り部74を覆うように配置した。
【0039】
捲回電極群3内に混入した金属異物の数は、捲回電極群3を電池缶1に収納して電池缶1と電池蓋6とを溶接した後に行った。通常、作製したままの状態では、捲回電極群3内に金属異物が混入する確率は大変低い。そこで、効果の確認を促進するため、注液孔9より銅異物を約1mg添加して、電池缶1内に拡散させた。使用した銅異物は、70μmの篩で篩ったものである。続いて、電池缶1内に電解液を注入し、電池容器内外の圧力を適切に調整することで捲回電極群3内に電解液を浸透させた後、注液栓11により封止した。次に、正極電位が銅の溶解電位を超える状態に二次電池100を充電して一定時間静置した。そして、二次電池100から捲回電極群3を取り出して解体し、空隙54c、54d内に溶解析出して顕在化した銅の数を確認した。
【0040】
図9は、上記の試験の結果を示しており、テープ長さと混入異物数の関係を示す図である。横軸は、捲回電極群3の平坦部36の捲回方向の長さに対するテープ200の長さを示し、縦軸は、捲回電極群3内に混入した金属異物の総数を、テープ無しを1とした相対値で示す。
図9より、条件1〜3のいずれのテープを貼り付けた試料も、テープ無しの捲回電極群3に対して、銅の混入数が1/5未満に減少したことが分かる。条件1〜3の試料を対比すると、条件2の試料は、条件1および3の試料よりも、僅かに、金属異物の混入率が高いという結果が出ている。しかし、条件1および条件3の試料では、金属異物の混入率が0であるという結果を見ると、銅の混入数はテープ200の長さには依存しないと判断される。結論として、捲回電極群3の平坦部36の少なくとも一部にテープ200を貼り付けて、最外周の正極箔露出部34cの外側に配置するセパレータ33の最外周部33aの先端部側を正極箔露出部34cに接近するように変形すれば、隙間54cが縮減されて金属異物の混入が抑制されると言える。また、隙間54dに限るとテープの貼り付けにより異物の混入はゼロにできた。つまり、正極集電板44が配置された平坦面36U側にテープ200を貼り付けて、セパレータ33の最外周部33aの先端部側を正極箔露出部34cに接近するように変形することにより、正極集電板44が配置された側のみならず、正極集電板44が配置されていない側も含めて、外部からの捲回電極群3への金属異物に進混入を抑制することができることが確認された。
【0041】
本発明の第1の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)最外周の正極電極34の外周に、セパレータ33の最外周部33aが配置され、正極電極34の正極箔露出部34cは、捲回電極群3の平坦部36より薄い厚さの積層部38と、積層部38と平坦部36との間に設けられた変形部39とを有し、正極集電板44は、正極箔露出部34cの積層部38の一面上に配置され、捲回電極群3の平坦部36の平坦面36Uから積層部38側に向けて最外周の正極箔露出部34cに接近するようにセパレータ33の外周部33aが変形されている。このため、テープ200により、セパレータ33の最外周部33aの先端部側が最外周の正極箔露出部34cに接近するように変形することにより、捲回電極群3内への金属異物の混入を抑制することができる。
なお、上記第1の実施形態によれば、上述した通り、金属異物による内部短絡の要因1および要因2の両方に対する抑制効果を得ることができる。
【0042】
−第2の実施形態−
図10は、第2の実施形態の平面図であり、
図11は、
図10のXI−XI線断面図である。
図10、
図11は、それぞれ、第1の実施形態の
図7、
図8(a)に対応する。
第2の実施形態では、異物混入規制用のテープ201は、捲回方向に直交する方向において、捲回電極群3の平坦部36の一方の平坦面36U上から、正極集電板44と正極箔露出部34cとの接合面に形成される正極集電部64の上面を覆う領域まで延在されている。テープ201の長手方向の中間部は、変形部39の外面形状に倣って、正極集電部64側が平坦部36の平坦面36Uから降下する方向に湾曲状に変形している。
第2の実施形態においても、テープ201により、セパレータ33の最外周部33aの先端部側が最外周の正極箔露出部34cに接近するように変形する。また、テープ201が正極電極34の捲き終り部74を覆って配置されている。
従って、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様な効果を奏する。
加えて、第2の実施形態では、テープ201が正極集電板44と正極箔露出部34cとの接合面に形成される正極集電部64を覆っているため、正極集電部64に付着した金属異物の移動を制限できる。このため、さらに、捲回電極群3内への金物異物の混入の抑制効果を高めることができる。
【0043】
−第3の実施形態−
図12は、本発明の第3の実施形態を示す。
図12は、第1の実施形態の
図7に対応する。
第3の実施形態では、異物混入規制用のテープ202は、捲回電極群3の平坦部36の捲回方向における全長に亘る長さを有する。第3の実施形態では、セパレータ33の最外周部33aは、捲回電極群3の平坦部36の捲回方向の全長に亘って、その先端部側が最外周の正極箔露出部34cに接近するように変形する。この構造は、上述した条件3の試料と同一である。試験では、捲回電極群3内に混入した金属異物の総数は0であり、第1の実施形態と同じであった。しかし、第3の実施形態では、金属異物の混入経路である隙間54cを、捲回電極群3の平坦部36の全長に亘り縮減するので、異物混入の抑制効果の確実性は、第1の実施形態より向上するという期待がある。
【0044】
−第4の実施形態−
図13は、本発明の第4の実施形態を示す平面図であり、
図14(a)は、
図13のXIVa−XIVa線断面図であり、
図14(b)は、
図14(a)の領域XIVbの拡大図である。
第4の実施形態では、正極集電板44に、異物混入規制部44aが一体成形されている。異物混入規制部44aは、捲回方向に直交する方向において、捲回電極群3の平坦部36の一方の平坦面36U上から、変形部39の外面形状に倣って、平坦部36の平坦面36Uから降下する方向に湾曲して正極集電板44に接続されている。異物混入規制部44aは、セパレータ33の最外周部33aを、その先端部側が最外周の正極箔露出部34cに接近するように変形する。これにより、セパレータ33の最外周部33aと最外周の正極箔露出部34cとの間に形成される隙間54cが縮減され、閉鎖状になる。また、異物混入規制部44aが正極電極34の捲き終り部74を覆って配置されている。
従って、第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
加えて、異物混入規制部44aを正極集電板44と一体成形により形成するので、異物混入規制部44aは、正極集電板44を正極箔露出部34cに接合する工程と同時に捲回電極群3に固定されるので、組付け工程の能率化を図ることができる。
【0045】
−第5の実施形態−
図15は、本発明の第5の実施形態を示し、
図15(a)は、第1の実施形態の
図5に相当する正極側の溶接部付近の断面図であり、
図15(b)は、
図15(a)の領域XVbの拡大図である。
第1の実施形態の
図5に相当する正極側の溶接部付近の断面図であり、
図16は、本発明の第5の実施形態を示し、第1の実施形態の
図6に相当する正極電極の捲き始め部を含む捲回電極群3の最外周近傍の断面図である。
第5の実施形態では、第1の実施形態における捲回電極群3の正・負極の変形部39および積層部38は、厚さ方向に2段に分極されている。つまり、正極側では、正極電極34の正極箔露出部34cおよびセパレータ33、35は、捲回電極群3の厚さ方向のほぼ中央で、それより上部側と下部側に分離して束ねられている。上部側に束ねられた正極電極34の正極箔露出部34cUおよびセパレータ33、35は上部変形部39aを形成し
、正極箔露出部34cUは延在されて上部積層部38aを形成する。下部側に束ねられた正極電極34の正極箔露出部34cLおよびセパレータ33、35は下部変形部39bを形成し、正極箔露出部34cLは延在されて下部積層部38bを形成する。
【0046】
上部積層部38aにおける最内周(
図15では最下層)の正極箔露出部34cU、および下部積層部38bにおける最内周(
図15では最上層)の正極箔露出部34cLには、正極集電板44が溶接により接合されている。上・下部積層部38a、38bと正極集電板44とを超音波溶接により接合するには、正極集電板44をアンビルで固定し、上・下部積層部38a、38bの反対面側にホーンを押し当てて、加圧しながら超音波振動を与える。
【0047】
図示はしないが、負極側も同様であり、上部側に束ねられた負極電極32の負極箔露出部32cおよびセパレータ33、35は上部変形部を形成し、負極箔露出部32cUは延在されて上部積層部を形成する。下部側に束ねられた負極電極32の負極箔露出部32cおよびセパレータ33、35は下部変形部を形成し、負極箔露出部32cLは延在されて下部積層部を形成する。また、負極側の上部積層部における最内周の負極箔露出部32c
、および下部積層部における最内周の負極箔露出部32cには、負極集電板44が溶接により接合されている。
【0048】
図15に図示されるように、捲回電極群3の正極側における上部変形部39aの正極集電板44が配置された側39aLにはテープ200が貼られている。テープ200は、最内周(
図15では最下層)の正極箔露出部34cUの内周側のセパレータ33、35の外面に、平坦部36から上部変形部39aLに跨って貼られている。このため、テープ200は、セパレータ33、35の先端部側を最内周(
図15では最下層)の正極箔露出部34cUに接近するように変形する。これにより、セパレータ33、35と最内周の正極箔露出部34cUとの間に形成される隙間54eは縮減され、外方に対して閉鎖状になる。また、図示はしないが、テープ200は、正極電極34の捲き始め部75の正極側端部を覆って配置されている。このため、
図16に示す正極電極34の捲き始め部75に形成される隙間54fは、正極集電板44側において縮減され閉鎖状になる。
従って、テープ200により隙間54eと隙間54fから捲回電極群3内部への金属異物の混入が抑制される。
【0049】
また、
図15(a)に二点鎖線で図示するように、テープ200は、下部変形部39bの正極集電板44が配置された側39bUにも貼られる。この下部変形部39bUに貼られるテープ200により、下部変形部39bにおいても、捲回電極群3内部への金属異物の混入が抑制される。
従って、第5の実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0050】
第5の実施形態において、上部変形部39aLおよび下部変形部39bUに貼られるテープ200は、それぞれの変形部39a、39bの最内周の正極箔露出部34cU、34cLより内周側のセパレータ33、35に貼られる。ここで、各変形部39a、39bの最内周側は、最表面側でもあるから、テープ200は、変形部39a、39bにおける最表面側の正極箔露出部34cU、34cLより表面側のセパレータ33、35に貼られると表現することができる。
【0051】
第5の実施形態においては、正・負極の電極群が、2段に分極された構造として例示した。しかし、正・負極の電極群は、3段以上に分極するようにしてもよい。
【0052】
上記第1〜第4の実施形態では、テープ200〜202または異物混入規制部44aにより、セパレータ33の最外周部33aを、その先端部側が最外周の正極箔露出部34cに接近するように変形する構成造として例示した。しかし、テープ200〜202または異物混入規制部44aを用いることなく、熱プレスによりセパレータ33の最外周部33aを変形させたり、セパレータ33の最外周部33aを最外周の正極箔露出部34cに接着したりするようにしてもよい。
【0053】
上記第1〜第4の実施形態では、変形部39における、積層部38に接合された正極集電板44が配置された平坦面36U側のみにテープ200〜202を貼り付けた構成として例示した。しかし、テープ200〜202を変形部39の両平坦面36U、36L側に貼り付ける構成としてもよい。
【0054】
上記第1〜第4実施形態では、正極電極34の捲き終り部74を、捲回方向における正極集電部64の領域64R内に配置した構成として例示した。しかし、正極電極34の捲き終り部74を、捲回方向における正極集電部64の領域64R外に配置する構成としてもよい。
【0055】
上記第1〜第4実施形態では、正極電極34の捲き終り部74を、捲回電極群3の正極集電板44が配置された平坦面36U側に配置した構成として例示した。しかし、正極電極34の捲き終り部74を、捲回電極群3の正極集電板44が配置された平坦面36U側とは反対側の平坦面36L側に配置するようにしてもよい。超音波溶接による発塵は、ワークを固定するために使用するアンビル側でより多く生じることが知られている。従って、正極電極34の捲き終り部74を、アンビルにより支持される正極集電板44から遠ざけると、超音波溶接時に捲回電極群3内への金属異物の混入リスクを低減することができる効果が期待できる。
【0056】
上記第1〜第4実施形態では、正極電極34の最外周部34dの外周には、セパレータ33およびセパレータ35が1周、捲回されている構成として例示した。しかし、セパレータ33およびセパレータ35の一方または両方を、正極電極34の最外周部34dの外周に数周、捲回するようにしてもよい。
【0057】
上記各実施形態では、正極電極34と負極電極32とが、セパレータ33、35を介して捲回された捲回電極群3を有する二次電池100として例示した。しかし、本発明は、矩形シート状の正極電極と矩形シート状の負極電極とを、セパレータを介して平坦状に積層した電極群を備える二次電池に適用することができる。
【0058】
上記各実施形態では、二次電池をリチウムイオン電池として例示した。しかし本発明は、ニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池等、他の二次電池に適用することができる。
【0059】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。