特許第6945104号(P6945104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945104
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】遅延に寛容なノード
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20210927BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20210927BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20210927BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20210927BHJP
   H04W 72/12 20090101ALI20210927BHJP
【FI】
   H04W28/04 110
   H04W88/08
   H04W74/08
   H04W84/06
   H04W72/12 150
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-104853(P2019-104853)
(22)【出願日】2019年6月4日
(65)【公開番号】特開2020-78043(P2020-78043A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2019年6月12日
(31)【優先権主張番号】62/758,217
(32)【優先日】2018年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16/379,399
(32)【優先日】2019年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519202670
【氏名又は名称】ソフトウェア ラジオ システムズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Software Radio Systems Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】ポール ディー. サットン
(72)【発明者】
【氏名】イスマエル ゴメス ミゲレス
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン シー. タロン
【審査官】 齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0126553(US,A1)
【文献】 Ericsson,On HARQ for NTN[online],3GPP TSG RAN WG2 #104 R2-1817764,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_104/Docs/R2-1817764.zip>,2018年11月 1日
【文献】 3rd Generation Partnership Project;Technical Specification Group Radio Access Network;Study on New Radio (NR) to support non terrestrial networks (Release 15)[online],3GPP TR 38.811 V15.0.0,2018年 8月10日,pp.33,34,89-100,URL,https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/38_series/38.811/38811-f00.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターミナルステーションと通信するためのベースステーションであって、
通信を維持するための受領確認シグナルを所定の時間以内に受信することを予定している前記ターミナルステーションに対し、当該ベースステーションと前記ターミナルステーションとの間の通信遅延が前記所定の時間より大きいときに、前記ターミナルステーションとの間で前記ターミナルステーションが最初にデータを送信すると予想される予想時間を計画して前記ターミナルステーションの前記予想時間を予定し、前記予想時間より前に開始される第1の時間に前記データのダミーの受領確認シグナルを前記ターミナルステーションに送信するように、構成された処理装置を有する、ベースステーション。
【請求項2】
請求項1において、
前記処理装置が、前記ベースステーションと前記ターミナルステーションとの間の前記通信遅延に基づき、前記第の時間を決定するように構成されている、ベースステーション。
【請求項3】
請求項2において、
前記処理装置が、前記ターミナルステーションが前記受領確認シグナルを受信することを予定している所定の時刻に、前記ターミナルステーションに到着する前記受領確認シグナルに基づき、前記第の時間を決定する、ベースステーション。
【請求項4】
請求項3において、
当該ベースステーションが、前記所定の時刻の後の、受領時間に前記ターミナルステーションから前記データを受信する、ベースステーション。
【請求項5】
請求項4において、
前記予想時間から前記受領時間までの時間が、前記通信遅延により予定されている時間より大きい、ベースステーション。
【請求項6】
請求項において、
当該ベースステーションはeNodeBを含み、前記通信遅延が40ミリ秒より大きい、ベースステーション。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかにおいて、
前記第1の時間から前記所定の時刻までの時間が、前記通信遅延により予定されている時間より大きい、ベースステーション。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
当該ベースステーションは、ハイブリッド自動再送要求(HARQ)の再送信とエラー訂正プロトコルとを実行する、ベースステーション。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
当該ベースステーションが、過剰なチャンネル遅延を要因とする、前記ターミナルステーションにおいて送信失敗に至ることを回避する、ベースステーション。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
当該ベースステーションが、eNodeBを含み、前記ターミナルステーションが、ユーザー機器である、ベースステーション。
【請求項11】
請求項10において、
前記ユーザー機器が、移動装置である、ベースステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の説明)
本願は、2018年11月9日に出願された米国仮特許出願No.62/758,217および2019年4月9日に出願された米国特許出願16/379,399の利益を主張し、前記仮出願および米国特許出願の全ての内容は本明細書において参照により組み込まれる。
【0002】
(発明分野)
本発明は、遅延に寛容な(耐性のある)eNodeB(evolved Node B)、すなわち、LTE(Long−Term Evolution、ロングタームエボリューション、長期進化型)ノード、例えば、ベースステーション(基地局)の設計および実装に関するものである。
【背景技術】
【0003】
スマートフォンなどの無線端末は、無線アクセスネットワーク(Radio Access Network(RAN))を通じて基地局と接続する。RAN技術はいくつかの世代を経て進化し、それぞれの技術は大まかにその世代番号によって参照される。例えば、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communication)技術は2G(第2世代)のRANであり、UMTS(Universal Mobile Telecommunication System)は3G(第3世代)のRANであり、LTE−A(Long−Term Evolution Advanced)は4G(第4世代)であり、5GNR(New Radio)は5G(第5世代)のRANである。LTE−Aは、E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)と呼ばれることもあるが、本稿においては単に「LTE」として参照する。
【0004】
それぞれの世代のRAN技術は、端末(ターミナルステーション、Terminal station)と、基地局(ベースステーション、Base station)との間を行き来する情報の伝達のために用いられる通信プロトコルの一式を定義する。これらのプロトコルの鍵となる機能は、端末と基地局の両方におけるネットワーク階層(スタック)に一般的に展開される。LTEを例とすると、一番下の階層は物理(PHY)層である。物理層は、送信チャンネルからの全ての情報を、エアーインターフェース(無線インターフェース)を介して伝送する。物理層の上は、媒体アクセス制御(Medium Access Control(MAC、マック))層である。MAC層は、データ多重化、スケジューリング、エラー訂正そして再送(Retransmission)を行う。スケジューラは、基地局におけるMAC層の鍵となる構成要素であり、異なる端末へ、そして異なる端末から、いつ、どのように情報が伝達されるかの管理を主に行う。MAC層の上は、無線リンク制御(Radio Link Congrol(RLC))層である。RLC層は、データパケットの連結(concatenation)、セグメント化(セグメンテーション)、再構築を主に行い、それらとともに、再配列、重複検出、再送を行う。RLC層の上は、パケットデータ収束プロトコル(Packet Data Convergence Protocal(PDCP))層である。PDCP層は、トラフィック(通信、通話)の暗号化、非暗号化、完全性保護(integrity protection)、および検証を主に行い、それらとともに、上位層へ、順序通りにパケットを配送する。無線リソース制御(Radio Resource Control(RRC))層は、PDCP層の上にあり、システム情報配信と、端末と基地局間の無線接続の確立、メンテナンスおよび解除とを含む信号制御を主に行う。RRC層に並んでインターネットプロトコル(Internet Protocol(IP))層があり、インターネットのデータ通信(データトラフィック)をデータグラム(datagrams)として中継する。無線端末には、非アクセス階級(Non−Access Stratum(NAS))層もRRC層の上にあり、端末とコアネットワーク間の接続を管理し、認証および認可機能を実行する。
【0005】
LTEネットワークでは、基地局(ベースステーション)は、進化したノードB(evolved Node B、eNodeBまたはeNB)として参照され、端末(ターミナルステーション)はユーザー機器(User Equipment(UE))として参照される。
【0006】
図1(a)および図1(b)に示されている様に、通常のLTEネットワークでは、eNodeBとUEとの間の距離に最大値があり、それは約100キロメートル(km)である。この条件下では、標準LTEは、eNodeBとUE(即ち移動携帯端末、ここでは特にLTE携帯端末)との往復時間(ラウンドトリップ時間、Round−Trip Time(RTT))により設計されており、それは、0.66ミリ秒以下である。図1(b)は、スケジューラ(図1(b))を含むプロトコル・スタックを有する基地局と、MAC層を有する端末を示す。
【0007】
eNodeBとUEとの間の距離が100km以上のときにLTE技術が使用されると、RTTまたはラウンドトリップの遅れは、0.66ミリ秒を顕著に超えるかもしれない。距離6000kmのシステムにとっては、図1(a)に例示したように、往復による遅れは最大40ミリ秒(ms)になり、LTE技術で想定されている最大の遅れの50倍以上となる。このeNodeBとUEとの間の一方の側でも、この付加された遅延を認識しないという制約は、通信の崩壊をもたらす。
【0008】
この通信崩壊に対する最初の技術的課題としては、ハイブリッド自動再送要求(Hybrid Automatic Repeat reQuest(HARQ))、ランダムアクセス手順(Random Access Procedure)、アップリンクタイム同期(Uplink Time Synchroization)、そしてハンドオーバー手順(Handover Procedure)が挙げられる。HARQは、図1(b)のLTEプロトコル・スタックにあるMAC(Medium Access Control)層で使用される。ファルーク・カーン(Farooq Khan)の「LTE for 4G Mobile Broadband: Air Interface Technologies and Performance」(CambridgUEniversity Press 2009)を参照できる。HARQは、送信者と受信者との間のメッセージの(非承認)/承認に利用される、再送とエラー訂正のプロトコルである。それはパケット送信の失敗の検出と修正との両方に利用される。送信者は、規定の時間(期間、時限、time period)で、送信したメッセージのコピーを、送信者が送信成功または失敗が確定するまで、またはタイムアウトするまで確保しておくというものである。LTEでは、受領確認(アクノリッジメント、acknowledgement)が予想されている時間(区切られた時間)は4ミリ秒である。この時間制限により、往復時間(RTT)が4ミリ秒以上であることが想定される場合においては、接続は不可能であり、LTEシステムにとって明らかなる課題である。
【0009】
LTEでは、ランダムアクセス手順は、UEが物理ランダムアクセスチャンネル(Physucal Random Access CHannel(PRACH))メッセージをeNodeBに送信することから開始される。ランダムアクセス手順は、UEがネットワークと無線接続するたびに使用される。LTEネットワークでは、データが送信されないと無線接続は切れ、データの送信が可能になると無線接続が再び生成される。このため、単一のデータ・セッションの間においても、ランダムアクセス手順は非常に頻繁に使用される。ランダムアクセス手順は、アタッチ手順(参加手順、帰属手順、Attach Procedure)の最初のステップでもある。アタッチ手順は、電源がオンされるのに続いて、または、ネットワーク・カバレッジ(ネットワークの利用可能範囲)に入るときに、UEがネットワークに最初に接続する際に使用される。このメッセージが受信されると、eNodeBは、規定の時間だけランダムアクセス応答メッセージに応答する。この時間(期間)は可変であるが、最大許容時間は10ミリ秒であり、それは例えば上記で概説した40ミリ秒の例よりも短く、したがって、この接続は不可能であろう。
【0010】
アップリンクタイム同期化(Uplink Time Synchonization)に関して、LTEシステムにおいては、UEがeNodeBに接続すると、eNodeBは、ランダムアクセス応答(Random Access Response(RAR))メッセージを使用して、UEに送信タイミングを調整するように指示する。これは、全てのUEからの送信がeNodeBにおいて同期して受信されることを保証するために行われる。しかしながら、このアプローチは、RTTが最大許容可能な10ミリ秒の応答時間を超える上記の例では使用できない。このケースでは、RARメッセージを送信すべきときの前に、このタイミングオフセットがeNodeBで判明することは不可能であり、eNodeBは、UEに送信タイミングを調整するよう指示することはできず、接続は不可能である。
【0011】
ハンドオーバー手順においても、UEがPRACHメッセージを送信し、eNodeBがランダムアクセス応答で応答するランダムアクセス手順と同様の問題がある。ハンドオーバー手順は、UEが1つのeNodeBがカバーするエリアから、別のeNodeBがカバーするエリアに移動する際に起こり、最初のeNodeBとの接続を切り、2番目のeNodeBとの接続を行う。RTTが、ランダムアクセス応答における最大10ミリ秒の遅れを超える場合は、接続は不可能であり、通話は、ハンドオーバーの間に途絶する。通常のランダムアクセス手順とハンドオーバー手順との違いは、UEが既にeNodeBから認知されており、問題解決のために代替のアプローチを活用し得るか否かである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の1つは、HARQ、ランダムアクセス手順、およびアップリンク同期の間、信頼できる接続を確保し、また、ハンドオーバー手順の間に通話が途絶することを防ぐことができるシステムを提供することである。
【0013】
基地局と端末との距離が100キkm以上あるような、さらに、基地局か端末のどちらかが相対的に高速で移動しているようなネットワークにLTE技術が使用されると、ドップラー効果による周波数変動および時間の遅れの変動を補正するために追加の技術が要求される。例えば、基地局か端末のどちらかが低軌道上にあり、他方が地表にある場合である。こうした状況に対し、追加される技術は米国特許9,973,266B1で記述されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、衛星市場でも使用可能な、長期進化型(ロングタームエボリューション(Long−Term Evolution(LTE))すなわち、E−UTRAN・Node・B(eNodeB)を提供する。利用者端末(UE)(例えば移動型のハンドセット(携帯端末))の改変を必要とせず、UEのバージョンまたはネットワークオペレータ(ネットワーク運用会社)により用いられている技術とは独立して、本LTE・eNodeBは、非常に長いチャンネルの待ち時間(チャンネルレイテンシ)を可能とする。本発明は、LTEにおける高い(大きな)チャンネルレイテンシを支援するが、GSM(登録商標)、5Gニューレイディオ(New Radio(NR))、または、LTEに使用されているのと類似の手続を有するその他の無線通信技術にも使用することが可能である。
【0015】
本発明のこれらの目的やその他の目的、及びそこからの多くの意図された利点は、付随の図面と合わせて以下の記述を参照することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、LTEネットワークにおける遅延を示す。
【0017】
図1(b)は、例えばMAC層とスケジューラといったプロトコルの層を示す。
【0018】
図2図2(a)は、従来の通常のHARQ操作(オペレーション)を示す。
【0019】
図2(b)は、従来の高RTTによるHARQオペレーションの失敗を示す。
【0020】
図2(c)は、ダミーACKによるHARQオペレーションの成功を示す。
【0021】
図3図3(a)は、従来の顕著な遅れの無い通常のランダムアクセス手順を示す。
【0022】
図3(b)は、従来の40ミリ秒のラウンドトリップ時間の遅れとRA手順の失敗を示す。
【0023】
図3(c)は、連続的に送信されたRARメッセージによる、本発明のRA手順を示す。
【0024】
図4図4(a)は、従来のRARを使用した、通常のタイミングアドバンスオペレーションを示す。
【0025】
図4(b)は、高RTTのためにタイミングアドバンスオペレーションが不可になった様子を示す。
【0026】
図4(c)は、MAC制御要素(CE)を使用した本発明のタイミングを示す。
【0027】
図5図5(a)は、従来の非衝突型の通常のハンドオーバー手順を示す。
【0028】
図5(b)は、従来の遅れを付加した通常のハンドオーバー手順を示す。
【0029】
図5(c)は、本発明の、遅延を付加したハンドオーバー手順を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面を参照して本発明の実例となる非限定的な実施例を記述するに際し、特定の用語が、明確に説明するために用いられる。しかしながら、本発明は、選択された特定の用語に限定されることを意図したものではなく、そして、それぞれの特定の用語は、類似の方法で類似の目的を達成する全ての技術的な同等物を含むことと理解されるべきである。本発明のいくつかの実施例は、説明を目的として記述されたものであり、本発明は、これらの図面で特に示されていない他の形態で具現化されることがありうることを理解されるべきである。
【0031】
本発明においては、UE(端末、ユーザー機器、ターミナルステーション)と通信する、信号の遅延に寛容な(遅延に対して耐性のある)基地局(ベースステーション)を含むシステムが提供される。1つの実施例では、本システムはLTEシステムであり、基地局は、eNodeB基地局であり(以下では、しばしば「eNodeB」とだけ参照される)、UEは、携帯電話、スマートフォンそしてUSBモデム端末(ドングル)などのLTE携帯端末(モバイルハンドセット)である。eNodeBは、他の処理とともに、eNodeBの動作(操作)とUEに対し信号を送受信する通信とを制御するプロセッシング装置(処理装置)を含む。
HARQ(図2
【0032】
上記に記されている様に、ハイブリッド自動再送要求(HARQ)は、再送及びエラー訂正のプロトコルである。通常のHARQオペレーションは、例えば、図2(a)に示されるように、通常に予想される通信遅延が存在する。まず、T=1で、UEはeNodeBにデータシグナル(データ信号)を送信し、T=2で、eNodeBはデータシグナルを受信する。T=3において、eNodeBはUEに受領メッセージ(受信確認メッセージ、ACK)シグナルを送信し、T=4において、UEはそのACKを受信する。UEは、ACKシグナルをeNodeBより受信することを予定しており、それにより、UEはデータシグナルのeNodeBへの送信が成功し、eNodeBに受信されたことが判明する。UEは、予定された想定時間内に、そのACKを受信することを予定している。LTEシステムにとって、予定された想定時間(想定期間、想定された時間の区切り)は4ミリ秒であり、その4ミリ秒には、データシグナルがUEからeNodeBに送信されるために予定される最大0.66ミリ秒と、T=2において、eNodeBがデータシグナルを処理し、T=3において、ACKを送信する時間、そして、ACKがeNodeBからUEに送信されるための想定時間0.66ミリ秒を含む。T=4が、想定時間内ならば、システムは中断無しに稼働し、UEはeNodeBにデータシグナルの送信を継続することができ、図示されている様にT=5からT=8の間において、データシグナルを受信したことは、その都度、ACKシグナルをUEに送信することにより確認される。
【0033】
図2(b)は、UEとeNodeBとの間の通信に、過剰な遅延(遅延超過、例えば0.66ミリ秒以上のRTT)があると、HARQにより、どのように通信の問題が生ずるかを示している。ここでは、T=1において、UEはデータシグナルを発信するが、本シグナルは遅延し、eNodeBは、T=3まで、そのデータシグナルを受信しない。一方、UEは、eNodeBからのACKを、T=2において、受信することを予定しており、そのタイミングは、eNodeBが、T=3において、本データシグナルを受信する前である可能性がある。この場合、UEは、予定された想定時間内に、ACKを受信しなかったので、通信は失敗する。T=2において、UEがACKを受信しないと、UEはそのデータを再送しようと試みる。UEが数回の再送を試みた後、ACKを依然として受信しない場合、UEは無線リンク障害(Radio Link Failure(RLF))を送信し、接続の再確立を試みる。
【0034】
図2(c)は、本発明の一つの実施例に従って、HARQのタイミングの要求に対しての解決策を示す。ここで、本eNodeBは、どちらかの方向に、全てのパケットの事前受信確認(事前受領、プレアクノレッジ)を行う。ダウンリンク(下り接続)では、eNodeBは、パケットが受信されたものと想定し、UEから、肯定的な受領確認メッセージが受信されたかのように振舞う。UEからeNodeBへのアップリンク(上り接続)では、eNodeBは、自動的にスケジュールされている全てのUEのメッセージに対し、それらを実際に受信完了していなくても、受領確認する。UEにより送信される全てのメッセージは、eNodeBにより与えられる許可(承認、grant)の結果により送信されるので、UEのメッセージは、スケジューラ(図1(b))により計画され、または事前に予定が立てられており、そのことは、eNodeBにおいては、UEにより送信される全てのメッセージの時間(時点、time)が判明していることを意味する。この事実に基づけば、eNodeBは、UEが予定しているスロット、例えば、UEがメッセージを送信した後、4ミリ秒後に、制御チャンネルにおいてメッセージの受領を予定しているときに、ACKが到着するように、受領を送信する時間を決めることができる。
【0035】
図2(c)を参照すると、この例では、T=1において、eNodeBは、UEに、肯定的な受領確認メッセージ(ACK)を送信する。eNodeBがUEから何らかのデータシグナルを受信する前に、そして恐らくUEが何らかのデータシグナルを発信する前に、そのACKは送信される。T=2において、UEはデータシグナルを送信し、T=3において、UEはeNodeBからACKを受信する。T=4において、予定されていた想定時間(想定期間)より大きい相当な遅れの後に、eNodeBは、UEからデータシグナルを受信する。T=2において、UEがデータシグナルを送信したときから大きな遅れがあり、eNodeBでは、T=4において、それが受信されたとしても、UEでは、ACKを(T=3において)、予定された想定時間内に受信する。そして、eNodeBは、既にデータシグナル受信確認のACKを送信しているので、T=4では、実際のACKを送信する必要が無く、サイクルは完了する。
【0036】
このように、本発明のHARQプロトコルは、UEとeNodeBとの間の通信における遅延時間が大きい場合であっても、それがUEからeNodeBへの通信の際の遅れか、eNodeBからUEへの通信の際の遅れかに関わらず、動作する。さらに、HARQプロトコルは、遅延時間が過剰でない通常時において動作する。そして、このプロトコルは、eNodeBに、全て実装されている。UEは、通常通りに動作すればよく、UEに変更の必要はない。
【0037】
なお、LTEシステムは、マスタースレーブシステム(主従システム)であり、UEは、eNodeBが、許可を与えたときのみにデータを送信する。したがって、eNodeBでは、何時、どのUEがデータを送信することになるかが判明している。この情報を基に、eNodeBはACKメッセージを送信することが可能であり、そのeNodeBは、1つのACKメッセージを送信する必要があるのみである。そのACKメッセージは、それが参照するデータを明示的に示す必要はない。LTEは、ACKが、データ送信後4ミリ秒に受信されるべきであると規定しており、そのため、全てのACKは特定のデータ送信にリンクされる。
【0038】
なお、いくつかのメッセージは、eNodeBに順調に受信されないかもしれないが、eNodeBにより、そのまま肯定的に受信確認され、UEにより受信されるであろう。ここで、LTE標準は、2つの受信確認/繰り返しのメカニズムを含むことに更に留意すべきである。HARQメカニズムは、高速の再送(fast−retransmission)メカニズムを提供する。分離された、より高い層の、無線リンク制御(Radio Link Control(RLC))(図1(b)に示される基地局のRLCからの)は、2番目の、より低速の再送メカニズムを提供する。HARQ過程(プロセス)において、順調に受信されなかったメッセージに対し、より高い無線リンク制御(higher Radio Link Control(RLC))層の再送メカニズムは、残された全てのエラー、または失敗した送信を修復する。HARQにおいてメッセージの受信が失敗したケースにおいては、受信側は、続けて、次のパケットを処理する。RLC層においては(図1(b))に示されるRLCからの)、ARQメカニズムが、ここで、連続した中で欠けているパケットに気づき、送信者に非受領確認メッセージ(Non−Acknowledgement(NACK))を送信する。このメッセージは、送信側で、ACK/NACKに備えてメッセージが蓄積されているRLC層に送られる。UEにおいて、NACKが受信されると、そのUEは、そのメッセージを再送する。この手順は、双方向で繰り返される。
ランダムアクセス手順(図3
【0039】
図3(a)には、過剰な通信遅延の無い、通常オペレーション時のランダムアクセス(Random Access(RA))手順が図示されている。T=1において、UEは、eNodeBに、物理ランダムアクセスチャンネル(Physical Random Access CHannel(PRACH))メッセージを送信する。PRACHメッセージは、UEがPRACHチャンネルを通じて通信するために送付され、eNodeBに対する最初のPRACHメッセージであり、UEがeNodeBと同期するためのものである。eNodeBは、UEに、その間に、PRACHメッセージを送信することができる特定の時間帯(タイムスロット)を割り当てる(即ちPRACHウィンドウ)。ここで、eNodeBは、図示されている様に、予定されたPRACHウィンドウの中で、T=2において、PRACHメッセージを受信する。
【0040】
PRACHメッセージの受信に応じて、eNodeBは、T=3において、ランダムアクセス応答(Random Access Response(RAR))を送信する。このRARは、UE側では、異なる特定の時間帯(即ちRARウィンドウ)で予定され、それは調整(構成)可能であるが最大許容時間は10ミリ秒である。T=4において、UEは、予定されたRARウィンドウの間に、PRACHメッセージを受信する。したがって、ランダムアクセス手順は成功し、このUEは、T=5において、Msg3−RRC−接続要請の送信に進むことができ、それはeNodeBにより、T=6において、設定されたMsg3の時間帯の間に受信され、基地局において接続が確立される(即ち、RRCにより、RRC接続要請が実行される(図1(b))。なお、ランダムアクセス手順の前は、UEはeNodeBと同期されておらず、そのためウィンドウが使用され、UEは、メッセージがウィンドウ内において受信されるように送信を試みる。ランダムアクセス手順の後に、UEは同期され、全てのメッセージは特定の時間に受信されるようになる。
【0041】
図3(b)には、RA手順が失敗している様子が示されており、UEにおけるT=1から、eNodeBにおけるT=2まで、および、eNodeBにおけるT=3から、UEにおけるT=4へのランダムアクセス応答(RAR)の送信において、PRACH送信のラウンドトリップ時間(Round−Trip Time(RTT))に過剰な遅れが見られる。ここで、遅延は、40ミリ秒(PRACHの受信に20ミリ秒、そして、eNodeBがRARを生成させ、そのRARがUEに受信されるまでに20ミリ秒)である。その結果、UE側では、RARは、RARウィンドウの間に受信されず、その代わり、より遅れた、T=4において受信され、そのため、Msg3はUEにより決して送信されない。即ち、ラウンドトリップ時間(RTT)が大きいために、UEにより発信されたPRACHメッセージは、eNodeBにおいて、予定された時間帯(時間枠、PRACHウィンドウ)に受信されず、eNodeBは、要求された10ミリ秒の期限内(RARウィンドウ)にRARメッセージに応答できない。大幅な遅延がチャンネルに導入される場合、RARはRARウィンドウを逃し、ランダムアクセス手順はこの時点で失敗し、UEはeNodeBとの接続に失敗する。
【0042】
図3(c)は、本発明の一実施例に従ったランダムアクセス手順を示す。アタッチ手順は、典型的には、UEが、衝突型(衝突に基づく、contention-based)PRACHメッセージをeNodeBに送信することに伴い、開始される。このランダムアクセス(RA)ステップは、アタッチ手順の最初の部分である。eNodeBは、UEにより送信されるPRACHメッセージが、PRACHウィンドウ内で受信されることを確保する。これは、既知の送信遅延に対応するために、PRACHウィンドウを注意深くスケジューリングすることにより達成される。即ち、eNodeBのスケジューラ(図1(b))は、送信が始まる前に、PRACHウィンドウのスケジューリング(即ち、事前スケジューリング)を行う。したがって、本発明では、eNodeBが、予定される通信遅延を認識していることが必要であり、それは既知の値に固定されていてもよい。
【0043】
さらに、eNodeBは、連続してランダムアクセス応答(RAR)メッセージをUEに送信する。例えば、ある実施例では、eNodeBは、RAR応答メッセージを、全ての機会において、積極的に送信する。eNodeBは、全てのフレームで、可能な全てのプリアンブルインデックス用のRARを送信する。これは、あるUEが、あるeNodeBに、あるPRACHメッセージを送信すると、そのUEは、10ミリ秒の期限内に、これらのRARメッセージの1つを受信することが保証されることを意味し、そのUEは、通常通りランダムアクセス手順を継続することが可能となる。
【0044】
したがって、図3(c)を参照すると、eNodeBのスケジューラは、事前に決められた様々な間隔でPRACHウィンドウを計画し(即ち、RAR送信の前にウィンドウは事前に計画されており)、T=1において、eNodeBは、UEにRARを送信する。eNodeBは、UEを認知していなくても、eNodeBは、RARメッセージを、割り当てられた時間帯の全てにおいて、無差別に、単純に送信する。このため、UEが取得しようとすれば、UEがRARを受信することは保証される。T=2において、UEは、PRACHを生成し、それをeNodeBに送信する。T=3において、UEはRARをeNodeBから受信するが、eNodeBはPRACHメッセージを未だ受信しておらず、eNodeBがそれを受信するのはT=4である。
【0045】
次に、T=5において、UEは、Msg3を送信することができるが、それは、T=6において、eNodeBがRARを送信する前に起こり得る。PRACHウィンドウは、eNodeBにおいて、事前に決められた間隔で、規則的に割り当てられる。eNodeBにより、PRACHを受信する特定の時間内に、RARメッセージは送信される。UEからPRACH送信を受信すると、そのeNodeBのスケジューラ(図1(b))は、そのUEからのMsg3送信を受信するための時間帯(タイムスロット)を計画(設定)する。このため、eNodeBでは、T=7において、Msg3の受信に成功し、それが、T=8において、RARが受信されることより前に起こり得る。しかしながら、この時点では、UEは、RARを取得しようとしてはおらず、そのため、UEは何らの行動も起こさない。eNodeBは、T=6を含め、RARメッセージを、全ての機会に、T=1において既にそれを送信していたとしても、無差別に送信する。この時点で、RARを取得中のUEがあるか否かには関わらない。
【0046】
このように、本発明のランダムアクセス手順プロトコルは、UEとeNodeBとの間の通信の遅延時間が過剰(過度、制限以上)な場合でも動作し、その遅延がUEからeNodeBに向けての送信の間か、eNodeBからUEに向けての通信の間か否かには関係ない。さらに、このランダムアクセス手順は、過度な遅延時間が無い通常状態(条件)においても動作する。そして、このプロトコルは、完全にeNodeBに実装される。UEは、通常通りに動作すればよく、UEに変更は必要ない。
【0047】
LTEで使用される、衝突型のランダムアクセスは、UEが、N個のPRACHメッセージの内の1つを、eNodeBに送信するメッセージとして選択できる、ということを意味する。eNodeBは、受信したPRACHメッセージに対応する要素(ランダムアクセスプリアンブル識別子、Ranom Access Preamble IDentifier(RAPID))を含むRARメッセージを送信しなくてはならない。RARメッセージは、複数のRAPIDを含むことができる。
【0048】
eNodeBは、LTE標準の規定にしたがってPRACHウィンドウを発生させるタイミングを決定する。複数のRARは、それぞれのPRACHウィンドウに続いて送信される。
【0049】
本発明にとって、もしN個のプリアンブルが、衝突型のランダムアクセスのために構成されるなら、eNodeBは、それぞれのPRACHの機会に関連する、それぞれのウィンドウ内において、1つのRARメッセージを送信する。個々のメッセージは、N個のRAPIDを含み、1つのメッセージで、それぞれ可能な(全ての可能な)PRACHメッセージ(0からN−1)に該当する。
アップリンクタイム同期(図4
【0050】
アップリンク(即ち、UEからeNodeBへの送信)の時間の同期に関する課題は、ランダムアクセス手順の先の課題とその解決策が適用できるので、部分的なものである。eNodeBは、UEからのPRACHメッセージを実際に受信しなくても、RARメッセージを連続的に、主導的に送信するので、UEのタイミングオフセット(タイミングの差)が判明していなくてもRARを送信する。図4(a)を参照すると、通信遅延が予定内にある通常のシステムでは、PRACHは、T=1において送信され、T=2において受信される。eNodeBは、規定されたPRACHウィンドウ内でPRACHを受信する。そのウィンドウ内でのPRACHの位置は、eNodeBがUEのタイムオフセットを推定するために使用される。T=3において、eNodeBは、UEに対しタイミングを訂正させる指示を含むRARメッセージを送信する。UEは、T=4において、タイミング訂正を含むRARメッセージを受信する。したがって、T=5において、UEがMsg3を送信するときに、UEはそのシグナルのタイミングを修正し、そのため、T=6において、eNodeBにより受信されるときは、Msg3はタイミングオフセットを含まない。
【0051】
しかしながら、最近の発明によるランダムアクセス手順の下では、図4(b)(図3(c)と同様であるが)に示されている様に、eNodeBにおいて、UEにタイミングの訂正を送信する機会はない。T=1において、RARが送信されるが、それは、T=5において、UEからのPRACHを受信する前であり、そのRARはタイミングの訂正を含むことができない。この様に、RAR内で、eNodeBからUEに与えられるタイミングアドバンス(タイミングを早める、TA)値は、T=1においては0であり、T=4において、UEにより送信される次のアップリンクメッセージは、時間は調整されない。
【0052】
PRACHメッセージを受信することにより、参加(アタッチ、attach)を試みている、あるUEが存在することを、eNodeBは、初めて認識する。このメッセージから、eNodeBは、そのUEのタイミングオフセットを決定できる。我々のケースでは、RARメッセージは、この時点までに、すでに送信され受信されており、eNodeBは、Msg3としても知られているRRC接続要請の受信を準備する。しかしながら、このMsg3は、時間は調整されていない。
【0053】
これを考慮すると、eNodeBは、最大のタイミングオフセットを許容するスペース(時間)を確保し、UEにおいてタイミングが訂正されるまで、入ってくるメッセージのタイミングを補償しなくてはならない。このように、UEにおいて最初のRARメッセージを用いることなく、タイミングを訂正する方法が与えられる。より具体的には、eNodeBは、アタッチ手順(参加手順)を実行している、時間が調整されていないUEからの予定のMsg3との干渉を避けるように、他のUEの送信を注意深くスケジュールする。LTEはマスター/スレーブシステムであり、eNodeBはネットワークを通じて全てを制御する。したがって、この時点で、このUEからのMsg3と干渉するような、他のUEの通信を回避できる。T=6において、Msg3がeNodeBにより受信されるまでに、eNodeBは、PRACHメッセージを受信しており、そのUEのタイミングオフセットを計算することができる。タイミングオフセットの情報に基づき、eNodeBは、Msg3を含むウィンドウを受信し、そのウィンドウ内の正しいオフセットでMsg3を抽出することができる。
【0054】
Msg3のタイミング訂正方法は、eNodeBにおいて、UEのタイミングオフセットを訂正する有効な一時的な解決法になる。しかしながら、それは継続的に使用されることはできないので、UEにタイミングを調整するように指示する方法が必要になる。LTE標準内には、eNodeBがUEに指示する他の2つのメカニズムが存在する。その1つは、図4(c)に示されている様に、タイミングアドバンスコマンド(タイミングを進めるコマンド)であり、MAC層の制御要素(図1(b))である。次のメカニズムは、物理ダウンリンク制御チャンネル(Physical Downlink Control CHannel(PDCCH))命令であり、特定分野でのDCI−Format−1Aである。このメッセージは、UEに、別のPRACHメッセージを送信し、RARメッセージを受信できるようにすることを指示する。RARメッセージは、TAオフセットを含む送信のタイミングを調整するようにUEに指示を出すために用いられる。最初のメカニズムは、eNodeBより、UEに対し、小さいタイムオフセット(15マイクロ秒未満)の調整を指示するために使用できる。次のメカニズムは、eNodeBより、UEに、大きいタイムオフセットの調整を指示するために使用できる。調整すべきタイミングオフセットのサイズに応じて、eNodeBは、これらの二つのメカニズムの内の1つを動的に選択する。
【0055】
このように、本発明のアップリンクタイム同期プロトコルは、UEとeNodeBとの間の通信に過剰な(過度の、制限を超えた)遅延時間があっても動作し、その遅延が、UEからeNodeBへの送信の間に生じているか、または、eNodeBからUEへの送信の間に生じているかに関わらない。さらに、このプロトコル(手順)は、過剰な遅延がない、通常時においても動作する。そして、このプロトコルは、eNodeBに完全に実装される。UEは、通常状態で操作でき、UEに変更は必要ない。
ハンドオーバー手順(図5
【0056】
ハンドオーバーにおける課題は、ランダムアクセス手順のそれと類似しており、ハンドオーバーではPRACHメッセージがUEにより送信され、ランダムアクセス応答(RAR)がeNodeBにより送信される。通常のランダムアクセス手順は、UEがeNodeBに、PRACHを送信することにより開始される。しかしながら、あるeNodeBが、あるUEに、新しいランダムアクセス手順を開始させることも可能である。そのeNodeBは、そのUEに、物理ダウンリンク制御チャンネル(Physical Downlink Control CHannel(PDCCH))要求を送信することにより、これを行うことができる。これは、非衝突型(衝突のない、contention-free、競合なし)ランダムアクセス手順であり、eNodeBは、UEに、特定のPRACHプリアンブル識別子(PRACH予告識別子)を使用する様に指示する。
【0057】
図5(a)を参照すると、非衝突型ランダムアクセス手順の、通常のハンドオーバーでは、手順は、T=1において、eNodeBが、UEにより使用されるPRACHプリアンブル識別子を特定するPDCCH要求を使用することにより開始される。T=2において、PDCCH要求は、UEに受信される。T=3において、UEは、eNodeBに、PRACHを送信する。このPRACHは、PDCCH命令で特定されるプリアンブル識別子を使用する。PRACHは、T=4において、eNodeBに受信される。T=5において、eNodeBは、ランダムアクセス応答(RAR)を送信し、UEにより、T=6において、受信される。
【0058】
図5(b)に示されている様に、遅延が大きい場合、eNodeBは、PDCCH要求を、T=1において送信し、T=2において、UEにより受信される。UEは、T=3において、PRACHを送信し、それはT=4において、eNodeBにより受信されるかもしれない。eNodeBが、PRACHを受信すると、eNodeBは、RARメッセージにより応答する。この手順は、過剰な遅延により失敗する。PRACHが、PRACHウィンドウの間に到着せず、eNodeBが受信に失敗するか、eNodeBにより送信されたRARが、UEにおいてRARウィンドウよりも大幅に遅延して到着し、UEが受信に失敗するかのいずれかである。この失敗は、上述されたランダムアクセス手順の場合と同様である。
【0059】
図5(c)は、本発明の一実施例によるハンドオーバー手順を示す。ここでは、先出(先行、先制、preemptive)のRARによる非衝突型のハンドオーバーが用いられる。eNodeBは、T=1において、本手順の間にUEにより使用されるPRACHプリアンブル識別子を特定するPDCCH命令を送信する。次に、eNodeBは、この特定のPRACHプリアンブル識別子用のRARメッセージを、T=3において送信する。このRARメッセージは、UEにより送信されたPRACHメッセージが、T=6において、実際に受信される前に、送信される。このようにして、RARメッセージは、UEにおいて、T=5に、RARウィンドウ内で到着する。UEはメッセージ受信に成功し、この手順は成功する。このように、本発明のハンドオーバー手順に係るプロトコルは、UEとeNodeBとの間の通信における遅延時間が過剰である場合でも動作し、その遅延が、UEからeNodeBへの送信の間に生じるか、または、eNodeBからEUへの送信の間に生じるかには関係がない。さらに、このプロトコルは、過剰な遅延時間がない、通常の条件でも動作する。また、このプロトコルは、eNodeBに、全て実装される。UEは、通常通り動作すればよく、UEに変更は必要ない。
総括
【0060】
このように、HARQに関しては、本発明は、事前の受領確認(プレアクノリッジメント)を提供することで、接続を可能とするが、スループット(処理能力)は低下する可能性がある。ランダムアクセス手順については、本発明は連続的なRARの送信を用い、接続を可能とする。アップリンクの時間同期(アップリンクタイム同期)については、Msg3のタイミング訂正、MAC・CEを使用したUEのタイミング修正、またはPDCCH命令(要求)が、接続を可能とする。ハンドオーバー手順については、改良されたランダムアクセス手順が提供され、非衝突型のアプローチを使用している。
【0061】
本発明のシステムと方法は、1または複数の処理装置(プロセッシングデバイス)またはプロセッシングコンポーネントによるオペレーション(操作、動作)を含み、これには、eNodeB(スケジューラを含む)および/またはUEにおけるオペレーションも含まれる。処理装置は、コンピュータ、サーバー、プロセッサー、マイクロプロセッサー等の適切なものならどのような装置でもあってもよい。この装置は、有線または無線接続により、情報やデータ、および/または、命令の受発信が可能である。情報はコンピュータのハード・ドライブ、CD−ROMディスク、または、その他の適切なデータ保管部品に蓄積されてもよく、それは処理装置とともに配置されてもよく、または処理装置と通信できるものであってもよい。全ての処理(プロセス)は、処理装置により自動的に処理され、人手の介入は不要である。したがって、指摘されない限り、これらの処理は、遅延なく、また人手による操作なしに、実質的にリアルタイムで行われる。
【0062】
本発明のシステムおよび方法は、コンピュータのソフトウェアまたはソフトウェアアプリケーションにより実装でき、それは、電子情報ソースからデータへのアクセスを可能とする。ソフトウェアおよび情報は、単一の、独立したプロセッシング装置の中で実現されてもよく、または、他のプロセッシング装置または、他の電子部品とグループとなるようにネットワーク化されていてもよい。ソフトウェアおよびソフトウェアアプリケーションは、コンテンツをともに格納できる、1つまたはそれ以上の、持続性のある物理的な媒体を含む、記録媒体に格納されていてもよい。実施例としては、不揮発性の二次記憶装置、読み出し専用メモリ(ROM)、および/または、ランダムアクセスメモリ(RAM)を含んでもよい。アプリケーションは、1つまたはそれ以上の計算モジュール、プログラム、プロセス、ワークロード、スレッド、および/または、コンピューティングシステムにより遂行されるコンピュータ用の命令の一式を含んでもよい。アプリケーションの実施例では、ソフトウェアモジュール、ソフトウェアオブジェクト、ソフトウェアインスタンス、および/または、他の形式の実行可能なコードを含んでもよい。
【0063】
図示または記述されない限り、接続および/または通信とは、他のコンポーネントに、向けて(直接的に、有線または無線で)、電子的に接続している1つのコンポーネントを参照する。したがって、UEは、eNodeBと直接的に通信する。しかしながら、通信は間接的であってもよく、ある種のアプリケーションにおいては好適である。
【0064】
本明細書において、本発明の範囲を説明するに際し、様々な通信およびタイミングを示しているが、それらは概要で、例示であり、限定するものではない。タイミングは、概要で、実質的なものを定義しているが、「実質的」および「約、大略」とは、プラス・マイナス15から20%を意味し、いくつかの実施例ではプラス・マイナス10%を、そして他の実施例ではプラス・マイナス5%を、そしてプラス・マイナス1から2%を意味する。さらに、本発明の幾つかの実施形態では、特定の寸法、大きさそして形が示されているかもしれないが、それらは単に本発明の範囲を説明する目的のためだけであり、それらに限定することを意味していない。このように、示されているもの以外の他の寸法、大きさ、および/または形であっても、本発明の精神と範囲から逸脱せずに利用可能である。
【0065】
ここで記述される本発明は、例えば、5G・NRネットワークのような、他のネットワークやシステムに応用可能である。5G・NRネットワークのケースでは、基地局は、gNodeB基地局(しばしば単にgNodeBと参照される)であり、UEは、携帯電話、スマートフォン、USBドングルのような、5G・NRの移動型のハンドセット(携帯端末)である。
【0066】
上記の数字や記述の中には、さまざまな時間(期間、時限、time periods)がT=1、2、3などとして一般的に定義されている。これらの実施例では、これらの時間は、具体的な時間の長さ(量)を示すものではなく、これらの時間は継続的な(順番に発生する、連続的な)時間であり、つまり、T=2は、T=1の後の、具体的な値ではない時間であり、T=3は、T=2の後の、具体的な値ではない時間である。しかしながら、それらの時間は、特定の(具体的な)時間であってもよいことは認識されるべきである。そして、これらの時間は、継続的でなくてもよいことも認識されるべきである。例えば、図3(c)では、T=2は、T=1の前に起こり、T=4は、T=3の前に起こることが可能である。すなわち、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0067】
上記の記述と図面は、本発明の原理を説明するだけの目的であることが考慮されるべきである。本発明は、様々な形や大きさで形成されてもよく、本発明が、これらの記述された実施例に限定される意図はない。本発明の多数の応用が、当業者においては自明であろう。したがって、開示された特定の例、または示され記述された構造およびオペレーションそのものに本発明が限定されるものではない。むしろ、全ての適切な改変および均等なものは、本発明の範囲として採用され、それらの範囲内に含まれる。
【0068】
上記には、衛星市場で使用されるロングタームエボリューション(LTE)E−UTRAN−NodeB(eNodeB)が開示されている。このLTE−eNodeBは、いずれのユーザー端末(UE)(例えば携帯端末)も改変せずに、UEのリリース年や、ネットワーク運用のための(運用会社の)技術とは独立して、膨大なチャンネルの待ち時間(レイテンシ)をサポートする。本システムは、LTEにおいて大きなチャンネル待ち時間をサポートするとともに、GSM(登録商標)、5G−New−Radio(NR)、またはLTEにおいて使用される類似の手順を有する他のテクノロジーなどの、他の無線技術にも使用可能である。
【0069】
上記には、第2のノードと通信するための第1のノードであって、第2のノードがデータを送信するための第1の時間(第1の期間、第1の時限、first time period)を確立(設定)し、第1の時間より前に開始される第2の時間(第2の期間、第2の時限、second time period)で前記データの受領確認シグナル(ACK)を第2のノードに送信するように構成された処理装置(processing device)を含む第1のノードを有するシステムが記載されている。第1のノードは典型的にはベースステーション(基地局)であり、第2のノードは典型的にはターミナルステーション(端末)である。
【0070】
また、上記には、ターミナルステーション(端末)と通信するためのベースステーション(基地局)であって、前記端末がデータを送信するための第1の時間(第1の時限、第1の期間)を確立(設定)し、前記第1の時間より前に開始される第2の時間(第2の時限、第2の期間)で前記データの受領確認シグナルを前記端末に送信するように構成された処理装置を有する基地局が開示されている。
【0071】
前記処理装置は、前記基地局と前記端末との間の通信遅延に基づき、前記第2の時間を決定するように構成されていてもよい。前記処理装置が、前記端末が前記受領確認シグナルを受信することを予定している所定の時間(第3の時間、第3の期間、第3の時限、third time period)に、前記受領確認シグナルが前記端末に到着するように、前記第2の時間を決定してもよい。基地局が、前記第3の時間の後の、第4の時間(第4の期間、第4の時限、fourth time period)で前記端末から前記データを受信してもよい。前記第1の時間から前記第4の時間までの時間(全時間、経過時間)が、通信遅延により、予定されている時間より大きくてもよい。前記第2の時間から前記第3の時間までの時間(全時間、経過時間)が、通信遅延により、予定されている時間より大きくてもよい。基地局(ベースステーション)はeNodeBを含んでもよい。また、上記の通信遅延は40ミリ秒より大きくてもよい。
【0072】
基地局は、ハイブリッド自動再送要求(HARQ)の再送信とエラー訂正プロトコルとを実行するステーションまたは処理装置を含んでいてもよい。当該基地局または処理装置は、過剰なチャンネル遅延を要因とする、前記端末における送信失敗の知覚を回避する、すなわち、端末における送信失敗をユーザーが認識することを回避するようにしてもよい。典型的には、基地局が、eNodeBを含み、端末が、ユーザー機器を含む。
【0073】
上記には、端末(ターミナルステーション)と通信するための基地局(ベースステーション)、および基地局を含むシステムが開示されている。基地局の処理装置が、前記端末が物理ランダムアクセスチャンネル(PRACH)メッセージを送信するための第1の時間を確立(設定)し、第2の時間でランダムアクセス応答(RAR)メッセージを前記端末に送信し、前記端末においてRARメッセージを受信するためのRARウィンドウを第3の時間の間、確立(設定)し、さらに、第4の時間の間、PRACHウィンドウの間で前記PRACHメッセージを受信するように処理を行い、処理装置は、そのような処理を行うように構成されている。この処理において、前記第2の時間は前記第4の時間の前に開始される。
【0074】
前記処理装置は、さらに、前記基地局と前記端末との間の通信の遅延に基づき、前記第2の時間を決定するように構成されてもよい。前記処理装置は、前記端末における前記RARウィンドウの間で、前記第3の時間の範囲内に、前記RARメッセージが前記端末に到来するように、前記第2の時間を決定してもよい。当該基地局が、前記第1の時間の後の、前記PRACHウィンドウの間に、前記第4の時間で、前記PRACHメッセージを前記端末から受信してもよい。前記第1の時間から前記第4の時間までの時間(全時間、経過時間)、前記第2の時間から前記第4の時間までの時間、前記第1の時間から前記第3の時間までの時間が、通信の遅れにより、予定より大きくてもよい。
【0075】
当該基地局が、eNodeBを含み、前記通信の遅れが40ミリ秒より大きくてもよい。当該基地局が、ハイブリッド自動再送要求(HARQ)の再送信およびエラー訂正のプロトコルを実行してもよい。当該記基地局が、過剰なチャンネルの遅延による、前記前記端末における送信失敗が知覚されることを回避してもよい。当該基地局が、eNodeBを含み、前記端末が、ユーザー機器であってもよい。例えば、前記ユーザー機器は、移動装置(携帯端末)であってもよい。
【0076】
前記処理装置が、さらに、前記携帯端末がMsg3通信を送信するための第5の時間(第5の期間、第5の時限、fifth time period)を確立(設定)するように構成されていてもよい。前記第5の時間は、前記第4の時間の後であってもよい。前記処理装置は、複数の前記第1の時間を確立(設定)するように構成され、前記端末は、前記PRACHメッセージを定期的に送信してもよい。前記処理装置は、さらに、前記端末において前記PRACHメッセージを送信するタイミングを調整する制御要素信号を生成するように構成されていてもよい。前記処理装置は、前記端末に、物理ダウンリンク制御チャンネル(PDCCH)要求を送信するように構成されていてもよい。前記処理装置は、前記端末が、当該基地局のカバーエリアから他の基地局の他のカバーエリアへ、または他の基地局の他のカバーエリアから当該基地局のカバーエリアへ、と移動する際に、引継ぎを実行するように構成されていてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5