特許第6945126号(P6945126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945126
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   G03G15/20 530
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-57562(P2018-57562)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-168627(P2019-168627A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2020年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069615
【弁理士】
【氏名又は名称】金倉 喬二
(72)【発明者】
【氏名】石黒 丈賢
【審査官】 堀川 あゆ美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−52080(JP,A)
【文献】 特開2008−40060(JP,A)
【文献】 特開2003−270997(JP,A)
【文献】 特開2017−116804(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0210378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に転写された現像剤と接触し、該現像剤を熱と圧力で媒体に定着させる回転可能な定着部材と、
前記定着部材と対向配置され、前記定着部材との間に接触部を形成し、前記接触部で媒体を前記定着部材に押圧する加圧部材と、
前記定着部材の回転方向における前記接触部の下流において前記定着部材の表面と当接し、前記定着部材から媒体を分離する分離片と、
を有し、
前記分離片は、前記定着部材の表面と当接する当接面を有し、
前記当接面は、尖度が3以上であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記分離片は、前記定着部材の表面と同種の材料で構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の定着装置において、
前記当接面は、切削加工が施されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の定着装置において、
前記当接面は、粒度500のサンドペーパーによる粗し加工が施されていることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の定着装置において、
前記当接面は、シボ加工された後、粒度500のサンドペーパーによる粗し加工が施されていることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の定着装置において、
前記当接面は、砂を研磨材としたサンドブラスト加工が施されていることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の定着装置において、
前記当接面は、梨地加工されていることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に転写された現像剤を定着させる定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置は、媒体に転写された現像剤を加熱する定着ローラを備えた定着装置(例えば、特許文献1参照)を有し、その定着ローラの表面に、媒体が貼りついて巻き付くことを防止するため、定着ローラの表面に接触する分離爪を設け、定着ローラを通過する媒体が定着ローラに巻き付くことを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−91217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、定着部材としての定着ローラの表面と、分離片としての分離爪とは接触しているため、印刷を行う場合の定着ローラの低速回転時に、定着ローラの表面と分離爪との間でスティックスリップが連続的に発生することにより、異音が発生してしまうという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、定着装置の異音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、媒体に転写された現像剤と接触し、該現像剤を熱と圧力で媒体に定着させる回転可能な定着部材と、前記定着部材と対向配置され、前記定着部材との間に接触部を形成し、前記接触部で媒体を前記定着部材に押圧する加圧部材と、前記定着部材の回転方向における前記接触部の下流において前記定着部材の表面と当接し、前記定着部材から媒体を分離する分離片と、を有し、前記分離片は、前記定着部材の表面と当接する当接面を有し、前記当接面は、尖度が3以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、定着装置の異音の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例における画像形成装置の概略側断面図
図2】実施例における定着器の斜視図
図3】実施例における定着器の断面図
図4】実施例における分離爪の斜視図
図5】実施例における分離爪の斜視図
図6】実施例における尖度の説明図
図7】実施例における分離爪の表面の加工方法と尖度の関係を示す説明図
図8】実施例における梨地加工による分離爪の斜視図
図9】実施例におけるシボ加工による分離爪の斜視図
図10】実施例における分離爪の表面形状と異音の関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明による定着装置および画像形成装置の実施例を説明する。
【実施例】
【0009】
図1は実施例における画像形成装置の概略側断面図である。
図1において、画像形成装置1は、例えば電子写真方式のプリンタであり、媒体に転写された現像剤を定着させる定着装置を有するものである。
【0010】
画像形成装置1は、給紙カセット2と、画像形成ユニット3と、転写ユニット4と、定着器5と、媒体堆積部6とを有している。
給紙カセット2は、媒体を積層して収容するものである。給紙カセット2に収容された媒体は給紙サブローラ12の回転により1枚ずつ分離されて送り出され、さらに給紙ローラ11により図中矢印Aが示す媒体搬送方向へ搬送され、レジスト部13へ搬送される。
【0011】
このレジスト部13は、媒体搬送方向における給紙ローラ11の下流に配置され、例えばレジストローラ対で構成されたものである。レジスト部13は、給紙ローラ11により搬送された媒体の先端の斜行を矯正し、転写ユニット4へ搬送する。
【0012】
画像形成ユニット3は、回転可能な像担持体としての感光ドラム31を備え、その感光ドラム31にLED(Light Emitting Diode)ヘッド31により画像データに応じて選択的に露光することで静電潜像を形成し、その静電潜像に現像剤としてのトナーを供給して可視像としてのトナー像を形成するものである。
【0013】
転写ユニット4は、転写ローラ41と、除電部42と、搬送部43とを有し、画像形成ユニット3と対向配置されたものである。
転写ローラ41は、画像形成ユニット3の感光ドラム31と対向配置され、レジスト部203から搬送された媒体を搬送するとともに、転写電圧が印加されることで媒体に、感光ドラム31に形成されたトナー像を転写するものである。転写ローラ41は、バネにより感光ドラム31に押圧され、感光ドラム31との間で媒体を挟持して搬送する。
【0014】
除電部42は、媒体搬送方向における転写ローラ41の下流に配置され、転写ローラ41を通過した媒体の非トナー像形成面側に帯電した電荷を除去するものである。
搬送部43は、媒体搬送方向における除電部42の下流に配置され、転写ローラ41を通過した媒体を定着器5へ案内する搬送ガイドである。
【0015】
定着装置としての定着器5は、媒体搬送方向における転写ユニット4の下流に配置され、媒体に転写されたトナー像を熱と圧力で定着させるものである。定着器5は、定着ローラ51と、加圧ローラ52と、分離爪53とを有している。
【0016】
定着部材としての定着ローラ51は、媒体に転写されたトナーと接触し、そのトナーを熱と圧力で媒体に定着させる回転可能なローラである。この定着ローラ51は、内部に熱源としてのハロゲンランプ等のヒータ511を備え、ヒータ511により加熱された表面で媒体に転写された未定着のトナーを溶融する。また、定着ローラ51は、定着器5のフレームに回転可能に支持されている。
【0017】
加圧部材としての加圧ローラ52は、定着ローラ51と対向配置され、定着ローラ51との間に接触部を形成し、その接触部で媒体を定着ローラ51に押圧するローラである。この加圧ローラ52は、バネによって得られた加圧力で定着ローラ51に押圧されている。また、加圧ローラ52は、定着器5のフレームに回転可能に支持され、定着ローラ51の回転に従動して回転することにより、溶融されたトナーを媒体に定着させるとともに、媒体を排出ローラ部14へ搬送する。
【0018】
定着ローラ51は、加圧ローラ52との間で媒体を挟持し、モータ等の駆動源により図中矢印が示す方向に回転することにより媒体を排出ローラ部14へ搬送する。
分離片としての分離爪53は、定着ローラ51の回転方向において、定着ローラ51と加圧ローラ52との接触部の下流において、先端部が定着ローラ51の外周面に接触するように配置されたものである。この分離爪53は、定着ローラ51により搬送される媒体を定着ローラ51の外周面から分離するものである。なお、分離爪53の詳細な構成は後述する。
媒体堆積部6は、排出ローラ部14で排出された媒体を堆積させるスタッカである。
【0019】
図2は実施例における定着器の斜視図、図3は実施例における定着器の断面図、図4および図5は実施例における分離爪の斜視図である。
【0020】
図3に示すように、定着器5は、定着ローラ51と、加圧ローラ52と、分離爪53とを有している。また、本実施例の定着器5は、図2に示すように、図中矢印Aが示す媒体搬送方向と直交する方向(定着ローラ51および加圧ローラ52の回転軸方向)に4つの分離爪53a、53b、53c、53dが配設されている。
【0021】
定着ローラ51は、断面がパイプ形状の芯金512を有している。この芯金512は、アルミニウムまたは鉄により構成されている。芯金512の内部には、熱源としてハロゲンランプ等のヒータ511が配設されている。
【0022】
芯金512の表面は、フッ素系のコート剤(例えば、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等)がコーティングされて離形層を形成している。これは、トナーが転写された媒体に、ヒータ511による熱と、定着ローラ51と加圧ローラ52による圧力とにより、トナーを定着させる際に、媒体が定着ローラ51の表面に貼り付かないようにするためである。
なお、本実施例では、芯金512の表面をPFAでコーティングし、定着ローラ51の表面の離形層を形成するようにしている。
【0023】
加圧ローラ52は、定着ローラ51と対向配置され、回転軸の両端部に配設されたバネにより定着ローラ51の表面に押圧され、定着ローラ51の回転に従動して回転することができるようになっている。
【0024】
分離爪53は、媒体搬送方向における定着ローラ51の下流側に、支持部(回転軸)531で回動可能に支持されている。また、分離爪53は、付勢部材としてのスプリング532で付勢され、図5に示す先端部533の一部である当接部としての当接面533aが定着ローラ51の表面に所定の圧力で当接するように配設されている。したがって、分離爪53の当接面533aは、回転可能な定着ローラ51の表面に常時接触している。
【0025】
分離爪53の当接面533aは、平面として形成され、また当接面533aが定着ローラ51の表面に接触している場合において、定着ローラ51の表面から離間している2つの傾斜面533bの間に挟まれるように形成され、定着ローラ51の表面との接触面積を減らすように形成されている。なお、傾斜面533bは、分離爪53の当接面533aの図5(a)に示す支持部531の軸方向(図3に示す定着ローラ51の回転軸方向)における両端部に連続するようにそれぞれ形成されている。
【0026】
また、分離爪53の先端部533の当接面533aの反対側には、媒体と接触する媒体接触部534が形成されている。
さらに、分離爪53は、摺動性および耐熱性に優れたPFA、即ち定着ローラ51と同じ種類の材料で構成されている。
【0027】
ここで、分離爪53を定着ローラ51の表面と同じ種類の材料であるPFAで構成する理由は、定着ローラ51の表面の離形層を、軟らかく、かつ離型性が高い材料であるPFAで形成しているため、定着ローラ51の表面と同様に、材料が軟らかく、かつ離型性が高い材料であるPFAとする必要があるからである。
【0028】
定着ローラ51の表面に接触して媒体を分離する分離爪53に、定着ローラ51の表面より相対的に硬い材料を採用した場合、コーティングされた定着ローラ51の表面を削ってしまう。
【0029】
この対策として分離爪53の定着ローラ51の表面への押圧力を低下させると、媒体の分離性が低下してしまう。また、定着ローラ51の軸方向における分離爪53の長さ(幅)を広げると、定着ローラ51の表面への押圧力を低下させることはできるが、媒体との接触面積が増加してしまい、分離爪53にトナー等の異物が付着して汚れが発生してしまう。
【0030】
したがって、分離爪53は、定着ローラ51の表面と同じ種類の材料であるPFAで構成するようにしている。
また、本実施例では、分離爪53の当接面533aの表面の粗さ形状が所定の尖度となるように形成されている。
【0031】
ここで、当接面533aの表面の尖度(Kurtosis)とは、「JIS B 0601:2013」で規定される尖度Rkuであり、当接面533aの表面の粗さ形状の特性を表す指標である。図6に示すように、尖度Rkuが大きければ鋭いピークと、長く太い裾を持った表面の粗さ形状となり、また尖度Rkuが小さければ丸みがかったピークと短く細い尾を持った表面の粗さ形状となる。
【0032】
本実施例では、分離爪53の当接面533aの表面の尖度が3以上となるように、当接面533aの表面の粗さ形状を形成するようにしている。
【0033】
上述した構成の作用について説明する。
まず、画像形成装置の動作の概要を図1に基づいて説明する。
給紙ローラ11および給紙サブローラ12により給紙カセット2から給紙された媒体は、レジスト部13へ搬送され、レジストローラ対により先端の斜行が矯正されるとともに、画像形成ユニット3の感光ドラム31と転写ユニット4の転写ローラ41とが接触しているニップ部(接触部)へ搬送される。
【0034】
一方、画像形成ユニット3の感光ドラム31は、LEDヘッド30により画像データに基づいて選択的に露光されて静電潜像が形成される。そして、感光ドラム31に形成された静電潜像にトナーが供給されて感光ドラム31の表面に可視のトナー像が現像される。
【0035】
感光ドラム31と転写ローラ41とのニップ部に媒体が到達すると、転写ローラ41に転写電圧が印加されることにより、感光ドラム31に形成されたトナー像が媒体に転写される。
感光ドラム31と転写ローラ41とのニップ部を通過し、トナー像が転写された媒体は、除電部42によってトナー像が転写されていない非トナー像面側の帯電が除去され、搬送部62に案内されて定着器5へ搬送される。
【0036】
定着器5に搬送された媒体は、ヒータ511によって加熱された定着ローラ51と、定着ローラ51の回転に従動回転する加圧ローラ52とにより、熱と圧力でトナー像が定着されるとともに、排出ローラ部14へ搬送され、装置外へ排出されて媒体堆積部6に堆積される。
【0037】
このとき、定着器5の定着ローラ51と加圧ローラ52とにより搬送される媒体は、回転する定着ローラ51の外周面と接触している分離爪53により、定着ローラ51の外周面から分離されて排出ローラ部14へ搬送される。
このようにして画像形成装置1の印刷動作が行われる。
【0038】
次に、図5に示す分離爪53の先端部533の当接面533aの加工方法の実施例を、図7の実施例における分離爪の表面の加工方法と尖度の関係を示す説明図に基づいて図5を参照しながら説明する。
【0039】
分離爪53の先端部533の当接面533aの尖度を高くする加工方法としては、切削加工、ペーパー粗し加工、サンドブラスト加工、梨地加工、シボ加工等がある。
切削加工は、当接面533aをフライスで切削する加工方法である。
【0040】
ペーパー粗し加工は、当接面533aをサンドペーパーで研磨する加工方法である。表面はランダムに荒れ、形状は鋭い粗さ形状になる。なお、本実施例では、粒度♯500のサンドペーパーを荷重2kgfで当接面533aに押圧した状態において支持部531の軸方向に5回往復させて研磨した。
【0041】
サンドブラスト加工は、当接面533aに対して研磨材(例えば、鉄、砂、ガラス等)の粒子を吹き付けて表面に細かい凹凸のキズをつける加工方法である。
梨地加工やシボ加工は、金型(鋳型、プレス型等)の表面に細かい凹凸をつけて成型品にその模様を転写する加工方法である。
例えば、梨地加工した当接面533aは図8に示すように加工される。また、シボ加工した当接面533aは図9に示すように溝が線状に形成される。
【0042】
図7は、それぞれの加工方法により加工した当接面533aの尖度を縦軸に表し、横軸の左端から「金型加工」、「切削加工」、「ペーパー粗し加工」、「シボ加工」、「シボ加工+ペーパー粗し加工」、「サンドブラスト(砂)」、「サンドブラスト(ジルコンビーズ)」、「サンドブラスト(ナイロンショット)」、「梨地加工」の加工方法を表している。
【0043】
図7において、「金型加工」は、金型で分離爪53を成型したものであり、分離爪53の先端部533の当接面533aの尖度は2.7Rku、表面粗さRa=0.5であった。なお、この場合、当接面533aに特別な加工は行っていない状態である。
【0044】
「切削加工」は、上記「金型加工」で成型した分離爪53の先端部533の当接面533aに上述した切削加工を施したものであり、尖度は4.4Rku、表面粗さRa=0.4であった。
「ペーパー粗し加工」は、上記「金型加工」で成型した分離爪53の先端部533の当接面533aに上述したペーパー粗し加工を施したものであり、尖度Rkuは3.9Rku、表面粗さRa=1.9であった。
「シボ加工」は、分離爪53の先端部533の当接面533aに対応する金型の部位に、棚澤八光社製TH−106を使用してシボ加工を施して成型したものであり、尖度は2.8Rku、表面粗さRa=1.1であった。
【0045】
「シボ加工+ペーパー粗し加工」は、分離爪53の先端部533の当接面533aを上記「シボ加工」で成型した後、その当接面533aに上述したペーパー粗し加工を施したものであり、尖度は4.0Rku、表面粗さRa=1.9であった。
「サンドブラスト(砂)加工」は、上記「金型加工」で成型した分離爪53の先端部533の当接面533aに、研磨材として砂を用いて上述したサンドブラスト加工を施したものであり、尖度は3.0Rku、表面粗さRa=0.5であった。
なお、分離爪53の先端部533の当接面533aを上記「シボ加工」で成型した後、その当接面533aに、研磨材として砂を用いて上述したサンドブラスト加工を施したものであり、尖度は3.7Rku、表面粗さRa=0.9であった。
【0046】
研磨材である砂は、材質をアルミナ、硬度をモース硬度12、平均粒径を120μmの大きさとし、プラストロン株式会社製サンドブラストマイクロピーニングを用いて吹付時間を10秒程度とした。
「サンドブラスト(ジルコンビーズ)加工」は、上記「金型加工」で成型した分離爪53の先端部533の当接面533aに、研磨材をジルコンビーズに変更して上述したサンドブラスト加工を施したものであり、尖度は2.5Rkuと小さくなった。なお、表面粗さRa=1.0であった。
【0047】
研磨材であるジルコンビーズは、材質をセラミック、硬度をモース硬度8、形状を球形、中心粒径を0.18〜0.25mmの大きさ、真比重を3.85とし、射出吹付加工方法で加工時間を1〜2秒とした。
「サンドブラスト(ナイロンショット)加工」は、上記「金型加工」で成型した分離爪53の先端部533の当接面533aに、研磨材をナイロンショットに変更して上述したサンドブラスト加工を施したものであり、尖度は2.2Rkuとさらに小さくなった。なお、表面粗さRa=2.6であった。
【0048】
研磨材であるナイロンショットは、材質をナイロン樹脂、硬度をモース硬度2、形状を円柱形、Φ0.6mm×0.6mmの大きさ、真比重を1.15とし、射出吹付加工方法で加工時間を1〜2秒とした。
「梨地加工」は、分離爪53の先端部533の当接面533aに対応する金型の部位に、梨地加工を施して成型したものであり、尖度は3.1Rku、表面粗さRa=0.5であった。
【0049】
なお、分離爪53の先端部533の当接面533aの尖度を高くする加工方法は、上記の加工方法に限られるものではなく、ペーパー粗し加工におけるサンドペーパーの粒度やサンドブラスト加工における研磨材等を適宜選定することができる。
【0050】
また、本実施例では、上述以外の加工方法を使用した場合、当接面533aの尖度をRku=6.10まで高めることができたが、それ以上の尖度を有する当接面533aの製造が困難であった。
【0051】
このように、本実施例では、分離爪53の当接面533aの表面に対して、上述した「切削加工」、「ペーパー粗し加工」、「シボ加工+ペーパー粗し加工」、または「サンドブラスト(砂)加工」の加工方法により加工を施し、分離爪53の当接面533aの表面の尖度が3以上となるように、当接面533aの表面を形成した。
【0052】
ここで、図5に示す分離爪53の当接面533aの表面の尖度が3以上となるように形成した理由を図10に基づいて図5を参照しながら説明する。
【0053】
図10は実施例における分離爪の表面形状と異音の関係を示す説明図であり、分離爪53の当接面533aの表面の表面粗さ(μm)および尖度(Rku)と異音発生の関係を表している。なお、表面粗さは、Ra(算術平均粗さ)である。
【0054】
また、図10は、分離爪53の当接面533aの表面を種々の方法で加工し、表面粗さRaと粗さ形状を測定器(株式会社小坂研究所製SEF3500K)で測定し、各分離爪53を使用して異音の発生の有無を確認した評価結果を表している。なお、図10(a)中の「〇」は異音発生無、「△」は異音が僅かに発生、「×」は異音発生有を表している。また、定着ローラ51の回転速度は印刷時の回転速度(低速)とした。
【0055】
図10(a)に示すように、本評価結果では、分離爪53の当接面533aの表面の表面粗さ(μm)を大きくしても異音に対する効果は表れない。
【0056】
例えば、図10(a)に示すように、表面粗さRa=1.1、尖度Rku=2.8とした場合も、異音が発生した。また、図10(c)に示すように、表面粗さRa=6.5、尖度Rku=2.1とした場合、異音が発生した。
一方、分離爪53の当接面533aの表面の尖度Rkuを3以上にすると異音が発生しないことが判明した。
【0057】
例えば、図10(a)に示すように、表面粗さRa=0.5、尖度Rku=3.0や表面粗さRa=0.4、尖度Rku=4.4とした場合も異音は発生しなかった。また、図10(b)に示すように、表面粗さRa=1.9としても、尖度Rku=4.0とした場合、異音は発生しなかった。
即ち、本実施例では、分離爪53の当接面533aの表面の尖度Rkuを3未満にした場合、異音が発生し、尖度Rkuを3以上にした場合、異音が発生しないことが判明した。
【0058】
これは、尖度Rkuが3以上の場合の鋭いピークと長く太い裾を持った当接面533aの表面は、定着ローラ51の表面との接触面積が減り、異音が発生しない傾向にあるためと考えられる。
このように、本実施例では、分離爪53の当接面533aの表面の形状を尖度Rkuで表現した場合、その尖度Rkuを3以上にすることにより、分離爪53の当接面533aの表面と、定着ローラ51の表面との接触による異音の発生を抑制することができる。
【0059】
また、定着ローラ51の表面をPFAでコーティングし、かつ分離爪53の当接面533aをPFA(定着ローラ51の表面と同種材料)で形成した場合であっても、スティックスリップを抑制することができ、異音の発生を抑制することができる。
以上説明したように、本実施例では、分離爪の当接面の表面の尖度を3以上としたことにより、定着器における異音の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【0060】
また、定着ローラと、その定着ローラと当接する分離爪の両方を同じ材料であるPFAで形成した場合であっても、スティックスリップを抑制することができ、定着器における異音の発生を抑制することができるという効果が得られる。
なお、本実施例では、画像形成装置をプリンタとして説明したが、それに限られるものでなく、定着器を有するものであれば複写機、ファクシミリ装置、複合機(MFP)等としても良い。
【0061】
また、画像形成装置を画像形成ユニットが1つのモノクロプリンタとして説明したが、複数の画像形成ユニットを有するカラープリンタとしても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
2 給紙カセット
3 画像形成ユニット
4 転写ユニット
5 定着器
6 媒体堆積部
51 定着ローラ
52 加圧ローラ
53 分離爪
531 支持部
532 スプリング
533 先端部
533a 当接面
図1
図2
図3
図4
図5
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図10