(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6945214
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】アンカーボルト孔補修方法及びそれに用いる補修用パッチ
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20210927BHJP
E04G 5/04 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
E04G23/02 B
E04G5/04 D
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2021-45521(P2021-45521)
(22)【出願日】2021年3月19日
【審査請求日】2021年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2020-67686(P2020-67686)
(32)【優先日】2020年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520120293
【氏名又は名称】株式会社コンペア・M
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】木村 保之
【審査官】
齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3148706(JP,U)
【文献】
特開2000−027820(JP,A)
【文献】
実開平06−058227(JP,U)
【文献】
実公昭63−047279(JP,Y2)
【文献】
特開平10−184647(JP,A)
【文献】
実開昭54−039461(JP,U)
【文献】
実公昭51−018599(JP,Y2)
【文献】
特開2006−219970(JP,A)
【文献】
特開平09−217497(JP,A)
【文献】
実開昭57−202515(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02 − 23/03
E04G 5/04
E04G 17/06
E04G 19/00
F16B 13/04
F16B 13/14
F16B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設足場の撤去後に外壁面に残るアンカーボルトのボルト孔を補修するための方法であって、
前記ボルト孔にシーリング材を充填する工程と、
前記シーリング材を充填した前記ボルト孔に、それに対応する径で厚みが1.8〜5mmの樹脂製円板であって、ネジ部を備えない補修用パッチを、指先にて前記外壁面と面一に押し込み嵌合して前記ボルト孔を水密性を保持して閉塞する工程と、
前記補修用パッチ及びその周囲外壁面に外装トップコートを施工する工程と、
から成ることを特徴とするアンカーボルト孔補修方法。
【請求項2】
前記補修用パッチは、アクリル樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリウレタン樹脂又は変性処理した樹脂製である、請求項1に記載のアンカーボルト孔補修方法。
【請求項3】
前記補修用パッチには、予め外壁面に対応する色付け及び/又は粗面加工処理が施される、請求項1又は2に記載のアンカーボルト孔補修方法。
【請求項4】
仮設足場の撤去後に外壁面に残るアンカーボルトのボルト孔を補修するために、シーリング材が充填された前記ボルト孔に、指先にて前記外壁面と面一に押し込み嵌合されることにより、前記ボルト孔を水密性を保持して閉塞する補修用パッチであって、
前記補修用パッチは、前記ボルト孔に対応する径で厚みが1.8〜5mmの樹脂製円板であって、ネジ部を備えていないことを特徴とするアンカーボルト孔補修用パッチ。
【請求項5】
前記補修用パッチは、アクリル樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリウレタン樹脂又は変性処理した樹脂製である、請求項4に記載のアンカーボルト孔補修用パッチ。
【請求項6】
予め外壁面に対応する色付け処理及び/又は粗面加工処理が施されている、請求項4又は5に記載のアンカーボルト孔補修用パッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルト孔補修方法及びそれに用いる補修用パッチに関するものであり、より詳細には、仮設足場の設置を伴うRC造(鉄筋コンクリート造)の改修工事等の終了後に、仮設足場を撤去するに伴って外壁面に残る、仮設足場材の転倒防止用アンカーボルトのボルト孔の表面を補修処理するための、アンカーボルト孔補修方法及びそれに用いる補修用パッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
RC造の改修工事等においては、工事に先立って建物の周囲に仮設足場が組まれるが、その際、仮設足場材の転倒を防止するために、仮設足場材から建物外壁面にアンカーボルトが打ち込まれる。そして、そのアンカーボルトは、工事終了後、仮設足場を撤去する際に抜き取られるが、そこにボルト孔が残るので、その部分の補修が必要となる。
【0003】
このアンカーボルト孔の補修は一般に、ボルト孔にシーリング材を充填し、その上に外装トップコート(上塗り塗装)を施工することにより行われている。この方法は簡便ではあるが、数年後にその補修部分にブリード現象、即ち、シーリング材に含まれる可塑剤がにじみ出て、塗料や汚れと反応して変色する現象が起こり、見た目が悪くなるおそれがある。
【0004】
このアンカーボルト孔の補修に関しては、上記一般的な方法の他に、種々の提案がなされている。例えば、実開平7−4682号公報に記載の考案は、外壁孔を再使用可能にするために、ボルト孔を、脱着可能なカバー部材で閉塞するというものであるが、この方法の場合は、多数のカバー部材が露見することになり、外観が損なわれるおそれがあるという問題がある。また、特開平7−331866号公報に記載の発明は、足場インサートと組みになったストッパーを、壁中に残置する足場インサートに挿入して孔を閉鎖するというものであるが、この方法の場合は、足場材ごとに専用の足場インサートを用意し、それをボルト孔に埋設する必要があり、手間とコストがかかる。
【0005】
また、登録実用新案第3188215号公報に記載の考案は、施工跡が壁面と異なって目立ってしまうことに鑑み、壁面と同様の模様を形成したスタンプ面を有する補修用具を設け、そのスタンプ面をボルト孔に充填した補修材に押し付けて造形するというものであるが、この方法の場合は、その都度壁面に合う補修用具を設ける必要があり、作業にも手間がかかる。
【0006】
更に、登録実用新案第3148706号公報には、テーパ付き筒状体に形成されたスリーブ部材と、キャップ部及びネジ部を備える化粧キャップ部材とから構成されるマスキングキャップが開示されている。このマスキングキャップの場合、足場継ぎ跡において、スリーブ部材が足場継ぎ用アンカの取付孔内に打ち込んで圧入され、化粧キャップ部材がスリーブ部材の内孔に対してネジ部のねじ込み量を調整してねじ込むことにより、キャップ部が壁面と略同一面を構成してアンカ孔の開口を閉塞する。
【0007】
しかし、このマスキングキャップは部品点数が多くて複雑な構成であって、コスト高となるだけでなく施工に手間がかかる。また、再使用のために取り外すことが想定されている関係で、防水シール処理が行われないため水密性に欠け、隙間から水分が浸入することにより、内部鉄骨に錆が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平7−4682号公報
【特許文献2】特開平7−331866号公報
【特許文献3】登録実用新案第3188215号公報
【特許文献4】登録実用新案第3148706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来行われている仮設足場の撤去後に残るボルト孔の補修方法によった場合は、数年後にブリード現象によって補修部分が変色したりして見た目が悪くなるおそれがあるという問題があり、また、上記先行技術文献において提案されている補修方法の場合は、手間やコストがかかるだけでなく、痕跡の払拭という課題を解決することができず、また、隙間からの水分浸入により、内部鉄骨に錆が発生するおそれがあるといった問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、簡易な方法で手軽に施工でき、補修後に補修部分におけるブリード現象の発生を抑えることができて、ボルト孔の跡を残さず、また、ボルト孔を十分な水密性を以て閉塞するために内部鉄骨の錆発生のおそれがない、アンカーボルト孔補修方法及びそれに用いる補修用パッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、仮設足場の撤去後に外壁面に残るアンカーボルトのボルト孔を補修するための方法であって、
前記ボルト孔にシーリング材を充填する工程と、
前記シーリング材を充填した前記ボルト孔に、それに対応する径で厚みが1.8〜5mmの樹脂製円板であって、
ネジ部を備えない補修用パッチを、
指先にて前記外壁面と面一に押し込み嵌合して前記ボルト孔を水密性を保持して閉塞する工程と、
前記補修用パッチ及びその周囲外壁面に外装トップコートを施工する工程と、
から成ることを特徴とするアンカーボルト孔補修方法である。
【0012】
仮設足場の撤去後に外壁面に残るアンカーボルトのボルト孔を補修するため
に、シーリング材が充填された前記ボルト孔に、指先にて前記外壁面と面一に押し込み嵌合されることにより、前記ボルト孔を水密性を保持して閉塞する補修用パッチであって、
前記補修用パッチは、前記ボルト孔に対応する径で厚みが1.8〜5mmの樹脂製円板であ
って、ネジ部を備えていないことを特徴とするアンカーボルト孔補修用パッチである。
【0013】
一実施形態においては、前記補修用パッチは、アクリル樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリウレタン樹脂又は変性処理した樹脂製である。また、一実施形態においては、前記補修用パッチには、予め外壁面に対応する色付け処理及び/又は粗面加工処理が施される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るアンカーボルト孔補修方法並びにその方法に用いる補修用パッチは上記のとおりであって、ボルト孔を補修用パッチで十分な水密性を確保して閉塞した後に補修用パッチ及びその周囲外壁面に外装トップコートを施工するという簡易な方法で、シーリング材の漏出を押さえて補修部分におけるブリード現象の発生を抑止することができ、以て、外壁面にボルト孔の痕跡が残って見た目が損なわれることを防止でき、また、十分な水密性を備えるために水分の浸入が阻止されて、内部鉄筋の錆発生が防止される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るアンカーボルト孔補修方法の処理工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態につき、添付図面に依拠して説明する。本発明に係るアンカーボルト孔補修方法は、仮設足場の撤去後に外壁面1に残るアンカーボルトのボルト孔2にシーリング材3を充填する工程(
図1(A),(B))と、シーリング材3を充填したボルト孔2に、それに対応する径で厚みが1.8〜5mmの樹脂製円板である補修用パッチ4を、外壁面1と面一に押し込み嵌合してボルト孔2を水密性を保持して閉塞する工程(
図1(C),(D))と、補修用パッチ4及びその周囲外壁面1に外装トップコートを施工する工程(
図1(E))とから成ることを特徴とする。
【0017】
ボルト孔2へのシーリング材3の充填は一般的方法で行い、若干溢れる程度に注入する(
図1(B))。その後直ちに補修用パッチ4を、外壁面1と面一になるように指先で押し込んで嵌合する(
図1(D))。補修用パッチ4は、通例、ボルト孔2と同じ径で、厚みが1.8〜5mmの樹脂製円板であるが、外装トップコートとして多く用いられている塗料との相性からして、アクリル樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリウレタン樹脂又は変性処理した樹脂製であることが好ましい。補修用パッチ4は、ボルト孔2に押し込み嵌合することにより、シーリング材3に接着されて脱落することはなく、その嵌合部分の水密性が確保される。そのため、その部分から浸水することがなく、浸入した水分によって内部の鉄筋が錆びることが防止される。
【0018】
補修用パッチ4は、例えば、浅いケース内にアクリル樹脂を所定量流し込み、均一な厚さに硬化させた後、ボルト孔2に対応するサイズの円形に型抜きして量産することができる。その型抜き前に表面に、外壁面1に施工する外装トップコート5と同じ外装トップコート5を塗装処理しておけば、補修用パッチ4の表面が外装トップコート5と同色となるため、補修後、補修用パッチ4は一層目立たないものとなる。また、事前に表面を、外壁面1と同じ又はそれに近い粗面に加工しておけば、補修用パッチ4は一層目立たないものとなる。
【0019】
ボルト孔2に補修用パッチ4を押し込み嵌合した後、直ちに、即ち、仮設足場を撤去する前に、補修用パッチ4及びその周囲外壁面1に外装トップコートを施工する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係るアンカーボルト孔補修方法並びにその方法に用いる補修用パッチは上記のとおりであって、ボルト孔を補修用パッチで十分な水密性を確保して閉塞した後に補修用パッチ及びその周囲外壁面に外装トップコートを施工するという簡易な方法で、シーリング材の漏出を押さえて補修部分におけるブリード現象の発生を抑止することができ、以て、外壁面にボルト孔の痕跡が残って見た目が損なわれることを防止でき、また、十分な水密性を備えるために水分の浸入が阻止されて、内部鉄筋の錆発生が防止される効果があり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0021】
1 外壁面
2 ボルト孔
3 シーリング材
4 補修用パッチ
5 外装トップコート
【要約】
【課題】簡易な方法で手軽に施工でき、補修後に補修部分におけるブリード現象の発生を抑えることができて、ボルト孔の痕跡を残さないアンカーボルト孔補修方法及びそれに用いる補修用パッチを提供することを課題とする。
【解決の手段】仮設足場の撤去後に残るアンカーボルトのボルト孔2を補修するための方法であって、ボルト孔2にシーリング材3を充填する工程と、シーリング材3を充填したボルト孔2に、それに対応する径で厚みが1.8〜5mmの樹脂製円板である補修用パッチを外壁面1と面一に押し込み嵌合してボルト孔2を水密性を保持して閉塞する工程と、補修用パッチ4及びその周囲外壁面1に外装トップコート5を施工する工程とから成る。
【選択図】
図1