【文献】
Kuninobu, Yoichiro et al.,Rhenium-Catalyzed Synthesis of Indenones by Novel Dehydrative Trimerization of Aryl Aldehydes via C-H Bond Activation,Organic Letters,2010年,12(13),,2948-2950.
【文献】
Dalev, I. D.; Velichkov, L.,Synthesis of substituted indanones having a potential estrogenic action. II. Preparation of 2-(p-hydroxyphenyl)-3-aryl (or alkyl)- and 2-phenyl-3-(p-hydroxyphenyl)indanones having a potential estrogenic action,Nauch. Trudove Visshiya Med. Inst. Sofiya,1959年,6(No. 7), ,11-21.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<1. 新規化合物>
本明細書において、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C
1〜C
5アルキル」は、少なくとも1個且つ多くても5個の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。好適なアルキルは、限定するものではないが、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル及びn-ペンチル等の直鎖又は分枝鎖のC
1〜C
5アルキルを挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「アルケニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なアルケニルは、限定するものではないが、例えばビニル、1-プロペニル、アリル、1-メチルエテニル(イソプロペニル)、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、3-メチルブタ-2-エン-1-イル及び1-ペンテニル等の直鎖又は分枝鎖のC
2〜C
5アルケニルを挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「アルキニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なアルキニルは、限定するものではないが、例えばエチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル及び1-ペンチニル等の直鎖又は分枝鎖のC
2〜C
5アルキニルを挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「シクロアルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、脂環式アルキルを意味する。例えば、「C
3〜C
6シクロアルキル」は、少なくとも3個且つ多くても6個の炭素原子を含む、環式の炭化水素基を意味する。好適なシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のC
3〜C
6シクロアルキルを挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「シクロアルケニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルケニルは、限定するものではないが、例えばシクロブテニル、シクロペンテニル及びシクロヘキセニル等のC
4〜C
6シクロアルケニルを挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「シクロアルキニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルキニルは、限定するものではないが、例えばシクロブチニル、シクロペンチニル及びシクロヘキシニル等のC
4〜C
6シクロアルキニルを挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキル」は、前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して窒素(N)、硫黄(S)及び酸素(O)から選択される1個以上のヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びピペラジニル等の3〜6員のヘテロシクロアルキルを挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「シクロアルキルアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルに置換された基を意味する。好適なシクロアルキルアルキルは、限定するものではないが、例えばシクロヘキシルメチル及びシクロヘキセニルメチル等のC
7〜C
11シクロアルキルアルキルを挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキルアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記ヘテロシクロアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロシクロアルキルアルキルは、限定するものではないが、例えば3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキルを挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「アルコキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルに置換された基を意味する。好適なアルコキシは、限定するものではないが、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ及びペントキシ等のC
1〜C
5アルコキシを挙げることができる。
【0028】
本明細書において、「シクロアルコキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルに置換された基を意味する。好適なシクロアルコキシは、限定するものではないが、例えばシクロプロポキシ、シクロブトキシ及びシクロペントキシ等のC
3〜C
6シクロアルコキシを挙げることができる。
【0029】
本明細書において、「ヘテロシクロアルコキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロシクロアルキルに置換された基を意味する。好適なシクロアルコキシは、限定するものではないが、例えば3〜6員のヘテロシクロアルコキシを挙げることができる。
【0030】
本明細書において、「アリール」は、芳香環基を意味する。好適なアリールは、限定するものではないが、例えばフェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル及びアントラセニル等のC
6〜C
18アリールを挙げることができる。
【0031】
本明細書において、「アリールアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールアルキルは、限定するものではないが、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、ビフェニルメチル、テルフェニルメチル及びスチリル等のC
7〜C
20アリールアルキルを挙げることができる。
【0032】
本明細書において、「ヘテロアリール」は、前記アリールの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立してN、S及びOから選択される1個以上のヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロアリールは、限定するものではないが、例えばフラニル、チエニル(チオフェンイル)、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル及びインドリル等の5〜15員のヘテロアリールを挙げることができる。
【0033】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記ヘテロアリールに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールアルキルは、限定するものではないが、例えばピリジルメチル等の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルを挙げることができる。
【0034】
本明細書において、「アリールオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールオキシは、限定するものではないが、例えばフェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフチルオキシ及びアントリルオキシ(アントラセニルオキシ)等のC
6〜C
15アリールオキシを挙げることができる。
【0035】
本明細書において、「アリールアルキルオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アリールアルキルに置換された基を意味する。好適なアリールアルキルオキシは、限定するものではないが、例えばベンジルオキシ、1-フェネチルオキシ、2-フェネチルオキシ及びスチリルオキシ等のC
7〜C
20アリールアルキルオキシを挙げることができる。
【0036】
本明細書において、「ヘテロアリールオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロアリールに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールオキシは、限定するものではないが、例えばフラニルオキシ、チエニルオキシ(チオフェンイルオキシ)、ピロリルオキシ、イミダゾリルオキシ、ピラゾリルオキシ、トリアゾリルオキシ、テトラゾリルオキシ、チアゾリルオキシ、オキサゾリルオキシ、イソオキサゾリルオキシ、オキサジアゾリルオキシ、チアジアゾリルオキシ、イソチアゾリルオキシ、ピリジルオキシ、ピリダジニルオキシ、ピラジニルオキシ、ピリミジニルオキシ、キノリニルオキシ、イソキノリニルオキシ及びインドリルオキシ等の5〜15員のヘテロアリールオキシを挙げることができる。
【0037】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキルオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロアリールアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールアルキルオキシは、限定するものではないが、例えば5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシを挙げることができる。
【0038】
本明細書において、「アシル」は、前記で説明した基から選択される1価基とカルボニルとが連結した基を意味する。好適なアシルは、限定するものではないが、例えばホルミル、アセチル及びプロピオニル等のC
1〜C
5脂肪族アシル、並びにベンゾイル等のC
7〜C
120芳香族アシルを包含するC
1〜C
20アシルを挙げることができる。
【0039】
前記で説明した基は、それぞれ独立して、非置換であるか、或いは1個若しくは複数の前記で説明した1価基によってさらに置換することもできる。
【0040】
本明細書において、「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)を意味する。
【0041】
本発明の一態様は、式(I):
【化3】
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物に関する。
【0042】
本発明者らは、土壌から分離した新規真菌が、SOAT2に対して高い選択的阻害活性を有する化合物をその培養液中に産生することを見出した。本発明者らは、前記培養液中から、SOAT2に対する選択的阻害活性を有する新規化合物BF-0307A及びBF-0307Bを見出した。化合物BF-0307A及びBF-0307Bは、SOAT2に対して高い阻害活性を有する一方、SOAT1に対する阻害活性は低い。本態様の式(I)で表される化合物は、天然有機化合物BF-0307A及びBF-0307B、並びにその類縁化合物を包含する。それ故、本態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0043】
式(I)において、R
1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルである。R
1は、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであることが好ましく、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、又は置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールであることがより好ましく、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、又は置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールであることがさらに好ましく、非置換C
1〜C
5アルキル、又は置換C
6〜C
15アリールであることが特に好ましい。
【0044】
特に好ましくは、R
1は、式(L):
【化4】
で表される基、又はメチルである。式中、*は、残部分との結合位置である。R
1が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して特に高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0045】
式(I)において、R
2及びR
3は、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成するか、又は互いに独立して、H、OH、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルである。R
2及びR
3は、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成するか、又は互いに独立して、H、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであることが好ましく、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成するか、又は互いに独立して、H、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、若しくは置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニルであることがより好ましく、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成するか、又は互いに独立して、OH、若しくは置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキルであることがさらに好ましい。
【0046】
特に好ましくは、R
2及びR
3は、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成するか、又はR
2がメチルであり、且つR
3がヒドロキシルである。R
2及びR
3が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して特に高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0047】
式(I)において、R
4は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルである。R
4は、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであることが好ましく、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、又は置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニルであることがより好ましく、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニルであることがさらに好ましい。
【0048】
特に好ましくは、R
4は、3-メチルブタ-2-エン-1-イルである。R
4が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して特に高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0049】
式(I)において、R
5は、H、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルである。R
5は、H、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであることが好ましく、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、又は置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニルであることがより好ましく、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキルであることがさらに好ましく、メチルであることが特に好ましい。R
5が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して特に高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0050】
式(I)において、R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、H、OH、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルである。R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、H、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであることが好ましく、H、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、又は置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニルであることがより好ましく、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、又は置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニルであることがさらに好ましく、いずれもOHであることが特に好ましい。R
6、R
7及びR
8が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して特に高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0051】
式(I)において、前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、及び置換若しくは非置換のアミノからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルオキシ、及び置換若しくは非置換のアミノからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることがより好ましく、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシル、及び置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルオキシからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることがさらに好ましく、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、及び置換若しくは非置換のC
7〜C
20芳香族アシルからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることが特に好ましく、ヒドロキシル、メチル、3-メチルブタ-2-エン-1-イル、及び2,6-ジヒドロキシ-3-(メチルブタ-2-エン-1-イル)ベンゾイルからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることがとりわけ好ましい。前記1価基が置換されている場合、該置換基は、前記1価基からさらに選択されることができる。
【0052】
好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R
1が、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであり、
R
2及びR
3が、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成するか、又は互いに独立して、H、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであり、
R
4が、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであり、
R
5が、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであり、
R
6、R
7及びR
8が、互いに独立して、H、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルであり、
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルオキシ、及び置換若しくは非置換のアミノからなる群より選択される少なくとも1個の1価基である。
【0053】
より好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R
1が、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、又は置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールであり、
R
2及びR
3が、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成するか、又は互いに独立して、H、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、若しくは置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニルであり、
R
4が、3-メチルブタ-2-エン-1-イルであり、
R
5が、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、又は置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニルであり、
R
6、R
7及びR
8が、互いに独立して、H、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、又は置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニルであり、
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7〜C
11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3〜6員のヘテロシクロアルキル-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリール、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシ、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC
6〜C
15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC
7〜C
20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5〜15員のヘテロアリール-C
1〜C
5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC
1〜C
6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC
3〜C
6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
20アシルオキシ、及び置換若しくは非置換のアミノからなる群より選択される少なくとも1個の1価基である。
【0054】
さらに好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R
1が、非置換C
1〜C
5アルキル、又は置換C
6〜C
15アリールであり、
R
2及びR
3が、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成するか、又は互いに独立して、OH、若しくは置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキルであり、
R
4が、3-メチルブタ-2-エン-1-イルであり、
R
5が、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキルであり、
R
6、R
7及びR
8が、互いに独立して、OH、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、又は置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルキニルであり、
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、置換若しくは非置換のC
2〜C
5アルケニル、及び置換若しくは非置換のC
7〜C
20芳香族アシルからなる群より選択される少なくとも1個の1価基である。本実施形態において、R
1が置換C
6〜C
15アリールである場合、該置換基は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC
1〜C
5アルキル、及び置換若しくは非置換のC
7〜C
20芳香族アシルであることが好ましい。
【0055】
特に好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R
1が、式(L):
【化5】
[式中、*は、残部分との結合位置である。]
で表される基であり、
R
2及びR
3が、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成し、
R
4が、3-メチルブタ-2-エン-1-イルであり、
R
5が、メチルであり、且つ
R
6、R
7及びR
8が、OHである;或いは、
R
1が、メチルであり、
R
2が、メチルであり、
R
3が、OHであり、
R
4が、3-メチルブタ-2-エン-1-イルであり、
R
5が、メチルであり、且つ
R
6、R
7及びR
8が、OHである。R
1〜R
8が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して特に高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0056】
とりわけ特に好ましい式(I)で表される化合物は、以下:
2-(2-(2,6-ジヒドロキシ-3-(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)ベンゾイル)-3-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-3-(2,6-ジヒドロキシ-3-(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)フェニル)-4-ヒドロキシ-6-メチル-1H-インデン-1-オン (BF-0307A);及び
3-(2,6-ジヒドロキシ-3-(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)フェニル)-3,4-ジヒドロキシ-2,2,6-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン (BF-0307B);
からなる群より選択される。本態様の式(I)で表される化合物が前記化合物である場合、該化合物は、SOAT2に対して特に高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0057】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。本発明の一態様の式(I)で表される化合物の塩としては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、若しくは置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオンとの塩、又は塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸若しくはリン酸のような無機酸、又はギ酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、p-トルエンスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸のような有機酸アニオンとの塩が好ましい。式(I)で表される化合物が前記の塩の形態である場合、SOAT2阻害活性を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる。
【0058】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。前記化合物又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール)のような1〜6の炭素原子数を有するアルコール)、高級アルコール(例えば、1-ヘプタノール若しくは1-オクタノールのような7以上の炭素原子数を有するアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン若しくは酢酸エチルのような有機溶媒、又は水が好ましい。式(I)で表される化合物又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合、SOAT2阻害活性を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる。
【0059】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、その保護形態も包含する。本明細書において、「保護形態」は、1個又は複数の官能基(例えばヒドロキシル基又はカルボン酸基)に保護基が導入された形態を意味する。本明細書において、前記各式で表される化合物の保護形態を、前記各式で表される化合物の保護誘導体と記載する場合がある。また、本明細書において、「保護基」は、望ましくない反応の進行を防止するために、特定の官能基に導入される基であって、特定の反応条件において定量的に除去され、且つそれ以外の反応条件においては実質的に安定、即ち反応不活性である基を意味する。前記化合物の保護形態を形成し得る保護基としては、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル基の保護基の場合、シリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)若しくはtert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、又はアルコキシ(例えば、メトキシメトキシ(MOM)若しくはメトキシ(Me))が、カルボン酸基の保護基の場合、アルキルエステル(例えばメチル、エチル若しくはイソプロピルエステル)、アリールアルキルエステル(例えばベンジルエステル)、又はアミド(例えばオキサゾリジノン類とのアミド)が、それぞれ好ましい。前記保護基による保護化及び脱保護化は、公知の反応条件に基づき、当業者が適宜実施することができる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物が前記の保護基による保護形態である場合であっても、SOAT2阻害活性を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる場合がある。
【0060】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物が1又は複数の互変異性体を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々の互変異性体の形態も包含する。
【0061】
また、本発明の一態様の式(I)で表される化合物が1又は複数の立体中心(キラル中心)を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のようなそれらの混合物も包含する。
【0062】
前記特徴を有することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して特に高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0063】
<2. 培養的手段による新規化合物の製造方法>
本発明者らは、土壌から分離した新規真菌が、本発明の一態様の式(I)で表される化合物に包含される化合物BF-0307A及びBF-0307Bをその培養液中に産生することを見出した。それ故、本発明の別の一態様は、新規真菌を用いる本発明の一態様の式(I)で表される化合物を製造する方法に関する。
【0064】
本態様において、本発明の方法は、化合物蓄積工程及び化合物精製工程を含む。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0065】
[2-1. 化合物蓄積工程]
本態様において、本発明の方法は、式(I)で表される化合物を産生する能力を有するタラロマイセス・セルロリティカス(Talaromyces cellulolyticus)BF-0307株(NITE
P-02401)又はその変異株である微生物を培地中で培養して、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程を含む。
【0066】
タラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株は、日本国東京都目黒区の土壌より分離されたタラロマイセス属に属する新規真菌である。本菌株は、BF-0307として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されている(NITE
P-02401)。
【0067】
本工程において、培養に使用される微生物は、式(I)で表される化合物を産生する能力を有するタラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株又はその変異株であることが好ましく、タラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株であることがより好ましい。本発明において、タラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株の変異株は、タラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株の自然変異株又は人工変異株を意味する。タラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株の人工変異株は、当該技術分野で通常使用される任意の人工変異株の作出手段によって得ることができる。タラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株自体だけでなく、タラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株の変異株であっても、式(I)で表される化合物を産生する能力を有する微生物であれば、本工程において式(I)で表される化合物を培地中に蓄積することができる。それ故、前記微生物を使用することにより、式(I)で表される化合物を培地中に大量に蓄積させることができる。
【0068】
微生物の培養に使用される培地は、該微生物の性質に基づき適宜選択することができる。培地は、通常は、1個以上の炭素源及び1個以上の窒素源、並びに場合により1個以上の無機塩及び1個以上のビタミンを含有する。炭素源としては、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、デキストリン及びデンプン等の糖類、並びに大豆油等の植物性油脂類を挙げることができる。窒素源としては、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、大豆粉、綿実粉、コーン・スティーブ・リカー、カゼイン、アミノ酸、尿素、アンモニウム塩及び硝酸塩を挙げることができる。無機塩としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、銅イオン、コバルトイオン又は亜鉛イオン等のカチオンと、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸又はリン酸のような無機酸アニオンとの塩を挙げることができる。本工程において使用される培地は、例えば、ポテトデキストロース寒天(PDA)培地(ポテト・デキストロース・アガー 3.9%(Becton, Dickinson and Company))、種培地 (ポテト・デキストロース・ブロス 2.4% (Becton, Dickinson and Company)、及びTaiyo-Agar 0.1% (SSK セールス)、pH 6.0 に調整)、又は生産培地 (ガラクトース 1.0%、グリセリン 2.0%、グルコース 1.0%、トリプトン 0.25%、酵母エキス 0.25%、KH
2PO
4 0.05%、及びFeSO
4・7H
2O 0.01%、pH 6.0 に調整)が好ましい。前記培地中で、式(I)で表される化合物を産生する能力を有するタラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株又はその変異株である微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させることができる。
【0069】
微生物の培養は、固体培養又は液体培養のいずれであってもよい。大スケールで前記微生物を培養する場合には、液体培養であることが好ましい。この場合、培養容器の振盪、プロペラ等による培地の攪拌、又はポンプ等による空気の吹き込みによって培地中に通気することが好ましい。培地中に導入される空気は、滅菌フィルター等の滅菌手段を用いて滅菌することが好ましい。前記条件で微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物を効率的に培地中に蓄積させることができる。
【0070】
大スケールで前記微生物を培養する場合、予め少量の培地中で前記微生物を培養(以下、「種培養」とも記載する)し、その後、種培養で得られた培養物を大容量の培地に植菌して培養(以下、「生産培養」とも記載する)することが好ましい。この場合、種培養及び生産培養に使用される培地の成分は、同一であってもよく、異なっていてもよい。種培養及び生産培養を含む複数段階の培養によって本工程を実施することにより、微生物の生育の遅延を実質的に抑制することができる。
【0071】
本工程において、微生物を培養する条件は、該微生物の性質に基づき適宜設定することができる。培養温度は、通常は20〜30℃の範囲であり、典型的には約27℃である。培地のpHは、通常はpH 2〜8であり、典型的にはpH 6.0である。培養期間は、液体培地を振盪培養する場合、種培養及び生産培養の合計として、通常は3〜14日間であり、典型的には7〜10日間である。前記条件で微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物を効率的に培地中に蓄積させることができる。
【0072】
[2-2. 化合物蓄積工程]
本態様において、本発明の方法は、化合物蓄積工程で得られた式(I)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程を含むことが必要である。
【0073】
本工程において、式(I)で表される化合物を微生物の培養物から精製する手段としては、当該技術分野で通常使用される有機化合物の分離法を使用することができる。式(I)で表される化合物を微生物の培養物から精製する手段としては、例えば、抽出、濾過、遠心分離、吸着、再結晶、蒸留、及び各種クロマトグラフィー等を挙げることができる。好ましくは、本工程は、化合物蓄積工程で得られた微生物の培養物から濾過又は遠心分離等によって菌体を分離する工程、分離した菌体をアセトン等の水混和性有機溶媒で抽出する工程、及び水混和性有機溶媒で抽出した菌体抽出物を溶媒抽出又は分取クロマトグラフィー等の手段でさらに分離して、式(I)で表される化合物を得る工程を含む。前記分取クロマトグラフィーとしては、吸着、順相若しくは逆相分配、又はゲル濾過等の各種クロマトグラフィーを適用することができる。最終工程において、分取クロマトグラフィーで得られた画分を、例えば再結晶又は蒸留等の手段でさらに精製してもよい。前記各工程は、所望により同一又は異なる条件下で複数回繰り返してもよい。前記手段を用いることにより、式(I)で表される化合物を微生物の培養物から精製し単離することができる。
【0074】
本態様の培養的手段による本発明の化合物の製造方法において、式(I)で表される化合物は、R
1が、式(L)で表される基であり、R
2及びR
3が、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成し、R
4が、3-メチルブタ-2-エン-1-イルであり、R
5が、メチルであり、且つR
6、R
7及びR
8が、OHである;或いは、R
1が、メチルであり、R
2が、メチルであり、R
3が、OHであり、R
4が、3-メチルブタ-2-エン-1-イルであり、R
5が、メチルであり、且つR
6、R
7及びR
8が、OHであることが好ましい。この場合、式(I)で表される化合物は、タラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株が産生する化合物BF-0307A及びBF-0307Bである。本態様の方法を用いることにより、化合物BF-0307A及びBF-0307Bに対応する式(I)で表される化合物を効率的に製造することができる。
【0075】
以上の特徴を有する本態様の培養的手段による本発明の化合物の製造方法により、医薬の有効成分となり得る本発明の一態様の式(I)で表される化合物を、高純度且つ低コストで大量に提供することができる。
【0076】
本発明の別の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物を産生する能力を有するタラロマイセス・セルロリティカスBF-0307株(NITE
P-02401)又はその変異株である微生物に関する。本態様において、式(I)で表される化合物は、R
1が、式(L)で表される基であり、R
2及びR
3が、それらが結合する炭素の間で二重結合を形成し、R
4が、3-メチルブタ-2-エン-1-イルであり、R
5が、メチルであり、且つR
6、R
7及びR
8が、OHである;或いは、R
1が、メチルであり、R
2が、メチルであり、R
3が、OHであり、R
4が、3-メチルブタ-2-エン-1-イルであり、R
5が、メチルであり、且つR
6、R
7及びR
8が、OHであることが好ましい。本態様の微生物を用いることにより、化合物BF-0307A及びBF-0307Bに対応する式(I)で表される化合物を効率的に製造することができる。
【0077】
<3. 医薬用途>
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して高い選択的阻害活性を有する。それ故、本発明の別の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含むSOAT2阻害剤に関する。また、本発明の一態様の式(I)で表される化合物を対象に投与した場合、SOAT2阻害活性を介して、該対象の有する特定の疾患、症状若しくは障害を予防又は治療し得る。それ故、本発明の別の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む医薬に関する。
【0078】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物のSOAT2阻害活性は、限定するものではないが、例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の小腸又は肝臓から調製したミクロソーム画分をSOAT2酵素タンパク質の酵素源として、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の存在下で該酵素源によるアシル基転移反応の進行を定量的に測定することにより、決定することができる。SOAT2酵素タンパク質の酵素源は、前記ヒト又は非ヒト哺乳動物のSOAT2を高発現させた培養細胞から調製したミクロソーム画分であってもよい。アシル基転移反応の進行は、例えば、放射性同位元素等で標識した基質(オレオイルコエンザイムA)を用いて測定することができる。
【0079】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物のSOAT1阻害活性は、限定するものではないが、例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)のマクロファージから調製したミクロソーム画分をSOAT1酵素タンパク質の酵素源として、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の存在下で該酵素源によるアシル基転移反応の進行を定量的に測定することにより、決定することができる。SOAT1酵素タンパク質の酵素源は、前記ヒト又は非ヒト哺乳動物のSOAT1を高発現させた培養細胞から調製したミクロソーム画分であってもよい。アシル基転移反応の進行は、例えば、放射性同位元素等で標識した基質(オレオイルコエンザイムA)を用いて測定することができる。
【0080】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物のSOAT2に対する選択的阻害活性は、該化合物のSOAT1阻害活性及びSOAT2阻害活性に基づき、決定することができる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物のSOAT2に対する選択的阻害活性は、限定するものではないが、例えば、SOAT1活性又はSOAT2活性を50%阻害する該化合物の濃度(SOAT1に対するIC
50又はSOAT2に対するIC
50)を決定し、SOAT2阻害に対する選択性(SI値)を、以下の式に基づき算出することにより、決定することができる。
SI=(SOAT1に対するIC
50)/(SOAT2に対するIC
50)
【0081】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記手順により決定したSOAT2阻害活性のIC
50値が、通常は20 μM以下、典型的には10 μM以下、特に1 μM以下である。また、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記手順により決定したSOAT2阻害に対するSI値が、通常は1を超える値であり、典型的には1.2以上、特に10以上である。前記範囲のIC
50値及び/又はSI値を有する場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、SOAT2に対して高い選択的阻害活性を発現することができる。
【0082】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物も包含する。本発明の一態様の式(I)で表される化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物としては、限定するものではないが、例えば、前記で例示した塩又は溶媒和物が好ましい。式(I)で表される化合物が前記の塩又は溶媒和物の形態である場合、SOAT2阻害活性を実質的に低下させることなく、該化合物を所望の医薬用途に適用することができる。
【0083】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物のプロドラッグ形態も包含する。本明細書において、「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される化合物を意味する。前記化合物のプロドラッグ形態としては、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル基が存在する場合、該ヒドロキシル基と任意のカルボン酸とのエステル、及び該ヒドロキシル基と任意のアミンとのアミド等を挙げることができる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物が前記のプロドラッグ形態である場合、親薬物である式(I)で表される化合物のSOAT2阻害活性を実質的に低下させることなく、対象へのプロドラッグ形態の投与時の薬物動態を向上させることができる。
【0084】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物を単独で使用してもよく、1種以上の製薬上許容される成分と組み合わせて使用してもよい。本発明の医薬は、所望の投与方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本態様の医薬はまた、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物の形態で提供されることもできる。本態様の医薬組成物は、前記成分に加えて、製薬上許容される1種以上の媒体(例えば、滅菌水のような溶媒又は生理食塩水のような溶液)、賦形剤、結合剤、ビヒクル、溶解補助剤、防腐剤、安定剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤、乳化剤、油性液(例えば、植物油)、懸濁剤、緩衝剤、無痛化剤、酸化防止剤、甘味剤及び香味剤等を含んでもよい。
【0085】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬の剤形は、特に限定されず、非経口投与に使用するための製剤であってもよく、経口投与に使用するための製剤であってもよい。また、本態様の医薬の剤形は、単位用量形態の製剤であってもよく、複数投与形態の製剤であってもよい。非経口投与に使用するための製剤としては、例えば、水若しくはそれ以外の製薬上許容される媒体との無菌性溶液又は懸濁液等の注射剤を挙げることができる。注射剤に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、生理食塩水、ブドウ糖若しくはその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、D-マンノース若しくは塩化ナトリウム)を含む等張液のようなビヒクル、アルコール(例えばエタノール若しくはベンジルアルコール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール)若しくはエステル(例えば安息香酸ベンジル)のような溶解補助剤、ポリソルベート80(商標)又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような非イオン性界面活性剤、ゴマ油又は大豆油のような油性液、リン酸塩緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝剤、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカインのような無痛化剤、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコールのような安定剤、保存剤、並びに酸化防止剤等を挙げることができる。調製された注射剤は、通常、適当なバイアル(例えばアンプル)に充填され、使用時まで適切な環境下で保存される。
【0086】
経口投与に使用するための製剤としては、例えば、錠剤、丸薬、散剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、エリキシル剤、液剤、シロップ剤、スラリー剤及び懸濁液等を挙げることができる。錠剤は、所望により、糖衣又は溶解性被膜を施した糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠又はフィルムコーティング錠の剤形として製剤してもよく、或いは二重錠又は多層錠の剤形として製剤してもよい。
【0087】
錠剤又はカプセル剤等に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム又はアラビアゴムのような結合剤;結晶性セルロース、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン又はケイ酸のような賦形剤;乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉又は乳糖のような崩壊剤;白糖、ステアリンカカオバター又は水素添加油のような崩壊抑制剤;第四級アンモニウム塩又はラウリル硫酸ナトリウムのような吸収促進剤;グリセリン又はデンプンのような保湿剤;澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト又はコロイド状ケイ酸のような吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)、ホウ酸末又はポリエチレングリコールのような潤滑剤;ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤;及びペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤等を挙げることができる。製剤がカプセル剤の場合、さらに油脂のような液状担体を含有してもよい。
【0088】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、デポー製剤として製剤化することもできる。この場合、デポー製剤の剤形の本態様の医薬を、例えば皮下若しくは筋肉に埋め込み、又は筋肉注射により投与することができる。本態様の医薬をデポー製剤に適用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のSOAT2阻害活性を、長期間に亘って持続的に発現することができる。
【0089】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、医薬として有用な1種以上の他の薬剤と併用することもできる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物と併用される他の薬剤としては、限定するものではないが、例えば、スタチン系医薬品(例えば、アトロバスタチン)、並びにピリピロペンA及びその類縁体若しくは誘導体等を挙げることができる。この場合、本態様の医薬は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを含む併用医薬の形態となる。前記併用医薬は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを組み合わせてなる医薬組成物の形態であってもよく、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を含む、1種以上の前記他の薬剤と併用される医薬組成物の形態であってもよい。本態様の医薬が前記のような併用医薬の形態である場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の他の薬剤とを含む、単一製剤の形態で提供されてもよく、1種以上の他の薬剤とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供されてもよい。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。
【0090】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、SOAT2が関与する種々の疾患、症状及び/又は障害を、同様に予防又は治療することができる。前記疾患、症状及び/又は障害としては、限定するものではないが、例えば、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪肝及び肥満症を挙げることができる。前記疾患、症状及び/又は障害は、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪肝及び肥満症からなる群より選択される1種以上の疾患、症状又は障害であることが好ましい。前記疾患、症状若しくは障害の予防又は治療を必要とする対象に本態様の医薬を投与することにより、前記疾患、症状若しくは障害を予防又は治療することができる。
【0091】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする様々な対象に適用することができる。前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の被験体又は患者であることが好ましい。前記対象に本態様の医薬を投与することにより、該対象が有する種々の疾患、症状及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0092】
本明細書において、「予防」は、症状、疾患及び/又は障害の発生(発症又は発現)を実質的に防止することを意味する。また、本明細書において、「治療」は、発生(発症又は発現)した症状、疾患及び/又は障害を抑制(例えば進行の抑制)、軽快、修復及び/又は治癒することを意味する。
【0093】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪肝又は肥満症)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本態様の医薬は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための医薬であることが好ましく、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪肝及び肥満症からなる群より選択される1種以上の疾患若しくは症状の予防又は治療に使用するための医薬であることがより好ましい。本態様の医薬をSOAT2が関与する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のSOAT2阻害活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0094】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪肝又は肥満症)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の本発明の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を投与することを含む、前記疾患若しくは症状の予防又は治療方法である。前記症状、疾患及び/又は障害は、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪肝及び肥満症からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状であることが好ましい。SOAT2が関与する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、本発明の一態様の式(I)で表される化合物を投与することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のSOAT2阻害活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0095】
本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である。本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に用いるための医薬の製造のための、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。前記症状、疾患及び/又は障害は、脂質異常症、動脈硬化症、脂肪肝及び肥満症からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状であることが好ましい。本発明の一態様の式(I)で表される化合物又は医薬を、SOAT2が関与する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のSOAT2阻害活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0096】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬を、対象、特にヒト患者に投与する場合、正確な用量及び用法(例えば、投与量、投与回数及び/又は投与経路)は、対象の年齢、性別、予防又は治療されるべき症状、疾患及び/又は障害の正確な状態(例えば重症度)、並びに投与経路等の多くの要因を鑑みて、担当医が治療上有効な投与量、投与回数及び投与経路等を考慮して、最終的に決定すべきである。それ故、本態様の医薬において、有効成分である式(I)で表される化合物は、治療上有効な量及び回数で、対象に投与される。例えば、本態様の医薬をヒト患者に投与する場合、有効成分である式(I)で表される化合物の投与量は、通常は、1回投与あたり、0.001〜100 mg/kg体重の範囲であり、典型的には、1回投与あたり、0.01〜10 mg/kg体重の範囲であり、特に、1回投与あたり、0.1〜10 mg/kg体重の範囲である。また、本態様の医薬の投与回数は、例えば、1日に1回又は複数回、或いは数日に1回とすることができる。また、本態様の医薬の投与経路は、特に限定されず、経口的に投与されてもよく、非経口的(例えば、直腸内、径粘膜、腸内、筋肉内、皮下、骨髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内又は眼内)に単回若しくは複数回投与されてもよい。本態様の医薬を、前記の用量及び用法で使用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物のSOAT2阻害活性を介して、SOAT2が関与する前記症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0098】
<I. 培養的手段による新規化合物の製造>
【0099】
[BF-0307株の分離]
BF-0307株は、日本国東京都目黒区の土壌より分離された真菌である。BF-0307株の形態的特徴、培養性状及び生理的性状に基づき、公知菌種との比較を行った。その結果、本菌株は、タラロマイセス属(Talaromyces sp.)に属するタラロマイセス・セルロリティカス(Talaromyces cellulolyticus)の新規菌株であることが明らかとなった。本菌株を、BF-0307株と命名した。本菌株は、BF-0307として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されている(NITE
P-02401)。BF-0307株の菌学的性質は、以下の通りである。
【0100】
1. 形態的特徴
BF-0307株は、PDA培地等の栄養寒天培地等の培地で良好に生育した。PDA培地上で、27℃、好気的条件下で14日間生育させたコロニーを顕微鏡で観察したところ、栄養菌糸から直立した柄の先端からメトレ及び針状のフィアライドが形成される二輪生のペニシルスが観察された。また、フィアライドの先端から、1細胞でレモン形から亜球形のフィアロ型分生子が連鎖して形成される様子が確認された。
【0101】
2. 培養性状
PDA培地上で、27℃、好気的条件下で14日間生育させたBF-0307株のコロニーは、35〜40 mmのコロニー半径を有した。コロニー表面は、ビロード状の形状であった。コロニーの色調は、コロニーの表面において、黄緑〜緑色〜白色であり、コロニーの裏面において、橙黄色であった。
【0102】
3. DB-FU10.0及び国際塩基配列データベースに対するBLAST相同検索
28S rDNA-D1D2塩基配列は、子嚢菌門の一種のタラロマイセス・セルロリティカス Y-94 (FERMBP5826)T (アクセッション番号AB474751) の塩基配列と、相同率100%を示した。また、ITS-5.8 rDNA塩基配列は、子嚢菌門の一種のタラロマイセス・セルロリティカスの複数の塩基配列と、相同率98.8〜100%を示した。
【0103】
4. 生理的性状
BF-0307株の最適生育条件は、好気性条件、pH 6、温度27℃であった。また、本菌株の生育可能条件は、好気性条件、pH 2〜8の範囲、温度20〜30℃の範囲であった。
【0104】
[製造例I-1: BF-0307株の培養]
寒天培地 (ポテト・デキストロース・アガー 3.9%(Becton, Dickinson and Company)) で培養したBF-0307株を、種培地 (ポテト・デキストロース・ブロス 2.4% (Becton, Dickinson and Company)、及びTaiyo-Agar 0.1% (SSK セールス)、pH 6.0 に調整) 100 mLを分注した500 mL容三角フラスコに一白金耳摂取し、27℃で4日間、ロータリーシェーカー (180 rpm) で培養した。その後、培養物を、生産培地 (ガラクトース 1.0% (和光純薬)、グリセリン 2.0% (関東化学)、グルコース 1.0% (和光純薬)、トリプトン 0.25% (Becton, Dickinson and Company)、酵母エキス 0.25% (Becton, Dickinson and Company)、KH
2PO
4 0.05% (和光純薬)、及びFeSO
4・7H
2O 0.01% (和光純薬)、pH 6.0 に調整) 100 mLを分注した500 mL容三角フラスコ (20 本) に、1%の量で植菌し、27℃で9日間、振盪培養した。
【0105】
[製造例I-2: BF-0307株の培養液からの新規化合物BF-0307Aの精製]
前記製造例I-1に記載の培養で得られた培養液 (2 L)を、遠心分離して菌体を得た後、菌体にアセトン (1 L) を加え、1時間超音波処理後、菌体抽出液を得た。減圧下で、抽出液から溶媒を留去し、茶褐色の粗物質 (8.4 g) を得た。この粗物質 (2.9 g) を、ODS カラム (ODS 200 g) にて精製を行った。40%、60%、80%、及び100% アセトニトリル水溶液の各混合溶媒を展開溶媒とするODSクロマトグラフィーを行った。溶出液は、各溶媒条件について500 mLを2画分ずつ (40%-1及び-2、60%-1及び-2、80%-1及び-2、並びに100%-1及び-2画分) 分画した。80%アセトニトリル溶出液の第1画分 (80%-1画分) を減圧下で濃縮し、茶褐色物質 (191 mg) を得た。このうち、 59 mg を少量のメタノールに溶解し、分取 HPLC (カラム:PEGASIL ODS SP100、20 φ× 250 mm、センシュー科学) により精製を行った。70%〜80% アセトニトリル水溶液のグラジエント条件 (0〜30分間) を移動相とし、溶出液を、8 mL/min の流速において溶出した。溶出液は、UV 210 nm における吸収をモニターした。溶出液の活性試験の結果、保持時間 31分に活性を示すピークを観察した。そこで、このピークを分取した。分取液を、減圧下濃縮し、赤色粉末の化合物BF-0307Aを、収量 7.4 mg で単離した。
【0106】
得られた化合物BF-0307Aの物理化学的性状は、以下の通りである。
(1)性状:赤色粉末
(2)分子式:C
40H
38O
8
ESI-MS (m/z) [M+H]
+ 計算値 647.26449、 実測値 647.25729
(3)分子量:646
ESI-MS (m/z) で [M+H]
+ 647、 [M+H]
- 645 を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定、λ
max (MeOH, ε):207.6 (60255)、263.6 (18197)
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定、ν
max 3414、2923、及び1617 cm
-1 等に特徴的な吸収極大を示す
(6)溶剤に対する溶解性:メタノール、クロロホルム、酢酸エチル及びジメチルスルホキシドに可溶
(7)プロトン(
1H)及びカーボン(
13C)核磁気共鳴スペクトル(NMR):重ジメチルスルホキシド中で、バリアン社製 600 MHz 核磁気共鳴スペクトロメーターで測定した水素の化学シフト (ppm) 及び炭素の化学シフト (ppm);
δ
H:1.56 (3H), 1.62 (3H), 1.65 (3H), 1.67 (3H), 1.97 (3H), 2.16 (3H), 3.01 (2H), 3.12 (2H), 5.08 (1H), 5.24 (1H), 6.22 (1H), 6.24 (1H), 6.25 (1H), 6.47 (1H), 6.60 (1H), 6.67 (1H), 6.75 (1H), 7.10 (1H) ppm
δ
C:17.6, 17.7, 20.8, 21.0, 25.5, 25.6, 27.0, 27.6, 106.0, 106.5, 110.0, 113.0, 114.4, 115.7, 117.7, 118.0, 121.3, 122.8, 123.5, 124.1, 125.0, 127.0, 129.2, 130.5, 130.5, 131.3, 132.1, 133.6, 136.2, 140.3, 140.3, 150.8, 151.8, 153.6, 154.6, 155.0, 159.4, 159.4, 195.5, 200.5 ppm。
【0107】
前記物理化学的性状及びスペクトルデータを詳細に検討した結果、化合物BF-0307Aを、下記の式で表される構造を有する2-(2-(2,6-ジヒドロキシ-3-(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)ベンゾイル)-3-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-3-(2,6-ジヒドロキシ-3-(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)フェニル)-4-ヒドロキシ-6-メチル-1H-インデン-1-オンであると構造決定した。
【化6】
【0108】
[製造例I-3: BF-0307株の培養液からの新規化合物BF-0307Bの精製]
前記製造例I-1に記載の培養で得られた培養液 (2 L) を遠心分離して菌体を得た後、菌体にアセトン (1 L) を加え、1時間超音波処理後、菌体抽出液を得た。減圧下で、抽出液から溶媒を留去し、茶褐色の粗物質 (8.4 g) を得た。この粗物質 (2.9 g) を、ODS カラム (ODS 200 g) にて精製を行った。40%、60%、80%、及び100% アセトニトリル水溶液の各混合溶媒を展開溶媒とするODSクロマトグラフィーを行った。溶出液は、各溶媒条件について500 mLを2画分ずつ (40%-1及び-2、60%-1及び-2、80%-1及び-2、並びに100%-1及び-2画分) 分画した。60%アセトニトリル溶出液の第2画分 (60%-2画分) を減圧下で濃縮し、茶褐色物質 (118 mg) を得た。このうち、 30.5 mg を少量のメタノールに溶解し、分取 HPLC (カラム:PEGASIL ODS SP100、20 φ× 250 mm、センシュー科学) により精製を行った。50%〜70% アセトニトリル水溶液のグラジエント条件 (0〜40分間) を移動相とし、溶出液を、8 mL/min の流速において溶出した。溶出液は、UV 210 nm における吸収をモニターした。溶出液の活性試験の結果、保持時間 27.5分に活性を示すピークを観察した。そこで、このピークを分取した。分取液を、減圧下濃縮し、赤色粉末の化合物BF-0307Bを、収量 6.1 mg で単離した。
【0109】
得られた化合物BF-0307Bの物理化学的性状は、以下の通りである。
(1)性状:赤橙色粉末
(2)分子式:C
23H
26O
5
ESI-MS (m/z) [M+H]
+ 計算値 383.18585、 実測値 383.18573
(3)分子量:382
ESI-MS (m/z) で [M+H]
+ 383、 [M+H]
- 381 を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定、λ
max (MeOH, ε):261.4 (23302)、314.2 (49660)
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定、ν
max 3414、1617 cm
-1 等に特徴的な吸収極大を示す
(6)旋光度:[α]
D27 -17.5 (c= 0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール、クロロホルム及び酢酸エチルに可溶
(8)
1H及び
13C-NMR:重ジメチルスルホキシド中で、バリアン社製 600 MHz 核磁気共鳴スペクトロメーターで測定した水素の化学シフト (ppm) 及び炭素の化学シフト (ppm);
δ
H:1.00 (3H), 1.36 (3H), 1.76 (3H), 1.79 (3H), 2.37 (3H), 3.28 (2H), 5.33 (1H), 6.12 (1H), 6.88 (1H), 6.90 (1H), 7.15 (1H) ppm
δ
C:18.0, 21.4, 21.5, 22.2, 25.9, 28.8, 56.3, 84.4, 108.0, 111.8, 116.2, 121.8, 122.5, 122.8, 129.8, 133.9, 135.4, 137.0, 142.1, 151.9, 153.9, 155.1, 208.0 ppm。
【0110】
前記物理化学的性状及びスペクトルデータを詳細に検討した結果、化合物BF-0307Bを、下記の式で表される構造を有する3-(2,6-ジヒドロキシ-3-(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)フェニル)-3,4-ジヒドロキシ-2,2,6-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オンであると構造決定した。
【化7】
【0111】
<II. 新規化合物の薬理試験>
前記の手順で製造された化合物について、下記の手順でSOAT1阻害活性及びSOAT2阻害活性を調査した。
【0112】
[II-1:SOAT1及びSOAT2酵素タンパク質の調製方法]
SOAT1及びSOAT2酵素タンパク質の調製は、Uelmenらの方法(Uelmenら, J. Biol. Chem., 第270巻, 26192-26210頁, 1995年)を一部改変して行った。SOAT1酵素タンパク質の抽出源としては、マウスマクロファージミクロソーム由来の膜画分を用いた。SOAT2酵素タンパク質の抽出源としては、マウス肝臓ミクロソーム由来の膜画分を用いた。マウスマクロファージ及びマウス肝臓を、緩衝液A[50 mMトリス塩酸緩衝溶液(pH 7.8)、1 mMエチレンジアミン四酢酸及び1 mMフェニルメタンスルフォニルフルオリド]中で、ポッター型ホモジナイザー(Tokyo-RIKO社製)を用いて、それぞれホモジナイズした。これらを、12000×gで遠心し、それぞれの上清を、10000×gで超遠心した。得られた沈渣を、マウスマクロファージミクロソーム画分及びマウス肝臓ミクロソーム画分とした。これらの画分を、5 mg/mlのタンパク質濃度となるように緩衝液Aで調整して、SOAT1酵素タンパク質及びSOAT2酵素タンパク質の酵素源を得た。
【0113】
[II-2:SOAT1阻害活性及びSOAT2阻害活性の測定方法]
SOAT1活性及びSOAT2活性の測定は、下記の手順で行った。200μgタンパク質量の前記酵素源、200 mM牛血清アルブミン及び[1-
14C]オレオイルコエンザイムA(最終濃度170μM, 0.09μCi)と、所定量の各実施例化合物を含む試料とを緩衝液Aに加えて、全量を200μlに調整して、反応溶液を得た。前記反応溶液を、37℃で5分間インキュベートして反応させた。前記試料の代わりに、10μlのメタノールを加えて調製した反応溶液を、コントロールの反応溶液とした。
【0114】
インキュベート後、反応溶液に、1.2 mlクロロホルム/メタノール(1:2)溶液を加えて反応を停止させた。反応停止後の反応溶液から、Blish & Dyer法(Blish & Dyer, Can. J. Biochem. Physiol., 第37巻, 911-917頁, 1959年)にしたがって、脂質を回収した。得られたクロロホルム層を乾固した。乾固したクロロホルム層を、薄層クロマトグラフィー(TLC)用プレート(シリカゲルプレート、厚さ0.5 mm、メルク社製)にスポットし、ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(70:30:1, v/v)の溶媒で展開して分離した。次に、BAS2000バイオイメージアナライザー(富士フィルム社製)を用いて、TLCプレート上で分離された[
14C]コレステリルオレートを定量した。各実施例化合物を含む試料の測定結果を、コントロールの測定結果と比較することにより、各実施例化合物のSOAT1阻害率又はSOAT2阻害率を以下の式に基づき算出した。なお、前記[
14C]コレステリルオレートの定量においては、何もスポットしていないTLCプレート上の放射活性を、バックグラウンド値とした。
【数1】
【0115】
前記手順で算出した阻害率から、SOAT1活性又はSOAT2活性を50%阻害する各実施例化合物の濃度(SOAT1に対するIC
50又はSOAT2に対するIC
50)を決定した。また、SOAT2阻害に対する選択性(SI値)を、以下の式に基づき算出した。
SI=(SOAT1に対するIC
50)/(SOAT2に対するIC
50)
【0116】
実施例化合物のSOAT1阻害率、SOAT2阻害率及びSI値の結果を表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。