(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明に係るキャパシタの充放電回路について図を参照しながら説明を行う。なお、以下の説明は本発明の一実施の形態および一実施例についての例示であって、本発明は以下の説明に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施の形態は変更することができる。特に図面中に示した配線や回路構成については、同じ機能を有する他の構成に変更することができる。
【0014】
図1に本発明に係るキャパシタの充放電回路1(以後単に「充放電回路1」とも呼ぶ。)を示す。本発明に係る充放電回路1では、キャパシタユニット10と、降圧ユニット20と、降圧ユニット切換ブロック30で構成される。なお、充電用の電力源8と負荷9が充放電回路1に接続される。
【0015】
ここで、電力源8は定電圧源が好適に利用でき、負荷9はモータ、電子回路といった負荷が好適に利用できる。また負荷9は電力源8自体を含んでもよい。すなわち、電力源8から得た電荷を電力源8自体に戻すような構成であってもよい。
【0016】
キャパシタユニット10には、6つの端子が設けられている。それぞれ端子T10a、端子T10E、端子T10Ca、端子T10Cb、端子T10Cc、端子T10Cdとする。端子T10aは、降圧ユニット切換ブロック30に接続される。端子T10Eは、接地線10Eを介して接地される。また、端子T10Ca、端子T10Cb、端子T10Cc、端子T10Cdには、キャパシタCs(後に詳説する。)が接続される。
【0017】
降圧ユニット20には、端子T20iと端子T20o、および端子T20Eの3つの端子が設けられる。端子T20iと端子T20oは降圧ユニット切換ブロック30と接続される。また、端子T20Eは接地線20Eを介して接地される。
【0018】
降圧ユニット切換ブロック30には、6つの端子が設けられており、それぞれ端子T30a、端子T30b、端子T30aa、端子T30ab、端子T30ba、端子T30bbとする。
【0019】
端子T30aと端子T30bは、降圧ユニット20の端子T20iおよび端子T20oとそれぞれ接続されている。
【0020】
端子T30aaは、電力源8と接続されている。端子T30abと端子T30baは、キャパシタユニット10の端子T10aと接続されている。また端子T30bbは、負荷9と接続されている。
【0021】
降圧ユニット切換ブロック30は、2つの2値切換スイッチが同期動作するように構成されたものである。すなわち、端子T30aは端子T30aa若しくは端子T30abの何れかと接続し、端子T30bは端子T30ba若しくは端子T30bbの何れかと接続する。また、これらの接続動作は同期しており、端子T30aが端子T30aaと接続する場合は、端子T30bは端子T30baと接続し、端子T30aが端子T30abと接続する場合は、端子T30bは端子T30bbと接続する。
【0022】
なお、これらの切換は、別途与えられる充放電切換信号Ssによって行われる。充放電切換信号Ssは、充放電回路1の外部から与えられてもよい。また、後述する降圧ユニット20内の制御部22が生成してもよい。
【0023】
図2にキャパシタユニット10の構成を示す。キャパシタユニット10は、キャパシタC1とキャパシタC2(まとめて呼ぶ場合は「キャパシタCs」とする。)および、同期して切り変わる第1直並列切換スイッチSW1と第2直並列切換スイッチSW2で構成される。キャパシタユニット10は、キャパシタC1およびキャパシタC2を充電する際にはそれぞれのキャパシタを並列に接続し、放電させる際には、それぞれのキャパシタを直列に接続させる。
【0024】
なお、ここでは、キャパシタCsが2つある場合を示すが、使用されるキャパシタの数は2つに限定されるものではない。例えば、
図3には、キャパシタCsが3つある場合を示す。キャパシタCsが3つ以上あると同期して切り換わる直並列切換スイッチは2n−2個(「n」はキャパシタの数)使用される。
図3では直並列切換スイッチは4つある。
【0025】
このようにキャパシタCsの数が増加しても、同期して切り換わる直並列切換スイッチによって、
図2の動作と同様の動作によって、各キャパシタを並列接続から直列接続に切り換えることができる。
【0026】
再び
図2を参照する。キャパシタユニット10には、送電線10Lと接地線10Eが接続される。送電線10Lは、端子T10aから降圧ユニット切換ブロック30の端子T30abおよび端子T30ba(
図1参照)と接続されている。送電線10Lを通して、キャパシタCsを充電する場合は、キャパシタユニット10へ電気が流れ、キャパシタCsから放電する場合は、キャパシタユニット10から電気(電荷)が流れ出る。接地線10Eは、端子T10Eに接続され、キャパシタユニット10を接地する。
【0027】
キャパシタC1は、端子T10Caおよび端子T10Cbに接続される。キャパシタC2は、端子T10Ccおよび端子T10Cdに接続される。
【0028】
次にキャパシタユニット10の内部構成を説明する。キャパシタユニット10内には第1直並列切換スイッチSW1と第2直並列切換スイッチSW2の2つのスイッチが配置されている。
【0029】
第1直並列切換スイッチSW1は、開閉スイッチである。開閉する側の端子を選択端SW1vと呼び、開閉しない側の端子を根元端SW1rと呼ぶ。第1直並列切換スイッチSW1は、「閉」状態で選択端SW1vと根元端SW1r間が導通し、「開」状態で、選択端SW1vと根元端SW1r間が切断状態(不導通状態)となる。
【0030】
第2直並列切換スイッチSW2は、根元端SW2rからの接続先を切り換えるスイッチである。接続先を選択端SW2vおよび選択端SW2vaとする。なお、ここで選択端SW2vaは、第1直並列切換スイッチSW1の根元端SW1rと接続されている。すなわち、第2直並列切換スイッチSW2は、選択端SW2v若しくは第1直並列切換スイッチSW1の根元端SW1rと接続するといってよい。
【0031】
第1直並列切換スイッチSW1および第2直並列切換スイッチSW2の切換動作は同期して行われる。より具体的には、第1直並列切換スイッチSW1が閉となる場合(根元端SW1rと選択端SW1vが導通する場合)は、第2直並列切換スイッチSW2は、根元端SW2rと選択端SW2vが導通する。
【0032】
また、第1直並列切換スイッチSW1が開となる場合(根元端SW1rと選択端SW1vが切断状態となる場合)は、第2直並列切換スイッチSW2は、根元端SW2rと選択端SW2va(第1直並列切換スイッチSW1の根元端SW1r)が導通する。第1直並列切換スイッチSW1および第2直並列切換スイッチSW2の切換動作は、充放電切換信号Ssによって行われる。
【0033】
送電線10Lが接続されている端子T10aは、端子T10Caに接続されている。また、第2直並列切換スイッチSW2を介して端子T10Ccと接続されている。より具体的には端子T10aは、第2直並列切換スイッチSW2の選択端SW2vに接続されている。
【0034】
一方、接地線10Eが接続されている端子T10Eは、端子T10Cdに直接接続されている。また、端子T10Eは、第1直並列切換スイッチSW1を介して端子T10Cbに接続されている。より具体的には、端子T10Eは第1直並列切換スイッチSW1の選択端SW1vに接続されている。
【0035】
図4に、降圧ユニット20の構成を示す。降圧ユニット20は入力S20iの電圧を所定の電圧に降圧し出力S20oとして出力するユニットである。構成は特に限定されるものではないが、スイッチング式DC−DCコンバータが好適に利用できる。
図4では、スイッチング式DC−DCコンバータの構成を示している。
【0036】
降圧ユニット20の端子T20iは、降圧ユニット切換ブロック30の端子T30aと接続される(
図1参照)。また降圧ユニット20の端子T20oは、降圧ユニット切換ブロック30の端子T30bに接続される(
図1参照)。また端子T20Eには、接地線20Eが接続され、接地される。端子T20iは入力端、端子T20oは出力端と呼んでもよい。
【0037】
次に降圧ユニット20の内部構成を説明する。なお、第1切換スイッチ24および第2切換スイッチ26は開閉スイッチであり、
図2での説明と同様に、開閉する側を選択端とし、開閉しない側を根元端と呼ぶ。
【0038】
降圧ユニット20は制御部22と、第1切換スイッチ24と第2切換スイッチ26とインダクタンスLで構成されている。第1切換スイッチ24の根元端24rは、端子T20iと接続されている。第1切換スイッチ24の選択端24vは、インダクタンスLの一端に接続される。インダクタンスLの他端は端子T20oに接続される。
【0039】
第1切換スイッチ24の選択端24vには、また第2切換スイッチ26の根元端26rが接続される。第2切換スイッチ26の選択端26vは、接地線20Eが接続されている端子T20Eと接続されており、接地されている。
【0040】
制御部22は、インダクタンスLの他端電圧(端子T20oの電圧)をモニタし、インダクタンスLの他端電圧に基づいて、第1切換スイッチ24と第2切換スイッチ26を交互に所定の時間だけ開閉する。
【0041】
制御部22は、マイクロコンピュータ等が好適に利用できる。なお、第1切換スイッチ24と第2切換スイッチ26を交互に所定の時間だけ開閉するように制御する機能を有していれば、マイクロコンピュータでなくてもよい。また、降圧ユニット20は1つの素子として構成されていなくてもよい。したがって、制御部22は、第1切換スイッチ24および第2切換スイッチ26と別々に存在してもよい。
【0042】
また、制御部22は、第1切換スイッチ24および第2切換スイッチ26の制御だけを行っていなくてもよい。すなわち、制御部22は他の処理を行いながら第1切換スイッチ24および第2切換スイッチ26の制御を行ってもよい。
【0043】
次に充放電回路1の動作について説明する。
図5には、充放電回路1が充電する場合の構成を示す。キャパシタCsに充電する場合は、降圧ユニット切換ブロック30では、端子T30aと端子T30aaが接続され、端子T30bと端子T30baが接続される。この結果、キャパシタユニット10と電力源8の間に降圧ユニット20が挿入され、電力源8からの電気エネルギーは、降圧ユニット20を介してキャパシタユニット10に供給される。
【0044】
また、キャパシタユニット10では、第1直並列切換スイッチSW1は閉じ、第2直並列切換スイッチSW2は、根元端SW2rと選択端SW2vが接続される。この結果、キャパシタC1とキャパシタC2は、端子T10aと端子T10Eの間で並列に接続される。これらの切換は充放電切換信号Ssによって行われる。
【0045】
降圧ユニット20は、制御部22が第1切換スイッチ24と第2切換スイッチ26を開閉することで、電力源8の出力電圧(VDDとする。)の矩形波を発生する。さらに、それぞれのスイッチの開閉時間を調節することで、High電圧の割合を示すデューティ比dを調節することができる。すなわち、制御部22は、第1切換スイッチ24がONとなる割合であるデューティ比dを段階的にデジタル的に変化させてもよい。この矩形波はインダクタンスLによって平均化される。したがって、時間平均的な降圧ユニット20の出力電圧は、「VDD×d」で表される。
【0046】
さて、電圧は電力源8から降圧ユニット20を経て、キャパシタユニット10のキャパシタC1とキャパシタC2に並列に印加される。そこで、降圧ユニット20において、キャパシタCsの充電の過程で流れる電流がほぼ一定になるように、印加電圧を徐々に高くなるように供給することで、キャパシタCsに対して疑似的に定電流源と見なせるようにすることができる。すなわち、キャパシタCsに対して効果的に充電ができる。
【0047】
なお、定電流源を用いることでキャパシタへの充電の効率が高くなるのは、以下の理由による。例えば、キャパシタに定電圧で充電を行った場合、効率が50%となることが知られている。すなわち、定電圧Vで充電すると電源のする仕事はQV=CV
2である。しかし、キャパシタのエネルギーはCV
2/2であることから効率は50%である。残りの50%は抵抗においてジュール熱となる(例えば参考文献1:電気二重層キャパシタと蓄電システム 第3版、岡村廸夫、日刊工業新聞、page15等)。
【0048】
一方、定電圧充電の代わりに定電流充電を用いると、前述のジュール熱が大きく低減できることも知られている。
【0049】
すなわち、定電流Iでt時間充電を行ったときの電荷をQ、キャパシタに蓄えられる電力量をUとすると以下の(1)式および(2)式の関係がある。
Q=It ・・・(1)
U=Q
2/(2C) ・・・(2)
【0050】
抵抗Rで失われる電力量Lは(3)式のように表される。
L=RI
2t=RQ
2/t ・・・(3)
【0051】
すると充電時の効率Pcは、(4)のように整理することができる。
Pc=U/(U+L)=t/(t+2RC) ・・・(4)
【0052】
したがって、時間tを十分大きくすると、Pcが100%となることがわかる(参考文献1)。
【0053】
図4の構成で、制御部22を用いてデューティ比dを制御することにより、降圧ユニット20から出力される電圧を制御し、電力源8からキャパシタC1およびキャパシタC2に流れる電流がほぼ一定となるように制御すれば、降圧ユニット20に接続されるキャパシタCsに対する充電効率を高くすることができる。
【0054】
次に
図6を参照する。
図6では、充放電回路1が放電する際の構成を示す。降圧ユニット切換ブロック30では、端子T30aと端子T30abが接続され、端子T30bと端子T30bbが接続される。その結果、キャパシタユニット10と負荷9の間に降圧ユニット20が挿入され、キャパシタユニット10の出力は降圧ユニット20を介して負荷9に供給される。
【0055】
また、キャパシタユニット10では、第1直並列切換スイッチSW1は開き(切断状態)、第2直並列切換スイッチSW2は、根元端SW2rと選択端SW2va(第1直並列切換スイッチSW1の根元端SW1r)が接続される。これらの接続の切り換えは充放電切換信号Ssによって行われる。
【0056】
その結果、キャパシタC1とキャパシタC2は、端子T10aと端子T10Eの間で直列接続され、その電圧は、降圧ユニット20を経て、負荷9に印加される。降圧ユニット20が、出力電圧を調整することによって、一定の電圧が負荷9に供給されることとなる。
【0057】
後述する実施例で示すように、並列で充電したキャパシタCsを直列に接続して、降圧ユニットを介して出力すると、放電時に昇圧回路を用いて放電した時に発生する効率の劣化が抑制される。
【0058】
図7および
図8は、
図5および
図6に対応する構成で、負荷9ではなく、電力源8に対して充放電する場合を示す。
図7を参照して、降圧ユニット20を介して、並列に接続されたキャパシタCsを充電する構成は、
図5の場合と同じである。一方、
図8を参照して、キャパシタCsを直列に繋ぎ代えて放電する先は電力源8となっている。このように、充放電回路1の放電先は電力源8であってもよい。
【0059】
言い換えると、充電時には電力源8から降圧ユニット20を介してキャパシタユニット10を充電し、放電時には前記キャパシタユニット10から前記降圧ユニット20を介して電気エネルギーを前記電力源8に戻す回路であってもよい。
【0060】
なお、上記の説明では、降圧ユニット20は充電時および放電時とも同じ降圧ユニット20を用いたが、本発明に係る充放電回路は充電時にはキャパシタCsを並列接続で充電し、放電時にはキャパシタCsを直列接続に組み替えて、降圧ユニット(降圧回路)を通して負荷9に供給すればよい。したがって、充電時に降圧ユニット20を用いない回路であっても良い。
【0061】
図9には、充電時には、定電流電源42を用いる場合の構成について示す。キャパシタユニット10には、充放電切換スイッチ45が接続される。充放電切換スイッチ45の一方には、定電流電源42が接続され、他方には降圧ユニット20が接続される。負荷9は降圧ユニット20に接続される。
【0062】
このような充放電回路2では、充電時には、キャパシタユニット10には定電流電源42が接続される。キャパシタユニット10内のキャパシタC1およびキャパシタC2はもちろん、並列接続されている。また、放電時には、キャパシタユニット10は降圧ユニット20に接続され、負荷9に電圧を供給する。
【0063】
なお、充放電時のキャパシタユニット10内の第1直並列切換スイッチSW1および第2直並列切換スイッチSW2は、充放電切換スイッチ45と同期して切換わる。切換の同期は
図9に、点線と実線で示したとおりである。すなわち、充放電切換スイッチ45が定電流電源42とキャパシタユニット10を接続する場合は、
図9中で実線で示すように、第1直並列切換スイッチSW1は閉じ(導通)、第2直並列切換スイッチSW2は選択端SW2vと接続される。
【0064】
また充放電切換スイッチ45が降圧ユニット20とキャパシタユニット10を接続する場合は、
図9中で点線で示すように、第1直並列切換スイッチSW1は開き(切断)、第2直並列切換スイッチSW2は選択端SW2vaと接続される。
【0065】
なお、降圧ユニット20を充放電で兼用しない場合、キャパシタユニット10に充電用の電力を供給するものを充電源ユニット40と呼ぶ。
図9の場合は、充電源ユニット40は定電流電源42である。
【0066】
図10には、充電源ユニット40を定電圧電源48と他の降圧回路46を用いた場合の構成について示す。
図10においても、充放電切換スイッチ45が配置されている。降圧回路46は、降圧ユニット20が充電時に使用される場合と同様の動作を行い、キャパシタCsに疑似的な定電流を付与する。
【0067】
なお、
図10においては、降圧回路46は無くてもよい。すなわち、充電源ユニット40は、定電圧電源48だけであってもよい。充電時に定電圧電源48をキャパシタCsに対して直接用いると、すでに説明したように充電時の効率は50%に低下する。しかし、この場合大きな電流を流すことができ、短時間に素早く大きな電気エネルギーをキャパシタCsに充電できる利点がある。
【実施例】
【0068】
以下にキャパシタCsの電荷を降圧回路を用いて取り出した場合に効率が高くなることを確認した実験結果を示す。
図11には
図4で示した降圧ユニット20の端子T20iにキャパシタC100を接続し、端子T20oにキャパシタC102を接続した回路を示す。キャパシタC100からキャパシタC102へ電流を流すとき、降圧ユニット20は降圧回路として動作する。
【0069】
キャパシタC100の容量C
100を5.3[F]とし、キャパシタC102の容量C
102を88.8[F]とした。なお、放電時に降圧回路を用いる効果を調べるための実験なので、キャパシタC100は1つのキャパシタを用いた。
【0070】
第1切換スイッチ24と第2切換スイッチ26は、交互に開閉される。すなわち、一方が閉じている時は他方は開いており、一方が開いた時は他方は閉じている。したがって、インダクタンスLの左側には、端子T20iの電圧が矩形波として現れる。この矩形波のデユーティ比dは、24段階変化させた。
【0071】
具体的にデューティ比dは48/96,51/96,54/96,・・・,90/96,93/96,96/96と階段的に設定した。すなわち、最初は第1切換スイッチ24がONとなる割合を50%とし、その後3/96=2.08%ずつデューティ比dを大きくし、最終的に第1切換スイッチ24がONとなる割合を100%とした。
【0072】
キャパシタC100およびキャパシタC102の初期電位は、5.012[V]および2.505[V]に設定した。キャパシタC100の電位はキャパシタC102の電位の2倍とした。これは、キャパシタC100は2つのキャパシタを並列で充電した後、より高い電位をつくるためにキャパシタを並列から直列とすることにより2倍の電位にできる状況を考慮し、初期電位の設定を行ったものである。
【0073】
これにより、キャパシタC100からキャパシタC102へ降圧ユニット20(降圧回路)により電気エネルギーを送ることができる。なお、キャパシタC100から流れ出る電流、キャパシタC102に流れ込む電流、キャパシタC100およびキャパシタC102の端子間電圧はそれぞれ測定できるように測定装置を配置した。
【0074】
キャパシタC100の電位の変化を
図12に示す。キャパシタC100の電位は、最初5.012[V]であったが、放電をすることにより、最終的に、2.728[V]となった。また、キャパシタC102の電位は、最初2.505[V]に設定していたが、キャパシタC100からの電荷を受け取ることにより、最終的に2.697[V]となった。
【0075】
次にキャパシタC100から放電時、流れ出る電流を
図13に示す。電流が小さくなった時に、デューティ比dを上げることにより、キャパシタC100から電流を取り出し、放電が出来ていることがわかる。
【0076】
放電時において、キャパシタC100から流れ出た電荷量は、Q=C
100V=5.3[F]×(5.012[V]−2.728[V])=12.1[C]であった。一方、
図13の電流を時間積分することにより、キャパシタC100から流れ出た電荷量が求まる。その結果を
図14に示す。
図14より、流れ出た電荷量の値は、12.3[C]であり、電圧から求めた電荷量12.1[C]とほぼ一致しており、実験の正確性を確認できた。
【0077】
次にキャパシタC102に放電時、流れ込む電流を
図15に示す。電流が小さくなった時に、デューティ比dを上げることにより、キャパシタC102に再び電流を多く流し込むことが出来ていることがわかる。
【0078】
ここで放電時において、キャパシタC102に流れ込む電荷量を求める。最初キャパシタC102の電位は、2.505[V]であり、最終的に、2.697[V]となった。よってキャパシタC102に流れこむ電荷量は、(5)式のようになる。
【0079】
【数1】
・・・(5)
【0080】
一方、
図15の電流を時間積分することにより、キャパシタC102に流れ込む電荷量が求まる。その結果を
図16に示す。積分で得られた電荷量の値は、16.8[C]であり、電圧から求めた電荷量17.0[C]とほぼ一致しており、実験の正しさが確認できた。
【0081】
この実験結果を基に放電効率を求める。まずキャパシタC100が失った電気エネルギーΔE
1を求める。キャパシタC100の初期電圧、最終電圧を、V
1i、V
1fとすると、ΔE
1は(6)式のように表される。
【0082】
【数2】
・・・(6)
【0083】
一方キャパシタC102の得たエネルギーΔE
2は、キャパシタC102の初期電圧、最終電圧を、V
2i、V
2fとすると、(7)式のように表される。
【0084】
【数3】
・・・(7)
【0085】
よって放電効率η
2は、(8)式のように求められる。
【0086】
【数4】
・・・(8)
【0087】
このように、キャパシタC100からキャパシタC102へ電気エネルギーを送る際の放電効率は、非常に高かった。
【0088】
次に比較例として、従来行われる降圧回路を用いてキャパシタに充電し、そのまま放電する場合について調べた結果を示す。そのまま放電するとは、充電されたキャパシタからの放電は降圧回路を逆方向に使用し、昇圧回路として使うことを意味する。すなわち、1つのキャパシタに対して降圧回路で充電し、昇圧回路を通して放電する。
【0089】
実験回路を
図17に示す。電源電圧V
DDに対してpMOSトランジスタ62のソース(Sp)を接続し、ドレイン(Dp)にnMOSトランジスタ64のドレイン(Dn)を接続する。共通になったドレインをドレインDcとも呼ぶ。nMOSトランジスタ64のソース(Sn)は接地する。pMOSトランジスタ62とnMOSトランジスタ64のゲート(Gp、Gn)は共通として、ここに制御信号60を入力する。共通のゲートをゲートGcとも呼ぶ。
【0090】
共通となったドレイン(Dc)には、インダクタンス66を接続する。インダクタンス66に直列にキャパシタC104の一端を接続した。キャパシタC104の他端はそのまま接地した。なお、電源から流れ出る電流Ipを測定するために電流計61を、またキャパシタC104に流れ込む電流Icを測定するために電流計63を設けた。またキャパシタC104の端子間電圧を測定するために電圧計65をキャパシタC104と並列に接地した。
【0091】
図17の回路の充電の様子を
図18に、放電の様子を
図19に示す。
図18(a)は制御信号60として0(ゼロ)[V]が印加された時を示し、pMOSトランジスタ62がON、nMOSトランジスタ64がOFFの状態で、電源からpMOSトランジスタ62、インダクタンス66を通り、キャパシタC104に電流が流れる。
【0092】
図18(b)は制御信号60として電源電圧V
DDが印加された時を示し、pMOSトランジスタ62がOFF、nMOSトランジスタ64がONの状態で、インダクタンス66を流れていた電流は流れ続けようとして、インダクタンス66が電池の役割を果たし、GNDからインダクタンス66、そしてキャパシタC104へと電流が流れる。
【0093】
図19は放電時を表す。
図19(a)は制御信号60として電源電圧V
DDが印加された時を示し、pMOSトランジスタ62がOFF、nMOSトランジスタ64がONの状態で、キャパシタC104からインダクタンス66へ、nMOSトランジスタ64を通り電流が流れ、インダクタンス66にエネルギーを貯める。
【0094】
図19(b)は、制御信号60として0(ゼロ)[V]が印加された時を示し、pMOSトランジスタ62がON、nMOSトランジスタ64がOFFの状態で、インダクタンス66を流れていた電流は流れ続けようとして、インダクタンス66が電池の役割を果たし、キャパシタC104からインダクタンス66、そしてpMOSトランジスタ62を通って、電源へと電流が流れる。この過程では、インダクタンス66に電流の形で貯められたエネルギーを電源に供給している状況となっている。
【0095】
図17の回路を用いて行った充電および放電の結果を
図20から
図22に示す。電源電圧V
DDは2.5Vであった。また負荷のキャパシタC104の容量Cは3.00Fとした。制御信号60(Pulse Width Modulation(PWM)信号)は、Highとなる割合であるデューティ比dを0、1/32、2/32、・・・、30/32、31/32、32/32と32段階に変化させた。
【0096】
この波形により、インダクタンス66の左端(共通ドレインDcが接続されている側)には入力PWM信号を反転した矩形電圧が生成される。インダクタンス66右端では電圧が平滑化され、インダクタンス66の値が十分大きい時、この矩形電圧は、d×V
DDの出力電圧となる。
【0097】
デューティ比dを階段的に変化させ、キャパシタC104の充放電を行った結果を
図20に示す。
図20は、キャパシタの電位の変化を示す。横軸は時間(秒:「s」と記した。)を表し、縦軸はキャパシタC104の端子間電圧(V)である。この電圧は、
図17において、V
Cに対応している。
【0098】
図21はインダクタンス66からキャパシタC104への充電電流を示すグラフである。横軸は時間(秒)を表し、縦軸はキャパシタC104に流れる電流(mA)を示す。この電流は、
図17において、Icに対応している。
図20および
図21を比較すると、階段電圧が上昇した直後に、大きな電流が流れていることがわかる。
【0099】
図22は電源から流れ出る電流を表すグラフである。横軸は時間(秒:「s」と記した。)を表し、縦軸は電源から流れ出る電流値(mA)を表す。この電流は、
図17において、Ipに対応している。
【0100】
図21と
図22において、t=0から1400(s)までは充電であり、1400(s)を超えた時間からは放電である。電流の符号が反転しているのは、電流の向きが逆となっていることを示す。すなわち、
図21の放電時において、キャパシタC104から電流が流れ出ることを表している。また、
図22の放電時において、電源に電流が流れ込むことを表している。
【0101】
電源電流Ipを時間積分した結果を
図23に示す。横軸は時間(秒:「s」と記した。)であり、縦軸は電源から流れ出る電荷量(C:クーロン)を表す。
図23においてΔQ
1は電源から流れ出た電荷量、ΔQ
2は電源に流れ込む電荷量を示す。これから充電時において、電源から流れ出た電荷量ΔQ
1は3.931Cであることがわかる。
【0102】
充電時の効率η
1はη
1=E
C/W
1で求められる。ここで、W
1は電源の行った仕事、E
Cはキャパシタの電気エネルギーである。W
1は、電源電圧をV、電源から流れ出た電荷量をΔQ
1とすると、W
1=VΔQ
1=2.5[V]×3.931[C]=9.83[J]と求まる。また、E
Cは、キャパシタの最大電圧をV
MとするとE
C=1/2・CV
M2=1/2×3.00×2.494
2=9.33[J]と求まる。よって、η
1=E/W
1=9.33/9.83=94.9%と求まり、高効率の充電であることがわかる。
【0103】
次に放電時の効率η
2を考える。η
2はキャパシタの電気エネルギーをどれだけ電源にもどすことができるか、その比率として定義する。ΔQ
2を電源に流れ込む電荷量として、電源の受け取るエネルギーW
2はW
2=VΔQ
2となる。ΔQ
2は、放電時において電源に戻る電荷量であり、
図23から3.931[C]−0.994[C]=2.937[C]となる。よってW
2=2.5[V]×2.937[C]=7.34[J]となる。またキャパシタC104の電気エネルギーは、E
C=1/2・C・V
M2=1/2×3.00×2.494
2=9.33[J]であったのでη
2はη
2=7.34[J]/9.33[J]=78.7%となる。
【0104】
以上のように、従来から使われている昇圧回路を用いた放電では、放電時の効率が約80%程度と低い値となるのに比べ、本発明による降圧回路を用いた放電ではおよそ95%という高い放電効率を得ることが可能となる。本発明により、エネルギーロスの少ない高効率の電気エネルギーの利用が可能となる。