(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筐体に取り付けられる錠前本体と、この錠前本体の位置に対応するように蓋体に取り付けられ、係合片が前記錠前本体に着脱自在に係合する差込部材とから成るかばん・ケース類の錠前に於いて、
前記錠前本体に凹所状収納部(12)を有する取付け基台(11)を設け、前記凹所状収納部に施錠カム(21)とクリック機能を有する一つの付勢手段(23)を組み込み、前記施錠カムは、その略中央部が前記取付け基台の垂直板状の取付けベース板(11a)と直交する施錠カム用軸(22)に軸支されていると共に、該施錠カムには周方向の一部に頂点部(21a)を有しかつ前記頂点部とは反対側の周方向の一部に第1係合部(21b)と第2係合部(21d)とを有する切欠状の凹所が形成され、
前記施錠カムが前記施錠カム用軸を中心として係合・非係合方向に回動すると、この施錠カムを少なくとも施錠方向に付勢する前記付勢手段が、該施錠カムに圧接する前記係合片が前記施錠カムの前記第1係合部に係合した後、該係合片が前記錠前本体内に更に進入すると、前記付勢手段の付勢力により、前記施錠カムは前記係合片を施錠位置へと引き寄せるように自動的に回動して施錠状態となる、かばん・ケース類の錠前。
請求項1に記載のかばん・ケース類の錠前に於いて、施錠カムは、その略中央部に施錠カム用軸が遊嵌合する軸孔を有し、不正開錠時に係合片が後退方向に移動すると、前記施錠カムは前記軸孔を介して前記係合片と略同方向へ移動し、これにより、前記取付け基台側に設けられた係合部に前記施錠カムの第2係合部が食い込むように当たり、施錠状態を保持することを特徴とするかばん・ケース類の錠前。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主たる課題は、施錠部材を構成する部品の数を少なくすると共に、簡単な機構と合理的な手段によって、かばん・ケース類の錠前本体と差込部材との係合、離脱関係を適確になさんとするものである。また、いわゆるワンタッチで自動的に施錠できると共に、施錠時、蓋体に取り付けられた差込部材を可能な限り施錠位置へと引き寄せ、かばん・ケース類の錠前に発生する「がたつき」を自動的に吸収して常に気密性、保持力を保ち、これにより、いわゆる「がたつき」が生じにくいかばん・ケース類の錠前を提供することである。本発明の二次的な課題は、前記課題に加え、かばん・ケース類の蓋体を無理やり開けようとしたりするという人為的な操作(特に第三者による不正開錠)や、かばん・ケース類取扱い時の衝撃(振動)による不意の開錠に対して一層保持力を増強できるかばん・ケース類の錠前を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のかばん・ケース類の錠前は、筐体Bに取り付けられる錠前本体10と、この錠前本体の位置に対応するように蓋体Aに取り付けられ、係合片53が前記錠前本体に着脱自在に係合する差込部材50とから成るかばん・ケース類の錠前1に於いて、前記錠前本体10に凹所状収納部12
を有する取付け基台11を設け、前記凹所状収納部に施錠カム
21とクリック機能を有する一つの付勢手段
23を組み込み、
前記施錠カム21は、その略中央部が前記取付け基台11の垂直板状の取付けベース板11aと直交する施錠カム用軸22に軸支されていると共に、該施錠カム21には周方向の一部に頂点部21aを有しかつ前記頂点部とは反対側の周方向の一部に第1係合部21bと第2係合部21dとを有する切欠状の凹所が形成され、
前記施錠カム21が前記施錠カム用軸22を中心として係合・非係合方向に回動すると、この施錠カム21を少なくとも施錠方向に付勢する
前記付勢手段23が、該施錠カムに圧接する前記係合片53が前記施錠カム
の前記第1係合部に係合した後、該係合片53が前記錠前本体内に更に進入すると、前記付勢手段23の付勢力により、前記施錠カム21は前記係合片53を施錠位置へと引き寄せるように自動的に回動して施錠状態となることを特徴とする。
【0006】
上記構成に於いて、施錠カムは、その略中央部に施錠カム用軸が遊嵌合する軸孔を有し、不正開錠時に係合片が後退方向に移動すると、前記施錠カムは前記軸孔を介して前記係合片と略同方向へ移動し、これにより、取付け基台側に設けられた係合部に前記施錠カムの第2係合部が食い込むように当たり、施錠状態を保持することを特徴とする。また、取付け基台側に設けられた係合部は、該取付け基台内に固定的に設けられた仕切り板に設けられていることを特徴とする。さらにクリック機能を有する
前記付勢手段の付勢力は、非楕円形状の施錠カムの頂点部が付勢手段の一方側に相当するばね腕の
略中央部を超えてバネ端部側を指向した場合には施錠方向に作用し、一方、前記頂点部が前記バネ端部側から前記
略中央部を超えて付勢手段の折返し中央部側を指向した場合には、開錠方向に作用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
独立請求項に記載の本発明は、施錠部材を構成する部品の数を少なくすると共に、簡単な機構と合理的な手段によって、かばん・ケース類の錠前本体と差込部材との係合、離脱関係を適確に行うことができる。当然、部品点数が少ないので、コスト低減に繋がる等の優れた効果がある。また、いわゆるワンタッチで自動的に施錠できると共に、施錠時、蓋体に取り付けられ差込部材を可能な限り施錠位置へと引き寄せ、かばん・ケース類の錠前に発生する「がたつき」を自動的に吸収して常に気密性、保持力を保ち、これにより、いわゆる「がたつき」が生じにくいかばん・ケース類の錠前を提供することができる。
【0008】
また従属項(例えば請求項2等)に記載の発明は、かばん・ケース類の蓋体を無理やり開けようとしたりするという人為的な操作(特に第三者による不正開錠)や、かばん・ケース類取扱い時の衝撃(振動)による不意の開錠に対して一層保持力を増強できる。さらに、例えば請求項4に記載の発明は、付勢手段がクリック機能を有する一つの付勢バネである付勢力を施錠方向と開錠方向に選択的に作用させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図は、本発明の技術的思想が、「筐体Bに取り付けられる錠前本体10と、この錠前本体の位置に対応するように蓋体Aに取り付けられ、係合片53が前記錠前本体に着脱自在に係合する差込部材50とから成るかばん・ケース類の錠前1に於いて、前記錠前本体10に凹所状収納部12
を有する取付け基台11を設け、前記凹所状収納部に施錠カム
21とクリック機能を有する一つの付勢手段
23を組み込み、
前記施錠カム21は、その略中央部が前記取付け基台11の垂直板状の取付けベース板11aと直交する施錠カム用軸22に軸支されていると共に、該施錠カム21には周方向の一部に頂点部21aを有しかつ前記頂点部とは反対側の周方向の一部に第1係合部21bと第2係合部21dとを有する切欠状の凹所が形成され、
前記施錠カム21が前記施錠カム用軸22を中心として係合・非係合方向に回動すると、この施錠カム21を少なくとも施錠方向に付勢する
前記付勢手段23が、該施錠カムに圧接する前記係合片53が前記施錠カム
の前記第1係合部に係合した後、該係合片53が前記錠前本体内に更に進入すると、前記付勢手段23の付勢力により、前記施錠カム21は前記係合片53を施錠位置へと引き寄せるように自動的に回動して施錠状態となること」を示すものである。
【0011】
実施形態には、錠前1を開錠(施錠カム21と係合片53との係合を解除)するための係合解除用操作部材41も図示しているが、該係合解除用操作部材41が、レバー式(
図9)か、サムターン式(
図10)か、それともスライド式かは、発明の課題との関係では本発明の本質的事項ではないので、その詳細な説明や付随する部材は割愛する。
【0012】
まず、
図1乃至
図9を参照して第1実施形態を説明する。この第1実施形態は、その操作部材41がレバー式の開錠タイプである。
図1は本発明の第1実施形態を示す正面視からの概略説明図(差込前)で、より正確には、かばん・ケース類の蓋体Aに取り付けられた「かばん・ケース類の錠前1」の差込部材50が、かばん・ケース類の筐体Bに取り付けられた錠前本体10の嵌合部(開口部)10aに差し込まれる(嵌入、係入)前の状態を説明するための概略正面図である。以下、差込部材50及び錠前本体10を構成する主たる部材の位置関係を説明する「上端部」、「下端部」、「左」、「右」、中央部等の各用語はこの
図1又は
図3を基準とする。
【0013】
図1に於いて、符号Aは蓋体、Bは筐体である。かばん・ケース類の蓋体Aは、周知の如く、筐体Bに対して開閉自在である。
図1は説明の便宜上、蓋体A及び筐体Bを含めて正面図とするが、蓋体A及び筐体Bは発明の特定要件ではない。
さて、1は金属製の錠前で、この錠前1は、差込部材50と錠前本体10とから成り、前記差込部材50は、例えば横長矩形板状に形成され、かつ左右端部に一対の取付け孔(不番)を有する基部51と、この基部の下端部を後側に略直角に折り曲げ形成された水平連設部52と、この水平連設部の内端部を下方方向に略直角に折り曲げ形成され、かつ、一側面に係合突起54を有する係合片53と、前記基部と固定手段或いは係合手段を介して一体的に結合する化粧カバー55から成る。
【0014】
図2は錠前本体10に差込部材50が差し込まれた状態を示す側面視側からの概略説明図である。この
図2を参照にすると、差込部材50は、後述する取付け基台11側に位置する垂直プレート状の基部51と、水平連設部52を含むアングル状の折り曲げ部分(不番)と、この折り曲げ部分に連設して下方に所要量延在する垂直プレート状の係合片53と、この係合片53の下端部の内面に取付け基台11の垂直ベース板に対して略直交するように突設されたやや小さな係合突起54と、前述の化粧カバー55から成る。
【0015】
なお、符号40は、本実施形態では取付け基台11と一体的に結合するケースカバー(化粧カバー)で、このケースカバー40には、例えば操作部材としてのレバーハンドル41が、その操作軸としての水平軸42を介して回転自在に設けられている。
図2及び
図9では、本発明の課題に全く関係のない、例えばレバーハンドル41は概略的に図示し、またその復帰バネ、レバーハンドル41用本施錠部材等は省略している。
【0016】
次に、
図3は施錠状態の一例を示す内部構造の概略説明図、
図4は主要部の分解説明図、
図5は錠前本体10を構成する取付け基台11の説明図、
図6は取付け基台の凹所状収納部12に組み込まれる仕切り板13等の斜視図である。
【0017】
実施形態の仕切り板13は、取付け基台11の一部を構成するものである。また
図6には、例えば取付け基台11の凹所状収納部12内に組み込まれる施錠手段が示されており、前記施錠手段を構成する施錠カム21は、仕切り板13の一側内面に添設状態に配設されていると共に、施錠用軸22に回転自在に軸支され、しかも、実施形態では、施錠カム21の周面にそのバネ端部23aが圧接する略鉤形状の付勢バネ23が、例えば凹所状収納部12内の左側壁側に配設されている(
図3参照)。
【0018】
したがって、錠前本体10は、少なくとも取付け基台11と、例えばこの取付け基台の凹所状収納部12に組み込まれる施錠部材とを備え、前記施錠部材は、例えば正面視略ハート形状に形成された施錠カム21と、その軸22と、回転中に施錠方向又は解錠方向に選択的に付勢するクリック機能を有する一つの付勢手段23とから成り、前記取付け基台11にはストッパー機能を有する突起状の係合部14を有する仕切り板13を含む。
【0019】
次に、
図4は、主要部の分解説明図、
図5は
図4に於いて、錠前本体10を構成する取付け基台11の説明図、
図6は、取付け基台11内に配設された固定部材としての仕切り板13及び取付け基台11内に組み込まれる施錠手段21、22、23の斜視図である。
【0020】
ここで、主に
図4を参照にして、取付け基台11の構成を説明する。11aは垂直板片であるが、この垂直板片は取付けベース板11aに相当し、この
垂直板状の取付けベース板11aは前述したケースカバー40に対向する。この取付けベース板11aの中央部或いは中央部寄りの部位には、その上端から下方に略垂直状態に所定量形成されたレバーハンドル41の「くちばし状」先端部41aが係入するスリット11bを始めとし、このスリットを基準にして前記取付けベース板11aの上端部の左右部位にそれぞれ突出形成された固着具用取付け部11c、付勢バネの中央部を支持する単数又は複数のバネ支持部11d、その他必要に応じて、差込部材の係合片用切欠部11e、鋲体用取付け部11f、図示しない軸取付け部等が設けられている。
【0021】
また取付けベース板11aは多角形の周壁11gを有し、この周壁11gの上壁部分の適宜部位は、略ハート形状の施錠カム21の回転に支障をきたさないように上方にやや段差状に逃げている。
【0022】
しかして、取付け基台11の凹所状収納部12には、
図6で示す仕切り板13が固定的に嵌め込まれる。仕切り板13は、垂直ベース板部分13aと、この垂直ベース板部分の左右及び下方を略直角に折り曲げ形成した複数個の端板部分13bとから成り、前記垂直ベース板部分13aの内壁面上部の適宜箇所には、ストッパー機能を有する取付け基台側の係合部としての突起状係合片14が設けられている。
【0023】
また、前記内壁面上部の左右部位には一対の固着具用の取付け孔15が形成されている。さらに、取付け基台11に設けられた施錠用軸22が貫通する貫通小孔13cが形成され、この貫通小孔13cの左右の適宜部位には、レバーハンドル41の先端部を案内する第1スリット13dと、前述した係合片53の係合突起54を案内する第2スリット13eがそれぞれ垂直方向に所要量形成されている。
【0024】
ここで、
図3を参照にして施錠カム21と付勢手段の一例としての付勢バネ23の位置関係を説明する。この
図3では凹所状収納部12内に組み込まれた仕切り板13、施錠用軸22に軸支された施錠カム21、施錠カム用付勢バネ23が見えるように描いている。そして、施錠カム21を施錠方向(時計方向)
に押圧する係合突起54と、施錠カム21を係合解除の方向(反時計方向)押圧するレバーハンドル41の先端部41aを便宜上長方形で描いている。
【0025】
しかして、この
図3から理解することができるように、施錠カム21は正面視略ハート形状に形成され、その一側の周面がやや三角形状に形成されていることから、周方向の一部に頂点部21aを有している。この三角形状の頂点部21aは、仕切板13の端板部分13b又は周壁11gの一部の内面及びバネ支持部11dにそれぞれ支持された付勢バネ23の右側(一方)のバネ端部23aと圧接する。
【0026】
また前記頂点部21aの反対側の他側面に相当する弧状面の略中央部には、その周面から半径内方向に横向き凹所の切欠状被係合部(ここでは「第1係合部21b」とする)が形成されている。さらに略中央部には上下方向にやや長径の軸孔21cが形成されている。なお、この施錠カム21の形状は一例であり、適宜に設計変更し得る事項である。
【0027】
ところで、符号21dは施錠カム21の円周方向の一部の凹状第1係合部21bとは別の第2係合部で、本実施形態では、凹所状第1係合部21bの上方付近の弧状面がそれに当たる。この第2係合部21dは、例えば不正開錠時、取付け基台11の一部、実施形態で、
図3で示すように仕切り板13の突起状係合部14の一端部(縁部)に食い込むように当たる。
【0028】
付言すると、まず発明の主たる課題との関係で、施錠カム21を、少なくとも施錠方向に直接付勢するようバネ端部23aが施錠カム21に圧接するクリック機能を有する付勢手段23を取付け基台11の凹所状収納部12に組み込んでいるので、差込部材50の係合片53が施錠カム21の切欠状の第1係合部21dに係合した後、そのまま係合片53が錠前本体10内に更に進入すると、付勢手段23の付勢力により、施錠カム21は係合片53の係合突起54を施錠位置へと引き寄せるように自動的に回動して施錠状態となる。
【0029】
次に発明の二次的な課題との関係で、施錠状態時、例えば不正開錠操作により差込部材が退出方向に移動したとき、取付け基台側に設けられた仕切り板13の係合部14に施錠カム21の第2係合部21dとしての一部が食い込むように当たり、これにより前記施錠状態を保持することができる。ここで「基台側に設けられた係合部14」は、取付け基台11の周壁の一部や取付け基台内に固定的に設けられた仕切り板13のストッパー14、その他のストッパーを言うもので、位置変位する施錠カム21を所定位置で受け止める仮施錠機能を有するストッパー部位やストッパー部材である。
【0030】
実施形態では、簡単な機構と合理的な手段(施錠手段の部品点数を少なくすること)を採用するために、施錠カム21を考慮して、基台側の係合部14を取付け基台11の凹所状収納部12に内設された固定部材としての仕切り板13に設けている。
【0031】
なお、本実施形態の施錠カム21の係合態様は、(a)差込部材50の係合突起54と係合する第1係合(例えば第1係合部21bとの係合)と、(b)前記第1係合を保持しながら取付け基台11の一部を構成する係合部14に食い込む或いは楔状に係合する第2係合(例えば第2係合部21dとの係合)の、合計二つの係合態様が存在するが、これは本発明の二次的な課題との関係で、本発明の特定要件と成り得る事項である。
【0032】
次に
図7は、「錠前1の施錠の確実性」に関する引き寄せ機構を概略的に示すものである。
図7(A)は、差込部材50が錠前本体10に進入し始め、施錠カム21の第1係合部21bにその係合片53の係合突起54が係合したことを示す。また
図7(B)は、前記係合片53が前記錠前本体10内にさらに進入し、これにより前記施錠カム21が施錠方向(時計方向)に回転したことを示す。このとき、施錠カム21の頂点部21aは、付勢手段23に当たる位置が変位し、その結果、付勢手段の付勢力が「開錠(解錠)」から「施錠」へと切替る。
【0033】
すなわち、付勢手段23は、好ましくはクリック機能を有する付勢バネであり、この付勢バネの付勢力は、略ハート形状の施錠カム21の頂点部21aが付勢手段の一方側に相当するばね腕の折曲げ状中央部(境界部)23bを超えてバネ端部23a側を指向した場合には施錠方向に作用する。それ故に、本発明の課題の一つである、「いわゆるワンタッチで自動的に施錠できると共に、施錠時、蓋体に取り付けられ差込部材を可能な限り施錠位置へと引き寄せ、かばん・ケース類の錠前に発生するがたつきを自動的に吸収して常に気密性、保持力を保持すること」を達成することができる。
【0034】
なお、開錠(解錠)時、
図7(B)及び
図7(A)は、それぞれ逆の作動態様になることから、前記頂点部21aが前記バネ端部23a側から前記略中央部(境界部)23bを超えて付勢手段の折返し中央部23c側を指向した場合には、開錠方向に作用する。
【0035】
ところで、本発明は、主たる課題(簡単な機構と合理的な手段によって、かばん・ケース類の錠前本体と差込部材との係合、離脱関係を適確になさんとする)を始めとし、二次的な課題を有するが、この二次的な課題は、かばん・ケース類の蓋体を無理やり開けようとしたりするという人為的な操作(特に第三者による不正開錠)や、かばん・ケース類の取扱い時の衝撃(振動)による不意の開錠に対して一層保持力を増強できるかばん・ケース類の錠前を提供することである。
【0036】
そこで、
図8に於いては、施錠カム21は、その略中央部に施錠カム用軸22が遊嵌合する軸孔21cを有し、不正開錠時に係合片53が後退方向に移動すると、前記施錠カム21は前記軸孔を介して前記係合片と略同方向へ移動し、これにより、取付け基台側に設けられた係合部14に前記施錠カムの第2係合部21dが食い込むように当たり、施錠状態を保持すること、いわば「施錠保持力の強化」を示す。
【0037】
ここでは
図8(A)、(B)を参照にして説明する。この態様における施錠カム21においては、その軸孔21cが前述したように上下方向がやや長径の楕円である。すなわち、これらの図に示した様に、施錠カム21の軸孔21cは、差込部材50の係合突起54の進入方向に楕円形状となっており、取付け基台11に設けられた施錠カム用軸22に前記軸孔21cが遊嵌合することから、施錠カム21は上下移動可能である。
【0038】
したがって、施錠状態時、例えば不正開錠操作により差込部材50が退出方向に移動したとき、取付け基台側の係合部14に施錠カム21の第2係合部としての一部21dが食い込むように当たり、或いは楔状となり、これにより施錠状態を保持することができる。
さらに付言すると、差込部材50の係合突起54が差込まれて進入し、施錠された初期の第1の状態においては、
図8(A)に図示したように、施錠カム21の第2係合部21dと取付け基台側のストッパー機能を有する突起状の係合部14とは若干の間隔をもって離れた状態であって、施錠カム用軸22は、楕円形状の軸孔21cの上方の円周部に当接された状態となって保持され、施錠状態に維持される。
【0039】
一方、「がたつき」が生じて施錠状態の差込部材50が、
図8(B)において上方(F方向)に変動した場合、つまり、係合片53が上方に退出した時には、その係合突起54が第1係合部21bを形成する横向き凹所状の上方内壁面に押し上げるように当たるので、
図8(B)に図示したように、その変動に応じて施錠カム21は縦方向の楕円形状の軸孔21cを介して上方に若干移動し、楕円形状の軸孔21cの下方の円周部に当接された状態となって保持され、これにより可動部材である施錠カムの第2係合部21dと固定部材である取付け基台側の係合部14の縁部とが「がっちり」と係合し、両係合部との間で、いわば楔のように抵抗力がかかった状態となる。
【0040】
付言すると、施錠カム21は施錠カム用軸22と嵌合する楕円形状の長孔の軸孔21cが上方への移動、および抵抗力がかかった状態の錠前本体10を構成する施錠カム21と取付け基台11又は取付け基台の一部を構成する仕切り板13の係合部14とは、係合の抵抗力の増大により、両方の係合部の保持力が強化され、これにより施錠力が強化される。
【0041】
次に、
図2及び
図9で示すように、取付け基台11の外側には、ケースカバー40が配され、この取付け基台11とケースカバー40とは、固定手段を介して合体する。またケースカバー40の外側には、操作部材41の一例としてレバーハンドルが設けられている。前記操作部材41は前述したように水平軸42を支点に所定範囲内で揺動可能である。この操作部材41は差込部材50の係合片53と施錠カム21の第1係合部21bとの係合を解除するためのものであるから、係合解除時、操作部材を操作すると、この操作部材41の嘴状の先端部(内端部)41aが施錠カム21の第2係合部としての周面を押圧する。この操作部材41の具体的構成や該操作部材に加味される本施錠手段の構成は本発明の課題と関係では関係がないので、詳細は割愛する。
【0042】
ところで、
図10は、第1実施形態の操作部材41を、例えば摘み方式(回転方式の開錠タイプ)に置換した場合の一例を示す概略説明図である。この
図10に於いて、41Aは摘み方式の操作部材で、この操作部材41Aの中心部には水平方向にサムターン軸45が固定的に設けられている。46はサムターン軸と共働する作動カムで、この作動カム46の略半円状部分46aの左右の下端部は、施錠レバー47の下端部を折り曲げ形成した水平受け部47aに対して押圧部となる。前記施錠レバー47は、取付け基台11内に上下方向にスライド可能に配設され、その垂直板部分47bの一側面の突片状ガイド部48を有している。また施錠レバー47は、前記垂直板部分47bの上端部に指先状に形成されたメス側の連係部49を有している。前記メス側の連係部49は、施錠カム21Aの頂点部側に設けた小突起状のオス側連係部21fに係合する。
【0043】
上記構成に於いて、操作部材41Aは、間接部材(作動カム46、施錠レバー47)を介して施錠カム21Aに接続していることから、操作部材41Aの回転操作力は、施錠カム21Aに間接的に伝わる。第1実施形態では、操作部材41の操作力が直接施錠カム21に伝わるので、部品点数を少なくするという利点がある。一方、第1実施形態を置換したサムターン式の操作部材41Aは、開錠時、左右方向のいずれに回しても、施錠カム21Aの第1係合部21bと差込部材50の係合片53の係合突起との係合を解除できるという効果がある。付言すると、前記係合解除時、前記操作部材41を操作すると、この操作部材の内端部が施錠カムの第2係合部としての周面を押圧する、又は操作部材41Aと連系する施錠レバー47が作動する、のいずれかにより前記施錠カム(21、21A)が開錠方向へと回転する。
【0044】
上記操作部材41Aを採用した実施形態は、例えば、蓋体に複数のかばん・ケース類の錠前を左右に取り付けたときに発生する左右勝手の使いづらさ、そのために左右仕様のかばん・ケース類の錠前を別々に2種類の作製しなければならならないという製品点数、工数、管理、コストアップ等という無駄をなくし、一種類のかばん・ケース類の錠前で左右使いの双方を兼用することができるという優れた効果がある。
【0045】
最後に、
図11は第1実施形態の取付け基台11をケースカバーに置換し、該ケースカバーに凹所状収納部12を設け、一方、第1実施形態の取付け基台11を、単なる板状の取付けベース板11Aに設計変更した実施形態である。したがって、前記ケースカバーに、本発明の主たる課題に必要な構成要素を適宜に設ける。このように凹所状収納部12を第1実施形態の取付け基台11に設けるか、又はケースカバーに設けるかは発明の本質的事項ではなく、本発明の主たる課題を逸脱しない限り、自由に設計変更し得る事項である。