(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
散薬を放出するために収容することができ、散薬放出装置に取り付けられることができ、散薬を放出する排出口と、前記排出口を遮蔽する遮蔽部と、前記排出口を更に遮蔽する追加遮蔽部とを有し、かつ、前記散薬放出装置に取り付ける際に、まず、前記追加遮蔽部が機械的に開放され、次に前記遮蔽部が電気的に開放されることを特徴とする散薬収容容器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、散薬を分包する散薬分包機に関し、特に、散薬分包機の一部である散薬包装装置に散薬を放出する散薬放出装置及び散薬放出装置とともに用いられる散薬収容容器に関し、散薬のこぼれ出しを防止し、正確に散薬を計量して散薬包装装置に放出することができる散薬収容容器及び散薬放出装置に関する。
【0002】
散薬調剤業務に関し、従来の装置においては、事前に所定の薬剤について1処方分の分量を薬剤師が計量台で計量してから、これを装置に投入することで、配分装置で所定包数分に分割して、分割した散薬を包装機で1包ずつ個包化するものであった。これに対して近年、薬剤師による事前計量の作業の負担を軽減するために、装置にて1処方分の計量を自動的に行うことができる装置及びシステムが実用化している。
【0003】
例えば、特許文献1には、散薬収容容器から所定量の散薬を取り出し、これを所定の数に分割し、さらに個別に包装して排出する薬品払出装置であって、散薬収容容器は、散薬を収容するものであり、収容した散薬を排出するための排出口となる排出口部を有すること、複数の散薬収容容器を保管するための容器保管装置があり、散薬収容容器を移動させるための容器移動装置が設けられ、容器移動装置は容器保管装置から所定の散薬収容容器を取り出して容器載置装置に載置させる動作を実行可能であり、容器載置装置に載置された散薬収容容器から散薬を排出させることが開示されている。
【0004】
ここで、散薬収容容器は、容器保管装置に縦置き(排出口が上面の鉛直方向)に保管され、ロボットアームなどの容器移動装置で移動される際に、その姿勢が横置き(排出口が底面の水平方向)になり、その状態で容器載置装置に載置させるものである。
【0005】
散薬収容容器についてこのように姿勢を変える理由は、散薬収容容器から散薬を排出させるためには、横置き設置が望ましく、一方、保管装置としては、占有面積のために縦置きが好ましく、更には、保管装置に保管している際に、散薬排出口となる部分を上方にすることで、散薬が散薬収容容器の下方(排出口から見ると遠方)に寄せられるため、移動時、あるいは容器載置装置に載置した際、及び、排出口を開けて排出する直前などのタイミングでの、散薬のこぼれ出しを防止できるとしている。
【0006】
しかしながら、これらの装置はいずれもあらかじめ棚に多数の薬剤を収容した容器を配列しておき、これを多関節ロボットや、連接チェーン移動などの手段を用いて、計量部に移動する方式をとっており、大型で高価格にならざるを得なかった。
【0007】
一般に小型の調剤薬局は、そのスペースは狭いので大型の装置を設置できないし、調剤にあっては散薬だけでなく錠剤も処方する必要があるが、このような大型装置を小型薬局に設置すると錠剤分包機を設置できないという問題もあり、あるいは高額な装置を設置しても、そもそも稼働率が低く採算が取り難いという問題がある。
【0008】
また、小型で簡便な装置を実現する際には、多関節ロボットや、連接チェーン移動などの大がかりな手段ではなく、人手による散薬収容容器の移動(運搬)も想定され、そのような場合に、散薬収容容器の姿勢の変更によらない散薬のこぼれ出し防止の方法が必要となる。
【0009】
ここで、散薬収容容器は必ず薬剤を放出するための排出口を具備する必要があり、通常はこの排出口を閉鎖して、移動や脱着を行った上で、散薬放出装置に装着した段階でこの排出口の扉を開け、薬剤を放出及び計量を行い、完了後再び排出口の扉を閉じたうえで、脱着・移動を行う。その際に、以下に述べるような2点の問題点がある。
【0010】
図12は、従来の散薬収容容器の説明図である。散薬収容容器1は、その内部に散薬Pを収容している。
図12(a)に示すように、散薬収容容器1の左側には軸2に回動自在に支持された遮蔽板3が設けられ、薬剤Pの排出口4を閉鎖している。
【0011】
図12(b)は、散薬収容容器1の排出口4の遮蔽板3を図示しない手段によって開いた状態を示している。遮蔽板3が開いて、別の振動手段などで駆動すると、排出口4から薬剤Pは矢印5の方向に落下することができる。第1の問題点としては、振動駆動を与えない状態で、遮蔽板3を開けただけで、P1のように排出口4の先端の薬剤Pの山が少し崩れて落下してしまうことである。
【0012】
非特許文献1に記載の論文「散剤予製機による分包精度と粉体物性との関連性」の表7.各散剤および顆粒剤の物性地の測定結果(
図13に転載)には、代表的薬剤の安息角と崩壊角が示されている。
【0013】
散薬のような粉流体を積み上げたときに自発的に、崩れることなく安定を保つ斜面の最大角度を「安息角」と呼ぶ。一方「崩壊角」は安息角で静止している粉体の堆積に一定の衝撃を与えて崩れたときの角度を示す。
【0014】
ここで、遮蔽板と散薬収容容器の底面とのなす角度が、安息角(または崩壊角)より大であると、遮蔽板に接触する状態で散薬が集まっていると、静止状態で(または衝撃を与えながら)遮蔽板を開いた場合に、散薬がこぼれ出る恐れがある。
【0015】
次に、第2の問題点を説明する。
図12(c)は散薬収容容器1の排出口4の遮蔽板3を図示しない手段によって閉じた状態を示している。ここでは、模式的に大きく描いているが、一部の散薬P2が遮蔽板3と排出口4の間に挟まる可能性がある。その結果、遮蔽板3は密閉することができず、すき間が出来てしまう。
【0016】
散薬の形状は多様だが、顆粒と呼ぶような大きな粒径のものが挟まるとそのすき間は大きい。この状態で、排出口4を少し下に向けると、さらに薬剤がこぼれ出す。
【0017】
このような2点の問題点による不必要な散薬のこぼれ出し量は、僅かであったとしても、そのこぼれ出した散薬がどこに落下して付着するのかの管理が難しく、結果として意図しない他薬剤とのコンタミネーションに繋がる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
解決しようとする問題点は、上記問題に鑑み、小型・省スペースで、低価格な自動計量機能付きの散薬分包機を提供する際に、散薬収容容器からの散薬のこぼれ出しを防止することが難しい点である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、第1の本発明は、散薬を放出するために収容することができ、散薬放出装置に取り付けられることができる散薬収容容器であって、散薬を放出する排出口と、前記排出口を遮蔽する遮蔽部と、前記排出口を更に遮蔽する追加遮蔽部とを有
し、横置きされ、かつ、前記追加遮蔽部は、前記散薬放出装置に着脱することにより、機械的に開閉されることを特徴とする。
【0022】
なお、散薬収容容器は、略直方体の、底面を有する箱型形状であり、長手方向を略水平方向として置かれている場合に、この姿勢を「横置き」とする。
【0023】
このようにすると、排出口を遮蔽する遮蔽部を二重に有することになるため、散薬収容容器の姿勢を横置きのまま変えずに移動したとしても、散薬のこぼれ出しを防止することができる。
【0024】
また、万一、遮蔽部での散薬の挟み込みが発生したとしても、追加遮蔽部によって、散薬収容容器の外への散薬のこぼれ出しを防止することができる。
【0025】
また、追加遮蔽部の開閉を機械的に行うため、制御機構や駆動機構を必要とせず、コストが低い構成が実現できる。
【0026】
あるいは、上記課題を解決するために、第2の本発明は、散薬を放出するために収容することができ、散薬放出装置に取り付けられることができる散薬収容容器であって、散薬を放出する排出口と、前記排出口を遮蔽する遮蔽部とを有し、
横置きされ、かつ、前記遮蔽部は、前記遮蔽部の遮蔽面の、遮蔽部近傍の底面となす角度が、前記遮蔽部が開いた際に静止状態で散薬の崩れない角度以下であ
って、前記遮蔽部が、前記排出口の端面に沿って動作可能であることを特徴とする。
【0027】
ここで、静止状態で散薬の崩れない角度とは、一般に安息角と呼ばれ、散薬の材質や粒径によって定まるものであり、遮蔽部、例えば遮蔽のための平板の角度がそれ以下であれば、遮蔽のための平板を回動などの手段で開放したとしても、そのままでは散薬がこぼれ出すことはない。
【0028】
また、遮蔽部が排出口の端面に沿って動作可能であるとは、以下のような状態を表す。
【0029】
まず、排水口の端面が、排出口近傍の散薬収容容器の底面が水平に設置される際に、散薬の安息角以下となるような角度(例えば30度程度)になるように設けられている。
【0030】
そこで、例えば、遮蔽部に固定される直動軸受が、駆動機構により、遮蔽部の遮蔽面と平行な軸を滑動するようになっている。
【0031】
そのようにすると、遮蔽部は排出口の端面に沿って動作可能となるので、排出口を開閉することが出来る。
【0032】
このような動作が可能であることによって、薬剤が静電気等によって排出口の端面に付着残留した場合であっても、遮蔽部の閉鎖動作によって、薬剤を押し出し、閉鎖時に遮蔽部と排出口との間に、薬剤を挟んで隙間を作ることがない。
【0033】
また、本発明は、これまでに述べた散薬収容容器が取り付けられる散薬収容容器取付部と、前記散薬収容容器の前記遮蔽部を開閉するための遮蔽部開閉部と、前記散薬収容容器及び収容された散薬の重量を計測する計量部と、前記散薬収容容器の前記排出口から散薬を放出させる散薬放出部とを有する散薬放出装置という態様であってもよい。
【0034】
このようにすると、散薬放出装置の散薬収容容器取付部に散薬収容容器が取り付けられ、散薬放出装置側に設けられた遮蔽部開閉部によってその遮蔽部が開放され、例えば振動などの手段による散薬放出部により散薬収容容器内の散薬が放出され、散薬収容容器取付部に取り付けられた散薬収容容器の重量を測定することによって放出された散薬の重量を知ることができるという、散薬収容容器を取付けて以降の一連の自動化が実現できる。
【0035】
すなわち、散薬収容容器を、横置きの状態のまま、人手によって運搬して散薬放出装置に取り付けた場合であっても、遮蔽部開閉部が散薬放出装置に内蔵されているため、散薬のこぼれ出しを防ぎつつ、簡便な自動化が実現できる。
【0036】
従来のような、多関節ロボットなどの自動輸送手段を用い、その自動輸送手段側に遮蔽部の開閉手段を持つ場合であると、散薬収容容器を散薬放出装置に設置するタイミングで遮蔽部が開放されることから、その際に、振動などの外力でこぼれ出しが発生する恐れがあるが、本発明によれば、散薬放出装置側に遮蔽部開閉部を設けたことから、散薬収容容器を散薬放出装置に設置した後に、外力などのない状態で遮蔽部を開放することができ、こぼれ出しの恐れを小さくすることができる。
【0037】
更に、本発明は、これまでに述べた散薬収容容器と、散薬放出装置とに加え、前記散薬放出装置から放出された散薬を分配して包装する散薬包装装置とを有する散薬分包機という態様であってもよい。
【0038】
このようにすると、散薬の分包までを一貫した自動化が可能になる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の散薬収容容器、散薬放出装置、及び、散薬分包機によれば、小型・省スペースで、低価格な自動計量機能付きの散薬分包機が提供でき、特に、保管中、運搬中、及び、散薬放出装置にセットした際の、散薬収容容器からの散薬のこぼれ出しを防止することできる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は本発明の一実施形態に係る散薬分包機100の構成図であり、
図2は本発明の一実施形態に係る散薬分包機100の斜視図であり、
図3は本発明の一実施形態に係る散薬分包機100の正面図である。
【0042】
散薬分包機100は、分包される散薬を収容している散薬収容容器200と、散薬収容容器200を取付けてその中の散薬を放出する散薬放出装置300と、放出された散薬を分配し包装する散薬包装装置400とから構成される。
【0043】
但し、これらの装置の切り分けは、これに限定されず、同等の機能を発揮できればどのような切り分けであってもよい。
【0045】
<散薬収容容器200>
本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
図4は本発明の一実施形態に係る散薬収容容器200の斜視図であり、
図5は本発明の一実施形態に係る散薬収容容器200の断面図である。
【0046】
散薬収容容器200は、略直方体の、底面を有する箱型形状で、長手方向を略水平方向として置かれている。この姿勢を横置きとする。
【0047】
散薬収容容器200は、上部に上蓋201、下部側面に散薬の排出口202、排出口202の出口部分に排出口202を遮蔽する遮蔽部(遮蔽板)203、遮蔽部203を回動自在に保持する遮蔽部回動軸204、遮蔽部203よりも容器の外側部分に設けられた追加遮蔽部205、追加遮蔽部205を回動自在に保持する追加遮蔽部回動軸106、遮蔽部203及び追加遮蔽部205を閉鎖方向に付勢している板バネ207、遮蔽部203の下端に設けられ、押されると遮蔽部203が開放方向に回動できる押し板208、底面外側に磁性体である鉄板209を有している。
【0048】
なお、閉鎖方向に付勢する手段は、板バネに限定せず、コイルバネなどの弾性体や慣性質量体などであってもよい。また、遮蔽部203と追加遮蔽部205とを共通の板バネ207で付勢することは、部品点数の削減の効果は大きいが、各々の遮蔽部に別々の付勢手段を設けてもよい。遮蔽部の質量や開閉タイミングなどにより、別々の方が有利な場合もあり得る。
【0049】
散薬収容容器200を水平面に載置した場合の底面は、図に示すように、中央部が水平で、前方(排出口側)と後方(排出口と反対側)がやや上方に向かって傾斜している、なべ底状の形状をしている。これは、収容されている散薬の漏れ出しを防止するために排出口202に近づきすぎないように、また、排出時に収容されている散薬の排出を容易にするために後方に集まりすぎないように意図したものである。
【0050】
但し、底面が、水平あるいは非水平の全面均一な平面である場合もあり得る。散薬の性質、散薬収容容器の取り扱い方法などにより、加工が容易な均一平面とする方が有利な場合もあり得る。また、前方、後方のどちらか一方のみが、やや上方に向かって傾斜している場合でも、先に述べた効果はある程度得られる。
【0051】
また、散薬収容容器200の排出口202近傍の底面と、遮蔽部203とのなす角度Aは、30度程度となっている。これは、後述するように、散薬放出装置に散薬収容容器200が載置される際には、排出口202近傍の底面が水平に載置されるため、遮蔽部203の遮蔽面の、水平面となす角度を、前記遮蔽部203が開いた際に静止状態で散薬の崩れない角度(安息角という)以下となるようにしたものである。
【0052】
図13は、本発明に係る安息角及び崩壊角の説明図であり、ここで、例えば、安息角について、粉末系散剤では、43.5−54.5度、細粒では、31.0−34.5度、顆粒剤では、36.0−36.5度となっている。
【0053】
従って、角度Aが30度であれば、ほぼ、どのような散薬であっても、安息角より小さくなり、静止状態での散薬の崩れを防止できる。
【0054】
但し、使用する散薬によっては、更に大きい角度(35度、40度など)でよい場合もあり、あるいは、崩壊角(13.0−32.0度)も考慮して、更に小さい角度(25度、20度、15度など)に設定しても有効な場合もある。
【0055】
この実施形態では、遮蔽部203は、排出口202の上方に回動中心を有する板状のもので、遮蔽板と呼んでもよい。但し、板状であることに限定されず、棒状や柱状あるいはその他の形状であって、少なくとも排出口202を遮蔽する部分が平面であればよいとする。また、その開閉方法も、板状の端部を回動中心とするものに限定されず、スライド形式や、両開き扉など種々の形状が考えられる。
【0056】
<散薬放出装置300>
本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
図6は本発明の一実施形態に係る散薬放出装置300の断面図であり、
図7は本発明の一実施形態に係る散薬放出装置300と散薬収容容器200との関係を示す斜視図である。
【0057】
散薬放出装置300は、固定板303、固定具304、計量部305、振動ベース306、板バネ307、散薬収容容器取付部308、第1の電磁石309、鉄材310、第2の電磁石311、遮蔽部開閉部312を有している。
【0058】
固定板303は、散薬放出装置300全体を保持するもので、散薬分包機100の筐体内に強固に固定されている。
【0059】
固定具304は、固定板303の上に、脚部と脚部に支持される平板部を有して設けられ、その上に装置の要素が固定される。
【0060】
計量部305は、固定具304の平板上に設置され、その上面に振動ベース306が載置されるので、この振動ベース306に搭載された全質量が計量部305に負荷されることで、質量測定ができるようになっている。
【0061】
計量部305としては、台秤が好適であるが、それに限定されず、ロードセルなど、その上部に載置されるものの重量が計測できるものであればよい。
【0062】
振動ベース306は、散薬の出口方向(前方)が低く傾斜する脚部と、脚部に支持される傾斜平板部とを有する。
【0063】
板バネ307は、2セットあり、振動ベース306の傾斜平板部の前方と後方とからから上方に延伸し、散薬収容容器取付部308を保持する。
【0064】
第1の電磁石309は、振動ベース306に固定され、一方、散薬収容容器取付部308には磁性を有する鉄材310が、それぞれ相対して僅かな間隙を保持して配置されている。これによって第1の電磁石309に交流的電気波形を入力すると、鉄材310が第1の電磁石309に引き寄せられたり、離れたりという振動的挙動を示す。
【0065】
その結果として散薬収容容器取付部308は板バネ307を介して振動ベース306に取り付いているので、散薬収容容器取付部308全体として、図面での上下方向と左右方向が合成された振動を行うことができる。
【0066】
これらの、振動ベース306、第1の電磁石309、板バネ307、散薬収容容器取付部308の鉄材310を総称して、散薬放出部320と呼ぶ。
【0067】
但し、散薬放出部320の構成は、電磁石によるものに限定されず、少量ずつ散薬を放出できるものであれば、圧電素子による振動発生であってもよく、あるいは、振動に限定されず螺旋スクリュー駆動や、それ以外のものであってもよい。
【0068】
第2の電磁石311は、散薬収容容器取付部308の上面に着磁面を露出させた状態で設けられる。これは、散薬収容容器200の底面に取付けられた鉄板209を、通電により吸着し、散薬収容容器取付部308に散薬収容容器200を固定して保持することができる。
【0069】
遮蔽部開閉部312は、直動型電磁ソレノイドであり、散薬収容容器取付部308の下面に取付けられ、散薬収容容器200の遮蔽部203に設けられた押し板208を押すことにより、遮蔽部203を開放する機能を有する。
【0070】
なお、この遮蔽部開閉部312は、直動型電磁ソレノイドと遮蔽部側の押し板208とによる機構に限定せず、例えば、モータにリードスクリューを直結してモータの回転を直線運動として押し板208を押したり、押し板を用いて、あるいは押し板を用いず、散薬放出装置300側に設けた各種の駆動源を動作させて、リンク機構により遮蔽部203を回動したりするなど、種々の公知の作動機構を用いてもよい。
【0071】
<散薬包装装置>
本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
図8は本発明の一実施形態に係る散薬包装装置400の円盤配分部401の斜視図である。
【0072】
散薬包装装置400は、散薬放出装置300から放出された散薬を円盤402上で受け取り配分する円盤配分部401と、円盤配分部401で配分された散薬を下方へ落下させるホッパ・シュート403と、ホッパ・シュート403の出口に分包紙を配置し、その分包紙に散薬を封入して包装する散薬包装部404とを有する。
【0073】
円盤配分部401は、左右2セットの左円盤配分部401Aと右円盤配分部401Bとから構成される。その各々に対して散薬放出装置300が2台配置されているため、1つの円盤配分部401に、4台の散薬放出装置300が配置されることになる。更に、散薬分包機100全体としては、このような円盤配分部401が複数セット配置されることもある。
【0074】
なお、これらの配置台数は例示であり、これより少なくてもよく、あるいは、多くてもよい。適宜、用途目的によって選択すればよい。
【0075】
切り出された散薬は、ホッパ・シュート403を介して下方に落下し、ホッパ・シュート403の出口に対応して配置された分包紙に散薬を封入することのできる散薬包装部404が配置されている。
【0076】
次に、このような構成の本発明の一実施形態に係る動作について説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る散薬収容容器200を、散薬放出装置300に取付ける前、あるいは取り外した状態を示す斜視図である。また
図10は本発明の一実施形態に係る散薬収容容器200の取付け、取り外し動作における散薬収容容器200の排出口202近傍の動作を示す断面図である。
【0077】
別な場所で個別の散薬Pを、上蓋201を開けて散薬収容容器200の内部に充填して、再度上蓋201を閉じたうえで、手で持ち運ぶ。このときは
図9(a)及び
図10(a)のような遮蔽部203、「閉」、追加遮蔽部205「閉」の状態であるので、排出口202は二重に閉鎖された状態になっており、多少手で乱暴に操作しても散薬がこぼれることはない。
【0078】
次に散薬収容容器200を、散薬放出装置300の散薬収容容器取付部308の一部であって、上面を構成する容器取付ガイド体313をガイドとして、作業者によって、散薬収容容器200が、散薬収容容器取付部308に取り付けられる。
【0079】
なお、
図10(a)に示すように、排出口202近傍の、散薬放出装置300に取り付けられると水平になる底面と、遮蔽部203の遮蔽面とのなす角度Aが、安息角以下になっているため、散薬放出装置300に取り付けられたあとで、遮蔽部203を開放しても散薬がこぼれ出る恐れは少ない。
【0080】
この際に、追加遮蔽部205の左右に設けられた突起部210が、容器取付ガイド体313の斜面部314に押し当てられることによって、追加遮蔽部205は、開状態となる。このときは
図10(b)の遮蔽部203「閉」、追加遮蔽部205「開」の状態になる。
【0081】
次に、図示しない入力装置によって散薬収容容器200の「セット完了」を装置に通知すると、図示しない制御部によって、散薬放出装置300の第2の電磁石311が駆動され、散薬収容容器200の底面に取付けられた鉄板209を吸着することで、散薬放出装置300に散薬収容容器200がしっかりと固定される。
【0082】
この状態が散薬放出装置300の待機状態となる。この状態では、散薬収容容器200は、前方(排出口側)がやや低く傾斜した状態であり、遮蔽部203近傍の底面が水平となっている。そのため、遮蔽部203の遮蔽面と遮蔽部203近傍の底面とのなす角度は、安息角となっており、静かに遮蔽部203を開けた場合には、それだけでは散薬がこぼれ出すことはない。
【0083】
次に、この散薬収容容器200から薬剤Pを所定質量分放出するように指示があると、まず遮蔽部開閉部312が駆動され、それにより散薬収容容器200の遮蔽部203が開く。このときは
図9(c)及び
図10(c)の遮蔽部203「開」、追加遮蔽部205「開」の状態になる。
【0084】
この後、散薬排出口202の下部にその面を配置させた散薬包装装置400の円盤分配部401の円盤402を一定速度で回転させ、引き続き、第1の電磁石314を駆動して、第3のベース313に振動を与えると、これに結合されている散薬収容容器200も振動するので、散薬排出口202から散薬が回転する円盤402にドーナツ状に堆積していく。
【0085】
このとき計量部305によって、第1のベース上の全質量は連続的に計量されており、あらかじめ定めた所定質量(例えば処方箋で指定された分量)に達したとき、すなわち、所定量が放出されて所定質量が減じたときに電磁石314の振動を停止し、円盤402の回転も停止する。
【0086】
それと同時または若干の時間を置いて、遮蔽部開閉部312の駆動が解除されると、排出口202の遮蔽部203は閉鎖される。
【0087】
これによって、外部から振動等の外乱が加わっても、排出口202近傍の散薬Pがこぼれ出すことはない。
【0088】
次に、円盤配分部401の円盤402上にドーナツ状に形成された散薬の山を、円盤402を所定角度ずつ回転停止して、制御部から指示される円周分割数(たとえば10等分)で配分し、図示しない切り出し部で切り出すことで1包分に分配する。
【0089】
切り出された散薬は、ホッパ・シュート403を介して下方に落下し、ホッパ・シュート403の出口に設けられた散薬包装部404の分包紙に薬剤Pが封入される。このようにして、例えば、1処方10包の分包状態が完成する。
【0090】
なお、一連の処理が終了した後で、散薬収容容器200を取り外す際には、取り付け時と逆の操作を行う。すると、遮蔽部203及び追加遮蔽部205は、閉鎖方向への共通の付勢手段である板バネ207(
図4及び
図9(c)に示す、なお、
図9(a)では図示を省略)が作用して、排出口202が二重に遮蔽(閉鎖)され、こぼれ出しの心配なく他所へ移動することができる。
【0091】
図11は、本発明の別の実施形態の散薬収容容器の遮蔽部503の説明図である。散薬収容容器の排出口502は、遮蔽部503が設けられている。
【0092】
遮蔽部503は、排出口502近傍の散薬収容容器の底面が水平に設置される際に、散薬の安息角以下となるような角度(例えば30度程度)になるように設けられている。
【0093】
また、遮蔽部503に固定される直動軸受505が、図示しない駆動機構により、遮蔽部503の遮蔽面と平行な軸を滑動するようになっている。
【0094】
図示しない駆動手段によって、遮蔽部503は排出口502の端面に沿って動作可能とするので、排出口502を開閉することが出来る。
図11(a)は「閉」状態、
図11(b)は「開」状態である。
【0095】
このような動作が可能であることによって、
図11(c)のように、薬剤P2が静電気等によって排出口502の端面に付着残留した場合であっても、遮蔽部503の閉鎖動作によって、薬剤P2を押し出し、閉鎖時に遮蔽部503と排出口502との間に、薬剤を挟んで隙間を作ることがない。
【0096】
なお、これまでの説明で、散薬収容容器を人手で扱う場合の散薬のこぼれ出しを防止することとして記述してきたが、人手によらずに、ロボットなどに自動で行わせる場合であっても、本発明は有効で、ロボットなどの制御の精密さが軽減できるという利点がある。
【0097】
また、これまでの説明で、電磁石に吸引される部分を、磁性体である鉄板あるいは鉄材として記述したが、電磁石に吸引されることができる物質であれば、鉄には限定されず、他の材料であってもよい。
【0098】
なお、これまでの説明で、散薬放出装置、あるいは、散薬分包機に用いられる散薬収容容器については、排出口、排出口を遮蔽する遮蔽部のほかに、追加遮蔽部を有すること、あるいは/及び、遮蔽部と底面との角度が小さいことという特徴を有するとしたが、これらの特徴を有さない散薬収容容器を用いても、散薬放出装置側に遮蔽部開閉部を有するなどの特徴から、本発明の課題の解決には、ある程度の効果が得られる