(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施例>
図1は、本発明の第1実施例による膨張弁を示す縦断面図である。
図1に示すように、本発明の第1実施例による膨張弁10は、弁本体11、弁棒60、パワーエレメント70及び弁構造体100を備えている。
【0016】
膨張弁10の弁本体11は、例えばアルミ合金製であって、
図1に示すX方向を押出方向として、アルミ合金等を押出成形し、これに機械加工を施すことによって形成することができる。
弁本体11は、上面部に形成されて雌ねじを有するパワーエレメント取付部12と、高圧の冷媒が導入される入口ポート20と、冷媒の出口ポート28と、冷媒の戻り通路30と、弁本体11を他の部品に取り付けるためのスタッドボルト(図示せず)を螺合する雌ねじ80やボルトを挿入するための貫通溝や孔(いずれも図示せず)と、を有する。
【0017】
弁本体11の下部には、下端部に開口する雌ねじ11aが形成されており、当該雌ねじ11aを後述する弁構造体100のプラグ50で封鎖することにより弁室24が形成されている。また、弁室24には、側方から小径穴20aを介して入口ポート20が連通している。
一方、弁本体11における弁室24の上方には、出口ポート28が形成されている。この出口ポート28は、弁孔(オリフィス)26を介して弁室24の上端部に連通しており、当該弁孔26の弁室24側には、弁座25が形成されている。
【0018】
弁本体11における出口ポート28のさらに上方には、戻り通路30が、弁本体11を
図1におけるX方向に貫通するように形成されている。
冷媒は、入口ポート20から流入し、弁孔26を通過して膨張した後、出口ポート28から蒸発器(図示せず)へ送られる。
蒸発器を通過した冷媒は、戻り通路30の左側から入って右側に抜けるように(すなわち矢印X方向に)弁本体11内を通過し、圧縮機(図示せず)へ戻る。
【0019】
弁本体11における戻り通路30のさらに上方には、後述するパワーエレメント70を取り付けるパワーエレメント取付部12が形成されている。
パワーエレメント取付部12は、弁本体11の上端において弁本体11の上面に円形状に開口しその内壁面に雌ねじを有する有底の円筒状穴として形成される。
また、パワーエレメント取付部12の中央部には戻り通路30に至る連通穴31が形成され、後述する弁棒60が挿通される。
【0020】
パワーエレメント70は、上蓋部材71と受け部材72との間にダイアフラム及びストッパ部材(いずれも図示せず)を内包して構成されている。
このとき、上蓋部材71とダイアフラムとの間には、圧力作動室が形成され、この圧力作動室内に作動ガスが封入されている。
【0021】
受け部材72の下部は円筒状でその周囲には雄ねじ72aが形成されており、上述したパワーエレメント取付部12の雌ねじと螺合することにより、パワーエレメント取付部12に取り付けられる。
このとき、パワーエレメント70と弁本体11との間には、パッキン35が介装され、弁本体11にパワーエレメント70を取り付けた際の連通穴31からのリークを防止する。
【0022】
出口ポート28と戻り通路30との間には、通し穴29が形成されている。そして、弁孔26と通し穴29と連通穴31とは、それぞれ中心が同一直線上になるように配置されている。
また、これら弁孔26、通し穴29及び連通穴31のそれぞれに挿通される態様で弁棒60が設けられている。
【0023】
弁棒60の上端側は、パワーエレメント70のストッパ部材に当接し、その下端側は、後述する弁構造体100の弁部材40と接触するように配置される。
このような配置とすることにより、
図1に示す膨張弁10は、パワーエレメント70の圧力作動室における内圧の変動に応じて変形したダイアフラムの動きを受けてストッパ部材が上下動し、当該ストッパ部材の移動が弁棒60を介して弁構造体100の弁部材40に伝達され、膨張弁の開閉動作が行われる。
【0024】
弁構造体100の一部を構成するプラグ50は、有底筒状の部材であって、上面側に凹部52が形成され、下面側には六角穴53が形成されている。
また、プラグ50の下部外周面には雄ねじが形成されており、弁本体11の下端部に開口する雌ねじ穴11aに螺合する態様で取り付けられる。
このとき、弁本体11とプラグ50との間にはOリング等のシール部材54が設けられ、これによって弁室24がシールされる。
【0025】
図2は、
図1に示す膨張弁に用いられる弁構造体の詳細を示す分解斜視図である。
図2に示すように、弁構造体100は、弁本体11の弁座25に接触してオリフィス開口面積を制御するボール状の弁部材40と、弁部材40を支持する支持部材42と、支持部材42を支持するコイルばね44と、コイルばね44を受けるプラグ50と、支持部材42の外周面と摺動自在に接触する防振ばね110と、により構成される。
【0026】
支持部材42は、弁部材40を支持するための円錐状のくぼみを備えた円板部42aと側面に突出するフランジ部42bとを備えており、当該フランジ部42bの下面がコイルばね44の上端を受ける構造となっており、例えばステンレス鋼又はその合金製である。
また、コイルばね44は、支持部材42に設けられたフランジ部42bの下面とプラグ50に形成された凹部52との間に収容されており、これによって、弁部材40は支持部材42を介して弁座25の位置する側に向けて付勢されており、支持部材42と同様に、例えばステンレス鋼又はその合金製である。
そして、プラグ50のねじ込み量を変化させて弁座25と凹部52の底面との距離を調整することにより、コイルばね44のばね力を調整することができる。
【0027】
図3は、本発明の第1実施例による膨張弁に適用される防振ばねを示す斜視図である。
図3に示すように、第1実施例に適用される防振ばね110は、筒状の本体部111と、本体部111の一部が除去された切欠部112と、切欠部112に接して形成された第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bと、により構成される。
【0028】
本体部111は、例えばステンレス鋼又はその合金による板材で形成されており、その一例として、細長い帯板状の部材を筒状に湾曲させ、その端部同士を結合部111aで適宜の手法により結合して筒状(円筒状、角筒状等)としている。
第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bはそれぞれ、本体部111の円周方向に長手の部分を有し、その一端が本体部111に接続して他端が自由端となるように形成される。
【0029】
図3に示すように、第1の摺動アーム113aは、本体部111の高さ方向(すなわち弁棒60(
図1)の摺動方向、矢印Y方向)で上側の位置に形成され、第2の摺動アーム113bは、本体部111の高さ方向で下側の位置に形成される。
また、第1の摺動アーム113aは、本体部111の中心軸に関して対向する位置の2か所に設けられ、第2の摺動アーム113bも同様に、本体部111の中心軸に関して対向する位置の2か所に設けられており、第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bは、前記中心軸の方向から見た場合に円周方向に互いが等間隔となるように配置される。
【0030】
また、第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bは、それらの先端が本体部111の内周面側に入り込むように根元から屈曲するように配置される。
そして、第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bの先端には、支持部材42のフランジ部42bの外周面と点又は小面積にて摺接するように、球面の一部に模した形状を有する突出部114がそれぞれ形成されている。
【0031】
ここで、
図3では、第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bをそれぞれ2か所ずつ配置した場合を例示したが、防振ばね110は支持部材42のフランジ部42bに外周面側から挟み込むように摺接するため、第1の摺動アーム113a又は第2の摺動アーム113bは、本体部111の同一の高さ位置において少なくとも2つ以上形成されていればよい。
摺動アーム113a、113bがそれぞれ偶数個形成されるときは、隣接するもの同士が円周方向に等間隔に配置される必要はないが、一対の摺動アーム113a、113bは本体部111の中心軸に関して対向する位置に配置されるのが好ましい。
また、摺動アーム113a、113bが奇数個形成されるときも、例えば本体部111の中心軸を通る直線に対して線対称となるようにこれを配置すれば、特に前記円周方向に等間隔に配置される必要はない。
【0032】
図3に示す防振ばね110を製造する場合、例えば本体部111を構成する帯板状の部材に、プレスによる打ち抜き加工で所定の数の切欠部112を設けることにより第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bを形成し、これを円筒状に曲げ加工して端部をかしめ加工等で結合することにより、結合部111aを形成する。
その後、第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bを本体部111の内周面側に向けて変形させることにより、防振ばね110を形成する。
また、上記打ち抜き加工の際に、予め本体部111の内周面側に位置する方向に突出するように、第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bの先端に突出部114を同時に成形加工してもよい。
【0033】
図4は、
図1に示す膨張弁の弁孔と弁構造体100との取り付け状態を示す要部の拡大断面図である。この
図4は、
図3に示された防振ばね110の中心軸を含み、かつ該中心軸と隣接する2つの突出部114とを通過する2つの仮想平面で切断した断面図である。
図4に示すように、弁本体11に形成された弁室24の弁座25近傍の内周面24aには、弁構造体100の一部をなす防振ばね110が、圧入や挿入等により装着され、その後、内周面24aの開放端部をかしめることにより(かしめ部は符号24b)固着されている。もちろん、かしめる代わりに接着や溶接等の手法を採用しても良い。
【0034】
一方、コイルばね44の上端に支持された支持部材42は、円板部42aに弁部材40を支持した状態で防振ばね110の内側に挿通され、この状態で弁部材40が弁棒60の下端と当接するように配置される。
このとき、防振ばね110の第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bにそれぞれ形成された突出部114が、支持部材42のフランジ部42bの外周面に実質的に点接触した状態となるため、支持部材42が図示上の横方向(X方向)及び上下方向(Y方向)に振動することを抑制できる。
【0035】
また、上述のとおり、第1の摺動アーム113aは、本体部111の中心軸方向(Y方向)における第1の高さでかつ中心軸に関して対向する位置の2か所に設けられ、第2の摺動アーム113bも同様に、本体部111の中心軸方向における第2の高さ(第1の高さとは異なる高さ)でかつ中心軸に関して対向する位置の2か所に設けられている。
このとき、この例においては
図4に示すように、弁棒60の中心軸を通る一つの縦断面において、第1の摺動アーム113aと第2の摺動アーム113bとが対向するように配置されているが、支持部材42のフランジ部42bの外周面をバランスよく押圧することができれば、特にこの構成には限定されない。
これにより、支持部材42のフランジ部42bの外周面が高さの異なる2か所において挟まれる態様で、防振ばね110の摺動アーム113a、113bに摺接するため、支持部材42が図示上で揺動する方向の力を受けたとしても、該揺動を効果的に抑制することができる。
【0036】
上記に示す構成を備えることにより、本発明の第1実施例による膨張弁によれば、支持部材のフランジ部の外周面が高さの異なる位置において防振ばねの摺動アームに摺接するため、支持部材が横方向及び上下方向に振動することを抑制できるとともに、支持部材が搖動する方向の力を受けたとしても、当該支持部材の揺動を抑制することができる。
また、防振ばねが支持部材の外周面に摺接することで支持部材の横方向及び上下方向の振動を抑制するとともに、脈動する高圧の冷媒が流入することによる支持部材への揺動をも抑制することができるため、弁部材の振動による騒音の発生を効果的に抑制できる。
さらに、防振ばねを弁本体側に取付けたため該防振ばねは支持部材と摺接する。この結果、防振ばねを支持部材側に取付けて該防振ばねを弁本体と摺接させる場合に比較して当該膨張弁の摩耗が低減され、その耐久性が向上する。
【0037】
なお、この摩耗低減の効果を得るためには、支持部材を構成する材料としては、防振ばねを構成する金属と同一の材料あるいはより硬い材料であることが好ましいが、少なくとも弁本体を形成する材料よりも硬い材料であれば良い。
さらに、防振ばね110の本体部111は、細長い帯板状の部材を筒状に湾曲させ、その端部同士を適宜の手法により結合するものとしたが、端部同士を結合することなく、筒状に湾曲したままの状態で弁本体11の内周面24aに固定しても良いことは当然である。
【0038】
<第2実施例>
図5は、本発明の第2実施例による膨張弁を示す縦断面図である。
第2実施例において、膨張弁10の構成要素のうち、その機能や配置等が第1実施例(
図1)で示したものと共通するものについては同一の符号を付して示す。また、発明の要部を除く部分については、再度の説明を省略する。
図5に示すように、本発明の第2実施例による膨張弁10は、弁本体11、弁棒60、パワーエレメント70及び弁構造体200を備えている。
【0039】
図6は、
図5に示す膨張弁に用いられる弁構造体の詳細を示す分解斜視図である。
図6に示すように、弁構造体200は、弁本体11の弁座25に接触してオリフィス開口面積を制御するボール状の弁部材40と、弁部材40を支持する支持部材42と、支持部材42を支持するコイルばね44と、コイルばね44を受けるプラグ50と、支持部材42の外周面と摺動自在に接触する防振ばね210と、により構成される。
【0040】
図7は、本発明の第2実施例による膨張弁に適用される防振ばねを示す斜視図である。
図7に示すように、第2実施例に適用される防振ばね210は、円環状の本体部211と、本体部211の内周面側に起立するように延びる第1の摺動アーム212a及び第2の摺動アーム212bと、により構成される。
【0041】
本体部211は、第1実施例と同様、例えばステンレス鋼等の金属板で形成されており、第1の摺動アーム212a及び第2の摺動アーム212bは、本体部211の半径方向に長手方向を有し、その先端が自由端となるように形成される。
そして、第1の摺動アーム212a及び第2の摺動アーム212bは、その高さ(本体部211から先端までの距離)が互いに異なるように、本体部211の高さ方向に根元から折り曲げられ、その先端には、支持部材42のフランジ部42bの外周面と点又は小面積で摺接するように、球面の一部に模した形状を有する突出部213が形成されている。
【0042】
図7に示すように、第2実施例において、第1の摺動アーム212aは、本体部211の円周方向に互いに等間隔となるように3か所形成され、第2の摺動アーム212bは、上記第1の摺動アーム212aの中間に等間隔でかつ先端の高さが第1の摺動アーム212aと異なる高さとなるように形成されている。
ここで、
図7では、第1の摺動アーム212a及び第2の摺動アーム212bをそれぞれ3か所に配置した場合を例示したが、第1実施例の場合と同様に、防振ばね210は支持部材42のフランジ部42bに外周面側から挟み込むように摺接するため、第1の摺動アーム212a及び第2の摺動アーム212bは、それぞれ少なくとも2つ以上形成されていればよい。
このとき、摺動アーム212a、212bが本体部211の中心軸に関して各々対向する位置に配置されるのが好ましい。
【0043】
また、摺動アーム212a、212bが偶数個形成されるときは、各摺動アーム212a、212bは本体部211の円周方向に等間隔でなくても良いが、一対となる摺動アーム212a又は212bが本体部211の中心軸に関して対向する位置に配置されるのが好ましい。
一方、摺動アーム212a、212bが奇数個形成されるときも、例えば本体部211の中心を通る直線に対して線対象となるようにこれを配置すれば、特に前記円周方向に等間隔に配置される必要はない。
【0044】
図7に示す防振ばね210を製造する場合、例えば本体部211を構成する板状の部材をプレスによる打ち抜き加工で成形する。このとき、本体部211の内周面側に所定の数の第1の摺動アーム212a及び第2の摺動アーム212bを打ち抜き加工で同時に形成するとよい。
その後、第1の摺動アーム212a及び第2の摺動アーム212bを本体部211に対してそれぞれ高さ方向に折り曲げて変形させることにより、防振ばね210を形成する。
また、上記打ち抜き加工の際に、予め本体部211の内周面側に位置する方向に突出するように、第1の摺動アーム212a及び第2の摺動アーム212bの先端にそれぞれ突出部213を同時に成形加工してもよい。
【0045】
図8は、
図5に示す膨張弁の弁孔と弁構造体との取り付け状態を示す要部の拡大断面図である。この
図8は、
図7に示された防振ばね210の中心軸を含み、かつ該中心軸と2つの突出部213とを通過する2つの仮想平面で切断した断面図である。
図8に示すように、第2実施例において、弁室24の弁座25近傍にやや縮径する段部24cが形成されており、当該段部24cに弁構造体200の一部をなす防振ばね210を嵌め込み、かしめることにより(かしめ部は符号24d)固着されている。
【0046】
一方、コイルばね44の上端に支持された支持部材42は、円板部42aに弁部材40を支持した状態で防振ばね210の内側に挿通され、この状態で弁部材40が弁棒60の下端と当接するように配置される。
このとき、防振ばね210の第1の摺動アーム212a及び第2の摺動アーム212bに形成された突出部213が支持部材42のフランジ部42bの外周面に点接触した状態となるため、第1実施例の場合と同様に、支持部材42が図示上の横方向及び上下方向に振動することを抑制できる。
【0047】
また、上述のとおり、第1の摺動アーム212aは、本体部211の中心軸方向における第1の高さでかつ中心軸に関して対向する位置の3か所に設けられ、第2の摺動アーム212bも同様に、本体部211の中心軸方向における第2の高さでかつ中心軸に関して対向する位置の3か所に設けられている。
このとき、
図8に示すように、弁棒60の中心を通る一つの縦断面において、第1の摺動アーム212aと第2の摺動アーム212bとが対向するように配置されている。
これにより、支持部材42のフランジ部42bの外周面が高さの異なる2か所において挟まれる態様で、防振ばね210の摺動アーム212a、212bに摺接するため、支持部材42が図示上で回動する方向の力を受けたとしても、当該回動する方向の力がキャンセルまたは低減される。
【0048】
上記に示す構成を備えることにより、本発明の第2実施例による膨張弁によれば、支持部材のフランジ部の外周面が高さの異なる2か所において挟まれる態様で、防振ばねの摺動アームに摺接するため、第1実施例の膨張弁と同様に、支持部材が横方向及び上下方向に振動することを抑制できるとともに、支持部材が搖動する方向の力を受けたとしても、当該支持部材の揺動を抑制することができる。
また、上記の効果に加えて、第2実施例による膨張弁によれば、摺動アームが防振ばねの高さ方向に延びる構造のため、防振ばねの加工に要する材料を削減しつつ支持部材の外周面との必要最小限の摺接を可能とすることができる。
なお、第1実施例の場合と同様に、防振ばねと支持部材とが摺接するため、支持部材を構成する材料としては、防振ばねを構成する金属と同一の材料あるいはより硬い材料であることが当該膨張弁の摩耗低減(すなわち支持部材の摩耗低減)の上から好ましい。
【0049】
<第3実施例>
図9は、本発明の第3実施例による膨張弁を示す縦断面図である。
なお、第3実施例においても、膨張弁10の構成要素のうち、その機能や配置等が第1実施例(
図1)で示したものと共通するものについては同一の符号を付して示す。また、発明の要部を除く部分については、再度の説明を省略する。
図9に示すように、本発明の第3実施例による膨張弁10は、弁本体11、弁棒60、パワーエレメント70及び弁構造体300を備えている。
【0050】
図10は、
図9に示す膨張弁に用いられる弁構造体の詳細を示す分解斜視図である。
図10に示すように、弁構造体300は、弁本体11の弁座25に接触して開閉するボール状の弁部材40と、弁部材40を支持する支持部材42と、支持部材42を支持するコイルばね44と、コイルばね44を受けるプラグ50と、支持部材42とコイルばね44との間に取り付けられて弁室24の内周面と摺動自在に接触する防振ばね310と、により構成される。
【0051】
図11は、本発明の第3実施例による膨張弁に適用される防振ばねを示す斜視図である。
図11に示すように、第3実施例に適用される防振ばね310は、円環状の本体部311と、本体部311の外周面側に起立するように延びる第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bと、により構成される。
【0052】
本体部311は、上記各実施例と同様、例えばステンレス鋼等の金属板で形成されており、第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bは、本体部311の半径方向に長手方向を有し、その先端が自由端となるように形成される。
そして、第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bは、その高さ(本体部311から先端までの距離)が互いに異なるように、本体部311の高さ方向に根元から折り曲げられる。
また、第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bの先端には、弁室24の内周面(後述する
図12の符号24a参照)と点又は小面積で摺接するように、球面の一部に模した形状を有する突出部313が形成されている。
【0053】
図11に示すように、第3実施例において、第1の摺動アーム312aは、本体部311の円周方向に互いに等間隔となるように4か所形成され、第2の摺動アーム312bは、上記第1の摺動アーム312aの中間に等間隔でかつ先端の高さが第1の摺動アーム312aと異なる高さとなるように形成されている。
ここで、
図11では、第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bをそれぞれ4か所に配置した場合を例示したが、上述のように、防振ばね310は弁室24の内周面に内側から広がるように摺接するため、第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bは、それぞれ少なくとも2つ以上形成されていればよい。
このとき、摺動アーム312a、312bが本体部311の中心軸に関して各々対向する位置に配置されるのが好ましい。
【0054】
また、摺動アーム312a、312bが偶数個形成されるときは、各摺動アーム312a、312bは本体部311の円周方向に等間隔でなくても良いが、一対となる摺動アーム312a又は312bが本体部311の中心軸に関して対向する位置に配置されるのが好ましい。
一方、摺動アーム312a、312bが奇数個形成されるときも、例えば本体部311の中心を通る直線に対して線対象となるようにこれを配置すれば、特に前記円周方向に等間隔に配置される必要はない。
【0055】
図11に示す防振ばね310を製造する場合、例えば本体部311を構成する板状の部材をプレスによる打ち抜き加工で成形する。このとき、本体部311の外周面側に所定の数の第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bを打ち抜き加工で同時に形成するとよい。
その後、第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bを本体部311に対してそれぞれ高さ方向に折り曲げて変形させることにより、防振ばね310を形成する。
また、上記打ち抜き加工の際に、予め本体部311の内周面側に位置する方向に突出するように、第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bの先端にそれぞれ突出部313を同時に成形加工してもよい。
【0056】
図12は、
図9に示す膨張弁の弁孔と弁構造体との取り付け状態を示す要部の拡大断面図である。この
図12は、
図11に示された防振ばね310の中心軸を含み、かつ該中心軸と隣接する2つの突出部313とを通過する2つの仮想平面で切断した断面図である。
図12に示すように、第3実施例において、防振ばね310は、本体部311の中央部の穴に支持部材42が内挿され、当該支持部材42のフランジ部42bとコイルばね44との間に挟まれる態様で取り付けられる。
そして、支持部材42の円板部42aの上面には弁部材40が載置され、この状態で弁部材40が弁棒60の下端と当接するように配置される。
【0057】
このとき、本体部311からの折り曲げ高さが小さい第1の摺動アーム312aが、入口ポート20の小径穴20aが形成された位置に向けられるように配置される。
この状態で、防振ばね310の第1の摺動アーム312a及び第2の摺動アーム312bに形成された突出部313が弁室24の内周面24aに点接触した状態となるため、支持部材42が図示上の横方向及び上下方向に振動することを抑制できる。
【0058】
また、上述のとおり、第1の摺動アーム312aは、本体部311の中心軸方向における第1の高さでかつ中心軸に関して対向する位置の4か所に設けられ、第2の摺動アーム312bも同様に、本体部311の中心軸方向における第2の高さでかつ中心軸に関して対向する位置の4か所に設けられている。
このとき、
図12に示すように、弁棒60の中心を通る一つの縦断面において、第1の摺動アーム312aと第2の摺動アーム312bとが対向するように配置されている。
これにより、支持部材42のフランジ部42bの外周面が高さの異なる2か所において挟まれる態様で、防振ばね310の摺動アーム312a、312bに摺接するため、支持部材42が図示上で回動する方向の力を受けたとしても、当該回動する方向の力がキャンセルされる。
【0059】
上記に示す構成を備えることにより、本発明の第3実施例による膨張弁によれば、支持部材のフランジ部の外周面が高さの異なる2か所において挟まれる態様で、防振ばねの摺動アームに摺接するため、第1実施例の膨張弁と同様に、支持部材が横方向及び上下方向に振動することを抑制できるとともに、支持部材が搖動する方向の力を受けたとしても、当該支持部材の揺動を抑制することができる。
また、上記の効果に加えて、第3実施例による膨張弁によれば、防振ばねの第1の摺動アーム及び第2の摺動アームが本体部から延伸する距離(高さ)を弁室の高さに合わせて自由に設定できるため、摺動アームが弁室と摺接する面の距離を広げて支持部材の回動する方向への安定性を高めることができる。
【0060】
<第4実施例>
図13は、本発明の第4実施例による膨張弁を示す縦断面図である。
なお、第4実施例においても、膨張弁10の構成要素のうち、その機能や配置等が第1実施例(
図1)で示したものと共通するものについては同一の符号を付して示す。また、発明の要部を除く部分については、再度の説明を省略する。
図13に示すように、本発明の第4実施例による膨張弁10は、弁本体11、弁棒60、パワーエレメント70及び弁構造体400を備えている。
【0061】
本発明の第4実施例による膨張弁10において、弁構造体400は、弁本体11の弁座25に接触して開閉するボール状の弁部材40と、弁部材40を支持する支持部材410と、支持部材42を支持するコイルばね44と、コイルばね44を受けるプラグ50と、支持部材42の外周面と摺動自在に接触する防振ばね110と、により構成される。
図13に示すように、第4実施例による膨張弁10には、第1実施例で用いられた防振ばね110と同一のものが適用されているため、その構造等の再度の説明は省略する。
【0062】
支持部材410は、その中央部に弁部材40を支持する円錐状のくぼみを備えた円板部410aと外周部から垂直に起立する側壁部410bとを備えており、ステンレス鋼等により形成されている。
このような支持部材410を製造する場合、例えば円板状の部材をプレス加工し、円板部410aの円錐状のくぼみと側壁部410bとを同時に形成する。
【0063】
図14は、
図13に示す膨張弁の弁孔と弁構造体との取り付け状態を示す要部の拡大断面図である。
図14に示すように、第4実施例において、弁室24の弁座25近傍の内周面24aはその下側の部分よりもやや拡径しており、この拡径部分に防振ばね110が嵌合することにより固着されている。この嵌合構造により、第1実施例のような防振ばねのかしめ固定構造が不要となる。
【0064】
一方、コイルばね44の上端に支持された支持部材410は、その側壁部410bがコイルばね44の上端を囲繞する態様でコイルばね44に載置され、防振ばね110の内側に挿通される構造となっている。
このとき、防振ばね110の第1の摺動アーム113a及び第2の摺動アーム113bにそれぞれ形成された突出部114が、支持部材410の側壁部410bの外周面に点接触した状態となるため、支持部材410が図示上の横方向及び上下方向に振動することを抑制できる。
【0065】
また、第1実施例の場合と同様に、支持部材410の側壁部410bの外周面が高さの異なる2か所において挟まれる態様で、防振ばね110の摺動アーム113a、113bに摺接するため、支持部材410が図示上で回動する方向の力を受けたとしても、当該回動する方向の力がキャンセルされる。
なお、防振ばねと支持部材とが摺接するため、支持部材を構成する材料としては、防振ばねを構成する金属と同一の材料あるいはより硬い材料であることが好ましいが、少なくとも弁本体を形成する材料よりも硬い材料であれば良い。
【0066】
上記に示す構成を備えることにより、本発明の第4実施例による膨張弁によれば、支持部材の側壁部の外周面が高さの異なる2か所において挟まれる態様で、防振ばねの摺動アームに摺接するため、第1実施例の膨張弁と同様に、支持部材が横方向及び上下方向に振動することを抑制できるとともに、支持部材が搖動する方向の力を受けたとしても、当該支持部材の揺動を抑制することができる。
また、上記の効果に加えて、第4実施例による膨張弁によれば、弁部材を支持する支持部材の構造が簡素化されるため、その製造が容易になる。
さらに、支持部材の側壁部がコイルばねの外側に位置するため、防振ばねとの摺動位置がより弁室の内周面に近くなるため、支持部材の上下方向の移動に対する安定性が向上する。
【0067】
以上、本発明による膨張弁についてその代表的な例に基づき説明したが、本発明は上記の具体例に限定されるものではなく、種々の改変を施すことができる。
例えば、第1実施例から第4実施例において、防振ばねに第1の摺動アームと第2の摺動アームを形成して、防振ばねの中心軸方向で高さの異なる2つの面で支持部材あるいは弁室と摺接する場合を例示したが、第3あるいはそれ以上の摺動アームを形成して、摺接する高さの数を増やしてもよい。
【0068】
また、第1実施例から第4実施例において、支持部材を構成する材料として、防振ばねと同一の材料あるいはより硬い材料を例示したが、セラミックス材料等の耐摩耗性材料を適用したり、あるいは摺動面に耐摩耗性のコーティングを施してもよい。
また、弁部材と支持部材とは、別体として形成されていてもよいが、一体物として形成されてもよい。
【0069】
さらに、第1実施例から第4実施例では、パワーエレメントを弁本体の上端にねじ込みによって取り付けた場合を例示したが、これ以外に、弁本体の上部に円筒部を形成し、この円筒部の内側にパワーエレメントを挿入した状態で、該円筒部を内側かしめ加工することにより、パワーエレメントを取り付ける構成を用いてもよい。
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施例に種々の改変を施すことも可能である。