【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月1日にウェブサイト(http://lib.med.tottori−u.ac.jp/yam/yam59−1/yam−59−001.pdf)にて公開 平成28年2月11日に「平成27年度学位論文公聴会卒業研究発表会発表要旨集」」にて公開
【文献】
小川 昭之,急性脳症脳波の自己回帰パワースペクトル解析所見とその臨床経過との相関,脳と発達,1976年,8巻3号,p. 217-228,DOI:10.11251/ojjscn1969.8.217
【文献】
三山佐保子,遅発性拡散能低下を呈する急性脳症(AESD)における第1相目けいれん後脳波の周波数パワースペクトラム解析,東京都病院経営本部平成25年度臨床研究報告書,2015年,Page.641-642
【文献】
李 守永,熱性けいれん重積と急性脳症の鑑別における経時的脳波周波数解析の有効性の検討,脳と発達,2015年,47巻Suppl.,Page S227,ISSN:0029-0831
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生成手段は、母集団から予め取得された脳波の特徴量サンプルと前記被験者の脳波の特徴量とを比較することにより、前記被験者がけいれん重積型急性脳症か否かの判別情報又は前記被験者が後遺症を残すけいれん重積型急性脳症か否かの判別情報を生成する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に挙げる各実施形態はそれぞれ例示であり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
【0019】
[第一実施形態]
以下、第一実施形態における診断支援装置について説明する。第一実施形態における診断支援装置は、けいれん重積型急性脳症(AESD)か熱性けいれん(FS)かの判別情報を生成する。
【0020】
〔装置構成〕
図2は、第一実施形態における診断支援装置10の装置構成例を概念的に示す図である。診断支援装置10は、いわゆるコンピュータであり、
図2に示されるようなハードウェア要素群を有する。診断支援装置10は、PC(Personal Computer)のような汎用コンピュータであってもよいし、脳波計、脳波計と通信可能な専用装置のような専用コンピュータであってもよい。診断支援装置10は、
図2に示されるように、CPU(Central Processing Unit)1、メモリ2、入出力インタフェース(I/F)ユニット3、通信ユニット4等を有する。CPU1は、他のハードウェア要素とバス等の通信線により接続される。
図2に例示されるハードウェア要素群は情報処理回路と総称することもできる。
【0021】
CPU1は、一般的なCPUであってもよいし、その代わりに又はそれに加えて、特定用途向け集積回路(ASIC)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等の少なくとも一つを含んでいてもよい。
メモリ2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
【0022】
入出力I/Fユニット3は、表示装置(図示せず)、入力装置(図示せず)等のユーザインタフェース装置と接続可能である。表示装置は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU1により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。表示装置及び入力装置は一体化され、タッチパネルとして実現されてもよい。
【0023】
通信ユニット4は、無線通信又は有線通信を行い、他のコンピュータや脳波計のようなデバイスと通信を行う。通信ユニット4は、USB(Universal Serial Bus)ユニットを含んでもよい。通信ユニット4は、USBメモリ、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクのような可搬型記録媒体とデータのやり取りを行うこともできる。通信ユニット4によりサポートされる通信方式は限定されない。
【0024】
但し、診断支援装置10のハードウェア構成は、
図2に示される例に制限されない。診断支援装置10は、図示されていない他のハードウェア要素を含み得る。例えば、診断支援装置10は、脳波計として実現される場合には、脳波を計測するための電極等を含んでもよい。各ハードウェア要素の数も、
図2の例に制限されない。例えば、診断支援装置10は、複数のCPU1を有していてもよい。
【0025】
診断支援装置10のメモリ2には、診断支援プログラム7が格納されている。診断支援プログラム7は、ROM(メモリ2)に予め格納されていてもよいし、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから通信ユニット4を介してインストールされ、メモリ2に格納されてもよい。診断支援プログラム7は、コンピュータに読み取り可能に記録する記録媒体に格納された状態で販売されてもよいし、インターネット上のサーバ装置に格納された状態で販売されてもよい。
【0026】
〔処理構成〕
図3は、第一実施形態における診断支援装置10の処理構成例を概念的に示す図である。診断支援装置10は、
図3に示されるようなソフトウェア要素を有する。具体的には、診断支援装置10は、データ取得部11、算出部12、生成部13等を有する。これら各ソフトウェア要素は、例えば、CPU1によりメモリ2に格納される診断支援プログラム7が実行されることにより実現される。
【0027】
データ取得部11は、けいれん重積後の所定時間内(疾患初期)における被験者の頭部上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得する。「けいれん重積」及び「けいれん重積後の所定時間内(疾患初期)」の意味は、上述したとおりである。
【0028】
「頭部上の所定部位」は、国際10−20法で規定されている電極配置に従うことが望ましい。但し、頭部上の位置を全ての被験者において標準化できるのであれば、部位の標準化の方法は限定されない。例えば、単極導出法で測定される場合、当該所定部位は、頭部上の或る一つの位置となる。また、双極導出法で測定される場合、当該所定部位は、頭部上の電位差を測る二つの位置間となる。
【0029】
脳波を測定する頭部上の部位の候補が複数設けられる場合、データ取得部11は、脳波の時系列データと共に、その脳波が測定された部位の識別番号(部位ID)を取得してもよい。また、診断支援装置10が脳波計である場合、データ取得部11は、複数の電極の中で、電位差信号の送信元である電極を特定することで、どの部位のデータであるかを識別することができる。当該部位の候補は、例えば、国際10−20法で規定される、F3とC3との間、F4とC4との間、C3とP3との間及びC4とP4との間である。脳波を測定するための所定部位の具体例については、実施例の項において説明する。
【0030】
「脳波の時系列データ」は、電位差の経時変化を示すデータであり、電位差と測定時間との複数ペアからなる離散データである。
【0031】
データ取得部11は、脳波計で測定された脳波の時系列データを、通信ユニット4を介してその脳波計又は他のコンピュータから取得することができる。また、データ取得部11は、脳波の時系列データが記録された可搬型記録媒体からそのデータを取得してもよい。診断支援装置10が脳波計である場合、データ取得部11は、電極から得られる電位差信号を設定されたサンプリング周波数でサンプリングすることにより、脳波の時系列データを取得する。
【0032】
算出部12は、データ取得部11により取得された時系列データを周波数解析することにより、上述の所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値を算出する。脳波が測定される部位が固定されている場合には、算出部12は、パワー値の算出対象となる周波数帯域の情報を予め保持すればよい。また、脳波が測定される部位の候補が複数設けられている場合、算出部12は、部位と周波数帯域との対応関係を予め保持し、この対応関係の中から、データ取得部11により取得された部位IDに対応する周波数帯域を特定すればよい。
【0033】
算出部12は、周波数解析として、例えば、フーリエ変換(高速フーリエ変換(FFT(Fast Fourier Transform))、離散フーリエ変換(DFT(Discrete Fourier Transform))など)を用いる。但し、或る特定の周波数帯域のパワー値を得ることができるのであれば、周波数解析には、ウェーブレット変換などの他の手法が利用されてもよい。算出部12は、所定の周波数分解能で得られたパワー値(スペクトル強度)から、脳波が計測された上述の所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値を算出する。例えば、算出部12は、所定部位に対応する周波数帯域における平均パワー値を算出する。所定部位に対して予め決められる周波数帯域は、実施例の項で例示するように、例えば、α波の帯域(8Hz以上12Hz以下)又はγ波の帯域(20Hz以上40Hz以下)に設定される。その他、当該周波数帯域は、速波成分(β波より速い成分(13Hz以上))内の所定帯域幅(β波とγ波とを合わせた帯域幅など)に設定されてもよい。
【0034】
生成部13は、算出部12により算出されたパワー値を用いて、被験者に関するけいれん重積型急性脳症(AESD)か熱性けいれん(FS)かの判別情報を生成する。判別情報は、算出部12により算出されたパワー値を用いて生成された情報であり、被験者がAESDであるかFSであるかをその情報を見た医師が判別予測できる情報であれば、その具体的な内容は制限されない。例えば、生成部13は、算出されたパワー値と、AESD患者のパワー値の統計値及びFS患者のパワー値の統計値とを含む判別情報を生成する。統計値は、例えば、平均パワー値、平均パワー値と分散値との組み合わせ、平均パワー値と標準偏差との組み合わせのいずれかである。AESD患者及びFS患者の各平均パワー値は、各患者の疾患初期の脳波から得られたパワー値を実績ベースで収集し、それらを周波数帯域毎に各々平均することで算出することができる。この判別情報を見た医師は、算出されたパワー値がどちらの平均パワー値に近いかを判断することで、判別予測することができる。
【0035】
また、生成部13は、算出されたパワー値をそのまま判別情報としてもよい。この場合、AESD患者及びFS患者のパワー値の統計値は、別途、印刷物や表示などにより医師に参照可能に提供されればよい。また、生成部13は、算出されたパワー値が、どちらの平均パワー値に近いかを自動で判別し、その結果を文字列又は数値で示す判別情報を生成することもできる。この場合、生成部13は、「被験者はけいれん重積型急性脳症の可能性が高いです」又は「被験者は熱性けいれんの可能性が高いです」といった文字列を含む判別情報を生成することができる。
【0036】
〔動作例/情報処理フロー〕
図4は、第一実施形態における診断支援装置10の動作例を示すフローチャートである。第一実施形態における診断支援装置10は、上述のように診断支援プログラム7がCPU1により実行されることで、
図4に例示される情報処理フローを実行する。言い換えれば、CPU1は、診断支援プログラム7をメモリ2からロードし実行することで、他のハードウェア要素と協働して、
図4に示されるような情報処理フローを実現する。
【0037】
CPU1(診断支援装置10)は、けいれん重積後の所定時間内(疾患初期)における被験者の頭部上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得する(S41)。脳波を測定する部位の候補が複数設けられている場合、CPU1は、脳波の時系列データとともに、その脳波が測定された部位の識別番号である部位IDを取得してもよい。(S41)の具体的内容は、データ取得部11の処理内容と同様である。例えば、CPU1は、脳波計で測定された脳波の時系列データを、通信ユニット4を介して、その脳波計、他のコンピュータ又は可搬型記録媒体から取得することができる。また、診断支援装置10が脳波計である場合、CPU1は、電極から得られる電位差信号を処理することにより、脳波の時系列データを取得する。
【0038】
CPU1は、(S41)で取得された時系列データを周波数解析することにより、当該脳波が測定された所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値を算出する(S42)。(S42)の具体的内容は、算出部12の処理内容と同様である。上述したとおり、脳波を測定する部位の候補が複数設けられている場合、CPU1は、(S41)で取得された部位IDに対応する周波数帯域を特定し、その周波数帯域のパワー値を算出してもよい。
【0039】
CPU1は、(S42)で算出されたパワー値を用いて、被験者に関するけいれん重積型急性脳症(AESD)か熱性けいれん(FS)かの判別情報を生成する(S43)。生成される判別情報の内容については、上述したとおりである。すなわち、(S43)の具体的内容は、生成部13の処理内容と同様である。
【0040】
CPU1は、生成された判別情報を入出力I/Fユニット3に接続される表示装置(図示せず)に表示させてもよいし、通信ユニット4を介してプリンタ(図示せず)に印刷することもできる。また、CPU1は、その判別情報をファイルに格納して、そのファイルを通信ユニット4を介して他のコンピュータや可搬型記録媒体に出力することもできる。生成された判別情報の医師への提示手法は制限されない。
【0041】
第一実施形態として、AESDの診断支援方法を実現することも可能である。第一実施形態におけるAESDの診断支援方法は、上述の診断支援装置10又はCPU1のような、少なくとも一つのコンピュータ又はCPUにより実行される。例えば、CPU1が、診断支援プログラム7を実行することにより、
図4に示される情報処理フローを含むAESDの診断支援方法を実現することができる。
【0042】
〔第一実施形態の作用及び効果〕
上述したように、第一実施形態では、疾患初期の被験者の脳波の時系列データが周波数解析され、その脳波が測定された所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値が算出される。そして、そのパワー値を用いて、その被験者に関するAESDかFSかの判別情報が生成される。
【0043】
本発明者らは、けいれん重積の状態で病院に送られる患者の疾患が、熱性けいれん(FS)なのかけいれん重積型急性脳症(AESD)なのかを早期に判別することの重要性に着眼した。MRI、血液検査、髄液検査などの検査の結果のみでは、けいれん重積の原因が、AESDかFSかを判別することは難しく、AESD及びFSは、発熱後、けいれん重積状態となる点において、症状も同じである。現状、医師は、患者の脳波を測定し、測定された脳波波形を視覚的に診断することで、AESDかFSかを予測しなければならない。
そして、本発明者らは、実施例の項で詳述するように、疾患初期に頭部上の特定部位で測定された脳波において、特定周波数帯のパワー値に、AESD患者とFS患者との間で有意差があることを実証した。これにより、本発明者らは、第一実施形態のように、脳波が測定された所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値を用いることで、被験者がAESDであるかFSであるかを予測判別し得ることを新たに見出した。
【0044】
このように、第一実施形態によれば、周波数解析により算出されたパワー値を用いることで、疾患初期の被験者に関するAESDかFSかの判別情報を生成することができる。この判別情報は、客観的な数値を用いて生成されるため、定量的な判別を可能とする情報である。これにより、第一実施形態によれば、疾患初期という、他の検査や脳波の視覚的診断では困難である、AESDかFSかの定量的な判別予測を可能とし、ひいては、医師によるAESDの早期診断を支援することができる。
【0045】
[第一変形例]
上述の第一実施形態において、複数の周波数帯域のパワー値を用いて、判別情報が生成されてもよい。即ち、脳波が測定される特定部位に対して複数の周波数帯域が予め決められていてもよい。このような形態を第一変形例として、上述の第一実施形態と異なる内容を中心に説明する。
【0046】
第一変形例では、算出部12は、脳波が測定された所定部位に対して予め決められた複数の周波数帯域の各々について、パワー値をそれぞれ算出する。脳波が測定される部位が固定されている場合には、算出部12は、パワー値の算出対象となる複数の周波数帯域の情報を予め保持すればよい。また、脳波が測定される部位の候補が複数設けられている場合、算出部12は、部位と複数の周波数帯域との対応関係を予め保持し、この対応関係の中から、データ取得部11により取得された部位IDに対応する複数の周波数帯域を特定すればよい。
【0047】
当該複数の周波数帯域は、連続した或る周波数帯域が区分けされたものであってもよいし、離間した帯域であってもよい。例えば、当該複数の周波数帯域は、α波の帯域(8Hz以上12Hz以下)及びγ波の帯域(20Hz以上40Hz以下)に設定される。
【0048】
生成部13は、算出部12により当該複数の周波数帯域について算出された複数のパワー値を用いて、当該判別情報を生成する。第一変形例においても、判別情報の具体的内容は制限されない。例えば、生成部13は、算出された複数のパワー値と、当該複数の周波数帯域の各々についての、AESD患者のパワー値の統計値及びFS患者のパワー値の統計値とを含む判別情報を生成する。また、生成部13は、算出された複数のパワー値をそのまま判別情報としてもよい。この場合、AESD患者及びFS患者の、当該複数の周波数帯域の各々についてのパワー値の統計値は、別途、印刷物や表示などにより医師に参照可能に提供されればよい。また、生成部13は、算出された複数のパワー値の各々が、どちらの平均パワー値に近いかをそれぞれ自動で判別し、その結果を文字列又は数値で示す判別情報を生成することもできる。
【0049】
算出された複数のパワー値の利用法は、上述の例に制限されない。生成部13は、算出された複数のパワー値に対して更なる演算を施し、その演算の結果得られる値に基づく判別情報を生成することもできる。例えば、或る周波数帯域のパワー値を他の周波数帯域のパワー値で除算して得られる値が直接的に用いられてもよいし、二以上の周波数帯域のパワー値の合計値が、少なくとも一つの周波数帯域が異なる二以上の周波数帯域のパワー値の合計値で除算して得られる値が直接的に用いられてもよい。後述の実施例で挙げるように、例えば、δ波の、α波に対するパワー値比率、δ波及びθ波の合計パワー値の、α波及びβ波の合計パワー値に対する比率などの少なくとも一つは、判別情報の生成に用いられ得る。
【0050】
第一変形例における診断支援装置10の動作例または情報処理フローでは、
図4から次のように変形される。
(S42)において、CPU1は、脳波が測定された所定部位に対して予め決められた複数の周波数帯域の各々について、パワー値をそれぞれ算出する。
(S43)において、CPU1は、(S42)で算出された複数のパワー値を用いて、被験者に関するFSかAESDかの判別情報を生成する。
【0051】
以上のように、第一変形例では、複数の周波数帯域に関する複数のパワー値を用いて、判別情報が生成される。すなわち、第一変形例では、被験者のパワー値と、AESD患者及びFS患者のパワー値の各統計値とを、複数の周波数帯域の各々について比較して、AESDかFSかの判別を行うことになる。よって、第一変形例によれば、AESDかFSかの判別精度を向上させることができる。
【0052】
[第二変形例]
上述の第一実施形態において、複数部位の各脳波における、1以上の周波数帯域のパワー値を用いて、判別情報が生成されてもよい。即ち、周波数解析の対象となる脳波が頭部上の複数部位から測定され、各部位に対して1以上の周波数帯域が予め決められていてもよい。このような形態を第二変形例として、上述の第一実施形態と異なる内容を中心に説明する。
【0053】
データ取得部11は、被験者の頭部上の複数の所定部位における脳波の時系列データをそれぞれ取得する。データ取得部11は、脳波の時系列データ毎に、部位IDをそれぞれ取得してもよい。また、診断支援装置10が脳波計である場合、データ取得部11は、複数の電極の中で、電位差信号の送信元である電極を特定することで、どの部位のデータであるかを識別することができる。複数の所定部位での脳波の測定は、同タイミングでそれぞれ行われることが望ましい。測定条件が複数の部位間で一致するため、判別精度の向上が期待できるからである。しかしながら、所定部位毎に順番に脳波が測定されてもよい。当該複数の所定部位の具体例は、実施例の項で説明する。
【0054】
算出部12は、当該複数の所定部位の各々の脳波における、所定部位毎に予め決められた一又は複数の周波数帯域のパワー値をそれぞれ算出する。所定部位毎に、一つ又は複数の同じ周波数帯域が予め決められていてもよい。また、所定部位毎に、異なる数の周波数帯域が予め決められていてもよい。例えば、F4とC4との間の部位に対して、α波の帯域及びγ波の帯域が予め決められ、C4とP4との間の部位に対して、γ波の帯域のみが予め決められる。更に、当該複数の所定部位に含まれる第一所定部位及び第二所定部位に対して、異なる周波数帯域が予め決められていてもよい。例えば、F4とC4との間の部位に対して、α波の帯域が予め決められ、C4とP4との間の部位に対して、γ波の帯域が予め決められる。
【0055】
生成部13は、当該複数の所定部位及び当該一又は複数の周波数帯域について算出されたパワー値を用いて、上述の判別情報を生成する。第二変形例においても、判別情報の具体的内容は制限されない。例えば、生成部13は、算出された複数のパワー値と、所定部位毎及び周波数帯域毎のAESD患者のパワー値の統計値及びFS患者のパワー値の統計値とを含む判別情報を生成する。また、生成部13は、算出された複数のパワー値をそのまま判別情報としてもよい。また、生成部13は、算出された複数のパワー値が、どちらの平均パワー値に近いかを、所定部位毎及び周波数帯域毎に自動で判別し、その結果を文字列又は数値で示す判別情報を生成することもできる。
【0056】
更に、生成部13は、第一変形例で例示したように、算出された複数のパワー値に所定の演算を施し、その演算により得られた値に基づく判別情報を生成することもできる。演算としては、同一部位における異なる周波数帯域のパワー値の比の算出が行われてもよいし、異なる部位における同一周波数帯域のパワー値の比の算出が行われてもよい。
【0057】
第二変形例における診断支援装置10の動作例または情報処理フローでは、
図4から次のように変形される。
(S41)において、CPU1は、被験者の頭部上の複数の所定部位における脳波の時系列データをそれぞれ取得する。
(S42)において、CPU1は、当該複数の所定部位の各々の脳波における、所定部位毎に予め決められた一又は複数の周波数帯域のパワー値をそれぞれ算出する。
(S43)において、CPU1は、当該複数の所定部位及び当該一又は複数の周波数帯域について算出された複数のパワー値を用いて、被験者に関するAESDかFSかの判別情報を生成する。
【0058】
以上のように、第二変形例では、頭部上の複数の所定部位でそれぞれ測定された各脳波に関して、所定部位毎に予め決められた一又は複数の周波数帯域のパワー値がそれぞれ算出され、このような複数のパワー値を用いて、判別情報が生成される。すなわち、第二変形例では、被験者のパワー値と、AESD患者及びFS患者のパワー値の各統計値とを、頭部上の複数の部位及び複数の周波数帯域の各々について比較して、AESDかFSかの判別を行うことになる。よって、第二変形例によれば、AESDかFSかの判別精度を向上させることができる。
【0059】
[リスク評価情報の他の生成例]
上述の第一実施形態において、既知の統計分類手法を用いて、被験者がFSかAESDかを自動で判別するようにしてもよい。
【0060】
具体的には、生成部13は、AESDの学習データ及びFSの学習データと、算出部12により算出されたパワー値との比較により、算出されたパワー値をAESDかFSかに統計分類する。様々な統計分類手法が存在しており、それらは、機械学習、パターンマッチング、データクラスタリング等の様々な技術分野で利用されている。AESD及びFSの各学習データは、例えば、AESD又はFSと診断された各患者に関して被験者と同じ手法(所定部位及び疾患初期)で得られたパワー値の集合である。統計分類手法には、例えば、SVM(support vector machine)、線形判別分析、k近傍法などが利用可能である。
【0061】
学習データと算出されたパワー値との比較では、例えば、生成部13は、AESDの学習データに対する類似度及びFSの学習データとの類似度をそれぞれ算出する。この類似度には、ユークリッド距離が用いられてもよい。生成部13は、AESD及びFSのうち所定閾値よりも大きい類似度を示すほうに、被験者のパワー値を分類する。
【0062】
生成部13は、上述の統計分類の結果又は統計分類の根拠データを含む判別情報を生成する。統計分類の結果は、算出された被験者のパワー値がAESDかFSかのどちらに属するかを示す。また、統計分類の根拠データは、被験者のパワー値の所属を決める上で根拠とされたデータである。例えば、生成部13は、学習データと算出されたパワー値との類似度を当該根拠データとして用いる。
【0063】
以下に実施例を挙げ、上述の内容を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例から何ら制限を受けない。
【実施例1】
【0064】
本発明者らは、けいれん重積で病院に送られた小児患者から計測された過去の脳波データを解析して、次のような結果を得ている。具体的には、2001年12月から2014年1月までの間に、鳥取大学医学部附属病院を含む複数の対象病院に送られた小児患者(68名)から、けいれん重積後120時間以内に、20から30分間計測された脳波データ(72個)が用いられた。
【0065】
図5は、実施例における電極配置及び脳波計測方法を概念的に示す図である。
図5において、円で囲まれた箇所が、国際10−20法に準ずる電極配置を示す。本実施例では、
図5に示される、国際10−20法に準ずる電極配置で、双極導出法により、脳波データが測定された。即ち、Fp1とF3との間、Fp2とF4との間、F3とC3との間、F4とC4との間、C3とP3との間、C4とP4との間、P3とO1との間及びP4とO2との間のそれぞれの電位差の時間変位を示す脳波データが計測された。計測パラメータとして、時定数0.3秒、高周波数フィルタ(60Hz)、感度10μV/mm、サンプリング周波数200Hz又は500Hzが利用された。
【0066】
図6は、けいれん重積型急性脳症(AESD)及び熱性けいれん(FS)のパワースペクトルを示す図である。
本実施例において、上述の各脳波データに対して、周波数解析として高速フーリエ変換が適用され、
図6に示されるようなパワースペクトルが算出された。具体的には、サンプリング周波数200Hzにおいて0.4Hzのステップ幅で、サンプリング周波数500Hzにおいて0.2Hzのステップ幅で、1Hzから60Hzの周波数帯域についてスペクトル強度が算出された。
図6には、上述の68名の小児患者の中の18名のAESD患者の脳波から得られたスペクトル強度の一例及び20名のFS患者の脳波から得られたスペクトル強度の一例が示されている。
【0067】
本実施例では、算出されたスペクトル強度は、δ波(1Hz以上3Hz以下)、θ波(4Hz以上7Hz以下)、α波(8Hz以上12Hz以下)、β波(13Hz以上19Hz以下)、γ波(20Hz以上40Hz以下)の各周波数帯域についてそれぞれ平均された。
図6では、各周波数帯域の領域が区分けされて表されている。
【0068】
図7は、AESD患者群、FS患者群及び健常者群の脳波から得られたパワー値(スペクトル強度)の統計を示す表である。
図7の表は、脳波が計測された部位(国際10−20法に準ずる電極配置)と、周波数帯域(δ波、θ波、α波、β波、γ波)毎のパワー値の統計値との関係を示す。
図7における表記「A±B」では、「A」が該当母集団の平均パワー値を示し、「B」が該当母集団の標準偏差を示す。また、「A±B」の添え字「a」は、p値が0.01未満の有意水準を示し、添え字「b」は、p値が0.05未満の有意水準を示す。
AESD患者群は、上述した18名のAESD患者群の中の、重度の6名で形成し、FS患者群は、上述の20名で形成した。健常者群は、上述した小児患者とは別に、鳥取大学医学部附属病院で計測された、13名の健常小児で形成した。
【0069】
図8は、AESD患者群、FS患者群及び健常者群の脳波から得られたパワー値(スペクトル強度)の統計を示す箱ひげ図である。横軸に、4つの各部位(Fp2とF4との間、F4とC4との間、C4とP4との間、P4とO2との間)が示され、縦軸に、パワー値(スペクトル強度)が示されている。
図8(A)は、上述の4つの各部位におけるα波のパワー値の統計値を示し、
図8(B)は、同じ各部位におけるβ波のパワー値の統計値を示し、
図8(C)は、同じ各部位におけるγ波のパワー値の統計値を示す。各図において、各部位について3つの箱ひげ(左からAESD患者群、FS患者群、健常者群)がそれぞれ示されている。ひげの上端及び下端は、パワー値の最大値及び最小値を示し、箱の下端、中央及び上端は、第一四分位数、中央値、第三四分位数を示す。また、箱ひげ間をつなぐ接続線のうち、一つのアスタリスク(*)が付された接続線が、p値が0.05未満の有意水準を示し、二つのアスタリスク(**)が付された接続線が、p値が0.01未満の有意水準を示す。
【0070】
図9は、AESD患者群、FS患者群及び健常者群の脳波から得られたパワー値(スペクトル強度)の統計を示す図である。横軸に、4つの各部位(Fp2とF4との間、F4とC4との間、C4とP4との間、P4とO2との間)が示され、縦軸に、パワー値(スペクトル強度)が示されている。
図9(A)は、上述の4つの各部位におけるα波のパワー値の統計値を示し、
図9(B)は、同じ各部位におけるβ波のパワー値の統計値を示し、
図9(C)は、同じ各部位におけるγ波のパワー値の統計値を示す。各図において、各部位について3つのマーク付き上下線がそれぞれ示されている。上下線の上端及び下端が±標準偏差を示し、マークが平均値を示す。また、マーク付き上下線間をつなぐ接続線のうち、一つのアスタリスク(*)が付された接続線が、p値が0.05未満の有意水準を示し、二つのアスタリスク(**)が付された接続線が、p値が0.01未満の有意水準を示す。
【0071】
図7、
図8及び
図9に示されるとおり、次に示される、部位と周波数帯域との組合せに係るパワー値に、AESD患者群とFS患者群との間の有意差が認められた。
・FP2とF4との間の部位におけるγ波
・F3とC3との間の部位におけるγ波
・F4とC4との間の部位におけるα波及びγ波
・C4とP4との間の部位におけるγ波
なお、次に示される、部位と周波数帯域との組合せに係るパワー値に、FS患者群と健常者群との間の有意差が認められた。
・F3とC3との間の部位におけるγ波
・F4とC4との間の部位におけるγ波
・C4とP4との間の部位におけるγ波
・P4とO2との間の部位におけるβ波及びγ波
【0072】
このように、本実施例により、疾患初期に頭部上の特定部位で測定された脳波において、特定周波数帯のパワー値に、AESD患者とFS患者との間で有意差があることが実証された。結果として、脳波が測定された所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値を用いて生成される、AESDかFSかの判別情報の有用性も確認される。
上述の第一実施形態では、例えば、有意差が認められた、所定部位と周波数帯域との上述の組み合わせのいずれか一つが利用できる。
第一変形例では、例えば、F4とC4との間の部位とα波及びγ波の周波数帯域との組み合わせが利用できる。
第二変形例では、FP2とF4との間の部位、F3とC3との間の部位、F4とC4との間の部位及びC4とP4との間の部位のいずれか複数と、γ波の周波数帯域との組み合わせが利用できるし、有意差が認められた全ての組み合わせが利用できる。
【0073】
更に、本発明者らは、脳波が測定された所定部位に対して予め決められた複数の周波数帯域の間のパワー値比率を用いることで、被験者がAESDであるかFSであるかを予測判別し得ることも新たに見出した。
【0074】
図10は、AESD患者群、FS患者群及び健常者群の脳波から得られたパワー値(スペクトル強度)の所定演算結果の統計を示す箱ひげ図である。横軸に、4つの各部位(Fp2とF4との間、F4とC4との間、C4とP4との間、P4とO2との間)が示され、縦軸に、パワー値比率が示されている。
図10(A)は、上述の4つの各部位におけるδ波のα波に対するパワー値比率の統計値を示し、
図10(B)は、同じ各部位における、δ波及びθ波の合計パワー値の、α波及びβ波の合計パワー値に対する比率の統計値を示す。各図において、各部位について3つの箱ひげ(左からAESD患者群、FS患者群、健常者群)がそれぞれ示されている。ひげの上端及び下端は、最大値及び最小値を示し、箱の下端、中央及び上端は、第一四分位数、中央値、第三四分位数を示す。また、箱ひげ間をつなぐ接続線のうち、一つのアスタリスク(*)が付された接続線が、p値が0.05未満の有意水準を示す。
【0075】
図10の例では、F4とC4との間の部位における、δ波のα波に対するパワー値比率、並びに、F4とC4との間及びC4とP4との間の各部位における、δ波及びθ波の合計パワー値の、α波及びβ波の合計パワー値に対する比率に、AESD患者群とFS患者群との間の有意差が認められている。
【0076】
このように、本実施例により、複数の特定周波数帯のパワー値比率に、AESD患者とFS患者との間で有意差があることが実証された。結果として、脳波が測定された所定部位に対して予め決められた複数の周波数帯域のパワー値比率を用いて生成される、AESDかFSかの判別情報の有用性も確認される。
【0077】
なお、本発明者らは、けいれん重積後24時間以内に計測された脳波データの解析も行い、AESD患者群の、F3とC3との間、F4とC4との間、P3とO1との間の部位における、θ波、α波、β波及びγ波の各周波数帯のパワー値が、FS患者群よりも低いことを確認している。更に、AESD患者群の、δ波のα波に対するパワー値比率、並びに、δ波及びθ波の合計パワー値の、α波及びβ波の合計パワー値に対する比率が、各部位において、FS患者群よりも高くなっていることが確認されている。
【実施例2】
【0078】
更に、各周波数帯域のパワー値の、けいれん重積後24時間以内における時間変化によっても、AESD患者とFS患者との判別が可能であることが実証された。
実施例2では、7名のAESD患者及び15名のFS患者の、けいれん重積後24時間以内に計測された脳波データが用いられた。
図11(A)は、AESD患者(7名)及びFS患者(15名)の各患者の脳波測定時間と、その脳波におけるα波周波数帯域のパワー値との関係を表すグラフである。
図11(B)は、AESD患者(7名)及びFS患者(15名)の各患者の脳波測定時間と、その脳波における、δ波のα波に対するパワー値比率との関係を表すグラフである。
図11(C)は、AESD患者(7名)及びFS患者(15名)の各患者の脳波測定時間と、その脳波における、δ波及びθ波の合計パワー値の、α波及びβ波の合計パワー値に対する比率との関係を表すグラフである。
各図において、黒丸がAESD患者のデータを示し、白抜き丸がFS患者のデータを示している。
【0079】
図11(A)によれば、AESD患者の脳波では、α波のパワー値がけいれん重積後24時間内で徐々に低下している。言い換えれば、α波のパワー値がけいれん重積後の経過時間と負の相関があることが表されている。逆に、FS患者の脳波では、α波のパワー値がけいれん重積後24時間内で徐々に増加している。言い換えれば、α波のパワー値がけいれん重積後の経過時間と正の相関があることが表されている。
図11(B)によれば、AESD患者の脳波では、δ波のα波に対するパワー値比率がけいれん重積後24時間内で増加している。言い換えれば、δ波のα波に対するパワー値比率がけいれん重積後の経過時間と正の相関があることが表されている。逆に、FS患者の脳波では、δ波のα波に対するパワー値比率がけいれん重積後24時間内で低下している。言い換えれば、δ波のα波に対するパワー値比率がけいれん重積後の経過時間と負の相関があることが表されている。
図11(C)によれば、AESD患者の脳波では、波及びθ波の合計パワー値の、α波及びβ波の合計パワー値に対する比率がけいれん重積後24時間内で増加している。言い換えれば、δ波及びθ波の合計パワー値の、α波及びβ波の合計パワー値に対する比率がけいれん重積後の経過時間と正の相関があることが表されている。逆に、FS患者の脳波では、当該比率がけいれん重積後24時間内で低下している。言い換えれば、δ波及びθ波の合計パワー値の、α波及びβ波の合計パワー値に対する比率がけいれん重積後の経過時間と負の相関があることが表されている。
また、
図11によれば、AESD患者の脳波では、時間経過してもα波及びβ波の成分が低下したままで、徐波成分は時間経過に応じて増加していくことが分かる。
【0080】
図11では、AESD患者群及びFS患者群の、脳波のパワー値の時間分布が確認されていたが、AESD及びFSの各患者における、脳波のパワー値の時間変化も確認されている。
図12は、AESD及びFSの各患者におけるα波周波数帯域のパワー値の時間変化を示すグラフである。
図12では、2名のAESD患者及び2名のFS患者の各々において、けいれん重積後24時間以内に時間間隔をおいて2回計測された脳波が解析された。実線がAESD患者のデータ変化を示し、破線がFS患者のデータ変化を示す。
【0081】
図12によれば、AESD患者の2名とも、α波のパワー値がけいれん重積後24時間内で低下している。逆に、FS患者の2名とも、α波のパワー値がけいれん重積後24時間内で大幅に増加している。この結果は、
図11(A)の結果と同じであり、AESD及びFSの患者毎にも、
図11で相関関係が言えることが確認されたこととなる。
【0082】
このように、本実施例により、疾患初期(例えば、24時間以内)における脳波のパワー値の時間変化も、AESDとFSとを判別するための一指標となりうることが実証された。したがって、上述の第一実施形態及び変形例に加えて、またはそれとは別に、所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値の時間変化を用いて判別情報を生成してもよい。具体的には、時間毎のパワー値を判別情報に含めてもよいし、増加傾向又は減少傾向を示す情報を判別情報に含めてもよいし、増加傾向を示す患者は、FSであり、減少傾向を示す患者は、AESDであると予測する判別情報を生成してもよい。上述の第一実施形態及び変形例で得られる結果とこの例で得られる結果とが同一であるか否かによって、生成された判別情報の精度が判定されてもよい。
【0083】
[第二実施形態]
以下、第二実施形態における診断支援装置について説明する。
まず、第二実施形態における診断支援装置が行う診断支援の概要を説明する。
第二実施形態における診断支援装置は、けいれん重積後の所定時間内において被験者の頭部上の一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得し、取得された時系列データにおける時間相関係数及び空間相関係数の少なくとも一方の相関係数を複数算出し、算出された相関係数の頻度情報を当該被験者の脳波の特徴量として取得し、取得された特徴量を用いて、当該被験者のけいれん重積型急性脳症(AESD)に関する判別情報を生成する。
【0084】
「けいれん重積」、「けいれん重積後の所定時間内(疾患初期)」、「頭部上の所定部位」、及び「脳波の時系列データ」の各意味は、上述したとおりである。
第二実施形態では、一つの所定部位で測定された脳波の時系列データが利用されてもよいし、複数の所定部位で測定された脳波の時系列データが利用されてもよい。但し、高精度な判別のためには、複数の所定部位で測定されたデータを利用するほうが好ましい。なお、以下の説明において、脳波が測定される所定部位は測定部位と表記される場合もある。
【0085】
図13は、第二実施形態における時間相関及び空間相関を概念的に示す図である。
図13には、被験者の頭部上のN個の所定部位で測定された脳波の時系列データの例が示されている。
ここで、「時間相関係数」とは、一の所定部位で測定された脳波の時系列データのうち、時間軸上の異なる時点間(時間)の波形の関係性(類似性)の強さを示す指標値である。
図13では、紙面左から右に向かって時間軸が取られているため、時間相関係数は、横方向の波形の関係性の強さを示す。
「空間相関係数」とは、異なる二つの所定部位でそれぞれ測定された脳波の時系列データ間における波形の関係性(類似性)の強さを示す指標値である。
図13では、紙面上下方向に、測定部位毎の脳波の時系列データが示されているため、空間相関係数は、上下間の波形の関係性の強さを示す。
「時間相関係数」及び「空間相関係数」において、異なる時点間又は異なる測定部位間で比較される波形の時間長は、任意である。或る時点で測定された脳波の振幅値が比較されてもよいし、同一時間長の波形データが比較されてもよいし、異なる時間長の波形データが比較されてもよい。本実施形態では、後述するように、同一時間長(単一時間区間)の波形データを比較して、時間相関係数又は空間相関係数を算出する例が示される。
【0086】
「相関係数の頻度情報」とは、時間相関係数又は空間相関係数の発生頻度を示す情報である。発生頻度としては、係数の値ごとの発生数又は発生割合、係数の所定値域ごとの発生数又は発生割合などが挙げられる。例えば、算出された複数の時間相関係数又は空間相関係数が、予め決められた複数の値域(−1.0以上−0.25未満、−0.25以上−0.5未満など)に分類され、各値域に属する係数の数が「相関係数の頻度情報」としカウントされる。また、算出された複数の時間相関係数又は空間相関係数がそれぞれ端数処理され、処理後の係数の値ごとの数が「相関係数の頻度情報」としてカウントされる。
【0087】
この「相関係数の頻度情報」が被験者の脳波の特徴量(特徴を示す情報)として用いられて、被験者のAESDに関する判別情報が生成される。判別情報は、被験者の脳波の特徴量(相関係数の頻度情報)を用いて生成される情報であり、被験者について、その情報を見た医師がAESDに関して何らかを判別予測できる情報であれば、その具体的な内容は制限されない。その判別情報は、被験者がAESDであるか否かを医師が判別する上で助けとなる情報であってもよいし、被験者が後遺症の残る可能性の高いAESDであるか否かを医師が判別する上で助けとなる情報であってもよい。この判別情報の具体的内容については後述する。
【0088】
本概要で示されるように、本発明者らは、けいれん重積後の被験者の脳波の時間相関係数及び空間相関係数のいずれか一方又は両方が、AESDに関する脳波の特徴を表していることを見出し、その特徴量を用いることで、医師による被験者のAESDに関する診断を支援し得るという新たな着想を得た。第二実施形態はこのような着想が具現化されており、被験者の脳波の時間相関係数及び空間相関係数のいずれか一方又は両方を特徴量として用いることで、被験者のAESDに関する何らかの判別を可能とする判別情報を生成することができる。当該特徴量は、客観的な数値であるため、第二実施形態によれば、AESDに関する定量的な判別を可能とする。
【0089】
以下、第二実施形態における診断支援装置についてより詳しく説明する。以下の説明では、説明の便宜のために、時間相関係数及び空間相関係数の両方を特徴量として用いる場合が例示される。但し、以下の説明において、時間相関係数及び空間相関係数のいずれか一方が特徴量として用いられたとしても、上述の作用効果を得ることは可能である。
【0090】
〔装置構成〕
第二実施形態における診断支援装置は、いわゆるコンピュータであり、
図2に示されるようなハードウェア要素群を有する。各ハードウェア要素については、第一実施形態にて述べたとおりである。第二実施形態における診断支援装置は、PCのような汎用コンピュータであってもよいし、脳波計、脳波計と通信可能な専用装置のような専用コンピュータであってもよい。第二実施形態における診断支援装置のハードウェア構成は、
図2に示される例に制限されず、図示されていない他のハードウェア要素を含み得る。例えば、診断支援装置は、脳波計として実現される場合には、脳波を計測するための電極等を含んでもよい。各ハードウェア要素の数も、
図2の例に制限されない。例えば、診断支援装置は、複数のCPU1を有していてもよい。
【0091】
第二実施形態における診断支援装置のメモリ2には、診断支援プログラム7が格納されている。診断支援プログラム7は、ROM(メモリ2)に予め格納されていてもよいし、CD、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから通信ユニット4を介してインストールされ、メモリ2に格納されてもよい。診断支援プログラム7は、コンピュータに読み取り可能に記録する記録媒体に格納された状態で販売されてもよいし、インターネット上のサーバ装置に格納された状態で販売されてもよい。
【0092】
〔処理構成〕
図14は、第二実施形態における診断支援装置20の処理構成例を概念的に示す図である。診断支援装置20は、
図14に示されるようなソフトウェア要素を有する。具体的には、診断支援装置20は、受付部21、データ取得部22、選択部23、算出部24、分布取得部25、生成部26等を有する。これら各ソフトウェア要素は、例えば、CPU1によりメモリ2に格納される診断支援プログラム7が実行されることにより実現される。
【0093】
データ取得部21は、けいれん重積後の所定時間内において被験者の頭部上の一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得する。即ち、データ取得部21は、第一実施形態のデータ取得部11と同様である。上述したとおり、脳波の測定部位の数は限定されないが、本実施形態では、データ取得部21は、複数の所定部位の各々で測定された脳波の時系列データを取得する。
【0094】
データ取得部21は、測定された脳波の全時系列データを、特徴量を抽出する対象として取得してもよいし、その中の一部を対象として取得してもよい。即ち、データ取得部21は、後述する受付部22で受け付けられたユーザ入力に基づいて、一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データから、そのユーザ入力が示す抽出時点に対応する時間区間の時系列データを抽出してもよい。以降、データ取得部21により取得される特徴量の抽出対象の時系列データを対象脳波データと表記する場合もある。
【0095】
受付部22は、脳波の時系列データの抽出時点に関するユーザ入力を受け付ける。
ここで、「抽出時点」とは、脳波の時系列データの中の、特徴量を抽出する対象として取得される局所データを特定するための時間タイミングを示す情報である。「抽出時点」は、当該局所データを特定することができるのであれば、当該局所データの開始時点であってもよいし、中心時点であってもよいし、終了時点であってもよい。また、「抽出時点」は、当該局所データの時間区間(開始時点から終了時点まで)を指し示す情報であってもよい。
例えば、受付部21は、入出力I/Fユニット3を介して接続される表示装置に、当該抽出時点をユーザに入力させるための画面を表示し、その画面に対するユーザによる入力操作に応じて当該抽出時点を受け付ける。
この抽出時点は、脳波の中でノイズの少ない安定している時間帯を特定し得る時間タイミングであることが好ましい。ノイズとしては、外部機器から混入する交流ノイズや、被験者の体動(眼球運動なども含む)により生じる筋電図などが有り得る。そこで、受付部21は、測定された脳波の時系列データを表示装置に表示することで、ユーザにそのデータの中で比較的ノイズの少ない時間帯を目視で選択させてもよい。
【0096】
データ取得部21は、受付部22により受け付けられたユーザ入力に基づいて、一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データから、そのユーザ入力が示す抽出時点に対応する時間区間の時系列データ(対象脳波データ)を抽出する。対象脳波データの時間長は、長い程、高精度な脳波特徴量を得ることができるが、ノイズの混入量を最小限することを考慮しながら、最適な時間長に設定されることが望ましい。
このように、ノイズの少ない時間帯を特定し得る抽出時点の入力が受け付けられ、その抽出時点に対応する時間区間の時系列データが対象脳波データとして抽出されるため、AESD判別に寄与する高精度な脳波特徴量を得ることができる。
【0097】
図15は、受け付けられた抽出時点及び対象脳波データの例を示す図である。
図15の例では、抽出時点として、対象脳波データの中心時点が指定されており、その抽出時点を中心に前後T1時間(2×T1)の区間(特徴抽出区間)の時系列データが対象脳波データとして取得されている。
また、
図15の例では、全ての測定部位について同じ時間区間が特徴抽出区間に設定されているが、測定部位ごとに異なる時間区間が特徴抽出区間に設定されてもよい。また、全ての測定部位の中の一部の測定部位に関する脳波の時系列データが対象脳波データとされてもよい。
【0098】
選択部23は、データ取得部21により取得された時系列データ(対象脳波データ)から、異なる時間又は異なる測定部位における単一時間区間のペアを所定数選択する。時間相関係数の頻度情報が特徴量に用いられる場合、選択部23は、異なる時間における単一時間区間のペアを所定数選択し、空間相関係数が特徴量に用いられる場合、選択部23は、異なる測定部位における単一時間区間のペアを所定数選択する。以降、異なる時間における単一時間区間のペアを測定部位内の区間ペアと表記し、異なる測定部位における単一時間区間のペアを測定部位間の区間ペアと表記する場合もある。
【0099】
本実施形態のように複数の測定部位に関する対象脳波データが得られる場合、選択部23は、測定部位毎に、測定部位内の区間ペアを所定数選択し、測定部位ペア毎に、測定部位間の区間ペアを所定数選択する。ここで、測定部位の数をN(2以上の整数)で表し、選択される当該ペアの数(所定数)をS(2以上の整数)で表すと、測定部位内の区間ペアは、(N×S)個選択され、測定部位間の区間ペアは、[{N(N−1)/2}×S]個選択されることとなる。{N(N−1)/2}は、N個の測定部位の中の二つの測定部位の全組合せの数となる。
本実施形態では、選択部23は、測定部位内の区間ペアを(N×S)個選択し、測定部位間の区間ペアを[{N(N−1)/2}×S]個選択する。本実施形態では、測定部位毎及び測定部位ペア毎に、単一時間区間のペアがS個ずつ選択されたが、各々異なる数のペアが選択されてもよい。
【0100】
図16は、異なる時間及び異なる測定部位における単一時間区間のペアの例を示す図である。
図16では、異なる時間における単一時間区間のペア(測定部位内の区間ペア)が符号S1及びS2で示されており、異なる測定部位における単一時間区間のペア(測定部位間の区間ペア)が符号S3及びS4で示されている。
本実施形態では、
図16に示されるように、測定部位間の区間ペアは、同一時間帯で設定されているが、異なる時間帯で設定されてもよい。
【0101】
選択される単一時間区間のペアの数は、多い程、処理負荷が増大し処理時間が長くなるが、高精度の脳波特徴量を得ることができる。当該ペアの数は、例えば、対象脳波データの時間長及び単一時間区間の時間長を考慮して、適切な数に設定される。
単一時間区間の時間長は、相関を調べる対象となる脳波の波長の長さ(周波数)に関係する。即ち、単一時間区間の時間長を変えることで、脳波の異なる周波数帯を調査対象とすることができるようになり、高精度の脳波特徴量を得ることができる。単一時間区間の時間長は、例えば、0.1秒から2秒程度に設定されることが好ましい。
高精度の脳波特徴量とは、AESD判別に寄与する脳波の特徴を色濃く含む特徴情報であるため、これにより、AESDの判別の高精度化を実現できる。
【0102】
対象脳波データは、ノイズの混入量が比較的少ない区間から選択されるが、ノイズを完全に除去することは難しい。そこで、選択部23は、次のようにして、単一時間区間を選択してもよい。具体的には、選択部23は、所定数の単一時間区間のペアをランダムに選択し、選択された複数の単一時間区間の中から、その単一時間区間の時系列データに上限閾値を超える又は下限閾値を下回る振幅値が含まれる単一時間区間を排除し、単一時間区間のペアが所定数となるまで、単一時間区間を選び直す。
ここで、「上限閾値」及び「下限閾値」は、筋電図などのノイズ成分と特定し得る振幅値の上限値及び下限値に設定される。これにより、ノイズ成分を含む単一時間区間を除外して、ノイズ成分を含まない単一時間区間のみを選択することができるため、ノイズを除外した脳波の時系列データから脳波の特徴量を取得することができ、結果として、高精度の脳波特徴量を得ることができる。
【0103】
算出部24は、概要で述べたとおり、データ取得部21により取得された時系列データにおける時間相関係数及び空間相関係数の少なくとも一方の相関係数を複数算出する。
本実施形態では、算出部24は、選択部23により選択された単一時間区間の各ペアについて、各単一時間区間の時系列データの相関係数を時間相関係数又は空間相関係数としてそれぞれ算出する。上述の表記例によれば、算出部24は、(N×S)個の時間相関係数と、[{N(N−1)/2}×S]個の空間相関係数とを算出する。
【0104】
相関係数の算出手法としては、公知の手法が用いられればよい。例えば、相関係数は、以下の式により算出可能である。以下の式において、R(x、y)は、単一時間区間の時系列データ(ベクトル)のペア(x、y)の相関係数を示し、C(x、y)は、単一時間区間の時系列データ(ベクトル)のペア(x、y)の共分散を示す。T
2は、単一時間区間に含まれる振幅値の個数を示し、x
i及びy
iは、単一時間区間に含まれる一つの振幅値を示す。m
xは、単一時間区間xの時系列データの平均値を示し、m
yは、単一時間区間yの時系列データの平均値を示す。相関係数R(x、y)の範囲は、−1以上、1以下である。
【数1】
【0105】
分布取得部25は、算出部24により算出された相関係数の頻度情報を被験者の脳波の特徴量として取得する。「相関係数の頻度情報」については上述したとおりである。
本実施形態では、分布取得部25は、選択部23により選択された各ペアについて、算出部24によりそれぞれ算出された相関係数に基づいて、相関係数毎の発生頻度をカウントすることにより、当該頻度情報を取得する。
ここで、「相関係数毎の発生頻度」とは、時間相関係数毎又は空間相関係数毎の発生数又は発生割合である。また、「時間相関係数毎」又は「空間相関係数毎」の粒度は、任意であり、例えば、所定の値域毎であってもよいし、所定の端数処理後の値毎であってもよい。
【0106】
図17は、一つの測定部位に関して取得された時間相関係数毎の発生頻度の例を示す図である。
図17の例では、0.1刻みの値域毎に、算出部24で算出された時間相関係数値の数がカウントされる。例えば、分布取得部25は、測定部位毎に算出されたS個の少数第一位の桁までの時間相関係数について係数値毎の数をそれぞれカウントしてもよい。
空間相関係数毎の発生頻度についても同様にカウントされる。例えば、分布取得部25は、測定部位ペア毎に算出されたS個の少数第一位の桁までの空間相関係数について係数値毎の数をそれぞれカウントしてもよい。
【0107】
分布取得部25は、測定部位毎又は前記測定部位ペア毎にカウントされる相関係数毎の発生頻度を合算することにより、当該頻度情報を取得する。本実施形態において取得される頻度情報は、相関係数のヒストグラムと表記することができる。
図18は、時間相関係数の頻度情報(ヒストグラム)の作成例を示す図である。
図18の例では、分布取得部25は、測定部位毎にカウントされる時間相関係数毎の発生数を合算し、ノルムが1になるように正規化することで、時間相関係数のヒストグラムを当該頻度情報として生成する。
図18に示されるヒストグラムは、20個のビンで形成されている(0.1刻みの相関係数値)。このとき、分布取得部25は、測定部位ペア毎にカウントされる空間相関係数毎の発生数を合算し、同様の正規化を行うことで、空間相関係数のヒストグラムを当該頻度情報として更に生成する。
このように、分布取得部25は、時間相関係数のヒストグラムと空間相関係数のヒストグラムとを別々に生成し、この二つのヒストグラムを被験者の脳波の特徴量とすることができる。
【0108】
図19は、時間相関係数の頻度情報と空間相関係数の頻度情報とを合わせて相関係数の頻度情報を生成する例を示す図である。
図19に示されるように、分布取得部25は、時間相関係数の頻度情報と空間相関係数の頻度情報とを水平方向に連結して、正規化することで、相関係数の頻度情報とすることもできる。この場合、分布取得部25は、連結及び正規化された一つのヒストグラムを被験者の脳波の特徴量とすることができる。
また、分布取得部25は、時間相関係数の頻度情報と空間相関係数の頻度情報とを合算(結合)したものを相関係数の頻度情報とすることもできる。具体的には、時間相関係数のヒストグラムと空間相関係数のヒストグラムとの各ビンの頻度を加算することで、結合されたヒストグラムを生成することができる。
【0109】
生成部26は、分布取得部25により取得された特徴量を用いて、被験者のけいれん重積型急性脳症(AESD)に関する判別情報を生成する。判別情報は、上述したとおりであり、被験者について、その情報を見た医師がAESDに関して何らかを判別予測できる情報であれば、その具体的な内容は制限されない。
例えば、生成部26は、分布取得部25により取得された被験者の脳波の特徴量と、AESD患者の母集団から予め取得された脳波の特徴量サンプルとを比較可能な状態で含む判別情報を生成することができる。この場合、生成部26は、被験者の脳波から得られた相関係数のヒストグラムとAESD患者の母集団から予め取得された相関係数のヒストグラムを並べて表す判別情報を生成してもよい。
また、生成部26は、分布取得部25により取得された被験者の脳波の特徴量をそのまま判別情報としてもよい。この場合、AESD患者の母集団から予め得られた脳波の特徴量は、別途、印刷物や表示などにより医師に参照可能に提供されればよい。
【0110】
生成部26は、母集団から予め測定された脳波の特徴量サンプルと被験者の脳波の特徴量とを比較することにより、当該被験者がAESDか否かの判別情報又は当該被験者のAESDが後遺症を残すか否かの判別情報を生成することもできる。
この場合、脳波の特徴量サンプルは、脳波データベース(DB)27に格納されていればよい。脳波DB27は、診断支援装置20のメモリ2上に実現されていてもよいし、他のコンピュータ(サーバなど)上で実現されていてもよい。他のコンピュータ上に脳波DB27が存在する場合、生成部26は、通信ユニット4を介したそのコンピュータとの通信により、脳波DB27を参照することができる。
【0111】
また、例えば、生成部26は、AESD患者又はASED以外の患者の母集団から予め測定された脳波の特徴量サンプルで学習された識別器に、被験者の脳波の特徴量を入力することで、被験者がAESDか否かを自動判別することもできる。識別器は、SVM(Support Vector Machine)などの公知のパターン認識手法などを用いて、生成することができる。この識別器は、診断支援装置20上に実現されていてもよいし、他のコンピュータ上で実現されていてもよい。
また、母集団を後遺症の残ったAESD患者とすることにより、被験者が後遺症を残すAESDか否かを自動判別することも可能である。このとき、生成部26は、その判別結果を文字列又は数値で示す判別情報を生成することができる。例えば、生成部26は、「被験者はけいれん重積型急性脳症の可能性が高いです」又は「被験者は後遺症を残すけいれん重積型急性脳症の可能性が高いです」といった文字列を含む判別情報を生成することができる。
【0112】
〔動作例/情報処理フロー〕
第二実施形態における診断支援装置20は、上述のように診断支援プログラム7がCPU1により実行されることで、
図20及び
図21に例示される情報処理フローを実行する。言い換えれば、CPU1は、診断支援プログラム7をメモリ2からロードし実行することで、他のハードウェア要素と協働して、
図20及び
図21に示されるような情報処理フローを実現する。
図20は、第二実施形態における診断支援装置20の全体的な動作を示すフローチャートである。
図21は、
図20に示される(S54)及び(S55)の詳細動作を示すフローチャートである。
【0113】
CPU1(診断支援装置10)は、けいれん重積後の所定時間内(疾患初期)における被験者の頭部上の一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得する(S51)。CPU1は、脳波の時系列データとともに、その脳波が測定された部位の識別番号である部位IDを取得してもよい。(S51)の具体的内容は、データ取得部21の処理内容と同様である。例えば、CPU1は、脳波計で測定された脳波の時系列データを、通信ユニット4を介して、その脳波計、他のコンピュータ又は可搬型記録媒体から取得することができる。また、診断支援装置20が脳波計である場合、CPU1は、電極から得られる電位差信号を処理することにより、脳波の時系列データを取得する。
上述したとおり、脳波の測定部位の数は限定されないが、本実施形態では、CPU1は、複数の所定部位の各々で測定された脳波の時系列データを取得する。
【0114】
続いて、CPU1は、脳波の時系列データの抽出時点に関するユーザ入力を受け付ける(S52)。(S52)の具体的内容は、受付部22の処理内容と同様である。例えば、CPU1は、(S51)で取得された複数の所定部位の各々の脳波の時系列データをそれぞれ表示装置に表示し、その表示に対するユーザ操作に応じて、各時系列データの中の抽出時点に関する入力情報を受ける。
【0115】
CPU1は、(S52)で受け付けたユーザ入力に基づいて、複数の所定部位で測定された脳波の時系列データから、そのユーザ入力が示す抽出時点に対応する時間区間の時系列データをそれぞれ抽出する(S53)。この処理により、各測定部位について対象脳波データがそれぞれ特定されることになる。対象脳波データの抽出手法については、データ取得部21について述べたとおりである。
【0116】
CPU1は、抽出された複数の測定部位の対象脳波データに関して、測定部位内の区間ペア及び測定部位間の区間ペアを選択する(S54)及び(S55)。本実施形態において、CPU1は、上述したとおり、測定部位内の区間ペアを(N×S)個し、測定部位間の区間ペアを[{N(N−1)/2}×S]個選択する。(S54)及び(S55)の具体的内容については、
図21を用いて後述する。なお、(S54)及び(S55)の具体的内容は、選択部23の処理内容と同様である。
【0117】
CPU1は、(S54)で選択された測定部位内の区間ペアの各々について、各単一時間区間の時系列データの相関係数を時間相関係数としてそれぞれ算出する(S56)。
更に、CPU1は、(S55)で選択された測定部位間の区間ペアの各々について、各単一時間区間の時系列データの相関係数を空間相関係数としてそれぞれ算出する(S57)。
(S56)及び(S57)の具体的内容は、算出部24の処理内容と同様であり、本実施形態では、(N×S)個の時間相関係数と、[{N(N−1)/2}×S]個の空間相関係数とが算出される。
【0118】
CPU1は、(S56)で算出された時間相関係数毎又は空間相関係数毎の発生頻度をカウントすることにより、相関係数の頻度情報を被験者の脳波の特徴量として取得する(S58)。本実施形態では、CPU1は、測定部位毎にカウントされた時間相関係数毎の発生頻度を合算することにより、時間相関係数の頻度情報を取得し、測定部位ペア毎にカウントされた空間相関係数毎の発生頻度を合算することにより、空間相関係数の頻度情報を取得する。CPU1は、このように、時間相関係数の頻度情報と空間相関係数の頻度情報とを別々に取得し、その二つの頻度情報を当該特徴量としてもよいし、それらを統合した一つの頻度情報を当該特徴量として取得してもよい。(S58)の具体的内容は、分布取得部25の処理内容と同様である。
【0119】
CPU1は、(S58)で取得された特徴量を用いて、被験者のAESDに関する判別情報を生成する(S59)。判別情報については上述したとおりであり、(S59)の具体的内容についても生成部26の処理内容と同様である。(S59)において、CPU1は、母集団から予め測定された脳波の特徴量サンプルと(S58)で取得された被験者の脳波の特徴量とを比較する工程を更に含むこともできる。この比較により、被験者がAESDであるか否かの判別又は被験者が後遺症を残すAESDであるか否かの判別を自動的に実行することができる。
【0120】
次に、(S54)及び(S55)の詳細動作について、
図21を用いて説明する。
測定部位内の区間ペアの選択(S54)は、次のように実行される。
CPU1は、(S53)で抽出された複数の測定部位の対象脳波データの中から、一の測定部位の対象脳波データを特定する(S60)。
続いて、CPU1は、(S60)で特定された対象脳波データにおいて、所定数(S個)の単一時間区間のペアをランダムに選択する(S61)。
【0121】
CPU1は、(S61)で選択された(2×S)個の単一時間区間の中で、その単一時間区間の時系列データに上限閾値を超える又は下限閾値を下回る振幅値が含まれる単一時間区間の存在を確認する(S62)。即ち、CPU1は、ノイズを含む単一時間区間の存在を確認する(S62)。上限閾値及び下限閾値については上述したとおりである。
CPU1は、ノイズを含む単一時間区間が存在しない場合(S62;NO)、(S63)及び(S64)を実行せず、(S65)を実行する。CPU1は、ノイズを含む単一時間区間が存在する場合(S62;YES)、そのノイズを含む単一時間区間を排除し(S63)、その代わりに、新たな単一時間区間を選び直す(S64)。
【0122】
CPU1は、ノイズを含む単一時間区間が存在しなくなる(S62;NO)、即ち、ノイズを含まない単一時間区間のペアがS個選択されると、(S60)で未だ特定されていない(未処理の)測定部位の存在を確認する(S65)。CPU1は、全ての測定部位の対象脳波データに関して、S個の単一時間区間のペアをそれぞれ選択し終わると(S65;NO)、
図21の処理を終える。一方で、CPU1は、(S60)で未だ特定されていない(未処理の)測定部位があれば(S65;YES)、その未処理の測定部位の対象脳波データを特定し(S60)、(S61)以降を実行する。
【0123】
このように、ノイズを含まない単一時間区間のペアを所定数選択して、そのような各ペアについて相関係数を算出することにより、(S58)で取得される被験者の脳波の特徴量の精度を上げ、ひいては、(S59)で生成される判別情報の精度を向上させることができる。
【0124】
〔第二実施形態の作用及び効果〕
第二実施形態では、複数の所定部位で測定された脳波の時系列データが取得され、その時系列データから異なる時間又は異なる測定部位における単一時間区間のペアが所定数選択される。そして、単一時間区間のペア毎に、時系列データ間の相関係数が時間相関係数又は空間相関係数として算出され、測定部位毎又は測定部位ペア毎に、時間相関係数毎又は空間相関係数毎の発生頻度がカウントされる。更に、測定部位毎又は測定部位ペア毎にカウントされた発生頻度が合算され、算出された相関係数の頻度情報が被験者の脳波の特徴量として用いられて、被験者のAESDに関する判別情報が生成される。
本発明者らにより、このように取得される脳波の特徴量によれば、AESDか否かを判別可能であること、更には、後遺症の残るAESDか否かを判別可能であることが確認されている。そして、その特徴量は相関係数の頻度情報であるため、第二実施形態によれば、AESDに関して定量的な判別が可能となる。結果、第一実施形態と同様に、第二実施形態によれば、疾患初期という、他の検査や脳波の視覚的診断では困難である、AESDに関する定量的な判別予測を可能とし、ひいては、医師によるAESDの早期診断を支援することができる。
【0125】
[第二実施形態の変形例]
上述の診断支援装置20は、受付部22を備えていなくてもよい。この場合、
図20のフローチャートにおいて(S52)が実行されなくてもよい。例えば、ノイズが比較的少ない区間がコンピュータによって自動的に特定されてもよいし、測定された脳波の時系列データの中から、ノイズの有無に関わらず対象脳波データが任意に抽出されてもよい。
また、上述の診断支援装置20は、ノイズを含む単一時間区間を排除して選び直すことをしなくてもよい。この場合、
図21のフローチャートにおいて(S62)、(S63)及び(S64)が実行されなくてもよい。
【0126】
また、上述の第二実施形態では、AESDに関する判別情報が生成されたが、FS、MERS、EP(てんかん(Epilepsy))などの他の脳症に関する判別情報を生成することも可能である。この場合、脳波DB27に、脳症種ごとにその脳症種の患者から予め取得された脳波の特徴量サンプルを格納しておき、被験者の脳波の特徴量と、各脳症種の脳波の特徴量とをそれぞれ比較し、類似度を得ることで、脳症種の候補を示す情報を提示することができる。
【0127】
図22は、第二実施形態の変形例における診断支援装置20の概略動作を示すフローチャートである。本変形例では、、脳症種ごとにその脳症種の患者から予め取得された脳波の特徴量サンプルを格納する脳波DB271と、後遺症が残ったAESDの患者から予め取得された脳波の特徴量サンプルを格納する脳波DB272とが用いられる。脳波DB271及び272は、診断支援装置20により備えられてもよいし、他のコンピュータにより備えられてもよい。
【0128】
診断支援装置20の生成部26は、被験者の脳波の特徴量と、脳波DB271に格納される特徴量サンプルとを比較することにより、脳症種の判別を自動で行う(S71)。この脳症種の判別についても、公知のパターン認識手法が利用可能である。生成部26は、被験者の症状に該当する脳症種の名称の候補を示す判別情報を生成し、提示する(S72)。
医師がその判別情報を参考にしながら被験者がAESDか否かを判定する。
被験者がAESDと判定した場合には、生成部26は、被験者の脳波の特徴量と、脳波DB272に格納される特徴量サンプルとを比較することにより、後遺症の判別を自動で行う(S75)。生成部26は、その判別の結果に基づいて、被験者に後遺症が残るか否か、又は、後遺症の予測レベルを示す判別情報を生成し、提示する(S76)。
このように、上述の第二実施形態の手法で取得される脳波の特徴量を用いることにより、脳症判別及び後遺症判別も可能となる。
【0129】
以下に実施例を挙げ、上述の第二実施形態に関する内容を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例から何ら制限を受けない。
【実施例3】
【0130】
本発明者らは、上述の手法で取得された時間相関係数の頻度情報及び空間相関係数の頻度情報のいずれか一方又は両方を脳波の特徴量として用いることで、AESDに関する判別が可能であることを次のように実証した。
【0131】
まず、けいれん重積で病院に送られた26人の小児患者から計測された過去の脳波の時系列データが利用された。小児患者の内訳は、男子14名、女子12名であり、AESDと診断された患者が12名、FSと診断された患者が9名、MERSと診断された患者が3名、EP(てんかん(Epilepsy))と診断された患者が2名である。また、AESDと診断された患者12名のうち、後遺症が残った患者が4名、後遺症が残らなった患者が8名である。
【0132】
上述の各小児患者の脳波の時系列データに対して上述の手法を適用することにより、各小児患者の特徴量がそれぞれ取得された。本実施例では、特徴量として、時間相関係数のヒストグラム、空間相関係数のヒストグラム、及びそれらを統合した統合ヒストグラムが脳波の特徴量として取得された。
【0133】
具体的には、各小児患者の脳波の時系列データに対して、抽出時点(中心時点)が指定され(S52)、その抽出時点から前後1分間の合計2分間の時系列データが対象脳波データとして抽出された(S53)。本実施例では、全ての測定部位の脳波の時系列データについて同一の時間区間により対象脳波データが抽出された。
そして、単一時間区間の時間長を1秒に設定し、測定部位毎又は測定部位ペア毎に、単位時間区間のペアが10000個(S=10000)選択された(S54)及び(S55)。この選択された単位時間区間の各ペアについて相関係数がそれぞれ算出された(S56)及び(S57)。
更に、測定部位毎又は測定部位ペア毎に、時間相関係数毎又は空間相関係数毎の発生数がカウントされ、それらが合算されることで、時間相関係数のヒストグラム、空間相関係数のヒストグラム、及びそれらを統合したヒストグラムが取得された(S58)。各ヒストグラムは、ビンの数が20個で、ビンの幅が0.1となり、ノルムが1となるように正規化されている。即ち、0.1刻みの相関係数毎の発生頻度がカウントされた。
なお、本実施例では、ノイズを含む単一時間区間の選び直しの処理(S62)、(S63)及び(S64)を実行しなかった。
【0134】
このように取得された各ヒストグラムを特徴量として用いて、AESDに関する判別の検証が行われた。本検証では、小児患者26名の脳波の特徴量を対象にして線形SVMを用いた識別器によるパターン認識が行われた。具体的には、26名の患者の中から1名の患者の特徴量を抜き出してテスト事例とし、残りの患者の特徴量を訓練事例とする。これを全ての患者の特徴量が一回ずつテスト事例となるように繰り返すことで検証が行われた(リーブワンアウト法)。
結果、AESDとそれ以外(FS、MERS、EP)との2クラスの判別で高い認識率(全て100%)を得ることができた。即ち、本実施例により、上述の手法で取得された脳波の特徴量を用いることで、被験者のAESDに関する高精度な判別が可能であることが実証された。
【0135】
図23は、時間相関係数のヒストグラムを示す図であり、
図24は、空間相関係数のヒストグラムを示す図であり、
図25は、時間相関係数のヒストグラム及び空間相関係数のヒストグラムを統合したヒストグラムを示す図である。
図23、
図24及び
図25では、AESDと診断された3名の小児患者(ID3、ID7及びID9)のヒストグラムと、それ以外(EP、MERS、FS)と診断された3名の小児患者(ID42、ID47、ID53)のヒストグラムとがそれぞれ示されている。
図23、
図24及び
図25によれば、時間相関係数のヒストグラムの形(時間相関係数の頻度情報)、空間相関係数のヒストグラムの形(空間相関係数の頻度情報)、それらを統合したヒストグラムの形(時間相関係数及び空間相関係数の両方の頻度情報)のいずれを用いても、AESDかそれ以外かを判別できることが実証された。
また、これら図により、時間相関係数又は空間相関係数の頻度情報そのものを判別情報として用いて、被験者のAESDに関する判別が可能であることが実証された。
【0136】
なお、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の情報処理工程が順番に記載されているが、各実施形態での情報処理の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。例えば、
図20で示される(S54)と(S55)とは、並列に実行されてもよいし、実行順を入れ替えてもよい。同様に、(S56)と(S57)とは、並列に実行されてもよいし、実行順を入れ替えてもよい。
また、上述の各実施形態及び各変形例は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【0137】
上述の内容の一部又は全部は、以下のようにも特定され得る。但し、上述の内容が以下の記載に限定されるものではない。
【0138】
(付記1)けいれん重積後の所定時間内において被験者の頭部上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得するデータ取得手段と、
前記取得された時系列データを周波数解析することにより、前記所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値を算出する算出手段と、
前記算出されたパワー値を用いて、前記被験者に関するけいれん重積型急性脳症か熱性けいれんかの判別情報を生成する生成手段と、
を備えるけいれん重積型急性脳症の診断支援装置。
(付記2)前記算出手段は、前記所定部位に対して予め決められた複数の周波数帯域の各々について、パワー値をそれぞれ算出し、
前記生成手段は、前記複数の周波数帯域について算出された複数のパワー値を用いて、前記判別情報を生成する、
付記1に記載の診断支援装置。
(付記3)前記データ取得手段は、前記被験者の頭部上の複数の所定部位における脳波の時系列データをそれぞれ取得し、
前記算出手段は、前記複数の所定部位の各々の脳波における、所定部位毎に予め決められた一又は複数の周波数帯域のパワー値をそれぞれ算出し、
前記生成手段は、前記複数の所定部位及び前記一又は複数の周波数帯域について算出された複数のパワー値を用いて、前記判別情報を生成する、
付記1に記載の診断支援装置。
(付記4)前記複数の所定部位に含まれる第一所定部位及び第二所定部位に対して、異なる周波数帯域が予め決められている、
付記3に記載の診断支援装置。
(付記5)前記生成手段は、
けいれん重積型急性脳症の学習データ及び熱性けいれんの学習データと、前記算出されたパワー値との比較により、そのパワー値をけいれん重積型急性脳症又は熱性けいれんに統計分類し、
前記統計分類の結果又は前記統計分類の根拠データを含む前記判別情報を生成する、
付記1から4のいずれか1つに記載の診断支援装置。
(付記6)前記生成手段は、
前記比較により、けいれん重積型急性脳症の学習データに対する類似度及び熱性けいれんの学習データとの類似度をそれぞれ算出し、
前記算出された類似度を含む前記判別情報を生成する、
付記5に記載の診断支援装置。
(付記7)前記所定部位は、国際10‐20法で規定されている電極配置に基づいて、F3とC3との間、F4とC4との間、C3とP3との間又はC4とP4との間である、
付記1から6のいずれか1項に記載の診断支援装置。
(付記8)前記データ取得手段は、前記所定時間内における異なる時間に測定された脳波の複数の時系列データを取得し、
前記算出手段は、前記複数の時系列データをそれぞれ周波数解析することにより、前記パワー値をそれぞれ算出し、
前記生成手段は、前記算出されたパワー値の時間変化の情報を更に用いて、前記判別情報を生成する、
付記1から7のいずれか1項に記載の診断支援装置。
(付記9)けいれん重積後の所定時間内の異なる時間において被験者の頭部上の所定部位で測定された脳波の時系列データをそれぞれ取得するデータ取得手段と、
前記取得された複数の時系列データをそれぞれ周波数解析することにより、前記所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値をそれぞれ算出する算出手段と、
前記算出されたパワー値の時間変化を用いて、前記被験者に関するけいれん重積型急性脳症か熱性けいれんかの判別情報を生成する生成手段と、
を備えるけいれん重積型急性脳症の診断支援装置。
(付記10)けいれん重積後の所定時間内において被験者の頭部上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得し、
前記取得された時系列データを周波数解析することにより、前記所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値を算出し、
前記算出されたパワー値を用いて、前記被験者に関するけいれん重積型急性脳症か熱性けいれんかの判別情報を生成する、
ことをコンピュータに実行させるけいれん重積型急性脳症の診断支援プログラム。
(付記11)前記パワー値の前記算出は、前記所定部位に対して予め決められた複数の周波数帯域の各々について、パワー値をそれぞれ算出し、
前記判別情報の前記生成は、前記複数の周波数帯域について算出された複数のパワー値を用いて、前記判別情報を生成する、
付記10に記載の診断支援プログラム。
(付記12)前記時系列データの前記取得は、前記被験者の頭部上の複数の所定部位における脳波の時系列データをそれぞれ取得し、
前記パワー値の前記算出は、前記複数の所定部位の各々の脳波における、所定部位毎に予め決められた一又は複数の周波数帯域のパワー値をそれぞれ算出し、
前記判別情報の前記生成は、前記複数の所定部位及び前記一又は複数の周波数帯域について算出された複数のパワー値を用いて、前記判別情報を生成する、
付記10に記載の診断支援プログラム。
(付記13)前記複数の所定部位に含まれる第一所定部位及び第二所定部位に対して、異なる周波数帯域が予め決められている、
付記12に記載の診断支援プログラム。
(付記14)けいれん重積型急性脳症の学習データ及び熱性けいれんの学習データと、前記算出されたパワー値との比較により、そのパワー値をけいれん重積型急性脳症又は熱性けいれんに統計分類する、
ことを前記コンピュータに更に実行させ、
前記判別情報の前記生成は、前記統計分類の結果又は前記統計分類の根拠データを含む前記判別情報を生成する、
付記10から13のいずれか1項に記載の診断支援プログラム。
(付記15)前記比較により、けいれん重積型急性脳症の学習データに対する類似度及び熱性けいれんの学習データとの類似度をそれぞれ算出する、
ことを前記コンピュータに更に実行させ、
前記判別情報の前記生成は、前記算出された類似度を含む前記判別情報を生成する、
付記14に記載の診断支援プログラム。
(付記16)前記所定部位は、国際10‐20法で規定されている電極配置に基づいて、F3とC3との間、F4とC4との間、C3とP3との間又はC4とP4との間である、
付記10から15のいずれか1項に記載の診断支援プログラム。
(付記17)前記時系列データの前記取得は、前記所定時間内における異なる時間に測定された脳波の複数の時系列データを取得し、
前記パワー値の前記算出は、前記複数の時系列データをそれぞれ周波数解析することにより、前記パワー値をそれぞれ算出し、
前記判別情報の前記生成は、前記算出されたパワー値の時間変化の情報を更に用いて、前記判別情報を生成する、
付記10から16のいずれか1項に記載の診断支援プログラム。
(付記18)けいれん重積後の所定時間内の異なる時間において被験者の頭部上の所定部位で測定された脳波の時系列データをそれぞれ取得し、
前記取得された複数の時系列データをそれぞれ周波数解析することにより、前記所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値をそれぞれ算出し、
前記算出されたパワー値の時間変化を用いて、前記被験者に関するけいれん重積型急性脳症か熱性けいれんかの判別情報を生成する、
ことをコンピュータに実行させるけいれん重積型急性脳症の診断支援プログラム。
(付記19)けいれん重積後の所定時間内において被験者の頭部上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得し、
前記取得された時系列データを周波数解析することにより、前記所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値を算出する、
ことを含むけいれん重積型急性脳症の診断支援方法。
(付記20)けいれん重積後の所定時間内の異なる時間において被験者の頭部上の所定部位で測定された脳波の時系列データをそれぞれ取得し、
前記取得された複数の時系列データをそれぞれ周波数解析することにより、前記所定部位に対して予め決められた周波数帯域のパワー値をそれぞれ算出し、
前記算出されたパワー値の時間変化の情報を取得する、
ことを含むけいれん重積型急性脳症の診断支援方法。
【0139】
(付記21)けいれん重積後の所定時間内において被験者の頭部上の一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得するデータ取得手段と、
前記取得された時系列データにおける時間相関係数及び空間相関係数の少なくとも一方の相関係数を複数算出する算出手段と、
前記算出された相関係数の頻度情報を前記被験者の脳波の特徴量として取得する分布取得手段と、
前記取得された特徴量を用いて、前記被験者のけいれん重積型急性脳症に関する判別情報を生成する生成手段と、
を備えるけいれん重積型急性脳症の診断支援装置。
(付記22)前記取得された時系列データから、異なる時間又は異なる測定部位における単一時間区間のペアを所定数選択する選択手段、
を更に備え、
前記算出手段は、前記選択された各ペアについて、各単一時間区間の時系列データの相関係数を前記時間相関係数又は前記空間相関係数としてそれぞれ算出し、
前記分布取得手段は、前記選択された各ペアについて算出された前記相関係数に基づいて、相関係数毎の発生頻度をカウントすることにより、前記頻度情報を取得する、
付記21に記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援装置。
(付記23)前記データ取得手段は、複数の所定部位の各々で測定された脳波の時系列データを取得し、
前記選択手段は、測定部位毎又は測定部位ペア毎に、前記所定数の単一時間区間のペアをそれぞれ選択し、
前記分布取得手段は、前記測定部位毎又は前記測定部位ペア毎にカウントされる相関係数毎の発生頻度を合算することにより、前記頻度情報を取得する、
付記22に記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援装置。
(付記24)前記選択手段は、
前記所定数の単一時間区間のペアをランダムに選択し、
前記選択された複数の単一時間区間の中から、その単一時間区間の時系列データに上限閾値を超えるか又は下限閾値を下回る振幅値が含まれる単一時間区間を排除し、
前記単一時間区間のペアが前記所定数となるまで、前記単一時間区間を選び直す、
付記22又は23に記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援装置。
(付記25)脳波の時系列データの抽出時点に関するユーザ入力を受け付ける受付手段、
を更に備え
前記データ取得手段は、前記受け付けられたユーザ入力に基づいて、前記一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データから、そのユーザ入力が示す抽出時点に対応する時間区間の時系列データを抽出する、
付記21から24のいずれか一つに記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援装置。
(付記26)前記生成手段は、母集団から予め取得された脳波の特徴量サンプルと前記被験者の脳波の特徴量とを比較することにより、前記被験者がけいれん重積型急性脳症か否かの判別情報又は前記被験者が後遺症を残すけいれん重積型急性脳症か否かの判別情報を生成する、
付記21から25のいずれか一つに記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援装置。
(付記27)けいれん重積後の所定時間内において被験者の頭部上の一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得し、
前記取得された時系列データにおける時間相関係数及び空間相関係数の少なくとも一方の相関係数を複数算出し、
前記算出された相関係数の頻度情報を前記被験者の脳波の特徴量として取得し、
前記取得された特徴量を用いて、前記被験者のけいれん重積型急性脳症に関する判別情報を生成する、
ことをコンピュータに実行させるけいれん重積型急性脳症の診断支援プログラム。
(付記28)前記取得された時系列データから、異なる時間又は異なる測定部位における単一時間区間のペアを所定数選択する、
ことを前記コンピュータに更に実行させ、
前記相関係数の算出は、前記選択された各ペアについて、各単一時間区間の時系列データの相関係数を前記時間相関係数又は前記空間相関係数としてそれぞれ算出し、
前記頻度情報の取得は、前記選択された各ペアについて算出された前記相関係数に基づいて、相関係数毎の発生頻度をカウントすることにより、前記頻度情報を取得する、
付記27に記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援プログラム。
(付記29)前記時系列データの取得は、複数の所定部位の各々で測定された脳波の時系列データを取得し、
前記単一時間区間のペアの選択は、測定部位毎又は測定部位ペア毎に、前記所定数の単一時間区間のペアをそれぞれ選択し、
前記頻度情報の取得は、前記測定部位毎又は前記測定部位ペア毎にカウントされる相関係数毎の発生頻度を合算することにより、前記頻度情報を取得する、
付記28に記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援プログラム。
(付記30)前記単一時間区間のペアの選択は、
前記所定数の単一時間区間のペアをランダムに選択し、
前記選択された複数の単一時間区間の中から、その単一時間区間の時系列データに上限閾値を超える又は下限閾値を下回る振幅値が含まれる単一時間区間を排除し、
前記単一時間区間のペアが前記所定数となるまで、前記単一時間区間を選び直す、
ことを含む付記28又は29に記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援プログラム。
(付記31)脳波の時系列データの抽出時点に関するユーザ入力を受け付ける、
ことを前記コンピュータに更に実行させ、
前記時系列データの取得は、前記受け付けられたユーザ入力に基づいて、前記一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データから、そのユーザ入力が示す抽出時点に対応する時間区間の時系列データを抽出する、
付記27から30のいずれか一つに記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援プログラム。
(付記32)母集団から予め測定された脳波の特徴量サンプルと前記被験者の脳波の特徴量とを比較する、
ことを前記コンピュータに更に実行させ、
前記判別情報の生成は、前記比較結果に基づいて、前記被験者がけいれん重積型急性脳症か否かの判別情報又は前記被験者が後遺症を残すけいれん重積型急性脳症か否かの判別情報を生成する、
付記27から31のいずれか一つに記載のけいれん重積型急性脳症の診断支援プログラム。
(付記33)けいれん重積後の所定時間内において被験者の頭部上の一以上の所定部位で測定された脳波の時系列データを取得し、
前記取得された時系列データにおける時間相関係数及び空間相関係数の少なくとも一方の相関係数を複数算出し、
前記算出された相関係数の頻度情報を前記被験者の脳波の特徴量として取得する、
ことを含むけいれん重積型急性脳症の診断支援方法。