(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組成物の総量を100重量部としたときに、(A)の含有量が10重量部以上52重量部以下であり、(B)の含有量が10重量部以上35重量部以下であり、(A)及び(B)の含有量の合計が35重量部以上62重量部以下であり、(C)の含有量が38重量部以上65重量部以下である、請求項2、3又は8に記載の溶剤組成物。
(C)が(c2)であり、組成物の総量を100重量部としたときに、(A)の含有量が10重量部以上55重量部以下であり、(B)の含有量が10重量部以上35重量部以下であり、(A)及び(B)の含有量の合計が30重量部以上72重量部以下であり、(c2)の含有量の合計が28重量部以上65重量部以下である、請求項2、8又は11に記載の溶剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(用語の定義)
「(A)(a1)塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハイドロフルオロオレフィン類、(a2)クロロフルオロオレフィン類、並びに(a3)ブロモフルオロオレフィン類からなる群より選択される1種以上の溶剤」を「(A)」又は「(A)成分」という場合がある。「(B)ノルマルオクタン、イソオクタン、イソノナン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンからなる群より選択される1種以上の溶剤」等の他の成分についても同様である。
数値範囲に関して「〜」は、その両端の値を含むことを意味する。即ち、「70〜95重量部」は、「70重量部以上95重量部以下」を意味する。また、「以下」は「同じ又は未満」を意味し、「以上」は「同じ又は超える」を意味する。
【0009】
[溶剤組成物]
溶剤組成物は、第一の溶剤組成物及び第二の溶剤組成物である。本明細書において、「第一の溶剤組成物」及び「第二の溶剤組成物」をまとめて「溶剤組成物」という場合がある。「洗浄性又は油溶解性に優れる」とは、少なくともシリコーン油に対する洗浄性又は油溶解性が優れることを意味し、好ましくはシリコーン油、鉱物油、フラックス等の様々な油に対する溶解性又は洗浄性に優れることを意味する。
本発明者らの知見によれば、フッ素系洗浄剤に組み合わせる炭化水素の種類によっては、安全性及び/又は乾燥性が劣る場合があるという問題が見いだされた。即ち、溶剤組成物は、様々な油に対する洗浄性又は溶解性に優れるのみならず、安全性及び/又は乾燥性に優れる場合がある。
【0010】
(第一の溶剤組成物)
第一の溶剤組成物は、(A)(a1)塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハイドロフルオロオレフィン類、(a2)クロロフルオロオレフィン類、並びに(a3)ブロモフルオロオレフィン類からなる群より選択される1種以上の溶剤と、(B)ノルマルオクタン、イソオクタン、イソノナン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンからなる群より選択される1種以上の溶剤とを含み、前記組成物の総量を100重量部としたときに、(A)成分の含有量が5重量部超95重量部未満であり、(B)成分の含有量が5重量部超95重量部未満であり、そして(A)成分及び(B)成分の含有量の合計が90重量部以上100重量部以下である。
【0011】
<(A)(a1)塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハイドロフルオロオレフィン類、(a2)クロロフルオロオレフィン類、並びに(a3)ブロモフルオロオレフィン類からなる群より選択される1種以上の溶剤>
(A)成分は、溶剤組成物の主剤である。(a1)塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハイドロフルオロオレフィン(HFO)類は、必須として炭素原子、フッ素原子及び水素原子を含み、任意として塩素原子及び/又は臭素原子のみを含む、オレフィン化合物である。ハイドロフルオロオレフィン類としては、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(Z))、(E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン((E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、HCFO−1233yd(E))、(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン((Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、HCFO−1233yd(Z))、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン等が挙げられる。ハイドロフルオロオレフィンは、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(Z))が好ましい。ハイドロフルオロオレフィン類の市販品として、CELEFIN(登録商標)1233Z(HCFO−1233zd(Z))(セントラル硝子株式会社製)、AMOLEA(登録商標) AS−300(AGC株式会社製)((E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd(E))、(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd(Z))及び安定剤の混合物))等が挙げられる。
【0012】
(a2)クロロフルオロオレフィン類は、炭素原子、フッ素原子及び塩素原子のみからなる、オレフィン化合物である。クロロフルオロオレフィン類としては、例えば、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)が挙げられる。
【0013】
(a3)ブロモフルオロオレフィン類は、炭素原子、フッ素原子及び臭素原子のみからなる、オレフィン化合物である。ブロモフルオロオレフィン類としては、例えば、2−ブロモ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペンが挙げられる。
【0014】
(A)成分は、(a1)塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハイドロフルオロオレフィン類であることが好ましい。
(A)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。例えば、(A)成分は、1種又は2種類以上の(a1)塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハイドロフルオロオレフィン類と1種又は2種類以上の(a2)クロロフルオロオレフィン類との組合せであってもよい。
(A)成分には複数の異性体((E)及び(Z))が存在することがあるが、特に明記していない場合には、いずれか一方の異性体でも両方の異性体の混合物であってもよい。(A)成分が、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンを含む場合、当該1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンは、例えば、(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンを80重量%以上含んでいてもよい。即ち、当該1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンは、(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンを80重量%以上100重量%未満及び(E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロペンを0重量%超20重量%以下とからなっていてもよい。
【0015】
<(B)ノルマルオクタン、イソオクタン、イソノナン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンからなる群より選択される1種以上の溶剤>
(B)成分は、溶剤組成物の主剤である。(B)成分は、組成物に幅広い油への溶解性を付与する成分である。(B)成分が6以下の炭化水素のみからなる場合、引火点が低くなるため、得られる組成物の安全性が低い。また、(B)成分が10以上の炭化水素のみからなる場合、乾燥性が劣る傾向がある。(B)成分の沸点は、安全性がより高まり、また、乾燥性に優れる観点から、100℃超150℃以下であることが好ましい。ここで、(B)成分が混合物である場合、(B)成分の沸点は、(B)成分の混合物の沸点を意味する。また、(B)成分は、安全性がより高まり、また、乾燥性に優れる観点から、100℃超150℃以下の沸点を有する成分のみからなることが特に好ましい。
(B)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0016】
<(D)更なる成分>
第一の溶剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分及び(B)成分以外の(D)更なる成分を含むことができる。このような成分として、(d1)有機化合物及び(d2)その他の成分が挙げられる。
【0017】
<(d1)有機化合物>
(d1)有機化合物としては、ハロゲン系溶剤及びハロゲンを含まない有機溶剤が挙げられる。(d1)成分は、それぞれ単独で用いることもでき、また複数の混合物として用いることもできる。
【0018】
<<ハロゲン系溶剤>>
ハロゲン系溶剤は、溶剤組成物に難燃性を付与する成分であり、溶剤組成物の凝固点を低下させる成分である。ハロゲン系溶剤としては、後述する(c1)ハイドロフルオロカーボン類、(c2)ハイドロフルオロエーテル類、並びに(c1)成分及び(c2)成分以外のハロゲン系溶剤が挙げられる。(c1)成分及び(c2)成分以外のハロゲン系溶剤としては、例えば、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロブロモカーボン、及びハロゲン化アルキンからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。溶剤組成物の安全性がより高まる観点から、ハロゲン系溶剤は、労働安全衛生法の特定化学物質障害予防規則(特化則)及び有機溶剤中毒予防規則に該当しない成分であることが好ましい。
【0019】
<<<ハイドロクロロフルオロカーボン>>>
ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、炭素原子、塩素原子、フッ素原子及び水素原子のみからなる化合物であり、炭素−炭素二重結合等の不飽和結合を有さない化合物である。ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、例えば、ジクロロペンタフルオロプロパン(1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン及び1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等)、1−クロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244ca)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンもしくは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンが挙げられる。HCFCの市販品として、アサヒクリンAK225(AGC株式会社製)が挙げられる。
【0020】
<<<ハイドロクロロオレフィン>>>
ハイドロクロロオレフィンは、炭素原子、塩素原子及び水素原子のみからなる、オレフィン化合物である。ハイドロクロロオレフィンとしては、trans−1,2−ジクロロエチレン等が挙げられる。
【0021】
<<<ハイドロブロモカーボン>>>
ハイドロブロモカーボンは、炭素原子、臭素原子及び水素原子のみからなる化合物である。ハイドロブロモカーボンとしては、ノルマルプロピルブロマイド(1−ブロモプロパン)等が挙げられる。
【0022】
<<<ハロゲン化アルキン>>>
ハロゲン化アルキンは、アルキンの水素原子の少なくとも一部がハロゲンで置換された化合物であり、1−クロロ−3,3−ジフルオロ−1−プロピン等が挙げられる。
【0023】
<<ハロゲンを含まない有機溶剤>>
ハロゲンを含まない有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、窒素含有溶剤、エポキシド系溶剤及び炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0024】
<<<アルコール系溶剤>>>
アルコール系溶剤としては、後述する(c3)1−メトキシ−2−プロパノールと、(c3)以外のアルコール系溶剤(即ち、アルコール系溶剤(但し、(c3)1−メトキシ−2−プロパノールを除く))が挙げられる。(c3)成分以外のアルコール系溶剤としては、例えば、モノアルコール系溶剤が挙げられ、エタノール、メタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、2−プロピン−1−オール等が好ましい。
【0025】
<<<ケトン系溶剤>>>
ケトン系溶剤としては、例えば、カルボニル基を一つ以上有するケトン化合物が挙げられ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0026】
<<<エステル系溶剤>>>
エステル系溶剤としては、例えば、モノエステル化合物、カルボニル基を二つ有するエステル化合物及び環状エステルが挙げられ、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、大豆脂肪酸メチルエステル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、二塩基酸エステル、アセト酢酸エチル、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0027】
<<<エーテル系溶剤>>>
エーテル系溶剤としては、例えば、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、4−メチルテトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン(モノグリム)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブが挙げられる。なお、エーテル系溶剤は、ヒドロキシ基を含まないものとする。
【0028】
<<<窒素含有溶剤>>>
窒素含有溶剤としては、ニトロアルカン系溶剤、アミン系溶剤、N−メチルピロール等が好ましい。ニトロアルカン系溶剤としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン等が挙げられる。アミン系溶剤としては、n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。
【0029】
<<<エポキシド系溶剤>>>
エポキシド系溶剤としては、1,2−ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロペンテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル等が好ましい。
【0030】
<<<炭化水素系溶剤>>>
炭化水素系溶剤は、炭素及び水素のみからなり、直鎖又は分岐状であってもよく、環状又は非環状であってもよく、炭素−炭素二重結合を有していてもよい、(B)成分以外の炭化水素系溶剤である。(B)成分以外の炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソヘプタン、リモネン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、3−エチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−2−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−2−ペンテン等が挙げられる。炭化水素系溶剤は、合成物であってもよい。
【0031】
<<(d2)その他の成分>>
(d2)その他の成分は、(d1)成分以外の成分の溶剤組成物の分野で慣用されている成分であれば特に制限されない。(d2)その他の成分としては、水、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、消泡剤、界面活性剤及びキレート剤等からなる群より選択される1種以上が挙げられる。(d2)成分は、それぞれ単独で用いることもでき、また複数の混合物として用いることもできる。
【0032】
紫外線吸収剤及び酸化防止剤は、溶剤組成物の長期保存等における安定性を向上させる成分である。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系紫外線吸収剤が挙げられる。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系等酸化防止剤が挙げられる。
【0033】
フェノール系酸化防止剤は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタドデシル−3−[3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート]、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等が挙げられる。
【0034】
アミン系酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、N,N−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン誘導体、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌレート等が挙げられる。硫黄系酸化防止剤は、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3−ジオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド等が挙げられる。リン系酸化防止剤は、トリス−ノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(イソデシル)フォスファイト等が挙げられる。
【0035】
キレート剤は、アミノカルボン酸系のキレート剤が挙げられ、ヒドロキシエチルアミノ酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸やそれらの塩等が好ましい。
【0036】
防錆剤は、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンが挙げられる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤が挙げられ、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤等が好ましい。
【0037】
上記した成分以外の更なる成分は、溶剤組成物の分野で慣用されている成分であれば特に限定されず、適宜用いることができる。
(D)成分は、それぞれ、単独又は複数の組合せであってもよい。例えば、(D)成分は、1種以上の(d1)成分と1種以上の(d2)成分との組合せであってもよい。
【0038】
<第一の溶剤組成物の好ましい態様>
第一の溶剤組成物において、(D)成分は、アルコール系溶剤(但し、(c3)1−メトキシ−2−プロパノールを除く)であることが特に好ましい。(D)成分がアルコール系溶剤(但し、(c3)1−メトキシ−2−プロパノールを除く)である場合、フラックス等の油汚れが付着した基材を洗浄する際に、基材(特に、ポリカーボネート)へのダメージをより低減させることができる。
【0039】
第一の溶剤組成物において、洗浄性又は溶解性の観点から、(A)成分がシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、(E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン及び(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンからなる群より選択される1種以上の溶剤であることが好ましい。
【0040】
第一の溶剤組成物において、洗浄性又は溶解性の観点から、(A)成分がシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり、(B)成分がメチルシクロヘキサンであることが好ましい。
【0041】
<第一の溶剤組成物の組成>
第一の溶剤組成物の総量を100重量部としたときの各成分の含有量は以下のとおりである。
(A)成分の含有量は、5重量部超95重量部未満であり、35重量部以上88重量部以下であることが好ましく、45重量部以上85重量部以下であることが特に好ましい。
(B)成分の含有量は、5重量部超95重量部未満であり、7重量部以上60重量部以下であることが好ましく、10重量部以上50重量部以下であることが特に好ましい。また、後述する観点に加えて安全性が優れる観点から、(B)成分の含有量は、5重量部超50重量部以下であってもよい。
(A)成分及び(B)成分の含有量の合計は、90重量部以上100重量部以下であり、95重量部以上100重量部以下であることが好ましく、97重量部以上100重量部以下であることがより好ましく、98重量部以上100重量部以下であることが特に好ましい。
このような範囲であると、油に対する溶解性がより優れる。
【0042】
第一の溶剤組成物がアルコール系溶剤(但し、(c3)1−メトキシ−2−プロパノールを除く)を含む場合、第一の溶剤組成物の総量を100重量部としたときのアルコール系溶剤(但し、(c3)1−メトキシ−2−プロパノールを除く)の含有量は、プラスチック(好ましくは、ポリカーボネート及びABS)へのダメージが低減される観点から、10重量部以下であることがより好ましく、0重量部超10重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以上8重量部以下であることが特に好ましい。
【0043】
第一の溶剤組成物が水を含む場合、第一の溶剤組成物の総量を100重量部としたときの水の含有量は、油に対する溶解性がより優れる観点から、0.1重量部以下であることが好ましく、0重量部超0.1重量部以下であることが特に好ましい。
【0044】
(第二の溶剤組成物)
第二の溶剤組成物は、(A)(a1)塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハイドロフルオロオレフィン類、(a2)クロロフルオロオレフィン類、並びに(a3)ブロモフルオロオレフィン類からなる群より選択される1種以上の溶剤と、(B)ノルマルオクタン、イソオクタン、イソノナン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンからなる群より選択される1種以上の溶剤と、(C)(c1)ハイドロフルオロカーボン類、(c2)ハイドロフルオロエーテル類及び(c3)1−メトキシ−2−プロパノールからなる群より選択される1種以上の溶剤とを含み、前記組成物の総量を100重量部としたときに、(A)成分及び(B)成分の含有量の合計が10重量部超100重量部未満であり、そして(A)成分、(B)成分及び(C)成分の含有量の合計が90重量部以上100重量部以下である。
【0045】
第二の溶剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の(D’)第二の更なる成分を含むことができる。ここで、(D’)成分は、(C)成分以外の(D)成分である。また、(A)成分、(B)成分及び(D)成分は、好ましいものを含め、第一の溶剤組成物において前記したとおりである。
【0046】
<(C)(c1)ハイドロフルオロカーボン類、(c2)ハイドロフルオロエーテル類及び(c3)1−メトキシ−2−プロパノールからなる群より選択される1種以上の溶剤>
(C)成分は、(A)成分及び(B)成分と同様に、溶剤組成物の主剤となり得る成分である。(C)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0047】
<<(c1)ハイドロフルオロカーボン類>>
(c1)成分は、溶剤組成物の引火性及び基材へのダメージを低減させる成分である。(c1)ハイドロフルオロカーボン(HFC)類は、炭素原子、フッ素原子及び水素原子からなる化合物であり、炭素−炭素二重結合を有さない化合物である。ハイドロフルオロカーボンとしては、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(HFC−c447ef)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタンが挙げられる。(c1)成分の市販品として、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンの市販品としてはソルカン(登録商標)365mfc(日本ソルベイ株式会社製)等が、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンについてはゼオローラ(登録商標)H(日本ゼオン株式会社製)が挙げられる。(c1)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0048】
<<(c2)ハイドロフルオロエーテル>>
(c2)成分は、溶剤組成物の引火性及び基材へのダメージを低減させる成分である。(c2)ハイドロフルオロエーテル(HFE)類は、炭素原子、フッ素原子、水素原子及びエーテル結合(−O−)からなる化合物である。ハイドロフルオロエーテルとしては、例えば、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(別名1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、HFE−347pc−f)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン、1,1,1,2,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−メトキシ−3−(トリフルオロメチル)ブタン、メチルパーフルオロプロピルエーテル等が挙げられる。(c2)成分は、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル及び1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテルからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。(c2)成分の市販品として、3М(商標)Novec(商標)7100高機能性液体、3М(商標)Novec(商標)7200高機能性液体、3М(商標)Novec(商標)7300高機能性液体、3М(商標)Novec(商標)7000高機能性液体(スリーエムジャパン株式会社製)、アサヒクリンAE3000(AGC株式会社製)が挙げられる。(c2)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0049】
<<(c3)1−メトキシ−2−プロパノール>>
(c3)成分は、組成物に水溶性油の溶解力を付与する成分である。溶剤組成物が(c3)成分を含むことで、油の溶解力をさらに向上させることができる。
【0050】
<第二の溶剤組成物の好ましい態様>
第二の溶剤組成物において、(C)成分は(c1)成分及び(c2)成分からなる群より選択される1種以上の溶剤であること、又は、(C)成分は(c3)成分であることが好ましい。(C)成分が(c1)成分及び(c2)成分からなるからなる群より選択される1種以上の溶剤である場合、組成物の引火性及び基材へのダメージをより低減させることができ、(C)成分が(c3)成分である場合、水溶性油を含む様々な油の溶解力をさらに向上させることができる。なお、「(c1)成分及び(c2)成分からなる群より選択される1種以上の溶剤である」とは、(c1)成分、(c2)成分、及び(c1)成分と(c2)成分との組合せを意味するものであり、(c1)成分と1種以上の(c2)成分との組合せのみを意味するものではない。
【0051】
よって、(C)成分が(c1)成分及び(c2)成分からなる群より選択される1種以上の溶剤である場合、後述する(c1)成分及び(c2)成分の含有量であることが特に好ましい。また、(C)成分が(c3)成分である場合、後述する(c3)成分の含有量であることも特に好ましい。
【0052】
第二の溶剤組成物において、(D’)成分はアルコール系溶剤(但し、(c3)1−メトキシ−2−プロパノールを除く)であることが好ましい。(D’)がアルコール系溶剤(但し、(c3)1−メトキシ−2−プロパノールを除く)である場合、フラックス等の油汚れが付着した基材を洗浄する際に、基材(特に、ポリカーボネート)へのダメージをより低減させることができる。
【0053】
第二の溶剤組成物において、プラスチックへのダメージが許容し得る程度である観点及び/又は安全性の観点から、(C)が1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル及び1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテルからなる群より選択される1種以上の溶剤であることが好ましい。なお、「プラスチックへのダメージ」とは、好ましくは、ポリカーボネート及びABSへのダメージである。また、「プラスチックへのダメージが許容し得る程度である観点」とは、好ましくは、プラスチックへのダメージが低減される観点である。
【0054】
第二の溶剤組成物において、プラスチックへのダメージが許容し得る程度である観点及び/又は安全性の観点と、洗浄性又は溶解性との観点から、(A)がシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり、(B)がイソオクタン及びイソノナンからなる群より選択される1種以上の溶剤であり、(C)が1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンであることが好ましい。
【0055】
第二の溶剤組成物において、プラスチックへのダメージが許容し得る程度である観点及び/又は安全性の観点と、洗浄性又は溶解性との観点から、(A)がシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり、(B)がイソオクタン及びイソノナンからなる群より選択される1種以上の溶剤であり、(C)がメチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル及び1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテルからなる群より選択される1種以上の溶剤であることが好ましい。
【0056】
第二の溶剤組成物において、洗浄性又は溶解性の観点から、(A)がシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、(E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン及び(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンからなる群より選択される1種以上の溶剤であることが好ましい。
【0057】
第二の溶剤組成物において、洗浄性又は溶解性の観点から、(A)がシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり、(B)がメチルシクロヘキサンであることが好ましい。
【0058】
<第二の溶剤組成物の組成>
第二の溶剤組成物の総量を100重量部としたとき各成分の含有量は以下のとおりである。
(A)成分及び(B)成分の含有量の合計は、10重量部超100重量部未満であり、11重量部以上90重量部以下であることが好ましい。
(B)成分の含有量は、後述する観点に加えて安全性が優れる観点から、5重量部超50重量部以下であることが好ましい。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の含有量の合計は、90重量部以上100重量部以下であり、95重量部以上100重量部以下であることが好ましく、98重量部以上100重量部以下であることが特に好ましい。
(C)成分の含有量は、0重量部超90重量部未満であることが好ましい。
(A)成分及び(B)成分の含有量の合計100重量部に対する、(A)成分の含有量は、40重量部以上94重量部以下であることが好ましく、50重量部以上90重量部以下であることがより好ましく、50重量部以上90重量部未満であることが特に好ましい。
このような範囲であると、油に対する溶解性がより優れる。
【0059】
また、第二の溶剤組成物の総量を100重量部としたときの(c1)成分及び(c2)成分の含有量の合計は、プラスチックへのダメージが許容し得る程度である観点から、38重量部以上90重量部未満であることがより好ましく、40重量部以上80重量部以下であることが特に好ましい。よって、(C)成分が(c1)成分及び(c2)成分からなる群より選択される1種以上の溶剤であり、組成物の総量を100重量部としたときに、(A)成分の含有量が10重量部以上52重量部以下であり、(B)成分が10重量部以上35重量部以下であり、(A)成分及び(B)成分の含有量の合計が35重量部以上62重量部以下であり、(c1)成分及び(c2)成分の含有量の合計が38重量部以上65重量部以下であることが特に好ましい。
【0060】
さらに、第二の溶剤組成物の総量を100重量部としたときの(c1)成分及び(c2)成分の含有量の合計は、カプセル剤へのダメージが低減される観点から、5重量部以上38重量部以下であることがより好ましく、5重量部超38重量部未満であることがさらに好ましく、6重量部以上20重量部以下であることが特に好ましい。また、第二の溶剤組成物の総量を100重量部としたときの(c1)成分及び(c2)成分の含有量の合計は、5重量部以上30重量部以下であってもよい。
【0061】
第二の溶剤組成物において、(C)成分が(c2)成分である場合、第二の溶剤組成物の総量を100重量部としたときの、(c2)成分の含有量が28重量部以上90重量部未満であることがより好ましい。
【0062】
第二の溶剤組成物において、(C)成分が(c2)成分である場合、組成物の総量を100重量部としたときに、(A)成分の含有量が10重量部以上55重量部以下であり、(B)成分の含有量が10重量部以上35重量部以下であり、(A)成分及び(B)成分の含有量の合計が30重量部以上72重量部以下であり、(c2)成分の含有量の合計が28重量部以上65重量部以下であることが特に好ましい。
【0063】
また、第二の溶剤組成物の総量を100重量部としたときの(c3)成分の含有量は、水溶性油への溶解力が優れる観点から、15重量部以上90重量部未満であることがより好ましく、20重量部以上40重量部以下であることが特に好ましい。
【0064】
また、第二の溶剤組成物がアルコール系溶剤(但し、(c3)1−メトキシ−2−プロパノールを除く)を含む場合、第二の溶剤組成物の総量を100重量部としたときのアルコールの含有量は、プラスチックへのダメージ性が許容し得る程度である観点から、10重量部以下であることがより好ましく、0重量部超10重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以上8重量部以下であることが特に好ましい。
第二の溶剤組成物が水を含む場合、第二の溶剤組成物の総量を100重量部としたときの水の含有量は、油に対する溶解性がより優れる観点から、0.1重量部以下であることが好ましく、0重量部超0.1重量部以下であることが特に好ましい。
【0065】
<第一及び第二の溶剤組成物の更なる態様>
第一及び第二の溶剤組成物は、以下の溶剤組成物を含まないことが好ましい。
(A)(E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン及び(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンからなる群より選択される1種以上の溶剤と、(B)エチルシクロヘキサン及びイソノナンからなる群より選択される1種以上の溶剤とを含む溶剤組成物であって、前記組成物の総量を100重量部としたときに、(A)及び(B)の含有量の合計が70重量部以上100重量部以下である、溶剤組成物(以下、「第三の溶剤組成物」ともいう。)。
また、第一及び第二の溶剤組成物は、さらに、「ハイドロフルオロエーテルを含む第三の溶剤組成物」を含まないことが好ましい。
【0066】
[溶剤組成物の製造方法]
溶剤組成物の製造方法は任意である。溶剤組成物に含まれる原料成分を、公知の方法で、撹拌、混合、溶解、分散等を適宜選択して行なうことによって製造することができる。
【0067】
[溶剤組成物の用途]
溶剤組成物は、油溶解剤(即ち、油希釈用溶剤組成物)、油コーティング剤、油性汚れ及び/又は油が付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄剤等として用いることができる。
【0068】
(油溶解剤)
油としては、鉱物油、植物油、動物油、重質油、樹脂(レジン)、ワックス、シリコーンオイル及びフッ素オイル等が挙げられる。これらの油は、例えば切削油、プレス油、引抜き油、熱処理油、防錆油、潤滑油、金属加工油、グリース、フラックス、アスファルト、水溶性油として用いられている場合がある。
【0069】
鉱物油としては、特に制限はなく、市販品としてはプーリーSFオイル(出光興産株式会社製)が挙げられる。植物油としては、オリーブ油、アマニ油、キリ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ヒマシ油、綿実油、ヤシ油、コーン油及び脱水ヒマシ油等が挙げられる。植物油を構成する脂肪酸は、C12〜C18の飽和又は不飽和脂肪酸であり、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエレオステアリン酸等が挙げられる。動物油としては、魚油、鯨油、豚脂、牛脂等が挙げられる。重質油としては、アスファルテン等が挙げられる。樹脂としては、ピッチ、松脂等が挙げられる。ワックスとしては、植物系、動物系、石油系、合成炭化水素系が挙げられる。
【0070】
シリコーンオイルとは、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであるシリコーンオイルであり、主にジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイルの側鎖又は末端に、カルボキシル基、アミノ基、ポリエーテル基又はエポキシ基などの他の有機基を導入したものであってもよい。このようなシリコーンオイルの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリオキシエチレン−メチルポリシロキサンなどが挙げられる。このようなシリコーンオイルとしては、市販品として、信越化学株式会社製KF−96L−2CS、KF−6012等が挙げられる。
【0071】
フッ素オイルとは、ポリアルキルエーテル化合物における水素原子の一部又は全部をフッ素で置換した物質であり、塩素及び臭素等のハロゲン、リン、硫黄、及び窒素などの更なる原子を含んでいてもよい。フッ素オイルの市販品としては、例えばソルベイソレクシス株式会社製のフォンブリン Y−LVAC、Y−HVAC、Y04、及びYR;NOKクリューバー株式会社製のバリエルタ(BARRIERTA)J100フルード、バリエルタJ25フルード、バリエルタJ400フルード、バリエルタJ25V、バリエルタSJ07、バリエルタSJ15、及びバリエルタSJ30;デュポン株式会社製のクライトックス1506、クライトックス1514、及びクライトックス1525;ダイキン工業株式会社製のデムナムS−20等が挙げられる。
【0072】
水溶性油は、エマルジョン型、ソリュブル型、ソリューション型に大別される。エマルジョン型は鉱油や脂肪油などの水に不溶な油と界面活性剤とを主成分とし、水で希釈した場合に乳白色のエマルジョンを形成する。ソリュブル型も水に不溶な油と界面活性剤を含有するが、水で希釈した場合に透明〜半透明になる。ソリューション型は水溶性の無機塩等を主成分とし、水で希釈した場合には透明となる。また、シリコーンオイルと界面活性剤と水とを混合したエマルジョン型シリコーンオイルもある。
【0073】
フラックスは、ロジン系のフラックスが挙げられる。ロジン系フラックスは、ロジン(アビエチン酸を主成分とする樹脂酸)及び変性ロジン等のロジン類を主成分とする非活性ロジンフラックス;前記ロジン類と、アミン化合物の無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩)及び有機酸からなる群より選択される1種以上の活性化剤とを主成分とする活性ロジンフラックスが挙げられる。アミン化合物の無機酸塩は、トリエタノールアミン塩酸塩、トリエチレンテトラアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、塩酸アニリン等が挙げられる。有機酸は、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、マレイン酸等のカルボン酸(ジカルボン酸を含む。);オキシ酸(ヒドロキシカルボン酸)等が挙げられる。
【0074】
また、フラックスは、ハンダ用金属とロジンフラックスが一体となったクリームハンダの形態で提供される場合がある。クリームハンダは、ハンダ合金粉末、樹脂、活性剤、酸化防止剤、チクソ剤、及び溶剤を含む組成物であり、いわゆる金属粉末とフラックス成分からなる。
【0075】
(油コーティング剤)
油コーティング剤は、第一及び第二の溶剤組成物に、油が溶解した組成物である。油コーティング剤を基材に適用(例えば、塗布)し、油コーティング剤の溶剤部分を除去する(例えば、揮発する)ことにより、油のコーティング膜を形成できる。油コーティング剤における、油の含有量は、油の飽和溶解量以下であることが好ましい。このような油の含有量であれば、未溶解の油が存在せず、均質なコーティングが得られる。
【0076】
(洗浄剤)
第一及び第二の溶剤組成物は、油の溶解性に優れることから、油性汚れ及び/又は油(例えばフラックス等)が付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄剤としても使用できる。
【0077】
油性汚れの原料となる油としては、前記した油が挙げられる。油性汚れとしては、これらの油の極性に応じて、非極性の油性汚れ、極性成分による油性汚れ、及び極性の異なる複数の成分による油性汚れが挙げられる。
【0078】
また、フラックスの汚れは、フラックス成分であるロジン、アミン化合物の無機酸塩、有機酸、及び前記成分が高温でのリフローにより一部変質又は炭化した成分を含む。さらに、クリームハンダの汚れは、前記フラックス成分の汚れ及び金属粉末を含む。
【0079】
(洗浄用エアゾール組成物)
洗浄用エアゾール組成物は、溶剤組成物と噴射ガスとを含有する。エアゾール組成物は、噴射直後に溶剤組成物が揮発することなく溶液としての状態が保持される。そして、噴射後のエアゾール組成物は、微細な液滴となって広範囲に拡がらずに、霧状の溶剤組成物を狭い範囲へと集中して送達できるようになる。すなわち、遠距離から洗浄すべき箇所を狙って、溶剤組成物を適用することができる。そして、溶剤組成物が被洗浄物の基材に接触することを抑えて、被洗浄物の金属部分を効率的に洗浄することができる。
【0080】
噴射ガスとしては、圧縮空気、N
2、アルゴン、CO
2、LPGからなる群より選択される一種以上が挙げられる。噴射ガスの形態としては、特に限定されず、液化ガス、圧縮ガスの形態が挙げられる。溶剤組成物が速やかに揮発してしまうことが抑えられる観点から、圧縮空気、N
2、アルゴン及びCO
2からなる群より選択される一種以上であることが好ましい。
【0081】
洗浄用エアゾール組成物の製造方法としては特に制限はなく、例えば、溶剤組成物及び液状の噴射ガスを混合したエアゾール組成物を耐圧缶に充填してエアゾール化させる方法、又は、溶剤組成物を容器(例えば、ペール缶)に加えた後に、エアーコンプレッサー等を用いて圧縮空気を容器に充填して、溶剤組成物をエアゾール化させる方法が挙げられる。この他に、洗浄用エアゾール組成物については、特開2018−105723号公報の記載を参照することができる。
【0082】
(洗浄方法)
溶剤組成物を用いた被洗浄物の洗浄方法は、溶剤組成物を被洗浄物(即ち、油性汚れ及び/又は油が付着した基材)と接触させることを含む。洗浄方法において、組成物を被洗浄物に接触させることにより、基材に付着した油性汚れ及び/又は油は、基材から除去される。なお、油性汚れが塵、埃等の固形の汚れを含む場合、この固形の汚れは、油性汚れの除去と同時に除去され得る。
【0083】
基材は、特に制限されないが、金属、繊維、ガラス、陶器、プラスチック、カプセル剤等が挙げられる。金属としては、鉄、アルミニウム、銅、ステンレスが挙げられる。プラスチックとしては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)等が挙げられる。カプセル剤の原料としては、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。カプセル剤は、可塑剤としてのグリセリン、着色剤としての二酸化チタン等を含んでいてもよい。
【0084】
溶剤組成物と、被洗浄物とを接触させるための方法としては、特に制限はなく、例えば、手拭き洗浄、浸漬洗浄(液相洗浄)、スプレー洗浄(洗浄用エアゾール組成物による噴射を含む)、シャワー洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄(気相洗浄)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、手拭き洗浄、浸漬洗浄、蒸気洗浄、スプレー洗浄(洗浄用エアゾール組成物の噴射によるスプレー洗浄を含む)、及び浸漬洗浄と蒸気洗浄との組み合わせが好ましい。手拭き洗浄は、通常、組成物を染み込ませた紙、布等を、油性汚れ及び/又は油が付着した領域に接触させながら手でこすることにより、又は組成物を染み込ませた紙、布等を、油性汚れ及び/又は油が付着した領域に接触させながら板や棒を介して手でこすることにより行う。洗浄用エアゾール組成物の噴射によるスプレー洗浄は、洗浄用エアゾール組成物を、油性汚れ及び/又は油が付着した領域にエアゾールとして吹き付けることにより行う。
【0085】
溶剤組成物を用いた被洗浄物の洗浄方法が浸漬洗浄と蒸気洗浄との組み合わせである場合は、具体的には、工程(1A):溶剤組成物に被洗浄物を浸漬する工程と、工程(1B):溶剤組成物から(A)成分を含む蒸気を発生させ、発生させた(A)成分を含む蒸気に被洗浄物を接触させる工程とを含む、洗浄方法が挙げられる。
【0086】
工程(1A)は、溶剤組成物に被洗浄物を浸漬する工程である。工程(1A)において、被洗浄物は、溶剤組成物と接触する。洗浄効果を高めるために、浸漬と同時に、加熱、攪拌、揺動、超音波振動、又はエアバブリング等による手段を組み合わせることが好ましい。浸漬洗浄の時間は、被洗浄物に付着した油性汚れ及び/又は油を洗浄除去できる時間であれば特に制限されない。工程(1A)により、被洗浄物から油性汚れ及び/又は油が除去される。工程(1A)は複数の洗浄槽から構成されてもよい。
【0087】
工程(1B)は、溶剤組成物から(A)成分を含む蒸気を発生させ、発生させた(A)成分を含む蒸気に被洗浄物を接触させる工程である。溶剤組成物が共沸組成物であれば、前記「(A)を含む蒸気」は、溶剤組成物の蒸気である。なお、溶剤組成物が共沸組成物でなければ、少なくとも(A)を含む蒸気が発生するように、溶剤組成物が加熱される。工程(1B)では、被洗浄物を溶剤組成物から発生する蒸気と接触させることにより、蒸気洗浄が行われる。蒸気洗浄の時間は、特に限定されないが1秒以上60分以下とすることができる。これにより、被洗浄物に付着した溶剤組成物及び汚れ成分と、蒸気相の成分とが交換される。また、工程(1B)において、被洗浄物と(A)とが接触することから、蒸気洗浄する工程によってリンス(蒸気リンス)が行われる。
【0088】
このような浸漬洗浄と蒸気洗浄との組み合わせによる被洗浄物の洗浄方法に用いられる装置としては、例えば、特開2015−217319号公報に開示された、洗浄剤を収納し被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、洗浄剤の蒸気を発生させる蒸気槽とを有する洗浄装置が挙げられる。ここで、洗浄槽に用いられる洗浄剤と蒸気槽に用いられる洗浄剤とは、同一であっても異なっていてもよい。また、洗浄槽から洗浄剤の蒸気を発生させてもよい。この場合は洗浄槽が蒸気槽を兼ねることになる。また、この場合は、洗浄槽に収容される溶剤組成物は、少なくとも(A)成分が沸騰状態となるように加熱される。
【0089】
溶剤組成物及び被洗浄物の接触時間に相当する洗浄時間は、基材から油性汚れ及び/又は油を除去できる時間であれば特に制限されない。例えば、洗浄時間は、10秒以上2時間以下であってもよい。
【0090】
洗浄剤は、前記した工程(1A)と工程(1B)とを含む洗浄方法に用いるための洗浄剤であることが好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、部は、重量部である。
【0092】
(使用製品)
実施例で使用した成分は以下のとおりである。実施例及び比較例の組成物は、表の組成(重量部)にしたがって、以下の溶剤をそのまま用いるか、各溶剤を混合することにより調製した。
【0093】
1.(A)(a1)塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハイドロフルオロオレフィン類、(a2)クロロフルオロオレフィン類、並びに(a3)ブロモフルオロオレフィン類からなる群より選択される1種以上の溶剤
(a−1)シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(セントラル硝子株式会社製、CELEFIN(登録商標)1233Z、HCFO−1233zd(Z))
(a−2)AMOLEA(登録商標)AS−300((E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン及び(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン99重量%超及び安定剤1重量%未満の混合物)(AGC株式会社製)
【0094】
2.(B)ノルマルオクタン、イソオクタン、イソノナン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンからなる群より選択される1種以上の溶剤
(b−1)イソオクタン(三協化学株式会社製、イソオクタン)
(b−2)メチルシクロヘキサン(三協化学株式会社製、メチルシクロヘキサン)
(b−3)エチルシクロヘキサン(三協化学株式会社製、エチルシクロヘキサン)
(b−4)イソノナン(KHネオケム株式会社製、キョーワゾールC−900、イソノナン95重量%以上99.5重量%以下、ノルマルノナン0.5重量%以下))
(b−5)ノルマルオクタン(東京化成工業株式会社製、n−Octane)
(b−6)ダフニーアルファクリーナーL(出光興産株式会社製、イソオクタン80重量%以上90重量%未満、イソノナン1重量%以上10重量%未満、イソヘプタン1重量%以上10重量%未満、ヘキサン1重量%以上10重量%未満、合成炭化水素1重量%未満)
【0095】
3.(C)(c1)ハイドロフルオロカーボン類、(c2)ハイドロフルオロエーテル類及び(c3)1−メトキシ−2−プロパノールからなる群より選択される1種以上の溶剤
(c1−1)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(日本ソルベイ株式会社製、SOLKANE(登録商標)365mfc)
(c2−1)1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(AGC株式会社製、アサヒクリンAE−3000)
(c2−2)メチルノナフルオロブチルエーテル20重量部以上80重量部以下とメチルノナフルオロイソブチルエーテル20重量部以上80重量部以下の混合物(スリーエムジャパン株式会社製、3М(商標)Novec(商標)7100高機能性液体)
(c3−1)1−メトキシ−2−プロパノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0096】
4.(C)以外の(D)更なる成分((D’)第二の更なる成分)
(d−1)エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(d−2)イソプロピルアルコール(東京化成工業株式会社製)
(d−3)アセトン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(d−4)γ−ブチロラクトン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(d−5)イソヘキサン(三協化学株式会社製)
(d−6)シクロヘキサン(東京化成工業株式会社製)
(d−7)シクロペンタン(東京化成工業株式会社製)
(d−8)ペンタン(東京化成工業株式会社製)
(d−9)デカン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(d−10)ソルミックスAP−1(日本アルコール販売株式会社製、エタノール85.5重量%、2−プロパノール13.4重量%、メタノール1.1重量%、水分0.2重量%以下)
【0097】
5.油
(1)鉱物油(1):粘度計校正用標準液 JS 2000(日本グリース株式会社製)基油100重量%(うち鉱油80重量%以上90重量%以下)
(2)鉱物油(2):プーリーSFオイル(出光興産株式会社製)石油系炭化水素(うち鉱油90重量%以上100重量%未満、潤滑油添加剤10重量%未満、2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−クレゾール1重量%未満)
(3)植物油:食用オリーブ油(AJINOMOTO オリーブオイルエクストラバージン、株式会社J−オイルミルズ製)
(4)シリコーンオイル(1):ジメチルシリコーンオイル 350CS(東レ・ダウコーニング株式会社、DOW CORNING(登録商標)360 MEDICAL FLUID)
(5)シリコーンオイル(2):ポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF−6012)
(6)シリコーンオイル(3):エマルジョン型シリコーン離型剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、TSM632)なお、シリコーンオイル(3)は水溶性油である。
【0098】
試験例1:油溶解試験
試験管(容量:4ml、10×75mm、PYREX(登録商標)製)に0.15gの油を入れた。続いて、試験管に30℃に加熱した3gの溶剤組成物を入れた。パスツールピペットを用いて10回かきまぜたときの油の状態を観察して、油溶解性を評価した。
○:溶剤組成物で油を溶解でき、透明で均一な溶剤組成物となった。
×:溶剤組成物で油を溶解できなかったために、すぐに分離して二層になった、又は、白濁した。
【0099】
試験例2:安全性試験
SUS製のカップ(口径65mm×底面48mm×高さ35mmの円柱型)に各組成物を10g入れた。点火棒(片山利器株式会社製、ファイアスターターロング)の炎を2回連続して近づけたときの各組成物の燃焼の状況を観察して、安全性を評価した。
○:各組成物は着火し、燃焼したが、炎は2回とも10秒以内で消えた。
×:各組成物は着火し、燃焼し続け、炎は少なくとも1回は10秒経過しても消えずに燃焼し続けた。
【0100】
試験例3:シリコーンオイル洗浄試験(1)
SUS304板(株式会社岩田製作所製、35mm×15mm×0.1mm)をシリコーンオイル(1)中に浸漬させ、5分後に引き上げたものを洗浄試験サンプルとした。洗浄試験サンプルを、39〜40℃に加熱した50mLの組成物が入った100mLビーカーに投入し、1分後に液中から引き上げた。その後、リンス洗浄として20℃(常温)の50mLの同じ組成の組成物が入った100mLビーカーに投入し、1分後に液中から引き上げ風乾させた後のSUS304板の状態を観察して、以下の通り洗浄性を評価した。
○:清浄にすることができた。
×:シリコーンオイル(1)が表面に残存していた、又は、オイルのシミが発生した。
【0101】
試験例4:シリコーンオイル洗浄試験(2)
ポリカーボネート樹脂片(株式会社光製、30mm×10mm×0.5mm)をシリコーンオイル(シリコーンオイル(1)又はシリコーンオイル(2))中に浸漬させ、5分後に引き上げたものを洗浄試験サンプルとした。洗浄試験サンプルを39〜40℃に加熱した50mLの各溶剤組成物が入った100mLビーカーに投入し、1分後に液中から引き上げた。その後、リンス洗浄として20℃(常温)の50mLの1回目と同じ組成の溶剤組成物が入った100mLビーカーに投入し、1分後に液中から引き上げ風乾させた後のポリカーボネート樹脂片の状態を観察して、以下の通り洗浄性及びポリカーボネート樹脂へのダメージの有無を評価した。
(洗浄性)
○:清浄にすることができた。
×:シリコーンオイルが表面に残存していた、又は、オイルのシミが発生した。
(ポリカーボネート樹脂へのダメージ)
◎:樹脂の透明性は失われておらず、ひび等の外観上のダメージも無い。
○:樹脂の透明性は失われるが、形状には影響がない。
×:樹脂が白化して表面が粉状になり、樹脂片がぼろぼろになる。
【0102】
試験例5:カプセル洗浄試験(1)
(1)試料の作製
マルチビタミン(株式会社DHC製)の1カプセル(被包剤:ゼラチン、グリセリン)を用いた。カプセルに切り込みを入れ、カプセルの内容物(主成分:植物油)を除去して、洗浄試験の試料を得た。なお、カプセルの内壁には、カプセルの内容物が付着していた。
(2)洗浄試験
サンプル瓶(容量13ml)に各組成物5g入れた。(1)で作製した試料を入れた。サンプル瓶を10回振って、試料の洗浄を行った。サンプル瓶から試料を取出して乾燥させた。試料に、内容物の残渣がないか確認を行なった。
○:残渣なし
×:残渣あり
(3)着色試験
サンプル瓶にアサヒクリンAK−225(AGC株式会社製)を5g入れた。(2)で洗浄したカプセルを入れて、AK−225の着色状態に基づいて洗浄力の評価を行った。AK−225は無色であるため、カプセルに付着した着色剤の溶解量はAK−225の着色が橙色(多い)→黄色→無色(少ない)の順番で少なくなることを示し、(2)洗浄試験における洗浄力に優れることを示す。
◎:無色
○:黄色
×:橙色
【0103】
試験例6:カプセル洗浄試験(2)
カプセルは、セルロースホワイトカプセル5号(1000コ入り)(株式会社松屋製、ゼラチン加工食品(カプセル))(カプセル組成:ヒドロキシプロピルメチルセルロース89.2重量%、水6.5重量%、二酸化チタン2重量%、カラギーナン1.3重量%、塩化カリウム1重量%)を用いた。試験前のカプセル1個の受領を、天びん(島津製作所社製、TX323N)を用いて3回測定した。サンプル瓶(容量13ml)に5g溶剤を入れた。カプセル1個を1時間浸漬させたた。サンプル瓶からカプセルを取り出した。4gの1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンを入れたサンプル瓶に、取り出したカプセルを入れて、1時間浸漬させた。その後、カプセルを取り出して乾燥させた。乾燥したカプセルの重量を、天びんを用いて3回測定して、以下の基準でカプセルへのダメージ性を評価した。
◎:変化なし
○:30%未満の変化
×:30%以上の変化
【0104】
試験例7:乾燥性試験(1)
ガラスシャーレ(関谷理化株式会社製、外径32mm、高さ15mm)に各溶剤組成物を0.1g計り取り、20℃で放置して完全に乾燥するまでの時間を測定した。
○:5分未満で乾燥した
×:乾燥するまでに5分以上要した
【0105】
試験例8:フラックス洗浄試験(1)
(1)洗浄試験サンプルの作成
亜鉛引き鉄板(JISG3302相当縦30mm、横20mm、厚さ0.3mm)に、ロジン系フラックス(HAKOO−001白光株式会社製品)を塗布し、約180℃のホットプレートで10分間焼成処理を行い、更に室温(26℃)まで冷却し、室温で10日放置し洗浄試験サンプル(ロジン系フラックスの汚れが付着した被洗浄物)を得た。
【0106】
(2)洗浄試験
ビーカーに洗浄用溶剤組成物を20g入れ、アルミホイルで封をし、液温が39〜40℃になるよう調整し、洗浄試験サンプルを浸漬した。3分後、ビーカーから試験サンプルを取り出し、自然乾燥させた後、目視判断により白色の度合いを判断した。
○:白色の残渣がない。
×:白色の残渣がある。
【0107】
(3)ポリカーボネートダメージ試験
ポリカーボネート樹脂片(株式会社光製、30mm×10mm×0.5mm)を39〜40℃に加熱した50mLの各溶剤組成物が入った100mLビーカーに投入し、1分後に液中から引き上げた。その後、リンス洗浄として20℃(常温)の50mLの1回目と同じ組成の溶剤組成物が入った100mLビーカーに投入し、1分後に液中から引き上げ風乾させた後のポリカーボネート樹脂片の状態を観察して、以下の通りポリカーボネート樹脂へのダメージの有無を、以下の4つの基準に基づいて評価した。
◎ :樹脂の透明性は失われておらず、ひび等の外観上のダメージも無い。
〇〜◎:樹脂が薄い白色に変化し透明性は失われるが、形状には影響がない。
〇 :樹脂が濃い白色に変化し透明性は失われるが、形状には影響がない。
× :樹脂が白化して表面が粉状になり、樹脂片がぼろぼろになる。
【0108】
フラックス洗浄が行われるときは、ポリカーボネート等のプラスチック部品が搭載されている基板を洗浄することがある。そのため、ダメージが少ないほうが望ましいことになる。ここで、洗浄後の基板に濁りが生じるが、基材の形状に変化が生じないのであれば、洗浄後の基材は十分に使用に耐えられる場合がある。よって、試験例8の(3)ポリカーボネートダメージ試験において、「〇」、「〇〜◎」及び「◎」は、ポリカーボネート基材のダメージが許容でき得るダメージであると判断した。なお、実施例55及び56のポリカーボネートダメージ試験の結果は、試験例8の基準に従う場合、実施例55が「〇」であり、実施例56が「〇〜◎」である。
【0109】
試験例9:フラックス洗浄試験(2)
(1)洗浄試験サンプルの作成
亜鉛引き鉄板(JIS G3302相当、縦30mm、横30mm、厚さ0.3mm)に、メタルマスクを介して、市販のSMT(表面実装)用鉛フリーソルダーペースト(PF305−117TO(TF)、ニホンハンダ株式会社製)を塗布し、約180℃のホットプレートで3分間載置し、続いて、約250℃のホットプレートで5分載置した。更に室温(約20℃)まで冷却し、2日放置し洗浄試験サンプル(ロジンを含むクリームハンダの汚れが付着した被洗浄物)を得た。
【0110】
(2)洗浄試験
株式会社エスエヌディ製超音波洗浄器US−13KS(発振周波数:38kHz,高周波出力:360W)を水道水で満たし、水温約40℃に調整した。100mLビーカーに洗浄用組成物を50mL入れ、アルミホイルで封をし、超音波洗浄器中に浸漬して洗浄用組成物の液温が約39〜40℃になるように調整した後、超音波発生下で洗浄試験サンプルを洗浄用組成物中に浸漬した。1分後、ビーカーから試験サンプルを取り出し、予め別の100mLビーカーに準備した液温約39〜40℃の洗浄用組成物と同じ組成のリンス洗浄用溶剤組成物50mL中に超音波発生下で浸漬させた。1分後に液中から引き上げ、自然乾燥させた後、肉眼又はHDМIデジタル実体顕微鏡STZ−161−TLED1080М(株式会社島津理化製)を用いて試験サンプル表面の観察を実施した。
◎:顕微鏡で観察しても白色の残渣が認められない。
○:肉眼では白色の残渣は認められないが、顕微鏡で観察すると極微量の白色の残渣が認められる。
●:肉眼で極微量の白色の残渣が認められる。
△:肉眼で微量の白色の残渣が認められる。
×:肉眼で容易に白色の残渣が認められる。
【0111】
試験例10:鉱物油洗浄試験
SUS304板(株式会社岩田製作所製、35mm×15mm×0.1mm)を鉱物油(1)中に浸漬させ、5分後に引き上げたものを洗浄試験サンプルとした。洗浄試験サンプルを、39〜40℃に加熱した50mLの組成物が入った100mLビーカーに投入し、3分後に液中から引き上げた。その後、リンス洗浄として20℃(常温)の50mLの同じ組成の組成物が入った100mLビーカーに投入し、1分後に液中から引き上げ風乾させた後のSUS304板の状態を観察して、以下の通り洗浄性を評価した。
○:SUS板表面を清浄にすることができた。
△:SUS板表面に極僅かなオイルの残存が認められた。
×:SUS板表面に明らかなオイルの残存が認められた。
【0112】
試験例11:ABS樹脂板上のシリコーンオイル拭き取り試験
ABS型樹脂板(株式会社タカチ電機工業製、縦300mm、横200mm、厚さ1.0mm)の表面に、シリコーンオイル(1)0.1gを滴下し、丸筆3号(馬毛)を用いて均一にし、洗浄試験サンプルとした。
2枚重ねのティッシュペーパー(王子ネピア株式会社製)1組を、縦65mm、横72mmの大きさにしたものを、四つ折りにして各実施例の洗浄用組成物を染み込ませ、それを親指と人差し指で1回絞った。洗浄試験サンプルのシリコーンオイルが塗布された領域に、各溶剤組成物を染み込ませたティッシュペーパーの半分を接触させて手でこすることにより拭いた。その後、もう一度同じ領域にティッシュペーパーの残りの半分を接触させて手でこすることによりリンス拭きを実施した。
洗浄試験後、洗浄試験サンプルのシリコーンオイルが除去されたか否かを目視観察し、以下の基準で評価した。
(洗浄性)
○:肉眼上、シリコーンオイルの残渣がなく、かつ拭取り跡が残らない。
×:肉眼上、シリコーンオイルの残渣がある、及び/又は拭取り跡が残る。
(ABSへのダメージ性)
○:ABS表面に変化がない。
×:ABS表面に何らかの変化(溶解・白化)が認められる。
【0113】
試験例12:エアゾール洗浄試験
(試験サンプルの作製)
SUS430平板(株式会社光製、400mm×300mm×1mm)上の100mm×100mmの区画に鉱物油(2)0.1gもしくはシリコーンオイル(1)0.1gを滴下し、丸筆3号(馬毛)を用いて均一に塗布した。
(エアゾール組成物の作製)
アルミ製詰め替え式エアースプレー缶A1631D(容量650ml、FIRSTINFO TOOLS CO., LTD.製)に各溶剤組成物300mlを入れた後、エアーコンプレッサーで圧縮空気を充填した(0.6MPa)。
(試験方法)
試験サンプルから50cmのところより、エアゾール組成物を10秒間噴射した。
(試験結果)
○:オイルを塗布した区画内から肉眼上オイルを除去することができた。
×:オイルを塗布した区画内に肉眼上オイルの残存が認められた。
【0114】
試験例13:乾燥性試験(2)
SUS304板(株式会社岩田製作所製、35mm×15mm×0.1mm)を各溶剤組成物中に浸漬し、直後に引き上げ、20℃でSUS304板を寝かせて放置して完全に乾燥するまでの時間を測定した。なお、本試験は試験例7:乾燥性試験(1)よりも基材に付着する溶剤組成物の量が多いため、乾燥までにより長い時間を要する。
○:30分未満で乾燥した。
×:乾燥するまでに30分以上要した。
【0115】
結果を表1〜表19にまとめる。なお、表における引火点及び沸点はカタログ値である。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
【表10】
【0126】
【表11】
【0127】
【表12】
【0128】
【表13】
【0129】
【表14】
【0130】
【表15】
【0131】
【表16】
【0132】
【表17】
【0133】
【表18】
【0134】
【表19】
【0135】
表1〜表3、表7〜表9、表13〜18より、第一及び第二の溶剤組成物は、様々な油に対する洗浄性又は溶解性に優れていた。
表4〜表6より、(B)成分は、(d−5)〜(d−8)に対して引火点が高く、よって、(B)成分を含む第一及び第二の組成物は、安全性に優れていた。
表9より、(C)成分が(c1)成分及び(c2)成分からなる群より選択される1種以上であり、その含有量が好ましい範囲にある第二の溶剤組成物は、ポリカーボネート基材に対するダメージがより許容し得る程度であった。
表10〜表11より、(C)成分が(c1)成分及び(c2)成分からなる群より選択される1種以上であり、その含有量が別の好ましい範囲にある第二の溶剤組成物は、カプセル剤に対するダメージがより低減されていた。
表12及び表19より、第一及び第二の溶剤組成物は、(B)成分を炭素原子数が(B)成分よりも多い炭化水素系溶剤である(d−9)に変えた溶剤組成物に対して、乾燥性に優れていた。
表13より、(C)成分が(c3)成分である、第二の溶剤組成物は、水溶性油に対する溶解性に優れていた。
また、実施例18、20、23、27〜31、62〜82、104、120〜121及び124により、第一及び第二の溶剤組成物の(A)成分〜(C)成分の含有量を満足する場合は、ヘキサン、イソヘプタン等の引火点が低い成分を含むときであっても、安全性に優れていた。
表14より、第一及び第二の溶剤組成物は、フラックスの洗浄性に優れていた。また、実施例105〜106と実施例107〜111との比較により、溶剤組成物がアルコール系溶剤(但し、(c3)を除く)を含む場合、ポリカーボネート基材に対するダメージがより許容できるものであった。特に、アルコール系溶剤(但し、(c3)を除く)を含む第二の溶剤組成物は、ポリカーボネート基材に対するダメージがより許容できるものであった。更に、アルコール系溶剤(但し、(c3)を除く)及び(c1)成分を含む第二の溶剤組成物は、ポリカーボネート基材に対するダメージが特に許容できるものであった。
表15より、(B)成分が好ましい含有量である場合、第一及び第二の溶剤組成物は、フラックスに対する洗浄性により優れていた。また、実施例114及び125と、実施例117、119及び121との比較により、(A)成分が(a−1)シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり(B)成分が(b−2)メチルシクロヘキサン又は(b−3)エチルシクロヘキサンである場合、特に洗浄性に優れていた。
表16より、第一及び第二の溶剤組成物は、鉱物油に対する洗浄性に優れていた。
表17より、第一及び第二の溶剤組成物は、シリコーンオイルに対する洗浄性に優れており、かつ、ABS基材に対するダメージが許容できる程度であった。
表18より、第一及び第二の溶剤組成物は、それを含むエアゾール組成物としても、様々な油に対する洗浄性又は溶解性に優れていた。
一方、(A)及び(C)成分のみからなる比較例39〜46、48〜49は、鉱物油又はシリコーンオイルに対する洗浄性が劣っていた。
【解決手段】本発明は、(A)(a1)塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよいハイドロフルオロオレフィン類、(a2)クロロフルオロオレフィン類、並びに(a3)ブロモフルオロオレフィン類からなる群より選択される1種以上の溶剤と、(B)ノルマルオクタン、イソオクタン、イソノナン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンからなる群より選択される1種以上の溶剤とを含み、任意として(C)(c1)ハイドロフルオロカーボン類、(c2)ハイドロフルオロエーテル類及び(c3)1−メトキシ−2−プロパノールからなる群より選択される1種以上の溶剤を含む溶剤組成物であって、(A)、(B)及び(C)が特定の含有量である溶剤組成物及びそれを含む洗浄用エアゾール組成物に関する。