(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。
【0015】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1のポリカルボン酸成分は、第1のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して12mol%以下のテレフタル酸をさらに含む。
【0016】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1のポリカルボン酸成分において、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の含有率は、第1のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して88mol%以上である。
【0017】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第2のポリエステル樹脂の含有率が1質量%〜25質量%である。
【0018】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第3のポリエステル樹脂の含有率が1質量%〜25質量%である。
【0019】
上記第1視点の好ましい形態によれば、二軸配向ポリエステルフィルムは0.62dl/g以上の極限粘度を有する。
【0020】
上記第1視点の好ましい形態によれば、二軸配向ポリエステルフィルムの融解熱量が33J/g以上である。
【0021】
上記第1視点の好ましい形態によれば、二軸配向ポリエステルフィルムは、燃料電池の部材として使用される。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲において、各酸成分及び各アルコール成分にはその誘導体も含まれ得る。例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分には、2,6−ナフタレンジカルボン酸の誘導体も含まれ得る。テレフタル酸成分には、テレフタル酸の誘導体も含まれ得る。エチレングリコール成分には、エチレングリコールの誘導体も含まれ得る。1,4−ブタンジオール成分には、1,4−ブタンジオールの誘導体も含まれ得る。
【0023】
本開示において、ポリカルボン酸とは、カルボキシル基を複数有する化合物のことをいう。また、ポリオール成分とは、ヒドロキシル基を複数有する化合物(ポリヒドロキシ化合物)のことをいう。
【0024】
本開示において、重合体には、2種類以上の単量体成分から構成される共重合体(コポリマー)、及び架橋重合体(クロスポリマー)も含み得る。
【0025】
第1実施形態に係る本開示の二軸配向ポリエステルフィルムについて説明する。
【0026】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、第1のポリエステル樹脂と、第2のポリエステル樹脂及び/又は第3のポリエステル樹脂と、を含む。すなわち、本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、第1のポリエステル樹脂と、第2のポリエステル樹脂及び/又は第3のポリエステル樹脂とのブレンド体(ポリマーアロイ)である。
【0027】
第1のポリエステル樹脂は、第1のポリカルボン酸成分と、第1のポリオール成分との重合体であるポリエステル樹脂である。第1のポリエステル樹脂は、ポリエチレンナフタレート(PEN:polyethylene naphthalate)を主たる骨格として有すると好ましい。
【0028】
第1のポリカルボン酸成分は、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含む。また、第1のポリカルボン酸成分は、テレフタル酸成分をさらに含むことができる。
【0029】
第1のポリカルボン酸成分において、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分は、第1のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して、88mol%以上であると好ましく、90mol%以上であるとより好ましく、92mol%以上であるとさらに好ましい。2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の含有率が88mol%未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。2,6−ナフタレンジカルボン酸成分は、第1のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して、100mol%以下、99mol%以下、98mol%以下、又は95mol%以下とすることができる。
【0030】
第1のポリカルボン酸成分において、テレフタル酸成分は、第1のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して、12mol%以下であると好ましく、10mol%以下であるとより好ましく、8mol%以下であるとさらに好ましい。テレフタル酸成分の含有率が12mol%を超えると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。テレフタル酸成分は、第1のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して、0mol%以上、1mol%以上、2mol%以上、又は5mol%以上とすることができる。第1のポリカルボン酸成分は、テレフタル酸成分を含まなくてもよい。第1のポリカルボン酸成分はテレフタル酸成分を含むほうがフィルムの厚さの均一性を高めることができる。
【0031】
第1のポリオール成分は、エチレングリコール成分を含む。第1のポリオール成分において、エチレングリコール成分は、第1のポリオール成分におけるアルコール成分の総量に対して、90mol%以上であると好ましく、95mol%以上であるとより好ましく、98mol%以上であるとより好ましく、100mol%であるとさらに好ましい。エチレングリコール成分の含有率が90mol%未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。エチレングリコール成分は、第1のポリオール成分におけるアルコール成分の総量に対して、100mol%以下、98mol%以下、又は95mol%以下とすることができる。
【0032】
第1のポリエステル樹脂の極限粘度(IV値)は、0.62dl/g(10
2cm
3/g)以上であると好ましく、0.63dl/g以上であるとより好ましく、0.64dl/g以上であるとさらに好ましい。極限粘度が0.62dl/g未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの耐加水分解性が低下してしまう。第1のポリエステル樹脂の極限粘度は、0.80dl/g以下であると好ましく、0.78dl/g以下であるとより好ましく、0.75dl/g以下であるとさらに好ましい。極限粘度が0.80dl/gを超えると、通常の合成手法では重合に長時間を要し生産性が低下してしまう。
【0033】
本開示に示す極限粘度は、フェノール:テトラクロロエタン=60:40(質量比)の混合溶媒に試料0.5000±0.0005gを溶解させ、ウベローデ粘度管を装着した自動粘度測定装置を用いて測定した、20℃における極限粘度である。
【0034】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、第1のポリエステル樹脂の含有率は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対して、75質量%以上であると好ましく、80質量%以上であるとより好ましく、85質量%以上であるとより好ましく、90質量%以上であるとさらに好ましい。第1のポリエステル樹脂の含有率は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対して、95質量%以上とすることもできる。第1のポリエステル樹脂の含有率が75質量%未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの耐加水分解性が低下してしまう。第1のポリエステル樹脂の含有率は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対して、99質量%以下であると好ましく、98質量%以下であるとより好ましい。第1のポリエステル樹脂の含有率は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対して、95質量%以下とすることもできる。第1のポリエステル樹脂の含有率が99質量%を超えると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。
【0035】
第2のポリエステル樹脂は、第2のポリカルボン酸成分と、第2のポリオール成分との重合体であるポリエステル樹脂である。第2のポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate)を主たる骨格として有すると好ましい。
【0036】
第2のポリカルボン酸成分は、テレフタル酸成分を含む。第2のポリカルボン酸成分において、テレフタル酸成分は、第2のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して、90mol%以上であると好ましく、95mol%以上であるとより好ましく、98mol%以上であるとより好ましく、100mol%であるとさらに好ましい。テレフタル酸成分の含有率が90mol%未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。テレフタル酸成分は、第2のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して、100mol%以下、98mol%以下、又は95mol%以下とすることができる。
【0037】
第2のポリオール成分は、1,4−ブタンジオール成分を含む。第2のポリオール成分において、1,4−ブタンジオール成分は、第2のポリオール成分におけるアルコール成分の総量に対して、90mol%以上であると好ましく、95mol%以上であるとより好ましく、98mol%以上であるとより好ましく、100mol%であるとさらに好ましい。1,4−ブタンジオール成分の含有率が90mol%未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。1,4−ブタンジオール成分は、第2のポリオール成分におけるアルコール成分の総量に対して、100mol%以下、98mol%以下、又は95mol%以下とすることができる。
【0038】
第2のポリエステル樹脂の極限粘度は、0.62dl/g以上であると好ましく、0.64dl/g以上であるとより好ましく、0.66dl/g以上であるとさらに好ましい。極限粘度が0.62dl/g未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの耐加水分解性が低下してしまう。第2のポリエステル樹脂の極限粘度は、1.45dl/g以下であると好ましく、1.43dl/g以下であるとより好ましく、1.40dl/g以下であるとさらに好ましい。極限粘度が1.45dl/gを超えると、通常の合成手法では重合に長時間を要し生産性が低下してしまう。
【0039】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、第2のポリエステル樹脂の含有率は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対して、1質量%以上であると好ましく、2質量%以上であるとより好ましく、5質量%以上であるとさらに好ましい。第2のポリエステル樹脂の含有率が1質量%未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。第2のポリエステル樹脂の含有率は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対して、25質量%以下であると好ましく、20質量%以下であるとより好ましく、15質量%以下であるとより好ましく、10質量%以下であるとさらに好ましい。第2のポリエステル樹脂の含有率が25質量%を超えると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化が速くなりすぎるため、フィルムの延伸が困難になる。
【0040】
第3のポリエステル樹脂は、第3のポリカルボン酸成分と、第3のポリオール成分との重合体であるポリエステル樹脂である。第3のポリエステル樹脂は、ポリブチレンナフタレート(PBN:polybutylene naphthalate)を主たる骨格として有すると好ましい。
【0041】
第3のポリカルボン酸成分は、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含む。第3のポリカルボン酸成分において、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分は、第3のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して、85mol%以上であると好ましく、90mol%以上であるとより好ましく、95mol%以上であるとより好ましく、98mol%以上であるとより好ましく、100mol%であるとさらに好ましい。2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の含有率が85mol%未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。2,6−ナフタレンジカルボン酸成分は、第3のポリカルボン酸成分における酸成分の総量に対して、100mol%以下、98mol%以下、又は95mol%以下とすることができる。
【0042】
第3のポリオール成分は、1,4−ブタンジオール成分を含む。第3のポリオール成分において、1,4−ブタンジオール成分は、第3のポリオール成分におけるアルコール成分の総量に対して、80mol%以上であると好ましく、85mol%以上であるとより好ましく、90mol%以上であるとより好ましく、95mol%以上であるとより好ましく、98mol%以上であるとより好ましく、100mol%であるとさらに好ましい。1,4−ブタンジオール成分の含有率が80mol%未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。1,4−ブタンジオール成分は、第3のポリオール成分におけるアルコール成分の総量に対して、100mol%以下、98mol%以下、又は95mol%以下とすることができる。
【0043】
第3のポリエステル樹脂の極限粘度は、0.62dl/g以上であると好ましく、0.64dl/g以上であるとより好ましく、0.66dl/g以上であるとさらに好ましい。極限粘度が0.62dl/g未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。第3のポリエステル樹脂の極限粘度は、1.30dl/g以下であると好ましく、1.28dl/g以下であるとより好ましく、1.25dl/g以下であるとさらに好ましい。極限粘度が1.30dl/gを超えると、通常の合成手法では重合に長時間を要し生産性が低下してしまう。
【0044】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、第3のポリエステル樹脂の含有率は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対して、1質量%以上であると好ましく、2質量%以上であるとより好ましく、5質量%以上であるとさらに好ましい。第3のポリエステル樹脂の含有率が1質量%未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。第3のポリエステル樹脂の含有率は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対して、25質量%以下であると好ましく、20質量%以下であるとより好ましく、15質量%以下であるとより好ましく、10質量%以下であるとさらに好ましい。第3のポリエステル樹脂の含有率が25質量%を超えると、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化が速くなりすぎるため、フィルムの延伸が困難になる。
【0045】
例えば、本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、75質量%〜99質量%の第1のポリエステル樹脂と、1質量%〜25質量%の第2のポリエステル樹脂と、を含むことができる。例えば、本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、75質量%〜99質量%の第1のポリエステル樹脂と、1質量%〜25質量%の第3のポリエステル樹脂と、を含むことができる。例えば、本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、75質量%〜99質量%の第1のポリエステル樹脂と、1質量%〜24質量%の第2のポリエステル樹脂と、1質量%〜24質量%の第3のポリエステル樹脂と、を含むことができる。このとき、第2のポリエステル樹脂と第3のポリエステル樹脂の合計割合は25質量%以下とすると好ましい。
【0046】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの取り扱い性を向上させるため、本開示の効果を阻害しない範囲において、アンチブロッキング剤を含有すると好ましい。アンチブロッキング剤としては、例えば、アルミノケイ酸塩、シリカ等の無機粒子を使用することができる。アンチブロッキング剤の平均粒径は、0.1μm〜5μmの範囲が好ましい。アンチブロッキング剤の含有率は、二軸配向ポリエステルフィルムの質量に対して、0.01質量%〜1質量%の範囲であると好ましい。また、製膜時において、加水分解によるフィルム極限粘度の低下を防ぐために、添加するアンチブロッキング剤の水分率は200ppm以下であると好ましい。このため、アンチブロッキング剤は、水分率200ppm以下の維持が容易な、吸湿性の低い無機粒子であると好ましい。無機粒子の水分率は、JIS(日本工業規格;Japanese Industrial Standards)K0068に準拠して測定することができる。
【0047】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、本開示の効果を阻害しない範囲において、上述した以外の公知の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、重合触媒、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、離型剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、顔料、染料等を使用することができる。
【0048】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムの厚さは、例えば、3μm以上、10μm以上、又は20μm以上とすることができる。また、二軸配向ポリエステルフィルムの厚さは、例えば、150μm以下、120μm以下、100μm以下、又は80μm以下とすることができる。
【0049】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムの極限粘度は、0.62dl/g以上であると好ましく、0.63dl/g以上であるとより好ましく、0.64dl/g以上であるとさらに好ましい。極限粘度が0.62dl/g未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの耐加水分解性が低下してしまう。本開示の二軸配向ポリエステルフィルムの極限粘度は、0.95dl/g以下であると好ましく、0.93dl/g以下であるとより好ましく、0.90dl/g以下であるとさらに好ましい。極限粘度が0.95dl/gを超えると、製膜時の溶融粘度が高くなりすぎるため、フィルムの生産性が低下してしまう。
【0050】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムの融解熱量は、33J/g以上であると好ましく、33.3J/g以上であるとより好ましく、33.5J/g以上であるとさらに好ましい。融解熱量は、二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度に依存しており、33J/g未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの耐加水分解性が低下してしまう。融解熱量は、JISK7122に準拠して測定することができる。
【0051】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムの融点は、245℃以上であると好ましく、250℃以上であるとより好ましい。融点が245℃未満であると、二軸配向ポリエステルフィルムの耐熱性が低下してしまう。融点は、ISO(国際標準化機構;International Organization for Standardization)3146に準拠して測定することができる。
【0052】
本開示のポリエステルフィルムは、ポリエステルのカルボキシル基末端を封止することでフィルム中の末端カルボキシル基濃度を低減し、フィルムの耐加水分解性を改善することができる末端封止剤を含有しないと好ましい。末端封止剤を用いないことによって、製膜時の遊離イソシアネート化合物やゲル化の発生を抑制することができる。
【0053】
長さ100mm、幅10mmである本開示の二軸配向ポリエステルフィルムの試験片を、温度120℃、相対湿度100%の湿熱処理条件で150時間さらしたとき、湿熱処理後の試験片の引張破断伸度は、20%以上であると好ましく、30%以上であるとより好ましく、40%以上であるとより好ましく、50%以上であるとさらに好ましい。また、湿熱処理未処理の試験片を上述の湿熱処理条件で150時間さらしたとき、下記式(1)で表される引張破断伸度保持率は、20%以上であると好ましく、30%以上であるとより好ましく、40%以上であるとより好ましく、50%以上であるとより好ましく、60%以上であるとさらに好ましい。引張破断伸度は、ISO527に準拠して測定することができる。
【0054】
引張破断伸度保持率(%)=(引張破断伸度X/初期の引張破断伸度X
0)×100・・・(1)
(式中、初期の引張破断伸度X
0は、湿熱処理を施していない基準試験片の引張破断伸度を表す。引張破断伸度Xは、初期の引張破断伸度X
0を測定した基準試験片と同一組成を有し、同一条件で作製したフィルム、好ましくは基準試験片と同一ロットで作製したフィルムについて、温度120℃、相対湿度100%の湿熱処理条件で所定時間処理した試験片の引張破断伸度を表す。)
【0055】
長さ100mm、幅10mmである本開示の二軸配向ポリエステルフィルムの試験片を、温度120℃、相対湿度100%の湿熱処理条件で200時間さらしたとき、湿熱処理後の試験片の引張破断強度は、20MPa以上であると好ましく、50MPa以上であるとより好ましく、75MPa以上であるとより好ましく、100MPa以上であるとより好ましく、125MPa以上であるとさらに好ましい。また、湿熱処理未処理の試験片を上述の湿熱処理条件で200時間さらしたとき、下記式(2)で表される引張破断強度保持率は、20%以上であると好ましく、30%以上であるとより好ましく、40%以上であるとより好ましく、50%以上であるとさらに好ましい。引張破断強度は、ISO527に準拠して測定することができる。
【0056】
引張破断強度保持率(%)=(引張破断強度Y/初期の引張破断強度Y
0)×100・・・(2)
(式中、初期の引張破断強度Y
0は、湿熱処理を施していない基準試験片の引張破断強度を表す。引張破断強度Yは、初期の引張破断強度Y
0を測定した基準試験片と同一組成を有し、同一条件で作製したフィルム、好ましくは基準試験片と同一ロットで作製したフィルムについて、温度120℃、相対湿度100%の湿熱処理条件で所定時間処理した試験片の引張破断強度を表す。)
【0057】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムにおける上述以外の特徴は、本開示の組成物及びフィルムの構造又は特性により直接特定することが困難なものもあり、その場合には製造方法によって特定することが有用である。例えば、本開示の二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度、結晶状態、配向度等は、性状等によって直接特定できない場合、製造方法によって特定することが適切な場合もある。
【0058】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、高い耐加水分解性を有している。例えば、本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエチレンナフタレート100%のフィルムよりも高い耐加水分解性を有している。これにより、本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、例えば、高温多湿環境で使用される製品に適用することができる。
【0059】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、燃料電池の部材として使用することができる。例えば、本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは、固体高分子形燃料電池において、電解質膜、電極、触媒層等を有する膜・電極接合体を保護する部材として使用することができる。
【0060】
第2実施形態に係る樹脂組成物について説明する。本開示の樹脂組成物は、第1実施形態に係る二軸配向ポリエステルフィルムへとフィルム化する前の樹脂組成物(二軸延伸前のフィルム含む)であり得る。すなわち、本開示の樹脂組成物は、第1実施形態に係る二軸配向ポリエステルフィルムの中間製品として使用することができる。
【0061】
第2実施形態に係る樹脂組成物は、第1実施形態に係る二軸配向ポリエステルフィルムと同様の組成を有する。第2実施形態に係る樹脂組成物の組成については上述の説明を援用する。
【0062】
本開示の樹脂組成物によれば、高い耐加水分解性を有する二軸配向ポリエステルフィルムを製造することができる。特に、第1のポリエステル樹脂にテレフタル酸成分が含まれる本開示の樹脂組成物は、高い延伸性を有する。延伸時の加熱温度を低下できることによってフィルム厚の均一性を高めることができる。これによって、二軸配向フィルムが使用される製品の品質を高めることができる。
【0063】
第3実施形態として、第1実施形態に係る二軸配向ポリエステルフィルム及び第2実施形態に係る樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0064】
本開示の樹脂組成物及び二軸配向ポリエステルフィルムは、公知の方法で製造することができる。上述の第1〜第3のポリエステル樹脂は、上述の単量体及び添加物を基にして、公知の方法で製造することができる。例えば、未置換のポリカルボン酸又はジメチルエステル等のエステル化物、及びポリオールを出発原料とする直接エステル化又はエステル交換反応によりエステルプレポリマーを生成することができる。単量体及び添加物の添加率は、本開示の組成物及びフィルムに関する上述の説明において示した割合とすることができる。
【0065】
エステル交換反応及びエステル化反応に続いて、エステルプレポリマーに重合触媒を添加して、所望の分子量となるまでさらに重縮合反応を行うことができる。次に、得られたポリマーを減圧下又は窒素気流下で加熱して固相重合反応させることができる。これによって、第1〜第3のポリエステル樹脂を作製することができる。
【0066】
第1〜第3のポリエステル樹脂は市販品を用いてもよい。
【0067】
次に、第1のポリエステル樹脂と、第2のポリエステル樹脂及び/又は第3のポリエステル樹脂と、添加剤とを、乾燥後、溶融して混合する。各ポリエステル樹脂の添加割合は、上述の説明において示した割合とすることができる。次に、溶融物を所望の形状に成形した後、冷却固化して、第2実施形態の樹脂組成物となる未延伸フィルムを作製することができる。
【0068】
次に、未延伸フィルムをガラス転移温度以上に加熱して二軸延伸した後、熱固定して、第1実施形態に係る二軸配向ポリエステルフィルムを作製することができる。延伸工程における加熱温度は、125℃以上であると好ましく、130℃以上であるとより好ましい。加熱温度が125℃未満であると、延伸時に破膜が起こりやすく延伸時の生産性が低下してしまう。延伸工程における加熱温度は、150℃以下であると好ましく、145℃以下であるとより好ましく、140℃以下であるとさらに好ましい。加熱温度が150℃を超えると、フィルムの厚み均一性が低下してしまう。フィルム化時に末端封止剤を添加してもよい。
【0069】
延伸速度は、4%/秒以上であると好ましく、5%/秒以上であるとより好ましい。延伸速度が4%/秒未満であると、フィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。延伸速度は、92%/秒以下であると好ましく、84%/秒以下であるとより好ましい。延伸速度が92%/秒を超えると、延伸時に破膜が起こりやすく延伸時の生産性が低下してしまう。縦方向(MD;Machine Direction)と横方向(TD;Transverse Direction)の延伸速度は同じであると好ましい。これによって、方向依存性のないフィルムを製造することができる。
【0070】
ここで、延伸速度の単位「%/秒」とは、延伸処理前のフィルムの延伸方向の長さを基準として、1秒間に延伸するフィルムの延伸方向の長さの割合を示している。例えば、延伸前のフィルムの縦方向の長さが100mmである場合、延伸速度4%/秒とは、1秒間にフィルムを縦方向に4mm延伸することを意味する。
【0071】
未延伸フィルムを延伸する倍率は、延伸処理前のフィルムの延伸方向の長さを基準にして、2.5倍以上であると好ましく、3倍以上であるとより好ましい。倍率が2.5倍未満であるとフィルムの結晶化度及び耐加水分解性が低下してしまう。また、未延伸フィルムを延伸する倍率は、延伸処理前のフィルムの延伸方向の長さを基準にして、4.5倍以下であると好ましく、4倍以下であるとより好ましい。倍率が4.5倍を超えると、延伸時に破膜が起こりやすく延伸時の生産性が低下してしまう。縦方向と横方向の延伸倍率は同じであると好ましい。これによって、方向依存性のないフィルムを製造することができる。
【0072】
二軸延伸方法は、縦方向と横方向とを同時に延伸する同時延伸であってもよいし、縦方向と横方向とを順次延伸する逐次延伸であってもよい。フィルムの耐加水分解性を高めるためには、同時延伸のほうが好ましい。
【0073】
熱固定は、210℃以上240℃以下、より好ましくは220℃以上240℃以下の温度において、緊張下または制限収縮下で行うのが好ましい。熱固定の処理時間は5秒〜120秒が好ましい。また、熱収縮率をより小さくするために熱固定後に弛緩処理を行ってもよい。
【0074】
これにより、第1実施形態に係る二軸配向ポリエステルフィルム及び第2実施形態に係る樹脂組成物を製造することができる。
【0075】
以下に、本開示の二軸配向ポリエステルフィルムについて実施例を用いて説明する。本開示の二軸配向ポリエステルフィルムは以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0076】
組成の異なる二軸配向ポリエステルフィルムを作製又は準備し、各二軸配向ポリエステルフィルムについて厚み均一性及び耐加水分解性を評価した。また、各二軸配向ポリエステルフィルムについて、極限粘度、融点及び融解熱量を測定した。
【0077】
[二軸配向ポリエステルフィルムの作製]
[第1のポリエステル樹脂の作製]
第1のポリエステル樹脂としては、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」と称することもある)、又はテレフタル酸を共重合させたポリエチレンナフタレート(以下、「Co−PEN」と称することもある)を用いた。Co−PENの製造方法について説明する。まず、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水和物0.01重量部及び酢酸カルシウム一水和物0.03重量部を添加し、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部(93mol%)、テレフタル酸ジメチル6重量部(7mol%)、及びエチレングリコール60重量部(100mol%)をエステル交換反応させた。次に、トリエチルホスフェート0.07重量部及び三酸化アンチモン0.03重量部を添加して、反応生成物を高真空下で重合反応させた。次に、得られたポリマーをチップ化した後、高真空下にて該ポリマーを固相重合させた。これにより、極限粘度0.69dl/gのCo−PENを得ることができた。PENはCo−PENと同様の方法で作製した。PENの極限粘度は0.69dl/gであった。
【0078】
[第2のポリエステル樹脂の作製]
第2のポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と称することもある)を使用した。ポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸成分100mol%と1,4−ブタンジオール100molの共重合体である長春人造樹脂廠社製CCP PBT 1100−211Xを用いた。第2のポリエステル樹脂の極限粘度は1.32dl/gであった。
【0079】
[第3のポリエステル樹脂の作製]
第3のポリエステル樹脂としては、ポリブチレンナフタレート(以下、「PBN」と称することもある)を作製した。まず、エステル交換触媒及び重合触媒としてテトラ−n−ブトキシチタン0.02重量部を添加し、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部(100mol%)及び1,4−ブタンジオール52重量部(100mol%)をエステル交換反応させた。次に、反応生成物を高真空下で重合反応させた。次に、得られたポリマーをチップ化した後、窒素気流下にて該ポリマーを固相重合させた。これにより、極限粘度1.03dl/gの第3のポリエステル樹脂を得ることができた。
【0080】
[未延伸フィルムの作製]
表1に示すような組成を有する未延伸フィルム(樹脂組成物)を作製した。表1に示した数値は質量%を表す。表1において「AB剤」とはアンチブロッキング剤を示す。
【0081】
試験例1においては、PENとPBTとのブレンドフィルムを作製した。試験例2〜9においては、Co−PENと、PBT又はPBNとのブレンドフィルムを作製した。まず、PEN、Co−PEN、PBT、PBN及びAB剤を150℃で10時間乾燥させた。なお、AB剤は、Co−PENの一部に予め混練した状態で添加した。次に、各樹脂及びAB剤の混合物を溶融温度290℃で溶融し、ダイスリットより押し出した後、キャストロール上で冷却固化し、未延伸フィルムを作製した。試験例1及び7においてはAB剤を添加しなかった。
【0082】
[二軸配向フィルムの作製]
次に、試験例3〜9においては、未延伸フィルムを140℃にて、延伸速度83%/秒、横方向に3.5倍、縦方向に3.5倍で同時二軸延伸した。次に、延伸したフィルムを220℃にて熱固定処理し、平均厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。試験例6においては、140℃では延伸が不可能であったため、170℃にて延伸を行った。
【0083】
試験例1においては、試験例3と同様の方法で二軸配向フィルムを作製した。ただし、試験例1においては、140℃では延伸が不可能であったため、160℃にて延伸を行った。
【0084】
試験例2においては、二軸配向フィルムを作製する際の延伸速度を4.5%/秒とした以外は、試験例3と同じ方法で二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。試験例2に係るフィルムと試験例3に係るフィルムとは同じ組成を有する。しかしながら、延伸速度を変化させたことによって、表4に示すように、試験例2に係るフィルムは、試験例3に係るフィルムよりも融解熱量が低くなっている。すなわち、試験例2に係るフィルムは、試験例3に係るフィルムよりも低い結晶化度を有すると考えられる。
【0085】
試験例10においては、ブレンドフィルムではないPENフィルムとして、市販品のポリエチレンナフタレートフィルム(テオネックスQ51 帝人デュポンフィルム社製、厚み38μm)を用いた。
【0086】
試験例11及び12においては、PBT及びPBNを用いず、Co−PENとAB剤を用いて試験例3と同様の方法でフィルムを作製した。試験例11と試験例12とでは、AB剤を変えた。試験例2〜6、8、9及び11で使用したAB剤は、アルミノケイ酸塩(SILTON AMT−40 水澤化学工業社製)である。なお、試験例2〜6、8、9及び11でAB剤として使用したアルミノケイ酸塩の乾燥前の水分率は、6254ppmであり、150℃で10時間乾燥させた後の水分率は、52ppmであった。試験例12において使用したAB剤はシリカ(SYLYSIA530 富士シリシア化学社製)である。なお、試験例12でAB剤として使用したシリカの乾燥前の水分率は、21617ppmであり、150℃で10時間乾燥させた後の水分率は、315ppmであった。
【0087】
[物性試験]
試験例1〜12に係る二軸配向フィルムについて、加水分解に対する耐性を評価すると共に、極限粘度、融点及び融解熱量を測定した。
【0088】
[耐加水分解性試験]
各試験例に係る二軸配向フィルムを長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出し、これを試験片とした。次に、温度120℃、相対湿度100%、不飽和制御モードに設定した環境試験機内に試験片を静置した。所定時間ごとに試験片を取り出し、引張破断伸度及び引張破断強度を測定した。引張破断伸度及び引張破断強度は、オリエンテック社製テンシロンUCT−500型を用いて測定した。表2及び表3にその結果を示す。表2及び表3に示す伸度及び強度は、3回の測定の平均値である。表2及び表3には、上記式(1)で表される引張破断伸度保持率及び上記式(2)で表される引張破断強度保持率も示す。
図1には、湿熱処理時間に対する引張破断伸度の変化を示すグラフを示す。
図2には、湿熱処理時間に対する引張破断伸度の保持率を示すグラフを示す。
図3には、湿熱処理時間に対する引張破断強度の変化を示すグラフを示す。
図4には、湿熱処理時間に対する引張破断強度の保持率を示すグラフを示す。表4には、以下の基準に基づく評価を示す。
A:湿熱破断伸度の保持率が60%以下に至る処理時間が150時間以上であった。
B:湿熱破断伸度の保持率が60%以下に至る処理時間が100時間以上150時間未満であった。
C:湿熱破断伸度の保持率が60%以下に至る処理時間が100時間未満であった。
【0089】
[極限粘度の測定]
各二軸配向フィルムについて、フェノール:テトラクロロエタン=60:40(質量比)の混合溶媒に試料0.5000g±0.0005gを溶解させ、ウベローデ粘度管を装着した自動粘度測定装置(サン電子工業製ALC−6C)を用いて、20℃における極限粘度を測定した。表4に測定結果を示す。
【0090】
[融点及び融解熱量の測定]
各試験例に係る二軸配向フィルムの融点及び融解熱量は、示差走査熱量測定装置(DSC7、PerkinElmer社製)を用いて測定した。表4に測定結果を示す。
【0091】
[厚み均一性試験]
試験例1〜12に係る二軸配向フィルムについて、フィルム内の任意の5ヶ所の厚みを測定し、得られた厚み範囲をもとにフィルムの厚み均一性を評価した。表4には、以下の基準に基づく評価を示す。
A:厚みの最大値と最小値の差が1μm未満であった。
B:厚みの最大値と最小値の差が1μm以上、3μm未満であった。
C:厚みの最大値と最小値の差が3μm以上であった。
【0092】
[試験結果]
図1〜
図4に示すグラフにおいて、湿熱処理時間に対して破断伸度及び破断強度の低下の遅い二軸配向フィルムが、湿熱処理による劣化が遅い、すなわち、より高い耐加水分解性を有するといえる。
【0093】
ブレンドフィルムではないPEN又はCo−PEN単独の樹脂である試験例10〜12においては、ブレンドフィルムである他の試験例よりも破断伸度も破断強度も低下が速かった。すなわち、試験例10〜12に係る二軸配向フィルムは耐加水分解性が低いものとなった。したがって、耐加水分解性を高めるためにはPEN及びCo−PENにはPBT及び/又はPBNをブレンドしたほうがよいと考えられる。
【0094】
PENにPBTをブレンドした試験例1においては、破断伸度及び破断強度の劣化速度を試験例10〜12よりも遅くすることができた。したがって、PENにPBT及び/又はPBNをブレンドすることによって耐加水分解性を向上させることができると考えられる。
【0095】
Co−PENにPBTを30質量%ブレンドした試験例6に係る二軸配向フィルムは、試験例10〜12と同等の耐加水分解性となった。一方、PBTを20質量%ブレンドした試験例5及びPBNを20質量%ブレンドした試験例9においては、破断伸度及び破断強度の低下速度は、試験例6よりも大幅に遅くなった。したがって、PENのみならず、Co−PENにPBT及び/又はPBNをブレンドすることによっても耐加水分解性を向上させることができると考えられる。PBT及び/又はPBNの含有率は、25質量%以下であると好ましく、20質量%以下であるとより好ましいと考えられる。
【0096】
PBT及び/又はPBNを2質量%以上ブレンドした試験例1〜5及び7〜9においても破断伸度及び破断強度の低下速度は、試験例10〜12よりも大幅に遅くなった。したがって、PBT及び/又はPBNの含有率は、1質量%以上であると好ましく、2質量%以上であるとより好ましいと考えられる。
【0097】
PBT又はPBNをブレンドした試験例1〜9を比較すると、PBT又はPBNを5質量%ブレンドした二軸配向フィルムがより高い耐加水分解性を有する傾向にある。したがって、PBT及び/又はPBNの配合割合は2質量%〜10質量%がより好ましいと考えられる。
【0098】
上述より、PEN及び/又はCo−PENの含有率は、75質量%以上であると好ましく、80質量%以上であるとより好ましいと考えらえる。PEN及び/又はCo−PENの含有率は、99質量%以下であると好ましく、98質量%以下であるとより好ましいと考えらえる。
【0099】
同じ組成である試験例2と試験例3とを比較すると、全体的に見て、融解熱量がより高い試験例3のほうが試験例2よりも劣化速度が遅い。したがって、耐加水分解性を高めるためには融解熱量、すなわち結晶化度がより高いほうが好ましいと考えられる。融解熱量は、33J/g以上であると好ましく、33.3J/g以上であるとより好ましく、33.5J/g以上であるとさらに好ましい。
【0100】
本開示の二軸配向フィルムは、上述の試験片を上述の湿熱処理条件で150時間処理したとき、引張破断伸度が20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であった。同様に、本開示の二軸配向フィルムは、上述の試験片を上述の湿熱処理条件で150時間処理したとき、破断伸度保持率が20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であった。
【0101】
本開示の二軸配向フィルムは、上述の試験片を上述の湿熱処理条件で200時間処理したとき、引張破断強度が20MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは75MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは125MPa以上であった。同様に、本開示の二軸配向フィルムは、上述の試験片を上述の湿熱処理条件で200時間処理したとき、破断強度保持率が20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であった。
【0102】
同様の組成である試験例11と試験例12とを比較すると、試験例11のほうが試験例12よりも融解熱量が若干小さいにもかかわらず、極限粘度がより高い試験例11のほうが劣化速度が遅かった。すなわち、第1のポリエステル樹脂の含有率がともに75質量%以上であり、かつ融解熱量がある程度近い値であるフィルム同士の場合は、極限粘度が高い方がより耐加水分解性が高いといえる。したがって、耐加水分解性を高めるためには極限粘度がより高いほうが好ましい。極限粘度は、0.62dl/g以上であると好ましく、0.63dl/g以上であるとより好ましく、0.64dl/g以上であるとさらに好ましい。
【0103】
試験例2〜5及び7〜9においては、二軸延伸可能な加熱温度を150℃以下とすることができた。このため、試験例2〜5及び7〜9に係る二軸配向フィルムにおいては、低い延伸温度によってフィルム厚の均一性を高めることができた。これにより、試験例2〜5及び7〜9に係る二軸配向フィルムによれば、二軸配向フィルムを有する製品をより高い精度で製造することができる。
【0104】
PBT又はPBNを5質量%配合した試験例1〜3及び8を比較すると、ポリエチレンナフタレートにテレフタル酸を共重合させると、二軸延伸を可能とする温度を低下させることができるといえる。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
本開示の二軸配向ポリエステルフィルム及び樹脂組成物、並びにこれらの製造方法は、上記実施形態及び実施例に基づいて説明されているが、上記実施形態及び実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、各開示要素(請求の範囲、明細書及び図面に記載の要素を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができる。また、本発明の請求の範囲の範囲内において、各開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0110】
本発明のさらなる課題、目的及び形態(変更形態含む)は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【0111】
本書に記載した数値範囲については、別段の記載のない場合であっても、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし範囲が本書に具体的に記載されているものと解釈されるべきである。