【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、食材の不快臭の消臭効果に優れ、かつ従来品とは異なる特性を有する蒸留酒類を提供すべく鋭意検討を行った。その結果、原料の少なくとも一部にクローブを用い、発酵醪又は酒類に対してクローブを添加して蒸留することにより、特定量のオイゲノールを含有し、食材の不快臭の消臭効果に優れた蒸留酒類を得ることに成功した。さらに、この蒸留酒類を用いて、食材の不快臭の消臭効果に優れた清酒、みりん、及び発酵調味料を得ることに成功した。
【0009】
上記した知見に基づいて提供される関連の発明は、原料の少なくとも一部にクローブを用いた蒸留酒類であって、アルコール濃度25v/v%換算で、オイゲノール含量が50〜3000mg/Lであることを特徴とする蒸留酒類である。
【0010】
本発明の蒸留酒類は、原料の少なくとも一部にクローブを用いた蒸留酒類であり、かつ特定量のオイゲノールを含有する。本発明の蒸留酒類は、クローブ特有の臭いや苦味、雑味もなく、調理の際に生成する脂質酸化臭の生成を抑制することができ、食材の不快臭の消臭効果が高い。
【0011】
ここで、「アルコール濃度」とは、エチルアルコール(エタノール)の濃度をいう。すなわち、本明細書において「アルコール」と記載した場合は、特に断らない限りエチルアルコール(エタノール)を指す。
【0012】
ここで「蒸留酒類」とは酒税法上の蒸留酒類であり、焼酎、スピリッツ等が例として挙げられる。焼酎、スピリッツの原料に特に限定はなく、また、発酵方法、蒸留方法にも特に限定は無い。焼酎には、甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)と乙類焼酎(単式蒸留焼酎)の両方が含まれる。
【0013】
関連の発明は、DPPHラジカル消去活性を指標として測定された抗酸化能が、Trolox当量で30〜2500μmol/100mLであることを特徴とする上記の蒸留酒類である。
【0014】
DPPHラジカル消去活性とは、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(1,1−Diphenyl−2−Picrylhydrazyl;以下「DPPH」と略記する)ラジカル消去活性のことを指す。DPPHラジカル消去活性を指標とする抗酸化能の測定方法は、抗酸化物質と反応してDPPHが退色することを利用し、その退色の度合いにより抗酸化力の評価を行う方法である。本方法では、その値が大きいほど抗酸化能が高いことを示す。
【0015】
そして本発明の蒸留酒類は、DPPHラジカル消去活性を指標として測定された抗酸化能が、Trolox当量で30〜2500μmol/100mLである。かかる構成により、本発明の蒸留酒類は、高い抗酸化能を有し、調理の際に生成する脂質酸化臭の生成を抑制することができ、食材の不快臭の消臭効果が特に高いものとなる。
【0016】
関連の発明は、蒸留酒類が、焼酎又はスピリッツである上記の蒸留酒類である。
【0017】
かかる構成により、特定量のオイゲノールを含有し、クローブ特有の臭いや苦味、雑味もなく、調理の際に生成する脂質酸化臭の生成を抑制することができ、食材の不快臭の消臭効果が高い焼酎又はスピリッツが提供される。
【0018】
関連の発明は、上記の蒸留酒類を含有することを特徴とする清酒である。
【0019】
関連の発明は、上記の蒸留酒類を含有することを特徴とするみりんである。
【0020】
本発明の清酒又はみりんは、原料の少なくとも一部にクローブを用いた上記の蒸留酒類を含有するものである。かかる構成により、特定量のオイゲノールを含有し、クローブ特有の臭いや苦味、雑味もなく、調理の際に生成する脂質酸化臭の生成を抑制することができ、食材の不快臭の消臭効果が高い清酒又はみりんが提供される。
【0021】
本発明における「清酒」とは、酒税法でいう醸造酒類の中の清酒のことであり、例えば以下に掲げる酒類でアルコール分が22度(22v/v%)未満のものである。
(1)米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの。
(2)米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの。但し、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む)の重量の100分の50を超えないものに限る。
(3)清酒に清酒かすを加えて、こしたもの。
【0022】
本発明における「みりん」とは、酒税法でいう混成酒類の中のみりんのことであり、例えば以下に掲げる酒類でアルコール分が15度(15v/v%)未満のもの(エキス分が40度以上のものその他政令で定めるものに限る。)である。
(1)米及び米こうじにしょうちゅう又はアルコールを加えて、こしたもの。
(2)米、米こうじ及びしょうちゅう又はアルコールにみりんその他政令で定める物品を加えて、こしたもの。
(3)みりんにしょうちゅう又はアルコールを加えたもの。
(4)みりんにみりんかすを加えて、こしたもの。
【0023】
関連の発明は、上記の蒸留酒類、上記の清酒、又は上記のみりんを含有することを特徴とする発酵調味料である。
【0024】
本発明の発酵調味料は、原料の少なくとも一部にクローブを用いた上記の蒸留酒類、清酒、又はみりんを含有するものである。かかる構成により、特定量のオイゲノールを含有し、クローブ特有の臭いや苦味、雑味もなく、調理の際に生成する脂質酸化臭の生成を抑制することができ、食材の不快臭の消臭効果が高い発酵調味料が提供される。
【0025】
関連の発明は、上記の蒸留酒類、上記の清酒、上記のみりん、又は上記の発酵調味料を食材に接触させ、加熱する工程を含むことを特徴とする食材の処理方法である。
【0026】
本発明は食材の処理方法に係るものであり、上記した本発明の蒸留酒類、清酒、みりん又は発酵調味料を食材に接触させ、加熱する工程を含む。本発明では、特定量のオイゲノールを含有し、食材の不快臭の消臭効果が高い蒸留酒類、清酒、みりん又は発酵調味料を用いるので、少量の使用で食材の不快臭を消臭することができる。
【0027】
関連の発明は、上記の食材の処理方法によって食材を処理し、前記食材の不快臭を消臭することを特徴とする不快臭の消臭方法である。
【0028】
また関連の発明は、前記食材が、畜肉又は魚介類であることを特徴とする上記の不快臭の消臭方法である。
【0029】
本発明の不快臭の消臭方法は、上記した本発明の蒸留酒類、清酒、みりん又は発酵調味料によって畜肉、魚介類等の食材を処理し、これらの食材から発生する不快臭を消臭するものである。本発明によれば、食材の不快臭を効率的に消臭することができる。
【0030】
関連の発明は、上記の蒸留酒類、上記の清酒、上記のみりん、又は上記の発酵調味料を食材に接触させることによって加工食品を得ることを特徴とする加工食品の製造方法である。
【0031】
本発明は加工食品の製造方法に係るものであり、上記した本発明の蒸留酒類、清酒、みりん又は発酵調味料を食材に接触させることによって加工食品を得るものである。本発明によれば、不快臭が極めて少ない高品質の加工食品が提供される。
【0032】
前記食材が、畜肉又は魚介類である構成が推奨される。
【0033】
請求項1に記載の発明は、食材の不快臭の消臭方法であって、原料の少なくとも一部にクローブを用い
て蒸留した蒸留酒類であって、アルコール濃度25v/v%換算で、オイゲノール含量が50〜3000mg/Lである蒸留酒類を用いるものであり、前記蒸留酒類を前記食材に接触させ、加熱する工程を含み、前記食材の脂質酸化臭を抑制するものであることを特徴とする不快臭の消臭方法である。
【0034】
請求項2に記載の発明は、前記蒸留酒類における、DPPHラジカル消去活性を指標として測定された抗酸化能が、Trolox当量で30〜2500μmol/100mLであることを特徴とする請求項1に記載の不快臭の消臭方法である。
【0035】
請求項3に記載の発明は、前記蒸留酒類が、焼酎又はスピリッツであることを特徴とする請求項1又は2に記載の不快臭の消臭方法である。
【0036】
請求項4に記載の発明は、前記蒸留酒類は、減圧蒸留されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不快臭の消臭方法である。
【0037】
請求項
5に記載の発明は、食材の不快臭の消臭方法であって、請求項1〜4のいずれかで定義された蒸留酒類を含有する発酵調味料を用いるものであり、前記発酵調味料を前記食材に接触させ、加熱する工程を含み、前記食材の脂質酸化臭を抑制するものであることを特徴とする不快臭の消臭方法である。
【0038】
請求項
6に記載の発明は、前記食材が、畜肉又は魚介類であることを特徴とする請求項1〜
5のいずれかに記載の不快臭の消臭方法である。
【0039】
請求項
7に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかで定義された蒸留酒類
、又は請求項
5で定義された発酵調味料を食材に接触させることによって、前記食材の脂質酸化臭が抑えられた加工食品を得ることを特徴とする加工食品の製造方法である。
【0040】
請求項
8に記載の発明は、前記食材は、畜肉又は魚介類であることを特徴とする請求項
7に記載の加工食品の製造方法である。