(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.偏光子の製造方法の概要
本発明の製造方法は、二色性物質を含む樹脂フィルムを部分的に脱色して非偏光部を形成することを含む。上記樹脂フィルム(偏光子)では、偏光子の吸収軸方向に対し、脱色が進みやすくなる傾向がある(以下、脱色異方性ともいう)。本発明では、脱色異方性を考慮して、脱色処理が施される部分の平面形状を設計する。具体的には、上記脱色処理部の平面形状は非偏光部の平面形状を二色性物質を含む樹脂フィルムの対向する2辺の方向と平行な方向に伸長または縮小した形状である。脱色処理部がこのような平面形状であることにより、脱色異方性を補正し、所望の非偏光部をより精密に形成することができる。
【0010】
上記対向する2辺の方向は、樹脂フィルムの長手方向であることが好ましい。上記の通り、樹脂フィルム(偏光子)では、偏光子の吸収軸方向(代表的には、偏光フィルム積層体の長手方向)に対し、脱色が進みやすくなる傾向がある。脱色処理部の平面形状を樹脂フィルムの長手方向と平行な方向に伸長または縮小した形状とすることにより、本発明の効果がより顕著に得られ得る。
【0011】
1つの実施形態においては、脱色処理部の平面形状は、上記非偏光部の形状を樹脂フィルムの長手方向と平行な方向に縮小した形状である。この実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図1はこの実施形態の樹脂フィルムの概略平面図である。図示例では、脱色処理部11の平面形状は、樹脂フィルム10の長手方向と平行な方向(
図1の矢印方向)に対し、真円であることが所望される非偏光部の形状(寸法)を縮小した形状(横長楕円形)である。上記の通り、脱色処理部11の平面形状は、代表的には、樹脂フィルム(偏光子)の脱色異方性を考慮して設計される。すなわち、図示例では、樹脂フィルム(偏光子)が樹脂フィルムの長手方向(
図1の矢印方向)に脱色されやすくなることを考慮して、所望の非偏光部の平面形状(すなわち、真円)を長手方向と平行な方向に縮小した形状(すなわち、横長楕円形)の脱色処理部が設計されている。このような平面形状になるよう、樹脂フィルム(偏光子)に脱色処理が施されることにより、所望の形状の非偏光部をより精密に形成することができる。なお、図示例の楕円形状は、本発明の特徴を明瞭にするため、誇張されている。
【0012】
最終的な非偏光部の形状は、小円形(真円)以外に、目的に応じて任意の適切な形状が設計され得る。具体例としては、円形、楕円形、正方形、矩形、ひし形等が挙げられる。
【0013】
脱色処理部の平面形状を非偏光部の形状に対してどの程度伸長または縮小するかは、様々な条件が考慮され得る。例えば、二色性物質を含む樹脂フィルムの厚み、樹脂フィルムの延伸倍率、搬送時の速度等を考慮して、設計され得る。また、後述するように、貫通孔を有する表面保護フィルムを用いる場合には、さらに、表面保護フィルムに用いられる高分子フィルムの材質、硬さ、表面保護フィルムの厚み等も考慮され得る。
【0014】
A−1.二色性物質を含む樹脂フィルム
二色性物質を含む樹脂フィルムは任意の適切な方法により作製することができる。具体的には、樹脂フィルムに、膨潤処理、延伸処理、二色性物質による染色処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等の各種処理を施すことにより作製され得る。これらの処理を施すことにより、二色性物質を含む樹脂フィルムは偏光子として機能し得る。なお、各種処理を施す際、樹脂フィルムは、基材上に形成された樹脂層であってもよい。基材と樹脂層との積層体は、例えば、上記樹脂フィルムの形成材料を含む塗布液を基材に塗布する方法、基材に樹脂フィルムを積層する方法等により得ることができる。
【0015】
上記樹脂フィルムを形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)が用いられる。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%未満であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0016】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0017】
上記染色処理は、代表的には二色性物質を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、二色性物質を含む染色液に樹脂フィルムを浸漬させる方法、樹脂フィルムに当該染色液を塗工する方法、当該染色液を樹脂フィルムに噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液に樹脂フィルムを浸漬させる方法である。二色性物質が良好に吸着し得るからである。
【0018】
上記二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくはヨウ素が用いられる。後述する塩基性溶液との接触により、非偏光部が良好に形成され得るからである。
【0019】
二色性物質としてヨウ素を用いる場合、上記染色液としては、ヨウ素水溶液が好ましく用いられる。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.04重量部〜5.0重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウムが好ましく用いられる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.3重量部〜15重量部である。
【0020】
上記延伸処理において、樹脂フィルムは、代表的には3倍〜7倍に一軸延伸される。なお、延伸方向は、得られる偏光子の吸収軸方向に対応し得る。
【0021】
樹脂フィルム(偏光子)の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、代表的には0.5μm以上80μm以下である。偏光子の厚みは、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは18μm以下、特に好ましくは12μm以下、最も好ましくは8μm未満である。一方、厚みは、好ましくは1μm以上である。厚みが薄いほど、脱色工程をより容易に行うことができる。具体的には、脱色工程を後述する塩基性溶液との接触により行う場合、より短時間に非偏光部が形成され得る。また、塩基性溶液を接触させた部分の厚みが他の部分よりも薄くなる場合がある。樹脂フィルムの厚みが薄いことにより、塩基性溶液との接触部と他の部位との厚みの差を小さくすることができ、偏光板の保護フィルム等の他の構成部材との貼り合せを良好に行うことができる。
【0022】
B.脱色工程(塩基性溶液との接触)
二色性物質を含む樹脂フィルムは、該樹脂フィルムを部分的に脱色する工程に供される。二色性物質を含む樹脂フィルム(偏光子)の脱色により非偏光部が形成され得る。脱色処理は、樹脂フィルムに塩基性溶液を接触させることを含む。上記の通り、脱色処理部(例えば、塩基性溶液を接触させる場合、塩基性溶液を接触させる部分)の平面形状は、脱色異方性を考慮した上で、設計され得る。その結果、塩基性溶液を接触させることにより形成された非偏光部の形状を、より精密に所望の形状とすることができる。
【0023】
樹脂フィルムと塩基性溶液との接触は、任意の適切な手段により行われ得る。代表例としては、樹脂フィルムへの塩基性溶液の滴下、塗工(例えば、ディスペンサーおよびインクジェット等によるマーキング、グラビア印刷等の印刷)、スプレー、または、樹脂フィルムの塩基性溶液への浸漬等が挙げられる。
【0024】
上記塩基性化合物としては、任意の適切な塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が用いられ、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが用いられる。二色性物質を効率良くイオン化することができ、より簡便に非偏光部を形成することができる。これらの塩基性化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
塩基性溶液の溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。具体的には、水、エタノール、メタノール等のアルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、および、これらの混合溶媒が挙げられる。これらの中でも、イオン化した二色性物質が良好に溶媒へと移行し得ることから、水、アルコールが好ましく用いられる。
【0026】
塩基性溶液の濃度は、例えば0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、より好ましくは0.1N〜2.5Nである。濃度がこのような範囲であれば、所望の非偏光部が良好に形成され得る。
【0027】
塩基性溶液の液温は、例えば20℃〜50℃である。塩基性溶液の接触時間は、例えば、樹脂フィルムの厚み、塩基性溶液に含まれる塩基性化合物の種類や濃度に応じて設定される。接触時間は、例えば5秒〜30分であり、好ましくは5秒〜5分である。
【0028】
1つの実施形態においては、上記二色性物質を含む樹脂フィルムは上記脱色処理部以外の部分が保護された状態で脱色処理に供される。樹脂フィルムを保護する手段としては、例えば、表面保護フィルム、フォトレジスト等の任意の適切な保護材が挙げられる。保護材としては、脱色処理部に対応する貫通孔を有する表面保護フィルムが好適に用いられる。この実施形態において、上記樹脂フィルムおよび表面保護フィルムは長尺状であることが好ましい。長尺状であることにより、脱色、および、他の工程を浸漬により連続して行うことができ、偏光子の生産性がさらに向上するだけではなく、本発明の効果がより顕著に得られる。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。
【0029】
C.偏光フィルム積層体の作製
1つの実施形態においては、偏光フィルム積層体が用いられる。この偏光フィルム積層体は、二色性物質を含む樹脂フィルムの一方の面に、貫通孔を有する表面保護フィルム(以下、第1の表面保護フィルムともいう)を積層することにより形成される。
図2は、本発明の実施形態に用いられる偏光フィルム積層体の概略断面図である。偏光フィルム積層体100においては、上記表面保護フィルム50の貫通孔61により二色性物質を含む樹脂フィルム10が露出した露出部51が規定される。偏光フィルム積層体を用いることにより、樹脂フィルムの所定の部分(すなわち、露出部)のみを選択的に脱色することができる。この実施形態では、貫通孔(すなわち、脱色処理を施される部分)の平面形状は、非偏光部の平面形状を樹脂フィルムの対向する2辺の方向と平行な方向に伸長または縮小した形状である。このような形状にすることにより、脱色異方性が補正され、所望の形状の非偏光部をより精密に形成することができる。
【0030】
また、偏光フィルム積層体を用いることにより、部分的な脱色処理を浸漬により良好に行うことができる。具体的には、塩基性溶液に浸漬することにより、偏光フィルム積層体における露出部(脱色処理部)のみが塩基性溶液と接触する。例えば、上記樹脂フィルムが二色性物質としてヨウ素を含む場合、樹脂フィルムの脱色処理部と塩基性溶液とを接触させることにより、脱色処理部のヨウ素含有量を低減させ、結果として、脱色処理部のみに選択的に非偏光部を形成することができる。さらに、上記の通り、脱色処理部(塩基性溶液を接触させる部分)の平面形状は、偏光子(樹脂フィルム)の脱色異方性を考慮したうえで設計され得る。そのため、所望の形状の非偏光部を精密に形成することができる。また、偏光フィルム積層体が長尺状である場合、
図3に示すように、偏光フィルム積層体を搬送しながら上記脱色処理を行うことができるので、製造効率が顕著に向上し得る。このように、本実施形態によれば、複雑な操作を伴うことなく非常に高い製造効率で、高精度に偏光子の所定の部分に選択的に非偏光部を形成することができる。
【0031】
C−1.貫通孔を有する表面保護フィルム
貫通孔を有する表面保護フィルムは、任意の適切な方法により作製され得る。例えば、任意の適切な高分子フィルムと、粘着剤層と、必要に応じてセパレーターとを有する粘着フィルムに、貫通孔を形成することにより作製され得る。このような貫通孔を有する粘着フィルムの詳細は、例えば、特開2016−27136号公報に記載されており、この記載は本明細書に参考として援用される。
【0032】
上記の通り、1つの実施形態においては、表面保護フィルムは長尺状である。長尺状である場合、例えば、その長手方向および/または幅方向に所定の間隔で貫通孔が形成され得る。長尺状である表面保護フィルムでの貫通孔の配置については、特開2016−027135号公報、特開2016−027136号公報、特開2016−027137号公報、特開2016−027138号公報、特開2016−027139号公報に記載されており、この記載は本明細書に参考として援用される。
【0033】
貫通孔(すなわち、脱色処理が施される部分)の平面形状は、上記非偏光部の形状を樹脂フィルムの対向する2辺の方向と平行な方向に伸長または縮小した形状である。このような形状にすることにより、脱色異方性が補正され、所望の形状の非偏光部をより精密に形成することができる。また、貫通孔を有する表面保護フィルムを用いる場合、表面保護フィルムへの貫通孔の形成、偏光フィルム積層体の形成、表面保護フィルムおよび偏光フィルム積層体の搬送により、貫通孔の形状が所望の形状(例えば、非偏光部の形状に対応する形状)から変形し得る(以下、貫通孔の変形ともいう)。貫通孔を上記の形状にすることにより、貫通孔の変形による悪影響(例えば、設計した貫通孔の平面形状と実際に形成された非偏光部の形状との不整合)をも防止し得る。
【0034】
上記の通り、対向する2辺の方向は、樹脂フィルムの長手方向であることが好ましい。樹脂フィルムおよび表面保護フィルムが長尺状である場合、偏光フィルム積層体は、長手方向に搬送され、処理に供され得る。そのため、長手方向において貫通孔が変形しやすくなる傾向がある。上記の形状にすることにより、貫通孔の変形による悪影響を防止する効果がより発揮され得る。
【0035】
貫通孔61は、例えば、切断により形成され得る。切断方法としては、例えば、トムソン刃、ピナクル刃等の切断刃(打抜き型)、ウォータージェット等を用いて機械的に切断する方法、レーザー光を照射して切断する方法が挙げられる。貫通孔61の形状に合わせて調整した刃型を用いて打ち抜くことが好ましい。
【0036】
切断により貫通孔を形成する際、表面保護フィルムの片側には当て材を当てることが好ましい。具体的には、切断方向終端側の表面保護フィルム表面に当て材を当てる。当て材を用いることで、切断後に表面保護フィルムから当て材を剥離する際、穿孔カスも同時に除去し得る。具体的には、穿孔カスが当て材に付着した状態で、当て材を表面保護フィルムから剥離し得る。その結果、生産性が格段に向上し得る。また、当て材を用いることで、切断による表面保護フィルムの変形を抑制することができる。例えば、切断刃で切断する場合、特に粘着剤層の変形を抑制することができる。
【0037】
表面保護フィルム50の厚みは、好ましくは20μm〜250μmであり、より好ましくは30μm〜150μmである。表面保護フィルムの厚みが上記範囲であれば、貫通孔が厚み方向に変形することによる悪影響(例えば、浸漬処理時の処理液の接触不良)を防止し得る。表面保護フィルムの厚みが250μmを超えると、搬送しながら浸漬により脱色する場合、露出部に処理液を十分に接触させることができず、所望の非偏光部の形状と実際に形成された非偏光部の形状とが不整合となる場合がある。
【0038】
上記高分子フィルムは、任意の適切なフィルムが用いられる。高分子フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。貫通孔の所定の形状を維持するという観点から、高分子フィルムとして、硬さ(例えば、弾性率)が高いフィルムを用いてもよく、搬送等により貫通孔を適度に変形させるという観点から、柔軟性に優れた高分子フィルムを用いてもよい。
【0039】
高分子フィルムの厚みは、代表的には20μm〜250μmであり、好ましくは20μm〜100μmである。このような厚みであれば、搬送しながら浸漬処理を行う場合、露出部への処理液の接触不良を防止し得る。
【0040】
粘着剤層を形成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。粘着剤のベース樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。耐薬品性、浸漬時における処理液の浸入を防止するための密着性、被着体への自由度等の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。粘着剤に含まれ得る架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物が挙げられる。粘着剤は、例えばシランカップリング剤を含んでいてもよい。粘着剤の配合処方は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0041】
粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜60μmであり、より好ましくは3μm〜30μmである。厚みが薄すぎると、粘着性が不十分となり、粘着界面に気泡等が入り込む場合がある。厚みが厚すぎると、粘着剤がはみ出すなどの不具合が生じやすくなる。
【0042】
C−2.樹脂フィルムと表面保護フィルムとの積層
上記樹脂フィルムと上記表面保護フィルムとは、任意の適切な方法により剥離可能に積層され得る。例えば、上記樹脂フィルムの一方の面に、高分子フィルムと粘着剤層とを有する表面保護フィルムを、粘着剤層を介して貼り付けることにより、偏光フィルム積層体を作製することができる。積層は、代表的には、ロールトゥロールにより行われ得る。ここで、「ロールトゥロール」とは、ロール状のフィルムを搬送しながら互いの長尺方向を揃えて積層することをいう。
【0043】
上記樹脂フィルムの上記表面保護フィルムが積層されていない面には、この表面保護フィルム以外の表面保護フィルム(以下、第2の表面保護フィルムともいう)が積層されていてもよい。具体的には、偏光フィルム積層体100の表面保護フィルム50が積層されていない面に第2の表面保護フィルム30が積層され得る。第2の表面保護フィルムが積層されていることにより、後述の脱色処理において樹脂フィルムをさらに適切に保護することが可能となり、結果として、浸漬による脱色をより良好に行うことができる。
【0044】
第2の表面保護フィルムは、貫通孔が形成されていない点を除いて、上記第1の表面保護フィルムで例示したフィルムを用いることができる。第2の表面保護フィルムが積層されている場合、上記第1の表面保護フィルムを形成する材料と第2の表面保護フィルムを形成する材料とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0045】
D.他の工程
本発明の偏光子の製造方法は、必要に応じて、脱色以外の任意の適切な工程をさらに含み得る。例えば、酸処理等のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させる工程、および、上記塩基性溶液および/または任意の処理液の除去、任意の保護材の除去等が挙げられる。これらの工程は、偏光子の製造方法の任意の適切な段階で行われる。
【0046】
上記脱色工程で、樹脂フィルムに塩基性溶液を接触させることにより、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が残存し得る。また、樹脂フィルムに塩基性溶液を接触させることにより、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩が生成し得る。これらは水酸化物イオンを生成し得、生成した水酸化物イオンは、接触部周囲に存在する二色性物質(例えば、ヨウ素錯体)に作用(分解・還元)して、非偏光領域(低濃度領域)を広げ得る。したがって、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることにより、経時的に非偏光領域が広がるのを抑制して、所望の非偏光部形状を維持し得る。塩基性溶液を用いた脱色およびアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させる工程の詳細は、例えば、特開2015−215609号公報、特開2015−215610号公報、および、特開2015−215611号公報に記載されており、この記載は本明細書に参考として援用される。
【0047】
上記塩基性溶液および/または任意の処理液の除去方法の具体例としては、洗浄、ウエス等による拭き取り除去、吸引除去、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。洗浄に用いられる洗浄液は、例えば、水(純水)、メタノール、エタノール等のアルコール、および、これらの混合液等が挙げられる。好ましくは、水が用いられる。洗浄回数は特に限定されず、複数回行ってもよい。乾燥により除去する場合、その乾燥温度は、例えば20℃〜100℃である。
【0048】
保護手段を用いて樹脂フィルムを保護する場合、上記処理工程を経た後、保護手段は除去され得る。具体的には、表面保護フィルムおよび任意の第2の表面保護フィルムは、偏光フィルム積層体から除去される。代表的には、上記のようにして非偏光部が形成された後、表面保護フィルムおよび任意の第2の表面保護フィルムは剥離除去される。
【0049】
上記の記載から明らかなように、本発明の実施形態の製造方法によれば、長尺状の偏光フィルム積層体をその長尺方向に搬送しながら、当該二色性物質を含む樹脂フィルムの脱色処理、および、表面保護フィルムの剥離を連続的に行うことができる。必要に応じて、偏光フィルム積層体の作製も長尺状の二色性物質を含む樹脂フィルム(偏光子)の作製から連続して行うことができる。すなわち、本発明の実施形態による製造方法は、非偏光部を有する長尺状の偏光子をロール搬送しながら連続的に製造することができる。したがって、本発明の実施形態による製造方法は、非偏光部を有する長尺状の偏光子を非常に優れた製造効率で作製することができる。
【0050】
E.非偏光部を有する偏光子
上記の製造方法により、非偏光部を有する偏光子が得られる。上記の製造方法により得られた偏光子では、所望の形状の非偏光部がより精密に形成されている。
【0051】
上記非偏光部は、代表的には、偏光子(樹脂フィルム)の他の部位よりも二色性物質の含有量が低い部位(低濃度部)である。このような構成によれば、機械的に(例えば、彫刻刃打抜き、プロッター、ウォータージェット等を用いて機械的に抜き落とす方法により)、貫通穴が形成されている場合に比べて、クラック、デラミ(層間剥離)、糊はみ出し等の品質上の問題が回避される。また、非偏光部は二色性物質自体の含有量が低いので、レーザー光等により二色性物質を分解して非偏光部が形成されている場合に比べて、非偏光部の透明性が良好に維持される。
【0052】
非偏光部の透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは90%以上である。このような透過率であれば、所望の透明性を確保することができる。例えば、画像表示装置のカメラ部に非偏光部を対応させた場合に、カメラの撮影性能に対する悪影響を防止することができる。
【0053】
偏光子(非偏光部を除く)は、好ましくは、波長380nm〜780nmの範囲で吸収二色性を示す。偏光子(非偏光部を除く)の単体透過率(Ts)は、好ましくは39%以上、より好ましくは39.5%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは40.5%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実用的な上限は46%である。また、単体透過率(Ts)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、製品名:V7100)を用いて測定することができる。偏光子(非偏光部を除く)の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0055】
[実施例]
ポリエチレン系フィルム(厚み38μm)/粘着剤層(厚み5μm)/セパレーター(厚み25μm)の構成を有する長尺状の積層体(幅:1200mm、長さ:43m)を準備した。この積層体のポリエチレン系フィルム面に、エステル系フィルム(厚み38μm)/粘着剤層(厚み5μm)の構成を有するキャリアフィルム(幅:1200mm、長さ:43m)をロールトゥロールで貼り合わせ、キャリアフィルム付積層体を作製した。
次いで、打抜装置を用いてキャリアフィルム付積層体に対してセパレーター面より深さ80μmの切断刃を入れ、キャリアフィルムが貫通しないようにハーフカットした。なお、切断刃の形状は、ポリエチレン系フィルムの長尺方向と垂直な方向に対し、直径2.8mmの円である非偏光部を縮小した形状(短径(MD方向)2.76mm、長径(TD方向)2.80mmである横長楕円形)とした。
続いて、積層体からキャリアフィルムを剥離し表面保護フィルムを得た。
【0056】
得られた表面保護フィルムについて、切断による穿孔カスがキャリアフィルムの剥離の際に除去されるか否かを確認した。得られた表面保護フィルムでは、キャリアフィルムを剥離する際に、ハーフカットにより生じた穿孔カスが完全に除去された。
【0057】
[偏光板の作製]
基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.5重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
続いて、積層体のPVA系樹脂層表面に、PVA系樹脂水溶液(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z−200」、樹脂濃度:3重量%)を塗布して保護フィルム(厚み25μm)を貼り合わせ、これを60℃に維持したオーブンで5分間加熱した。その後、基材をPVA系樹脂層から剥離し、透過率42.3%、厚み5μmの偏光子を有する偏光板(幅:1200mm、長さ:43m)を得た。
【0058】
[透明部の形成]
得られた偏光板の偏光子側に、実施例で得られた表面保護フィルムを、セパレーターを剥離してロールトゥロールで貼り合わせ、積層体を得た。
得られた積層体を搬送しながら、1mol/L(1N)の水酸化ナトリウム水溶液に30秒浸漬し、次いで、1mol/L(1N)の塩酸に10秒浸漬した。次いで、60℃で乾燥した後、表面保護フィルムを剥離し、透明部(非偏光部)が形成された偏光板(偏光子)を得た。形成された透明部の形状は、設計した非偏光部の形状である円(真円、MD方向:2.80mm、TD方向2.80mm)であった。
形成した透明部について、透過率(Ts)の測定を行った。透過率は、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、製品名:V7100)を用いて測定した。透過率(T)は、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。透明部の透過率は、93.3%であり、所定の部分の脱色を十分に行うことができた。
【0059】
(比較例)
切断刃の形状が直径2.8mmの真円である打抜装置を用いて表面保護フィルムを作製した以外は実施例と同様にして透明部(非偏光部)が形成された偏光板(偏光子)を得た。
形成した透明部について、実施例と同様に透過率(Ts)の測定を行った。透明部の透過率は、93.3%であり、所定の部分の脱色を十分に行うことができた。
形成された透明部の形状は、設計した真円である非偏光部の形状(直径2.8mm)に対し、TD方向に長い楕円形状(短径(MD方向):2.80mm、長径(TD方向):2.84mm)であった。