特許第6945296号(P6945296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945296
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】ネットワークエレメントシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/717 20130101AFI20210927BHJP
   H04W 92/14 20090101ALI20210927BHJP
   H04W 88/14 20090101ALI20210927BHJP
   H04W 88/12 20090101ALI20210927BHJP
   H04W 88/16 20090101ALI20210927BHJP
   H04L 12/70 20130101ALI20210927BHJP
【FI】
   H04L12/717
   H04W92/14
   H04W88/14
   H04W88/12
   H04W88/16
   H04L12/70 D
【請求項の数】26
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-235090(P2016-235090)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-143507(P2017-143507A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2019年11月29日
(31)【優先権主張番号】14/959,422
(32)【優先日】2015年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516363961
【氏名又は名称】クォルトゥス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Quortus Limited
(73)【特許権者】
【識別番号】595042184
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サリー
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リキ ベンジャミン ドルビー
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー フォスター
【審査官】 大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0117408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/717
H04W 92/14
H04W 88/14
H04W 88/12
H04W 88/16
H04L 12/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モビリティマネジエメントエンティティ(MME)を有する無線通信ネットワークにおいて用いられるネットワークエレメントシステムであって、前記ネットワークエレメントシステムは、
第1制御エンティティと、
第2制御エンティティと、
第1パケット処理エンジン(PPE)と、
第2パケット処理エンジン(PPE)とを備え、
ユーザプレーントラフィックが前記第1PPEおよび前記第2PPEを介して送信されるように、前記第1制御エンティティは前記第1PPEを制御するよう構成され、前記第2制御エンティティは前記第2PPEを制御するよう構成されており、
前記第1制御エンティティは、デフォルトベアラの子でありボイスまたはビデオデータを送信するための特定のサービス品質特性を有する専用ベアラ要求を、中央ゲートウェイエンティティよりむしろ前記第2制御エンティティに送信するよう構成されており、
前記第2制御エンティティは、前記第1制御エンティティによって前記第2制御エンティティに送信された前記専用ベアラ要求を受け入れるよう構成され、前記第2制御エンティティにて終了するデフォルトベアラを最初にセットアップすることなく前記第2制御エンティティにて終了する専用ベアラをセットアップできるようになっており、
前記第1制御エンティティおよび前記第2制御エンティティは前記無線通信ネットワークのコアネットワーク内に位置し、一方、前記第1PPEおよび前記第2PPEは前記コアネットワーク外に位置することを特徴としたネットワークエレメントシステム。
【請求項2】
前記第1制御エンティティは、前記第1PPEのアドレスを含む一式の制御メッセージを前記第2制御エンティティに送信し、前記第1PPEおよび前記第2PPE間のトランスポートトンネルをセットアップするよう構成され、
前記第2制御エンティティは、前記第1PPEおよび前記第2PPEを介してユーザプレーントラフィックを送信するために、前記第2PPEのアドレスを返すよう構成されることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項3】
前記第1PPEおよび前記第2PPEは、第1ロジカルPPEエレメントおよび第2ロジカルPPEエレメントとして、単一のネットワークエレメントに一体化されることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項4】
前記単一のネットワークエレメントにおいて、前記第1ロジカルPPEエレメントおよび前記第2ロジカルPPEエレメント間には外部インターフェースが存在しないことを特徴とする請求項3に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項5】
前記第1PPEおよび前記第2PPEは、単一のネットワークエレメントに一体化され、インターネットプロトコル(IP)またはレイヤ2トンネルを用いて直接相互通信するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項6】
前記単一のネットワークエレメントは、前記第1制御エンティティと通信するための第1制御インターフェースと、前記第2制御エンティティと通信するための第2制御インターフェースとを備えることを特徴とする請求項3に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項7】
前記第1PPEおよび前記第2PPEは、第1ロジカルPPEエレメントおよび第2ロジカルPPEエレメントとして、eNodeBに一体化されるか、またはeNodeBとひとまとめにされることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項8】
前記eNodeBと、前記第1PPEおよび前記第2PPEは、インターネットプロトコル(IP)またはレイヤ2トンネルを用いて直接相互通信するよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項9】
前記eNodeBと前記第1ロジカルPPEエレメントと前記第2ロジカルPPEエレメント間には外部インターフェースが存在しないことを特徴とする請求項7に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項10】
前記第1制御エンティティおよび前記第2制御エンティティは、単一の制御ネットワークエレメントに一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項11】
前記単一の制御ネットワークエレメントは、前記第1PPEと通信するための第1制御インターフェースと、前記第2PPEと通信するための第2制御インターフェースとを備えることを特徴とする請求項10に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項12】
前記単一の制御ネットワークエレメントは、前記第1PPEおよび前記第2PPEが一体化された単一のネットワークエンティティと通信するための単一の制御インターフェースを備えることを特徴とする請求項10に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項13】
前記第1制御エンティティは、前記コアネットワーク内において、前記第1PPEに合法的傍受エンティティに対してユーザトラフィックをミラーリングさせる働きをすることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項14】
前記第1PPEは、ローカルトラフィック分析エンティティに対してユーザトラフィックをミラーリングする働きをすることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項15】
前記ネットワークエレメントシステムはさらに、前記コアネットワーク内に位置する増設第2PPEを備えることを特徴とし、前記第1制御エンティティは、前記第2PPEおよび前記増設第2PPE間に複数のベアラをセットアップするよう構成されていることを特徴とし、前記第1制御エンティティは、どのベアラがユーザプレーントラフィックに用いられているかを決定する規則を実施するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項16】
前記ネットワークエレメントシステムはさらに、前記コアネットワーク外に存在するコンテンツ配信ネットワーク(CDN)サーバまたはドメイン名システム(DNS)サーバを備えることを特徴とし、前記第1制御エンティティは、前記コアネットワークを介してよりむしろ、前記第1PPEおよび前記第2PPEを介して前記CDNサーバまたは前記DNSサーバに関連ユーザトラフィックを送信する規則を実施するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項17】
前記第1制御エンティティは、前記CDNサーバまたは前記DNSサーバに送信されたトラフィックのパケット数統計を収集するよう構成されていることを特徴とする請求項16に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項18】
前記ネットワークエレメントシステムはさらに、前記第2PPEと、前記コアネットワーク内に位置するゲートウェイエンティティとに関連付けられた外部ネットワークを備えることを特徴とし、前記第1制御エンティティまたは前記第1PPEは、前記外部ネットワークへの接続を要求するデバイスの位置によって、ユーザトラフィックを、前記第2PPEに送信するかまたは前記コアネットワーク内に位置する前記ゲートウェイエンティティに送信するかを選択するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項19】
前記第1制御エンティティは、前記外部ネットワークにローカルなデバイスから送出された前記外部ネットワークへの接続要求を解決し、前記第2制御エンティティに照会するよう構成されていることを特徴とし、前記第2制御エンティティは、前記コアネットワークに入ることなく前記外部ネットワークにトラフィックを送信するために、前記第2PPEを選択するよう構成されていることを特徴とする請求項18に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項20】
前記第1制御エンティティは、サービングゲートウェイ(SGW)制御エンティティを有し、
前記第2制御エンティティは、パケット配信ネットワーク(PDN)ゲートウェイ(PGW)を有し、
前記第1PPEは、サービングゲートウェイPPEを有し、
前記第2PPEは、PDNゲートウェイPPEを有することを特徴とする請求項1に記載のネットワークエレメントシステム。
【請求項21】
請求項1に記載のネットワークエレメントシステムにおいて用いられる第1PPE。
【請求項22】
請求項1に記載のネットワークエレメントシステムにおいて用いられる第2PPE。
【請求項23】
請求項21に記載の第1PPEと、請求項22に記載の第2PPEとを備えるネットワークエンティティ。
【請求項24】
請求項1に記載のネットワークエレメントシステムにおいて用いられる第1制御エンティティ。
【請求項25】
請求項1に記載のネットワークエレメントシステムにおいて用いられる第2制御エンティティ。
【請求項26】
請求項24に記載の第1制御エンティティと、請求項25に記載の第2制御エンティティとを備える制御ネットワークエンティティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークエレメントシステム、ネットワークエンティティ、およびそれらに関連した方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に概略を示す種類の従来のモバイル通信アーキテクチャ10では、携帯電話等の移動ユーザ装置(すなわちUE)12は、進化型基地局、例えばLTEの場合にはevolved Node B(すなわち、eNodeB)14と通信する。eNodeB14は、コアモバイル通信ネットワークに接続し、UE12にそのコアネットワークと通信させる。図1の横破線は、図のアーキテクチャ中のコアネットワークの境界線を示す。つまり、コアネットワークのエレメントは横破線の上に示され、コアネットワーク外のエレメントは横破線の下に示されている。
【0003】
UE12はeNodeB14に接続し、前記モバイルネットワークへの無線接続を確立する。そして、UE12は、UE12とモバイルネットワーク間のネットワーク接続をセットアップするために、eNodeB14に接続されたモビリティマネジメントエンティティ(MME)16にアタッチしてもよい。一旦MME16へのネットワークアタッチが確立されたら、UE12は、コアネットワークのサービングゲートウェイ(SGW)18にデータセッションを供給するよう指示するデータサービスを、MME16に要求してもよい。SGW18は、UE12用のデータ接続性をインターネット等の外部パケットデータネットワーク(PDN)に供給する一つ以上のパケットデータネットワーク(PDN)ゲートウェイ(PGW)22、22’、22”に順に接続する。
【0004】
MME16は、UE12が最初にネットワークにアタッチする際のUE12のデータセッション要求用のSGWの選択を担い、またUE12が移動する際にはeNode間での譲渡管理を担う。また、MME16は、そのネットワークに接続しようとするユーザを確認するために、ホーム加入者サーバ(HSS)20と接続する。MME16は、eNodeB14とPGW22、22’、22”間のインターネットプロトコル(IP)トランスポートトンネル(ベアラとして知られている)のセットアップおよび解除にも関与し、UE12がアイドル状態にある場合にはUE12のページングを担う。
【0005】
SGW18は、UE12と一つ以上のPGW22、22’、22”間のユーザデータパケットの送信および転送を担う。UE12がアイドル状態にあるとき、SGW18は下りデータ経路において最後のアクティブなエレメントであるため、UE12を対象とする下りデータがSGW18に到着したら、UE12のページングをMME16によって作動させる。
【0006】
各PGW22、22’、22”は、ネットワークにおいてポリシールールおよび課金の実行を担うポリシー/課金ルール機能(PRCF)24と通信する。PGWは、UE12へのユーザIPアドレス割り当てを担う。SGW18およびPGW22、22’、22”は、自身らを識別するネットワークIPアドレスを実行させる。
【0007】
データパケットは、UE12およびPGW22、22’、22”のうち関連する一つとの間で、UE12および前記の関連PGW22、22’、22”間でセットアップされたそれぞれのIPトランスポートトンネルを通じて(SGW18を介して)送信される。これらのIPトランスポートトンネルは、UE12のデータセッションと関連づけられたeNodeB14やSGW18やPGW22、22’、22”のそれぞれのネットワークアドレス間でGPRSトンネリングプロトコル(GTP)を使用しながら、割り当てられたユーザIPアドレス付きのパケットを上記トンネルを通じてトンネリングさせることによって、ユーザのトラフィック(データパケット)を送信する。
【0008】
一旦UE12がeNodeB14を介してコアネットワークにアッタッチされたら、MME16は、UE12がアクセスを要求している外部PDNに向かうGTPトンネルをセットアップすることを、関連PGW22、22’、22”を介してSGW18に求める。UE12とPDN間のこの最初の接続はデフォルトベアラとして知られており、「最善の努力」のサービス品質(QoS)を有する。
【0009】
これを行うために、SGW18は、SGW18のネットワークIPアドレスを有するコントロールメッセージを関連PGW22、22’、22”に送信する。関連PGW22、22’、22”は、PGWのネットワークIPアドレスに応答し、このベアラまたは接続にそれらのアドレスを用いる。
【0010】
一旦これが完了したら、SGW18はMME16に対して、GTPトンネルがセットアップされたことを確認し、MME16は、SGW18のアドレスを有するUE12用の初期コンテキストをeNodeB14にてセットアップする。デフォルトベアラはその後、例えばボイスまたはビデオデータを送信するための、ユーザが要求する何らかの専用ベアラ(特定のQoS特性を有する追加的接続)を有するよう修正される。一旦これが完了したら、SGW18はMME16に対して確認し、ベアラリソースが確立される。このように、SGW18経由でUE12からPGW22、22’、22” のうち正しいものへ、データトラフィックを送信することができる。
【0011】
UE12は、二つ以上のPDNにアクセスするために、二つ以上のPGW22、22’、22”と同時に接続してもよい(図1に示すように)。PGW22、22’、22”はそれぞれ、異なったPDNに関する一つ以上のアクセスポイントネーム(APN)と関連付けられてもよい。例えば、PGW22は、公衆インターネットに関するAPNと関連付けられてもよく、PGW22’は、企業のローカルエリアネットワーク(LAN)に関するAPNと関連付けられてもよく、PGW22”は、企業のインターネットプロトコル(IP)電話回線ネットワークに関するAPNと関連付けられてもよい。または、ある一つのPGWが、複数のAPNに一度にサービスを供給してもよい。
【0012】
上記のように、それぞれ異なるPGWが少なくとも一つの異なるAPNに関連付けられる。UE12には、APNごとに異なるユーザIPアドレスが割り当てられるが、前記IPアドレスはUE12が一つ以上のPGWを経由してアクセス要求し、セッションセットアップ時間にMME16によってUE12がそれに対してディレクトされるものである。したがって、上記で述べた図1に示す例において、UE12には、公衆インターネット、企業LANおよび企業のIP電話回線ネットワークそれぞれに異なるユーザIPアドレスが割り当てられる。
【0013】
UE12が移動すると、eNodeB間の譲渡が発生する。場合によってはこれらの譲渡に続いて、ユーザトラフィックを送信するためにセットアップされたトランスポートトンネルが、異なるSGW18間および/または異なるeNodeB14間で切り替えられてもよい(より大きなネットワークでは、UE12は通常一つのSGW18に固定されるが)が、異なるAPNごとにUE12に割り当てられたユーザIPアドレスは維持される。
【0014】
上記の内容からわかるように、通信ネットワーク中のトランスポートトンネルの数が多いほど、トンネルオーバーヘッドが増えそのせいでパケットカプセル化および非カプセル化ならびにアドレスマッピングに関してユーザトラフィックの待ち時間が増える。また、同一のエンドポイントにおける同一ユーザ用の複数のユーザIPアドレスの管理に関する付加的オーバーヘッドもある。待ち時間というものは、UE12およびPGW22間のデータセッションをサポートしている端末相互間の理論接続の無線経路(UE12およびeNodeB14間)部が安定していないモバイル無線環境においては、特に懸念事項である。
【0015】
待ち時間を減らすためにモバイル通信設計者らは、いくつかのモバイルネットワーク制御エレメント(例えばSGW18および/またはPGW22)を経由せずに、トランスポートトンネルを管理しユーザトラフィックをインターネットに近づけるブレイクアウトポイントをネットワークに加えた。しかしながら、こういったブレイクアウトポイントを加えることで、合法的傍受(LI)や課金のための管理上のサポートが取り除かれるといった他の問題が生じ、基本的なモビリティ手順を必要以上に複雑にしてしまう。
【0016】
GPRS(ジェネラルパケットラジオサービス)およびUMTS(ユニバーサルモバイルテレコミュニケーションシステム)において、「直接トンネリング」または「一トンネル」方法によって、無線アクセスネットワーク(RAN)から外部PDNへの経路に沿ったトランスポートトンネルのいくつかを連続的に壊すことができ、それによって該経路における待ち時間を減らすのに役立つが、これらの方法によって、通信事業者がユーザトラフィックをRANに近づけることや、さらに待ち時間を減らすためにローカルブレイクアウトを使用することは可能にはならない。
【0017】
3GPPにもまたセレクティブIPトラフィックオフロード(SIPTO)方法が導入されており(3GPP仕様書ナンバーTR23.859およびTR23.829で)、それによっていくつかのトラフィック型(特に低品質および低品質のサービストラフィック)用のトラフィックブレイクアウトが可能となるが、この方法は、帯域免許の条件として通信事業者が満たさなければならない一般的な法的要求事項であるLIをネイティブにサポートしない。
【0018】
したがって、LIをサポートし、モバイルネットワーク上でユーザごとに単一のユーザIPアドレスのみを実行させ、ネットワークモビリティマネジメント手順をサポートする一方、通信ネットワークにおいて待ち時間を減らす方法が必要となる。
【発明の概要】
【0019】
本発明の第一の態様によると、モビリティマネジエメントエンティティ(MME)を有する無線通信ネットワークにおいて用いられるネットワークエレメントシステムが提供され、前記ネットワークエレメントシステムは、第1制御エンティティと、第2制御エンティティと、第1パケット処理エンジン(PPE)と、第2パケット処理エンジン(PPE)とを備え、ユーザプレーントラフィックが前記第1PPEおよび前記第2PPEを介して送信されるように、前記第1制御エンティティは前記第1PPEを制御するよう構成され、前記第2制御エンティティは前記第2PPEを制御するよう構成されており、前記第1制御エンティティおよび前記第2制御エンティティは前記無線通信ネットワークのコアネットワーク内に位置し、一方、前記第1PPEおよび前記第2PPEは前記コアネットワーク外に位置する。
【0020】
前記第1制御エンティティは、前記第1PPEのアドレスを含む一式の制御メッセージを前記第2制御エンティティに送信し、前記第1PPEおよび前記第2PPE間のトランスポートトンネルをセットアップするよう構成されてもよく、前記第2制御エンティティは、前記第1PPEおよび前記第2PPEを介してユーザプレーントラフィックを送信するために、前記第2PPEのアドレスを返すよう構成されてもよい。
【0021】
前記第1PPEおよび前記第2PPEは、第1および第2ロジカルPPEエレメントとして、単一のネットワークエレメントに一体化されてもよい。
【0022】
この場合、前記単一のネットワークエレメントにおいて、前記第1ロジカルPPEエレメントおよび前記第2ロジカルPPEエレメント間には外部インターフェースが存在しない。
【0023】
前記第1PPEおよび前記第2PPEは、インターネットプロトコル(IP)またはレイヤ2トンネルを用いて直接相互通信するよう構成されてもよい。
【0024】
前記単一のネットワークエレメントは、前記第1制御エンティティと通信するための第1制御インターフェースと、前記第2制御エンティティと通信するための第2制御インターフェースとを備えてもよい。
【0025】
前記第1PPEおよび前記第2PPEは、第1および第2ロジカルPPEエレメントとして、eNodeBに一体化されるか、またはeNodeBとひとまとめにされてもよい。
【0026】
前記eNodeBと、前記第1PPEおよび前記第2PPEは、単一のネットワークエレメントに一体化され、インターネットプロトコル(IP)またはレイヤ2トンネルを用いて直接相互通信するよう構成されてもよい。
【0027】
この場合、前記eNodeBと前記第1ロジカルPPEエレメントと前記第2ロジカルPPEエレメント間には外部インターフェースが存在しない。
【0028】
前記第1制御エンティティおよび前記第2制御エンティティは、単一の制御ネットワークエレメントに一体化されてもよい。
【0029】
前記単一の制御ネットワークエレメントは、前記第1PPEと通信するための第1制御インターフェースと、前記第2PPEと通信するための第2制御インターフェースとを備えてもよい。
【0030】
または、前記単一の制御ネットワークエレメントは、前記第1PPEおよび前記第2PPEが一体化された単一のネットワークエンティティと通信するための単一の制御インターフェースを備えてもよい。
【0031】
前記第1制御エンティティは、前記コアネットワーク内において、前記第1PPEに合法的傍受エンティティに対してユーザトラフィックをミラーリングさせる働きをしてもよい。
【0032】
加えて、または、代わりに、前記第1PPEは、ローカルトラフィック分析エンティティに対してユーザトラフィックをミラーリングする働きをしてもよい。
【0033】
前記ネットワークエレメントシステムはさらに、前記コアネットワーク内に位置する増設第2PPEを備えてもよく、前記第1制御エンティティは、前記第2PPEおよび前記増設第2PPE間に複数のベアラをセットアップするよう構成されてもよく、前記第1制御エンティティは、どのベアラがユーザプレーントラフィックに用いられているかを決定する規則を実施するよう構成されてもよい。
【0034】
前記ネットワークエレメントシステムはさらに、前記コア通信ネットワーク外に存在するコンテンツ配信ネットワーク(CDN)サーバまたはドメイン名システム(DNS)サーバを備えてもよく、前記第1制御エンティティは、前記コア通信ネットワークを介してよりむしろ、前記第1PPEおよび前記第2PPEを介して前記CDNサーバまたは前記DNSサーバに関連ユーザトラフィックを送信する規則を実施するよう構成されてもよい。
【0035】
前記第1制御エンティティは、前記CDNサーバまたは前記DNSサーバに送信されたトラフィックのパケット数統計を収集するよう構成されてもよい。
【0036】
前記第1制御エンティティは、中央ゲートウェイエンティティよりむしろ第2制御エンティティに専用ベアラ要求を送信するよう構成されてもよく、前記第2制御エンティティは、前記第2制御エンティティにて終了したデフォルトベアラを最初にセットアップすることなく前記第2制御エンティティにて終了した専用ベアラをセットアップできるように、前記第1制御エンティティによって前記第2制御エンティティに送信された専用ベアラ要求を受け入れるよう構成されてもよい。
【0037】
前記ネットワークエレメントシステムはさらに、前記第2PPEと、前記コア通信ネットワーク内に位置するゲートウェイエンティティとに関連付けられた外部ネットワークを備えてもよく、前記第1制御エンティティまたは前記第1PPEは、前記外部ネットワークへの接続を要求するデバイスの位置によって、ユーザトラフィックを、前記第2PPEに送信するかまたは前記コアネットワーク内に位置する前記ゲートウェイエンティティに送信するかを選択するよう構成されてもよい。
【0038】
前記第1制御エンティティは、前記外部ネットワークにローカルなデバイスから送出された前記外部ネットワークへの接続要求を解決し、前記第2制御エンティティに照会するよう構成されてもよく、前記第2制御エンティティは、前記コア通信ネットワークに入ることなく前記外部ネットワークにトラフィックを送信するために、前記第2PPEを選択するよう構成されてもよい。
【0039】
前記第1制御エンティティは、サービングゲートウェイ(SGW)制御エンティティを有してもよく、前記第2制御エンティティは、パケット配信ネットワーク(PDN)ゲートウェイ(PGW)を有してもよく、前記第1PPEは、サービングゲートウェイPPEを有してもよく、前記第2PPEは、PDNゲートウェイPPEを有してもよい。
【0040】
本発明の第二の態様によると、第一の態様のネットワークエレメントシステムにおいて用いられる第1PPEが提供される。
【0041】
本発明の第三の態様によると、第一の態様のネットワークエレメントシステムにおいて用いられる第2PPEが提供される。
【0042】
本発明の第四の態様によると、第二の態様の第1PPEと、第三の態様の第2PPEとを備えるネットワークエンティティが提供される。
【0043】
本発明の第五の態様によると、第一の態様のネットワークエレメントシステムにおいて用いられる第1制御エンティティが提供される。
【0044】
本発明の第六の態様によると、第一の態様のネットワークエレメントシステムにおいて用いられる第2制御エンティティが提供される。
【0045】
本発明の第七の態様によると、第五の態様の第1制御エンティティと、第六の態様の第2制御エンティティとを備える制御ネットワークエンティティが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
以下、添付の図面を参照しつつ、厳密に例示としてのみ本発明の態様について説明する。
図1図1は、既知の通信ネットワークアーキテクチャの略図である。
図2図2は、通信ネットワークアーキテクチャの略図である。
図3図3は、図2と類似した、単一のパケット処理エンジンを備える通信ネットワークアーキテクチャの略図である。
図4図4は、図2と類似した、単一の制御エンティティを備える通信ネットワークアーキテクチャの略図である。
図5図5は、別の通信ネットワークアーキテクチャの略図である。
図6図6は、また別の通信ネットワークアーキテクチャの略図である。
図7図7は、また別の通信ネットワークアーキテクチャの略図である。
図8図8は、また別の通信ネットワークアーキテクチャの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の態様について、図2〜8を参照しながら説明する。便宜上また分かり易くするために下記の説明において、LTEネットワークを説明するのに通常用いられる専門用語を用いているが、記載されている様々なエレメント、システムおよび方法は、例えば5Gのような他のネットワークシステムに同等に適用できると理解されるであろうし、当業者であれば下記の原理が他のネットワークシステムの同等のネットワークエンティティやエレメントに同様に適用可能であることを認識するであろう。
【0048】
図2には、ネットワークアーキテクチャ100の概略が示されている。このアーキテクチャにより、UE102はeNodeB104を介してコア通信ネットワークに接続することが可能である。図2の横破線は、コア通信ネットワークの境界線を示す。つまり、コア通信ネットワーク内に存在するコア通信ネットワークのエレメントは横破線の上に示され、コア通信ネットワーク外に存在するコア通信ネットワークのものではないエレメントは横破線の下に示されている。
【0049】
図2に示されるアーキテクチャは、第1制御エンティティおよび第1パケット処理エンティティならびに第2制御エンティティおよび第2パケット処理エンティティを有するネットワークエレメントシステムを備えるが、LTEネットワークの場合には、第1制御エンティティおよび第1パケット処理エンティティは、SGWエレメント108a、108bであってもよく、第2制御エンティティおよび第2パケット処理エンティティはPGWエレメント110a、110bであってもよい。SGWエレメント108a、108bは、図1のアーキテクチャのSGW18と同等の機能を有するが、重要なことにこの機能は、二つの別個のエンティティ、つまり、制御プレーン機能を処理するSGW−c(制御)エンティティ108aおよびユーザプレーン機能を処理するSGW−u(ユーザ)パケット処理エンティティ(PPE)108b間で分割されている。同様に、PGWエレメント110a、110bは、図1のアーキテクチャのPGW20と同等の機能を有するが、ここでもまた重要なことにこの機能は、二つの別個のエンティティ、つまり、制御プレーン機能を処理するPGW−c(制御)エンティティ110aおよびユーザプレーン機能を処理するPGW−u(ユーザ)パケット処理エンティティ(PPE)110b間で分割されている。SGW−cエンティティ108aおよびPGW−cエンティティ110aは、コアネットワーク内に存在する一方、SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110bは、コアネットワーク外のeNodeB104に近い無線アクセスエッジにまたは企業の情報処理センター内のいずれかに通常は存在する。しかしながら、SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110b内のトラフィックフローは、SGW−cエンティティ108aおよびPGW−cエンティティ110aにそれぞれ制御されている。
【0050】
図2に示されるアーキテクチャにおいて、MME106がUE102用のベアラのセットアップを起動したら、MME106は、S11インターフェース上で3GPP規格に基づいたGTP−Cプロトコルを用いて、SGW−cエンティティ108aにコンタクトをとり、そしてSGW−cエンティティ108aは、SGW−cエンティティ108aとPGW−cエンティティ110aとの間でGTP−C制御メッセージを実行させる。PGW−cエンティティ110aはPGW−uPPE110bにSGWとPGW間のトンネルをセットアップさせ、PGWコンポーネント間のユーザプレーン制御インターフェース(すなわちUpc(P))と呼ばれるPGW−cエンティティ110aおよびPGW−uPPE110b間の新しいインターフェース上でUE102セッションをサポートする。SGW−cエンティティ108aからPGW−cエンティティ110aへの制御メッセージには、SGW−uPPE108bのアドレスが含まれ、PGW−cPPE110aは、PGW−uパケット処理エンティティ110bのアドレスを返す。そして、eNodeB104およびSGW−uPPE108b間で直接S1−Uトンネルがセットアップされる。このようにして、PGW−uPPE110bおよびSGW−uPPE108bを通して、ユーザデータトラフィックを送信することができる。
【0051】
PGWコンポーネント(すなわちPGW−cエンティティ110aおよびPGW−uPPE110b)間の新しいUpc(P)インターフェースに加えて、SGWコンポーネント(すなわちSGW−cエンティティ108aおよびSGW−uPPE108b)間のユーザプレーン制御インターフェース(すなわちUpc(S))と呼ばれる2番目の新しいインターフェースが設定される。
【0052】
なお、Upcインターフェースはともに、通常は、SGW−uおよびPGW−uエンティティ108b、110bからのベアラ制御を実行するが、合法的傍受用のUPストリームの選択的ミラーリングならびにコアネットワークにベースを持つアカウンティングといったファンクションへの入力のための管理上のタギングおよびロギングも実行する。
【0053】
SGWエレメント108a、108bおよびPGWエレメント110a、110bをこのように別個の制御エンティティとユーザデータエンティティに分割することは、コアネットワークからのユーザデータトラフィックのブレイクアウトを可能にし、待ち時間を向上することができ、ユーザエクスペリエンスの向上につながる。このようにコアネットワークからトラフィックをオフロードすることはまた、ネットワーク容量が付随的に増加するおかげで、通信事業者にとって経済的利益をもたらす。例えば、eNodeB104、SGW−uPPE108b、PGW−uPPE110bが企業内に位置し、UE102が、その企業内に位置するPDNへの接続を要求している場合、ユーザデータは、その企業を一度も離れることなく、eNodeB104、SGW−uPPE108b、PGW−uPPE110bを介して、UE102および要求されたPDN間に送信される。
【0054】
SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110b内のトラフィックフローは、コアネットワーク内に存在するSGW−cエンティティ108aおよびPGW−cエンティティ110aにそれぞれ制御されているので、合法的傍受(LI)やトラフィックデータ分析やマルチユーザ通信といった機能をなお実行することができ、制御プレーンエンティティ(SGW−cエンティティ108aおよびPGW−cエンティティ110a)は、コアネットワークの管理下のままであるので、つまり、コアネットワークによって、LIや分析やマルチユーザ通信等のために、SGW−uPPE108bが他のエンティティ対してユーザトラフィックをなおもミラーリングすることができる。LIとしては、ユーザトラフィックを、コアネットワーク内に存在する一つ以上のLIエンティティに対してミラーリングし、分析としては、ユーザトラフィックを、ローカルトラフィック分析エンティティに対してミラーリングする。
【0055】
図1に示す種類の従来のネットワークアーキテクチャにおいては、S5/S8インターフェーストンネルは、SGW18およびPGW22、22’、22”間で要求され、制御メッセージおよびユーザデータが、SGW18およびPGW22、22’、22”間で送信可能になる。
【0056】
図2に示すアーキテクチャにおいては、SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110bは、インターネットプロトコル(IP)を用いて直接相互通信することができ、この情報を認識することができる。したがって、SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110bは、S5/S8GTPトンネルを相互間にセットアップする代わりに、S5/S8インターフェースを壊し、IPルーティングまたはレイヤ2トンネルを介して直接通信する。このようにして、eNodeB104およびSGW−uPPE108b間のS1−Uトンネルを、SGW−uPPE108bにてIPルーティングによってPGW−uPPE110bまで延長することができる。
【0057】
図2に示されるとおり、また上述したとおり、SGW−uエンティティ108bおよびPGW−uエンティティ110bは、コアネットワーク外に存在する。SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110bは、ロジカルエレメントとして、単一のパケット処理エンジンネットワークエンティティ112に一体化されてもよいが、単一のパケット処理エンジンネットワークエンティティ112はスタンドアロンエンティティでもよいし、図3に概略を示すように、eNodeB104に一体化されるか、またはeNode104Bとひとまとめにされてもよい。SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110bが単一のパケット処理エンジンネットワークエンティティ112として、SGW−cエンティティ108aおよびPGW−cエンティティ110aへの制御インターフェースとともに一体化される場合、図2で示されるSGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110b間のS5リンクを完全に取り除くことができるため、SGW−uPPE108bエレメントおよびPGW−uPPE110bエレメント間には外部インターフェースが存在しない。
【0058】
SGW−uPPE108bとPGW−uPPE110bが、eNodeB104に一体化されるか、またはeNode104Bとひとまとめにされる場合、更なる利益が実現される。この場合、SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110b間のS5/S8GTPトンネルを壊すまたは取り除くことが可能であるが、PGW−uPPE110bがeNodeB104と一体化またはeNodeB104とひとまとめにされているせいで、eNodeB104およびSGW−uPPE108b間の最小限の送信オーバーヘッドもかかる。eNodeB104およびSGW−uPPE108b間の送信トンネルを壊すことができるため、eNodeB104とSGW−uPPE108bを機能的に結合することができ、S1−Uインターフェースを取り除くことが可能となる。この場合、ユーザデータはSGiインターフェースに直接引き継がれる。したがって、SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110bをeNodeB104と一体化させた結果、要求される処理が少なくなるため、得られる処理能力を向上することができる。または、eNodeB104とSGW−uPPE108bとPGW−uPPE110bとが真に一体化される場合、それぞれのエンティティ間の外部インターフェースは必要ない(すなわち、eNodeB104、SGW−uPPE108b、PGW−uPPE110b間にインターフェースは存在しない)。
【0059】
このアプローチは、能率および拡張性といった理由のために最適なハードウェアプラットフォーム上で各機能が実行されるように、IPフロー制御およびIPフロー送信が制御プレーン部やユーザプレーン部に分けられるソフトウェア確定ネットワーク(SDN)のような最近の技術革新に役立つ。
【0060】
図2に示されるアーキテクチャにおいて、SGW−cエンティティ108aは単一のSGW−uPPE108bと関連付けられており、PGW−cエンティティ110aは単一のPGW−uPPE110bと関連付けられている。しかしながら、SGW−cエンティティ108aは、コアネットワーク内またはコアネットワーク外に存在する可能性のある複数の様々なSGW−uPPEと関連付けられている可能性がある。同様に、PGW−cエンティティ110aは、コアネットワーク内またはコアネットワーク外に存在する可能性のある複数の様々なPGW−uPPEと関連付けられている可能性がある。SGW−cエンティティ108aは、例えばUE102によって用いられるeNodeB104を識別するセルIDまたはトラッキングエリアといった、UE102のロケーションに関する情報に設定されており、このロケーション情報に基づいて、要求されたセッションに適したPGW−uPPE110bを選択するよう構成されている。加えて、または、代わりに、PGW−cエンティティ110aは、例えばロケーションベースの課金目的で、例えばUE102によって用いられるeNodeB104を識別するセルIDまたはトラッキングエリアといったUE102のロケーションに関する情報を提供されてもよい。受信したロケーション情報に基づいて、PGW−cエンティティ110aは、要求されたセッションに適したPGW−uPPE110bを選択してもよい。または、PGW−cエンティティ110aは、SGW−uPPE108bのIPアドレスに基づいて、要求されたセッションに適したPGW−uPPE110bを選択してもよい。
【0061】
図4は、SGW−cエンティティ108aおよびPGW−cエンティティ110aがコアネットワーク内に存在する単一の制御ネットワークエンティティ114に一体化されている点を除いては、図3示されるのと類似したネットワークアーキテクチャの略図である。SGW−cエンティティ108aおよびPGW−cエンティティ110aが、図4に示されるとおり単一の制御ネットワークエンティティ114に一体化されている場合、SGW−cエンティティ108aおよびPGW−cエンティティ110c間のS5リンクを完全に取り除くことができる。図4に示されるように、制御ネットワークエンティティ114は、SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110b(これらのエンティティが別個のエンティティとして設けられていようと、単一の一体化されたパケット処理エンジンネットワークエンティティ112として設けられていようと)への別個のインターフェースとして、UPc(S)およびUPc(P)の両方をサポートしてもよい。または、単一の制御ネットワークエンティティ114は、単一の制御ネットワークエンティティ114および、一体化されたパケット処理エンジンネットワークエンティティ112またはSGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110bのいずれかとの間の新しいインターフェースxUPcとして、UPc(S)およびUPc(P)を必要に応じて結合してもよい。
【0062】
図5は、複数のPGW−uPPEが単一のPGW−cエンティティと関連付けられたネットワークアーキテクチャインプリメンテーションの略図である。図5のインプリメンテーションにおいては、図2〜4等のものと類似したエレメントが用いられており、同じ参照符号が図5の同様のエレメントに付されている。
【0063】
図5のインプリメンテーション300において、PGW−c110aは、コアネットワーク外に(例えば企業内に)存在する第1PGW−uPPE110bと、コアネットワーク内に存在する第2PGW−uPPE110b’に関連付けられている。PGW−c110aとPGW−uPPE110bとPGW−uPPE110b’からなるPGWは、単一のAPN、例えばインターネットと関連付けられている。
【0064】
eNodeB104と、APNと関連付けられたPGWとの間の接続の初期のセットアップの間、SGW−cエンティティ108aによって、eNodeB104とコアネットワーク内に存在するPGW−uPPE110b’との間にデフォルトベアラを設けてもよい。一方、eNodeB104とコアネットワーク外に存在するPGW−uPPE110bとの間に最初にデフォルトベアラをセットアップすることなく、SGW−cエンティティ108aによって、eNodeB104とコアネットワーク外に存在するPGW−uPPE110bとの間に専用ベアラを設けてもよい。または、eNodeB104とコアネットワーク外に存在するPGW−uPPE110bとの間にデフォルトベアラをセットアップし、eNodeB104とコアネットワーク内に存在するPGW−uPPE110b’との間に最初にデフォルトベアラを設けることなく、eNodeB104とコアネットワーク内に存在するPGW−uPPE110b’との間に専用ベアラを設けることもできる。または、eNodeB104と、各PGW−uPPE110bおよび110b’との間に専用ベアラを設けることもできる。その詳細については下記に述べる。
【0065】
どのベアラが用いられ、そのためPGW−uPPE110bと110b’のどちらがユーザトラフィックに用いられるのかを定めるために、トラフィックフローテンプレート(TFT)規則をSGW−cエンティティ108aまたはSGW−uPPE108bによって実施することができる。例えば、TFT規則は、特定のカテゴリーのユーザトラフィックが専用ベアラを用いてPGW−uPPE110bを介して送信されるよう、例えば、企業を決して離れることなく様々なカテゴリーのユーザトラフィックがデフォルトベアラを用いてコアネットワーク内に存在するPGW−uPPE110b’を介して送信されるよう、命令することが可能である。TFT規則は通常、UE12またはPGW22によって、既知のネットワークアーキテクチャ(図1に示されるような)において実施されるが、SGWエンティティによって実施されることは従来なかった。ここで説明したように、SGW−cエンティティ108aまたはSGW−uPPE108bによってTFT規則を実施することは、新しい概念であり、ユーザトラフィックの選択的ブレイクアウトによって、コアネットワーク内の効率および容量が向上される。
【0066】
SGW制御およびPPEエンティティ108a、108bならびにPGW制御およびPPEエンティティ110a、110bを備えるネットワークエレメントシステムを用いることにより、ユーザトラフィックが、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)サーバまたはドメイン名システム(DNS)サーバに対してブレイクアウトすることが可能になる。以下に図6を参照して説明する。図6のインプリメンテーションにおいては、図2〜5等のものと類似したエレメントが用いられており、同じ参照符号が図6の同様のエレメントに付されている。
【0067】
図6に概略を示すインプリメンテーション400において、CDN120(CDN120は、例えば、標準送信CDNとして実行、またはコンテンツセントリックネットワーキング(CCN)もしくはインフォメーションセントリックネットワーキング(ICN)技術を用いて実行されてもよい)は、コアネットワーク外、例えば、SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110bも収容する企業内に存在する。CDN120により、コンテンツ、例えば動画や音楽といったデジタルメディアへのアクセスが可能となる。コンテンツは、インターネットでアクセスできるコンテンツサーバから入手可能であってもよいが、例えば、待ち時間短縮やサービス品質の向上やコスト削減のために、コアネットワークを介してというよりはむしろ、ローカルCDN120からユーザ要求によってコンテンツを供給する方が便利である。
【0068】
初めに、デフォルトベアラが、SGW−c108aによってeNodeB104およびPGW22間に確立される。従来どおり、eNodeB104およびPGW22間には専用ベアラを一つ以上、この段階でまたは後にセットアップしてもよい。
【0069】
一旦ベアラがセットアップされたら、SGW−c108aは、ユーザ毎の上りリンクと下りリンクトンネル情報を認識する。そして、SGW−c108aは、動画のような特定のコンテンツに対する要求といった関連ユーザトラフィックをSGW−uPPE108bからCDNサーバ120へ迂回させるために、TFT規則を実施することができる。CDNサーバ120は、SGW−uPPE108bに要求されたコンテンツと、要求をしているUE102へそれ以降の送信用eNodeB104に転送されたこの下りリンクトラフィックとをストリーミングすることによって応答する。重要なことに、課金といった目的のために、始めのコンテンツ要求は関連PGW22に転送されてもよい。または、SGW−cエンティティ108aは、CDN120に渡されたトラフィックのパケット数統計を集めるよう構成されてもよく、したがってSGW−cエンティティ108aからの直接の課金もまた可能である。いずれにしても、要求されたコンテンツは、要求しているUE102に(より)ローカルなCDN120によって配信され、それによって、コンテンツ配信における待ち時間短縮やサービス品質の向上が可能となり、その一方、コアネットワークを介してトラフィックを送ることは一切避けられる。
【0070】
DNS要求に対しても同様のアプローチが取られる。例えば、UE102は、コンテンツにアクセスするために、特定のDNS名を用いてCDNへの接続を要求してもよい。要求されたコンテンツがSGW−uPPE108bを介してローカルCDN120からUE102にストリームされるように、この要求はSGW−uPPE108bを介してDNSサーバ130に送信され、それにより要求されたドメイン名は解決されローカルCDN120のIPアドレスに変換される。これにより、要求されたコンテンツはコアネットワーク外にいるままなので、ユーザが経験するサービス品質が向上し、コアネットワーク容量が確保される。重要なことに、UE102の行為を変更する要求は一切なく、DNS名を用いてこの利点が達成される。すなわち、UE102はDNS名を用いて特定のDNSに接続を単に要求し、この要求がSGW−uPPE108bによってDNSサーバ130に対してブレイクアウトされ、それによってこの要求が解決されローカルCDN120のIPアドレスに変換される。重要なことに、合法的傍受がはまだこのアプローチにおいてサポートされている。
【0071】
同様に、UE102は、企業の電子メールサーバのアドレスを用いて、その電子メールサーバへのアクセス要求をしてもよい。UE102が企業外のマクロネットワークにおいて動作しているとき、この要求によって、企業のセキュリティ「ウォール」外のパブリックIPアドレスへの変換がなされる。しかしながら、UE102が企業内で動作しているとき、この要求はSGW−uPPE108bによってDNSサーバ130に対してブレイクアウトされ、DNSサーバ130が、この要求を解決して、企業の電子メールサーバ用のプライベート内部インターフェースに変換し、様々なセキュリティ規則がイネーブルにされ、例えば、追加のセキュリティ要件なしで電子メールサーバに対するアクセスを許可したり、UE102が企業外で動作している際にはアクセス可能ではないコンテンツに対するアクセスを許可したりする。
【0072】
次に図7には、通信ネットワークアーキテクチャ500の概略が示されている。ここでも、図7に示されるこのアーキテクチャにおいて、図2〜6のものと類似したエレメントが用いられており、同じ参照符号が図7の同様のエレメントに付されている。
【0073】
図7のアーキテクチャは、コアネットワーク内に存在するPGW−cエンティティ110aおよび、PGW−cエンティティ110aに関連付けられた、コアネットワーク外、例えば第1企業内に存在する第1PGW−uPPE110bに加えて、従来のPGW22を備えている。SGW−cエンティティ108aもまたコアネットワーク内に存在する一方、SGW−cエンティティ108aと関連付けられた第1SGW−uPPE108bはコアネットワーク外、例えば第1企業内に位置する。SGW−cエンティティ108aに関連付けられた第2SGW−uPPE108cおよび、PGW−cエンティティ110aに関連付けられた第2PGW−uPPE110cもまたコアネットワーク外、例えば第2企業内に存在する。
【0074】
この配置において、SGW−c108aは、UE102や、eNodeB104が接続しているSGW−uPPE108bや108cの位置に応じて、ユーザトラフィックPGW22を介して送信するか、または、PGW−uPPE110bもしくはPGW−uPPE110cを介して送信するかについて選択する。UE102の位置に応じてSGW−c108aがSGW−uPPEを選択することは、図示のとおり、ロジカル中央PGW−cエンティティ110aが一つだけ必要であることを意味している。PGW−cエンティティ110aでは、eNodeB104が接続しているSGW−uPPE108bや108cのIPアドレスに基づいて、PGW−uPPE110bまたはPGW−uPPE110cを選択しもよく、選択されたPGW−uPPEと関連付けられたPDNにトラフィックを送信するとき、選択されたPGW−uと関連付けられたSGW−uが確実に使われる。
【0075】
例えば、もしUE102が第1企業内に位置し、その企業に属するLAN(PGW−uPPE110bに関連付けられたLAN)への接続を、そのLANを具体的に識別するというよりむしろ「ローカルLAN」のみを特定する接続要求を用いることによって要求した場合、eNodeB104は第1企業に属するSGW−uPPE108bに接続する。したがって、SGW−cエンティティ108aは、接続要求を解決しPGW−cエンティティ110aに照会し、PGW−cエンティティ110aは、第1企業に属するPGW−uPPE110bを選択し、ローカルLANにトラフィックが確実に送信される。よって、SGW−cエンティティ108aは、SGW−uPPE108bおよびPGW−uPPE110b間に直接接続を確立し、それによってユーザトラフィックはコア通信ネットワークを経由しないことが可能となる。
【0076】
一方、もしUE102が第1企業内に位置し、第2企業に属するLAN(第2PGW−uPPE110cに関連付けられたLAN)への接続を、そのLANを明確に特定する接続要求を用いることによって要求した場合、eNodeB104はSGW−uPPE108bに再度接続するが、この場合、SGW−cエンティティ108aは、その要求を、第2企業に属するPGW−uPPE110cに接続するための要求として、解決する。よって、SGW−c108aは、eNodeB104およびPGW−uPPE110c間に接続を確立し、SGW−uPPE108bを介してトラフィックを送信することができる。このようにして、コアネットワークを介さずに、例えば支社ネットワーク間でトラフィックを送信することができる。
【0077】
別の例では、もしUE102が第1企業内に位置し、第1企業にも第2企業にも属さないリソース(例えばインターネット)への接続を要求した場合、該要求はSGW−cエンティティ108aで受信され、それによりeNodeB104および従来のPGW22間の接続が確立される。
【0078】
図8は、また別の通信ネットワークアーキテクチャの図である。ここでもまた、図8に概略を示すアーキテクチャ600においては、図2〜7のものと類似したエレメントが用いられており、同じ参照符号が図8の同様のエレメントに付されている。
【0079】
このアーキテクチャでは、SGW−cエンティティ108aは、中央PGW22よりむしろローカルPGW−cエンティティ110aに、専用ベアラをセットアップする要求を送信することができる。専用ベアラは従来、デフォルトベアラの子であり、デフォルトベアラは従来中央PGW22で終了することが知られている。したがって、この要求に対応するために、PGW−cエンティティ110aは、そういった要求を受け入れ、PGW−cエンティティ110aをそのエンドポイントとして専用ベアラがセットアップされるよう構成されている。このようにPGW−cエンティティ110aにて終了する専用ベアラを確立することによって、特定のユーザトラフィックがSGW−cエンティティ108aによってPGW−uPPE110cに向けられ、コアネットワーク外にてそのトラフィックを処理することが可能となる。
【0080】
当業者に理解されることだが、ここに記載されたネットワークエンティティや技術やアーキテクチャは、ユーザトラフィックがコア通信ネットワークからブレイクアウトすることを可能とし、それによってそのユーザトラフィックの待ち時間やサービス品質の向上が可能となり、一方、合法的傍受やトラフィックデータ分析やマルチユーザ通信ためにトラフィックのミラーリング(新しいUpc(S)やUpc(C)インターフェースを介して)をなお可能にすることができる。コアネットワークからのトラフィックのブレイクアウトによってもコアネットワーク内の容量が増加され、それによってコアネットワークによってまかなうことのできるユーザ数が増え、コアネットワークの通信事業者に見合う価値も向上される。さらに、ここに記載されたネットワークエンティティや技術やアーキテクチャにより、モバイルネットワークの粗密な送信制御が非常に向上される。
【0081】
上記の説明において、LTEネットワークに関連して通常用いられる専門用語を用いているが、本発明はLTEネットワークに適用できる一方、本発明の原理は、例えばGPRS/EDGEやUMTSやCDMAベースのシステムといった他の通信ネットワーク規格や技術や、例えば5Gネットワークのような未来のネットワークにも同等に適用できると理解すべきである。しがたって、本発明は、LTEネットワークに限定されないと理解すべきである。さらに、上記の説明ではGTP−Cに照会し、制御プロトコルオペレーションを実証するが、本発明はGTP−Cに限定されないと理解すべきであり、ソフトウェア定義のネットワーキングに用いられる他のトンネリングやプロキシモバイルIPv6(PMIP)といったIPフロー制御プロトコルやOpenFlowプロトコルは、上記の技術において同等に使用してもよいことを理解すべきである。さらに上記では、GPRSトンネリングプロトコル(GTP)を用いたLTEのような現行のモバイルシステムとの関連で本発明を説明したが、本発明は別のトンネリングプロトコルを用いたユーザプレーンおよび制御プレーンの分離に同等に適用でき、将来はインターネットプロトコル以外のネットワークやリンク層技術を用いて実行されてもよい。将来のネットワークやリンク層技術の場合、開示のシステムや方法や技術は、新しいネットワークまたはリンク層プロトコルアドレッシングに置き換えられたネットワーク/トンネルレベルIPアドレッシングで、上記のように実行されるだろうことが想像される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8