特許第6945304号(P6945304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945304
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20210927BHJP
   A01D 67/00 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   A01D41/12 E
   A01D67/00 K
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-16316(P2017-16316)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-121572(P2018-121572A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年6月26日
【審判番号】不服2020-14323(P2020-14323/J1)
【審判請求日】2020年10月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 大韓民国国際農業機械資材博覧会 開催場所 天安サムゴリ公園(住所:チュンチョンナンド チョナンシ トンナムグ サン リョンドン 306) 開催日 平成28年11月2日〜5日 [刊行物等] 配布日 平成28年11月 配布資料名 クボタ総合製品案内
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】栗林 巧
(72)【発明者】
【氏名】井上 大嗣
【合議体】
【審判長】 森次 顕
【審判官】 浦口 幸宏
【審判官】 土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/026550(WO,A1)
【文献】 特開2013−203367(JP,A)
【文献】 特開2007−244309(JP,A)
【文献】 特開2016−168975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/12
A01D 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
刈取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、
前記脱穀装置と機体横方向に並ぶ状態で位置して脱穀処理で得られた穀粒を貯留する穀粒タンクと、
前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間において上下方向に延設されて前記エンジンからの排気を外部に排出する排気管と、
前記排気管の上端部を保護する保護部材とが備えられ、
前記保護部材は、前記脱穀装置における前記穀粒タンク側部分のみに支持されているコンバイン。
【請求項2】
前記保護部材は、前記排気管の排気出口を囲むように形成されている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記保護部材は、前記排気管の排気出口の上方と両側方とを通る略門形に形成され、
前記保護部材の両方の下端部が、前記脱穀装置における前記穀粒タンク側部分に支持されている請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記保護部材は、前記脱穀装置の側壁に支持されている請求項1から3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記排気管を支持する支持部材が、前記穀粒タンク側部分に支持され、
前記保護部材が前記支持部材に支持されている請求項1から4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間に、前記脱穀装置の下部から穀粒を前記穀粒タンクの入口部に向けて揚送する揚穀装置が備えられ、
前記揚穀装置の上端部は、前記排気管と機体横方向に並ぶ状態で前記支持部材に支持されている請求項に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記穀粒タンクに貯留される穀粒を外部に排出する穀粒排出装置が備えられ、
前記穀粒排出装置に、前記穀粒タンクの後部下側箇所から上方に延びる縦搬送部と、前記縦搬送部の上端部から横向きに延びる横搬送部とが備えられ、
前記横搬送部が、縦軸芯周りで旋回移動可能で、且つ、先端部分に設けられた穀粒排出口が上下方向に移動するように横軸芯周りで上下揺動可能であり、
前記排気管は、前記脱穀装置の上端部よりも上側に突出しており、
前記保護部材は、機体内方側のホーム位置に格納されている前記横搬送部の上端部よりも下側に位置している請求項1からのいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記排気管の上端部は、排気出口が前記脱穀装置側に向けて開口するように曲げられ、
前記保護部材は、前記穀粒タンク側部分に支持されている箇所から上方に延びる状態で設けられ、且つ、上下中間部より上方側箇所は前記脱穀装置側に向けて曲げられている請求項1からのいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンが搭載されるとともに、脱穀装置と穀粒タンクとが機体横方向に並ぶ状態で配備されているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、機体前部に運転部が備えられ、運転部の下方にエンジンが配備され、エンジンからの排気を機外に排出するための排気管が、脱穀装置と穀粒タンクとの間において上向きに延びる状態で設けられたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−21968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成では、排気管が上向きに延びることにより、例えば、エンジンからの排気が機体下部の狭い空間に籠る等の不利の無い状態で大気中に放散させ易いものとなる。しかし、上記従来構成では、排気管が機体上方外方に露出するので、外方側から障害物が近づいて排気管に接触すると、排気管が早期に損傷するおそれがある。
【0005】
説明を加えると、上記従来構成では、穀粒タンクに貯留されている穀粒を外部に排出するための穀粒排出オーガが、機体上部に位置する状態で備えられている。基本的には、穀粒排出オーガの上下位置や旋回位置が位置センサによって検出されており、穀粒排出オーガが排気管との接触は回避されている。
【0006】
しかし、穀粒排出オーガが排気管の上方側に位置している状態で、穀粒排出オーガを下降させると、位置センサの精度のズレ等に起因して、穀粒排出オーガが排気管に接触するおそれがある。穀粒排出オーガ以外にも、機体走行中に排気管に樹木の枝等が接触するおそれもある。そして、接触しても排気管の損傷を防止できるように保護部材を設けることが考えられるが、保護部材には大きな負荷が掛かるので、保護部材専用の支持部材を設ける場合にはコストが増大する不利がある。
【0007】
そこで、エンジンからの排気を大気中に放散させ易いものにしながら、コストを増大させずに、排気管を保護する保護部材を強固に支持することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、
エンジンと、
刈取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置と、
前記脱穀装置と機体横方向に並ぶ状態で位置して脱穀処理で得られた穀粒を貯留する穀粒タンクと、
前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間において上下方向に延設されて前記エンジンからの排気を外部に排出する排気管と、
前記排気管の上端部を保護する保護部材とが備えられ、
前記保護部材は、前記脱穀装置における前記穀粒タンク側部分のみに支持されている点にある。
【0009】
本発明によれば、排気管は、脱穀装置と穀粒タンクとの間を上下方向に延びて、外方側は大きく開放されている上端部から排ガスを排出させるので、大気中に放散させ易いものとなる。そして、障害物が排気管の上端部に近づくと、排気管は保護部材によって保護され、障害物が排気管に接触することを回避することができる。
【0010】
脱穀装置は、内部に脱穀用の種々の装置が備えられるので強固な支持構造を有する。一方、穀粒タンクは、例えば機体のメンテナンス作業等のために外方に張り出す姿勢に移動可能な構成にするために、脱穀装置に比べて簡易な支持構造になる場合が多い。そして、保護部材が、脱穀装置の穀粒タンク側部分に支持されるので、強固な支持構造を有する脱穀装置を利用して安定的に支持することができる。さらに、穀粒タンクを姿勢変更させる場合であっても、保護部材が脱穀装置側に残るので、保護部材を取り外す必要がなく作業を煩わしさなく行うことができる。
【0011】
従って、エンジンからの排気を大気中に放散させ易いものにしながら、コストを増大させずに、排気管を保護する保護部材を強固に支持することが可能となる。
本発明においては、前記保護部材は、前記排気管の排気出口を囲むように形成されていると好適である。
本発明においては、前記保護部材は、前記排気管の排気出口の上方と両側方とを通る略門形に形成され、前記保護部材の両方の下端部が、前記脱穀装置における前記穀粒タンク側部分に支持されていると好適である。
【0012】
本発明においては、前記保護部材は、前記脱穀装置の側壁に支持されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、保護部材が強固な支持構造を有する脱穀装置の側壁に支持されるので、保護部材を一層安定した状態で支持することができる。
【0014】
本発明においては、前記排気管を支持する支持部材が、前記穀粒タンク側部分に支持され、前記保護部材が前記支持部材に支持されていると好適である。
【0015】
本構成によれば、排気管を支持するための支持部材を有効に利用して保護部材を支持することができ、排気管及び保護部材を支持するための部材を各別に設ける構成に比べて、部材の兼用により支持構造の簡素化を図ることができる。
【0016】
本発明においては、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間に、前記脱穀装置の下部から穀粒を前記穀粒タンクの入口部に向けて揚送する揚穀装置が備えられ、
前記揚穀装置の上端部は、前記排気管と機体横方向に並ぶ状態で前記支持部材に支持されていると好適である。
【0017】
本構成によれば、脱穀装置にて脱穀処理して得られた穀粒を穀粒タンクに向けて搬送するための揚穀装置は脱穀装置と穀粒タンクとの間に設けられる。この揚穀装置の上端部と、排気管とが機体横方向に並び、支持部材によって、揚穀装置の上端部と排気管とが夫々支持される。
【0018】
従って、排気管と保護部材だけでなく、揚穀装置も同じ支持部材によって支持する構成とすることで、部材の共用により、一層、支持構造の簡素化を図ることができる。
【0019】
本発明においては、前記穀粒タンクに貯留される穀粒を外部に排出する穀粒排出装置が備えられ、
前記穀粒排出装置に、前記穀粒タンクの後部下側箇所から上方に延びる縦搬送部と、前記縦搬送部の上端部から横向きに延びる横搬送部とが備えられ、
前記横搬送部が、縦軸芯周りで旋回移動可能で、且つ、先端部分に設けられた穀粒排出口が上下方向に移動するように横軸芯周りで上下揺動可能であり、
前記排気管は、前記脱穀装置の上端部よりも上側に突出しており、
前記保護部材は、機体内方側のホーム位置に格納されている前記横搬送部の上端部よりも下側に位置していると好適である。
【0020】
本構成によれば、排気管が脱穀装置の上端部よりも上側に突出しているので、排気管における脱穀装置側の領域は大きく外方に開放された空間になっている。その結果、排気管の上端部の排気出口から排出される排ガスを大気中に放散させ易い。
【0021】
横搬送部は、排出作業が行われていないときは、機体内方側のホーム位置に格納される。排出作業が行われるときは、横搬送部は、ホーム位置から上昇したのち、排出に適した位置まで旋回する。そのとき、排気管の上端部が存在する箇所にて横搬送部が下降すると、横搬送部は保護部材に接当して排気管を保護する。横搬送部がホーム位置にあるとき、保護部材は横搬送部の上端部よりも下側に位置しているので、保護部材が横搬送部よりも上方に突出しないので、機体走行中に、例えば木の枝等が保護部材に引っ掛かる等の不利がない。
【0022】
本発明においては、前記排気管の上端部は、排気出口が前記脱穀装置側に向けて開口するように曲げられ、
前記保護部材は、前記穀粒タンク側部分に支持されている箇所から上方に延びる状態で設けられ、且つ、上下中間部より上方側箇所は前記脱穀装置側に向けて曲げられていると好適である。
【0023】
本構成によれば、エンジンの排気は排気出口から外方に排出される。排気出口は脱穀装置側に向けて開口しているので、排気は脱穀装置側に向けて流動する状態で排出される。
つまり、高温の排気が穀粒タンク側に流動して、穀粒タンク内に貯留される穀粒が高温の排気によって加熱されることを回避できる。
【0024】
そして、保護部材の下方側箇所は、前記穀粒タンク側部分に支持されている箇所から上方に延びており、排気管における脱穀装置側に向かうように曲げられる箇所よりも低い位置にて上方に延びている箇所を有効に保護することができる。保護部材の上下中間部より上方側箇所は脱穀装置側に向けて曲げられているので、排気管が脱穀装置側に向かうように曲げられる箇所を有効に保護することができる。
【0025】
従って、穀粒タンク内に貯留される穀粒が高温の排気によって加熱されることを回避させるようにしながら、保護部材の形状を排気管の形状に沿わせる形状とすることで、排気管の周囲の全域を囲うような複雑な構成ではなく、例えば、棒体を曲げた形状等の比較的簡易な形状の保護部材であっても、排気管を有効に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】コンバインの全体側面図である。
図2】コンバインの全体平面図である。
図3】エンジン周りの縦断側面図である。
図4】排気管の上部の斜視図である。
図5】揚穀コンベアの上部の連結構造を示す分解斜視図である。
図6】揚穀コンベアの上部の連結構造を示す横断平面図である。
図7】排気管の上部の支持構造を示す左側面図である。
図8】排気管の上部の支持構造を示す右側面図である。
図9】排気管の上部の支持構造を示す横断平面図である。
図10】排気管の上部と他の装置との位置関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を自脱型のコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0028】
〔全体構成〕
図1及び図2に示すように、本発明に係るコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1,1によって自走する走行機体の前部に植立穀稈を刈り取る刈取部2が備えられている。走行機体の前部右側にキャビン3にて周囲が覆われた運転部4が備えられ、走行機体の後部には、刈取部2にて刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置5と、脱穀処理にて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク6とが、横方向に並ぶ状態で備えられている。走行機体の運転部4における運転座席7の下方に位置する状態で原動部8が備えられ、穀粒タンク6に貯留された穀粒を機外に排出する穀粒排出装置としてのアンローダ9が備えられている。
【0029】
この実施形態では、機体の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義し、機体の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。すなわち、図1及び図2に符号(F)で示す方向が機体前側、図1及び図2に符号(B)で示す方向が機体後側である。図2に符号(L)で示す方向が機体左側、図2に符号(R)で示す方向が機体右側である。
【0030】
刈取部2は、刈取対象となる植立穀稈の株元を分草案内する分草具10、分草された植立穀稈を縦姿勢に引き起こす複数の引き起こし装置11、引き起された植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置12、刈取穀稈を縦姿勢から徐々に横倒れ姿勢になるように姿勢変更しながら後方に搬送して脱穀装置5に供給する縦搬送装置13等を備えている。
【0031】
脱穀装置5は、供給された刈取穀稈の株元側を脱穀フィードチェーン53と挟持レール54とによって挟持して機体後方向きに搬送しながら、穂先側を扱室14に供給して脱穀処理する。図2に示すように、扱室14の内部に、前後軸芯まわりで回転駆動される扱胴15、その下方側の外周に沿う前後方向視で円弧状の受網(図示せず)等を備え、扱胴15と受網とによって刈取穀稈の穂先側を扱き処理して脱穀処理を行う。脱穀装置5と穀粒タンク6との間に、脱穀装置5の下部から穀粒を穀粒タンク6の入口部6aに向けて揚送する揚穀装置としての揚穀コンベア16が備えられている。
【0032】
脱穀処理された後の処理物が下方の選別部(図示せず)にて穀粒とワラ屑等に選別される。穀粒は、図示しない一番物搬送スクリューにより脱穀装置5の右横側外方に搬出されたのち、揚穀コンベア16により揚送されて穀粒タンク6の内部に搬送される。穀粒タンク6は、脱穀装置5から送り込まれる穀粒を貯留する。穀粒タンク6に貯留された穀粒は、アンローダ9により外部に搬出される。
【0033】
図1,2に示すように、アンローダ9は、穀粒タンク6の底部に前後向き姿勢で設けられた底スクリュー(図示せず)にて搬送された穀粒を上方に向けて縦送り搬送する縦搬送部としての縦送りスクリューコンベア9Aと、その縦送りスクリューコンベア9Aの上部に接続されるとともに、穀粒を先端の穀粒排出口17まで横送り搬送する横搬送部としての横送りスクリューコンベア9Bとを備えている。
【0034】
横送りスクリューコンベア9Bは、縦送りスクリューコンベア9Aの縦向き回転軸芯Y1周りで周方向全域(360度)にわたり旋回移動可能に設けられている。図示しない減速機構付の電動モータの作動により旋回移動操作することにより、任意の位置で穀粒排出作業を行うことができる。
【0035】
横送りスクリューコンベア9Bは、穀粒排出口17が上下方向に移動するように、縦向きの縦送りスクリューコンベア9Aとの接続箇所に設定された横向き軸芯X周りで上下揺動可能に設けられている。油圧シリンダ18(図2参照)の伸縮作動により、上下移動操作することにより、穀粒排出口17の位置を上下移動調整することができる。
【0036】
排出作業が行われない状態では、横送りスクリューコンベア9Bは、機体上部に設定されているホーム位置(図2に実線で示す位置)にて格納支持される。ホーム位置では、横送りスクリューコンベア9Bが受止め具19によって受止め保持される。受止め具19は、横送りスクリューコンベア9Bが入り込む略U字状の凹入部を備えており、受止めている横送りスクリューコンベア9Bが横方向に移動しないように受止め支持する。
【0037】
図示はしていないが、横送りスクリューコンベア9Bの横向き軸芯X周りで上下揺動位置、及び、横送りスクリューコンベア9Bの縦向き回転軸芯Y1周りでの旋回位置を夫々、検出する上下位置センサ及び旋回位置センサが備えられている。そして、別途備えられる手動操作ユニットの操作指令に基づいて、指令された位置に移動するように、旋回用電動モータ及び油圧シリンダ18の作動を制御する制御装置が備えられている。これらの操作用の制御構成は、従来より周知の構成であるから詳細についての説明は省略する。
【0038】
手動操作にて横送りスクリューコンベア9Bの旋回移動操作を行う場合、図2に示すように、運転部4の上方に相当する第1旋回領域H1及び後述する排気管26の上方に相当する第2旋回領域H2においては、横送りスクリューコンベア9Bの上下移動範囲が規制されている。図1に示すように、第1旋回領域H1においては、キャビン3との接触を回避するために、横送りスクリューコンベア9Bは最大上昇位置T1においてのみ旋回可能に設定されている。つまり、この領域では下降操作することが規制される。そして、第2旋回領域H2においては、最大上昇位置T1よりも低い中間位置T2が設定されている。
この第2旋回領域H2では、中間位置T2よりも高い位置においてのみ旋回可能に設定されている。このような上下移動規制は、上下位置センサ及び旋回位置センサの検出情報に基づいて、制御装置が油圧シリンダ18の作動を制御するようになっている。尚、第2旋回領域H2において横送りスクリューコンベア9Bを下降作動するときは、他の領域において行われされる下降作動の速度よりも低速で下降するように速度が設定されている。
【0039】
〔エンジン周りの構成〕
図1,2,3に示すように、原動部8にエンジン20が備えられている。図3に示すように、このエンジン20は、クランク軸方向が機体横方向となる搭載姿勢で、弾性支持体としてのゴム式マウント機構21を介して機体フレーム22に支持されている。
【0040】
エンジン20の排ガス中に含まれる粒子状物質を低減する第1排ガス処理装置23と、その第1排ガス処理装置23にて処理された後の排ガス中に含まれる窒素酸化物を低減する第2排ガス処理装置24とが備えられている。
【0041】
第1排ガス処理装置23は、排ガスに含まれるディーゼル微粒子を捕集する公知技術であるディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)(図示せず)を備え、排ガスが通過することによってディーゼル微粒子を減少させる。
【0042】
第2排ガス処理装置24は、公知技術である選択触媒還元(SCR)を利用して排ガスの浄化処理を行う。具体的には、還元剤の一例である尿素水を排ガス中に噴射して加水分解させてアンモニアを生成し、そのアンモニア(NH3)と排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)とを化学反応させて、窒素(N2)と水(H2O)とに還元させることで排ガス中に含まれる窒素酸化物を低減させる。
【0043】
エンジン20から排出された排ガスは、第1排ガス処理装置23にてディーゼル微粒子を減少させる浄化処理が行われたのち、第2排ガス処理装置24にて排ガス中に含まれる窒素酸化物を低減させる浄化処理が行われ、浄化処理を終えた排ガスが排気管26を通して機体外部に排出される。
【0044】
〔排気管〕
図3に示すように、第2排ガス処理装置24から排出される排ガスを、外部に排出する排気管26が備えられている。排気管26は、脱穀装置5の上端部よりも上側に突出している。排気管26は、脱穀装置5と穀粒タンク6との間において、排気出口27が脱穀装置5の上端よりも上方に位置するように、第2排ガス処理装置24の排ガス出口部25から後上がり傾斜姿勢で脱穀装置5の上端側箇所まで延ばされている。図2,4,10に示すように、排気管26の上端部に排気出口27が形成され、その排気管26の上端部が脱穀装置5側に向けて曲がる状態で延設されている。
【0045】
排気管26は、できるだけ高い位置にまで延ばすことで、排気を大気中に放散させ易くなっている。上述したように、横送りスクリューコンベア9Bの作動制御において、排気管26の上方に相当する第2旋回領域H2においては、横送りスクリューコンベア9Bの上下移動範囲が規制されているから、通常の使用状態においては、横送りスクリューコンベア9Bが排気管26に接触しないようになっている。
【0046】
排気管26は、第2排ガス処理装置24の排ガス出口部から延設される上手側排気管28と、上手側排気管28に連なる中間排気管29と、中間排気管29に連なる上端部としての下手側排気管30とからなる。中間排気管29は後上り傾斜姿勢で上手側排気管28の出口部から脱穀装置5の上端部に相当する位置まで延びている。下手側排気管30は、中間排気管29に対して湾曲する状態で脱穀装置5側に向けて延設されている。
【0047】
中間排気管29は、断面略U字形のカバー部材31にて覆われている。図5に示すように、カバー部材31は、中間排気管29の外周面に固定された取付ブラケット32にボルト連結されている。下手側排気管30は中間排気管29よりも大径に設けられ、下手側排気管30の始端側が中間排気管29の終端部に被さる状態で位置し、図示しないブラケットを介して連結して接続されている。下手側排気管30と中間排気管29との間に隙間が形成されており、排気の流動に伴うエジェクタ作用によって、その隙間から外気を内部に吸引して排ガスの冷却を行なうことができる。
【0048】
下手側排気管30の先端部の端面に、排ガスを空気中に排出する排気出口27が形成されている。下手側排気管30は、断面が略円形となる円筒状体にて構成され、排気出口27が脱穀装置5側に向けて開口するように機体前後方向視で上方に向かうほど脱穀装置5側に向けて曲げられている。
【0049】
次に、中間排気管29の機体後部側箇所における支持構造について説明する。
図4,6に示すように、揚穀コンベア16の上部が前後両側の連結ブラケット33,34を介して脱穀装置5の右側の側壁5Aに支持されている。前後の連結ブラケット33,34のうちの後側の連結ブラケット33は、上下方向及び前後方向の夫々に幅広の板状部材にて構成されている。連結ブラケット33の一端部が揚穀コンベア16の外周面に溶接等により一体的に連結され、連結ブラケット33の他端部が脱穀装置5の右側の側壁5Aにボルト連結されている。
【0050】
図5,6に示すように、前後の連結ブラケット33,34のうちの前側の連結ブラケット34は、揚穀コンベア16の外周面に溶接等により一体的に連結されたコンベア側の第1構成体35、脱穀装置5の側壁5Aにボルト連結された脱穀装置5側の第2構成体36、第1構成体35と第2構成体36とに亘って設けられ、夫々の構成体35,36にボルト連結される中間の第3構成体37という3つの部材からなる。
【0051】
第1構成体35は、後側の連結ブラケット33に比べて上下方向並びに前後方向夫々の幅が幅狭の板状体からなり、後側の連結ブラケット33よりも高い位置において揚穀コンベア16の外周面に連結されている。
【0052】
第2構成体36は、脱穀装置5の側壁5Aに当て付けてボルト連結される第1縦面36Aと、第1縦面36Aの端部から外側方に向かって延びる第2縦面36Bと、第1縦面36A及び第2縦面36B夫々に対して直交する方向に延びる水平面36Cと、を一体的に備えている。
【0053】
第3構成体37は、第1構成体35から第2構成体36に亘ってのびる縦面部分37Aと、縦面部分37Aにおける第2構成体36側の下端部から機体前側に向かって延びる水平面部分37Bと、が一体形成された板状体にて構成されている。
【0054】
第1構成体35の外端部と第3構成体37の縦面部分37Aの一端部とが2箇所でボルト連結される。第3構成体37の縦面部分37Aの他端部と第2構成体36の第1縦面36Aとが2箇所でボルト連結され、第3構成体37の水平面部分37Bと第2構成体36の水平面36Cとがボルト連結されている。
【0055】
そして、第3構成体37における第1構成体35に対する連結箇所と第2構成体36に対する連結箇所との中間部に、中間排気管29の外周面に一体的に固定された取付ブラケット38がボルト連結されている。
【0056】
図6に示すように、第1構成体35と第2構成体36との間は、中間排気管29の外径寸法よりも大きい距離だけ離間しており、第3構成体37を取付けていないときは、第1構成体35と第2構成体36との間を排気管26が通過可能である。
【0057】
従って、前側の連結ブラケット34が、排気管26を支持する支持部材に相当する。そして、この前側の連結ブラケット34は脱穀装置5の穀粒タンク側部分としての右側の側壁5Aに支持されている。
【0058】
上述したように前側の連結ブラケット34を分割構成とすることで、脱穀装置5の側壁5Aと揚穀コンベア16との間を通して排気管26を装着する際に、排気管26の取付けが行い易いものになる。説明を加えると、例えば、前側の連結ブラケット34が揚穀コンベア16と脱穀装置5の側壁5Aとに亘って一連に形成されるものでは、排気管26の後上部側箇所を前側の連結ブラケット34の下側を通して、前側の連結ブラケット34と後側の連結ブラケット33との間に入り込ませる作業が必要であり、作業が煩わしいものとなる。これに対して、上記したような分割構成であれば、第1構成体35と第2構成体36との間の空間を利用して、排気管26を前側の連結ブラケット34の前部側に移動させたのちに、第3構成体37を取付ければよく、作業が行い易いものになる。
【0059】
図4,7,8,9に示すように、下手側排気管30は、左右両側がカバー部材39,40にて覆われている。右側(穀粒タンク側)に位置する右カバー部材39は、図9に示すように、断面形状が略U字状に形成され、前後両側の端部にフランジ部41が形成されている。図4に示すように、左側(脱穀装置側)に位置する左カバー部材40は、断面略U字状に形成され、下手側排気管30における左側の下側領域を覆うように上下方向に延びる上下延設部分40aと、下手側排気管30における上端側の上側領域を覆うように斜め方向に延びる斜め延設部分40bとを備えている。上下延設部分40aの前後両側の端部にフランジ部42が形成されている。
【0060】
図9に示すように、右カバー部材39が下手側排気管30の右側に位置し、左カバー部材40が下手側排気管30の左側に位置して、夫々のフランジ部41,42にて、下手側排気管30の外周面に固定された取付ブラケット43を挟み込み共締め状態で、上下2箇所においてボルトの締結により、取付ブラケット43に支持されている。
【0061】
〔保護部材〕
上下位置センサの検出精度が低下している等の横送りスクリューコンベア9Bの上下位置の検出精度が低下しているとき等においては、例えば、横送りスクリューコンベア9Bをホーム位置から一旦上昇させて少しだけ旋回させたのち下降させる場合に、横送りスクリューコンベア9Bが排気管26の上端部に接当するおそれがある。そこで、排気管26の上端部を保護する保護部材44が備えられている。
【0062】
図3,4,7,8,9に示すように、保護部材44は、丸棒状体を側面視で略門形に曲げた形状となっている。保護部材44は、脱穀装置5における穀粒タンク側部分としての脱穀装置5の右側の側壁5Aに支持されている。説明を加えると、保護部材44の後側の下端部は二股状に形成され、2本の後側分割脚部45,46を備えている。2本の後側分割脚部45,46は夫々、後側の連結ブラケット33にボルト連結されている。
【0063】
保護部材44の前側の下端部も同様に、二股状に形成され、2本の前側分割脚部47,48を備えている。そして、2本の前側分割脚部47,48のうち脱穀装置側の前側分割脚部47は、下端部の板状部分が前側の連結ブラケット34の第3構成体37にボルト連結されている。2本の前側分割脚部47,48のうち他方の前側分割脚部48は、板状に形成され、中継用連係部材49を介して前側の連結ブラケット34(第3構成体37)にボルト連結されている。
【0064】
図9に示すように、中継用連係部材49は、板材を平面視L字状に曲げた形状であり、横向き板部49aが前側の連結ブラケット34にボルト連結され、前後向き板部49bが他方の前側分割脚部48にボルト連結されている。前後向き板部49bは、左右のカバー部材39,40における前側のフランジ部41,42と、取付ブラケット43と共に、共締め状態で2箇所にてボルト連結されている。
【0065】
上述したように、前後両側の連結ブラケット33,34は夫々、脱穀装置5の右側の側壁5Aに連結されて支持されているから、保護部材44は、前後両側の連結ブラケット33,34を介して脱穀装置5に支持される構成となっている。そして、前側の連結ブラケット34は、揚穀コンベア16及び排気管26に加えて、保護部材44も支持する構成となっている。この構成により、部材を兼用して支持構造の簡素化を図っている。
【0066】
保護部材44は、連結ブラケット33,34に連結されて支持される箇所から上方に延びる状態で設けられ、図2,9にも示すように、上下中間部44aより上方側箇所44bは脱穀装置5側に向けて曲げられている。説明を加えると、保護部材44における前側分割脚部47,48のうち脱穀装置5側に位置する前側分割脚部47、及び、後側分割脚部45,46のうち脱穀装置5側に位置する後側分割脚部45は、連結箇所から上方に向けて延びており、それらの上端部よりも上方側は、脱穀装置5側に向けて曲げられる形状となっている。
【0067】
図10に示すように、保護部材44は、排気管26の最上端部の上方側を迂回するように、脱穀装置5側に向けて曲げられて、機体前後方向視で斜め上方に延びている。図1,7,8,10に示すように、保護部材44は、ホーム位置に格納されている横送りスクリューコンベア9Bの上端部よりも下側に位置している。
【0068】
前側の連結ブラケット34のうちの第3構成体37における取付ブラケット38が連結される側とは反対側に、溶接ナット50と、略U字状の板状体からなる補強部材51とが一体連結される状態で備えられている。又、揚穀コンベア16の右側(脱穀装置側)に位置する状態で、前後両側の連結ブラケット33,34同士を帯板状の補強板52にて連結している。このようにして、前側の連結ブラケット34による支持強度を高めている。
【0069】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、連結ブラケット34により、揚穀コンベア16、排気管26、保護部材44を夫々支持する構成としたが、連結ブラケット34が揚穀コンベア16のみを支持する構成でもよく、連結ブラケット34が揚穀コンベア16と排気管26とを支持する構成でもよい。
【0070】
(2)上記実施形態では、排気管26を支持する連結ブラケット34(支持部材)に保護部材44が支持される構成としたが、連結ブラケット34とは別の支持部材を設けて、その支持部材に保護部材44を支持させてもよい。
【0071】
(3)上記実施形態では、保護部材44が、脱穀装置の穀粒タンク側部分として、脱穀装置5の側壁5Aに支持される構成としたが、この構成に代えて、脱穀装置側に位置して機体フレーム22に固定された固定部材に支持させるようにしてもよく、支持構造は適宜変更してもよい。
【0072】
(4)上記実施形態では、保護部材44が、機体内方側のホーム位置に格納されている横送りスクリューコンベア9Bの上端部よりも下側に位置している構成としたが、この構成に限らず、保護部材44が横送りスクリューコンベア9Bの上端部よりも上方に突出する構成としてもよい。
【0073】
(5)上記実施形態では、排気管26の排気出口27が脱穀装置5側に向けて開口するように曲げられ、保護部材44は上方側箇所が脱穀装置5側に向けて曲げられる構成としたが、排気出口27は機体前後方向に開放されるものでもよく、保護部材44は真っ直ぐに上方に延びる構成でもよい。又、保護部材44は、排気管26の周囲を全周にわたって覆う形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、自脱型のコンバインの他、普通型のコンバインにも適用できる。
【符号の説明】
【0075】
5 脱穀装置
5A 側壁(穀粒タンク側部分)
6 穀粒タンク
6a 入口部
9 穀粒排出装置
9A 縦搬送部
9B 横搬送部
20 エンジン
26 排気管
27 排気出口
34 支持部材
44 保護部材
X 横軸芯
Y1 縦軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10