(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御ユニット3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0016】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。処理ユニット2は、1枚の基板Wを水平な姿勢で保持しながら、基板Wの中心部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、基板Wを下面側から加熱するヒータユニット6と、スピンチャック5を取り囲む筒状のカップ8と、基板Wの下面に処理流体を供給する下面ノズル9と、基板Wの上面にリンス液としての脱イオン水(DIW)を供給するDIWノズル10と、基板Wの上方で移動可能な第1移動ノズル11と、基板Wの上方で移動可能な第2移動ノズル12とを含む。処理ユニット2は、さらに、カップ8を収容するチャンバ13(
図1参照)を含む。図示は省略するが、チャンバ13には、基板Wを搬入/搬出するための搬入/搬出口が形成されており、この搬入/搬出口を開閉するシャッタユニットが備えられている。
【0017】
スピンチャック5は、チャックピン20と、スピンベース21と、スピンベース21の下面中央に結合された回転軸22と、回転軸22に回転力を与える電動モータ23とを含む。回転軸22は回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びており、この実施形態では中空軸である。回転軸22の上端にはスピンベース21が結合されている。スピンベース21は、水平方向に沿う円板形状を有している。スピンベース21の上面の周縁部に、複数のチャックピン20が周方向に間隔を空けて配置されている。複数のチャックピン20は、基板Wの周端に接触して基板Wを把持(保持)する閉状態と、基板Wの周端から退避した開状態との間で開閉可能である。また、複数のチャックピン20は、閉状態において、基板Wの周縁部の下面に接触して、基板Wを下方から支持することができる。
【0018】
チャックピン20を開閉駆動するために、チャックピン駆動ユニット25が備えられている。チャックピン駆動ユニット25は、たとえば、スピンベース21に内蔵されたリンク機構26と、スピンベース21外に配置された駆動源27とを含む。駆動源27は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。チャックピン駆動ユニット25の具体的な構成例は、特許文献2などに記載がある。
【0019】
図2と
図3とを参照してヒータユニット6について説明する。ヒータユニット6は、スピンベース21の上方とチャックピン20に保持された基板Wとの間に配置された円板形状を有するヒータ本体60と、ヒータ本体60の内部に埋設された発熱体(不図示)と、ヒータ本体60の上面(ヒータ上面60a)に配置された複数の気体ノズル61と、ヒータ上面60aに埋設された複数(本実施形態では4個)の押し上げピンユニット62と、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びヒータ本体60の下面に結合された中空の支持軸63と、支持軸63に連結され、チャックピン20に保持された基板Wに下方から密着する上位置と、同基板Wから下方に離隔した下位置と、上位置と下位置との間の位置(より具体的には基板Wの下面に近接する近接位置)との間でヒータ本体60を昇降させる昇降機構64と、前記気体ノズル61に連通し前記支持軸63の内部に配置された配管65と、配管65の下端側開口にて分岐した給気分岐管66と、同吸引分岐管67と、給気分岐管66に連通し同給気分岐管66および配管65を介して対して前記複数の気体ノズル61に窒素ガス等の不活性ガスを給気する不活性ガス供給手段68と、吸引分岐管67に連通し配管65および吸引分岐管67を介して前記気体ノズル61上方の雰囲気を吸引する吸引手段69と、給気分岐管66および吸引分岐管67のそれぞれに介装されその流路を開閉する給気バルブ66a、吸引バルブ67aとを有している。
【0020】
第1移動ノズル11(処理液供給手段)は、第1ノズル移動ユニット15によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第1移動ノズル11は、水平方向への移動によって、基板Wの上面の回転中心に対向する処理位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で移動させることができる。基板Wの上面の回転中心とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置である。基板Wの上面に対向しないホーム位置とは、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、カップ8の外方の位置であってもよい。第1移動ノズル11は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近させたり、基板Wの上面から上方に退避させたりすることができる。第1ノズル移動ユニット15は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸に結合されて水平に延びるアームと、アームを駆動するアーム駆動機構とを含む。アーム駆動機構は、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアームを揺動させ、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを上下動させる。第1移動ノズル11はアームに固定される。アームの揺動および昇降に応じて、第1移動ノズル11が水平方向および垂直方向に移動する。
【0021】
第2移動ノズル12(処理液供給手段)は、第2ノズル移動ユニット16によって、水平方向および垂直方向に移動される。第2移動ノズル12は、水平方向への移動によって、基板Wの上面の回転中心に対向する位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で移動させることができる。ホーム位置は、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、カップ8の外方の位置であってもよい。第2移動ノズル12は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近させたり、基板Wの上面から上方に退避させたりすることができる。第2ノズル移動ユニット16は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸に結合されて水平に延びるアームと、アームを駆動するアーム駆動機構とを含む。アーム駆動機構は、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアームを揺動させ、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを上下動させる。第2移動ノズル12はアームに固定される。アームの揺動および昇降に応じて、第2移動ノズル12が水平方向および垂直方向に移動する。
【0022】
第1移動ノズル11は、この実施形態では、図示しない吐出口から有機溶剤を吐出する有機溶剤ノズルとしての機能と、窒素ガス等の不活性ガスを吐出するガスノズルとしての機能とを有している。第1移動ノズル11には、有機溶剤供給管35および不活性ガス供給管36が結合されている。有機溶剤供給管35には、その流路を開閉する有機溶剤バルブ37が介装されている。不活性ガス供給管36には、その流路を開閉する不活性ガスバルブ38が介装されている。有機溶剤供給管35には、有機溶剤供給源から、イソプロピルアルコール(IPA)等の有機溶剤が供給されている。不活性ガス供給管36には、不活性ガス供給源から、窒素ガス(N
2)等の不活性ガスが供給されている。
【0023】
第2移動ノズル12は、この実施形態では、酸、アルカリ等の薬液を供給する薬液ノズルとしての機能と、窒素ガス等の不活性ガスを吐出するガスノズルとしての機能とを有している。より具体的には、第2移動ノズル12は、液体と気体とを混合して吐出することができる二流体ノズルの形態を有していてもよい。二流体ノズルは、気体の供給を停止して液体を吐出すれば液体ノズルとして使用でき、液体の供給を停止して気体を吐出すればガスノズルとして使用できる。第2移動ノズル12には、薬液供給管41および不活性ガス供給管42が結合されている。薬液供給管41には、その流路を開閉する薬液バルブ43が介装されている。不活性ガス供給管42には、その流路を開閉する不活性ガスバルブ44と、不活性ガスの流量を可変する流量可変バルブ45とが介装されている。薬液供給管41には、薬液供給源から、酸、アルカリ等の薬液が供給されている。不活性ガス供給管42には、不活性ガス供給源から、窒素ガス(N
2)等の不活性ガスが供給されている。
【0024】
薬液の具体例は、エッチング液および洗浄液である。さらに具体的には、薬液は、フッ酸、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、バッファードフッ酸(フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)、SPMなどであってもよい。
【0025】
DIWノズル10は、この実施形態では、基板Wの上面の回転中心に向けてDIWを吐出するように配置された固定ノズルである。DIWノズル10には、DIW供給源から、DIW供給管46を介して、DIWが供給される。DIW供給管46には、その流路を開閉するためのDIWバルブ47が介装されている。DIWノズル10は固定ノズルである必要はなく、少なくとも水平方向に移動する移動ノズルであってもよい。
【0026】
下面ノズル9(処理液供給手段)は、中空の支持軸30を挿通し、さらに、ヒータユニット6を貫通している。下面ノズル9は、基板Wの下面中央に臨む吐出口9aを上端に有している。下面ノズル9には、流体供給源から流体供給管48を介して処理流体が供給されている。供給される処理流体は、液体であってもよいし、気体であってもよい。流体供給管48には、その流路を開閉するための流体バルブ49が介装されている。
【0027】
図3は、スピンチャック5およびヒータユニット6の平面図である。スピンチャック5のスピンベース21は、平面視において、回転軸線A1を中心とする円形であり、その直径は基板Wの直径よりも大きい。スピンベース21の周縁部には、間隔を空けて複数個(この実施形態では6個)のチャックピン20が配置されている。
【0028】
ヒータユニット6は、円板状の形態を有している。既述したように、ヒータユニット6はヒータ本体60と、複数の気体ノズル61と、複数の押し上げピンユニット62とを含んでいる。ヒータ本体60は、平面視において、基板Wの外形とほぼ同形同大で、回転軸線A1を中心とする円形に構成されている。より正確には、ヒータ本体60は、基板Wの直径よりも僅かに小さい直径の円形の平面形状を有している。たとえば、基板Wの直径が300mmであり、ヒータ本体60の直径(とくにプレート上面60aの直径)がそれよりも6mmだけ小さい294mmであってもよい。この場合、ヒータ本体60の半径は基板Wの半径よりも3mm小さい。
【0029】
ヒータ上面60aは、水平面に沿う平面である。したがって、ヒータ上面60aと、チャックピン20に水平に保持される基板Wとの距離を均一に保つことが可能になる。これにより、基板Wを効率的かつ均一に加熱することができる。
【0030】
複数の気体ノズル61は平面視で円形を有し、直径は例えば、1mm程度である。複数の気体ノズル61は、ヒータ上面60aに等間隔で配列されている。複数の気体ノズル61は、基板Wの下面全体に均一に不活性ガスを吐出できるように、ヒータ上面60aにおける複数の気体ノズル61の個数や間隔、ヒータ上面60aと基板Wとの距離が設定されていることが望ましい。
【0031】
複数の押し上げピンユニット62はスピンチャック20に保持された基板Wを下方から押し上げるピン62aとピン62aを上下動させるシリンダ62bとをそれぞれ有している。シリンダ62bはピン62aの上端をヒータ本体60の上面60aから突出させる突出位置とピン62aの上端を上面60aと同一面に位置させる後退位置との間でピン62aを上下動させる。
【0032】
図4は、チャックピン20の構造例を説明するための斜視図である。また、
図5Aおよび
図5Bはチャックピン20の平面図であり、
図5Aは閉状態を示し、
図5Bは開状態を示す。
【0033】
チャックピン20は、鉛直方向に延びたシャフト部53と、シャフト部53の上端に設けられたベース部50と、シャフト部53の下端に設けられた回動支持部54とを含む。ベース部50は、把持部51と、支持部52とを含む。回動支持部54は、鉛直方向に沿うチャック回動軸線55まわりに回動可能にスピンベース21に結合されている。シャフト部53は、チャック回動軸線55から離れた位置にオフセットされて、回動支持部54に結合されている。より具体的には、シャフト部53はチャック回動軸線55よりも、回転軸線A1から離れた位置に配置されている。したがって、チャックピン20がチャック回動軸線55まわりに回動されると、ベース部50は、その全体が基板Wの周端面に沿って移動しながら、チャック回動軸線55まわりに回動する。回動支持部54は、スピンベース21の内部に設けられたリンク機構26(
図2参照)に結合されている。このリンク機構26からの駆動力によって、回動支持部54は、チャック回動軸線55まわりに所定角度範囲で往復回動する。
【0034】
ベース部50は、平面視において、くさび形に形成されている。ベース部50の上面には、チャックピン20の開状態で基板Wの周縁部下面に当接して基板Wを下方から支持する支持面52aが設けられている。換言すれば、ベース部50は支持面52aを上面とする支持部52を有している。把持部51は、ベース部50の上面において、支持部52とは別の位置で上方に突出している。把持部51は、基板Wの周端面に対向するようにV字状に開いた保持溝51aを有している。
【0035】
回動支持部54が
図5Bに示す開状態からチャック回動軸線55まわりに時計方向に回動されるとき、把持部51は基板Wの周端面に接近し、支持部52は基板Wの回転中心から離反する。また、回動支持部54が
図5Aに示す閉状態からチャック回動軸線55まわりに反時計方向に回動されるとき、把持部51は基板Wの周端面から離反し、支持部52は基板Wの回転中心に接近する。
【0036】
図5Aに示すチャックピン20の閉状態では、保持溝51aに基板Wの周端面が入り込む。このとき、基板Wの下面は、支持面52aから微小距離だけ上方に離間した高さに位置する。
図5Bに示すチャックピン20の開状態では、保持溝51aから基板Wの周端面が脱していて、平面視において、把持部51は基板Wの周端面よりも外方に位置する。チャックピン20の開状態および閉状態のいずれにおいても、支持面52aは、少なくとも一部が基板Wの周縁部下面の下方に位置している。
【0037】
チャックピン20が開状態のとき、基板Wを支持部52で支持できる。その開状態からチャックピン20を閉状態に切り換えると、断面V字状の保持溝51aに案内されてせり上がりながら基板Wの周端面が保持溝51a内へと案内され、保持溝51aの上下の傾斜面によって基板Wが挟持された状態に至る。その状態からチャックピン20を開状態に切り換えると、基板Wの周端面が保持溝51aの下側傾斜面に案内されながら滑り降り、基板Wの周縁部下面が支持面52aに当接する。
【0038】
図5Aおよび
図5Bに示すように、ベース部50は、平面視において、ヒータユニット6のヒータ本体60に対向する縁部が、ヒータ本体60の周縁形状に倣っている。すなわち、支持部52は、平面視において、ヒータ本体60よりも回転中心に対して外方に位置する側面52bを有している。それにより、基板Wよりも若干小さい円形の加熱面6aを有するヒータ本体60は、ヒータユニット6が上下動するときに、チャックピン20と干渉しない。この非干渉位置関係は、チャックピン20が閉状態および開状態のいずれにおいても保たれる。すなわち、チャックピン20が閉状態のときも開状態のときも、支持部52の側面52bは、平面視において、ヒータユニット6のヒータ本体の上面60aから外方に離隔している。
【0039】
基板Wの直径は、たとえば300mmであり、ヒータ上面60aの直径はたとえば294mmである。したがって、ヒータ上面60aは、基板Wの下面の中央領域および周縁領域を含むほぼ全域に対向している。チャックピン20の閉状態および開状態のいずれにおいても、上面60aの外周縁の外側に所定の微小間隔(たとえば2mm)以上の間隔を確保した状態で、支持部52が配置される。
【0040】
把持部51は、チャックピン20の閉状態において、その内側縁が、ヒータ本体60の外周縁の外側に所定の微小間隔(たとえば2mm)以上の間隔を確保した状態で位置するように構成されている。したがって、ヒータユニット6は、チャックピン20の閉状態および開状態のいずれにおいても、加熱面6aを把持部51の内側で上下させて、基板Wの下面に接触するまで上昇させることができる。
【0041】
チャック回動軸線55は、平面視において、回転軸線A1(
図2および
図3参照)を中心とし、ヒータ上面60aの半径よりも小さな半径の円周上に位置している。
【0042】
図6は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。制御ユニット3は、マイクロコンピュータを備えており、所定の制御プログラムに従って、基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。とくに、制御ユニット3は、搬送ロボットIR,CR、スピンチャック5を回転駆動する電動モータ23、第1ノズル移動ユニット15、第2ノズル移動ユニット16、チャックピン駆動ユニット25、バルブ類37,38,43,44,45,47,49、66a、67a、押し上げピンユニット62のシリンダ62b、不活性ガス供給手段68、吸引手段69、ヒータ本体60内部の発熱体などの動作を制御する。
【0043】
図7は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図である。未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(S1)。また、制御ユニット3は、チャックピン20が開状態になるようにチャックピン駆動ユニット25を制御する。その状態で、搬送ロボットCRは、基板Wをスピンチャック5に渡す。基板Wは、開状態のチャックピン20の支持部52(支持面52a)に載置される。その後、制御ユニット3は、チャックピン駆動ユニット25を制御して、チャックピン20を閉状態とする。これにより、複数のチャックピン20の把持部51によって基板Wが把持される。
【0044】
搬送ロボットCRが処理ユニット2の外に退避した後、薬液処理(S2)が開始される。このとき、ヒータ本体60は下位置にあり基板Wの下方に離隔しているものとする。また、ピン62aは後退位置にあるものとする。
【0045】
制御ユニット3は、まずヒータ本体60内部の発熱体(不図示)を発熱させる。次に、制御ユニット3は、電動モータ23を駆動してスピンベース21を所定の薬液回転速度で回転させる。制御ユニット3は、不活性ガス供給手段68から給気分岐管66に不活性ガスを供給するとともに、給気バルブ66aを開放する。これによって、不活性ガス供給手段68から供給された不活性ガスが、給気分岐管66および配管65を介して複数の気体ノズル61から基板Wの下面に向けて吐出する。吐出された不活性ガスは、基板Wとヒータ本体60の間の空間を満たすとともに、基板Wとスピンベース21との隙間から周囲に流れる不活性ガスの気体流を形成する。
【0046】
その一方で、制御ユニット3は、第2ノズル移動ユニット16を制御して、第2移動ノズル12を基板Wの上方の薬液処理位置に配置する。薬液処理位置は、第2移動ノズル12から吐出される薬液が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。そして、制御ユニット3は、薬液バルブ43を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、第2移動ノズル12から薬液が供給される。供給された薬液は遠心力によって基板Wの全面に行き渡る。基板Wに供給された薬液の一部は基板Wの周縁から下方に落液する。落液した薬液の一部はミスト化する。この時点でヒータ上面60aは加熱状態にあるため、ヒータ上面60aに薬液が付着すると薬液が蒸発してチャンバ13の内部を汚染するおそれがある。しかし、前述の通り、気体ノズル61によって基板Wとスピンベース21の隙間から周囲に流れる不活性ガスの気流が形成されている。したがって、基板Wの周縁から落液する薬液等は前記不活性ガスの気流に阻害されて前記隙間に進入することがない。よって、ヒータ上面60aに薬液等が付着することが効果的に抑制できる。また、薬液等が気体ノズル61に進入することも防止できる。
【0047】
一定時間の薬液処理の後、基板W上の薬液をDIWに置換することにより、基板W上から薬液を排除するDIWリンス処理(S3)が実行される。具体的には、制御ユニット3は、薬液バルブ43を閉じ、代わって、DIWバルブ47を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けてDIWノズル10からDIWが供給される。供給されたDIWは遠心力によって基板Wの全面に行き渡る。このDIWによって基板W上の薬液が洗い流される。この間に、制御ユニット3は、第2ノズル移動ユニット16を制御して、第2移動ノズル12を基板Wの上方からカップ8の側方へと退避させる。前述した気体ノズル61からの不活性ガスの吐出はDIWリンス処理(S3)とも並行して実行される。
【0048】
一定時間のDIWリンス処理の後、基板WにDIWよりも表面張力の低い処理液(低表面張力液)である有機溶剤を基板Wに供給して基板Wの上面DIWを有機溶剤に置換する有機溶剤供給処理(S4)が開始される。制御ユニット3は、第1ノズル移動ユニット15を制御して、第1移動ノズル11を基板Wの上方の有機溶剤リンス位置に移動させる。有機溶剤リンス位置は、第1移動ノズル11から吐出される有機溶剤(たとえばIPA)が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。そして、制御ユニット3は、DIWバルブ47を閉じて、有機溶剤バルブ37を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、第1移動ノズル11から有機溶剤(液体)が供給される。供給された有機溶剤は遠心力によって基板Wの全面に行き渡り、基板W上のDIWを置換する。前述した気体ノズル61からの不活性ガスの吐出は有機溶剤供給処理(S4)とも並行して実行される。有機溶剤供給処理(S4)の最終段階において、制御ユニット3は、昇降機構64を制御して、ヒータ本体60を下位置から近接位置まで上昇させる。それによりヒータ上面60aが基板Wの下面に近接し、基板Wが下方から加熱される。なお、前述した気体ノズル61からの不活性ガスの吐出は有機溶剤供給処理(S4)とも並行して実行される。
【0049】
有機溶剤によるDIWの置換が完了すると、また、制御ユニット3は、スピンチャック5の回転を減速して基板Wの回転を停止しまたは低速回転(例えば100rpm未満)とし、かつ有機溶剤バルブ37を閉じて有機溶剤の供給を停止する。それにより、静止状態の基板W上に有機溶剤液膜が表面張力により支持されたパドル状態とされる。また、基板Wの加熱によって、基板Wの上面に接している有機溶剤の一部が蒸発し、それにより、有機溶剤液膜と基板Wの上面との間に気相層が形成される。これにより有機溶剤液膜は液塊状態で基板Wの上方に浮上する(気相形成処理(S5))。前述した気体ノズル61からの不活性ガスの吐出は気相形成処理(S5)とも並行して実行される。
【0050】
次に、有機溶剤液膜の排除が行われる。まず、制御ユニット3は、チャックピン駆動ユニット25を制御して、チャックピン20を開状態とする。これにより、複数のチャックピン20の把持部51による基板Wの把持が解除される。次に、制御ユニット3は、制御ユニット3は給気バルブ66aを閉止すると共に不活性ガス供給手段68を停止させる。これにより気体ノズル61からの不活性ガスの吐出が停止する。また、制御手段3は吸引手段69を作動させ、同時に吸引バルブ67aを開放する。
【0051】
制御ユニット3は、この状態で、昇降機構64を制御してヒータ本体60を上位置まで上昇させて上面60aを基板Wの下面に接触させる。これにより気体ノズル61に吸引力が発生し、基板Wの下面がヒータ上面60aに密着する。
【0052】
このような気体ノズル61による基板Wの密着と並行して、制御ユニット3は、第1ノズル移動ユニット15を制御して、第1移動ノズル11を基板Wの上方からカップ8の側方へと退避させる。また、制御ユニット3は、第2ノズル移動ユニット16を制御して、第2移動ノズル12を基板Wの上方の気体吐出位置に配置する。気体吐出位置は、第2移動ノズル12から吐出される不活性ガス流が基板Wの上面の回転中心に向けられる位置であってもよい。そして、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ44を開いて、基板W上の有機溶剤液膜に向けて不活性ガスを吐出する。これにより、不活性ガスの吐出を受ける位置、すなわち、基板Wの中央において、有機溶剤液膜が不活性ガスによって排除され、有機溶剤液膜の中央に、基板Wの上面を露出させる穴が空けられる。この穴を広げることによって、基板W上の有機溶剤が基板W外へと排出される(液膜排除処理(S6))。
【0053】
仮に基板Wを単にヒータ上面60aに接触させるだけでは基板Wが周縁部が凸になるように(すなわち基板直径方向において凹状に湾曲するように)熱変形することが考えられる。こうなると基板Wの周縁部がヒータ上面60aと接触しなくなりヒータ本体60による加熱が不十分となる。こうなると有機溶剤の液膜が基板周縁部において浮上しなくなるおそれがある。また、液膜排除処理(S6)において、有機溶剤の液膜が基板Wの中心から周縁にスムーズに移動しなくなるおそれもある。
【0054】
このため、本実施形態では、液膜排除処理(S6)において基板Wを気体ノズル61からの吸引力を利用してヒータ上面60aに密着させている。これにより、基板Wはヒータ上面60aに倣って平坦性を維持する。したがって、液膜排除処理(S6)を通して基板Wの周縁部を十分に加熱できる。また、有機溶剤の液膜を基板Wの中心から周縁にスムーズに移動させることができる。さらに、本実施形態では、液膜排除処理(S6)において基板Wをヒータ上面60aに吸引力を発生させる気体ノズル61と同じノズルから、薬液処理(S2)、DIWリンス処理(S3)および有機溶剤供給処理(S4)において基板Wの下面に向けて不活性ガスを吐出している。このように、吸引力発生部材と不活性ガス吐出部材とを一部共通化できるため比較的安価に本発明を実現することができる。
【0055】
こうして、有機溶剤処理を終えた後、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ44を閉じ、第2移動ノズル12を退避させる。その後、吸引手段69を停止するとともに吸引バルブ67aを閉止して、気体ノズル61の吸引力を停止させる。次に、制御ユニット3は押し上げピンユニット62のシリンダ62bを制御してピン62aを突出状態に遷移させる。この結果、基板Wが下面から持ち上げられてヒータ上面60aから離隔する。
【0056】
次に、制御ユニット3は、昇降機構64を制御してヒータ本体60を下位置に向けて下降させる。ヒータ本体60の下降の過程で、基板Wの周縁がチャックピン20の支持部52に載置される。基板Wの周縁がチャックピン20に載置されると制御ユニット3はチャックピン駆動ユニット25を制御して、チャックピン20を閉状態に制御する。これにより、基板Wはチャックピン20の把持部51に把持される。こうして液膜排除処理(S6)が完了する。
【0057】
制御ユニット3は、次に、電動モータ23を制御して、基板Wを乾燥回転速度で高速回転させる。それにより、基板W上の液成分を遠心力によって振り切るための乾燥処理(S7:スピンドライ)が行われる。
【0058】
その後、制御ユニット3は、電動モータ23を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。さらに、制御ユニット3は、チャックピン駆動ユニット25を制御して、チャックピン20を開位置に制御する。これにより、基板Wは、チャックピン20の把持部51に把持された状態から、支持部52に載置された状態となる。その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(S6)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0059】
図8Aおよび
図8Bは、基板Wの上面における気相層の形成を説明するための図解的な断面図である。基板Wの表面には、微細なパターン101が形成されている。パターン101は、基板Wの表面に形成された微細な凸状の構造体102を含む。構造体102は、絶縁体膜を含んでいてもよいし、導体膜を含んでいてもよい。また、構造体102は、複数の膜を積層した積層膜であってもよい。ライン状の構造体102が隣接する場合には、それらの間に溝(溝)が形成される。この場合、構造体102の幅W1は10nm〜45nm程度、構造体102同士の間隔W2は10nm〜数μm程度であってもよい。構造体102の高さTは、たとえば50nm〜5μm程度であってもよい。構造体102が筒状である場合には、その内方に孔が形成されることになる。
【0060】
有機溶剤供給処理(S4)の初期段階では、
図8Aに示すように、基板Wの表面に形成された有機溶剤液膜90は、パターン101の内部(隣接する構造体102の間の空間または筒状の構造体102の内部空間)を満たしている。
【0061】
有機溶剤液膜が浮上する過程では、基板Wが加熱され、有機溶剤の沸点(IPAの場合は82.4℃)よりも所定温度(たとえば、10〜50℃)だけ高い温度となる。それにより、基板Wの表面に接している有機溶剤が蒸発し、有機溶剤の気体が発生して、
図8Bに示すように、気相層92が形成される。気相層92は、パターン101の内部を満たし、さらに、パターン101の外側に至り、構造体102の上面102Aよりも上方に有機溶剤液膜90との界面95を形成している。この界面95上に有機溶剤液膜90が支持されている。この状態では、有機溶剤の液面がパターン101に接していないので、有機溶剤液膜90の表面張力に起因するパターン倒壊が起こらない。
【0062】
気相形成処理(S5)の過程で基板Wがヒータ本体60によって加熱されると、基板W上面の昇温によって有機溶剤が蒸発する。この結果、液相の有機溶剤はパターン101内から瞬時に排出される。そして、形成された気相層92上に液相の有機溶剤が支持され、パターン101から離隔させられる。こうして、有機溶剤の気相層92は、パターン101の上面(構造体102の上面102A)と有機溶剤液膜90との間に介在して、有機溶剤液膜90を支持する。
【0063】
図8Cに示すように、基板Wの上面から浮上している有機溶剤液膜90に亀裂93が生じると、乾燥後にウォータマーク等の欠陥の原因となる。そこで、この実施形態では、基板Wの回転を停止した後に有機溶剤の供給を停止して、基板W上に厚い有機溶剤液膜90を形成して、亀裂の発生を回避している。有機溶剤処理工程S4では基板Wが高速(例えば100rpm)で回転しておらず、基板Wの回転を停止しまたは低速(例えば100rpm未満)で回転しているので、液膜90が遠心力によって分裂することがない。したがって、液膜90に亀裂が生じることを回避できる。さらに、ヒータユニット6内の発熱体の出力および基板加熱時間を適宜調節して、有機溶剤の蒸気が液膜90を突き破って吹き出さないようにし、それによって、亀裂の発生を回避している。
【0064】
気相層92上に有機溶剤液膜90が支持されている状態では、有機溶剤液膜90に働く摩擦抵抗は、零とみなせるほど小さい。そのため、基板Wの上面に平行な方向の力が有機溶剤液膜90に加わると、有機溶剤液膜90は簡単に移動する。この実施形態では、有機溶剤液膜90の中央に開口を形成し、それによって、開口の縁部での温度差によって有機溶剤の流れを生じさせて、気相層92上に支持された有機溶剤液膜90を移動させて排除している。
【0065】
本実施形態では、液膜排除処理(S6)においてヒータ上面60aに基板Wを密着させた状態で基板Wを加熱している。このため、基板Wをヒータ上面60aに倣わせたまま平坦性を維持した状態で加熱することができる。
【0066】
以上、この発明の一実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。この発明の範囲に含まれるいくつかの形態を以下に例示的に列挙する。
【0067】
1.使用可能な有機溶剤は、IPAのほかにも、メタノール、エタノール、アセトン、HEF(ハイドルフルオロエーテル)を例示できる。これらは、いずれも水(DIW)よりも表面張力が小さい有機溶剤である。この発明は、有機溶剤以外の処理液にも適用可能である。たとえば、水などのリンス液を基板外に排除するためにこの発明を適用してもよい。リンス液としては、水のほかにも、炭酸水、電界イオン水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)などを例示できる。
【0068】
2.液膜排除処理において第1移動ノズル11から吐出する気体としては、窒素ガスのほかにも、清浄空気その他の不活性ガスを採用することができる。同様に、気体ノズル62からは窒素ガス以外の不活性ガスを採用することができる。
【0069】
3.本実施形態では、液膜排除処理(S6)の完了後、スピンドライ処理(S7)を実行したが、液膜排除処理(S6)により基板Wの上面から液相を完全に排除できるのであれば必ずしもスピンドライ処理(S7)を実行しなくてもよい。