特許第6945324号(P6945324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6945324-洗濯方法及び中和組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945324
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】洗濯方法及び中和組成物
(51)【国際特許分類】
   D06L 1/16 20060101AFI20210927BHJP
   D06L 4/12 20170101ALI20210927BHJP
   D06L 4/13 20170101ALI20210927BHJP
   D06F 31/00 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   D06L1/16
   D06L4/12
   D06L4/13
   D06F31/00
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-73092(P2017-73092)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-186730(P2017-186730A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2020年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-74759(P2016-74759)
(32)【優先日】2016年4月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115429
【氏名又は名称】ライオンハイジーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】向山 啓太
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 純一
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−120876(JP,A)
【文献】 特開2002−138300(JP,A)
【文献】 特開昭63−283700(JP,A)
【文献】 特開平04−226666(JP,A)
【文献】 特開2009−112469(JP,A)
【文献】 特開2014−161432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06L1/00−4/75
C11D1/00−19/00
D06F1/00−60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予洗用ユニット、本洗用ユニット、濯ぎ用ユニット、及び仕上げユニットを備え、
前記予洗用ユニットが複数の洗濯槽を備え、前記予洗用ユニットの洗濯槽には排水管が接続され、
前記本洗用ユニットが複数の洗濯槽を備え、
前記濯ぎ用ユニットが複数の洗濯槽を備え、前記濯ぎ用ユニットの内の最上流の洗濯槽には排水管が接続され、
前記本洗用ユニットの最下流の洗濯槽と、前記濯ぎ用ユニットの最上流の洗濯槽との間の傾斜障壁は、他の傾斜障壁よりも高く形成されており、
前記濯ぎ用ユニットから排出される排水が流入するリサイクルタンクを備え、前記リサイクルタンクと前記本洗用ユニットの最下流の洗濯槽とが供給管により連結された連続洗濯機を用いた洗濯方法であって、
被洗物を、第1のアルカリ洗剤を含む第1の洗浄水で洗浄する第1洗浄工程と、
前記第1洗浄工程を経た前記被洗物を、第2のアルカリ洗剤及び過酸化水素を含む第2の洗浄水で洗浄する第2洗浄工程と、
前記第2洗浄工程を経た前記被洗物を、濯ぎ水で濯ぐ濯ぎ工程と、
前記濯ぎ工程を経た前記被洗物を、サワー剤及び過酸化水素還元剤を含有する中和組成物を含む仕上げ水で処理する仕上げ工程とを有し、
前記仕上げ工程における排水を含む投入水を用いて、前記被洗物を前記第1洗浄工程における前記第1の洗浄水に投入すること、
前記濯ぎ用ユニットの最終槽に新たな水(W1)を上流の洗濯槽に向かって流れるように供給すること、
前記仕上げユニットに新たな水(W2)を供給すること、を有し、
前記サワー剤が、リンゴ酸、及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記過酸化水素還元剤が、亜硫酸ナトリウムであり、
[過酸化水素還元剤]/[サワー剤]で表される質量比が1.5以上2.5以下であり、
前記中和組成物における前記過酸化水素還元剤の含有割合が、10質量%以上30質量%以下である、洗濯方法。
【請求項2】
前記仕上げ工程における仕上げ水のpHが6.0以上9.0以下である、請求項1に記載の洗濯方法。
【請求項3】
前記中和組成物が一液型である、請求項1又は2に記載の洗濯方法。
【請求項4】
前記投入水における前記過酸化水素の濃度が0質量ppm以上10質量ppm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗濯方法。
【請求項5】
前記第1の洗浄水における前記過酸化水素の濃度が0質量ppm以上10質量ppm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗濯方法。
【請求項6】
サワー剤と過酸化水素還元剤とを含有し、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗濯方法における前記仕上げ工程において用いられる中和組成物。
【請求項7】
さらに水を含有し、
pHが4.0以上10.0以下である、請求項6に記載の中和組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯方法及び中和組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維製品等の被洗物を大量に洗浄する際に、連続洗濯機が使用されている。連続洗濯機においては、被洗物を洗浄水で洗浄する予洗工程と、過酸化水素等の漂白剤を含む洗浄水で被洗物をさらに洗浄する本洗工程と、被洗物を水で濯ぐ濯ぎ工程と、被洗物を仕上げ水で処理する仕上げ工程が行われる。連続洗濯機においては、被洗物を予洗工程の洗浄水に投入する際、水(以下、「投入水」又は「被洗物投入水」という。)と共に被洗物を洗浄水に流し込む。
連続洗濯機においては、洗濯に使用される水の量を低減することが求められている。そこで、連続洗濯機においては、排水を回収して予洗工程に使用することが一般に行われている。例えば、濯ぎ工程、仕上げ工程及び脱水工程で生じる排水を前記の投入水として用いる試みがなされている。
【0003】
ところで、病院で使用されるシーツ、白衣、手術着等の繊維製品(病院で用いられる繊維製品を病院用繊維製品ということがある)を洗浄する場合には、被洗物に付着したタンパク質汚れを除去することが重要である。タンパク質汚れの中でも、血液汚れを除去することが特に重要である。被洗物から血液汚れを効率的に除去するため、連続洗濯機に過酸化水素の還元剤を投入する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術においては、回収された排水に漂白剤の還元剤を供給して、過酸化水素の残留濃度を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−120876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、血液汚れの除去が十分に満足できるものではなかった。
そこで、本発明は、被洗物から血液汚れをより効率的に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討した結果、排水中の漂白剤とその還元剤との混合が不十分であり、漂白剤が十分に還元されていないため、被洗物の血液汚れを十分に除去できないとの知見を得た。この知見に基づき、本発明者等は本発明を完成させた。
本発明は以下の態様を有する。
[1]被洗物を、第1のアルカリ洗剤を含む第1の洗浄水で洗浄する第1洗浄工程と、
前記第1洗浄工程を経た前記被洗物を、第2のアルカリ洗剤及び過酸化水素を含む第2の洗浄水で洗浄する第2洗浄工程と、
前記第2洗浄工程を経た前記被洗物を、水で濯ぐ濯ぎ工程と、
前記濯ぎ工程を経た前記被洗物を、サワー剤及び過酸化水素還元剤を含有する中和組成物を含む仕上げ水で処理する仕上げ工程とを有し、
前記仕上げ工程における排水を含む投入水を用いて、前記被洗物を前記第1洗浄工程における前記第1の洗浄水に投入する、洗濯方法。
[2]前記仕上げ工程における仕上げ水のpHが6.0以上9.0以下である[1]に記載の洗濯方法。
[3]前記中和組成物における前記サワー剤に対する前記過酸化水素還元剤の質量比([過酸化水素還元剤]/[サワー剤])が1.5以上8.0以下である[1]または[2]に記載の洗濯方法。
[4]前記投入水における前記過酸化水素の濃度が0質量ppm以上10質量ppm以下である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の洗濯方法。
[5]前記第1の洗浄水における前記過酸化水素の濃度が0質量ppm以上10質量ppm以下である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の洗濯方法。
【0007】
[6]サワー剤と過酸化水素還元剤とを含有し、
[1]〜[5]のいずれか一項に記載の洗濯方法における前記仕上げ工程において用いられる中和組成物。
[7]さらに水を含有し、pHが4.0以上10.0以下であり、前記サワー剤に対する前記過酸化水素還元剤の質量比([過酸化水素還元剤]/[サワー剤])が1.5以上8.0以下である[6]に記載の中和組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の洗濯方法によれば、被洗物から血液汚れをより効率的に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の洗濯方法を説明するフロー図である。
図2】本発明の洗濯方法に用いられる連続洗濯機の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の洗濯方法は、第1洗浄工程と、第2洗浄工程と、濯ぎ工程と、仕上げ工程とを有する。
以下、本発明の洗濯方法の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に図示するように、本実施形態の洗濯方法は、第1洗浄工程S1と、第2洗浄工程S2と、濯ぎ工程S3と、仕上げ工程S4とを有する。
【0012】
第1の洗浄工程S1は、被洗物を第1の洗浄水で洗浄する工程である。第1の洗浄水は、第1のアルカリ洗剤を含む。
第1洗浄工程S1においては、第1の洗浄水に含まれる第1のアルカリ洗剤の界面活性作用及び加水分解作用によって、被洗物に付着したタンパク質汚れ等の汚れを被洗物から浮かび上がらせて、除去する。第1洗浄工程S1は、予洗工程とも呼ばれている。第1のアルカリ洗剤は特に限定されず、公知のアルカリ洗剤が使用可能である。
アルカリ洗剤の剤形は特に限定されず、粉末等の固体でもよいし、液体でもよい。第1のアルカリ洗剤に含まれるアルカリ剤としては、例えば、メタ珪酸ナトリウム等の珪酸塩、水酸化ナトリウム等の水酸化化合物、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
第1のアルカリ洗剤は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、従来公知のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0013】
第2洗浄工程S2は、第1洗浄工程S1を経た被洗物を第2の洗浄水で洗浄する工程である。第2の洗浄水は、第2のアルカリ洗剤及び過酸化水素を含む。
第2洗浄工程S2においては、第2の洗浄水に含まれる第2のアルカリ洗剤の界面活性作用及び加水分解作用、並びに過酸化水素の酸化作用によって、被洗物に付着したタンパク質汚れ等の汚れを分解し、除去する。第2洗浄工程S2は、本洗工程とも呼ばれている。第2のアルカリ洗剤は、特に限定されず、公知のアルカリ洗剤が使用可能である。第2のアルカリ洗剤は、第1のアルカリ洗剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第2の洗浄水の調製方法としては、第2のアルカリ洗剤と過酸化水素とを、水に分散する方法が挙げられる。また、例えば、第2の洗浄水の調製方法は、水中で過酸化水素を発生する化合物(過炭酸ナトリウム等の過炭酸塩、過ホウ酸ナトリウム等の過ホウ酸塩等)と、第2のアルカリ洗剤とを、水に分散する方法が挙げられる。
【0014】
濯ぎ工程S3は、第2洗浄工程S2を経た被洗物を水で濯ぐ工程である。これにより、被洗物に残留している洗浄成分としての界面活性剤、アルカリ剤及び漂白成分としての過酸化水素等を除去する。濯ぎ工程に使用される水(濯ぎ水)としては、アルカリ洗剤及び過酸化水素を含有しない水を使用することが好ましい。また、濯ぎ水としては、節水の観点から濯ぎ工程以降の洗濯槽の水の余剰分を使用してもよい。
【0015】
仕上げ工程S4は、濯ぎ工程S3を経た被洗物を仕上げ水で処理する工程である。仕上げ水は、中和組成物を含む。中和組成物は、サワー剤及び過酸化水素還元剤を含有する。
仕上げ工程S4において、被洗物に残留しているアルカリ剤はサワー剤によって中和される。また、被洗物に残留している過酸化水素は過酸化水素還元剤によって還元される。
中和組成物は、粉状でも良く、液状でも良い。例えば、中和組成物として、サワー剤と、過酸化水素還元剤とを水に分散して水溶液を調製し(一液型)、この水溶液を一つの液経路によって仕上げ水に供給しても良い。また、中和組成物として、サワー剤の水溶液及び過酸化水素還元剤の水溶液を調製し(二液型)、両水溶液を二つの液経路によって仕上げ水に供給しても良い。また、サワー剤及び過酸化水素還元剤を粉状で保管し、仕上げ水に供給する直前に、一液型又は二液型の水溶液を調製しても良い。
【0016】
サワー剤は、酸性物質であり、アルカリ洗剤中のアルカリ剤を中和する。仕上げ工程S4において使用されるサワー剤は、特に限定されず、公知のサワー剤が使用可能である。
公知のサワー剤としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、グリコール酸、酒石酸、イソクエン酸、マロン酸、酢酸、乳酸、アスコルビン酸及びフィチン酸等の有機酸、並びにリン酸等の無機酸が挙げられる。中でも、繊維の脆化防止及び装置内の金属の腐食防止の観点から、有機酸が好ましい。有機酸の中でも、入手容易性の観点から、クエン酸及びリンゴ酸が好ましい。
【0017】
過酸化水素還元剤は、過酸化水素を還元する。仕上げ工程S4において使用される過酸化水素還元剤は、特に限定されず、公知の過酸化水素還元剤が使用可能である。公知の過酸化水素還元剤としては、チオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩、重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム)、二酸化チオ尿素及びスルホキシルナトリウム等が挙げられる。中でも、過酸化水素に対する還元力の観点から、亜硫酸塩が好ましく、亜硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0018】
中和組成物が一液型の場合、中和組成物におけるサワー剤に対する過酸化水素還元剤の質量比([過酸化水素還元剤]/[サワー剤])は、1.5以上8.0以下であることが好ましく、1.5以上3.5以下であることがより好ましく、1.5以上2.5以下であることがさらに好ましい。質量比が下限値以上であると、サワー剤による酸性の影響を抑え、過酸化水素還元剤の分解を抑制することができる。質量比が上限値以下であると、低温にて析出物が発生せずに中和組成物の液安定性が向上する。
【0019】
中和組成物におけるサワー剤の配合比率は、使用するサワー剤の種類に応じて決定され、例えば、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。サワー剤の配合比率が下限値以上であると、サワー剤の中和能力を確保することができる。サワー剤の配合比率が上限値以下であると、サワー剤による酸性の影響を抑え、過酸化水素還元剤の分解を抑制することができる。
中和組成物における過酸化水素還元剤の配合比率は、過酸化水素還元剤の種類に応じて決定され、例えば、10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15%以上25%以下であることがより好ましい。過酸化水素還元剤の配合比率が下限値以上であると、サワー剤等の酸性物質や酸素等の酸化性物質による過酸化水素還元剤の分解の影響を抑制することができる。過酸化水素還元剤の配合比率が上限値以下であると、サワー剤の中和能力を過酸化水素還元剤が阻害することを抑制することができる。
中和組成物における水の配合比率は、洗濯方法において使用されるアルカリ洗剤及び過酸化水素の配合比率に応じて決定されるが、例えば、65質量%以上85質量%以下であることが好ましく、70質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
中和組成物のpHは、4.0〜10.0であることが好ましく、4.5〜6.8であることがより好ましく、4.5〜6.2であることが特に好ましい。中和組成物のpHが下限値以上であると、過酸化水素還元剤の分解を抑制することができる。また、中和組成物のpHが上限値以下であると被洗物が濯ぎ不足によるアルカリ焼けを起こすことを防止することができ、低温にて析出物が発生せずに中和組成物の液安定性が向上する。
【0021】
仕上げ工程S4において使用される中和組成物は、サワー剤及び過酸化水素還元剤に加えて任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤、キレート剤、分散剤、水溶性溶剤、シリコーン、蛍光増白剤、抗菌剤、消臭剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、平滑剤、縮み防止剤、洗濯じわ防止剤、ドレープ性保持剤、アイロン性向上剤、増白剤、白化剤、布地柔軟化クレイ、帯電防止剤、移染防止剤、高分子分散剤、汚れ剥離剤、スカム分散剤、染料固定剤、退色防止剤、染み抜き剤、繊維表面改質剤、カタラーゼ等の酵素、抑泡剤、汚染防止剤及び非イオン性高分子化合物等が挙げられる。
【0022】
中和組成物の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。先ず、過酸化水素還元剤(例えば、亜硫酸ナトリウム)を軟水等の水に溶解させることにより、過酸化水素還元剤水溶液を調製する。この過酸化水素還元剤水溶液に、サワー剤(例えば、リンゴ酸)を加えて溶解させることにより、混合水溶液を調製する。得られた混合水溶液を濾過することにより、製品としての中和組成物を得る。
【0023】
次に、本発明の洗濯方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図2の連続洗濯機1000は、洗濯本体部100と、洗剤希釈溶解槽200と、漂白剤希釈槽300と、中和組成物槽400と、仕上げ剤槽500と、リサイクルタンク600と、脱水回収水リサイクルタンク700と、被洗物投入水タンク800とを備える。
【0024】
連続洗濯機1000は洗濯本体部100を含む。洗濯本体部100は、洗濯液を収容する外胴の中に、被洗物を収容して回転する内胴を備えるダブルドラムタイプであってもよいし、又は単一の回転胴によって構成されるシングルドラムタイプでもよい。洗濯本体部100は、複数の外胴及び内胴を含む第1洗濯槽1〜第12洗濯槽12が同心状に配置されている。洗濯本体部100は、予洗用ユニットと、本洗用ユニットと、濯ぎ用ユニットと、仕上げユニットとを含む。
【0025】
予洗用ユニットは、第1洗濯槽(予洗第1槽)1と第2洗濯槽(予洗第2槽)2と第3洗濯槽(予洗第3槽)3とを含む。本洗用ユニットは、第4洗濯槽(本洗第1槽)4と、第5洗濯槽(本洗第2槽)5と、第6洗濯槽(本洗第3槽)6と、第7洗濯槽(本洗第4槽)7と、第8洗濯槽(本洗第5槽)8とを含む。濯ぎ用ユニットは、第9洗濯槽(濯ぎ第1槽)9と、第10洗濯槽(濯ぎ第2槽)10と、第11洗濯槽(濯ぎ第3槽)11とを含む。仕上げユニットは第12洗濯槽(仕上げ槽)12を含む。予洗用ユニットを構成する洗濯槽の数、本洗用ユニットを構成する洗濯槽の数、濯ぎ用ユニットを構成する洗濯槽の数、仕上げユニットを構成する洗濯槽の数は、上述した図2に示す構造における数に限定されるものではない。
【0026】
洗濯本体部100は、駆動装置120により一定の回転角度範囲で、洗濯本体部100の中心軸線130を回転中心として、左回りの方向と、右回りの方向に、交互に断続的に回転駆動される。駆動装置120は、モータ、ギアボックスなどを含む。洗濯本体部100は、第1洗濯槽1〜第12洗濯槽12の隣接した相互の洗濯槽間における被洗物の搬送のための螺旋シュートを備える。螺旋シュートは、各洗濯槽から隣接した下流の洗濯槽へ被洗物を移送するように形成されている。よって、洗濯槽が360°回転すると、被洗物は下流の洗濯槽へ移送される。洗浄水、濯ぎ水、仕上げ水は被洗物に対しては並流及び/又は向流(バッチフロー及び/又はカウンタフロー)であり、各洗濯槽の内部において被洗物の予洗・本洗・濯ぎを順々に行う。
【0027】
図2を参照すると、洗濯本体部100は、第12洗濯槽12に連結された脱水機13と、第1洗濯槽1に設けられた被洗物投入口14とを備える。洗濯本体部100は、洗剤希釈溶解槽200と、漂白剤希釈槽300とを備える。洗剤希釈溶解槽200は洗剤を貯蔵するための槽であり、貯蔵された洗剤は水により希釈されてもよい。漂白剤希釈槽300は、過酸化水素又は過酸化水素発生物である漂白剤を貯蔵するための槽であり、貯蔵された漂白剤は、水により希釈されてもよい。洗剤希釈溶解槽200及び洗濯本体部100は、洗剤希釈溶解槽200で希釈された洗剤が洗剤希釈液移送ポンプにより第1洗濯槽1、第4洗濯槽4へ移送されるように構成される。漂白剤希釈槽300で希釈された漂白剤は漂白剤希釈液移送ポンプにより第5洗濯槽5へ移送されるように構成される。
【0028】
脱水回収水リサイクルタンク700が、第12洗濯槽12から脱水回収水を回収し、脱水機13から脱水回収水を回収するために、第12洗濯槽12及び脱水機13に排水管112、113を介してそれぞれ連結される。
【0029】
リサイクルタンク600は、排水管109を介して第9洗濯槽9に連結される。また、リサイクルタンク600は、回収水移送ポンプ610を備えた供給管601を介して第8洗濯槽8に連結される。リサイクルタンク600は、第9洗濯槽9から洗濯水を回収することができる。また、リサイクルタンク600は、回収された洗濯水を第8洗濯槽8に移送することができる。リサイクルタンク600は、第9洗濯槽9に限らず、第9洗濯槽9、第10洗濯槽10、第11洗濯槽11のうちの少なくとも1つに連結されてもよい。リサイクルタンク600は、第9洗濯槽9に連結されるのが特に好ましい。
【0030】
被洗物投入水タンク800が、被洗物投入水移送ポンプ810の動作により被洗物投入水を被洗物投入口14に移送するために設けられる。リサイクルタンク600及び被洗物投入水タンク800は、リサイクルタンク600から排出される排出液が回収水移送ポンプ610の動作により回収水投入量調整バルブ(図示せず。)を備えた供給管601を介して第8洗濯槽8へ移送され、回収水移送ポンプ620の動作により被洗物投入水タンク800へ移送されるように構成される。脱水回収水リサイクルタンク700及び被洗物投入水タンク800は、脱水回収水リサイクルタンク700から排出される排出液が脱水回収水移送ポンプ710の動作により被洗物投入水タンク800へ移送されるように構成される。
【0031】
このような連続洗濯機1000では、洗浄水、濯ぎ水、仕上げ水は被洗物に対しては並流及び/又は向流(バッチフロー及び/又はカウンタフロー)であり、被洗物は第1洗濯槽1から第11洗濯槽11に順々に移動する。また、連続洗濯機1000は、第1洗濯槽1〜第3洗濯槽3(予洗用ユニット)で被洗物の予洗が行われ、第4洗濯槽4から第8洗濯槽8(本洗用ユニット)で被洗物の本洗が行われ、第9洗濯槽9から第11洗濯槽11で被洗物の濯ぎが行われ、脱水機13で被洗物は脱水されるように構成される。
【0032】
次に、図2の連続洗濯機1000を用いた実施形態の洗濯方法を、図面を参照して説明する。なお、図2の連続洗濯機1000を用いた実施形態の洗濯方法では、洗浄水、濯ぎ水、仕上げ水が被洗物に対して向流している。
まず、リサイクルタンク600から第8洗濯槽8に水を供給する。第8洗濯槽8に供給された水は、第8洗濯槽8から第1洗濯槽1に向かって流れ、第1洗濯槽1〜第2洗濯槽8の各洗濯槽に所定量の水が供給される。洗剤希釈溶解槽200からアルカリ洗剤(第1のアルカリ洗剤)を第1洗濯槽1に供給する。
第1洗濯槽1〜第3洗濯槽3(予洗用ユニット)では、第1のアルカリ洗剤と水とが混合されて、第1の洗浄水となる。第1の洗浄水のpHは、例えば、9〜13であることが好ましい。洗浄水のpHが下限値以上であると、アルカリ洗剤の洗浄効果を十分に発揮できる。洗浄水のpHが高いとより高い効果が期待できるが、pHが13を超えても洗浄効果の大幅な向上が期待できない。また、pHが13を超えると多くの濯ぎ水や中和剤を必要とするため、経済的ではない。
第1の洗浄水の温度は、15℃以上60℃以下であることが好ましく、30℃以上55℃以下であることがより好ましく、46℃以上55℃以下であることが特に好ましい。第1の洗浄水の温度が下限値以上であると、使用水の再利用において過度の冷却を行う必要もなく、節水・省エネルギーの点で効率の良いエコな連続式の洗濯方法を提供することができる。第1の洗浄水の温度が上限値以下であると、高温によるタンパク質汚れの変性を抑制することができる。
【0033】
被洗物を投入水とともに被洗物投入口14から洗濯本体部100の第1洗濯槽1の中に投入する(被洗物投入操作)。
第1洗濯槽1内で、被洗物と第1の洗浄水とを所定時間揺動して、被洗物を洗浄する。
その結果、被洗物からタンパク質汚れ及び油汚れ等の一部が浮かび上がり、除去される。
その後、第1洗濯槽1を360°回転させて、被洗物を第2洗濯槽2に移す。こうして、第1洗濯槽1〜第3洗濯槽3において被洗物を順次洗浄する(第1の洗浄工程)。なお、第1洗濯槽1〜第12洗濯槽12のそれぞれにおける揺動時間は、1分以上6分以下が好ましく、1.5分以上5分以下がより好ましく、2分以上4分以下が特に好ましい。
第1洗濯槽1内の第1の洗浄水の一部を、排水E1として第1洗濯槽1から排水管101を介して排出する。また、第2洗濯槽2内の第1の洗浄水の一部を排水E2として第2洗濯槽2から排水管102を介して排出し、第3洗濯槽3内の第1の洗浄水の一部を排水E3として第3洗濯槽3から排水管103を介して排出する。
こうして、第1洗濯槽1〜第3洗濯槽3(予洗用ユニット)において、被洗物を順次洗浄する(第1の洗浄工程)。
【0034】
洗剤希釈溶解槽200からアルカリ剤(第2のアルカリ剤)を第4洗濯槽4に供給する。漂白剤希釈槽300から過酸化水素を第5洗濯槽5に供給する。こうして、第4洗濯槽4〜第8洗濯槽8(本洗用ユニット)では、第2のアルカリ洗剤と過酸化水素と水とが混合されて、第2の洗浄水となる。第2の洗浄水における過酸化水素の濃度は、10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以上800質量ppm以下であることがより好ましい。特に、第5洗濯槽5の洗浄水における過酸化水素の濃度は300質量ppm以上700質量ppm以下であることが、被洗物の漂白効果の観点から好ましい。
第2の洗浄水のpHは、例えば、9〜13であることが好ましい。洗浄水のpHが下限値以上であると、過酸化水素の漂白効果が高まる。洗浄水のpHが高いとより高い効果が期待できるが、pHが13を超えても洗浄効果の大幅な向上が期待できない。また、pHが13を超えると多くの濯ぎ水や中和剤を必要とするため、経済的ではない。第2の洗浄水の温度は、50℃以上90℃以下であることが好ましく、70℃以上90℃以下であることがより好ましい。第2の洗浄水の温度が下限値以上であると、過酸化水素の効果が十分に発揮できる。第2の洗浄水の温度が高いとより高い効果が期待できるが、第2の洗浄水の温度が90℃を超えても洗浄効果の大幅な向上が期待できず、経済的ではない。例えば、80℃以上かつ10分以上の洗濯方法は、殺菌効果のある条件等を満たすので、より好ましい。
【0035】
第3洗濯槽3から被洗物を第4洗濯槽4に移す。第4洗濯槽4内で、被洗物と第2の洗浄水とを所定時間揺動して、被洗物を洗浄する。その結果、第1の洗浄工程で被洗物から浮かび上がったまま残存している汚れ(例えば、血液汚れ)を除去することができる。その後、第4洗濯槽4の被洗物を第5洗濯槽5に移す。こうして、第4洗濯槽4〜第8洗濯槽8(本洗用ユニット)において被洗物を順次洗浄する(第2の洗浄工程)。
【0036】
新たな水W1(濯ぎ水)を第11洗濯槽11に供給する。第11洗濯槽11に供給された水は、第11洗濯槽11から第9洗濯槽9に向かって流れ、第9洗濯槽9〜第11洗濯槽11の各洗濯槽に所定量の水が供給される。水W1としては、例えば、水道水及び井戸水、鉄化合物及びマンガン化合物を水処理により除去した水、イオン交換等により軟水化を行う軟水機を通した水等が挙げられる。
【0037】
第8洗濯槽8の被洗物を第9洗濯槽9に移す。第9洗濯槽9内で、被洗物と濯ぎ水とを所定時間揺動し、被洗物を濯ぐ。
第9洗濯槽9における濯ぎ水は、排水管109から排出され、リサイクルタンク600に流入する。なお、第8洗濯槽8と第9洗濯槽9との間の傾斜障壁は、他の傾斜障壁よりも高く形成されている。そのため、第9洗濯槽9における水は、第8洗濯槽8に直接的に流入しにくい。
【0038】
第9洗濯槽9で濯がれた被洗物は、第10洗濯槽10及び第11洗濯槽11に順次移されて濯がれる。この間、被洗物に残留しているアルカリ剤及び過酸化水素等が溶出する。
その結果、被洗物におけるアルカリ剤及び過酸化水素等の残留濃度が低減される(濯ぎ工程)。
【0039】
新たな水W2を第12洗濯槽12に供給する。中和組成物槽400から中和組成物を第12洗濯槽12の水に供給し、仕上げ剤槽500から仕上げ剤を第12洗濯槽12に供給する。第12洗濯槽12内で、中和組成物と仕上げ剤と水とが混合されて、仕上げ水となる。この仕上げ水は、中和組成物に含まれるサワー剤と過酸化水素還元剤とを含む。
【0040】
第11洗濯槽11の被洗物を第12洗濯槽12に移す。第12洗濯槽12内で、被洗物と仕上げ水とを揺動する。その結果、被洗物におけるアルカリ剤及び過酸化水素等の残留濃度が低減される(仕上げ工程)。
【0041】
第12洗濯槽12に供給される仕上げ剤は、特に限定されず、公知の仕上げ剤が使用可能である。公知の仕上げ剤としては、柔軟剤及び糊剤等が挙げられる。
仕上げ工程における仕上げ水のpHは、6.0以上9.0以下であることが好ましく、7.0以上8.0以下であることがより好ましい。仕上げ水のpHが下限値以上であると過酸化水素還元剤の分解を抑制することができる。また、仕上げ水のpHが上限値以下であると被洗物が洗浄後に濯ぎ不足によるアルカリ焼けを起こすことを防止することができる。アルカリ焼けとは、被洗物にアルカリ剤等のアルカリ成分が残留することによって被洗物が黄色等に変色することをいう。
【0042】
水への中和組成物の供給量(即ち、仕上げ水中の中和組成物の含有量)は、被洗物に残留しているアルカリ剤を十分に中和し、かつ過酸化水素を十分に還元する量であればよい。
第12洗濯槽12における被洗物及び仕上げ水の揺動時間は、1分以上6分以下が好ましく、1.5分以上5分以下がより好ましく、2分以上4分以下が特に好ましい。薬剤投入後の揺動時間は、1分以上であることが好ましい。揺動時間が上限値以下であると、仕上げ工程の作業効率の向上を図ることができる。揺動時間が下限値以上であると、被洗物と中和組成物を十分に撹拌することできる。その結果、被洗物に残留している過酸化水素を効率的に中和することができる。また、被洗物に残留している過酸化水素を効率的に還元することができる。その結果、仕上げ工程後の仕上げ水における過酸化水素の濃度を低減することができる。
【0043】
仕上げ水は、第12洗濯槽12から排水管112を介して適宜排出され、脱水回収水リサイクルタンク700に流入する。
第12洗濯槽12から排出された仕上げ水における過酸化水素の濃度は、0質量ppm以上10質量ppm以下であることが好ましく、0質量ppm以上5質量ppm以下であることがより好ましく、0質量ppm以上2質量ppm以下であることがさらに好ましく、0質量ppm以上1質量ppm以下であることが特に好ましい。第12洗濯槽12から排出された仕上げ水における過酸化水素の濃度が10質量ppm以下であると、排出された仕上げ水を、投入水として有効に再利用できる。
仕上げ水における過酸化水素の濃度の測定方法は特に限定されず、公知の測定器を用いて測定することができる。公知の測定器としては、例えば、過酸化水素と呈色反応を起こす呈色試薬(例えば、ポルフィリン化合物)を含む試験紙等が挙げられる。
【0044】
第12洗濯槽12の仕上げ水は、洗濯槽同士の間の傾斜障壁を越えて、第9洗濯槽9〜第11洗濯槽11に流入する。このため、第9洗濯槽9〜第11洗濯槽11における濯ぎ水は、サワー剤及び過酸化水素還元剤を含有する。このサワー剤はアルカリ洗剤を中和するため、被洗物におけるアルカリ剤の残留濃度を低減する。また、過酸化水素還元剤は過酸化水素を中和するため、被洗物における過酸化水素の残留濃度を低減する。第9洗濯槽9〜第11洗濯槽11の濯ぎ水における過酸化水素の濃度は、0質量ppm以上100質量ppm以下であることが好ましく、0質量ppm以上10質量ppm以下がより好ましい。特に、第9洗濯槽9から排出された濯ぎ水における過酸化水素の濃度が0質量ppm以上2質量ppm以下であることが、投入水としての再利用の観点から好ましい。
【0045】
実施形態の洗濯方法は、仕上げ工程において過酸化水素還元剤を含む仕上げ水で被洗物を処理する点に特徴を有する。仕上げ工程においては、所定の間、被洗物及び仕上げ水を揺動する。そのため、過酸化水素還元剤が被洗物の内部に浸透し、被洗物に残留している過酸化水素を還元することができる。その結果、仕上げ工程後の仕上げ水における過酸化水素の濃度を所望の数値にまで低減することができる。
【0046】
図2の連続洗濯機1000においては、中和組成物の成分であるサワー剤及び過酸化水素還元剤は、中和組成物槽400の中で予め混合されていても良い。あるいは、サワー剤及び過酸化水素還元剤を中和組成物槽400の中で混合せずに2系統の配管を介して、第12洗濯槽12に供給し、仕上げ水の中で混合されても良い。中でも、中和組成物が、サワー剤と過酸化水素還元剤と水とを含有する水溶液であることが、配管・供給装置の共有化の点及び経済性の点から好ましい。
【0047】
第12洗濯槽12内の被洗物を脱水機13に移す。脱水機13によって、被洗物を脱水する。その後、被洗物を乾燥器(不図示)に移し、乾燥する。脱水機13において生じた水は、排水管113を介して排出され、脱水回収水リサイクルタンク700に流入する。
脱水機13において生じた水における過酸化水素の濃度は、0質量ppm以上10質量ppm以下であることが好ましく、0質量ppm以上5質量ppm以下であることがより好ましく、0質量ppm以上2質量ppm以下であることがさらに好ましく、0質量ppm以上1質量ppm以下であることが特に好ましい。脱水機13から排出された仕上げ水における過酸化水素の濃度が10質量ppm以下であると、排出された仕上げ水を、投入水として有効に再利用できる。
【0048】
脱水回収水リサイクルタンク700に流入した水は、供給管701を介して被洗物投入水タンク800に供給される。リサイクルタンク600において回収された水も、供給管602を介して被洗物投入水タンク800に供給される。被洗物投入水タンク800には、水W3が供給される。被洗物投入水タンク800には、過酸化水素の濃度が低減された水が貯えられる。
水W3としては、例えば、水道水及び井戸水、鉄化合物及びマンガン化合物を水処理により除去した水、イオン交換等により軟水化を行う軟水機を通した水等が挙げられる。
【0049】
第9洗濯槽9は、第12洗濯槽12よりも、過酸化水素が供給される第5洗濯槽5に近い。よって、第9洗濯槽9からリサイクルタンク600に回収された水は、第12洗濯槽12から脱水回収水リサイクルタンク700に回収された水よりも、高い過酸化水素濃度を有する。連続洗濯機1000においては、回収水移送ポンプ620により、被洗物投入水タンク800の水における過酸化水素の濃度が所定の数値を超過しないように、脱水回収水リサイクルタンク700から供給される水の流量に対するリサイクルタンク600から供給される水の流量を調節する。
【0050】
被洗物投入水タンク800における水は、投入水として被洗物投入口14に投入される。具体的には、投入水は、被洗物投入水移送ポンプ810によって供給管801を介して被洗物投入口14に投入される。被洗物投入口14に投入された投入水は、被洗物を巻き込みながら第1洗濯槽1に流入する。このようにして、リサイクルタンク600及び脱水回収水リサイクルタンク700において回収された水が、第1洗濯槽1に対する投入水として再利用される。
【0051】
被洗濯物に付着した血液汚れは、過酸化水素によって酸化され易い。酸化された血液汚れは、タンパク質の変性により被洗物から除去され難くなるという問題を有する。本実施形態においては、投入水における過酸化水素の濃度が、0質量ppm以上10質量ppm以下であることが好ましく、0質量ppm以上5質量ppm以下であることがより好ましく、0質量ppm以上2質量ppm以下であることがさらに好ましく、0質量ppm以上1質量ppm以下であることが特に好ましい。投入水における過酸化水素の濃度が10質量ppm以下であると、投入水が被洗物と接触した際に、被洗物の血液汚れが過酸化水素によって酸化することを抑制することできる。
同様の理由により、第1洗濯槽1において使用される第1の洗浄水における過酸化水素の濃度は、0質量ppm以上10質量ppm以下であることが好ましく、0質量ppm以上5質量ppm以下であることがより好ましく、0質量ppm以上2質量ppm以下であることがさらに好ましく、0質量ppm以上1質量ppm以下であることが特に好ましい。投入水における過酸化水素の濃度と第1の洗浄水における過酸化水素の濃度の両方を好ましい数値範囲内に調節することにより、被洗物の血液汚れが過酸化水素によって酸化することをより確実に抑制することができる。
なお、過酸化水素による血液汚れの酸化は、温度に依存し、温度が高い程酸化が促進する。よって、投入水の温度が高い程、過酸化水素の濃度は低く調節することが好ましい。
逆に、過酸化水素の濃度が低い場合は、投入水の温度を高く設定することができる。例えば、投入水における過酸化水素の濃度は0質量ppm以上2質量ppm以下であるとき、投入水の温度が40℃以上55℃以下であることが好ましく、46℃以上55℃以下であることがより好ましい。被洗物投入水の温度を高く設定すると、熱交換を含めた水のリサイクルにより、全体のエネルギーコストを削減することができる。
以上説明した実施形態の洗濯方法では、洗浄水、濯ぎ水、仕上げ水が被洗物に対して向流しているが、本願発明の洗濯方法はこの実施形態に限定されず、洗浄水、濯ぎ水、仕上げ水が被洗物に対して並流していてもよい。
【0052】
以上説明した本発明の洗濯方法によれば、仕上げ工程において過酸化水素還元剤を含む仕上げ水で被洗物を処理するため、被洗物から血液汚れをより効率的に除去できる。また、本発明の中和組成物は、本発明の洗濯方法における血液汚れの除去に好適であり、血液洗浄強化剤として使用することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
実施例1では、連続洗濯機を用いて血液汚染布を洗浄した。使用した連続洗濯機は、洗濯槽の数が16であった点を除いては、図2の連続洗濯機1000と同様であった。洗濯方法は、実施形態の洗濯方法に準じて行った。水流方向は被洗物と同方向であった(並流、バッチフロー又はコーフローと称する。)。洗濯槽の区分は、次の通りであった。第1の洗濯槽〜第3の洗濯槽:第1洗浄工程(予洗工程)、第4の洗濯槽〜第10の洗濯槽:第2洗浄工程(本洗工程)、第11の洗濯槽〜第15の洗濯槽:濯ぎ工程、第16の洗濯槽:仕上げ工程。実施例1においては、第16の洗濯槽の排水と脱水工程の排水を第1の洗濯槽への投入水として再利用した。
洗浄剤としてHAK洗剤(ライオンハイジーン株式会社製)1.0%owfを第1の洗濯槽に供給した。その際の第1の洗濯槽内の洗浄水のpHは11.5であった。漂白剤として過酸化水素0.16%owfを第4の洗濯槽に供給した。その際の第4の洗濯槽の過酸化水素濃度は400質量ppmであった。中和組成物として、亜硫酸ナトリウム20質量%、リンゴ酸5質量%及び水75質量%の組成物を第16の洗濯槽(仕上げ槽)に供給した。亜硫酸ナトリウム20質量%、リンゴ酸5質量%及び水75質量%の組成物を350g供給したところ、第16の洗濯槽の仕上げ水における過酸化水素濃度は0質量ppmであった。被洗物として血液汚染布(EMPA111)を用い、他のシーツと合せて60kgの被洗物を調製した。また、予洗工程においては、洗浄温度は45℃であり、洗浄時間は6分であった。また、本洗工程においては、洗浄温度は80℃であり、洗浄時間は14分であった。なお、「%owf」は、被洗物の質量に対する百分率を示す。
過酸化水素の濃度の測定方法は、半定量イオン試験パーオキシド100もしくは半定量イオン試験パーオキシド1000(MACHEREY−NAGEL社製)を用いて測定した。
血液洗浄力の評価方法は、5cm×5cmに裁断した血液汚染布(EMPA111:EMPA TESTMATERIAL社製)5枚を縫い付けたシーツを1枚洗濯した。5枚の洗浄力評価布の反射率を測定し、洗浄率の平均値を洗浄力とした。
反射率計(日本電色製、SE−2000)により、各種汚染布について洗浄前の反射率及び洗浄後の反射率を測定し、下記式によって計算を行い、洗浄率とした。
洗浄率(%)=(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(白布の反射率−洗浄前の反射率)×100
血液汚染布に対する血液洗浄結果を、以下の表1に示す。血液洗浄結果の欄において、Aは、血液洗浄力が90%以上100%以下であったことを示し、Bは、血液洗浄力が80%以上90%未満であったことを示し、Cは、血液洗浄力が70%以上80%未満であったことを示し、Dは、血液洗浄力が70%未満であったことを示す。
【0055】
(比較例1)
比較例1では、中和組成物として、亜硫酸ナトリウム20質量%、リンゴ酸5質量%及び水75質量%の組成物を第11の洗濯槽(濯ぎ工程の1槽目)に供給したことを除いては、実施例1と同様に血液汚染布を洗浄した。第11の洗濯槽の濯ぎ用の水における過酸化水素濃度は170質量ppmであった。血液汚染布の洗浄結果を、以下の表1に示す。
【0056】
(比較例2)
比較例2では、中和組成物として、亜硫酸ナトリウム20質量%、リンゴ酸5質量%及び水75質量%の組成物を第4の洗濯槽(本洗工程の1槽目)に供給したことを除いては、実施例1と同様に血液汚染布を洗浄した。第4の洗濯槽の洗浄水における過酸化水素濃度は350質量ppmであった。血液汚染布に対する血液洗浄結果を、以下の表1に示す。
【0057】
(比較例3)
比較例3では、中和組成物として、亜硫酸ナトリウム20質量%、リンゴ酸5質量%及び水75質量%の組成物を第1の洗濯槽(予洗工程の1槽目)に供給したことを除いては、実施例1と同様に血液汚染布を洗浄した。第1の洗濯槽の洗浄水における過酸化水素濃度は0質量ppmであった。ただし、被洗物投入水の過酸化水素濃度は30質量ppmであった。血液汚染布に対する血液洗浄結果を、以下の表1に示す。
【0058】
(比較例4)
比較例4では、過酸化水素還元剤として中和組成物として、亜硫酸ナトリウム20質量%、リンゴ酸5質量%及び水75質量%の組成物を被洗物投入水タンクに供給したことを除いては、実施例1と同様に血液汚染布を洗浄した。被洗物投入水タンクの投入水における過酸化水素濃度は0から10質量ppmであり、不均一であった。血液汚染布に対する血液洗浄結果を、以下の表1に示す。
【0059】
(比較例5)
比較例5では、過酸化水素還元剤として中和組成物として、亜硫酸ナトリウム20質量%、リンゴ酸5質量%及び水75質量%の組成物を被洗物投入水タンクと脱水回収水リサイクルタンクをつなぐ配管(図2の供給管701に相当)に供給したことを除いては、実施例1と同様に血液汚染布を洗浄した。被洗物投入水タンクに接続された配管における過酸化水素濃度は0から15質量ppmであり、不均一であった。血液汚染布に対する血液洗浄結果を、以下の表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果から、第16の洗濯槽(仕上げ槽)に過酸化水素還元剤を供給することによって、優れた血液洗浄効果が得られたことが判明した。この結果は、過酸化水素に対する過酸化水素還元剤の還元効果は、仕上げ槽で行われる仕上げ工程において顕著に発揮されることを示している。
【0062】
(実験例1〜5)
実験例1〜5では、実施例1と同じ連続洗濯機を用いて血液汚染布を洗浄した。実験例1〜5と実施例1の相違するところは、投入水の温度及び投入水における過酸化水素濃度を所定の数値に設定したことである。なお、被洗物投入水タンクにおける投入水の温度設定は、図2に図示しない熱交換器を用いて仕上げ槽の水の温度を調整することにより行った。また、投入水の過酸化水素濃度の調整は、仕上げ槽に入れる亜硫酸ナトリウム20質量%、リンゴ酸5質量%及び水75質量%の組成物の投入量を調整することにより行った。
血液汚染布に対する血液洗浄結果を、以下の表2に示す。還元力の残存率の欄において、Aは、血液洗浄力が80%以上100%以下であったことを示し、Bは、血液洗浄力が70%以上80%未満であったことを示し、Cは、血液洗浄力が70%未満であったことを示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2の結果から、投入水における過酸化水素の濃度が0質量ppm以上10質量ppm以下であるとき、優れた血液洗浄効果が得られたことが判明した。また、投入水の温度が46℃以上(すなわち、被洗物における血液汚れの酸化を促進する環境)であっても、投入水における過酸化水素濃度を0質量ppm以上2質量ppm以下に調節することによって、優れた血液洗浄効果が得られたことが判明した。なお、投入水の温度が高い程、被洗物に対する優れた脱水効果を得ることできる。
【0065】
(実験例6〜15)
実験例6〜15では、過酸化水素還元剤と、サワー剤と、水とを含有する中和組成物を調製した。得られた中和組成物を開放条件で24時間静置した後、単独の過酸化水素還元剤と比較して、中和組成物の還元力の残存率を測定した。還元力の残存率の測定方法は、以下のように行った。先ず、赤褐色に呈色させた、350質量ppm過酸化水素、0.125M硫酸、0.5質量%ヨウ化カリウムの水溶液100gを、単独の過酸化水素還元剤もしくは24時間静置後の中和組成物で滴定し、水溶液の色が消えた時点を終点とした。
次に、還元力の残存率を、(中和組成物における過酸化水素還元剤と同じ質量%の単独の過酸化水素還元剤で滴定したときの終点までの滴定総質量)/(24時間静置後の中和組成物で滴定したときの終点までの滴定総質量)×100(%)で計算した。
また、中和組成物を実施例1で使用した連続洗濯機における第16の洗濯槽(仕上げ槽)に供給した。その後、第16の洗濯槽から取り出された被洗物を脱水工程において脱水し、回収された水のpHを測定した。被洗物におけるアルカリ成分の残存状況を評価した。過酸化水素還元剤として亜硫酸ナトリウムを用いた。また、サワー剤としてリンゴ酸を用いた。
また、中和組成物の低温での液安定性を判断する方法として以下の実験を行った。具体的には、得られた中和組成物を100mlのバイアル瓶に入れ、各温度(15℃、5℃、−5℃)へ調温した。各温度に調温したサンプルに亜硫酸ナトリウムの粉末を20mg加えて1分間撹拌後に1日静置し、各温度において、中和組成物に後添加した亜硫酸ナトリウム粉末の溶解性を評価した。
亜硫酸ナトリウムとリンゴ酸と水の各質量部、還元力の残存率並びに被洗物におけるアルカリ成分の残存状況、低温での液安定性の状況を、以下の表3に示す。
還元力の残存率の欄において、Aは、還元力の残存率が80%〜100%であったことを示し、Bは、還元力の残存率が80%未満であったことを示す。
被洗物におけるアルカリ成分の残存状況の欄において、Aは、脱水工程において回収された水のpHが9未満であったことを示し、Bは、脱水工程において回収された水のpHが9以上であったことを示す。
各温度の欄において1日経過後に析出が大きくなったものは×、変化がなかったものを△とし、析出が消失したものを○とした。
【0066】
【表3】
【0067】
表3の結果から、中和組成物におけるリンゴ酸に対する亜硫酸ナトリウムの質量比が1.5以上8.0以下、好ましくは1.5以上3.5以下、より好ましくは1.5以上2.5以下であった時、中和組成物が還元力の残存率に優れていたことが判明した。また、被洗物におけるアルカリ成分の残存状況も良好であったことが判明した。
【0068】
(実験例16〜20)
実験例16〜20では、過酸化水素還元剤と、サワー剤と、水とを含有する中和組成物を調製した。得られた中和組成物をバイアル瓶中に保存し、開放条件で24時間静置した後、中和組成物の還元力の残存率を測定した。過酸化水素還元剤として亜硫酸ナトリウムを用いた。また、サワー剤としてリンゴ酸を用いた。
亜硫酸ナトリウムとリンゴ酸と水の各質量部、及び還元力の残存率を、以下の表4に示す。還元力の残存率の欄において、Aは、還元力の残存率が90%〜100%であったことを示し、Bは、還元力の残存率が90%未満であったことを示す。
【0069】
【表4】
【0070】
表4の結果から、亜硫酸ナトリウムを6.0質量部以下まで希釈すると、空気による酸化の影響を受けて、24時間後に還元力が90%未満に低下することが判明した。中和組成物における水の配合比率は、80質量部以下であることが好ましいことが示唆された。
【符号の説明】
【0071】
1〜12 第1洗濯槽〜第12洗濯槽
13 脱水機
14 被洗物投入口
100 洗濯本体部
101、102、103、109、112、113 排水管
120 駆動装置
130 中心軸線
200 洗剤希釈溶解槽
300 漂白剤希釈槽
400 中和組成物槽
500 仕上げ剤槽
600 リサイクルタンク
601、602、701、801 供給管
610 回収水移送ポンプ
620 回収水移送ポンプ
700 脱水回収水リサイクルタンク
710 脱水回収水移送ポンプ
800 被洗物投入水タンク
810 被洗物投入水移送ポンプ
W1、W2、W3 水
E1、E2、E3 排水
図1
図2