特許第6945338号(P6945338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6945338医用画像診断装置及び磁気共鳴イメージング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945338
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】医用画像診断装置及び磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20210927BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   A61B5/055 370
   A61B6/03 370B
【請求項の数】11
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-88423(P2017-88423)
(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公開番号】特開2018-183512(P2018-183512A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】今田 英孝
(72)【発明者】
【氏名】大岩 義治
(72)【発明者】
【氏名】伴苗 修平
(72)【発明者】
【氏名】市之瀬 伸保
【審査官】 姫島 あや乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−088389(JP,A)
【文献】 特表2005−514975(JP,A)
【文献】 特開平03−286740(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/188936(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/28
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の心周期に関する情報を取得する取得部と、
前記情報を用いて、前記心周期のトリガー間隔の分布を導出する導出部と、
前記心周期に関する情報に同期した同期撮像において有効なデータを判定するための条件として用いられる前記トリガー間隔の範囲である有効範囲を設定する設定部と、
前記心周期のトリガー間隔の分布を表示部に表示させ、かつ、前記分布の中で前記有効範囲を表示部に表示させる表示制御部と
を備え、
前記設定部は、前記トリガー間隔の総数に対する、前記同期撮像において有効なデータとして用いるトリガー間隔の数の比率を設定し、前記トリガー間隔の分布及び前記比率に基づいて、前記有効範囲を設定する、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記有効範囲に基づいて同期撮像が行われた場合の予測撮像時間を算出する算出部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記予測撮像時間を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記トリガー間隔の総数に対する、前記同期撮像において有効なデータとして用いるトリガー間隔の数の比率を算出する算出部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記比率を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
被検体の生体信号の周期を示す時間間隔の情報を収集する収集部と、
前記時間間隔の情報を用いて統計処理を行うことで、前記時間間隔の分布を導出する導出部と、
前記生体信号に同期した同期撮像において有効なデータを判定するための条件として用いられる前記時間間隔の範囲である有効範囲を設定する設定部と、
前記時間間隔の分布を表す分布情報を表示し、かつ、当該分布情報において前記有効範囲に含まれる時間間隔の分布を識別可能に表示する表示制御部と
を備え、
前記設定部は、前記時間間隔の情報に含まれる時間間隔の総数に対する、前記同期撮像において有効なデータとして用いる時間間隔の数の比率を設定し、前記時間間隔の分布及び前記比率に基づいて、前記有効範囲を設定する、医用画像診断装置。
【請求項5】
前記時間間隔の分布及び前記有効範囲に基づいて、前記同期撮像が行われた場合の予測撮像時間を算出する第1算出部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記予測撮像時間をさらに表示する、
請求項に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記時間間隔の分布及び前記有効範囲に基づいて、前記時間間隔の情報に含まれる時間間隔の総数に対する、前記有効範囲に含まれる時間間隔の数の比率を算出する第2算出部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記比率をさらに表示する、
請求項又はに記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記比率が変更された場合に、変更後の比率に基づいて前記有効範囲を再設定し、
前記第2算出部は、前記有効範囲が変更された場合に、変更後の有効範囲に基づいて前記比率を再算出する、
請求項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
被検体の生体信号の周期を示す時間間隔の情報を収集する収集部と、
前記時間間隔の情報を用いて統計処理を行うことで、前記時間間隔の分布を導出する導出部と、
前記生体信号に同期した同期撮像において有効なデータを判定するための条件として用いられる前記時間間隔の範囲である有効範囲を設定する設定部と、
前記時間間隔の分布及び前記有効範囲に基づいて、前記時間間隔の情報に含まれる時間間隔の総数に対する、前記有効範囲に含まれる時間間隔の数の比率を算出する第2算出部と、
前記時間間隔の分布を表す分布情報及び前記比率を表示し、かつ、当該分布情報において前記有効範囲に含まれる時間間隔の分布を識別可能に表示する表示制御部と
を備え、
前記設定部は、前記比率が変更された場合に、変更後の比率に基づいて前記有効範囲を再設定し、
前記第2算出部は、前記有効範囲が変更された場合に、変更後の有効範囲に基づいて前記比率を再算出する、
医用画像診断装置。
【請求項9】
前記設定部は、表示された前記分布情報に対して時間間隔の範囲を指定する操作を操作者から受け付け、受け付けた範囲に基づいて、前記有効範囲を設定する、
請求項のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記同期撮像が行われる際に設定される時間間隔であって、前記生体信号と同期したデータ収集の実行条件を決定するための基準となる時間間隔を前記分布情報に関連付けてさらに表示する、
請求項のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
被検体の心電信号の周期を示すRR間隔の情報を収集する収集部と、
前記RR間隔の情報を用いて統計処理を行うことで、前記RR間隔の分布を導出する導出部と、
前記心電信号に同期した同期撮像において有効なデータを判定するための条件として用いられる前記RR間隔の範囲である有効範囲を設定する設定部と、
前記RR間隔の分布を表す分布情報を表示し、かつ、当該分布情報において前記有効範囲に含まれるRR間隔の分布を識別可能に表示する表示制御部と
を備え、
前記設定部は、前記RR間隔の情報に含まれるRR間隔の総数に対する、前記同期撮像において有効なデータとして用いるRR間隔の数の比率を設定し、前記RR間隔の分布及び前記比率に基づいて、前記有効範囲を設定する、磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置及び磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置(MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置)やX線CT(Computed Tomography)装置等の医用画像診断装置では、被検体の生体信号に同期した同期撮像が行われる場合がある。同期撮像では、被検体の心電信号や、呼吸信号、脈波信号等に同期して、画像を生成するためのデータ収集が行われる。このような同期撮像では、生体信号の周期が乱れた場合に、収集されたデータが有効なデータであるか否かを判定するための条件として、生体信号の周期を示す時間間隔の有効範囲が設定される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−174644号公報
【特許文献2】特許第2739131号公報
【特許文献3】特開2006−340838号公報
【特許文献4】特開2005−287949号公報
【特許文献5】特開平3−286740号公報
【特許文献6】再公表WO2013/062049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、同期撮像において用いられる時間間隔の有効範囲をより適切に設定することができる医用画像診断装置及び磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用画像診断装置は、収集部と、導出部と、設定部と、表示制御部とを備える。収集部は、被検体の生体信号の周期を示す時間間隔の情報を収集する。導出部は、前記時間間隔の情報を用いて統計処理を行うことで、前記時間間隔の分布を導出する。設定部は、前記生体信号に同期した同期撮像において有効なデータを判定するための条件として用いられる前記時間間隔の範囲である有効範囲を設定する。表示制御部は、前記時間間隔の分布を表す分布情報を表示し、かつ、当該分布情報において前記有効範囲に含まれる時間間隔の分布を識別可能に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る表示制御機能によって表示されるRR間隔の分布の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る表示制御機能によって表示されるRR間隔の分布の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる撮像条件の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る表示制御機能による予測撮像時間の表示の一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る表示制御機能による予測撮像時間の表示の他の例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われる撮像条件の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第3の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図10図10は、第3の実施形態に係る表示制御機能によって表示されるRR間隔の分布の一例を示す図である。
図11図11は、第3の実施形態に係るMRI装置によって行われる撮像条件の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、第1の変形例に係る表示制御機能によって表示されるRR間隔の分布の一例を示す図である。
図13図13は、第2の変形例に係る表示制御機能によって表示されるRR間隔の分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、医用画像診断装置の実施形態について説明する。なお、以下では、医用画像診断装置の一例として、MRI装置に関する適用例について説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送信コイル4、送信回路5、受信コイル6、受信回路7、架台8、寝台9、入力回路10、ディスプレイ11、記憶回路12、及び、処理回路13〜16、ECG(Electrocardiogram)センサ17、及び、ECG回路18を備える。
【0009】
静磁場磁石1は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成されており、内側の空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有している。ここで、例えば、静磁場磁石1は、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。また、例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成されたものではなく、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように1対の磁石を配置した、いわゆるオープン型の構成を有するものであってもよい。
【0010】
傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成されており、静磁場磁石1の内側に配置されている。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる3つのコイルを備える。ここで、x軸、y軸及びz軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、x軸の方向は、水平方向に設定され、y軸の方向は、鉛直方向に設定される。また、z軸の方向は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束の方向と同じに設定される。
【0011】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が備える3つのコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を傾斜磁場コイル2の内側の空間に発生させる。x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を適宜に発生させることによって、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。
【0012】
ここで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0013】
そして、各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、MR(Magnetic Resonance(磁気共鳴))信号に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
【0014】
送信コイル4は、当該送信コイル4の内側の空間にRF磁場を印加するRF(Radio Frequency)コイルである。具体的には、送信コイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内側に配置されている。そして、送信コイル4は、送信回路5から出力されるRFパルスに基づいて、内側の空間にRF磁場を印加する。
【0015】
送信回路5は、ラーモア周波数に対応するRFパルスを送信コイル4に出力する。例えば、送信回路5は、発振回路、位相選択回路、周波数変換回路、振幅変調回路、及び、高周波増幅回路を備える。発振回路は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数のRFパルスを発生する。位相選択回路は、発振回路から出力されるRFパルスの位相を選択する。周波数変換回路は、位相選択回路から出力されるRFパルスの周波数を変換する。振幅変調回路は、周波数変換回路から出力されるRFパルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波増幅回路は、振幅変調回路から出力されるRFパルスを増幅して送信コイル4に出力する。
【0016】
受信コイル6は、被検体Sから発せられるMR信号を受信するRFコイルである。例えば、受信コイル6は、送信コイル4の内側に配置された被検体Sに装着され、送信コイル4によって印加されるRF磁場の影響で被検体Sから発せられるMR信号を受信する。そして、受信コイル6は、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、受信コイル6には、撮像対象の部位ごとに専用のコイルが用いられる。ここで、専用のコイルとは、例えば、頭部用の受信コイル、頚部用の受信コイル、肩用の受信コイル、胸部用の受信コイル、腹部用の受信コイル、下肢用の受信コイル、脊椎用の受信コイル等である。
【0017】
受信回路7は、受信コイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。例えば、受信回路7は、選択回路、前段増幅回路、位相検波回路、及び、アナログデジタル変換回路を備える。選択回路は、受信コイル6から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅回路は、選択回路から出力されるMR信号を増幅する。位相検波回路は、前段増幅回路から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換回路は、位相検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
【0018】
なお、ここでは、送信コイル4がRF磁場を印加し、受信コイル6がMR信号を受信する場合の例を説明するが、各RFコイルの形態はこれに限られない。例えば、送信コイル4が、MR信号を受信する受信機能をさらに有してもよいし、受信コイル6が、RF磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。送信コイル4が受信機能を有している場合は、受信回路7は、送信コイル4によって受信されたMR信号からもMR信号データを生成する。また、受信コイル6が送信機能を有する場合は、送信回路5は、受信コイル6にもRFパルスを出力する。
【0019】
架台8は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送信コイル4を収容している。具体的には、架台8は、円筒状に形成された中空のボアBを有しており、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送信コイル4がボアBを囲むように配置された状態で、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送信コイル4それぞれを収容している。ここで、架台8におけるボアBの内側の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
【0020】
寝台9は、被検体Sが載置される天板9aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、架台8におけるボアBの内側へ天板9aを挿入する。例えば、寝台9は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
【0021】
入力回路10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力回路10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路16へ出力する。例えば、入力回路10は、トラックボールやスイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0022】
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0023】
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0024】
処理回路13は、寝台制御機能13aを有する。例えば、処理回路13は、プロセッサによって実現される。寝台制御機能13aは、寝台9に接続され、制御用の電気信号を寝台9へ出力することで、寝台9の動作を制御する。例えば、寝台制御機能13aは、入力回路10を介して、天板9aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板9aを移動するように、寝台9が有する天板9aの駆動機構を動作させる。
【0025】
処理回路14は、実行機能14aを有する。例えば、処理回路14は、プロセッサによって実現される。実行機能14aは、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、MR信号データのデータ収集を行う。
【0026】
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路5が送信コイル4に供給するRFパルスの強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
【0027】
また、実行機能14aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路12に記憶させる。なお、実行機能14aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路12に記憶される。
【0028】
処理回路15は、画像生成機能15aを有する。例えば、処理回路15は、プロセッサによって実現される。画像生成機能15aは、記憶回路12に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能15aは、実行機能14aによって記憶回路12に記憶されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能15aは、生成した画像の画像データを記憶回路12に記憶させる。
【0029】
処理回路16は、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、処理回路16は、プロセッサによって実現される。例えば、処理回路16は、入力回路10を介して操作者から撮像条件(パルスシーケンスに関する各種のパラメータの入力等)を受け付け、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成する。そして、処理回路16は、生成したシーケンス実行データを処理回路14に送信することで、MR信号データのデータ収集を制御する。また、例えば、処理回路16は、操作者から要求された画像の画像データを記憶回路12から読み出し、読み出した画像をディスプレイ11に出力する。
【0030】
ECGセンサ17は、被検体Sの体表に装着され、被検体Sの心電信号を検出する。そして、ECGセンサ17は、検出した心電信号をECG回路18に出力する。
【0031】
ECG回路18は、ECGセンサ17から出力される心電信号に基づいて、所定の心電波形を検出する。例えば、ECG回路18は、所定の心電波形として、R波を検出する。そして、ECG回路18は、所定の心電波形を検出したタイミングでトリガー信号を生成し、生成したトリガー信号を処理回路16に出力する。ここで、トリガ信号は、無線通信によって、ECG回路18から処理回路16へ送信されてもよい。
【0032】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、被検体の生体信号に同期した同期撮像を行う機能を有する。
【0033】
本実施形態では、MRI装置100が、被検体の心電信号に同期した同期撮像を行う場合の例を説明する。例えば、MRI装置100は、被検体の心電波形に含まれるR波をトリガー信号として、データ収集用のパルスシーケンスを実行する。具体的には、MRI装置100は、ECG回路18から出力されるトリガー信号に基づいて、データ収集用のパルスシーケンスを実行する。
【0034】
また、MRI装置100は、心電信号に同期した同期撮像を行う際に、撮像条件の一つとして、心電信号に同期したデータ収集の実行条件を決定するための基準となるRR間隔を設定する。ここで、RR間隔は、心電波形に含まれる一周期ごとのR波の間隔であり、心電信号の周期を示す時間間隔(トリガー間隔とも呼ばれる)として用いられる。例えば、MRI装置100は、撮像条件として設定されたRR間隔に基づいて、トリガー信号が検出されてからパルスシーケンスの実行を開始するまでの遅延時間や、パルスシーケンスを実行する長さ等を決定する。
【0035】
ここで、一般的に、心電信号はバラつきを有するため、実際に検出されるRR間隔は、撮像条件として設定されたRR間隔と一致しないこともあり得る。すなわち、撮像条件として設定されるRR間隔は、実際にパルスシーケンスを実行するタイミングを決めるものではなく、目安として設定されるものである。
【0036】
このため、MRI装置100は、心電信号と同期した同期撮像を行う際には、撮像条件の一つとして、不整脈等によって心電信号の周期が乱れた場合に、収集されたデータが有効なデータであるか否かを判定するためのRR間隔の有効範囲を設定する。そして、MRI装置100は、同期撮像が行われている間に、R波が検出されるごとに、前回のR波から今回のR波までの実際のRR間隔を検出し、検出したRR間隔が有効範囲内であった場合に、前回のR波で収集されたデータを有効なデータと判定する。ここで、検出したRR間隔が有効範囲外であった場合には、MRI装置100は、前回のR波で収集されたデータを無効なデータと判定し、そのデータを再収集する。例えば、MRI装置100は、RR間隔が有効範囲外であったときの次のR波で、又は、予定していた回数のデータ収集が行われた後で、無効と判定したデータと同じ収集条件でデータを再収集する。
【0037】
しかしながら、一般的に、心電信号のバラつきは被検体の状態に応じて変化するため、このような同期撮像を行う場合に、RR間隔の有効範囲を適切に設定することは難しいと考えられる。
【0038】
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、同期撮像において用いられるRR間隔の有効範囲をより適切に設定することができるように構成されている。
【0039】
具体的には、本実施形態では、処理回路16が、収集機能16aと、導出機能16bと、設定機能16cと、表示制御機能16dとを有する。なお、収集機能16aは、特許請求の範囲における収集部の一例である。また、導出機能16bは、特許請求の範囲における導出部の一例である。また、設定機能16cは、特許請求の範囲における設定部の一例である。また、表示制御機能16dは、特許請求の範囲における表示制御部の一例である。
【0040】
収集機能16aは、被検体の心電信号の周期を示すRR間隔の情報を収集する。具体的には、収集機能16aは、ECG回路18によってR波が検出された際に出力されるトリガー信号に基づいてRR間隔を計測することで、RR間隔の情報を収集する。そして、収集機能16aは、収集したRR間隔の情報を記憶回路12に記憶させる。
【0041】
例えば、収集機能16aは、被検体Sの撮像が行われる前に、寝台9の天板9aに被検体Sが載置された状態で、RR間隔の情報を収集する。例えば、収集機能16aは、寝台9の天板9aによって被検体Sが架台8のボアBの内側に配置された状態で、RR間隔の情報を収集する。なお、収集機能16aは、被検体Sが架台8のボアBの内側に配置される前に、RR間隔の情報を収集してもよい。
【0042】
例えば、収集機能16aは、被検体に装着されたECGセンサ17と、ECG回路18と、処理回路16との間の接続が確立した後に、ECG回路18から出力されるトリガー信号を処理回路16が検出した時点で、RR間隔の情報の収集を開始する。その後、収集機能16aは、予め決められた時間の間、RR間隔の情報を収集する。
【0043】
導出機能16bは、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報を用いて統計処理を行うことで、RR間隔の分布を導出する。具体的には、導出機能16bは、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報を記憶回路12から読み出し、読み出した情報に基づいて、RR間隔の分布を導出する。
【0044】
例えば、導出機能16bは、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報を用いて、度数分布等の統計処理を行う。なお、導出機能16bが行う統計処理は、度数分布に限られず、標本分布を得ることが可能な公知の各種の方法を用いることができる。
【0045】
設定機能16cは、心電信号に同期した同期撮像の撮像条件を設定する。具体的には、設定機能16cは、撮像条件の一つとして、心電信号に同期した同期撮像において有効なデータを判定するための条件として用いられるRR間隔の範囲である有効範囲を設定する。例えば、設定機能16cは、撮像条件の一つとして、RR間隔に関する上限値及び下限値を指定する操作を操作者から受け付け、受け付けた上限値及び下限値に基づいて、RR間隔の有効範囲を設定する。
【0046】
また、設定機能16cは、撮像条件の一つとして、心電信号に同期したデータ収集の実行条件を決定するための基準となるRR間隔を設定する。例えば、設定機能16cは、撮像条件の一つとして、RR間隔とする時間を入力する操作を操作者から受け付け、受け付けた時間に基づいて、基準となるRR間隔を設定する。そして、設定機能16cは、設定されたRR間隔に基づいて、トリガー信号が検出されてからパルスシーケンスの実行を開始するまでの遅延時間や、データ収集時間等を決定する。
【0047】
例えば、設定機能16cは、記憶回路12に予め記憶された撮像条件を参照し、撮像条件に含まれる複数のパラメータをディスプレイ11に表示する。例えば、記憶回路12には、複数又は一つの撮像単位(撮像プロトコルとも呼ばれる)ごとに、複数のパラメータを含む撮像条件が記憶される。そして、設定機能16cは、ディスプレイ11に表示された各パラメータを編集する操作を操作者から受け付け、編集されたパラメータに基づいて、撮像に用いる撮像条件を設定する。この場合に、例えば、予め記憶された撮像条件にパラメータの一つとして、RR間隔の有効範囲、及び、基準となるRR間隔が含まれていてもよい。
【0048】
表示制御機能16dは、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布を表す分布情報をディスプレイ11に表示し、かつ、当該分布情報において、設定機能16cによって設定された有効範囲に含まれるRR間隔の分布を識別可能に表示する。具体的には、表示制御機能16dは、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報を記憶回路12から読み出し、読み出した情報に基づいて、ディスプレイ11に分布情報を表示する。
【0049】
また、表示制御機能16dは、同期撮像が行われる際に設定されるRR間隔であって、心電信号と同期したデータ収集の実行条件を決定するために用いられる基準となるRR間隔をRR間隔の分布情報に関連付けてさらに表示する。
【0050】
図2及び3は、第1の実施形態に係る表示制御機能16dによって表示されるRR間隔の分布の一例を示す図である。例えば、図2に示すように、表示制御機能16dは、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布を表すヒストグラムを表示する。図2において、横軸は、RR間隔を示しており、縦軸は、RR間隔の頻度を示している。なお、例えば、表示制御機能16dは、RR間隔の分布を折れ線グラフ等で表示してもよい。
【0051】
そして、例えば、図3に示すように、表示制御機能16dは、RR間隔の分布を表すヒストグラム上で、設定機能16cによって設定された有効範囲の上限値となるRR間隔の位置にグラフィック101(実線の直線で示す)を表示し、下限値となるRR間隔の位置にグラフィック102(実線の直線で示す)を表示する。さらに、表示制御機能16dは、RR間隔の分布を表すヒストグラム上で、設定機能16cによって撮像条件として設定されたRR間隔の位置にグラフィック103(破線の直線で示す)を表示する。
【0052】
また、表示制御機能16dは、RR間隔の分布を表すヒストグラム上で、2つのグラフィックの間の範囲をそれ以外の範囲とは異なる色を付けて表示する。このように、有効範囲の上限値を示すグラフィック101と下限値を示すグラフィック102との間の範囲をそれ以外の範囲とは異なる色で表示することによって、RR間隔の分布を表すヒストグラム上で、有効範囲に含まれるRR間隔の分布が強調して表示され、当該分布が識別可能に表示されることになる。
【0053】
そして、本実施形態では、前述した設定機能16cが、表示制御機能16dによって表示された分布情報に対してRR間隔の範囲を指定する操作を操作者から受け付け、受け付けた範囲に基づいて、RR間隔の有効範囲を設定する。
【0054】
例えば、図3に示す例では、設定機能16cは、RR間隔のヒストグラム上に表示された有効範囲を示す2つのグラフィックを横軸方向に移動する操作を操作者から受け付ける。例えば、設定機能16cは、2つのグラフィックが離れるように各グラフィックを移動する操作を受け付けることで、有効範囲を拡大する操作を受け付ける。または、例えば、設定機能16cは、2つのグラフィックが近付くように各グラフィックを移動する操作を受け付けることで、有効範囲を縮小する操作を受け付ける。例えば、設定機能16cは、2つのグラフィックを同じ方向へ移動する操作を受け付けることで、有効範囲の位置を移動する操作を受け付ける。そして、設定機能16cは、移動された各グラフィックによって示されるRR間隔の上限値及び下限値に基づいて、RR間隔の有効範囲を設定する。これにより、操作者が、RR間隔の分布情報を参照しながら、RR間隔の有効範囲を設定したり、変更したりできるようになり、より直感的に適切なRR間隔の有効範囲を設定できるようになる。
【0055】
以上、処理回路13〜16が有する各処理機能について説明した。ここで、図1に示す例では、各処理回路が有する処理機能がそれぞれ単一の処理回路によって実現されることとしたが、実施形態はこれに限られない。各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0056】
また、処理回路13〜16が有する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、各プログラムを記憶回路12から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路13〜16は、図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0057】
図4は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる撮像条件の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。例えば、図4に示すように、本実施形態では、まず、収集機能16aが、被検体の心電信号の周期を示すRR間隔の情報を収集する(ステップS101)。
【0058】
その後、導出機能16bが、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報を用いて統計処理を行うことで、RR間隔の分布を導出する(ステップS102)。また、設定機能16cが、撮像条件の一つとして、心電信号に同期した同期撮像において有効なデータを判定するための条件として用いられるRR間隔の範囲である有効範囲を設定する(ステップS103)。
【0059】
そして、表示制御機能16dが、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布を表す分布情報をディスプレイ11に表示する(ステップS104)。ここで、表示制御機能16dは、分布情報において、設定機能16cによって設定された有効範囲に含まれるRR間隔の分布を識別可能に表示する(ステップS105)。
【0060】
その後、操作者によって有効範囲が変更されるごとに(ステップS106,Yes)、設定機能16cが、変更された範囲で有効範囲を再設定する(ステップS107)。続いて、表示制御機能16dが、分布情報において、再設定された有効範囲に含まれるRR間隔の分布を識別可能に表示する(ステップS105に戻る)。
【0061】
そして、操作者によって有効範囲が変更されず(ステップS106,No)、かつ、撮像条件の設定が完了した場合には(ステップS108,Yes)、設定機能16cが、撮像条件の設定に関する処理を終了する。
【0062】
なお、図4に示した処理手順では、表示制御機能16dが分布情報を表示する前に、設定機能16cがRR間隔の有効範囲を設定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、表示制御機能16dが分布情報を表示した後に、設定機能16cがRR間隔の有効範囲を設定するようにしてもよい。
【0063】
ここで、上述した処理手順のうち、ステップS101は、例えば、処理回路16が収集機能16aに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS102は、例えば、処理回路16が導出機能16bに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS103、S106、S107、及びS108は、例えば、処理回路16が設定機能16cに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS104及びS105は、例えば、処理回路16が表示制御機能16dに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。
【0064】
上述したように、第1の実施形態では、RR間隔の分布を表す分布情報が表示され、かつ、当該分布情報において有効範囲に含まれるRR間隔の分布が識別可能に表示される。したがって、第1の実施形態によれば、同期撮像において用いられるRR間隔の有効範囲をより適切に設定することができる。また、RR間隔の情報を用いて統計処理を行った結果が表示されることで、操作者が、撮像条件を設定する際に、より適切なRR間隔及び有効範囲を設定できるようになる。この結果、撮像条件として設定されるRR間隔が適切でないことによって生じ得る再撮像等の手間を減らすことが可能になり、スループットの向上を図ることができる。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。上述したように、一般的に、心電信号はバラつきを有するため、実際に検出されるRR間隔は、撮像条件として設定されたRR間隔と一致しないこともあり得る。このため、不整脈等によって心電信号の周期が乱れた場合には、実際にかかる撮像時間が、撮像条件として設定されるRR間隔から算出される撮像時間と異なることもあり得る。
【0066】
そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明したMRI装置100が、さらに、RR間隔の分布及び有効範囲に基づいて、心電信号と同期した同期撮像が行われた場合の予測撮像時間を算出して表示する場合の例を説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、図1に示したMRI装置100の構成要素と同じ役割を果たす構成要素については、同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0067】
図5は、第2の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。例えば、図5に示すように、本実施形態に係るMRI装置200は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送信コイル4、送信回路5、受信コイル6、受信回路7、架台8、寝台9、入力回路10、ディスプレイ11、記憶回路12、及び、処理回路13〜15及び26、ECG(Electrocardiogram)センサ17、及び、ECG回路18を備える。
【0068】
具体的には、本実施形態では、処理回路26が、収集機能16aと、導出機能16bと、設定機能16cと、第1算出機能26eと、表示制御機能26dとを有する。なお、収集機能16aは、特許請求の範囲における収集部の一例である。また、導出機能16bは、特許請求の範囲における導出部の一例である。また、設定機能16cは、特許請求の範囲における設定部の一例である。また、第1算出機能26eは、特許請求の範囲における第1算出部の一例である。また、表示制御機能26dは、特許請求の範囲における表示制御部の一例である。
【0069】
第1算出機能26eは、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布、及び、設定機能16cによって設定された有効範囲に基づいて、心電信号と同期した同期撮像が行われた場合の予測撮像時間を算出する。
【0070】
例えば、第1算出機能26eは、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布に基づいて、以下の式(1)を用いて、予測撮像時間Tを算出する。
【0071】
T=Tx×{n×x/(x+y)}+Ty×{n×y/(x+y)} ・・・(1)
【0072】
ここで、nは、撮像に必要なデータの収集回数である。また、xは、有効範囲に含まれるRR間隔の数であり、yは、有効範囲に含まれないRR間隔の数である。また、Txは、有効範囲に含まれるRR間隔の平均値であり、Tyは、有効範囲に含まれないRR間隔の平均値である。
【0073】
例えば、撮像に必要なデータの収集回数が10回である場合に、10回のRR間隔の中で、900msecのRR間隔が1回、800msecのRR間隔が9回含まれるとする。この場合には、例えば、撮像条件として設定されるRR間隔は、800msec程度とされる。そして、この場合には、例えば、設定されたRR間隔から単純に撮像時間を予測すると、予測撮像時間は、800msec×10回=8000msecとなる。
【0074】
これに対し、本実施形態では、同様の例の場合に、RR間隔の分布情報から算出される予測撮像時間は、800msec×9回+900msec×1回=8100msecとなり、より正確な予測撮像時間を操作者に提示することが可能になる。データの収集回数が多くなるほど、設定されたRR間隔から単純に撮像時間を予測した場合と比べて、予測撮像時間の誤差は大きくなり、また、RR間隔のバラつきが大きければ、この誤差はより大きくなる。
【0075】
そして、本実施形態では、表示制御機能26dは、第1算出機能26eによって算出された予測撮像時間をディスプレイ11にさらに表示する。
【0076】
図6は、第2の実施形態に係る表示制御機能による予測撮像時間の表示の一例を示す図である。例えば、図6に示すように、表示制御機能36dは、操作者によって撮像条件の設定が行われる際に、撮像条件に含まれる複数のパラメータを編集するための撮像条件編集画面210をディスプレイ11に表示する。そして、例えば、表示制御機能36dは、撮像条件編集画面210上に、第1算出機能26eによって算出された予測撮像時間205を表示する。
【0077】
または、例えば、表示制御機能36dは、RR間隔の分布情報と併せて予測撮像時間を表示してもよい。
【0078】
図7は、第2の実施形態に係る表示制御機能26dによる予測撮像時間の表示の他の例を示す図である。例えば、図7に示すように、表示制御機能26dは、図3に示した例と同様に、RR間隔の分布を表すヒストグラムと、RR間隔の有効範囲の上限値を示すグラフィック101と、下限値を示すグラフィック102と、撮像条件として設定されたRR間隔を示すグラフィック103とを表示する。
【0079】
そして、本実施形態では、表示制御機能26dは、さらに、RR間隔の分布を表すヒストグラムの付近に、第1算出機能26eによって算出された予測撮像時間205を表示する。なお、例えば、予測撮像時間205は、RR間隔の分布を表すヒストグラムが表示される表示領域とは別の表示領域に表示されてもよい。
【0080】
図8は、第2の実施形態に係るMRI装置200によって行われる撮像条件の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。例えば、図8に示すように、本実施形態では、まず、収集機能16aが、被検体の心電信号の周期を示すRR間隔の情報を収集する(ステップS201)。
【0081】
その後、導出機能16bが、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報を用いて統計処理を行うことで、RR間隔の分布を導出する(ステップS202)。また、設定機能16cが、撮像条件の一つとして、心電信号に同期した同期撮像において有効なデータを判定するための条件として用いられるRR間隔の範囲である有効範囲を設定する(ステップS203)。
【0082】
その後、第1算出機能26eが、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布、及び、設定機能16cによって設定された有効範囲に基づいて、心電信号と同期した同期撮像が行われた場合の予測撮像時間を算出する(ステップS204)。
【0083】
そして、表示制御機能26dが、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布を表す分布情報をディスプレイ11に表示する(ステップS205)。ここで、表示制御機能26dは、分布情報において、設定機能16cによって設定された有効範囲に含まれるRR間隔の分布を識別可能に表示する(ステップS206)。
【0084】
さらに、本実施形態では、表示制御機能26dは、第1算出機能26eによって算出された予測撮像時間を表示する(ステップS207)。
【0085】
その後、操作者によって有効範囲が変更されるごとに(ステップS208,Yes)、設定機能16cが、変更された範囲で有効範囲を再設定し(ステップS209)、第1算出機能26eが、再設定された有効範囲に基づいて、予測撮像時間を再算出する(ステップS210)。続いて、表示制御機能26dが、分布情報において、再設定された有効範囲に含まれるRR間隔の分布を識別可能に表示し(ステップS206に戻る)、さらに、再算出された予測撮像時間を表示する(ステップS207)。
【0086】
そして、操作者によって有効範囲が変更されず(ステップS208,No)、かつ、撮像条件の設定が完了した場合には(ステップS211,Yes)、設定機能16cが、撮像条件の設定に関する処理を終了する。
【0087】
なお、図8に示した処理手順では、表示制御機能26dが分布情報を表示する前に、設定機能16cがRR間隔の有効範囲を設定し、第1算出機能26eが予測撮像時間を算出する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、表示制御機能26dが分布情報を表示した後に、設定機能16cがRR間隔の有効範囲を設定し、第1算出機能26eが予測撮像時間を算出するようにしてもよい。
【0088】
ここで、上述した処理手順のうち、ステップS201は、例えば、処理回路16が収集機能16aに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS202は、例えば、処理回路16が導出機能16bに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS203、S208、S209、及びS211は、例えば、処理回路16が設定機能16cに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS204及びS210は、例えば、処理回路16が第1算出機能26eに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS205〜S207は、例えば、処理回路16が表示制御機能26dに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。
【0089】
上述したように、第2の実施形態では、RR間隔の分布及び有効範囲に基づいて、予測撮像時間が算出されて表示される。したがって、第2の実施形態によれば、より実際に即した予測撮像時間を操作者に提示することが可能になり、例えば同期撮像において被検体に息止めをさせる場合の息止め不良を減らすことができる。
【0090】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態で説明したMRI装置100が、さらに、RR間隔の分布及び有効範囲に基づいて、RR間隔の情報に含まれるRR間隔の総数に対する、有効範囲に含まれるRR間隔の数の比率を算出して表示する場合の例を説明する。なお、本実施形態でも、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、図1に示したMRI装置100の構成要素と同じ役割を果たす構成要素については、同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0091】
図9は、第3の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。例えば、図9に示すように、本実施形態に係るMRI装置300は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送信コイル4、送信回路5、受信コイル6、受信回路7、架台8、寝台9、入力回路10、ディスプレイ11、記憶回路12、及び、処理回路13〜15及び36、ECG(Electrocardiogram)センサ17、及び、ECG回路18を備える。
【0092】
具体的には、本実施形態では、処理回路36が、収集機能16aと、導出機能16bと、設定機能16cと、第2算出機能36fと、表示制御機能36dとを有する。なお、収集機能16aは、特許請求の範囲における収集部の一例である。また、導出機能16bは、特許請求の範囲における導出部の一例である。また、設定機能16cは、特許請求の範囲における設定部の一例である。また、第2算出機能36eは、特許請求の範囲における第2算出部の一例である。また、表示制御機能36dは、特許請求の範囲における表示制御部の一例である。
【0093】
第2算出機能36fは、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布、及び、設定機能16cによって設定された有効範囲に基づいて、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報に含まれるRR間隔の総数に対する、有効範囲に含まれるRR間隔の数の比率を算出する。なお、以下では、導出機能16bによって算出される比率を「RR間隔のカバー率」と呼ぶ。
【0094】
そして、本実施形態では、表示制御機能36dは、第2算出機能36eによって算出されたRR間隔のカバー率をディスプレイ11にさらに表示する。
【0095】
図10は、第3の実施形態に係る表示制御機能36dによって表示されるRR間隔の分布の一例を示す図である。例えば、図10に示すように、表示制御機能36dは、図3に示した例と同様に、RR間隔の分布を表すヒストグラムと、RR間隔の有効範囲の上限値を示すグラフィック101と、下限値を示すグラフィック102と、撮像条件として設定されたRR間隔を示すグラフィック103とを表示する。
【0096】
そして、本実施形態では、表示制御機能36dは、さらに、RR間隔の分布を表すヒストグラムの付近に、第2算出機能36fによって算出されたRR間隔のカバー率306を表示する。なお、例えば、RR間隔のカバー率306は、RR間隔の分布を表すヒストグラムが表示される表示領域とは別の表示領域に表示されてもよい。
【0097】
図11は、第3の実施形態に係るMRI装置300によって行われる撮像条件の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。例えば、図11に示すように、本実施形態では、まず、収集機能16aが、被検体Sの心電信号の周期を示すRR間隔の情報を収集する(ステップS301)。
【0098】
その後、導出機能16bが、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報を用いて統計処理を行うことで、RR間隔の分布を導出する(ステップS302)。また、設定機能16cが、撮像条件の一つとして、心電信号に同期した同期撮像において有効なデータを判定するための条件として用いられるRR間隔の範囲である有効範囲を設定する(ステップS303)。
【0099】
その後、第2算出機能36fが、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布、及び、設定機能16cによって設定された有効範囲に基づいて、RR間隔のカバー率を算出する(ステップS304)。
【0100】
そして、表示制御機能36dが、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布を表す分布情報をディスプレイ11に表示する(ステップS305)。ここで、表示制御機能36dは、分布情報において、設定機能16cによって設定された有効範囲に含まれるRR間隔の分布を識別可能に表示する(ステップS306)。
【0101】
さらに、本実施形態では、表示制御機能36dは、第2算出機能36fによって算出されたRR間隔のカバー率を表示する(ステップS307)。
【0102】
その後、操作者によって有効範囲が変更されるごとに(ステップS308,Yes)、設定機能16cが、変更された範囲で有効範囲を再設定し(ステップS309)、第2算出機能36fが、再設定された有効範囲に基づいて、RR間隔のカバー率を再算出する(ステップS310)。続いて、表示制御機能36dが、分布情報において、再設定された有効範囲に含まれるRR間隔の分布を識別可能に表示し(ステップS306に戻る)、さらに、再算出されたRR間隔のカバー率を表示する(ステップS307)。
【0103】
そして、操作者によって有効範囲が変更されず(ステップS308,No)、かつ、撮像条件の設定が完了した場合には(ステップS311,Yes)、設定機能16cが、撮像条件の設定に関する処理を終了する。
【0104】
なお、図11に示した処理手順では、表示制御機能36dが分布情報を表示する前に、設定機能16cがRR間隔の有効範囲を設定し、第2算出機能36fがRR間隔のカバー率を算出する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、表示制御機能36dが分布情報を表示した後に、設定機能16cがRR間隔の有効範囲を設定し、第2算出機能36fがRR間隔のカバー率を算出するようにしてもよい。
【0105】
ここで、上述した処理手順のうち、ステップS301は、例えば、処理回路16が収集機能16aに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS302は、例えば、処理回路16が導出機能16bに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS303、S308、S309、及びS311は、例えば、処理回路16が設定機能16cに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS304及びS310は、例えば、処理回路16が第2算出機能36fに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS305〜S307は、例えば、処理回路16が表示制御機能36dに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。
【0106】
上述したように、第3の実施形態では、RR間隔の分布及び有効範囲に基づいて、RR間隔のカバー率が算出されて表示される。したがって、第3の実施形態によれば、操作者が、RR間隔のカバー率を参照しながら、RR間隔の有効範囲を設定したり、変更したりできるようになり、より効率よく適切なRR間隔の有効範囲を設定できるようになる。
【0107】
なお、上述した実施形態で説明したMRI装置は、一つの実施形態で説明した構成要素の一部を変更して、又は、別の実施形態で説明した構成要素を組み合わせて、実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態で説明したMRI装置に係る変形例について説明する。
【0108】
(第1の変形例)
例えば、第3の実施形態では、第2算出機能36fが、RR間隔の有効範囲からRR間隔のカバー率を算出する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、RR間隔のカバー率から、RR間隔の有効範囲が設定されてもよい。
【0109】
この場合には、例えば、第1の実施形態に係るMRI装置100において、設定機能16cが、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報に含まれる時間間隔の総数に対する、同期撮像において有効なデータとして用いる時間間隔の数の比率を、RR間隔のカバー率として設定する。また、設定機能16cは、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布、及び、設定されたカバー率に基づいて、RR間隔の有効範囲を設定する。このとき、設定機能16cは、設定されたカバー率が維持されるように、RR間隔の有効範囲を設定する。
【0110】
例えば、設定機能16cは、撮像条件の一つとして、RR間隔のカバー率とする数値を入力する操作を操作者から受け付け、受け付けた数値に基づいて、カバー率を設定する。ここで、例えば、第1の実施形態で説明したように、記憶回路12に、複数又は一つの撮像単位(撮像プロトコルとも呼ばれる)ごとに、複数のパラメータを含む撮像条件が記憶される場合には、予め記憶された撮像条件のパラメータの一つとして、カバー率が含まれていてもよい。
【0111】
そして、表示制御機能16dは、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布を表す分布情報において、設定機能16cによって設定された有効範囲に含まれるRR間隔の分布を識別可能に表示する。
【0112】
図12は、第1の変形例に係る表示制御機能16dによって表示されるRR間隔の分布の一例を示す図である。例えば、図12に示すように、設定機能16cによって、設定されたカバー率が維持されるようにRR間隔の有効範囲が設定されることで、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報において不整脈が発生した場合でも、不整脈以外の範囲にRR間隔の有効範囲が設定されるようになる。
【0113】
(第2の変形例)
また、例えば、MRI装置が、RR間隔の有効範囲からRR間隔のカバー率を算出する機能、及び、RR間隔のカバー率からRR間隔の有効範囲を導出する機能の両方を備えるようにしてもよい。
【0114】
この場合には、例えば、第3の実施形態に係るMRI装置300において、設定機能16cが、上述した例と同様に、RR間隔のカバー率を設定し、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布、及び、設定されたカバー率に基づいて、RR間隔の有効範囲を設定する。そして、設定機能16cは、第2算出機能36fによってRR間隔のカバー率が変更された場合に、変更後のカバー率に基づいて、RR間隔の有効範囲を自動的に変更する。このとき、設定機能16cは、設定されたカバー率が維持されるように、RR間隔の有効範囲を変更する。一方、第2算出機能36fは、第3の実施形態と同様に、設定機能16cによってRR間隔の有効範囲が変更された場合に、変更後の有効範囲に基づいて、RR間隔のカバー率を自動的に再算出する。
【0115】
この場合には、表示制御機能36dは、RR間隔の有効範囲が変更された場合に、変更された有効範囲に基づいて、ディスプレイ11にRR間隔の分布情報とともに表示されているRR間隔の有効範囲の表示を変更する。また、表示制御機能36dは、RR間隔のカバー率が再算出された場合に、再算出されたカバー率に基づいて、ディスプレイ11に表示されているカバー率の表示を変更する。
【0116】
図13は、第2の変形例に係る表示制御機能36dによって表示されるRR間隔の分布の一例を示す図である。例えば、図13の上側に示すように、表示制御機能36dは、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布を表す折れ線グラフを表示する。そして、表示制御機能36dは、RR間隔の分布を表す折れ線グラフ上で、図3に示した例と同様に、RR間隔の有効範囲の上限値を示すグラフィック101と、下限値を示すグラフィック102と、撮像条件として設定されたRR間隔を示すグラフィック103とを表示する。
【0117】
この一方で、例えば、図13の下側に示すように、表示制御機能36dは、操作者によって撮像条件の設定が行われる際に、撮像条件に含まれる複数のパラメータを編集するための撮像条件編集画面410をディスプレイ11に表示する。そして、例えば、表示制御機能36dは、撮像条件編集画面410上に、第2算出機能36fによって算出されたRR間隔のカバー率を表示する。
【0118】
そして、例えば、表示制御機能36dは、操作者によって、撮像条件編集画面410上で、カバー率が70%から90%に変更された場合には、RR間隔の分布を表す折れ線グラフ上で、カバー率が70%となる有効範囲を示す位置に表示されていたグラフィック101及び102を、カバー率が90%となる有効範囲を示す位置に移動する。
【0119】
一方、例えば、表示制御機能36dは、操作者によって、RR間隔の分布を表す折れ線グラフ上で、カバー率が90%となる有効範囲を示す位置に表示されていたグラフィック101及び102が、カバー率が70%となる有効範囲を示す位置に移動された場合には、撮像条件編集画面410上で、カバー率の表示を90%から70%に変更する。
【0120】
(第3の変形例)
また、例えば、第2の実施形態では、第1算出機能26eが、設定機能16cによって設定された有効範囲から予測撮像時間を算出する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、RR間隔のカバー率から、予測撮像時間が算出されてもよい。
【0121】
この場合には、例えば、第2の実施形態に係るMRI装置200において、処理回路26が、第3の実施形態で説明した第2算出機能36fをさらに有する。そして、第1算出機能26eが、設定機能16cによって設定されたRR間隔の有効範囲、又は、第2算出機能36fによって算出されたRR間隔のカバー率に基づいて、予測撮像時間を算出する。
【0122】
ここで、例えば、第1算出機能26eは、同期撮像において有効範囲外のRR間隔が検出された場合に、1回のデータの再収集が発生するという見込みで、予測撮像時間を算出する。例えば、第1算出機能26eは、導出機能16bによって導出されたRR間隔の分布に基づいて、収集機能16aによって収集されたRR間隔の情報に含まれるRR間隔の総数に対する有効範囲外のRR間隔の数の割合を算出する。そして、導出機能16bは、算出した割合を再収集の発生率Rとし、以下の式(2)を用いて、予測撮像時間Tを算出する。
【0123】
T=Tx×{n×x/(x+y)}+Ty×{n×y/(x+y)}
+Tx×(n×R) ・・・(2)
【0124】
ここで、nは、撮像に必要なデータの収集回数である。また、xは、有効範囲に含まれるRR間隔の数であり、yは、有効範囲に含まれないRR間隔の数である。また、Txは、有効範囲に含まれるRR間隔の平均値であり、Tyは、有効範囲に含まれないRR間隔の平均値である。
【0125】
そして、本実施形態では、表示制御機能26dは、第1算出機能26eによって算出された予測撮像時間、及び、第2算出機能36fによって算出されたRR間隔のカバー率の両方をディスプレイ11にさらに表示する。
【0126】
(第4の変形例)
また、上述した実施形態では、MRI装置が、被検体の心電波形に含まれるR波をトリガー信号として同期撮像を行う場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置が、心電波形に含まれるT波、P波、U波等のR波以外の基準波をトリガー信号として同期撮像を行う場合でも、R波の代わりに当該基準波を用いることで、同様の実施形態が実施可能である。この場合には、例えば、MRI装置は、心電信号の周期を示す時間間隔として、TT間隔、PP間隔、又はUU間隔を用いる。
【0127】
(第5の変形例)
また、上述した実施形態では、MRI装置が、被検体の心電信号に同期した同期撮像を行う場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置が、被検体の呼吸信号又は脈波信号に同期した同期撮像を行う場合でも、心電信号の代わりに、呼吸信号又は脈波信号を用いることで、同様の実施形態が実施可能である。この場合には、例えば、MRI装置は、心電信号の周期を示す時間間隔として、呼吸信号又は脈波信号の波形における一周期ごとのピーク値の間隔を用いる。
【0128】
(第6の変形例)
また、上述した実施形態では、MRI装置について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、X線CT装置のような同期撮像が可能な他の医用画像診断装置でも、同様の実施形態が実施可能である。その場合には、例えば、医用画像診断装置が有するコンソール等の処理回路が、上述した処理回路16、26又は36が有する機能を有するように構成される。
【0129】
なお、上述した実施形態において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路12にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0130】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)−ROM、FD(Flexible Disk)、CD−R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、後述する各機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0131】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、同期撮像において用いられる時間間隔の有効範囲をより適切に設定することができる医用画像診断装置及び磁気共鳴イメージング装置を提供することができる。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0133】
100 磁気共鳴イメージング装置
16 処理回路
16a 収集機能
16b 導出機能
16c 設定機能
16d 表示制御機能
図1
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