特許第6945342号(P6945342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝テック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000002
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000003
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000004
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000005
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000006
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000007
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000008
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000009
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000010
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000011
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000012
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000013
  • 特許6945342-ヒータ及び加熱装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945342
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】ヒータ及び加熱装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-96894(P2017-96894)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-227872(P2017-227872A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2020年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-121442(P2016-121442)
(32)【優先日】2016年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 修
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−107761(JP,A)
【文献】 特開2015−028531(JP,A)
【文献】 特開平08−248792(JP,A)
【文献】 特開2004−070180(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0086232(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0142986(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造の絶縁基板で成る絶縁基材と、
前記絶縁基材の第1の絶縁基板上に形成された、長手方向に複数の分割領域を有する発熱部と、
前記絶縁基材の第2の絶縁基板上に形成された、前記発熱部の温度を検出する温度センサ
前記絶縁基材の前記第1、第2の絶縁基板とは異なる少なくとも1つの絶縁基板に形成された、前記発熱部への給電用の第1の配線パターンと
前記第2の絶縁基板に形成された、前記温度センサへの給電用の第2の配線パターンと
備えたヒータ。
【請求項2】
前記発熱部は、複数の発熱部材を複数のブロックに分割して配列し、前記温度センサは、前記複数のブロックの温度をそれぞれ検出する複数のセンサで成る請求項1記載のヒータ。
【請求項3】
前記発熱部は、複数の発熱部材を配列し、
前記第1の配線パターンは、前記複数の発熱部材の個々の電極に分離して給電するための第1のパターンと、前記複数の発熱部材の共通電極に給電するための第2のパターンとから成る請求項1記載のヒータ。
【請求項4】
前記発熱部を発熱する駆動源に接続され、前記発熱部が異常に発熱するのを防ぐ温度調節素子に対する配線パターンを、前記絶縁基材の前記第2の絶縁基板上に形成した請求項1記載のヒータ。
【請求項5】
加熱装置であって、
無端ベルトと、
搬送されるシートに前記無端ベルトを介して対向するヒータと、
前記無端ベルトを挟んで前記ヒータと対向する位置に設置される加圧体と、を有し、
前記ヒータは、
多層構造の絶縁基板で成る絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の絶縁基板上に形成された、長手方向に複数の分割領域を有する発熱部と、前記絶縁基材の第2の絶縁基板上に形成された、前記発熱部の温度を検出する温度センサ前記絶縁基材の前記第1、第2の絶縁基板とは異なる少なくとも1つの絶縁基板に形成された、前記発熱部への給電用の第1の配線パターンと前記第2の絶縁基板に形成された、前記温度センサへの給電用の第2の配線パターンと、を備えて成ることを特徴とする加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ヒータ及び加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、定着装置ではヒータにより用紙を加熱するが、用紙が通過しない部分のヒータの温度が極端に上昇するため、ヒータの反り、定着ベルトの劣化、搬送ローラの膨張による速度ムラなどの問題が発生する場合があった。また、用紙が通過しない部分を加熱することは、省エネルギー化の観点からも好ましくない。したがって、用紙が通過する部分のみを集中的に加熱することは、環境対応の観点からも重要な技術課題となっている。
【0003】
更に、加熱ローラの発熱状況を把握して、温度制御を行なうために温度センサを設ける必要がある。しかしながら、正確な温度制御行なうには、ヒータへの給電用の回路と温度センサとを完全に絶縁した形で配線を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2629980号公報
【特許文献2】特開2015−028531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、分割された複数の発熱部材を用いるとともに、温度センサへの給電を行うことができるヒータ、及び加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態のヒータは、多層構造の絶縁基板で成る絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の絶縁基板上に形成された、長手方向に複数の分割領域を有する発熱部と、前記絶縁基材の第2の絶縁基板上に形成された、前記発熱部の温度を検出する温度センサ前記絶縁基材の前記第1、第2の絶縁基板とは異なる少なくとも1つの絶縁基板に形成された、前記発熱部への給電用の第1の配線パターンと前記第2の絶縁基板に形成された、前記温度センサへの給電用の第2の配線パターンと、を備えて成る
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る定着装置を含む画像形成装置を示す構成図。
図2】第1の実施形態における画像形成部の一部を拡大して示す構成図。
図3】第1の実施形態に係る定着装置の一例を示す構成図。
図4】第1の実施形態におけるMFPの制御系を示すブロック図。
図5】第1の実施形態における加熱部材の基本構成を示す平面図。
図6図5の加熱部材の発熱部材群と駆動回路の接続状態を示す説明図。
図7図6の発熱部材群と用紙の印字領域との位置関係を示す説明図。
図8】第1の実施形態における発熱部材群の配置例を示す図。
図9】第1の実施形態における加熱部材の要部の構成を示す斜視図及び断面図。
図10】第1の実施形態における加熱部材の構成を分解して示す斜視図。
図11】第1の実施形態における発熱部材と駆動回路、及び温度センサとセンシング回路の接続状態を示す説明図。
図12】第1の実施形態に係る定着装置の変形例を示す構成図。
図13】実施形態におけるMFPの制御動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るヒータおよび定着装置(加熱装置)を含む画像形成装置を示す構成図である。図1において、画像形成装置10は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
【0009】
MFP10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13が開閉自在に設けられている。また、本体11の上部には操作部14が設けられている。操作部14は、各種のキーを有するオペレーションパネルとタッチパネル式の表示器を有している。
【0010】
本体11内のADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15が設けられている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、密着型イメージセンサ16(以下、単にイメージセンサと呼ぶ)を備えている。イメージセンサ16は、主走査方向に配置されている。
【0011】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動しながら、原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し、1ページ分の原稿の読み取りを行う。また、ADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。尚、主走査方向は、イメージセンサ16が原稿台12に沿って移動するときの移動方向と直交する方向(図1では奥行方向)である。
【0012】
更に、本体11内の中央部にはプリンタ部17を有している。プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、パーソナルコンピュータなどで作成された画像データを処理して、記録媒体(例えば用紙)に画像を形成する。また本体11の下部には、各種サイズの用紙を収容する複数の給紙カセット18を備えている。尚、画像を形成する記録媒体としては、用紙のほかにOHPシート等があるが、以下の説明では、用紙に画像を形成する例を説明する。
【0013】
プリンタ部17は、感光体ドラムと、露光器としてLEDを含む走査ヘッド19を有し、走査ヘッド19からの光線によって感光体を走査して画像を生成する。プリンタ部17は、例えパターンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。
【0014】
画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置されている。また、走査ヘッド19も画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対応した複数の走査ヘッド19Y、19M、19C、19Kを有している。
【0015】
図2は、画像形成部20Y,20M,20C,20Kのうち、画像形成部20Kを拡大して示す構成図である。尚、以下の説明において各画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Kを例に説明する。
【0016】
画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを有する。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電チャージャ(帯電器)23K、現像器24K、一次転写ローラ(転写器)25K、クリーナ26K、ブレード27K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、走査ヘッド19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を形成する。
【0017】
画像形成部20Kの帯電チャージャ23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラ24aによりブラックのトナーを感光体ドラム22Kに供給し、静電潜像の現像を行う。クリーナ26Kは、ブレード27Kを用いて感光体ドラム22K表面の残留トナーを除去する。
【0018】
また、図1に示すように、画像形成部20Y〜20Kの上部には、現像器24Y〜24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジ28Y,28M,28C,28Kを含む。
【0019】
中間転写ベルト21は、駆動ローラ31及び従動ローラ32に張架され、循環的に移動する。また中間転写ベルト21は感光体ドラム22Y〜22Kに対向して接触している。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、一次転写ローラ25Kにより一次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。
【0020】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、二次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と二次転写ローラ33間を用紙Pが通過する際に、二次転写ローラ33により二次転写電圧が用紙Pに印加される。そして中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Pに二次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34を設けている。
【0021】
また、図1で示すように、給紙カセット18から二次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18内から取り出した用紙Pを搬送する給紙ローラ35を設けている。更に、二次転写ローラ33の下流には加熱装置である定着装置36を設けている。また、定着装置36の下流には搬送ローラ37を設けている。搬送ローラ37は用紙Pを排紙部38に排出する。更に、定着装置36の下流には、反転搬送路39を設けている。反転搬送路39は、用紙Pを反転させて二次転写ローラ33の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用される。
【0022】
図1図2は実施形態の一例を示すものであり、定着装置36以外の画像形成装置部分の構造は、図1図2の例に限定するものではなく、公知の電子写真方式画像形成装置の構造を用いることができる。
【0023】
図3は、加熱装置である定着装置36の一例を示す構成図である。定着装置36は、無端状の回転体である定着ベルト(無端ベルト)41、加圧体であるプレスローラ42、ベルト搬送ローラ43,44、テンションローラ45を有している。定着ベルト41は、弾性層が形成された無端ベルトであり、ベルト搬送ローラ43,44及びテンションローラ45に回転可能に張架されている。テンションローラ45は、定着ベルト41に所定の張力を加える。
【0024】
また定着ベルト41の内側にあって、ベルト搬送ローラ43と44の間に板状の加熱部材(ヒータ)46を設けている。加熱部材46は、定着ベルト41の内側に接触し、定着ベルト41を介してプレスローラ42と対向配置している。加熱部材46は、プレスローラ42の方向に押圧され、定着ベルト41とプレスローラ42との間に所定幅の定着ニップを形成する。
【0025】
用紙Pが定着ニップを通過する際に、熱と圧力で用紙P上のトナー像を用紙Pに定着する。プレスローラ42は、モータによって駆動力が伝達され回転する(回転方向を図3の矢印tで示す)。定着ベルト41、ベルト搬送ローラ43,44及びテンションローラ45は、プレスローラ42が回転することで従動する(その回転方向を図3の矢印sで示す)する。
【0026】
回転体である定着ベルト41は、例えば厚さ50μm(マイクロメートル)のSUSやニッケル基材或いは70μmの耐熱樹脂であるポリイミド上の外側に厚さ200μmのシリコンゴム層(弾性層)が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。加圧体であるプレスローラ42は、例えばφ10mmの鉄棒表面に厚さ5mmのシリコンスポンジ層が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。加熱部材46の詳細な構成については、後述する。
【0027】
図4は、第1の実施形態におけるMFP10の制御系の構成例を示すブロック図である。制御系は、例えば、MFP10全体を制御するCPU100、バスライン110、リードオンリーメモリ(ROM)120、ランダムアクセスメモリ(RAM)121、インターフェース(I/F)122、スキャナ部15、入出力制御回路123、給紙・搬送制御回路130、画像形成制御回路140、定着制御回路150を備えており、CPU100と各回路はバスライン110を介して接続されている。
【0028】
CPU100は、MFP10全体を制御するもので、ROM120或いはRAM121に記憶されたプログラムを実行することにより画像形成のための処理機能を実現する。ROM120は、画像形成処理の基本的な動作を司る制御プログラム及び制御データなどを記憶する。RAM121は、ワーキングメモリである。
【0029】
ROM120(或いはRAM121)は、例えば、画像形成部20や定着装置36等の制御プログラムと、制御プログラムが使用する各種の制御データを記憶する。本実施形態における制御データの具体例としては、用紙の印字領域の大きさ(主走査方向での幅)と通電させる発熱部材との対応関係などが挙げられる。
【0030】
定着装置36の定着温度制御プログラムは、トナー像が形成された用紙における画像形成領域の大きさを判定する判定ロジックと、用紙が定着装置36の内部に搬送される前に画像形成領域が通過する位置に対応する発熱部材のスイッチング素子を選択して通電し、加熱部材46における加熱を制御する加熱制御ロジックとを含んでいる。
【0031】
I/F122は、ユーザ端末やファクシミリ等の各種装置との通信を行う。入出力制御回路123は、オペレーションパネル14aと表示器14bを制御する。オペレーションパネル14aを操作者が操作することで、例えば用紙サイズや、原稿のコピー部数、等を指定することができる。
【0032】
給紙・搬送制御回路130は、給紙ローラ35或いは搬送路の搬送ローラ37等を駆動するモータ群131等を制御する。給紙・搬送制御回路130は、CPU100からの制御信号に基づいて、給紙カセット18近傍或いは搬送路上の各種センサ132の検知結果に応じてモータ群131等を制御する。
【0033】
画像形成制御回路140は、CPU100からの制御信号に基づいて感光体ドラム22、帯電器23、露光器19、現像器24、転写器25をそれぞれ制御する。
【0034】
定着制御回路150は、CPU100からの制御信号に基づいて定着装置36のプレスローラ42を回転する駆動モータ151を制御する。また加熱部材46の発熱部材(後述)への通電を制御する。また定着制御回路150は、温度センサ57で検出した加熱部材46の温度情報を入力し、加熱部材46の温度を制御する。尚、本実施形態では定着装置36の制御プログラム及び制御データをMFP10の記憶装置内に記憶してCPU100で実行する構成としているが、定着装置36専用に演算処理装置と記憶装置を別途設ける構成にしてもよい。
【0035】
図5は、第1の実施形態における加熱部材46の基本構成を示す平面図である。加熱部材46は発熱部材群で構成される。図5に示すように、加熱部材46は、耐熱性の絶縁基材、例えばセラミック基板50の上に長手方向(図示左右方向)に所定の幅の発熱部材51を複数本並べて配列している。発熱部材群は、複数の分割領域を有する発熱部を構成する。
【0036】
発熱部材51は、例えばセラミック基板50の一方の面上に発熱抵抗層、或いはグレーズ層及び発熱抵抗層を積層して形成される。グレーズ層はなくても良い。発熱抵抗層は、上述したように発熱部材51を構成するもので、例えばTaSiOなどの既知の素材で形成され、加熱部材46の長手方向において所定の長さと所定の個数に分割されている。発熱部材51の配置の詳細については、後述する。また、加熱部材46の短手方向、つまり、発熱部材51の用紙搬送方向(図示上下方向)の両端部には電極52a,52bを形成している。
【0037】
尚、用紙搬送方向(加熱部材46の短手方向)は、以下の説明ではY方向として説明する。また加熱部材46の長手方向は、用紙搬送方向と直交する方向であり、用紙に画像を形成するときの主走査方向、つまり用紙幅方向に対応し、以下の説明ではX方向として説明する。
【0038】
図6は、図5の加熱部材46の、発熱部材群、つまり複数の分割領域を有する発熱部と、その駆動回路の接続状態を示す説明図である。図6において、複数の発熱部材51は、それぞれ複数の駆動IC(集積回路)531,532,533,534によって個別に通電が制御される。即ち、発熱部材51の各電極52aは、駆動IC531,532,533,534を介して駆動源54の一端に接続され、各電極52bは、駆動源54の他端に接続されている。
【0039】
駆動IC531〜534の具体例としては、FETで成るスイッチング素子、トライアックス、スイッチングICなどを用いることができる。駆動IC531〜534の各スイッチがオンすることで、駆動源54から発熱部材51に通電される。したがって、駆動IC531〜534は、発熱部材51の切替部を構成する。駆動源54は、例えば、交流電源(AC)や、直流電源(DC)を使用することができる。尚、以下の説明では、駆動IC531〜534を総称して駆動IC53と呼ぶ場合がある。
【0040】
また、駆動源54に直列に温度調節素子55を接続してもよい。温度調節素子55は、例えばサーモスタットでなる。サーモスタット55は、発熱部材51の温度によってオン・オフし、発熱部材51が予め設定した温度(危険温度)になったときにオフして、駆動源54と発熱部材51との接続を絶ち、発熱部材51が異常に加熱されるのを防ぐ。
【0041】
図7は、図6の発熱部材群と用紙の印字領域との位置関係を説明する図である。ここでは、用紙Pが矢印Y方向に搬送されるものとする。図7においては、用紙の印字領域(画像形成領域の幅W)に対応する位置にある発熱部材51に接続された駆動IC53のスイッチが選択的にオンして通電され、加熱される状態を示している。即ち、用紙Pの印字領域のみが集中的に加熱される。
【0042】
また、定着装置36内に用紙Pが搬送される前に、用紙Pの印字領域の大きさが判定される。用紙Pの印字領域を判定する方法としては、スキャナ部15で読み取った画像データや、パーソナルコンピュータなどで作成された画像データの解析結果を利用する方法がある。また、用紙Pに対する余白設定などの印刷フォーマット情報に基づいて印字領域を判定する方法や、光学センサの検出結果に基づいて印字領域を判定する方法などが挙げられる。
【0043】
図8は、第1の実施形態における発熱部材群、つまり複数の分割領域を有する発熱部の配置例を示す図である。定着装置36に搬送される用紙Pのサイズは様々である。例えば、A5サイズ(148mm)、A4サイズ(210mm)、B4サイズ(257mm)、A4横のサイズ(297mm)が比較的多く用いられる。
【0044】
そこで、図8では、用紙サイズ(ここでは上述の4種類のサイズ)に対応して、複数のブロックに分割し、複数種の幅の発熱部材51をX方向に分割して配列している。発熱部材群は、搬送される用紙の搬送精度やスキューの発生、或いは非加熱部分への熱の逃げを考慮して、加熱領域に5%程度の余裕を持つように通電される。
【0045】
例えば、上記の4種類のサイズの中で、最小サイズであるA5サイズの幅(148mm)に対応して、X方向の中央部に第1ブロックの発熱部材511を設けている。また、次に大きいA4サイズの幅(210mm)に対応して、発熱部材511のX方向の外側に、第2ブロックの発熱部材512,513を設けている。同様に、次に大きいB4サイズの幅(257mm)に対応して、発熱部材512,513の外側に第3ブロックの発熱部材514,515を設けている。また、更に大きいA4横サイズの幅(297mm)に対応して、発熱部材514,515の外側に第4ブロックの発熱部材516,517を設けている。
【0046】
そして、各発熱部材(511〜517)の電極52aは、駆動IC531〜537を介して駆動源54の一端に接続され、各電極52bは、駆動源54の他端に接続されている。尚、図8に示す発熱部材(511〜517)の分割ブロックの数とそれぞれの幅は一例として挙げたもので、これに限定されるものではない。
【0047】
こうして、図8では、最小サイズ(A5)の用紙Pが搬送された場合には、中央部の第1ブロックの発熱部材511に接続された駆動IC531のみがスイッチオンとなる。また用紙Pのサイズが大きくなるにつれて、第2〜第4ブロックの発熱部材(512〜517)に接続された駆動IC(532〜537)がそれぞれ順次にスイッチオンとなる。
【0048】
また、本実施形態では、通紙領域にラインセンサ40(図1参照)を配置し、通過する用紙のサイズと位置をリアルタイムで判定できるようにしている。或いは、印刷動作の開始時に画像データ或いはMFP10内の用紙の貯蔵されている給紙カセット18の情報から用紙サイズを判定するようにしてもよい。
【0049】
ところで、加熱部材46では、定着ベルト41の温度を管理するため、発熱部材(511〜517)の温度を、温度センサを用いて把握し、発熱温度を適正に制御する必要がある。しかし、正確な温度制御行なうには、ヒータへの給電用の回路と温度センサとを完全に絶縁した形で配線を行う必要がある。かつ耐熱性の配線が必要であるため、従来では非常に複雑な構成となっていた。
【0050】
そこで、一実施形態に係るヒータおよび定着装置は、加熱部材の絶縁基材を多層構造とし、絶縁基材に、温度センサと、給電用の配線パターンを積層したものである。また分割した発熱部材のブロック毎に温度センサを設置したものである。
【0051】
図9は、一実施形態に係る加熱部材46(ヒータ)の要部の構成を示す図であり、図9(a)は、斜視図である。図9(b)は、図9(a)の矢印A方向から見た加熱部材46の断面図であり、図9(c)は、加熱部材46をY方向から見た概略断面図である。
【0052】
図9の加熱部材46は、図8の例に対応する。図9では、発熱部材511、512,514,516のみを示している。発熱部材513,515,517は、発熱部材511を中心にして、発熱部材512,514,516の配置に対して左右対称的に構成であるため、図示は省略する。尚、以下の説明では、発熱部材511、512,514,516を総称して発熱部材51と呼ぶこともある。
【0053】
図9(a)に示すように、耐熱性の絶縁基材であるセラミック基板50は、多層構造とし、表面の層(図の上部)は、保護層61となっている。また保護層61の下に発熱部材の層62を配置し、その下層に配線パターンの層63とセンサの層64を配置している。
【0054】
図9(b),(c)で示すように、保護層61は、セラミック基板50とは異なる材質であり、例えばSiなどによって発熱部材51を覆うように形成されている。発熱部材の層62は、セラミック基板501上に直接、発熱抵抗層が積層されている(或いはセラミック基板501上にグレーズ層及び発熱抵抗層が積層されている)。
【0055】
発熱抵抗層は、発熱部材511、512,514,516を構成し、例えばTaSiOなどの既知の素材で形成される。またセラミック基板501上の各発熱部材51は、所定のギャップ56(図9(c)参照)を置いて、セラミック基板501の長手方向(X方向)に配列している。
【0056】
配線パターンの層63は、複数層(図では3層)のセラミック基板502,503,504で構成し、それぞれの層上にスクリーン印刷等によって配線パターン71を形成している。図9では、配線パターン71を3つの層のセラミック基板502,503,504に形成しているが、3層以下或いは3層以上の少なくとも1層のセラミック基板に形成してもよい。
【0057】
セラミック基板502,503には、例えば、発熱部材511,512,514,516へ給電するための個別電極の配線パターンが形成される。またセラミック基板504には、発熱部材51に給電するための共通電極の配線パターンが形成され、セラミック基板501,502,503間は、図9(b)に示すように、スルーホール72で接続される。スルーホール72は、例えば基板をスルーした穴に銀ペーストを充填して成る。
【0058】
また、絶縁基材の、発熱部(複数の発熱部材51)を形成した層とは異なる層に、発熱部の温度を検出する温度センサ、及び温度センサへの給電用の配線パターンを形成している。即ち、センサの層64は、絶縁基材の他の層、例えば第5のセラミック基板505上に、例えば熱電対で構成された複数の温度センサ571,572,574,576を設置している。また、第5のセラミック基板505には、各温度センサ571,572,574,576に給電するための配線パターン73を形成している。尚、以下の説明では、温度センサ571,572,574,576を総称して温度センサ57と呼ぶことがある。
【0059】
複数の温度センサ57は、発熱部材51の分割ブロックに対応して設置されている。つまり、用紙サイズに対応して、発熱部材を複数のブロックに分割したとき、第1〜第4ブロックの発熱部材511,512,514,516に対応してそれぞれ温度センサ571,572,574,576を設けている。またセラミック基板504からセラミック基板501にかけてスルーホール72(後述)が形成されている。各層の配線パターン71,73の具体例は後述する。
【0060】
セラミック基板501への発熱部材51(発熱抵抗層)の形成方法は、既知の方法(例えばサーマルヘッドの作成方法)と同様であり、発熱抵抗層の上にアルミニウムや金、銀等で電極層を形成する。隣接する発熱部材間は絶縁される。また、発熱部材51が露出するようなパターンで、セラミック基板501のY方向にアルミニウム層や金、銀等で電極52a,52bを形成する。
【0061】
各発熱部材51の両端のアルミニウム層(電極52a,52b)には配線用の導電体58が接続され、導電体58は、セラミック基板502,503,504にスクリーン印刷等で形成された配線パターン71にスルーホール72で接続され、配線パターン71に、それぞれ駆動IC53のスイッチング素子に繋ぐようにしている。したがって、各発熱部材51への給電は、駆動源54から配線パターン71と導電体58、及び駆動IC53のスイッチング素子を介して行われる。
【0062】
更に、セラミック基板501の発熱部材51、アルミニウム層(電極52a,52b)、導電体58等の全てを覆うように、最上部に上述した保護層61を形成する。
【0063】
このような発熱部材群に対して駆動源54からACやDCを供給する場合は、駆動ICのスイッチング素子(トライアック、FET)をゼロクロス回路によってスイッチングし、フリッカにも配慮するとよい。
【0064】
図10は、第1の実施形態における加熱部材46の構成を分解して示す斜視図である。
【0065】
図10に示すように、加熱部材46は、保護層61の下に耐熱性の多層構造の絶縁基材(第1〜第5のセラミック基板501〜505)を有する。保護層61は、例えばSiなどによって形成されている。また、第1〜第5のセラミック基板501〜505間には、複数のスルーホール72,74が形成されている。スルーホール72,74は、例えば基板をスルーした穴に銀ペーストを充填して成る。
【0066】
第1のセラミック基板501上には、直接、発熱抵抗層が積層されるか、又はセラミック基板501上にグレーズ層及び発熱抵抗層が積層される。発熱抵抗層は、発熱部材511、512,514,516を構成し、例えばTaSiOなどの既知の素材で形成される。各発熱部材51は、所定のギャップを置いて、セラミック基板501の長手方向(X方向)に配列している。また第1のセラミック基板501上の端部には、ソケット用電極を構成する配線パターン75,76を形成している。以下、配線パターン75,76をソケットパターンと呼ぶ。
【0067】
第2のセラミック基板502には、スクリーン印刷等によって配線パターン712、714、716を形成している。配線パターン712、714、716は、発熱部材512,514,516へ給電するための個別電極の配線パターンである。
【0068】
第3のセラミック基板503には、スクリーン印刷等によって配線パターン711を形成している。配線パターン711は、発熱部材511へ給電するための個別電極の配線パターンである。また第4のセラミック基板504には、発熱部材511、512,514,516に給電するための共通電極の配線パターン710を形成している。
【0069】
第5のセラミック基板505上には、発熱部材511、512,514,516の位置に対応して、例えば熱電対で構成された温度検出用の複数の温度センサ571,572,574,576を設置している。また第5のセラミック基板505上には、温度センサ571,572,574,576へ給電するための個別電極の配線パターン731と、共通電極の配線パターン732を形成している。
【0070】
セラミック基板501,502,503,504間に設けたスルーホール72は、発熱部材511、512,514,516への給電用であり、一部のスルーホール72は、ソケットパターン75に接続されている。また、スルーホール74は、温度センサ571,572,574,576への給電用であり、ソケットパターン76に接続されている。
【0071】
また、サーモスタット55を接続するための配線パターンをセラミック基板50に配置することもできる。サーモスタット55用の配線パターンは、例えば、センサの層64、即ち、第5のセラミック基板505に配置する。またソケットパターン75にサーモスタット55を接続する配線パターンを設けるとよい。
【0072】
尚、温度センサを、セラミック基板505の裏側表層(裏面)に実装することもできる。この場合は、温度センサの配線として、例えば、絶縁基材の多層構造内の電極形成の手法を用い、スルーホールで裏面に配置した温度センサと結線すればよい。
【0073】
また、温度センサ57へ給電するための個別電極の配線パターン731と、共通電極の配線パターン732を、第5のセラミック基板505の裏面に配置してもよい。同様にサーモスタット55用の配線パターンを、第5のセラミック基板505の裏面に配置することもできる。
【0074】
第5のセラミック基板505の裏面に温度センサを実装したり、配線パターンを配置する場合は、第5のセラミック基板505の裏面に、保護層61と同様の保護層を設けるとよい。
【0075】
このように、サーモスタット55用の配線パターンも、多層構造のセラミック基板50のいずれかの層に形成することで、加熱部材46を構成する回路パターンを1つのセラミック基板50の層内に全て配置することができ、耐熱性、絶縁性を向上することができる。また外部の回路素子との接続は、ソケットパターン75,76を介して行うことができ、配線が簡単になる。
【0076】
次に発熱部材51に対する給電について説明する。例えば、発熱部材511に対する給電は、図10の点線で示すように行われる。即ち、ソケットパターン75の配線パターン751を給電開始点とすると、スルーホール721、第3のセラミック基板503の配線パターン711及びスルーホール722を介して第1のセラミック基板501の発熱部材511の電極52aに給電される。また発熱部材511の電極52bから、スルーホール723、第4のセラミック基板504の配線パターン710及びスルーホール724を介して、第1のセラミック基板501の配線パターン750へと給電される。
【0077】
そのほかの発熱部材512,514,516への給電も同様に、ソケットパターン75から、スルーホール72及び第2のセラミック基板502の配線パターン712,714,716を介して発熱部材512,514,516の電極52aに給電される。また発熱部材512,514,516の電極52bから、スルーホール72、第4のセラミック基板504の配線パターン710及びスルーホール72を介してソケットパターン75へと給電される。
【0078】
また温度センサ57に対する給電は、ソケットパターン76から、スルーホール74及び第5のセラミック基板505の配線パターン731を介して、温度センサ57の一端に給電される。また温度センサ57の他端から、共通の配線パターン732及びスルーホール74を介してソケットパターン76に給電される。
【0079】
セラミック基板501,502,503,504間に設けたスルーホール72は、発熱部材511、512,514,516への給電用であり、一部のスルーホール72は、ソケットパターン75に接続されている。また、スルーホール74は、温度センサ571,572,574,576への給電用であり、ソケットパターン76に接続されている。
【0080】
図11(a)は、第1の実施形態における発熱部材と駆動ICの接続状態を示す説明図であり、(b)は、温度センサとセンシング回路との接続状態を示す説明図である。
【0081】
図11(a)に示すように、発熱部材51に対する給電は、ソケットパターン75から、スルーホール72、配線パターン711、712,714,716を介して発熱部材51の電極52aに給電される。また発熱部材51の電極52bから、スルーホール72、配線パターン710を介してソケットパターン75へと給電される。ソケットパターン75の配線パターン750には、駆動源54が接続され、他のソケットパターン75には駆動IC53が接続される。尚、発熱部材513,515,517用の配線パターン71は、セラミック基板501の他方の端部(図の右)に形成したソケットパターン(図示せず)に接続される。
【0082】
また図11(b)に示すように、温度センサ57に対する給電は、ソケットパターン76から、スルーホール74、配線パターン731を介して温度センサ57の一端に給電される。また温度センサ57の他端から、配線パターン732、スルーホール74を介してソケットパターン76へと給電される。ソケットパターン76には、センシング回路772,774,776が接続される。尚、温度センサ571用の配線パターン731は、セラミック基板の505の他方の端部(図の右)に形成したソケットパターン(図示せず)に接続される。
【0083】
以上述べたように、一実施形態に係るヒータおよび定着装置によれば、発熱部材を形成する絶縁基材(セラミック基板)の内部に、温度センサと、温度センサへの給電用の配線パターンを埋め込むようにしている。したがって、加熱部材46を全体的に小型化することができる。また温度センサは、発熱部材の分割ブロック毎に設置しているため、発熱している部分の温度を感知して、温度を適正に制御することができる。
【0084】
さらに、温度センサに対する給電用の配線パターンを、絶縁基材の温度センサが形成された層に形成することにより、発熱部への給電用の配線パターンに対して、温度センサへの給電用の配線パターンを個別に配線設計することができ、基板設計が容易になる。
【0085】
尚、温度センサ57は、基本的に発熱部材51の分割ブロックに対応して設置するが、加熱部材46の長手方向の両端部に配置した温度センサ57は、外気の影響を受けて実際の温度よりも低くなる可能性がある。したがって、加熱部材46の両端部に設置する温度センサは、分割ブロックの中心位置よりも加熱部材46の内側にシフトした位置に設置すると良い。
【0086】
また、本実施形態では画像サイズに相当する部分の発熱に関して述べたが、発熱部材を細分化して、画像のあるところのみ加熱させるか、或いは何らかの事情で、部分的に温度差があるところを補正しながら加熱することもできる。
【0087】
図12は、第1の実施形態に係る加熱部材46(ヒータ)および定着装置36の変形例を示す構成図である。
【0088】
図12の定着装置36は、図3の定着ベルト41を、円筒状の定着ベルト(無端ベルト)411に置換したものである。定着装置36は、定着ベルト411、プレスローラ42を有している。
【0089】
プレスローラ42は、モータによって駆動力が伝達されて回転する(回転方向を図10の矢印tで示す)。プレスローラ42が回転することで定着ベルト411は従動して回転する(その回転方向を図10の矢印sで示す)。また定着ベルト411の内側にあって、プレスローラ42と対向するように板状の加熱部材46を設けている。
【0090】
また定着ベルト41の内側には、円弧状のガイド47を設け、定着ベルト411は、ガイド47の外周に沿って取り付けられている。また加熱部材46は、ガイド47に取り付けた支持部材48に支持され、加熱部材46は、定着ベルト411の内側に接触し、かつプレスローラ42の方向に押圧される。したがって、定着ベルト411とプレスローラ42との間に所定幅の定着ニップを形成し、用紙Pが定着ニップを通過する際に、熱と圧力で用紙P上のトナー像を用紙Pに定着する。
【0091】
つまり、定着ベルト411は、ガイド47に支持されながら、加熱部材46の周りを周回する。また加熱部材46は、図6又は図8に示す基本構成を有し、図10に示すように、多層構造のセラミック基板50に形成される。
【0092】
次に、上記のように構成されたMFP10の印刷時の動作を、図13のフローチャートを用いて説明する。図13は、第1の実施形態におけるMFP10の制御の具体例を示すフローチャートである。
【0093】
先ず、Act1(動作1)において、スキャナ部15が画像データを読込むと、CPU100は、画像形成部20における画像形成制御プログラムと定着装置36における定着温度制御プログラムを並列して実行する。
【0094】
画像形成処理が開始されると、Act2では、読込んだ画像データを処理し、Act3で、感光体ドラム22の表面に静電潜像が書込まれる。またAct4で、現像器24は、静電潜像を現像する。
【0095】
他方、定着温度制御処理が開始されると、例えば、ラインセンサ40の検出信号や、オペレーションパネル14aによる用紙選択情報、或いは画像データの解析結果等に基づいて、CPU100は、Act5で、用紙サイズと画像データの印字範囲の大きさをそれぞれ判定する。またAct6で、定着制御回路150は、用紙Pの印字範囲に対応する位置に配置された発熱部材群を発熱対象として選択する。例えば、図8に示した例で、印字領域の幅に対応して中央に配置されている発熱部材511が選択される。
【0096】
次に、ACt7で、選択された発熱部材51への温度制御開始信号をONにすると、選択された発熱部材群への通電が行われ、温度が上昇する。
【0097】
次に、Act8で、加熱部材46の内側に配置された温度センサ57の検出結果をもとに、発熱部材群の温度を検出する。更にAct9で、CPU100は、発熱部材群の温度が所定の温度範囲内か否かを判定する。ここで、発熱部材群の温度が所定の温度範囲内であると判定した場合(Act9:Yes)は、Act10へ進む。一方、発熱部材群の温度が所定の温度範囲内でないと判定した場合(Act9:No)は、Act11へ進む。
【0098】
Act11で、CPU100は、発熱部材群の温度が所定の温度上限値を超えているか否かを判定する。ここで、発熱部材群の検出温度が所定の温度上限値を超えていると判定した場合(Act11:Yes)、CPU100は、Act12で、先のAct6において選択された発熱部材群への通電をOFFにし、Act8へ戻る。
【0099】
また、発熱部材群の温度が所定の温度上限値を超えていないと判定した場合(Act11:No)は、Act9の判定結果より温度が所定の温度下限値に満たない状態であるため、CPU100は、Act13で、発熱部材群への通電をON状態に維持、或いは、再度ONにし、Act8へ戻る。
【0100】
次に、CPU100は、Act10で、発熱部材群の温度が所定の温度範囲内の状態で、用紙Pを転写部に搬送する。また、Act14で、用紙Pにトナー像を転写する。そして用紙Pにトナー像を転写した後、用紙Pを定着装置36内に搬送する。
【0101】
次に、Act15で、定着装置36は用紙Pにトナー像を定着させる。またAct16で、CPU100は、画像データの印字処理を終了するか否かを判定する。ここで、印字処理を終了すると判定した場合(Act16:Yes)は、Act17で、全ての発熱部材群への通電をOFFにし、処理を終了する。一方、画像データの印字処理を未だ終了しないと判定した場合(Act16:No)、すなわち、印刷対象の画像データが残っている場合には、Act1へ戻り、終了するまで同様の処理を繰り返す。
【0102】
以上述べたように、本実施形態に係る加熱部材46(ヒータ)および定着装置36は、加熱部材46の発熱部材群が用紙搬送方向Yと直交する加熱部材46の長手方向(X方向)に分割して配置され、定着ベルト41の内側に接触して配置される。また画像データの印字範囲(画像形成領域)に対応して発熱部材群のいずれかを選択的に通電する。したがって、加熱部材46の用紙の非通紙部分の異常発熱を防止でき、非通紙部分の無駄な加熱を抑制できるため、熱エネルギーを大幅に削減することができる。
【0103】
また絶縁基材に、発熱部材と、温度センサ及び温度センサへの給電用の配線パターンを積層して形成することで、ヒータへの給電用の回路と温度センサとを完全に絶縁した形で配線を行うことができる。かつ、加熱部材46を全体的に小型化することができる。また、絶縁基材として耐熱性のものを使用することで、耐熱性の配線を行うことができる。
【0104】
尚、セラミック基板50への発熱抵抗層の形成や、配線パターンの形成、温度センサの設置につていては、LTCC(Low Temperature Co-fired ceramics)多層基板で構成することもできる。LTCC多層基板は、配線導体とセラミックス基材を例えば900℃以下の低温で同時焼成して作る低温焼成積層セラミックス基板として知られている。
【0105】
また、以上の説明では、図8のように発熱部材を複数のブロックに分割して配置し、温度センサも分割ブロックに対応して設置する例を述べた。しかし、図5に示すように、多数の発熱部材を連続して配列した構成であっても、セラミック基板の層の数を増やし、配線パターンの数を増やせば、1つの絶縁基材の中に発熱部材と、温度センサを配置することができる。この場合、温度センサは、複数の用紙サイズに対応して、加熱部材46の中央部と周辺部に分散して配置するとよい。
【0106】
また、絶縁基材は、セラミック以外の耐熱で絶縁性のガラス系材料でも良い。さらに実施形態で述べた金属材料以外で電極を形成することもできる。
【0107】
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
10…画像形成装置
36…定着装置(加熱装置)
41…定着ベルト
42…プレスローラ(加圧体)
46…加熱部材(ヒータ)
50…セラミック基板(絶縁基材)
51…発熱部材
531〜537…駆動IC
55…サーモスタット(温度調節素子)
57…温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13