【文献】
石井 健一,大澤 智喜,マルチセル型無線LANシステム設計方法の提案,1998年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集1,1998年,458頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、無線信号を送信する無線装置は、電波法の区分により、キャリアセンスを行うことなく信号が送信できる周波数帯域と、キャリアセンスを行うことが義務付けられた周波数帯域が存在する。
【0003】
前者のキャリアセンスを行う必要のない周波数帯域としては、例えば特定小電力セキュリティシステムの無線局の無線設備に割り当てられた400MHz帯があり、キャリアセンスが義務付けられた周波数帯としては例えば特定小電力テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備に割り当てられた400MHz帯や920MHz帯がある。
【0004】
キャリアセンスは、同一の周波数で異なる無線装置が同時に信号を送信すると、混信が発生して通信が阻害されることから、送信を開始する前に、送信に使用する周波数の信号を一定時間受信し、使用周波数が未使用であることを確認したら送信を開始することで、複数の機器間での混信を軽減し、共存できる無線通信環境を保つ。
【0005】
例えば3台の無線装置が相互に通信可能エリアに存在しており、全てがキャリアセンスを行うものとする。ここで1台の無線装置が動作してキャリアセンスを行って送信を開始した後に、残りの2台が動作して送信状態に入ってキャリアセンスを行う場合、先に動作した無線装置が送信を継続しているため、送信待機状態となる。
【0006】
次に、最初に動作した無線装置が送信を終了すると、送信待機状態による2台の無線装置がキャリアセンスにより使用周波数の未使用を検知して送信を開始して同時に電波を出すことになり、混信が発生することになる。これを回避するため、キャリアセンスで使用周波数の未使用を検知してから送信を開始するまでの遅延時間を無線装置毎にランダムに異ならせることで、送信待機状態にある複数台の無線装置が同時に送信動作へ入らないようにして、混信を回避している。
【0007】
一方、特定小電力セキュリティ無線では、緊急性の高い情報を扱うことから、火災や防犯等の事象が発生した場合、他の機器による送信周波数の使用の有無に関係なく送信を開始し、キャリアセンスによる時間遅れを起すことなく迅速に情報を伝えることができるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来のキャリアセンスを行うことなく無線信号を送信することが許容されている特定小電力セキュリティの無線装置にあっては、ホームセキュリティシステム等で同じ家屋内に無線装置の機能を備えた多種多様なセンサを配置しているが、監視領域の状況は様々であり、異なるセンサが連続的に動作した場合、最初に動作したセンサからの信号の送信が継続中に、他のセンサが動作して信号を送信することで混信が発生し、センサから送信した信号が受信装置で正常に受信できず、異常事態が発生してないにも関わらず、異常が判断されて外部の監視センター等に通報されるという問題がある。
【0010】
例えば、住宅の玄関に向かう廊下に人感センサが設置され、玄関ドアに開閉を検知するドアセンサが設置されていたとする。この場合、居住者が外出のため廊下を通って玄関に向い、玄関ドアを開いて外にでてから玄関扉を閉じて施錠し、外出するといった行動をとる。このため玄関に向かう居住者を人感センサが検知して信号の送信動作を開始し、続いて行われる玄関ドアの開放をドアセンサが検知して信号を送信し、更に、玄関ドアの閉鎖をドアセンサが検知して信号を送信し、基本的に人感センサとドアセンサの信号送信に混信は起きない。
【0011】
しかしながら、人感センサは廊下のみならず、玄関側も監視エリアとしており、このため居住者の動きによっては、玄関ドアを開け閉めする居住者の動きを人感センサが検知して信号を送信している場合があり、ドアセンサが玄関扉の閉鎖を検知して送信した信号と人感センサが送信している信号とが混信して受信機で受信できない場合にある。このような場合には、玄関ドアの開放が確認された後に閉鎖が確認されないことから玄関ドアが開きっぱなしになっている異常と判断され、問題は起きていないにもかかわらず、受信機から外部の監視センター側に異常発生が通報されてしまう問題がある。
【0012】
このような問題を解決するためには、キャリアセンスを行うことなく無線信号を送信することが許容されている無線装置であっても、キャリアセンスを行って信号を送信することで混信を軽減することも考えられるが、キャリアセンスを行うことなく無線信号を送信することで緊急性の高い情報を迅速に伝えるという特定小電力セキュリティ無線の本来の機能が損なわれてしまう問題がある。
【0013】
本発明は、キャリアセンスを行うことなく無線信号を送信することが許容されている場合に、緊急性の高い情報の迅速な伝達と混信の軽減を両立可能とする無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(無線装置)
本発明は、キャリアセンスを行うことなく信号を送信することが許容されている無線装置に於いて、
同一の情報を含む信号を複数回送信する場合に、少なくとも1回はキャリアセンスを行うことなく信号を送信し、少なくとも他の1回はキャリアセンスを行って信号を送信する信号処理部が設けられたことを特徴とする。
【0015】
(
所定回数まではキャリアセンスなし、
所定回数送信後の次の送信以降はキャリアセンス)
信号処理部は、
緊急性の高い信号を送信する場合、所定回数まではキャリアセンスを行うことなく信号を送信し、
所定回数送信後の次の送信以降はキャリアセンスを行って信号を送信する。
【0016】
(
所定回数まではキャリアセンス、
所定回数送信後の次の送信以降はキャリアセンスなし)
信号処理部は、
緊急性の低い信号を送信する場合、所定回数まではキャリアセンスを行なって信号を送信し、
所定回数送信後の次の送信以降はキャリアセンスを行うことなく信号を送信する。
【0017】
(キャリアセンスレベルの設定変更)
信号処理部は、キャリアセンスを行って信号を送信するか信号の送信を待機するかを判別するキャリアセンスレベルを設定変更可能とする。
【0018】
(キャリアセンスレベルの連続的又は段階的な設定変更)
信号処理部は、キャリアセンスレベルをノイズレベルに対応して設定された所定の最小キャリアセンスレベルと所定の最大キャリアセンスレベルの間で連続的又は段階的に設定変更可能とする。
【0019】
(信号の優先度によるキャリアセンスの実施)
本発明の別の形態にあっては、キャリアセンスを行うことなく信号を送信することが許容されている無線装置に於いて、送信する信号の種類に応じてキャリアセンスを行うかどうか決定したうえで信号を送信する。
【発明の効果】
【0020】
(基本的な効果)
本発明は、キャリアセンスを行うことなく信号を送信することが許容されている無線装置に於いて、同一の情報を含む信号を複数回送信する場合に、少なくとも1回はキャリアセンスを行うことなく信号を送信し、少なくとも他の1回はキャリアセンスを行って信号を送信する信号処理部が設けられたため、信号を複数回送信する中で1回はキャリアセンスを行うことなく信号を送信することから緊急性の高い信号をキャリアセンスによる時間遅れを起こすことなく迅速に送信することができ、また、信号を複数回送信する中で1回はキャリアセンスを行って信号を送信することから、他の機器による同じ使用周波数の信号の送信により混信が起きても、混信を軽減して確実に信号を受信機等に届くようにすることで、情報の迅速な伝達と混信の軽減を両立可能とする。
【0021】
また、例えば受信中の信号に対してキャリアセンスではなく、信号を解析して応答信号(ACK)等を確認したうえで送信する方式もあるが、信号内容の解析は信号の受信レベルを測定するよりも時間がかかるため、処理毎の電池値容量が増大する。セキュリティ無線機器においては、電池で動作するものがあり、またセンサ類の特徴から取り外ししづらい場所に設置されることがあるため、電池交換はできるだけ避けたいものとなっている。本発明によれば、信号解析する方法に比べ電池消耗が抑えられるため、電池式のセキュリティ無線機器においてより有用である。また、応答信号(ACK)を確認して送信する方法は、通信量が増大するため、空間内のトラフィックが増加するという影響も存在するが、本発明はこれがない。
【0022】
(
所定回数まではキャリアセンスなし、
所定回数送信後の次の送信以降はキャリアセンスの効果)
また、信号処理部は、
緊急性の高い信号を送信する場合、所定回数まではキャリアセンスを行うことなく信号を送信し、
所定回数送信後の次の送信以降はキャリアセンスを行って信号を送信するようにしたため、緊急性の高い信号の迅速な送信を優先し、キャリアセンスを行わない信号の送信による混信をリカバリーする形でキャリアセンスを行って信号を送信することで、情報の迅速な伝達と混信の軽減を両立可能とする。
【0023】
(
所定回数まではキャリアセンス、
所定回数送信後の次の送信以降はキャリアセンスなしの効果)
また、信号処理部は、
緊急性の低い信号を送信する場合、所定回数まではキャリアセンスを行なって信号を送信し、
所定回数送信後の次の送信以降はキャリアセンスを行うことなく信号を送信するようにしたため、混信の軽減を優先し、キャリアセンスを行った信号の送信による時間遅れをリカバリーする形でキャリアセンスを行わずに信号を送信することで、混信の軽減と情報の迅速な伝達を両立可能とする。
【0024】
(キャリアセンスレベルの設定変更による効果)
また、信号処理部は、キャリアセンスを行って信号を送信するか信号の送信を待機するかを判別するキャリアセンスレベルを設定変更可能し、例えば、信号処理部は、キャリアセンスレベルをノイズレベルに対応して設定された所定の最小キャリアセンスレベルと所定の最大キャリアセンスレベルの間で連続的又は段階的に設定変更可能とするにしたため、キャリアセンスが義務付けられた無線装置のキャリアセンスレベルは、法的な技術基準により、例えば絶対利得が2.14dBの空中線に誘起される電圧が400MHz帯の場合は7μVで応答時間は20ミリ秒以内と規定されていることから、本発明にあっては、キャリアセンスレベルを可変設定可能とすることで、例えば、ノイズレベル(又は受信感度)を最小キャリアセンスレベルとし、規格上のキャリアセンスレベルを最大キャリアセンスレベルとして、その間でキャリアセンスレベルを可変設定し、送信状態に入って検出した受信レベルが可変設定したキャリアセンスレベル未満であれば、混信の度合いは低いと見做して信号を送信し、可能な限りキャリアセンスによる時間遅れを低減し、緊急性の高い信号の迅速な伝達を可能とする。
【0025】
(信号の優先度によるキャリアセンスの実施による効果)
本発明の別の形態にあっては、キャリアセンスを行うことなく信号を送信することが許容されている無線装置に於いて、送信する信号の種類に応じてキャリアセンスを行うかどうか決定したうえで信号を送信する信号処理部が設けられたため、例えばセンサの検出信号などの緊急性の高い信号を送信する際にはキャリアセンスを行わずに送信し、例えば定期的な通信確認などの緊急性の低い信号を送信する際にはキャリアセンスを行って送信することで、緊急性の高い信号は時間遅れなく送信でき、緊急性の低い信号は他の信号を妨害することなく送信されるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[防犯システム]
(概要)
図1は発明の無線装置が用いられる無線式の防犯システムを示した説明図である。
図1に示すように、無線式の防犯システムは、開閉センサ10−1、火災センサ10−2、人感センサ10−3、異常報知灯(戸外表示灯)26、中継器28、受信装置(防犯受信器、センター装置)30及び携帯型設定装置32により構成されている。このうち、異常報知灯26を除く各機器は、住宅の屋内に配置されており、異常報知灯26は、住宅の屋外(例えば玄関近傍)に設置されている。
【0028】
なお、以下では、開閉センサ10−1、火災センサ10−2、及び人感センサ10−3を、必要に応じて「防犯センサ10」と総称する場合がある。また、
図1にあっては、開閉センサ10−1、火災センサ10−2、人感センサ10−3、異常報知灯26、及び中継器28をそれぞれ1台ずつ設けているが、任意の複数台を設けてもよい。
【0029】
(防犯センサ)
開閉センサ10−1は、扉や窓の開閉状態を磁気等にて検知するものであり、扉や窓が開状態となったことを検知した場合には、開検知信号を無線にて送信し、開状態となった扉や窓が閉状態となったことを検知した場合には、閉検知信号を無線にて送信する。
【0030】
火災センサ10−2は、煙や熱を検知することにより火災発生を検知するものであり、火災発生を検知した場合には、火災検知信号を無線にて送信する。人感センサ10−3は、赤外線を検知することにより人体を検知するものであり、人体を検知した場合には、人体検知信号を無線にて送信する。
【0031】
異常報知灯26は、受信装置30から移報信号を受信した場合に点灯又は点滅することで、火災等の異常発生を屋外に報知する。
【0032】
(中継器)
中継器28は、防犯センサ10から無線送信された信号を受信し、受信した信号を携帯型設定装置32又は受信装置30に送信する中継機能を備える。また、中継器28は受信装置30から無線送信された信号を受信し、携帯型設定装置32又は異常報知灯
26に送信する中継機能も備える。
【0033】
(受信装置)
受信装置30は、防犯センサ10から送信された信号を、中継器28を介して受信し、あるいは直接受信することにより、異常の有無を監視して報知する。受信装置30は、異常を検知した際には、異常報知灯26に移報信号を無線で送信して異常報知を行わせると共に、必要に応じて、警備会社へ異常発生を有線又は無線で移報する無線中継器としても機能する。受信装置30は、例えば、屋内においてユーザが視認し易い場所、代表的には、玄関やリビング等に設置される。
【0034】
(携帯型設定装置)
携帯型設定装置32は、受信装置30の防犯警戒状態を無線で遠隔的に設定するためのものである。例えば、携帯型設定装置32は、屋内における中継器28又は受信装置30に電波が届く範囲内において、ユーザによって携帯され、あるいは、任意の場所に置かれた状態で使用される。
【0035】
特に、受信装置30がリビングに設置されており、リビングが玄関から離れた場所にある場合には、ユーザが帰宅してからリビングの受信装置30における防犯モードを解除するまでに時間がかかり、所定時間内に防犯モードを解除できなくなる可能性があるため、携帯型設定装置32を玄関の近傍に配置することでユーザの利便性を向上させることができる。
【0036】
(使用周波数帯)
図1の防犯システムでは、信号を送受信する周波数帯として、2つの周波数帯を使用する。具体的には、防犯センサ10と中継器28又は受信装置30との相互間では、キャリアセンスが義務付けられていない特定小電力セキュリティ無線の426MHz帯を使用する。これに対し中継器28、受信装置30及び携帯型設定装32の相互間では、キャリアセンスが義務付けられている920MHz帯を使用し、通信速度の向上による高速処理化を図ると共に、通信の信頼性を向上させる。
【0037】
[無線装置]
(概要)
図2は
図1の防犯センサとして機能する無線装置の機能構成を示したブロック図である。
図2に示すように、
図1に示した開閉センサ10−1、火災センサ10−2及び人感センサ10−3を総括した防犯センサ10は本発明の無線装置として機能し、信号処理部12、センサ部14、送信部18と受信部20を備えた無線通信部16、アンテナ22及びキャリアセンスレベル設定部24で構成される。また、防犯センサ10は図示しない電池電源により動作する。
【0038】
(無線通信部)
無線通信部16は、特定小電力セキュリティ無線の標準規格として知られたSTD−30に準拠した426MHz帯の所定のチャンネル周波数を使用してID部とデータ部で構成されたパケット信号の送受信を行う。
【0039】
426MHz帯の特定小電力セキュリティ無線では、キャリアセンスが義務付けられておらず、送信部18により信号を送信する場合には、キャリアセンスを行うことなく無線信号を送信することが許容されている。このため426MHz帯の特定小電力セキュリティ無線を行う無線通信部16は、本来、送信部18を備えるだけで良いが、本実施形態の無線装置にあっては、受信部20が設けられおり、受信部20により426MHz帯の特定小電力セキュリティ無線について、キャリアセンスを行って信号を送信すること可能とする。
【0040】
(センサ部)
センサ部14は、
図1に示した開閉センサ10−1の開閉検知部、火災センサ10−2の火災検知部又は人感センサ10−3の赤外線検知部の機能を総称しており、開閉、火災又は人体を検出した場合に、その検知信号をイベント検知信号として信号処理部12に出力する。
【0041】
(信号処理部)
信号処理部12は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成され、プログラムの実行によりセンサ部14からイベント検知信号が入力した場合に、パケット信号を生成して送信する所定の送信制御を行う。
【0042】
信号処理部12は、センサ部14からのイベント検知信号の入力を検知した場合、送信制御状態となり、防犯センサ10の識別情報を含むID部とセンサ種別や検出値等を含むデータ部からなるパケット信号を生成し、同じ内容のパケット信号を予め定めた複数回送信する制御を行う。
【0043】
また、信号処理部12は、同じ内容のパケット信号を複数回送信する場合、少なくとも1回はキャリアセンスを行うことなく信号を送信し、少なくとも他の1回はキャリアセンスを行って信号を送信する制御を行う。
【0044】
信号処理部12による送信制御の第1実施形態にあっては、同じ内容のパケット信号を複数回送信する場合、1回目はキャリアセンスを行うことなくパケット信号を送信し、2回目以降はキャリアセンスを行ってパケット信号を送信する制御を行う。
【0045】
また、信号処理部12による送信制御の第2実施形態にあっては、同じ内容のパケット信号を複数回送信する場合、1回目はキャリアセンスを行ってパケット信号を送信し、2回目以降はキャリアセンスを行うことなくパケット信号を送信する制御を行う。
【0046】
(キャリアセンスレベル設定部)
キャリアセンスレベル設定部24は、手動操作により、キャリアセンスを行って信号を送信するか信号の送信を待機するかを判別するキャリアセンスレベルVthを設定変更可能とし、例えば、キャリアセンスレベルVthを所定の最小キャリアセンスレベル(Vth)minと所定の最大キャリアセンスレベル(Vth)maxの間で連続的又は段階的に設定変更可能とする。
【0047】
ここで、最小キャリアセンスレベル(Vth)minは、例えば受信感度に対応して例えば(Vth)min=0.2〜0.3μVに設定し、また、最大キャリアセンスレベル(Vth)maxは、周波数チャンネルの空き状態の判定が、キャリアセンスが義務付けられたSTD−T67の場合、絶対利得が2.14dBの空中線に誘起される電圧が400MHz帯の場合は7μVで応答時間は20ミリ秒以内と規定されていることから、例えば(Vth)max=7μVに設定し、その間でキャリアセンスレベルVthを任意に可変設定する。
【0048】
例えば緊急性の高い信号の迅速な伝達を優先したい場合(混信が起きてもスループットを高めたい場合)は、キャリアセンスレベルVthを高めに設定し、一方、緊急性の高い信号の確実な伝達を優先したい場合(スループットは低くても混信を確実に回避したい場合)には、キャリアセンスレベルを低めに設定する。
【0049】
[通信制御の第1実施形態]
(通信制御のタイムチャート)
図2の信号処理部12は、通信制御の第1実施形態として、イベント検知に基づき送信状態となった場合、1回目はキャリアセンスを行うことなくパケット信号を送信し、2回目以降はキャリアセンスを行ってパケット信号を送信することにより同じ内容のパケット信号を例えば3回送信する制御を行う。
【0050】
図3は
図2の信号処理部による送信制御の第1実施形態を示したタイムチャートであり、
図3(A)がセンサ部からのイベント検知信号を示し、
図3(B)は混信がない場合の送信動作とキャリアセンスを示し、
図3(C)は混信が起きた場合の送信動作とキャリアセンスを示す。
【0051】
図3(A)に示すように、時刻t1でドア開閉検知、火災検知又は人体検知によりセンサ部14からイベント検知信号が出力されたとすると、信号処理部12が送信動作状態となり、
図3(B)に示すようにキャリアセンスを行うことなく、送信部18に指示して時刻t1から1回目のパケット信号の送信を行う。
【0052】
続いて、時刻t2の送信終了から所定時間T1が経過した時刻t3で2回目の送信動作状態となり、2回目の送信動作状態ではキャリアセンスを行ってパケット信号を送信する。即ち、時刻t3で受信部20を受信動作状態とし、受信部20から出力される受信信号レベル(受信電波強度)を、キャリアセンスレベル設定部24の指示に基づき設定されたキャリアセンスレベルVthと比較し、この場合、他の防犯センサから信号が送信されていない混信のない状態であったとすると、受信信号レベルはキャリアセンスレベルVth以下又は未満であり、時刻t4で受信部20の動作を停止して送信部18の動作に切り替えることで、所定の切替時間T2が経過した時刻t5から2回目のパケット信号の送信を行う。
【0053】
時刻t6で2回目の送信が終了すると、同様に所定時間T1が経過した時刻t7でキャリアセンスを行い、受信信号レベルはキャリアセンスレベルVth以下又は未満であった場合、切替時間T2が経過した時刻t9から3回目のパケット信号の送信を行って一連の送信制御を終了する。
【0054】
これに対し時刻t1でイベント検知信号が出力されたときに、他の防犯センサが同じ使用周波数で信号を送信することによる混信状態にあった場合、
図3(C)に示すように、信号処理部12は受信部20の動作によるキャリアセンスを行うことなく、時刻t1で送信部18を動作状態としてパケット信号を送信する1回目の送信を行う。このとき、他の防犯センサによる信号送信があると、混信が発生し、中継器又は受信装置で正常に信号が受信できない可能性が高まる。
【0055】
キャリアセンスを行わない1回目の送信が時刻t2で終了すると、所定時間T1が経過した時刻t3で受信部20を受信動作状態とし、受信部20から出力される受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth超え又は以上となる斜線部で示す混信状態であったとすると、時刻t4で受信部20の動作を停止すると共に送信部18の動作を行うことなく送信待機状態とし、所定時間T1を経過した後の時刻t5で再び
受信部20を受信動作状態とし、この場合も受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth超え又は以上であることから、時刻t6で受信部20の動作を停止すると共に送信部18の送信待機状態を継続する。
【0056】
続いて、所定時間T1を経過した時刻t7で再び受信部20を受信動作状態とし、この場合には混信が解消されており、受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth未満又は以下であることから、時刻t8で受信部20の動作を停止して送信部18の動作に切り替えることで、所定の切替時間T2が経過した時刻t9から2回目のパケット信号の送信を行う。
【0057】
時刻t10で2回目の送信が終了すると、同様に所定時間T1が経過した時刻t12でキャリアセンスを行い、受信信号レベルはキャリアセンスレベルVth以下又は未満であった場合、切替時間T2が経過した時刻t13から3回目のパケット信号の送信を行って一連の送信制御を終了する。
【0058】
このように送信制御の第1実施形態は、同じ内容の信号を複数回送信する場合に、1回目はキャリアセンスを行うことなく信号を送信し、2回目以降はキャリアセンスを行って信号を送信することで、緊急性の高い信号の迅速な送信を優先し、キャリアセンスを行わない信号の送信による混信をリカバリーする形でキャリアセンスを行って信号を送信することで、情報の迅速な伝達と混信の軽減を両立可能とする。
【0059】
(通信制御のフローチャート)
図4は
図2の信号処理部による送信制御の第1実施形態を示したフローチャートであり、信号処理部12の制御動作となる。
【0060】
図4に示すように、信号処理部12はステップS1でセンサ部14の検知動作によるイベント発生、具体的にはイベント検知信号の入力を監視しており、イベント発生を判別するとステップS2に進み、送信部18を動作状態とし、イベント発生に基づいて生成したパケット信号を、キャリアセンスを行うことなく送信する。
【0061】
続いてステップS3で送信回数を示す送信カウンタNを1つカウントアップし、ステップS4で所定時間T1の経過を監視し、所定時間T1の経過を判別するとステップS5に進み、受信部20を動作状態として受信信号レベルを検出するキャリアセンスを行う。
【0062】
続いて信号処理部12はステップ6に進み、ステップS5のキャリアセンスで検知された受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth以下か否か判別し、キャリアセンスレベルVthを超えている場合には、ステップS7に進んで送信待機状態とし、ステップS4に戻り、所定時間T1の経過を判別した場合にステップS5に進んで次のキャリアセンスを行う。
【0063】
一方、信号処理部12は、ステップS6で受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth以下にあることを判別した場合はステップS8に進み、受信部20の受信動作を停止して送信部18を動作状態とする所定の切替時間T2後に、パケット信号を送信する2回目の送信を行う。
【0064】
続いて、信号処理部12はステップS9に進み、送信カウンタNを1つカウントアップし、ステップS10で最大送信回数Nmaxが判別されるまでステップS4からの処理を繰り返す。
【0065】
[通信制御の第2実施形態]
(通信制御のタイムチャート)
図2の信号処理部は、通信制御の第2実施形態として、イベント検知に基づき送信状態となった場合、1回目はキャリアセンスを行ってパケット信号を送信し、2回目以降はキャリアセンスを行うことなくパケット信号を送信することにより同じ内容のパケット信号を例えば3回送信する制御を行う。
【0066】
図5は
図2の信号処理部12による送信制御の第2実施形態を示したタイムチャートであり、
図5(A)がセンサ部からのイベント検知信号を示し、
図5(B)は混信がない場合の送信動作とキャリアセンスを示し、
図5(C)は混信が起きた場合の送信動作とキャリアセンスを示す。
【0067】
図5(A)に示すように、時刻t1でドア開閉検知、火災検知又は人体検知によりセンサ部14からイベント検知信号が出力されたとすると、信号処理部12が送信動作状態となり、
図5(B)に示すように、1回目の送信動作状態ではキャリアセンスを行ってパケット信号を送信する。
【0068】
即ち、信号処理部12は、時刻t1で受信部20を受信動作状態とし、受信部20から出力される受信信号レベル(受信電波強度)を、キャリアセンスレベル設定部24の指示に基づき設定されたキャリアセンスレベルVthと比較し、この場合、他の防犯センサから信号が送信されていない混信のない状態であったとすると、受信信号レベルはキャリアセンスレベルVth以下又は未満であり、時刻t2で受信部20の動作を停止して送信部18の動作に切り替えることで、所定の切替時間T2が経過した時刻t3から1回目のパケット信号の送信を行う。
【0069】
時刻t4で1回目の送信が終了すると所定時間T1が経過した後の時刻t5でキャリアセンスを行うことなく、送信部18に指示して2回目のパケット信号の送信を行う。時刻t6で2回目の送信が終了すると、所定時間T1が経過した時刻t7で、同様に、キャリアセンスを行うことなく、送信部18に指示して3回目のパケット信号の送信を行って一連の送信制御を終了する。
【0070】
これに対し時刻t1でイベント検知信号が出力されたときに、他の防犯センサが同じ使用周波数で信号を送信することによる混信状態にあった場合には、
図5(C)に示すように、信号処理部12は時刻t1で受信部20を受信動作状態とし、受信部20から出力される受信信号レベルをキャリアセンスレベルVthと比較する。
【0071】
この場合、受信部20から出力される受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth超え又は以上となる斜線部で示す混信状態であったとすると、信号処理部12は、時刻t2で受信部20の動作を停止すると共に送信部18の動作を行うことなく送信待機状態とし、所定時間T1を経過した後の時刻t3で再び受信部20を受信動作状態とし、この場合も受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth超え又は以上であることから、時刻t4で受信部20の動作を停止すると共に送信部18を送信待機状態とする。
【0072】
続いて、信号処理部12は、所定時間T1を経過した時刻t5で再び受信部20を受信動作状態とし、この場合には混信が解消されており、受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth未満又は以下であることから、時刻t6で受信部20の動作を停止して送信部18の動作に切り替えることで、所定の切替時間T2が経過した時刻t7から1回目のパケット信号の送信を行う。
【0073】
時刻t8で1回目の送信が終了すると、同様に所定時間T1が経過した時刻t9でキャリアセンスを行うことなく2回目のパケット信号の送信を行う。時刻t10で2回目の送信が終了すると、所定時間T1が経過した時刻t11で、同様に、キャリアセンスを行うことなく、送信部18に指示して3回目のパケット信号の送信を行って一連の送信制御を終了する。
【0074】
このように送信制御の第2実施形態は、同じ内容の信号を複数回送信する場合に、1回目はキャリアセンスを行ってパケット信号を送信し、2回目以降はキャリアセンスを行わずに信号を送信することで、混信の軽減を優先し、続いて、キャリアセンスを行った信号の送信による時間遅れをリカバリーする形でキャリアセンスを行わずに信号を送信することで、混信の軽減と情報の迅速な伝達を両立可能とする。
【0075】
(通信制御のフローチャート)
図6は
図2の信号処理部による送信制御の第2実施形態を示したフローチャートであり、信号処理部12の制御動作となる。
【0076】
図6に示すように、信号処理部12はステップS11でセンサ部14の検知動作によるイベント発生、具体的にはイベント検知信号の入力を監視しており、イベント発生を判別するとステップS12に進み、受信部20を動作状態として受信信号レベルを検出するキャリアセンスを行う。
【0077】
続いて信号処理部12はステップ13に進み、ステップS12のキャリアセンス検知された受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth以下か否か判別し、キャリアセンスレベルVthを超えている場合には、ステップS14に進んで送信待機状態とし、ステップS15で所定時間T1の経過を判別するとステップS12に戻って次のキャリアセンスを行う。
【0078】
信号処理部12は、ステップS13で受信信号レベルがキャリアセンスレベルVth以下にあることを判別した場合は、ステップS16に進み、送信部18を動作状態とし、イベント発生に基づいて生成したパケット信号を送信する。
【0079】
続いて、信号処理部12はステップS17に進み、送信カウンタNを1つカウントアップし、続いてステップS18で所定時間T1の経過を監視し、所定時間T1の経過を判別するとステップS19に進み、送信待機状態とし、キャリアセンスを行うことなく直ぐにパケット信号を送信する。
【0080】
続いて、信号処理部12はステップS20に進み、送信カウンタNを1つカウントアップし、ステップS21で最大送信海水Nmaxが判別されるまでステップS18からの処理を繰り返す。
【0081】
〔本発明の変形例〕
(送信信号)
上記の実施形態は、同じ内容の信号を複数回送信するように記載されているが、例えば伝送したい内容に加えて送信回数を含めて信号として送信するような、同一の情報を含む信号を複数回送信する場合にも適用可能である。
【0082】
(送信待機時間)
上記の実施形態は、信号送信時からキャリアセンスまでの待機時間と、キャリアセンスから次のキャリアセンスまでの待機時間を同じに設定しているが、異なるようにしても良い。また、送信する信号の緊急度に応じて上記それぞれの待機時間を異ならせるようにしても良い。例えば、センサ反応時等の緊急時には待機時間を短くさせ、定期通信等の通常時には待機時間を長く取るようにしても良い。このようにすることで、通常時は電池の消耗を抑えつつ、緊急時には他のキャリア無しを早く検出して信号を送信することが可能となる。
【0083】
(送信制御)
上記の実施形態は、同じ内容の信号を複数回送信する場合、送信制御の第1実施形態では、1回目はキャリアセンスを行わずに信号を送信し、2回目以降はキャリアセンスを行って信号を送信しているが、キャリアセンスを行わない信号送信とキャリアセンスを行う信号送信を交互に繰り返し行うようにしても良い。
【0084】
また、送信制御の第2実施形態では、1回目はキャリアセンスを行って信号を送信し、2回目以降はキャリアセンスを行わずに信号を送信しているが、キャリアセンスを行う信号送信とキャリアセンスを行わない信号送信を交互に繰り返し行うようにしても良い。
【0085】
また、キャリアセンスを行う信号送信とキャリアセンスを行わない信号送信を、複数回ずつ交互に繰り返すようにしても良い。
【0086】
(通信システム)
上記の実施形態は、防犯システムについて説明したが、この他にも任意の目的や種類の通信システムに本発明を適用することができ、例えば、防災システムにおいて、端末機器としての無線式住宅用火災警報器やその他の電池式小型無線機器から、受信装置としての受信機に通信を行ったり、自動車制御システムにおいて、端末機器としての携帯型設定装置から、受信装置としての例えばエンジンスタータに通信を行う場合にも、本発明を適用することができる。
【0087】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。