【実施例1】
【0012】
図1〜
図4を用いて第1実施例を説明する。
図1は、進捗・稼動監視システムの全体概要を示す説明図である。進捗・稼動監視システム1は、生産現場2の進捗状態および稼動状態を監視し、その監視結果をユーザへ提供するものである。
【0013】
進捗・稼動監視システム1は、例えば、少なくとも一つの計算機を用いて構成することができる。進捗・稼動監視システム1は、計算機資源としての演算装置、メモリ装置、補助記憶装置、入出力インターフェース回路、通信インターフェース回路(いずれも不図示)と所定のコンピュータプログラムとから、後述する各機能11〜15を実現する。
【0014】
先に生産現場2について説明する。生産現場2は、複数の作業工程P1〜Pnにより製品23を生産する。製品23は、通常、複数の部品22から構成される。生産現場2の生産方式は、ライン方式、セル方式、ダイナミックセル方式のいずれでもよい。本実施形態の生産現場2は、いわゆる多品種少量生産に向いているが、少品種大量生産や少品種少量生産にも適用可能である。以下、作業工程を工程と略記する場合がある。
【0015】
各工程P1〜Pnは、RFID(Radio Frequency IDentifier)タグ24から作業者の識別情報を読み出すRFIDリーダ21を備えている。各工程P1〜Pnには、一人または複数の作業者W1〜Wnが配置される。作業者の配置先は、例えば生産現場2のリーダであるユーザが事前に決定することができる。
【0016】
作業者は、自分に割り当てられた工程に到着すると、RFIDタグ24に格納された作業者識別情報をRFIDリーダ21に読み取らせる。
【0017】
ここで、
図2で示すように、RFIDタグ24は、作業者の識別情報を格納する作業者タグ24−1と、作業者の配置先の工程を示す情報を格納する作業指導票タグ24−2とに分けることができる。各工程に設置されたRFIDリーダ21は、作業者タグ24−1から作業者を特定する識別情報を読み出すと共に、作業指導票タグ24−2から工程を特定する識別情報を読み出す。進捗・稼動監視システム1は、RFIDリーダ21の読み取った情報に基づいて、どの工程にどの作業者が配置されているかを把握できる。
【0018】
なお、作業者タグ24−1と作業指導票タグ24−2とを一体化し、作業者が担当する工程を特定する工程識別情報を、ユーザの指示により、RFIDリーダ/ライタで書き換える構成としてもよい。
【0019】
各工程には、作業指示端末25が設置されている。作業指示端末25は、その工程での作業手順を作業者へ教示するための画面を表示する。作業者は、一つの作業手順を完了すると、作業指示端末25において、その作業手順の完了を示す完了ボタンまたは次の作業手順の表示を要求する次ボタンを操作する。作業者が各作業手順を終えるたびに、または次の作業手順の解説を呼び出すたびに、「所定操作」としてボタンを操作する。進捗・稼動監視システム1は、作業指示端末25への操作を監視することにより、各工程で実施すべき作業手順の進捗状況をリアルタイムで把握することができる。
【0020】
進捗・稼動監視システム1の構成を説明する。進捗・稼動監視システム1は、例えば、作業状況監視部11と、作業者管理部12と、生産計画管理部13と、生産実績管理部14と、生産監視部15とを備える。
【0021】
作業状況監視部11は、各工程のRFIDリーダ21が読み取った識別情報と、作業指示端末25への操作とに基づいて、各工程の作業の進捗状況を監視し、生産実績管理部14へ送信する。
【0022】
作業者管理部12は、例えば、各作業者の作業員番号、氏名、勤務形態、勤務時間、担当した工程の履歴、各工程で必要とされるスキルの有無などを管理する。作業者タグ24−1には、作業者管理部12で管理される情報が書き込まれる。
【0023】
生産計画管理部13は、生産現場2の生産計画を管理する。生産計画管理部13は、生産現場全体の生産計画と、工程別の生産計画とをそれぞれ管理する。
【0024】
生産実績管理部14は、作業状況監視部11からのデータに基づいて、工程毎の生産実績を管理する。
【0025】
生産監視部15は、生産実績管理部14で管理する各工程の生産実績データと生産計画管理部13で管理する各工程別生産計画とに基づいて、各作業工程での作業能力の問題を解析する。作業能力の問題とは、例えば、生産計画と生産実績との乖離、ボトルネック作業の有無、作業能力の過不足である。
【0026】
生産監視部15は、作業能力の問題を生産監視画面16に表示する。生産監視画面16は、進捗・稼動監視システム1に接続されたディスプレイに表示してもよいし、現場リーダなどのユーザが持つ端末の画面に表示してもよい。ユーザの端末としては、例えば、携帯情報端末、携帯電話、仮想現実用ヘッドセット等を挙げることができる。
【0027】
生産監視画面16は、横軸に各工程が、縦軸に時間が表示されている。生産監視画面16は、工程毎に、生産計画を示す表示要素(例えば棒グラフ)161と、生産実績を示す表示要素(例えば棒グラフ)162を対比させて表示する。
【0028】
さらに、生産監視画面16には、現在時刻T1を示す表示要素と、所定の作業終了時刻T2を示す表示要素とが表示される。時刻T3は、最も作業の遅れている工程P5の作業終了予定時刻である。作業終了予定時刻を示す表示要素は、工程毎に表示させることができるが、ここでは最も作業の遅れている工程についてのみ図示している。
【0029】
ユーザは、各工程の状態を一元的に表示する生産監視画面16を見ることで、生産現場2の進捗状態および稼動状態を容易に把握することができる。ユーザは、工程P5の作業終了予定時刻T3が所定の作業終了時刻T2(例えばいわゆる定時の退勤時刻)を大きく超えていることに気づく。つまり、工程P5は、生産計画と生産実績とが乖離している工程、ボトルネック作業を持つ工程、作業能力の不足が生じている工程であると見なすことができる。
【0030】
ユーザは、工程P5の問題を解消すべく、すなわち工程P5の作業終了予定時刻T3を所定の作業終了時刻T2に近づけるべく、生産監視画面16上において、作業者の割当てを変更する。
【0031】
例えば、ユーザは、生産監視画面16に配置される割当て変更ボタン164を操作することにより、生産監視画面16上に「設定画面」としての作業者割当て設定画面19を表示させる。設定画面19の詳細な一例は、
図4で後述する。
【0032】
ユーザは、設定画面19を用いて、工程P5へ追加配置する作業者を指定する。ここでは、例えば、二点鎖線矢印163に示すように、工程P2から工程P5へ作業者が1名移されるとする。工程P2は作業者を提供する割当て元工程であり、工程P5は作業者が供給される割当て先工程である。割当て元工程P2は、現時点T1の予測結果では、生産計画と生産実績との乖離が少ないため、工程P2の作業者を削減したとしても作業終了時刻はそれほど延びないであろうと判断できる。工程P2に限らず、他の工程を割当て元工程として選択することもできる。どの工程の作業者を割当て先工程に割当てるかは、ユーザがその都度判断することができる。
【0033】
後述する他の実施例のように、ユーザが、割当て先工程P5と割当て元工程P2を選択した時点で、割当て元工程P2から割当て先工程P5へ移動可能な作業者の一覧を設定画面19へ表示してもよい。また例えば、二点鎖線矢印163に示すように、ユーザが割当て元工程P2を選択したままの状態で、割当て先工程P5を選択すると、工程P2から工程P5へ移動可能な作業者の候補を設定画面19に表示させてもよい。
【0034】
図2は、進捗・稼動監視システム1の機能構成図である。作業者管理部12は、例えば、作業者タグ管理部121と、作業指導票タグ管理部122と、RFID管理データベース123とを備える。作業者タグ管理部121は、作業者タグ24−1に格納する作業者の識別情報を管理する。作業指導票タグ管理部122は、作業指導票タグ24−2に格納する工程別の識別情報を管理する。RFID管理データベース123は、作業者の識別情報、工程別の識別情報、作業者の製造する製品の番号(製造番号)等との対応関係を記憶する。
【0035】
作業状況監視部11は、例えば、RFIDリーダ21と、作業指示端末25と、RFID管理システム111と、RFID動態データベース112とを備える。RFID管理システム111は、例えば、RFIDリーダ21を介して各タグ24−1,24−2から読み取った情報と、作業指示端末25から取得した操作情報と、図示せぬ時計から取得した日時情報と、RFID管理データベース123から取得した工程別識別情報や製造番号等を対応づけて管理する。RFID管理システム111は、対応づけたデータをRFID動態データベース112に格納する。
【0036】
生産実績管理部14は、RFID動態データベース112から生産現場の進捗状況を示すデータを読み出して、生産実績を把握する。
【0037】
データ収集部17は、定期的にまたは不定期に生産実績管理部14から生産実績データを取得すると共に、生産計画管理部13から工程別生産計画を取得する。データ収集部17は、定期的に工程別生産計画を取得する必要はなく、生産計画が変更された場合に、生産計画管理部13から工程別生産計画を取得すればよい。データ収集部17は、生産実績管理部14から取得した各工程の生産実績データと生産計画管理部13から取得した工程別生産計画とを、データプール18に格納する。
【0038】
生産監視部15は、データプール18から工程別生産計画と生産実績データとを読みだして、生産現場の進捗状態および稼動状態を解析し、作業能力の問題を抽出して、生産監視画面16に表示する。
【0039】
生産監視画面16において、ユーザが作業者の割当て変更を指示すると、生産監視部15は、その指示を作業者管理部12へ通知する。これにより、変更対象の作業者の識別情報には、移動先の工程(割当て先工程)の識別情報が対応づけられて、RFID管理データベース123に登録される。
【0040】
図3は、進捗・稼動監視処理を示すフローチャートである。生産監視部15は、生産計画管理部13から工程別生産計画を取得し(S10)、生産実績管理部14から生産実績(生産実績データ)を取得する(S11)。
【0041】
生産監視部15は、生産計画と生産実績とを比較することで、各工程における作業の進捗状況を算出する(S12)。そして、生産監視部15は、ステップS12の算出結果とステップS10,S11で取得したデータとを用いて、生産監視画面16を生成し、表示させる(S13)。
【0042】
生産監視部15は、ユーザが生産監視画面16を通じて作業者の割当て変更を指示したか判定する(S14)。生産監視部15は、ユーザが作業者の割当て変更を指示したと判定すると(S14:YES)、変更対象の作業者の候補を算出して、生産監視画面16上の設定画面19に表示する(S15)。なお、生産監視画面16と設定画面19とをそれぞれ別々のディスプレイに表示させてもよい。
【0043】
生産監視部15は、作業者割当ての変更内容を示す情報が、ユーザから設定画面19を通じて入力されたか判定する(S16)。作業者の割当ての変更内容を示す情報が入力されると(S16:YES)、その内容を保存する(S17)。
【0044】
生産監視部15は、生産監視画面16に対するユーザ操作が終了したか否かを判定し(S18)、操作終了と判断すると(S18:YES)、ステップS17で保存した作業者の割当て変更の内容を出力する(S19)。操作を終了しない場合(S18:NO)、生産監視部15は、ステップS17で保存した作業者の割当て変更内容に基づいて、進捗状況を算出し(S12)、生産監視画面16に表示する(S13)。したがって、ユーザは、割当て先工程へ作業者を割り当てるたびに、割当て先工程での生産計画と生産実績(予測値)との乖離が減少する様子を確認することができる。
【0045】
生産監視部15から出力された作業者の割当て変更の内容は、例えば、生産計画管理部13を介して作業者管理部12へ通知される。生産監視部15から作業者管理部12へ直接的に作業者の割当て変更の内容を通知してもよい。
【0046】
この後、変更対象の作業者には、割当て先工程に移動するよう指示される。指示方法は特に問わない。例えば、作業者の持つタグ24−1内に、割当て先工程の識別情報を書き込んだり、作業者が目視で確認する作業管理ボード上に割当て先工程を表示したりしてもよい。あるいは、作業者の持つ端末に電子メールを送信することで、割当て先工程の情報を表示させてもよい。さらには、変更対象の作業者が現在参照している作業指示端末25上に、割当て先工程の情報を表示してもよい。
【0047】
図4は、作業者割当て設定画面19の例を示す。設定画面19は、例えば、作業者の一覧を表示する作業者一覧191と、割り当て対象の作業日時を指定するボタン192,193と、設定画面19を閉じるための画面194と、割当て内容を確定させるボタン195と、作業者一覧191に作業者を追加するボタン196と、作業者一覧191に表示された作業者を削除するボタン197と、割当て先工程に追加して割り当てるべき作業者の人数を表示する表示部198とを備える。
【0048】
作業者一覧191は、例えば、チェックボックス部1911と、連番1912と、氏名1913と、担当中のラインを特定する識別番号1914と、担当中の工程の名称1915と、勤務情報1916と、残業時間1917とを含む。保有スキルの情報等、これら以外の項目を作業者一覧191は含んでもよい。
【0049】
ユーザは、作業者一覧191を確認し、チェックボックス部1911をチェックすることにより、割当て先工程へ移動させるべき作業者を少なくとも1名選択する。ユーザが確定ボタン195を操作すると、作業者の割当て変更内容が確定し、保存される。
【0050】
割り当て対象の作業日時を指定するボタンには、当日(今日)を指定するボタン192と、未来の日付を指定するボタン193とがある。人員追加ボタン196は、例えば他部署からの応援、臨時に雇用した作業者などを進捗・稼動監視システム1に登録する際に使用する。人員削除ボタン197は、作業者一覧191の中から、割当て対象として選択すべきではない作業者を削除する場合に使用する。
【0051】
追加人員を表示する表示部198は、割当て先工程で必要と予測される作業者の人数を参考情報として表示する。
【0052】
このように構成される本実施例によれば、生産現場2の各作業工程における作業上の問題を可視化して生産監視画面16に一元的に表示し、さらに、生産監視画面16を通じて作業者の割当てを行うことができる。
【0053】
これにより、本実施例によれば、ユーザは、生産監視画面16を介して、生産現場2の進捗状態および稼動状態を速やかに把握することができ、さらに、作業者の個別の事情を考慮して作業者の割当て変更を決定できる。
【0054】
この結果、本実施例によれば、ユーザの使い勝手のよい生産監視画面16を通じて、生産現場の問題をその場で解消することも可能となり、生産効率の向上につながる。
【実施例3】
【0059】
図6を用いて第3実施例を説明する。本実施例では、
図3で述べた作業者候補表示処理(S15)の一例を説明する。
【0060】
生産監視部15は、作業者管理部12により、割り当て対象の作業日時において出勤する作業者(例えば、本日出勤中の作業者)を抽出させる(S151)。
【0061】
生産監視部15は、出勤する作業者のうち、割当て先工程で必要なスキルを保有する作業者を抽出する(S152)。
【0062】
生産監視部15は、割当て先工程で必要なスキルを有する作業者のうち、生産計画と生産実績との乖離が所定時間内である工程に属する作業者を抽出する(S153)。
【0063】
生産監視部15は、ステップS151〜S153により段階的に抽出された作業者候補の数が所定の閾値Th1以上であるか判定する(S154)。閾値Th1は、例えば「1」に設定することができる。
【0064】
ステップS151〜S153の条件を全て満たす作業者の数が閾値Th1以上である場合(S154:YES)、生産監視部15は、その作業者の情報を作業者候補として、生産監視画面16(あるいは設定画面19)に表示させる(S156)。
【0065】
ステップS151〜S153の条件を全て満たす作業者の数が閾値Th1未満の場合(S154:NO)、生産監視部15は、割当て先工程で必要なスキルを有する作業者のうち、移動させても影響の少ないと判断可能な工程に属する作業者を抽出し(S155)、作業者候補として表示する(S156)。
【0066】
なお、ステップS155で作業者候補の対象を拡大しても人数が閾値Th1に満たない場合、エラーを表示してもよいし、あるいは、特に選抜せずに作業者の一覧191を表示してもよい。
【0067】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例によれば、複数の抽出条件を満たす作業者を割当て先工程へ送る作業者候補として抽出するため、ユーザの判断を支援することができ、使い勝手が向上する。