(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
〔水性樹脂分散体〕
本実施形態の水性樹脂分散体は、
アルコキシシラン基含有重合性単量体単位(a)0.1質量%以上5.0質量%以下と、
カルボキシル基含有重合性単量体単位(b)0.2質量%以上4.0質量%以下と、を、
含有する重合体(A)と、
Na、又は、Kを、0.05質量%〜0.5質量%と、
を、含む。
【0012】
本実施形態の水性樹脂分散体は、亜硝酸塩配合安定性に優れており、セメント、充填剤、及びその他の添加剤等よりなる所定の粉体と、亜硝酸塩を配合した本実施形態の水性樹脂分散体を混合するだけで防錆塗料である本実施形態のモルタル組成物を調製可能であることから、作業現場での作業効率を飛躍的に向上させることができる。
本実施形態の水性樹脂分散体と亜硝酸塩とを含有する本実施形態の防錆塗料用水性樹脂分散体は、モルタル組成物において優れた防錆効果を発揮する。
亜硝酸塩は、防錆効果を付与する物質であり、以下に限定されるものではないが、例えば、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸バリウム等が挙げられ、これらのうち、価格やアルカリ骨材反応に対して影響のない亜硝酸リチウムや亜硝酸カルシウムの使用が好ましい。
【0013】
なお、前記「モルタル」とは、セメントと砂(細骨材)とを水で練り混ぜて作製される建築材料を意味する。
また、本実施形態の「水性樹脂分散体」は、樹脂が水中で分散状態を維持しているものを意味し、特に限定されないが、例えば、アクリル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、シリコーンエマルジョン、ウレタンディスパージョン等が挙げられる。
【0014】
(重合体(A))
本実施形態の水性樹脂分散体に含まれる重合体(A)は、アルコキシシラン基含有重合性単量体単位(a)を0.1質量%以上5.0質量%以下と、カルボキシル基含有重合性単量体単位(b)0.2質量%以上4.0質量%以下とを含有する。
【0015】
<アルコキシシラン基含有重合性単量体単位(a)>
アルコキシシラン基含有重合性単量体単位(a)は、重合単量体としてアルコキシシラン基含有重合性単量体を用いて重合を行うことにより形成される。
アルコキシシラン基含有重合性単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも好ましくは、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランである。
さらに、重合体(A)の重合に用いられる単量体総量中におけるアルコキシシラン基含有重合性単量体の割合は、重合安定性及び無機物との接着性の観点から、0.1質量%以上5.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上2.5質量%以下である。
【0016】
<カルボキシル基含有重合性単量体単位(b)>
カルボキシル基含有重合性単量体単位(b)は、重合単量体としてカルボキシル基含有重合性単量体を用いて重合を行うことにより形成される。
カルボキシル基含有重合性単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
重合体(A)の重合に用いられる単量体総量中におけるカルボキシル基含有重合性単量体の割合は、0.2質量%以上4.0質量%以下である。
4.0質量%以下とすることによりモルタルの接着性が低下せず、高い接着性を確保することができる。また、0.2質量%以上であることにより実用上十分なモルタルの接着性が得られる。
また、0.2質量%以上であるとモルタルの硬化速度を適切に調整でき、作業性に優れたものとなる。
すなわち、0.2質量%以上4.0質量%以下の範囲にあることでモルタルの防錆性、接着性、作業性が優れたものとなる。同様の観点から、上記割合は好ましくは0.3質量%以上3.0質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以上2.5質量%以下である。
【0017】
<重合性単量体単位(c)>
前記重合体(A)は、(a)成分及び(b)成分以外の、重合性単量体単位(c)を、さらに含有してもよい。
重合性単量体単位(c)は、前記アルコキシシラン基含有重合性単量体や、カルボキシル基含有重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体を用いて形成できる。
当該重合性単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基含有重合性単量体や、その他の、アルコキシシラン基含有重合性単量体及びカルボキシル基含有重合性単量体以外の重合性単量体が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、1〜100のエチレンオキサイド基を有する(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、1〜100のプロピレンオキサイド基を有する(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0019】
ヒドロキシル基含有重合性単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基含有重合性単量体以外の、(c)成分を構成する重合性単量体としては、これら以外の重合性単量体であり、かつ(a)成分及び(b)成分と重合可能なものであれば特に限定されない。例えば、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、パーチサック酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;ブタジエン等のオレフィン類等が挙げられる。
さらに、種々の官能性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸グリシジル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジビニルベンゼン等も挙げられる。
(c)成分を構成する重合性単量体は、上記したもの1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(計算ガラス転移温度)
水性樹脂分散体に含まれる重合体(A)は、計算ガラス転移温度が−20℃以上20℃以下である。
重合体(A)の計算ガラス転移温度が20℃以下であることにより、十分な接着性が得られ、優れた防錆性が発揮できる。
また、−20℃以上であることにより、本実施形態の水性樹脂分散体と亜硝酸塩とセメント等の粉体とを混合したモルタル組成物において、優れた耐水性が得られる。
本実施形態において、「計算ガラス転移温度」とは、単量体のホモ重合体のガラス転移温度と共重合比率より、次式によって決定されるものである。
なお、重合体(A)を構成する(a)成分を形成するために用いるアルコキシシラン基含有重合性単量体は、架橋性があること、使用量が少ないことから、重合体(A)の計算ガラスTgの計算には含めないものとする。
また、TgやWの値は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
(Tg:単量体1、2・・・よりなる共重合体の計算ガラス転移温度(K);W1、W2・・・:単量体1、単量体2、・・・の質量分率;W1+W2+・・・=1;Tg1、Tg2・・・:単量体1、単量体2、・・・のホモ重合体のガラス転移温度(K))
上記の式に使用するホモ重合体のTg(K)は、例えば、ポリマーハンドブック(Jhon Willey & Sons)に記載されている。
本実施形態の水性樹脂分散体を構成する重合体(A)に用いられる代表的な単量体のTgを以下に示す。カッコ内の値がホモ重合体のTgを示す。
例えば、ポリスチレン(373K)、ポリメタクリル酸メチル(378K)、ポリアクリル酸ブチル(228K)、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル(218K)、ポリアクリル酸(360K)、ポリメタクリル酸(417K)、ポリアクリロニトリル(369K)、ポリアクリル酸2−ヒドロキシエチル(258K)、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(328K)である。
【0022】
(界面活性剤)
本実施形態の水性樹脂分散体に含まれる重合体(A)は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分構成する単量体を、共重合させることにより得られる。共重合としては、特に限定されないが、乳化重合が好ましく、ラジカル乳化重合がより好ましい。
乳化重合等による重合を行う場合、界面活性剤を用いることが好ましい。
【0023】
本実施形態の水性樹脂分散体は、ノニオン性界面活性剤を含有することが好ましく、当該ノニオン性界面活性剤を重合体(A)100質量部に対して1.0質量部以上10.0質量部以下で含むことがより好ましく、さらに好ましくは2.0質量部以上5.0質量部以下である。
ノニオン性界面活性剤を前記範囲で含有すると、本実施形態の水性樹脂分散体はセメントとの混和安定性に優れる傾向にあり、さらには本実施形態のモルタル組成物の耐水性を十分に確保できる傾向にある。
ノニオン性界面活性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルや、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又は前述の骨格と重合性の不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0024】
ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩や、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性アニオン性界面活性剤等が挙げられる。
また、亜硝酸塩との配合安定性の観点からNa塩の界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等が好ましい。
高分子界面活性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(変性)ポリビニルアルコール等が挙げられる。
上記した種々の界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本実施形態の水性樹脂分散体は、水性樹脂分散体に対して、Na、又、Kを0.05質量%〜0.5質量%含有する。Na、又、Kを0.05質量%〜0.5質量%を含むことにより、亜硝酸塩配合安定性に優れた水性樹脂分散体を得ることができる。亜硝酸塩配合安定性の観点から、Na又はKの含有量は、0.05質量%〜0.4質量%が好ましく、より好ましくは0.07質量%〜0.3質量%である。Na又は、Kを含む化合物としては、界面活性剤、重合開始剤、pH調整剤等が挙げられる。界面活性剤によりNa又はKを含有させる場合は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩等を界面活性剤として用いる方法が挙げられる。重合開始剤の場合は、例えば、過硫酸ナトリウム等を重合開始剤として用いる方法が挙げられる。pH調整剤の場合は、例えば、水酸化ナトリウム等をpH調整剤として用いる方法が挙げられる。
Na又はKの含有量は、界面活性剤、重合開始剤、pH調整剤の使用量を調整することにより制御することができる。
【0026】
重合体(A)は、無機物との接着性を向上させる観点から、Si含有化合物によってシリコーン変性されていることが好ましい。同様の観点から、変性に用いられるSi含有化合物としては、下記の一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
(R
1)
n−Si−(R
2)
(4-n) (1)
(一般式(1)中、nは、0以上3以下の整数である。R
1は、水素、炭素数1以上16以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基、又は炭素数5以上6以下のシクロアルキル基を表す。なお、n個のR
1は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。R
2は、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基を表す。
(4−n)個のR
2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0027】
一般式(1)におけるR
1としては、メチル基、フェニル基が好ましい。R
2としては、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、水酸基が好ましい。
変性に用いられるSi含有化合物としては、一般式(1)においてn=0であるシラン化合物(I)、及び一般式(1)においてn=1であるシラン化合物(II)の少なくとも1種を含んでいることが好ましく、重合体(A)の水分散体を得る際の重合安定性の観点から、シラン化合物(II)を少なくとも含むことがより好ましい。
前記シラン化合物(I)の一般式(1)におけるR
2としては、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、又は水酸基であることが好ましい。前記シラン化合物(I)の好ましい具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
前記シラン化合物(II)の一般式(1)におけるR
1としては、メチル基、フェニル基が好ましく、R
2としては、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、又は水酸基が好ましい。
前記シラン化合物(II)の好ましい具体例としては、メチルトリメトシキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
本実施形態の水性樹脂分散体を用いて塗膜を形成する際に、特に当該塗膜の柔軟性が要求される場合には、重合体(A)の変性に用いる前記Si含有化合物として、環状シラン化合物、及び一般式(1)においてn=2であるシラン化合物(III)の少なくとも1種を含むことが好ましい。
より好ましくは、環状シラン及びシラン化合物(III)の少なくとも1種と、シラン化合物(I)及びシラン化合物(II)の少なくとも1種と、を含むことであり、さらに好ましくは、環状シラン化合物及びシラン化合物(III)の少なくとも1種と、シラン化合物(II)と、を含むことである。
特に、環状シラン化合物及びシラン化合物(III)のいずれか1種と、シラン化合物(II)とを併用することにより、重合体である(A)成分の架橋密度を低く制御することができる傾向にあり、その結果、本実施形態の水性樹脂分散体を用いて塗膜とした際の柔軟性を一層向上させることができる傾向にある。
【0030】
前記環状シラン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
前記シラン化合物(III)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
さらに、重合体(A)の変性に用いるSi含有化合物としては、加水分解基を有する線状シロキサン、アルコシシシランオリゴマー、及び一般式(1)においてn=3であるシラン化合物(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含んでもよい。
加水分解基を有する線状シロキサンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記の一般式(i)、(ii)、(iii)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
(上記一般式(i)〜(iii)中、R
3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1以上16以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基、炭素数5以上6以下のシクロアルキル基、炭素数1以上10以下のアクリル酸アルキル基、又は炭素数1以上10以下のメタクリル酸アルキル基を表す。R
4は、それぞれ独立して、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、エポキシ基、アルキレンオキサイド基、又はポリアルキレンオキサイド基を表す。mは、1以上999以下の整数である。)
【0036】
前記シラン化合物(IV)におけるR
1としては、以下に限定されないが、メチル基、フェニル基が好ましい。
前記シラン化合物(IV)におけるR
2としては、以下に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、水酸基が好ましい。
シラン化合物(IV)の好ましい具体例としては、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
重合体(A)の変性に用いるSi含有化合物は、上記したシラン化合物以外の他のシラン化合物として、例えば、メチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルクロロシラン等のクロロシラン化合物をさらに含むことができる。
上述したSi含有化合物によって変性された重合体(A)を含有する本実施形態の水性樹脂分散体を用いることで、無機物との接着性を一層改善することができる傾向にある。Si含有化合物によって変性された重合体(A)を含有する水性樹脂分散体の存在は、
29Si−NMR(
29Si核磁気共鳴スペクトル)及び/又は
1H−NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)によって確認することができる。例えば、シラン化合物(II)の縮合物は、通常、
29Si−NMRのケミカルシフトにおいて−40〜−80ppmにシグナルが現れる。
【0038】
変性に用いるSi含有化合物の使用量は、前記重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。上記範囲である場合、より安定な水性樹脂分散体が得られる傾向にある。
【0039】
(重合体(A)の製造方法)
重合体(A)の製造方法としては、上述したように、乳化重合法が好適に採用できる。
乳化重合の反応条件等については、特に限定されないが、好ましい方法としては、水中にて、乳化剤及び重合開始剤等の存在下で、pHが4以下であり、通常60〜90℃で、重合性単量体を乳化重合する方法等が挙げられる。
乳化重合では、この乳化重合工程を1回又は複数段回繰り返し行う方法が挙げられる。
乳化重合の重合方法としては、特に限定されず、例えば、単量体を一括して仕込む単量体一括仕込み法;単量体を連続的に滴下する単量体滴下法;単量体と水と乳化剤とを予め混合乳化しておき、これらを滴下するプレエマルジョン法;あるいは、これらを組み合わせた方法等が挙げられる。
【0040】
重合開始剤の使用方法については、特に限定されるものではない。また、上述した変性剤であるSi含有化合物を用いる場合、その使用方法としては、加水分解性シランの縮合反応と不飽和単量体のラジカル重合を同時に、或いは加水分解性シランの縮合反応を先行させた後に不飽和単量体のラジカル重合を進行させる方法;不飽和単量体のラジカル重合を進行させた後に加水分解性シランの縮合反応を進行させる方法等が用いられる。
重合開始剤としては、特に限定されず、一般に用いられるラジカル開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤は、熱又は還元性物質等によってラジカルを生成して重合性単量体の付加重合を起こさせるものである。ラジカル重合開始剤としては、以下に限定されず、例えば、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が挙げられる。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。これらの中でも、水溶性であるものが好ましい。なお、重合速度の促進や低温での反応を一層望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシレート塩等の還元剤を、ラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることが好ましい。また、亜硝酸塩との配合安定性の観点から過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムの重合開始剤が好ましい。
【0041】
重合体(A)の乳化重合に際して、必要に応じて分子量調整剤を使用することができる。
分子量調整剤としては、以下に限定されず、例えば、1−ドデカンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール等が挙げられる。分子量調整剤の使用割合は、特に限定されないが、単量体総量の2質量%以下であることが好ましい。
【0042】
長期の分散安定性を一層向上させる観点から、上記重合後のpHを5〜10の範囲に制御することが好ましい。具体的には、ジメチルアミノエタノール等のアミン類等のような塩基性有機化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩等のような塩基性無機化合物等といった塩基性物質を、重合後に用いることにより、pHを5〜10の範囲に調整することがより好ましい。また、亜硝酸塩との配合安定性の観点からNa、K系の中和剤を用いてpHを調整することが好ましい。
【0043】
重合体の乳化重合が終了した後に、成膜時の硬化用触媒を添加してもよい。当該成膜時の硬化用触媒としては、以下に限定されないが、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ラウリン酸錫、オクチル酸鉄、オクチル酸鉛、テトラブチルチタネート等の有機酸の金属塩、n−ヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等のアミン化合物が挙げられる。
なお、これらの硬化用触媒が水溶性でない場合には、その使用に際して、乳化剤と水を用いてエマルジョン化しておくことが好ましい。
【0044】
(その他の成分)
本実施形態の水性樹脂分散体には、上記した成分以外にも、その効果の範囲内において、通常、水性樹脂分散体等に添加配合される他の成分を更に含有してもよい。
このような他の成分としては、特に限定されず、例えば、増粘剤、成膜助剤、凍結防止剤、消泡剤、染料、防腐剤等が挙げられる。
これらの他の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
増粘剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール(部分鹸化ポリ酢酸ビニル等を含む)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の高分子分散安定剤等、その他ポリエーテル系、ポリカルボン酸系増粘剤等が挙げられる。
成膜助剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ブタンジオールイソブチレート、グルタル酸ジイソプロピル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。成膜助剤は、Tgの高い水性樹脂分散体を可塑化し無機材料との接着性を向上させるため使用することができる。
凍結防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、プロピレングリコール、エチレングルコール等が挙げられる。
【0045】
(平均粒子径)
本実施形態の水性樹脂分散体においては、分散している粒子の平均粒子径が、好ましくは30nm以上500nm以下であり、より好ましくは50〜400nmであり、さらに好ましくは50〜300nmである。前記平均粒子径は、重合安定性の観点から30nm以上であることが好ましく、耐水性の観点から500nm以下であることが好ましい。
水性樹脂分散体の平均粒子径は後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0046】
(固形分率)
本実施形態の水性樹脂分散体の固形分率は、好ましくは30質量%以上65質量%以下であり、より好ましくは35質量%以上60質量%以下であり、35質量%以上55質量%以下である。
固形分率は、付着性の観点から30質量%以上であることが好ましく、重合安定性の観点から、65質量%以下であることが好ましい。
【0047】
〔防錆塗料用水性樹脂分散体〕
本実施形態の防錆塗料用水性樹脂分散体は、本実施形態の水性樹脂分散体と、亜硝酸塩とを含有する。
本実施形態の防錆塗料用水性樹脂分散体は、優れた防錆効果を発揮する。
亜硝酸塩は、防錆効果を付与する物質であり、以下に限定されるものではないが、例えば、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸バリウム等が挙げられ、これらのうち、価格やアルカリ骨材反応に対して影響のない亜硝酸リチウムや亜硝酸カルシウムの使用が好ましい。
本実施形態の防錆塗料用水性樹脂分散体においては、防錆性の観点から、水性樹脂分散体100質量部に対して、亜硝酸塩を10〜200質量部含有することが好ましく、20〜150質量部がより好ましく、25〜100質量部がさらに好ましい。
本実施形態の防錆塗料用水性樹脂分散体は、乳化重合により製造することができる。
【0048】
〔モルタル組成物〕
本実施形態のモルタル組成物は、本実施形態の水性樹脂分散体と亜硝酸塩よりなる防錆塗料用水性樹脂分散体と、セメントと、充填剤と、添加剤と、を含む。
本実施形態のモルタル組成物は、優れた防錆性及び接着性を発現することができる。
【0049】
(セメント)
本実施形態のモルタル組成物に用いられるセメントとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、JIS R5210(ポルトランドセメント)、R5211(高炉セメント)、R5212(シリカセメント)、R5213(フライアッシュセメント)に規定されている、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントが挙げられる。また、「セメントの常識」(社団法人セメント協会、1994年3月発行)に記載されている、特殊セメント、白色ポルトランドセメント、セメント系固化材、アルミナセメント、超速硬セメント、コロイドセメント、湯井セメント、地熱井セメント、膨張セメント、その他特殊セメント等の種々のセメントも使用できる。
【0050】
(充填剤)
本実施形態のモルタル組成物に用いられる充填剤としては、以下に限定されず、一般的には、セメントモルタルに用いられる砂、珪砂、寒水砂、天然及び人工軽量骨材等が使用できる。
また、無機又は有機の顔料等も用いることができる。
無機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、鉛等の各種金属酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩、又は珪酸化合物等が挙げられる。具体的には、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、石膏、バライト粉、アルミナホワイト、サチンホワイト等が挙げられる。
有機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の固体高分子微粉末が挙げられる。
【0051】
(添加剤)
本実施形態のモルタル組成物に用いられる添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、減水剤及び流動化剤(ポリカルボン酸系、メラミンスルホン酸系、ナフタリンスルホン酸系、リグニンスルホン酸系など)、収縮低減剤(グリコールエーテル系、ポリエーテル系等)、耐寒剤(塩化カルシウム、珪酸塩等)、防水剤(ステアリン酸、シリコン系等)、防錆剤(リン酸塩、亜硝酸塩等)、粘度調整剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等)、凝結調整剤(リン酸塩等)、さらに膨張剤(エトリンガイト系、石灰系等)、着色剤(酸化鉄、酸化クロム等)、消泡剤(シリコン系、鉱油系等)、補強材(鋼繊維、ガラス繊維、合成繊維等)、界面活性剤(アニオン、ノニオン、カチオン系等)、増粘剤、レベリング剤、成膜助剤、溶剤、可塑剤、分散剤、耐水化剤、潤滑剤等が挙げられる。
【0052】
〔モルタル硬化物〕
本実施形態のモルタル硬化物は、上記した本実施形態のモルタル組成物を硬化することにより得られる。そのため、優れた防錆性及び接着性を発現することができる。なお、硬化の方法としては、特に限定されるものでなく、例えば、木枠等で作られた枠に防錆モルタル組成物を投入し、養生させ、硬化させる方法が挙げられる。
また、養生条件も特に限定されるものでなく、室温での養生、加温下での養生、蒸気中での養生、水中での養生、これらの組み合わせによる養生等が挙げられる。
【0053】
〔モルタル組成物の製造方法〕
本実施形態の防錆モルタル組成物は、本実施形態の水性樹脂分散体と亜硝酸塩を含む防錆塗料用水性樹脂分散体に、上述したセメント、充填剤及び添加剤を含有する粉体を混合することにより製造することができる。
水性樹脂分散体と亜硝酸塩をあらかじめ混合した状態で、後から粉体と混合することで、各々を別々に準備して混合するよりも、作業が非常に簡単になり、入れ忘れ等を防止することができ、作業効率を向上させることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものでない。
なお、特に断りがない限り、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、質量基準に基づくものである。
【0055】
〔測定方法〕
(平均粒子径)
レーザー回折式の粒度分布計(リーズ・アンド・ノースラップ社製、マイクロトラック粒度分布計「UPA150」)にて測定した体積平均粒子径を、水性樹脂分散体の平均粒子径とした。
【0056】
(固形分率)
アルミ皿に、水性樹脂分散体1gを正確に秤量し、恒温乾燥機で105℃にて3時間乾燥させ、シリカゲルを入れたデシケーター中で30分間放冷した後に精秤した。
乾燥後質量を乾燥前質量で除した割合を固形分率(質量%)とした。
【0057】
(粘度)
B型粘度計にて60回転で測定した粘度を水性樹脂分散体の粘度とした。
【0058】
(重合安定性)
乳化重合して得られた水性樹脂分散体を100メッシュでろ過し、50℃一晩乾燥した残渣を測定する。残渣が0.1%未満なら重合安定性は○とした。
【0059】
(Tg:計算ガラス転移温度)
熱分解GC−MSで水性樹脂分散体の成分単量体の組成分率Wを求め、当該成分組成分率、及び単量体のホモ重合体のガラス転移温度Tgを用いて、下記の計算式に基づき水性樹脂分散体の計算ガラス転移温度Tgを計算した。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
(Tg:水性複合粒子分散体を構成する単量体1、2・・・よりなる共重合体の計算ガラス転移温度(K);W1、W2・・・:水性複合粒子分散体を構成する単量体1、単量体2、・・・の質量分率;W1+W2+・・・=1;Tg1、Tg2・・・:単量体1、単量体2、・・・のホモ重合体のガラス転移温度(K))
上記の式に使用するホモ重合体のTg(K)は、ポリマーハンドブック(Jhon Willey & Sons)に記載されている。
【0060】
(亜硝酸塩との配合安定性の評価)
ガラス瓶に水性樹脂分散体と亜硝酸塩の混合物を入れて、50℃×8週間まで貯蔵した。
混合物の比率は、水性樹脂分散体100質量部、亜硝酸塩は44質量部とした。
その後、外観観察を行い、分離の有無を、下記基準により評価した。
分離なし:○
分離あり:×
また、1Lの角ポリビン(瑞穂化成工業(株)製、角1L、コード0144)に、水性樹脂分散体と亜硝酸塩の混合物を入れ、50℃×8週間まで貯蔵した。
混合物の比率は、水性樹脂分散体100質量部、亜硝酸塩は44質量部とした。
その後、外観観察を行い、ガス発生の有無を下記基準により評価した。
50℃×8週間加熱しても容器の膨れが無かった場合:○
50℃×1週間加熱しても容器の膨れがなかった場合:△
50℃×1〜2日後に容器の膨れがあった場合:×
容器の膨れと破裂があった場合:××
【0061】
〔実施例1〜7〕、〔比較例1〜5〕
実施例及び比較例において、表1に示す配合量に従い、水性樹脂分散体を作製した。
表1に示す記号を下記に示す。
(重合モノマー)
MMA:メタクリル酸メチル
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
(分子量調整剤)
n−DDM:1−ドデカンチオール
(アニオン性界面活性剤)
エマール20C:花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩
ニューコール707SF:日本乳化剤製;ポリオキシアルキレン 多環フェニルエーテル・サルフェート・アンモニウム塩
(ノニオン性界面活性剤)
エマルゲン147:花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル
ニューコール2399S:日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル
(重合開始剤)
NPS:過硫酸ナトリウム
APS:過硫酸アンモニウム
KPS:過硫酸カリウム
(シラン)
SZ−6030:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0062】
(実施例1:水性樹脂分散体1)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽、及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液3.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸ナトリウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル370.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル620.0質量部、メタクリル酸5.0質量部、アクリル酸5.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液41.0質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸ナトリウムの10%水溶液24.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、10%水酸化ナトリウムと水でpH8.1、固形分率50.1質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径148nmであった。
【0063】
(実施例2:水性樹脂分散体2)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液3.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸カリウムの5%水溶液を6.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル373.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル617.0質量部、アクリル酸10.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液41.0質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液214質量部、過硫酸カリウムの5%水溶液48.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、5%水酸化カリウムと水でpH8.2、固形分率49.9質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径144nmであった。
【0064】
(実施例3:水性樹脂分散体3)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液3.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸ナトリウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル374.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル622.0質量部、メタクリル酸2.0質量部、アクリル酸2.0質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、1−ドデカンチオール1.0質量部、「エマール20C」の25%水溶液41.0質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸ナトリウムの10%水溶液24.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、10%水酸化ナトリウムと水でpH7.9、固形分率50.0質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径154nmであった。
【0065】
(実施例4:水性樹脂分散体4)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液1.2質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸ナトリウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル370.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル590.0質量部、メタクリル酸20.0質量部、アクリル酸20.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、1−ドデカンチオール1.0質量部、「エマール20C」の25%水溶液42.8質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸ナトリウムの10%水溶液24.0質量部、水300.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、10%水酸化ナトリウムと水でpH8.3、固形分率48.5質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径220nmであった。
【0066】
(実施例5:水性樹脂分散体5)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液4.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸ナトリウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル495.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル485.0質量部、メタクリル酸10.0質量部、アクリル酸10.0質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、「エマール20C」の25%水溶液60.0質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液214質量部、過硫酸ナトリウムの10%水溶液24.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、10%水酸化ナトリウムと水でpH8.3、固形分率49.9質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径115nmであった。
【0067】
(実施例6:水性樹脂分散体6)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液3.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸ナトリウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル370.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル620.0質量部、アクリル酸10.0質量部、1−ドデカンチオール1.0質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、メチルトリメトシキシシラン5.0質量部、ジメチルジメトキシシラン5.0質量部、「エマール20C」の25%水溶液41.0質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸ナトリウムの10%水溶液24.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、10%水酸化ナトリウムと水でpH8.1、固形分率50.1質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径148nmであった。
【0068】
(実施例7:水性樹脂分散体7)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液3.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸ナトリウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル370.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル620.0質量部、メタクリル酸5.0質量部、アクリル酸5.0質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤製;ポリオキシアルキレン 多環フェニルエーテル・サルフェート・アンモニウム塩)の30%水溶液36.7質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸ナトリウムの10%水溶液24.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、10%水酸化ナトリウムと水でpH8.2、固形分率50.0質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径166nmであった。
【0069】
(比較例1:水性樹脂分散体8)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液3.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸ナトリウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル370.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル620.0質量部、メタクリル酸5.0質量部、アクリル酸5.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、「エマール20C」の25%水溶液41.0質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸ナトリウムの10%水溶液24.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、25%水酸化アンモニウムと水でpH7.9、固形分率50.0質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径145nmであった。
【0070】
(比較例2:水性樹脂分散体9)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液3.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸ナトリウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル370.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル620.0質量部、メタクリル酸5.0質量部、アクリル酸5.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤製;ポリオキシアルキレン 多環フェニルエーテル・サルフェート・アンモニウム塩)の30%水溶液36.7質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸ナトリウムの10%水溶液24.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、25%水酸化アンモニウムと水でpH8.0、固形分率50.0質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径170nmであった。
【0071】
(比較例3:水性樹脂分散体10)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液3.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル370.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル620.0質量部、メタクリル酸5.0質量部、アクリル酸5.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、「ニューコール707SF」(日本乳化剤製;ポリオキシアルキレン 多環フェニルエーテル・サルフェート・アンモニウム塩)の30%水溶液36.7質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸アンモニウムの10%水溶液24.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、25%水酸化アンモニウムと水でpH8.0、固形分率49.9質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径173nmであった。
【0072】
(比較例4:水性樹脂分散体11)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液4.0質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル370.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル620.0質量部、メタクリル酸5.0質量部、アクリル酸5.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、「エマール20C」の25%水溶液44.0質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸アンモニウムの10%水溶液24.0質量部、水340.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、25%水酸化アンモニウムと水でpH8.2、固形分率49.7質量%に調整した。
得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径114nmであった。
【0073】
(比較例5:水性樹脂分散体12)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、水400.0質量部、「エマール20C」(花王社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩)の25%水溶液0.8質量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸ナトリウムの10%水溶液を3.0質量部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル370.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル580.0質量部、メタクリル酸25.0質量部、アクリル酸25.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0質量部、1−ドデカンチオール1.0質量部、「エマール20C」の25%水溶液43.2質量部、「エマルゲン147」(花王社製;ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の20%水溶液114質量部、「ニューコール2399S」(日本乳化剤製;ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の25%水溶液120.0質量部、過硫酸ナトリウムの10%水溶液24.0質量部、水300.0質量部の乳化混合液を、240分かけて反応容器に流入させた。
流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。
流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、10%水酸化ナトリウムと25%水酸化アンモニウムと水でpH8.2、固形分率48.8質量%に調整した。得られた防錆塗料用水性樹脂分散体の平均粒子径245nmであった。
【0074】
上述した実施例1〜7及び比較例1〜5の水性樹脂分散体1〜12を使用して、亜硝酸カルシウム水溶液又は亜硝酸リチウム水溶液と、表1に示す比率により配合し、上述した方法により亜硝酸塩との配合安定性試験を行った。
評価結果を下記表1に示す。
【0075】
【表1】