特許第6945425号(P6945425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945425
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   B62D25/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-228057(P2017-228057)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-98767(P2019-98767A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】錦織 昇
(72)【発明者】
【氏名】足立 孝夫
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/047505(WO,A1)
【文献】 特開2016−083991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を覆うキャビンを有する作業車両において、
前記キャビンは、上下方向に延設された左右の前縦フレーム及び後縦フレームを有し、
前記前縦フレームは、異形パイプ部及び該異形パイプの上下方向に沿って一体に固定された補強用のリブを有かつ正面視及び側面視において中間部分で屈曲しており、
前記異形パイプ部及び前記リブは、中間部分で同じ角度で屈曲し、かつ直線状に重なる位置にて一体に溶接されてなり、
前記前縦フレームは、前記リブが前記異形パイプ部の機体の略前方向に突出するように固定されてなる、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
運転席を覆うキャビンを有する作業車両において、
前記キャビンは、上下方向に延設された左右の前縦フレーム及び後縦フレームを有し、
前記前縦フレームは、異形パイプ部及び該異形パイプ部の上下方向に沿って一体に固定された補強用のリブを有し、かつ正面視及び側面視において中間部分で屈曲しており、
前記異形パイプ部及び前記リブは、中間部分で同じ角度で屈曲し、かつ直線状に重なる位置にて一体に溶接されてなり、
前記キャビンの前方における左右一方に上下方向に延びる排気管を備え、
該排気管を左右一方の前記前縦フレームの前記リブに固定してなる、
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両に係り、詳しくは運転席を覆うように配置されたキャビンを有する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクタ及びホイールロータ等の作業車両には運転席を覆うようにキャビンが配置されている。
【0003】
従来、キャビンは、左右それぞれに前後の縦フレームを立設すると共に、その中間にドア用のフレームを配置し、これらフレームの上端を横フレーム及び天板を配置したものがあり(特許文献1)、また左右それぞれに異形パイプを側面視門型に屈曲して前後の縦フレームを形成し、その中間にドア用フレームを配置し、前後の縦フレームの上端を横フレームで連結して構成されたものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4321975号公報
【特許文献2】特許第4080929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記前後の縦フレームは、断面ダルマ状の異形パイプからなり、軽量化を図ると共にガラスの取付けを容易にしている。
【0006】
上記パイプ状部材からなる縦フレームは、強度が充分ではなく、特にクローラトラクタ等の大型の作業車両にあっては、前縦フレームに、バックミラー、車幅灯等の取付け部材、オペレータ乗り降り用の持ち手、排気管等を取付けるためには強度が充分ではない。
【0007】
そこで、本発明は、前縦フレームに補強用のリブを一体に固定し、もって上述した課題を解決した作業車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、運転席(4)を覆うキャビン(6)を有する作業車両(1)において、
前記キャビン(6)は、上下方向に延設された左右の前縦フレーム(7)及び後縦フレーム(9)を有し、
前記前縦フレーム(7)は、異形パイプ部(7a)及び該異形パイプ部(7a)の上下方向に沿って一体に固定された補強用のリブ(7b)を有かつ正面視及び側面視において中間部分で屈曲(C)しており、
前記異形パイプ部(7a)及び前記リブ(7b)は、中間部分で同じ角度で屈曲し、かつ直線状に重なる位置にて一体に溶接されてなり、
前記前縦フレーム(7)は、前記リブ(7b)が前記異形パイプ部(7a)の機体の略前方向に突出するように固定されてなる、
ことを特徴とする作業車両にある。
【0011】
また、本発明は、運転席(4)を覆うキャビン(6)を有する作業車両(1)において、
前記キャビン(6)は、上下方向に延設された左右の前縦フレーム(7)及び後縦フレーム(9)を有し、
前記前縦フレーム(7)は、異形パイプ部(7a)及び該異形パイプ部(7a)の上下方向に沿って一体に固定された補強用のリブ(7b)を有し、かつ正面視及び側面視において中間部分で屈曲(C)しており、
前記異形パイプ部(7a)及び前記リブ(7b)は、中間部分で同じ角度で屈曲し、かつ直線状に重なる位置にて一体に溶接されてなり、
記キャビン(6)の前方における左右一方に上下方向に延びる排気管(15)を備え、
該排気管(15)を左右一方の前記前縦フレーム(7)の前記リブ(7b)に固定してなる。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
前縦フレームは、異形パイプ部に補強リブを一体に固定してなるので、該前縦フレームの強度を高めてキャビンの強度を確保できると共に、例えばバックミラー及び車幅灯を取付ける外、持ち手及び排気管ガード等の各部材の強度を確保して取付けることが可能となる。
【0014】
中間部分で屈曲して異形パイプ部及びリブを直線状となる位置にて溶接して一体化するので、異形パイプ部とリブとを密着した状態で長手方向に溶接し、前縦フレームの強度を確保すると共に、前縦フレームを容易かつ正確に製造でき、またキャビンの組立て性も向上し得る。
【0015】
前縦フレームは、リブが異形パイプ部の略前方を向くように組立てられるので、各部材の取付けが容易となり、またリブがオペレータの視界を妨げることを低減する。
【0016】
排気管を、左右一方の前縦フレームのリブに固定して、排気管の強度を容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用したトラクタを示す側面図。
図2】本実施の形態に係るキャビンを示す図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図。
図3】上記キャビンの斜視図。
図4】上記トラクタの左部分を示す正面図。
図5】上記トラクタの斜め左前方からみた斜視図。
図6】上記トラクタの斜め右前方からみた斜視図。
図7】前縦フレームを示す図で、(A)〜(D)はそれぞれ異なる方向からみた斜視図。
図8】上記トラクタの右前方の所定角度からみた斜視図。
図9】上記トラクタの左前方の所定角度からみた斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る作業車両であるトラクタ1は、図1に示すように、左右一対のクローラ装置2に支持された機体3を有しており、機体3には、前部にエンジンを覆うボンネット5が配置され、その後方に運転席4を覆うキャビン6が配置されている。キャビン6は、図2及び図3に示すように、左右それぞれに前縦フレーム7、後縦フレーム9及びその中間にドア用フレーム10が機体フレーム3’から立設され、その上端に左右の横フレーム11及び前後の横フレーム12が連結して固定されており、これら横フレーム11,12上には天板13が取付けられている。左右のドア用フレーム10,10にはドアが揺動自在に支持されており、該ドアは、キャビン6の左右開口を開閉し得、また上記各フレームにはガラスが取付けられている。
【0019】
各前後の縦フレーム7,9は、断面ダルマ状の異形パイプ部を有する。前縦フレーム7は、図7に詳示するように、上記異形パイプ部7aに補強用のリブ7bを長手方向に一体に溶接して構成される。該リブ7bは、プレート部材pの側面に沿って中実の丸棒部材bが一体に溶接された強度の高い部材からなる。左右の前縦フレーム7は、長手方向中間部分で屈曲しており、該屈曲部Cは、正面視において図2(B)に示すように、下部分が垂直状に上部分が機体内側に傾斜するように、かつ側面視において図2(C)に示すように、前方に突出するように、3次元的に所定位置に配設される。
【0020】
前縦フレーム7は、上記異形パイプ部7aとリブ7bとが同じ屈曲角で屈曲して一体に溶接されており、上述した3次元に屈曲した角度にあって、図7及び図8に示すように、直線状にみえる角度において上記異形パイプ部7aにリブ7bが溶接されている。
【0021】
キャビン6を構成するように立設された前縦フレーム7,7は、図2に示すように、異形パイプ部7aに対して、リブ7bが略前方に向くように突出する位置となる。該位置にあっては、運転席4に座ったオペレータからみて、リブ7bは異形パイプ部7aに略重なって、リブ7bがオペレータの視界を妨げない位置となっている。また、リブ7b及び異形パイプ部7aは、共に直線状態で溶接することができ、屈曲部Cを有するにも拘らず、確実な密着面にて容易に溶接することができ、また前縦フレーム7のキャビン6への組立ても容易かつ正確に行うことができる。
【0022】
ボンネット5の左後部でかつキャビン6の左隅前部には、図4図7に示すように、エンジンから排ガス処理装置(DPF、マフラー等)を通って排出される排気ガスを外方に導く排気管15が突出している。該排気管15は、ボンネット5の左後部隅から左方向に延び(15a)、左前縦フレーム7に沿って上方に延び(15b)、その上端にて吐出口15cが斜め前方向に向くように屈曲している。上記排気管15の横部15a及び縦部15bの下部は保護カバー16で覆われており、直接触れることが防止されている。排気管15は、その上端部分を除いて保護カバー16で覆われており、排気管15は、その上端部でブラケット40を介して左前縦フレーム7のリブ7bに固定され、保護カバー16は上記リブ7bにブラケット41を介して上記リブ7bに固定されている。
【0023】
左右の前縦フレーム7の該リブ7bの上記屈曲部Cには外方に突出するように車幅灯取付け部材17が固定されており、該取付け部材17には車幅灯及びフラッシャランプ19が取付けられている。また、上記前縦フレーム7のリブ7bの上方部分にはバックミラー取付け部材20が固定されており、該取付け部材20には棒状のミラーステー18を介してバックミラー21が取付けられている。
【0024】
上記車幅灯取付け部材17と前縦フレーム7のリブ7bの下部との間に、乗員のキャビン6への乗り降りのために持ち手22が設けられている。該持ち手22は、上端部22aが上下方向に垂直に延び、中間部分に外方に膨らむように屈曲し、該膨出部22bの下端部で機体方向に屈曲して水平に延びており、上端に溶接された取付け部22dがボルトにより上記車幅灯取付け部材17の下面に固定されると共に、水平部22c先端に溶接された取付け部22eが前縦フレーム7のリブ7bに溶接された下取付け部材23にボルトにより固定されている。
【0025】
また、上記バックミラー取付け部材20と上記車幅灯取付け部材17との間に、棒状の排気管ガード(保護部材)25が設けられている。該排気管ガード25は、上端部が水平(25a)に延び、3次元的に滑らかに湾曲し(25b)、その下方に垂直(25c)に延びており、水平部(25a)先端に溶接された取付け部25dがボルトによりバックミラー取付け部材20の前側面に固定されると共に、垂直部25c先(下)端に溶接された取付け部材25eがボルトにより車幅灯取付け部材17の上面に固定されている。
【0026】
上記排気管ガード25は、その垂直部25cが排気管15の機体外方において該排気管と平行に延びており、身体が直接排気管15及びその保護カバー16に接触しないようにガードしている。また、ガード25の垂直部25cは、持ち手22の上端部22aと同じ軸線となるように延びており、乗員の持ち手を兼用している。該ガード25は、乗員(オペレータ)がキャビン6内の運転席に座った状態にあって、左前縦フレーム7と重なって乗員から見えにくい位置に配置されている。
【0027】
前記排気管15の垂直部15b及びそれを覆う保護カバー16は、正面から視て左前縦フレーム7と重なるように、かつ側面から視て左前縦フレーム7に近接して配置されており、運転席4にいるオペレータから視える部分が少ない。また、前縦フレーム7,7に取付けられるフロントガラス30は、前縦フレーム7の屈曲部Cで分割されて、正面ガラスとボンネット5の左右部分の下面ガラスとなっている。該フロントガラス30は、分割線部分及び前縦フレーム7,7及びボンネット5との間に取付け部分を含むマスキング範囲(正面ガラス30mm+下面ガラス30mm)となっている。前記排気管15の水平部15a及びその保護カバー16は、上記フロントガラス30の分割線部分と正面視において重なるように配置されており、上記垂直部15bと相俟って、運転席のオペレータから排気管15及び保護カバー16の視える範囲が最小限となり、視界の邪魔にならない。また、上記排気管15の水平部15aは、ワイパー35の下部に配置されるので、更に該水平部15aがオペレータの視界の邪魔になることはなく、また冬期において、エンジン始動後比較的素速く上記排気管15が温められ、ワイパー35の氷による張付きをすぐに溶かすことができる。
【0028】
オペレータは、クローラ装置2のクローラフレーム45に設けられたステップ46に足をかけて、持ち手22を掴みながら運転席横のステップ47に昇る。この際、オペレータは、持ち手22の膨出部22b、上端部22a、排気管ガード25の垂直部25cに掴み換えつつ上方に移動する。ステップ47上に移動したオペレータは、排気管ガード25の適宜な部分又はミラーステー18を掴みつつキャビン6内へ乗り込む。オペレータは、上記キャビンへの昇降の際、又は作業中にステップ47に乗り出して作業箇所を確認する等により、身体の一部が排気管15及び保護カバー16に接触又は接触し続けることがあり得るが、このような状況を避けるため、排気管ガード25が排気管15(及び保護カバー)に身体が接触しないように設けられている。
【0029】
前縦フレーム7は、キャビン6を構成する外、持ち手22、排気管ガード25等、力の作用する各部材が取付けられるが、補強用リブ7bを有する高い強度からなり、上記各部材を取付ける強度を確保している。
【符号の説明】
【0030】
1 作業車両(トラクタ)
4 運転席
6 キャビン
7 前縦フレーム
7a 異形パイプ部
7b リブ
9 後縦フレーム
15 排気管
C 屈曲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9