特許第6945443号(P6945443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945443
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】ガラス板モジュール
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/22 20060101AFI20210927BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20210927BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20210927BHJP
   B32B 17/00 20060101ALI20210927BHJP
   B60J 1/00 20060101ALN20210927BHJP
【FI】
   C03C17/22 Z
   C03C27/12 Z
   B60J1/02 M
   B32B17/00
   !B60J1/00 J
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-253659(P2017-253659)
(22)【出願日】2017年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-119624(P2019-119624A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】大野 和久
(72)【発明者】
【氏名】神吉 哲
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−525643(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/121559(WO,A1)
【文献】 特開平07−195959(JP,A)
【文献】 特開2017−190269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/22
C03C 27/12
B32B 17/00
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有し、周縁に上辺、下辺、右辺、及び左辺を有する矩形状の第1ガラス板と、
前記第1ガラス板の第1面または第2面上で、前記周縁に沿って積層される第1遮蔽層と、
を備え、
前記下辺に沿って形成される前記第1遮蔽層は、当該下辺側から上辺側にいくにしたがって厚みが小さくなるように形成されており、
前記上辺に沿って形成される前記第1遮蔽層は、前記下辺側から上辺側にいくにしたがって厚みが小さくなるように形成されている、ガラス板モジュール。
【請求項2】
前記第1ガラス板は、前記上辺から下辺に向かって厚みが薄くなるように形成されている請求項1のガラス板モジュール。
【請求項3】
前記第1ガラス板は、それぞれ、前記第1面及び前記第2面における酸化スズの濃度が相違しており、
前記第1面及び第2面のうち、前記酸化スズの濃度が高い面に、前記遮蔽層が積層されている、請求項1または2に記載のガラス板モジュール。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の第1ガラス板モジュールと、
第1面及び第2面を有し、前記第1ガラス板と対応するように、周縁に上辺、下辺、右辺、及び左辺を有する矩形状の第2ガラス板と、
前記第1ガラス板の第2面と第2ガラス板の第1面との間に挟持される中間膜と、
を備え、
前記第2ガラス板は平板状に形成されている、ウインドシールド。
【請求項5】
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、それぞれ、前記第1面及び前記第2面における酸化スズの濃度が相違しており、
前記第1ガラス板における前記酸化スズの濃度の低い面が前記第2面を構成し、
前記第2ガラス板における前記酸化スズの濃度の低い面が前記第1面を構成する、請求項に記載のウインドシールド。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の第1ガラス板モジュールと、
第1面及び第2面を有し、前記第1ガラス板と対応するように、周縁に上辺、下辺、右辺、及び左辺を有する矩形状の第2ガラス板と、
前記第2ガラス板の第1面または第2面上で、前記周縁に沿って積層される第2遮蔽層と、
前記第1ガラス板モジュールと第2ガラス板との間に挟持される中間膜と、
を備え、
前記第2ガラス板は、前記上辺から下辺に向かって厚みが薄くなるように形成され、
前記第2遮蔽層は、前記第1遮蔽層と同一の幅及び厚みを有している、ウインドシールド。
【請求項7】
前記第1遮蔽層は、前記第1ガラス板の第2面に積層され、
前記第2遮蔽層は、前記第2ガラス板の第2面に積層され、
前記第1ガラス板の第2面と、前記第2ガラス板の第1面との間に前記中間膜が配置される、請求項に記載のウインドシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板モジュール及びこれを備えたウインドシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ装置が用いられるウインドシールドは、二重像を防止するために、楔形に形成されているのが一般的である。このように、ウインドシールドを楔形にするためには種々の方法があるが、例えば、特許文献1には、中間膜と内側ガラス板の厚みを一定にし、外側ガラス板を楔形に形成したウインドシールドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−105665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウインドシールドに使用されるガラス板の周縁には、セラミックなどで形成された遮蔽層(マスク層ともいう)が形成されることがある。このような遮蔽層は、黒色などの濃色で形成されているため、遮蔽層が形成されていない領域と比べ、ガラス板における熱の吸収量が多くなる。ここで、セラミックで形成された遮蔽層の熱膨張係数は、ガラスとは相違するため、遮蔽層とガラスとでは、熱の吸入による膨張量が相違する。そのため、ガラス板には、膨張量の差に起因して、遮蔽層と、これが形成されている領域との境界付近に歪みが生じ、ガラス板を通して見える像が歪むという問題がある。なお、このような問題は、上述した楔形のガラス板だけでなく、平板状のガラス板にも生じうる問題である。
【0005】
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、遮蔽層と、遮蔽層が設けられていない領域との境界付近に歪みが生じるのを防止することができる、ガラス板モジュール及びこれを備えたウインドシールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
項1.第1面及び第2面を有し、周縁に上辺、下辺、右辺、及び左辺を有する矩形状の第1ガラス板と、
前記第1ガラス板の第1面または第2面上で、前記周縁に沿って積層される第1遮蔽層と、
を備え、
前記下辺に沿って形成される前記第1遮蔽層は、当該下辺側から上辺側にいくにしたがって厚みが小さくなるように形成されている、ガラス板モジュール。
【0007】
項2.前記第1ガラス板は、前記上辺から下辺に向かって厚みが薄くなるように形成されている項1のガラス板モジュール。
【0008】
項3.前記上辺に沿って形成される前記第1遮蔽層は、前記下辺側から上辺側にいくにしたがって厚みが小さくなるように形成されている、項2に記載のガラス板モジュール。
【0009】
項4.前記第1ガラス板は、それぞれ、前記第1面及び前記第2面における酸化スズの濃度が相違しており、
前記第1面及び第2面のうち、前記酸化スズの濃度が高い面に、前記遮蔽層が積層されている、項1から3のいずれかに記載のガラス板モジュール。
【0010】
項5.項1から4のいずれかに記載の第1ガラス板モジュールと、
第1面及び第2面を有し、前記第1ガラス板と対応するように、周縁に上辺、下辺、右辺、及び左辺を有する矩形状の第2ガラス板と、
前記第1ガラス板の第2面と第2ガラス板の第1面との間に挟持される中間膜と、
を備え、
前記第2ガラス板は平板状に形成されている、ウインドシールド。
【0011】
項6.前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板は、それぞれ、前記第1面及び前記第2面における酸化スズの濃度が相違しており、
前記第1ガラス板における前記酸化スズの濃度の低い面が前記第2面を構成し、
前記第2ガラス板における前記酸化スズの濃度の低い面が前記第1面を構成する、項5に記載のウインドシールド。
【0012】
項7.項1から4のいずれかに記載の第1ガラス板モジュールと、
第1面及び第2面を有し、前記第1ガラス板と対応するように、周縁に上辺、下辺、右辺、及び左辺を有する矩形状の第2ガラス板と、
前記第2ガラス板の第1面または第2面上で、前記周縁に沿って積層される第2遮蔽層と、
前記第1ガラス板モジュールと第2ガラス板との間に挟持される中間膜と、
を備え、
前記第2ガラス板は、前記上辺から下辺に向かって厚みが薄くなるように形成され、
前記第2遮蔽層は、前記第1遮蔽層と同一の幅及び厚みを有している、ウインドシールド。
【0013】
なお、遮蔽層の幅及び厚みが同一とは完全な同一でなくてもよく、多少であればずれていてもよい。
【0014】
項8.前記第1遮蔽層は、前記第1ガラス板の第2面に積層され、
前記第2遮蔽層は、前記第2ガラス板の第1面に積層され、
前記第1ガラス板の第2面と、前記第2ガラス板の第1面との間に前記中間膜が配置される、項7に記載のウインドシールド。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遮蔽層と、遮蔽層が設けられていない領域との境界付近に歪みが生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るウインドシールドの一実施形態を示す正面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】フロートガラス板の製造方法の一例を説明する図である。
図4】ガラス板の切り出し方法を説明する断面図である。
図5】フロートガラス板の断面図である。
図6図1のウインドシールドの断面図である。
図7図1のウインドシールドの筋目を説明する正面図である。
図8】外側ガラス板に遮蔽層を積層させた状態を示す断面図である。
図9】内側ガラス板に遮蔽層を積層させた状態を示す断面図である。
図10】外側ガラス板への遮蔽層のスクリーン印刷を説明する断面図である。
図11】ガラス板の成形型の平面図である。
図12図11の成形型が通過する炉の側面図である。
図13】ヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<1.ウインドシールドの概要>
以下、本発明に係る自動車のウインドシールドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るウインドシールドは、ヘッドアップディスプレイ装置により、照射される光が投影され、情報を表示するために用いられるものである。
【0018】
図1は、本実施形態に係るウインドシールドの正面図、図2図1のA−A線断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係るウインドシールドは、外側ガラス板1と、内側ガラス板2と、これらガラス板1,2の間に配置される中間膜3と、を備えている。そして、このウインドシールドには遮蔽層4が積層されている。以下、各部材について説明する。
【0019】
<2.外側ガラス板及び内側ガラス板>
まず、外側ガラス板1及び内側ガラス板2から説明する。外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板1、2は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板1により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板2により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの一例を示す。
【0020】
(クリアガラス)
SiO2:70〜73質量%
Al23:0.6〜2.4質量%
CaO:7〜12質量%
MgO:1.0〜4.5質量%
2O:13〜15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23):0.08〜0.14質量%
【0021】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23)の比率を0.4〜1.3質量%とし、CeO2の比率を0〜2質量%とし、TiO2の比率を0〜0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl23)をT−Fe23、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0022】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65〜80質量%
Al23:0〜5質量%
CaO:5〜15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10〜18質量%
2O:0〜5質量%
MgO+CaO:5〜15質量%
Na2O+K2O:10〜20質量%
SO3:0.05〜0.3質量%
23:0〜5質量%
Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23):0.02〜0.03質量%
【0023】
外側ガラス板1は、台形状に形成され、上辺11、下辺12、右側辺13、及び左側辺14を有している。また、外側ガラス板は車外側を向く第1面101及び車内側を向く第2面102を有しており、これら第1面及び第2面を連結する端面を有している。また、外側ガラス板1は、上辺11から下辺12にいくにしたがって、厚みが小さくなるような楔形に形成されている。内側ガラス板2も、同様に、台形状に形成され、上辺21、下辺22、右側辺23、及び左側辺24を有している。また、内側ガラス板も車外側を向く第1面201及び車内側を向く第2面202を有しており、これら第1面201及び第2面202を連結する端面を有している。この内側ガラス板2は、外側ガラス板1と異なり、厚みが一定の平板により形成されている。
【0024】
そして、外側ガラス板1の第2面102と、内側ガラス板2の第1面201との間に上述した中間膜3が配置されている。
【0025】
本実施形態に係るウインドシールドの厚みは特には限定されないが、軽量化の観点からは、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みの合計を、2.4〜5.0mmとすることが好ましく、2.6〜4.6mmとすることがさらに好ましく、2.7〜3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、外側ガラス板1と内側ガラス板2との合計の厚みを小さくすることが必要であるので、各ガラス板1,2のそれぞれの厚みは、特には限定されないが、例えば、以下のように、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みを決定することができる。なお、ガラス板1,2の厚みは、マイクロメータで測定することができる。
【0026】
外側ガラス板1は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板1の厚みは、1.8〜2.3mmとすることが好ましく、1.9〜2.1mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。但し、上辺11が下辺12よりも厚いため、例えば、上辺11の厚みを2.5〜5.0mm,下辺12の厚みを2.6〜6.7mmとし、上辺11と下辺12との厚みの差を0.1〜1.7mmとすることができる。
【0027】
内側ガラス板2の厚みは、外側ガラス板1と同等にすることができるが、例えば、ウインドシールドの軽量化のため、外側ガラス板1よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、0.6〜2.3mmであることが好ましく、0.8〜2.0mmであることが好ましく、1.0〜1.4mmであることが特に好ましい。更には、0.8〜1.3mmであることが好ましい。内側ガラス板2についても、何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る外側ガラス板1及び内側ガラス板2の形状は、湾曲形状である。ウインドシールドが湾曲形状である場合には、ダブリ量が大きくなると遮音性能が低下するとされている。ダブリ量とは、ウインドシールドの曲げを示す量であり、例えば、ウインドシールドの上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ直線を設定したとき、この直線とウインドシールドとの距離のうち最も大きいものをダブリ量と定義する。
【0029】
ここで、ウインドシールド1の厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、ウインドシールドの左右方向の中央を上下方向に延びる中央線上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM−112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にウインドシールドの湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでウインドシールドの端部を挟持して測定する。
【0030】
<3.外側ガラス板及び内側ガラス板の製造方法>
次に、外側ガラス板1及び内側ガラス板2の製造方法の一例について、図3を参照しつつ説明する。一例として、これら外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、フロート法により製造されるフロートガラス板とすることができる。
【0031】
図3は、フロートガラス板の製造方法を示す図である。図3において、紙面垂直方向が溶融ガラス55の流動方向、左右方向が溶融ガラス55の幅方向である。図4においては、溶融ガラス55の厚さの変化を誇張して示している。
【0032】
フロート法は、溶融スズなどの溶融金属54の上に溶融ガラス55を連続的に供給し、供給した溶融ガラス55を溶融金属54の上で流動させることにより帯板状に成形する。このように成形されたガラスをガラスリボン55と称する。
【0033】
そして、ガラスリボン55の幅方向への収縮を抑制するために、ガラスリボン55の幅方向の両端部は、一対のローラ56によってそれぞれ押さえられている。これら一対のローラ56は、ガラスリボン55の流動方向に間隔をおいて複数設けられている。これら複数対のローラ16が回転することにより、ガラスリボン55が下流側に移動する。
【0034】
ガラスリボン55は、下流側に向かうにつれて冷却され、冷却固化された上で溶融金属54から引き上げられる。そして、徐冷された後、切断される。こうして、フロートガラス板が得られる。ここで、フロートガラス板において、溶融金属54と接触していた面をボトム面と称し、それとは反対の面をトップ面と称することとする。ボトム面及びトップ面は、未研磨であってよい。なお、ボトム面は、溶融金属54と接していたため、溶融金属54がスズである場合には、ボトム面に含有される酸化スズの濃度が、トップ面に含有される酸化スズの濃度よりも大きくなる。
【0035】
図3では、一対のローラ56がガラスリボン55を幅方向に引っ張ることで、ガラスリボン55の厚みが、幅方向の両端部から中央部に向かうほど、大きくなっている。こうして形成されたガラスリボン55が固化した後に切断すると、外側ガラス板1が得られる。このとき、外側ガラス板の切り出し方は、図4に示すように、2種類ある。まず、図4の右側のように、ガラスリボン55を、切断面K1,K2が鉛直方向に延びるように切断する。これら切断面K1,K2は、平行に延びており、こうして得られた外側ガラス板1Aは、切断面K1,K2とボトム面とが直交している。もう一つの方法では、図4の左側のように、ガラスリボン55を、トップ面に対して垂直な切断面K3,K4が形成されるように切断する。これら切断面K3,K4は、平行に延びており、こうして得られた外側ガラス板1Bは、切断面K3,K4とトップ面とが直交している。いずれの切断方法を採用するかは、後述するように得られるウインドシードに要求される性能による。いずれにしても、上辺11の厚みが大きく、下辺12の厚みが小さくなるような外側ガラス板1が切り出される。
【0036】
一方、内側ガラス板2も外側ガラス板1と同様にフロート法により形成されるが、上述したローラを用いない公知の方法により形成される。そのため、内側ガラス板2の厚みは概ね一定に形成される。
【0037】
また、ガラスリボン55は、溶融金属54上を流動するため、その表面には流動方向に延びる複数の筋目が形成される。そして、冷却されたフロートガラス板の表面にもこの筋目が形成される。そして、筋目によって内側ガラス板2の表面には、図5に示すように、筋目の方向に波状の凹凸が形成されている。なお、図5図3と同様の断面であり、ガラス板の流動方向と直交する断面を示している。同様の凹凸は、外側ガラス板1にも形成される。但し、各ガラス板1,2においては、溶融金属54に接していたボトム面の凹凸が、トップ面の凹凸よりも小さくなっている。ここで、凹凸が小さいとは、凹凸の最深部と最上部との差が小さいことをいう。また、フロート法により形成されたガラス板の表面には、上記のような筋目に加え、これと直交する方向に延びるウネリも形成される。このウネリは、筋目のピッチよりも大きいピッチを有し、また大きさは筋目の凹凸よりも小さい。
【0038】
そして、本実施形態に係るウインドシールドでは、図6に示すように、外側ガラス板1の第2面102及び内側ガラス板2の第1面201を、ともにトップ面としている。これにより、外側ガラス板1の第1面101、内側ガラス板2の第2面202、つまりウインドシールドにおいて外部を向く面の凹凸がともに小さくなるようにしている。
【0039】
また、本実施形態では、図7に示すように、外側ガラス板1の筋目と、内側ガラス板2の筋目が直交するようにしている。すなわち、外側ガラス板1の筋目150は、上述した方法により、上辺11及び下辺12と平行に筋目が延びる。一方、内側ガラス板2は、厚みが一定であるため、筋目の方向を調整することができるため、上辺21から下辺22に向かって筋目250が延びるように、ガラスリボンから切り出す。こうして、外側ガラス板1の筋目150と内側ガラス板2の筋目250が直交するように、ウインドシールドが形成される。
【0040】
なお、外側ガラス板1の製造においては、成形条件を調整すれば、幅方向の両端部から中央部に向かうほど厚さが大きくなるようにしたり、あるいは幅方向の一端部から他端部に向かうほど厚さが大きくなるようにすることもできる。このようなガラスリボン55の厚さは、ローラ56による張力のほか、ローラ56の周速度などで調整できる。
【0041】
<4.中間膜>
中間膜3は、厚みが概ね一定であり、少なくとも一層で形成されている。一例として、図2の拡大図に示すように、軟質のコア層31を、これよりも硬質のアウター層32で挟持した3層で構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、コア層31と、外側ガラス板1側に配置される少なくとも1つのアウター層32とを有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層31と、外側ガラス板1側に配置される1つのアウター層32を含む2層の中間膜3、またはコア層31を中心に両側にそれぞれ2層以上の偶数のアウター層32を配置した中間膜3、あるいはコア層31を挟んで一方に奇数のアウター層32、他方の側に偶数のアウター層32を配置した中間膜3とすることもできる。なお、アウター層32を1つだけ設ける場合には、上記のように外側ガラス板1側に設けているが、これは、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能を向上するためである。また、アウター層32の数が多いと、遮音性能も高くなる。
【0042】
コア層31はアウター層32よりも軟質であるかぎり、その硬さは特には限定されない。各層31,32を構成する材料は、特には限定されないが、例えば、アウター層32は、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層31は、例えば、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
【0043】
一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層32に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層31に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化によっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層32がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層31には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−へプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはい。
【0044】
また、中間膜3の総厚は、特に規定されないが、0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜4.0mmであることがさらに好ましく、0.6〜2.0mmであることが特に好ましい。また、コア層31の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各アウター層32の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜3の総厚を一定とし、この中でコア層31の厚みを調整することもできる。
【0045】
コア層31及びアウター層32の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH−5500)によってウインドシールドの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層31及びアウター層32の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層31、アウター層32の厚みとする。
【0046】
また、中間膜3の総厚は、特に規定されないが、0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜4.0mmであることがさらに好ましく、0.6〜2.0mmであることが特に好ましい。また、コア層31の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各アウター層32の厚みは、コア層31の厚みよりも大きいことが好ましく、具体的には、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜3の総厚を一定とし、この中でコア層31の厚みを調整することもできる。
【0047】
コア層31及びアウター層32の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH−5500)によってウインドシールドの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層31及びアウター層32の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層31、アウター層32の厚みとする。例えば、ウインドシールドの拡大写真を撮影し、このなかでコア層やアウター層32を特定して厚みを測定する。
【0048】
中間膜3の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。また、中間膜3は、上記のような複数の層で形成する以外に、1層で形成することもできる。
【0049】
<5.遮蔽層>
図1に示すように、このウインドシールドの周縁には、黒などの濃色のセラミックに遮蔽層4が積層されている。この遮蔽層4は、車内また車外からの視野を遮蔽するのであり、ガラス板1,2の4つの辺に沿って積層されている。
【0050】
本実施形態では、遮蔽層4は、外側ガラス板1の第2面102、及び内側ガラス板2の第2面202に積層されている。この点について、詳細に説明する。図8は、外側ガラス板の左右方向の中心付近の断面図であり、図9は内側ガラス板の左右方向の中心付近の断面図である。図8に示すように、外側ガラス板1の第2面102には、周縁に沿って遮蔽層4が積層されているが、下辺12に沿って積層されている遮蔽層4は、下辺12から上辺11にいくにしたがって厚みが小さくなっている。一方、上辺11に沿って積層されている遮蔽層4も、下辺12から上辺11にいくにしたがって厚みが小さくなっている。一方、図9に示すように、内側ガラス板2に積層される遮蔽層4の厚みはほぼ同じである。なお、各ガラス板1,2に積層される遮蔽層4の厚みは、例えば、5〜20μmであることが好ましく、10〜15μmであることがさらに好ましい。これは、遮蔽層4の厚みが5μmより小さいと遮蔽性能が低下するからである。一方、20μmより大きくなると、後述する歪みが顕著になったり、遮蔽層4の縁部が崩れて見栄えが悪くなるからである。また、遮蔽層4をドット形状にした場合には、隣接するドットが結合し、見栄えが悪くなるからである。また、図8に示す遮蔽層4の厚みの変化は説明のために誇張したものである。この点は、後述する図10においても同じである。
【0051】
また、遮蔽層4は、セラミック等、種々の材料で形成することができるが、例えば、以下の組成とすることができる。
【表1】
*1,主成分:酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガン
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0052】
セラミックは、スクリーン印刷法により形成することができるが、これ以外に、焼成用転写フィルムをガラス板に転写し焼成することにより作製することも可能である。スクリーン印刷を採用する場合、例えば、ポリエステルスクリーン:355メッシュ,コート厚み:20μm,テンション:20Nm,スキージ硬度:80度,取り付け角度:75°,印刷速度:300mm/sとすることができ、乾燥炉にて150℃、10分の乾燥により、セラミックを形成することができる。
【0053】
ここで、外側ガラス板1への遮蔽層4の積層方法について、スクリーン印刷を例にして、図10を参照しつつ説明する。図10に示すように、まず、外側ガラス板1を第1面101を下側にして水平な台500の上に配置する。次に、スクリーン印刷により、遮蔽層4を印刷するが、このとき、スクリーン501を第1面101と平行に配置する。これに続いて、スキージ502を移動させながら、遮蔽層用の材料503をスクリーン501を介して第2面102の周縁に印刷する。
【0054】
このとき、スクリーン501は、第1面101と平行に配置されているため、スクリーン501と第2面102との間の隙間は、下辺12側が大きく、上辺12にいくにしたがって小さくなる。そのため、スクリーン印刷を行うと、外側ガラス板1の第2面102では、下辺12側に印刷される遮蔽層4の厚みが大きく、上辺11にいくにしたがって遮蔽層4の厚みが小さくなる。これにより、上記のような厚みが変化する遮蔽層4を形成することができる。
【0055】
なお、セラミックは、上述したガラスリボン55のボトム面と密着しやすい。これは、ボトム面における酸化スズの濃度が高いからである。したがって、遮蔽層4をセラミックで形成する場合には、ボトム面に形成することが好ましい。
【0056】
<6.ウインドシールドの製造方法>
次に、ウインドシールドの製造方法について説明する。まず、ガラス板の製造ラインについて説明する。
【0057】
ここで、成形型について、図11を参照しつつ、さらに詳細に説明する。図11は成形型の平面図である。図11に示すように、この成形型800は、両ガラス板1,2の外形と概ね一致するような枠状の型本体810を備えている。この型本体810は、枠状に形成されているため、内側には上下方向に貫通する内部空間820を有している。そして、この型本体810の上面に平板状の両ガラス板1,2の周縁部が載置される。そのため、このガラス板1,2には、下側に配置されたヒータ(図示省略)から、内部空間を介して熱が加えられる。これにより、両ガラス板1,2は加熱により軟化し、自重によって下方へ湾曲することとなる。なお、型本体810の内周縁には、熱を遮蔽するための遮蔽板840を配置することがあり、これによってガラス板1,2が受ける熱を調整することができる。また、ヒータは、成形型800の下方のみならず、上方に設けることもできる。
【0058】
次に、成型方法について、図12を参照しつつ説明する。図12は、成形型が通過する炉の側面図である。まず、湾曲前の外側ガラス板1及び内側ガラス板2に上述した遮蔽層2が積層される。次に、これら外側ガラス板1及び内側ガラス板2は重ね合わされ、上記成形型800に支持された状態で、図12に示すように、加熱炉802を通過する。加熱炉802内で軟化点温度付近まで加熱されると、両ガラス板1,2は自重によって周縁部よりも内側が下方に湾曲し、曲面状に成形される。続いて、両ガラス板1,2は加熱炉802から徐冷炉803に搬入され、徐冷処理が行われる。その後、両ガラス板1,2は、徐冷炉803から外部に搬出されて放冷される。
【0059】
こうして、外側ガラス板1及び内側ガラス板2が成形されると、これに続いて、中間膜3を外側ガラス板1及び内側ガラス板2の間に挟む。中間膜3は、外側ガラス板1及び内側ガラス板2より、やや大きい形状とする。これにより、中間層3の外縁は、外側ガラス板1及び内側ガラス板2からはみ出した状態となる。
【0060】
次に、両ガラス板1,2、及び中間膜3が積層された積層体を、ゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70〜110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能であり、次の方法を採ることもできる。例えば、上記積層体をオーブンにより45〜65℃で加熱する。次に、この積層体を0.45〜0.55MPaでロールにより押圧する。続いて、この積層体を、再度オーブンにより80〜105℃で加熱した後、0.45〜0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0061】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた積層体を、オートクレーブにより、例えば、8〜15気圧で、100〜150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で135℃の条件で本接着を行うことができる。以上の予備接着及び本接着を通して、中間膜3が、各ガラス板1,2に接着される。最後に、外側ガラス板1及び内側ガラス板2からはみ出した中間膜3を切断すれば、ウインドシールドが完成する。なお、これ以外の方法、例えば、プレス加工により、湾曲したウインドシールドを製造することもできる。
【0062】
<7.ヘッドアップディスプレイ装置>
次に、ヘッドアップディスプレイ装置について説明する。ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置という)は、ウインドシールドに、車速等の情報を投射するものである。しかしながら、このHUD装置を用いると、ウインドシールドに投影された光により、二重像が形成されることが知られている。すなわち、ウインドシールドの内面で反射することで視認される像と、ウインドシールドの外面で反射することで視認される像とが別々に視認されるため、像が二重になっていた。
【0063】
これを防止するためには、本実施形態のような外側ガラス板1が楔形のウインドシールドを用いる。すなわち、図13に示すように、ウインドシールドにおいて、少なくともHUD装置500から光が投影される表示領域においては、厚みが下方にいくにしたがって、小さくなるように形成する。これにより、ウインドシールドの内面(内側ガラス板2の第2面202)で反射して車内に入射する光と、ウインドシールドの外面(外側ガラス板1の第1面101)で反射した後、車内に入射する光とが、概ね一致するため、二重像が解消される。なお、このときのウインドシールド1の楔角α、つまり外側ガラス板1の第1面101と第2面101とのなす角は、ウインドシールド1の設置角度にもよるが、例えば、0.01〜0.04度(0.2〜0.7mrad)とすることができる。
【0064】
<8.特徴>
本実施形態に係るウインドシールドによれば、次のような効果を得ることができる。
(1)遮蔽層とガラスとは線膨張係数が相違している。例えば、上述した遮蔽層(セラミック)の線膨張係数は、70×10-7〜100×10-7/℃であり、ガラスの線膨張係数は1×10-6〜10×10-6/℃である。そのため、遮蔽層が形成された領域では成形時に圧縮応力や引張応力が発生し、各ガラス板1,2において遮蔽層4が形成されている領域と、形成されていない領域との境界付近で歪みが生じる。その結果、車内から車外を見たときには、この歪みに起因して車外の像が変形して見えることがある。
【0065】
これに対して、本実施形態では、下辺12側の遮蔽層4では、上辺11側にしたがって厚みが小さくなっているため、上記境界付近での遮蔽層4が小さくなる。これにより、遮蔽層4によるガラス板1,2の変形の歪みへの影響を小さくすることができる。その結果、像の変形を抑制することができる。
【0066】
一方、上辺11側の遮蔽層4は、下辺12にいくにしたがって厚みが大きくなるため、境界におけるガラス板1,2の歪みが大きいと考えられるが、運転席から車外を見た場合、上辺11側で見えるのは、主として空(そら)なので運転時に像の変形が問題になることは極めて少ない。
【0067】
(2)上記のようにスクリーン印刷により遮蔽層4を形成すると、下辺12側から上辺12側にいくにしたがって厚みが小さくなる遮蔽層4を形成することができる。したがって、厚みが変化する遮蔽層を容易に形成することができる。但し、この方法では、上辺11側の遮蔽層4において、境界付近の厚みが大きくなるが、上記の通り、問題になることは極めて少ない。
【0068】
(3)遮蔽層4は、外側ガラス板1と内側ガラス板2の両方の同じ位置に、ほぼ同じ幅で且つ同じ厚みで形成されているため、両ガラス板1,2をほぼ同様の形状に成形することができる。その結果、上述したオートクレーブ時に、両ガラス板1,2を、概ね変形することなく、貼り合わせることができる。したがって、張り合わされたガラス板1,2に不要な力が作用するのを防止できるため、製造時及び製造後も、ガラス板1,2の割れを防止することができる。また、両ガラス板1,2ともに、第2面102,202に遮蔽層4が積層されていれば、プレス成型する際に、同一の金型を用いることができるため、生産性がよくなるという利点もある。
【0069】
(4)上記実施形態では、筋目による凹凸が小さいボトム面を、ウインドシールドの外面としている。すなわち、ウインドシールドの2つの外面は、いずれも凹凸が小さいため、車内からウインドシールドを通して車外の対象物を見たときの透視歪みを小さくすることができる。
【0070】
(5)上記実施形態では、外側ガラス板1の筋目150と内側ガラス板2の筋目250とが直交するように、両ガラス板1,2を配置している。これに対して、例えば、両ガラス板1,2の筋目150,250が同じ方向に延びていると、ウインドシールドの車外側の面の筋目と車外側の面の筋目が組み合わさり、ウインドシールド全体としての厚みの変化が大きくなる可能性がある。これにより、透視歪みが増大するおそれがある。そこで、本実施形態では、両ガラス板1,2の筋目150,250が直交するようにしているため、凹凸が増大するのを防止し、これによって透視歪みを抑制することができる。
【0071】
<9.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。そして、以下に示す複数の変形例は適宜組合わせることが可能である。
【0072】
<9−1>
上記実施形態では、外側ガラス板1と内側ガラス板2は、トップ面同士が対向するように配置しているが、これに限定されない。例えば、ボトム面同士が対向するように配置することもできる。また、トップ面とボトム面とが対向するように配置することもできる。
【0073】
上述したように、ボトム面がウインドシールドの外面になると透視歪みを抑制できるという利点があるが、セラミックの遮蔽層4を積層するのはボトム面が有利である。したがって、用途に応じて、いずれの面を対向させるかを検討すればよい。また、このようなボトム面は、遮蔽層4以外にも、例えば、銅や銀などのアンテナ素子を印刷などで積層するのにも適している。
【0074】
<9−2>
上記実施形態では、外側ガラス板1と内側ガラス板2の両方に遮蔽層4を設けているが、外側ガラス板1のみに遮蔽層4を設けることもできる。すなわち、遮蔽層4は、外側ガラス板1及び内側ガラス板2の各面のいずれかの少なくとも一つの面に設けることができる。なお、外側ガラス板1に遮蔽層4を設けたものが本発明のガラス板モジュールに相当する。また、内側ガラス板2に遮蔽層4を設けたものも本発明のガラス板モジュールに相当する。
【0075】
<9−3>
上記実施形態では、内側ガラス板2を平板にしているが、内側ガラス板2も外側ガラス板1と同様に楔形に形成することもできる。この場合、上記のように、両ガラス板1、2に遮蔽層4を設けるほか、外側ガラス板1の第2面102のみに遮蔽層4を設けてもよいし、内側ガラス板2の第2面202にのみ遮蔽層4を設けることもできる。
【0076】
また、両方のガラス板1,2を平板状に形成することもできる。すなわち、遮蔽層4が形成されている領域と、形成されていない領域との境界付近で歪みが生じるのは、楔形のガラス板だけでなく、平板状のガラス板でも生じうるからである。したがって、例えば、外側ガラス板1及び内側ガラス板2をともに平板状に形成し、上述したような厚みの変化する遮蔽層4を設ければ、歪みを防止することができる。この観点から、外側ガラス板1及び内側ガラス板2のいずれでも上述した遮蔽層4を設ければ、本発明のガラス板モジュールに相当する。
【0077】
<9−4>
上記実施形態では、外側ガラス板1と内側ガラス板2の筋目同士が直交するようにしているが、平行にすることもできる。
【0078】
<9−5>
遮蔽層4の形状は特には限定されず、種々の形状が可能である。例えば、センサによる光の照射やカメラによる外部の撮影が可能なように、窓を設けた遮蔽層を形成することもできる。
【0079】
また、上述した厚みが変化する遮蔽層4は、少なくとも下辺12,22側にのみ設けられていればよい。したがって、例えば、右辺13,23、左辺14,24、及び上辺11,21には厚みが一定の遮蔽層を設けることもできる。
【0080】
<9−6>
外側ガラス板1や内側ガラス板2を楔形状に形成する方法は、特には限定されず、上述した方法以外でも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 外側ガラス板(第1ガラス板)
2 内側ガラス板(第2ガラス板)
3 中間膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13