【文献】
Lazar-Molnar et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA,2008年07月,Vol.105, No.30,p.10483-10488, Supporting Information
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチドであって、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:1で明記されるヒト野生型PD−1ポリペプチドのプログラム細胞死1リガンド1(PD−L1)との親和性と比較して、PD−L1に対して増加した親和性を持ち、
高親和性PD−1模倣ポリペプチドはヒト野生型のPD−1配列の変異体であり、SEQ ID NO:2−23のいずれか1つに明記されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有しているアミノ酸配列を含み、および、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは:
(i)PD−1膜貫通ドメインを欠いており、および、
(ii)
(a){V39HまたはV39R}、{N41IまたはN41V}、{Y43FまたはY43H}、{M45Q、M45E、M45L、またはM45D}、{S48D、S48L、S48N、S48G、またはS48V}、{N49C、N49G、N49Y、またはN49S}、{Q50K、Q50E、またはQ50H}、{K53TまたはK53L}、{A56SまたはA56L}、{Q63T、Q63I、Q63E、Q63L、またはQ63P}、{G65N、G65R、G65I、G65L、G65F、またはG65V}、{Q66P}、{L97Y、L97V、またはL97I}、{S102TまたはS102A}、{L103I、L103Y、またはL103F}、{A104S、A104H、またはA104D}、{K106G、K106E、K106I、K106V、K106R、またはK106T}、および、{A107P、A107I、またはA107V};
(b){V39HまたはV39R}、{N41IまたはN41V}、{Y43FまたはY43H}、{M45Q、M45E、M45L、またはM45D}、{S48D、S48L、S48N、S48G、またはS48V}、{Q50K、Q50E、またはQ50H}、{T51V、T51L、またはT51A}、{D52F、D52R、D52Y、またはD52V}、{K53TまたはK53L}、{A56SまたはA56L}、{Q63T、Q63I、Q63E、Q63L、またはQ63P}、{G65N、G65R、G65I、G65L、G65F、またはG65V}、{Q66P}、{L97Y、L97V、またはL97I}、{S102TまたはS102A}、{L103I、L103Y、またはL103F}、{A104S、A104H、またはA104D}、{K106G、K106E、K106I、K106V、K106R、またはK106T}、および{A107P、A107I、またはA107V};
(c){V39HまたはV39R}、{L40VまたはL40I}、{N41IまたはN41V}、{Y43FまたはY43H}、{R44YまたはR44L}、{M45Q、M45E、M45L、またはM45D}、{N49C、N49G、N49Y、またはN49S}、{K53TまたはK53L}、{M83LまたはM83F}、{L97Y、L97V、またはL97I}、{A100IまたはA100V}、および{A107P、A107I、またはA107V};
(d){V39HまたはV39R}、{L40VまたはL40I}、{N41IまたはN41V}、{Y43FまたはY43H}、{M45Q、M45E、M45L、またはM45D}、{N49C、N49G、N49Y、またはN49S}、{K53TまたはK53L}、{Q66P}、{M83LまたはM83F}、{L97Y、L97V、またはL97I}、および{A107P、A107I、またはA107V};
(e){V39HまたはV39R}、{L40VまたはL40I}、{N41IまたはN41V}、{Y43FまたはY43H}、{M45Q、M45E、M45L、またはM45D}、{N49C、N49G、N49Y、またはN49S}、{K53TまたはK53L}、{Q66P}、{H82Q}、{M83LまたはM83F}、{L97Y、L97V、またはL97I}、{A100IまたはA100V}、および{A107P、A107I、またはA107V};
(f){V39HまたはV39R}、{L40VまたはL40I}、{N41IまたはN41V}、{Y43FまたはY43H}、{M45Q、M45E、M45L、またはM45D}、{N49C、N49G、N49Y、またはN49S}、{K53TまたはK53L}、{M83LまたはM83F}、{L97Y、L97V、またはL97I}、{A100IまたはA100V}、および{A107P、A107I、またはA107V};
(g){V39HまたはV39R}、{L40VまたはL40I}、{N41IまたはN41V}、{Y43FまたはY43H}、{R44YまたはR44L}、{M45Q、M45E、M45L、またはM45D}、{N49C、N49G、N49Y、またはN49S}、{K53TまたはK53L}、{L97Y、L97V、またはL97I}、{A100IまたはA100V}、および{A107P、A107I、またはA107V};ならびに、
(h){V39HまたはV39R}、{L40VまたはL40I}、{N41IまたはN41V}、{Y43FまたはY43H}、{M45Q、M45E、M45L、またはM45D}、{N49C、N49G、N49Y、またはN49S}、{K53TまたはK53L}、{L97Y、L97V、またはL97I}、{A100IまたはA100V}、および{A107P、A107I、またはA107V}、
から選択されるアミノ酸位置にあるアミノ酸変化を含み、
前記アミノ酸位置が、SEQ ID NO:2に明記されるPD−1タンパク質フラグメントに対する位置にある、高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチド。
(a)V39R、N41V、Y43H、M45E、S48G、N49Y、Q50E、K53T、A56S、Q63T、G65L、Q66P、L97V、S102A、L103F、A104H、K106V、およびA107I;
(b)V39R、N41V、Y43H、M45E、S48N、Q50H、T51A、D52Y、K53T、A56L、Q63L、G65F、Q66P、L97I、S102T、L103F、A104D、K106R、およびA107I;
(c)V39H、L40V、N41V、Y43H、R44Y、M45E、N49G、K53T、M83L、L97V、A100I、およびA107I;
(d)V39H、L40V、N41V、Y43H、M45E、N49G、K53T、Q66P、M83L、L97V、およびA107I;
(e)V39H、L40V、N41V、Y43H、M45E、N49S、K53T、Q66P、H82Q、M83L、L97V、A100V、およびA107I;
(f)V39H、L40I、N41I、Y43H、M45E、N49G、K53T、M83L、L97V、A100V、およびA107I;
(g)V39H、L40V、N41I、Y43H、R44L、M45E、N49G、K53T、L97V、A100V、およびA107I;
(h)V39H、L40V、N41I、Y43H、M45E、N49G、K53T、L97V、A100V、およびA107I;ならびに、
(i)V39H、L40V、N41V、Y43H、M45E、N49G、K53T、L97V、A100V、およびA107I、
から選択されるアミノ酸変化を含み、アミノ酸変化が、SEQ ID NO:2に明記されるPD−1タンパク質フラグメントに対するものである、請求項1に記載の高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチド。
高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチドは、融合パートナーを含む、請求項1または2に記載の高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチド。
前記フラグメントは(a)CH3ドメイン、および、(b)Fc領域の一部または全体から選択される、請求項4に記載の高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチド。
前記融合パートナーは、多量体化ドメイン;サイトカイン;弱毒化サイトカイン;41BBアゴニスト;CD40アゴニスト;BTLAおよび/またはCD160の阻害剤;ならびに、TIM3および/またはCEACAM1の阻害剤から選択される、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチド。
R87C、N91C、およびR122Cから選択される1つ以上の変異を含み、アミノ酸位置が、SEQ ID NO:2に明記されるPD−1タンパク質フラグメントに対する位置にある、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチド。
SEQ ID NO:3−25と39−46のいずれかで明記されるアミノ酸配列を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチド。
高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチドが、SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:4に明記されるアミノ酸配列を含む、請求項12または13に記載の使用。
SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:4に明記されるアミノ酸配列を含む、請求項1−7のいずれか1項に記載の高親和性プログラム細胞死1(PD−1)模倣ポリペプチド。
【発明を実施するための形態】
【0029】
高親和性PD−1模倣ポリペプチドとその使用方法が提供される。高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1タンパク質(例えば、野生型ヒトPD−1タンパク質)の配列変異体であり、野生型PD−1タンパク質とそのリガンドPD−L(PD−L1および/またはPD−L2)の間の相互作用を阻害するインビボおよびインビトロの方法に対して実用性がある。高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型のPD−1タンパク質に対して少なくとも1つのアミノ酸変化を含み、野生型のPD−1タンパク質に対してPD−L(PD−L1および/またはPD−L2)との親和性が強く、野生型PD−1タンパク質の膜貫通ドメインを欠いている。親和性を増加させるアミノ酸変化は、PD−1とPD−Lとの間の接触のアミノ酸位置へ局在化可能であり、および/またはそれが由来するPD−1タンパク質の免疫グロブリンドメイン中に位置付け可能である。
【0030】
本方法と組成物を記載する前に、本発明が記載される特定の方法または組成物に限定されず、当然のことながら変化することがあるということが理解されよう。さらに、本明細書で使用される用語は特定の実施形態だけを記載することを目的としており、本発明の範囲が添付の請求項によってのみ制限されるため、限定的であることを意図していないことも理解されよう。
【0031】
様々な値の範囲が提供されている場合、特段の定めのない限り、その範囲の上限と下限の間の、下限の単位の小数第2位までの各々の介在する値が特に開示される。任意の記載された範囲の任意の記載された値または介在する値とその記載された範囲の任意の他の記載されたまたは介在する値との間のそれぞれの小さな範囲は本発明内に包含される。こうした小さな範囲の上下限は、範囲に独立して含まれることもあれば、排除されることもあり、その小さな範囲にいずれか、両方が含まれるか、またはいずれも含まれない場合、それぞれの範囲は、記載された範囲中の任意の具体的に除外された制限を受けて、本発明に包含される。記載された範囲が1つまたは両方の限界を含む場合、これらの含まれる限界の一方または両方を除外する範囲は本発明にも含まれる。
【0032】
別段の定めのない限り、本明細書に記載される技術的かつ科学的な用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法や材料と類似するまたは同等の任意の方法や材料を本発明の実施または試験の際に使用することができるが、可能性のあるおよび好ましい方法や材料がここで記載されている。本明細書で言及されるすべての出版物は、出版物の引用の際に関連付けられる方法および/または材料を開示および記載するために参照により本明細書に組み込まれる。本開示は矛盾がある程度まで、組み込まれた出版物の任意の開示に取って代わることが理解されよう。
【0033】
本開示を精読した当業者に明らかとなるように、本明細書で記載および例証された個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他の複数の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るまたは該特徴と組み合わせ得る別の構成要素と特徴を有している。記載されたどの方法も、記載された事象の順に、または、論理上可能な他の順に実行することができる。
【0034】
本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形(「a」、「an」、および「the」)は、文脈で特段の定めのない限り複数形を含むことを理解されたい。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のそうした細胞を含んでおり、「ペプチド」への言及は、1つ以上のペプチドおよびその等価物(例えば、当業者に知られているポリペプチドなど)への言及を含んでいる。
【0035】
本明細書で議論された出版物は、本出願の出願日よりも前に開示するためだけに提供される。本発明が先行発明によるこうした公開に先行するという資格がないという承認として解釈されるものは本明細書には何もない。
さらに、提供される公開日は、独立して確認される必要があることがある実際の公開日とは異なり得る。
【0036】
(定義)
以下の記載では、当該分野で従来使用される多くの用語が用いられている。
【0037】
明細書と請求項についての明瞭かつ一貫した理解とこうした用語に与えられる範囲を提供するために、以下の定義が与えられる。PD−1とそのリガンドPD−L1との間の相互作用の「阻害剤」、「遮断薬」、および「隠蔽剤」との用語は、PD−1とPD−L1の結合を防ぐ分子を指す。開発のために、結合は、実験条件下で、例えば、結合パートナーとして単離したタンパク質を用いて、結合パートナーとしてタンパク質の一部を用いて、結合パートナーとしてタンパク質またはタンパク質の一部の酵母ディスプレイを用いるなどして行われてもよい。
【0038】
生理学的に関連する目的のために、PD−1とPD−L1の結合は、通常2つの細胞間の事象であり、ここで各細胞は結合パートナーの1つを発現する。場合によっては、PD−1は、免疫細胞(例えばT細胞)の表面上で発現し、PD−L1は、免疫系による破壊の標的となり得る細胞(例えば、腫瘍細胞、慢性感染症のような感染を抱える細胞など)上で発現される。阻害剤は、受容体またはリガンドの結合あるいはシグナル伝達について、インビトロおよびインビボの分析を使用して特定され得る。
【0039】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は本明細書では交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。こうした用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の人工的な化学薬品模倣物であるアミノ酸ポリマーや、天然のアミノ酸ポリマーと非天然のアミノ酸ポリマーにも当てはまる。
【0040】
用語「アミノ酸」は、天然および合成のアミノ酸やアミノ酸アナログ、および天然のアミノ酸に類似したやり方で機能するアミノ酸模倣薬を指す。天然のアミノ酸は、遺伝コードによってコード化されたものや後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタマート、O−ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合する、天然のアミノ酸と同じ基本的な化学構造(すなわち、アルファ炭素)を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチルメチオニンスルホニウムを指す。こうしたアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然のアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣薬とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なるが天然のアミノ酸に似た方法で機能する構造を有する化学化合物を指す。
【0041】
用語「レシピエント」、「個体」、「被験体」、「宿主」、および「患者」は本明細書では交換可能に使用され、診断、処置、または治療が望まれる任意の哺乳動物の被検体、特にヒトを指す。処置目的の「哺乳動物」とは、ヒト、飼育動物や家畜、および動物園の動物、競技用動物、またはペット用動物を含む、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの哺乳動物として分類される任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0042】
用語「癌」、「新生物」、および「腫瘍」は本明細書では交換可能に使用され、細胞増殖に対する重大な制御不能を特徴とする常軌を逸した成長表現型を呈するような自律的に制御されない成長を示す細胞を指す。本出願における検出、分析、または処置の対象となる細胞は、前癌性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、および非転移性の細胞を含んでいる。事実上すべての組織の癌が知られている。成句「癌負荷(cancer burden)」とは、被験体の癌細胞または癌量の量を指す。したがって、癌負荷を減らすことは被験体の癌細胞の数または癌量を減らすことを指す。本明細書で使用されるような用語「癌細胞」は、癌細胞か、癌細胞に由来する(例えば癌細胞のクローン)あらゆる細胞を指す。細胞腫、肉腫、膠芽腫、黒色腫、リンパ腫、骨髄腫などの固形腫瘍や、白血病などの循環癌を含む、多くのタイプの癌が当業者に知られている。
【0043】
本明細書で使用されるように、「癌」は、限定されないが、固形腫瘍癌(例えば、肺、前立腺、乳房、膀胱、結腸、卵巣、膵臓、腎臓、肝臓の癌、神経膠芽腫、髄芽細胞腫、平滑筋肉腫、頭部と頸部の扁平上皮癌、黒色腫、神経内分泌癌など)や液体の癌(例えば、血液の癌);細胞腫;軟組織腫瘍;肉腫;奇形腫;黒色腫;白血病;リンパ腫;および、微小残存病変を含む脳癌と、原発性腫瘍と転移性腫瘍の両方を含む、任意の形態の癌を含んでいる。任意の癌も主題の方法と組成物によって処置されるのに適切な癌である。場合によっては、癌細胞はPD−L1を発現する。場合によっては、癌細胞はPD−L1を発現しない(例えば、こうした場合、処置されている個体の免疫系の細胞はPD−L1を発現する)。
【0044】
細胞腫は上皮組織で生じる悪性腫瘍である。上皮細胞は身体の外表面を覆い、内部空洞を覆い、腺性組織の内層を形成する。細胞腫の例としては、限定されないが、腺癌(腺(分泌)細胞中で始まる癌)、例えば、乳房、膵臓、肺、前立腺、および結腸の癌は腺癌であり得る;副腎皮質癌;肝細胞癌;腎細胞癌;卵巣癌;上皮内癌;腺管癌;乳癌;基底細胞癌;扁平上皮癌;移行上皮癌;結腸癌;上咽頭癌;多胞性嚢胞性腎癌;燕麦細胞癌;大細胞肺癌;小細胞肺癌;非小細胞肺癌;などが挙げられる。細胞腫は、前立腺、膵臓、結腸、脳(通常、第2転移として)、肺、乳房、皮膚などで見られる。
【0045】
軟組織腫瘍は、結合組織に由来するまれな腫瘍の非常に多様な群である。軟組織腫瘍の例としては、限定されないが、胞状軟部肉種;血管腫様線維性組織球腫;軟骨粘液線維腫;骨格の軟骨肉腫;骨格外の粘液性軟骨肉腫;明細胞肉腫;線維形成性小円形細胞腫瘍;隆起性皮膚線維肉腫;子宮内膜間質腫瘍;ユーイング肉腫;線維腫症(デスモイド);乳児性の繊維肉腫;消化管間質腫瘍;骨巨細胞腫;腱滑膜巨細胞腫(tenosynovial giant cell tumor);炎症性筋線維芽細胞性腫瘍;子宮平滑筋腫;平滑筋肉腫;脂肪肉腫;典型的な脂肪腫;紡錘細胞または多形性脂肪腫;異型脂肪腫;軟骨様脂肪腫;十分に分化した脂肪肉腫;粘液性脂肪肉腫/円形細胞脂肪肉腫;多形態脂肪肉腫;粘液性悪性線維性組織球腫;高悪性度悪性線維性組織球腫;粘液線維肉腫;悪性末梢神経鞘腫;中皮腫;神経芽腫;骨軟骨腫;骨肉腫;原始神経外胚葉性腫瘍;胞巣状横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;良性または悪性のシュワン腫;滑膜肉腫;Evan腫瘍;結節性筋膜炎;デスモイドタイプ線維腫症;単発性線維性腫瘍;隆起性皮膚線維肉腫(DFSP);血管肉腫;類上皮性血管内皮腫;腱滑膜巨細胞腫(TGCT);色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS);繊維性異形成症;粘液線維肉腫;線維肉腫;滑膜肉腫;悪性末梢神経鞘腫;神経線維腫;および、軟組織の多形腺腫;ならびに、繊維芽細胞、筋線維芽細胞、組織球、血管細胞/内皮細胞および髄鞘細胞に由来する腫瘍形成が挙げられる。
【0046】
肉腫は、例えば、軟骨、脂肪、筋肉、血管、繊維組織、または他の接続組織あるいは支持組織を含む、身体の骨または軟組織中の間葉系起原の細胞中で生じるまれなタイプの癌である。様々なタイプの肉腫は、癌が生じる場所に基づく。例えば、骨肉腫は骨に形成され、脂肪肉腫は脂肪に形成され、横紋筋肉腫は筋肉に形成される。肉腫の例としては、限定されないが、アスキン腫瘍;葡萄状肉腫;軟骨肉腫;ユーイング肉腫;悪性血管内皮腫;悪性シュワン腫;骨肉腫;および、軟組織肉腫(例えば、胞状軟部肉腫;血管肉腫;嚢腫肉腫 葉状の隆起性皮膚線維肉腫(DFSP);類腱腫;線維形成性小円形細胞腫瘍;類上皮肉腫;骨格外の軟骨肉腫;骨格外の骨肉腫;繊維肉腫;消化管間質腫瘍(GIST);血管外皮胞腫;血管内皮腫(より一般には「血管肉腫」と呼ばれる);カポジ肉腫;平滑筋肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;悪性末梢神経鞘腫(MPNST);神経繊維肉腫;滑膜肉腫;未分化の多形性肉腫などが挙げられる。
【0047】
奇形腫は、例えば、毛、筋肉、および骨を含む、複数の種類の組織(例えば、3つの胚葉:内胚葉、中胚葉、および外胚葉のいずれかおよび/またはすべてに由来する組織を含み得る)を含み得る一種の胚細胞性腫瘍である。奇形腫は、女性の卵巣、男性のこう丸、および子どもの尾骨で最も頻繁に生じる。
【0048】
黒色腫は、メラニン細胞(色素メラニンを作る細胞)中で始まる癌の形態である。黒色腫は黒子で発生することもあるが(皮膚黒色腫)、さらに、目または腸などの他の色素性組織で生じることもあり得る。
【0049】
白血病は、骨髄などの造血組織で発生する癌であり、大量の異常な血球を生成して血流に入らせる。例えば、白血病は、血流中で正常に成熟する骨髄由来細胞で発生し得る。白血病の名前は、この疾患がどれだけ速く発症して進行するのか(例えば、急性対慢性)ということと、影響を受ける白血球のタイプ(例えば、骨髄性対リンパ性)に由来している。骨髄性白血病は骨髄性または骨髄芽球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病はリンパ芽球またはリンパ性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病細胞はリンパ節に集まることがあり、リンパ節は腫大し得る。白血病の例としては、限定されないが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、および慢性リンパ球性白血病(CLL)が挙げられる。
【0050】
リンパ腫は免疫系の細胞中で発生する癌である。例えば、リンパ腫は、リンパ系で正常に成熟する骨髄由来細胞中で生じ得る。2つの基本的な種類のリンパ腫がある。1つは、ホジキンリンパ腫(HL)であり、これは、リード−スターンバーグ細胞と呼ばれる一種の細胞の存在により特徴づけられる。現在、認識されているタイプのHLが6つある。ホジキンリンパ腫の例としては、限定されないが、結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、混合細胞型CHL、リンパ球枯渇CHL、リンパ球豊富型CHL、および結節性リンパ球優位型HLが挙げられる。
【0051】
別のカテゴリーのリンパ腫は非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、これは免疫細胞の癌の多くの多様な群を含んでいる。非ホジキンリンパ腫は、さらに低悪性度の(成長の遅い)コースがある癌、および攻撃的な(急成長している)コースがあるものに分けることができる。現在、61の認識されたタイプのNHLがある。非ホジキンリンパ腫の例としては、限定されないが、AIDS関連リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性リンパ腫、芽細胞性NK細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、バーキット様リンパ腫(非切れ込み型小細胞リンパ腫)、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、悪性皮膚T細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、腸疾患型T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、肝脾ガンマ・デルタT細胞リンパ腫、T細胞白血病、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、鼻のT細胞リンパ腫、小児リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、形質転換リンパ腫、処置関連T細胞リンパ腫、およびワルデンストレームマクログロブリン血症が挙げられる。
【0052】
脳腫瘍は、脳組織の任意の癌を含む。脳腫瘍の例としては、限定されないが、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫など)、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)などが挙げられる。
【0053】
癌の「病状」は、患者の幸福を危険にさらす現象をすべて含んでいる。これは、限定されないが、異常なまたは制御不能な細胞成長、転移、隣接細胞の正常な機能に対する干渉、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌物の放出、炎症反応または免疫応答の抑制または悪化、腫瘍形成、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、リンパ節などの周囲または遠位の組織または器官の浸潤が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用されるように、「癌再発」や「腫瘍再発」という用語とその文法的な変異体は、癌の診断後の腫瘍細胞または癌細胞のさらなる成長を指す。とりわけ、さらなる癌細胞の成長が癌組織で生じる再発が起こることもある。同様に、腫瘍の細胞が局所的または離れた組織および器官に広まる「腫瘍拡散」が起こり、したがって、腫瘍拡散は腫瘍転移を包含する。腫瘍の増殖が局所的に拡散して正常な器官の機能の圧縮、破壊、または阻止によって関与組織の機能を危険にさらす「腫瘍浸潤」が生じる。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語「転移」とは、元々の癌腫瘍の器官に直接つながっていない器官または身体部分の癌腫瘍の成長を指す。転移は、元々の癌の腫瘍の器官に直接つながれていない器官または身体部分における検出不可能な量の癌細胞の存在である微小癌組織の転移を含むことが理解されよう。転移は、元々の腫瘍部位から癌細胞が離れることや癌細胞が身体の他の部分に遊走および/または浸潤することといったプロセスの複数の工程として定義可能である。
【0056】
患者に対する「サンプル」との用語は、血液や生体起源の他の液体サンプル、生検材料または組織培養物またはそれに由来する細胞およびその後代などの個体組織サンプルを包含する。この定義は、試薬による処置、洗浄、または、癌細胞などの特定の細胞集団向けの濃縮などによって、調達後に任意の方法で操作されたサンプルを含んでいる。この定義は、特定のタイプの分子について濃縮されたサンプル、例えば、核酸、ポリペプチドなども含んでいる。用語「生体サンプル」は臨床のサンプルを包含し、同様に、外科的切除によって得られた組織、生検によって得られた組織、培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、組織サンプル、器官、骨髄、血液、血漿、血清なども含む。「生体サンプル」は、患者の癌細胞から得られたサンプル、例えば、患者の癌細胞(例えば、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含む細胞溶解物または他の細胞抽出液)から得られるポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含むサンプル);ならびに、患者からの癌細胞を含むサンプルを含む。患者からの癌細胞を含む生体サンプルはさらに非癌細胞を含み得る。
【0057】
乳癌、前立腺癌または他のタイプの癌の分子の亜型の同定のような分子か病的な状態、疾患または症状の同定を参照するために、用語「診断」が使用される。
【0058】
用語「予後」とは、癌の再発、癌の転移拡散、および薬剤耐性を含む疾患進行(例えば、癌に起因し得る死または進行)の可能性の予測を指すために使用される。用語「予測」は、観察、経験、または科学的推論に基づいて予告または評価する行為を指すために使用される。一例において、医師は、患者が、癌を再発させることなく原発腫瘍の外科的切除および/または一定期間の化学療法の後に生き残る可能性を予測することもある。
【0059】
「特異的結合」、「特異的に結合する」などの用語は、溶液または反応混合物(例えば、抗体は、特に他の入手可能なポリペプチドに比べて特別のポリペプチドまたはエピトープに結合する)中の他の分子または実体と比較して、分子への非共有的または共有的な優先結合を指す。いくつかの実施形態では、1つの分子が別の分子に特異的に結合する親和性は、10
−5M以下(例えば、10
−6M以下、10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M以下、10
−10M以下、10
−11M以下、10
−12M以下、10
−13M以下、10
−14M以下、10
−15M以下、または10
−16M以下)のK
d(解離定数)を特徴とする。「親和性」とは結合の強度を指し、結合親和性の増加はより低いK
dと相関する。
【0060】
本明細書で使用されるような用語「特異的結合メンバー」は、特異的結合ペアのメンバーを指す(つまり2つの分子、通常は、2つの異なる分子で、分子の1つ、例えば、第1の特異的結合メンバーが非共有結合手段を介して別の分子、例えば、第2の特異的結合メンバーと特異的に結合する)。
【0061】
「同時投与」、「同時投与する」および、「〜と併用して」との用語は、特定の時間制限なく、同時の、並行した、または連続した2つ以上の治療薬の投与を含む。1つの実施形態では、薬剤は、同時に細胞または被験体の身体に存在するか、あるいは同時に生物学的効果または治療的効果を働かせる。1つの実施形態では、治療薬は同じ組成物または単位剤形である。他の実施形態では、治療薬は別々の組成物または単位剤形である。ある実施形態では、第1の薬剤は、第2の治療薬の投与前(例えば、数分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、または12週前)、第2の治療薬の投与と同時に、あるいは、第2の治療薬の投与後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、または12週後)に投与可能である。
【0062】
例えば、癌治療薬、感染症を処置する治療薬、または腫瘍を対象とする抗体の、本開示の医薬組成物との「併用投与」とは、薬/抗体と本開示の組成物の両方が治療効果を持つような時間に高親和性PD−1模倣ポリペプチドを用いる投与を意味する。このような併用投与は、本開示の化合物の投与に対して、薬/抗体の投与と並行して(つまり、同時に)、投与前、または投与後を含み得る。当業者は、特別の医薬品および本開示の組成物の投与の適切なタイミング、順番、および量を決定するのには苦労しないだろう。
【0063】
いくつかの実施形態では、処置は、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドの、別の薬剤(例えば、免疫刺激剤、慢性感染症を処置する薬剤、細胞毒性薬など)との組み合わせを投与することにより行われる。典型的な1つのクラスの細胞毒性薬は化学療法剤である。典型的な化学療法剤としては、限定されないが、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クラドリビン、シサプリド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、デュオカルマイシン、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミソール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレザト、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(タキソール(商標))、ピロカルピン、プロクロルペラジン、リツキシマブ、サポリン(saproin)、タモキシフェン、タキソール、塩酸トポテカン、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビンが挙げられる。
【0064】
他の併用療法は、細胞特異的な抗体、例えば、腫瘍細胞マーカー、放射線、外科手術、および/またはホルモン欠乏に選択的な抗体を用いる投与を含んでいる(Kwon et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 96: 15074−9, 1999)。血管新生抑制剤は本開示の方法と組み合わせることもできる。現在、多くの抗体が癌の処置のための臨床で使用されており、それ以外のものは臨床開発の変動ステージである。例えば、B細胞悪性腫瘍の処置のための多くの抗原と対応するモノクローナル抗体がある。1つの標的抗原はCD20である。リツキシマブはCD20抗原を対象とするキメラ非抱合型モノクローナル抗体である。CD20はB細胞の活性化、増殖、および分化において重要な機能的役割を有する。CD52抗原は、慢性リンパ球性白血病の処置に用いられる、モノクローナル抗体であるアレムツズマブによって標的とされる。CD22は多くの抗体によって標的とされ、最近では化学療法抵抗性の毛様細胞性白血病中の毒素と組み合わせて有効性が実証されている。CD20を標的とする新しい2つのモノクローナル抗体(トシツモマブとイブリツモマブ)が、食品医薬品局(FDA)に提出されている。これらの抗体は放射性同位元素と共役する。アレムツズマブ(Campath)は慢性リンパ球性白血病の処置で使用され、ゲムツズマブ(Mylotarg)は急性骨髄性白血病の処置で使用され、イブリツモマブ(Zevalin)は非ホジキンリンパ腫の処置で使用され、パニツムマブ(Vectibix)は結腸癌の処置で使用される。
【0065】
固形腫瘍で使用されてきた本開示の方法で有用なヒト化およびキメラ変異体を含むモノクローナル抗体は、限定されないが、エドレコロマブとトラスツズマブ(ハーセプチン)を含んでいる。エドレコロマブは、結腸癌と直腸癌で見られる17−1A抗原を標的とし、これらの兆候についてヨーロッパでの使用が承認されている。トラスツズマブはHER−2/neu抗原を標的とする。この抗原は乳癌の25%から35%で見られる。セツキシマブ(アービタックス)も本開示の方法での使用を対象としている。抗体はEGF受容体(EGFR)に結合し、結腸癌と頭部と頸部(SCCHN)の扁平上皮癌を含む固形腫瘍の処置で使用されている。
【0066】
場合によっては、そのようなものとして、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−L1(例えば、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、CD279(PD−1)、EGFR、HER2、CD117、C−Met、PTHR2、HAVCR2(TIM3)など)を除く抗原に特異的に結合する薬剤(例えば抗体)と同時投与される。癌細胞マーカーに特異的に結合するCDRを含む抗体(したがって、併用療法(主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドと同時投与される)で使用することができる)の例としては、限定されないが、セツキシマブ(EGFRに結合する)、パニツムマブ(EGFRに結合する)、リツキシマブ(CD20に結合する)、トラスツズマブ(HER2に結合する)、ペルツズマブ(HER2に結合する)、アレムツズマブ(CD52に結合する)、およびブレンツキシマブベドチン(CD30に結合する)が挙げられる。
【0067】
場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、操作されたT細胞受容体(TCR)とともにT細胞に同時投与される(こうした細胞は本明細書で「TCR操作されたT細胞」とも呼ばれる)。TCR操作されたT細胞の非限定的な適切な例は次のとおりである:(i)キメラ抗原受容体(CAR)を含んでいるT細胞;および、(ii)癌抗原などの抗原に結合する異種起源のTCRを含んでいるT細胞(TCR操作されたT細胞は、核酸の導入について以下で詳細に記載されている)。
【0068】
主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、任意の便利な免疫調節剤(例えば、抗CTLA4抗体、抗−PD−1抗体、CD40アゴニスト、4−1BBモジュレーター(例えば41BBアゴニスト)など)とともに同時投与可能である。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、BTLAおよび/またはCD160の阻害剤とともに同時投与される。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、TIM3および/またはCEACAM1の阻害剤とともに同時投与される。
【0069】
本明細書で使用されるように、成句「無病生存率」とは、患者の寿命に対する癌の影響に関して、診断後のこうした腫瘍の再発および/または拡散の欠如と患者の運命を指す。成句「全生存」とは、患者の死因が癌の直接的な影響によるものではない可能性の如何にかかわらず、診断後の患者の運命を指す。成句「無病生存率の可能性」、「再発リスク」、およびその変形は、癌の診断後の患者の腫瘍の再発または拡散の可能性を指し、その確率は本開示のプロセスによって決定される。
【0070】
本明細書で使用されるように、用語は「相互に関連する」または「〜に相互に関連する」および類似する用語は、2つの事象例の間の統計的な関連性を指し、事象は数、データセットなどを含む。例えば、事象が数を含む場合、正の相関(本明細書では「直接相関」とも呼ばれる)とは1つが増えると他も増えることを意味する。負の相関(本明細書では「逆相関」とも呼ばれる)は、1つが増えると他は減少することを意味する。
【0071】
「単位剤形」は、処置される特定の個体に対する単位投与量として適切な物理的に別の単位を指す。各単位は、要求された薬学担体に関連して所望の治療効果を生むように計算された所定量の活性化合物を含むことができる。単位剤形に関する明細書は、(a)活性化合物の特有の特性と達成される特定の治療効果、および(b)こうした活性化合物を調剤する技術に固有の限定によって決定可能である。
【0072】
「薬学的に許容可能な賦形剤」とは、一般に安全で、無毒で、望ましい医薬組成物を調製するのに役立つ賦形剤を意味し、動物への使用とヒトの製薬用途にも許容可能な賦形剤を含んでいる。こうした賦形剤は固体、液体、半固体、または、エアロゾル組成物の場合にはガス状であり得る。
【0073】
用語「薬学的に許容可能な」、「生理学的に容認できる」、および、その文法的な変形は、組成物、担体、希釈剤、および試薬を指すように交換可能に使用され、この材料が組成物の投与を禁止する程度の望ましくない生理的効果をもたらすことなくヒトへ投与することが可能であることを表す。
【0074】
「治療上有効な量」は、疾患を処置するために被験体に投与される際に、その疾患の処置をもたらすのに十分な量を意味する。
【0075】
本明細書で使用されるような用語「標的細胞」は、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドの投与後に免疫系による破壊の標的にされる細胞を指す。場合によっては、標的細胞はPD−Lタンパク質(例えばPD−L1および/またはPD−L2)を発現する。主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、標的細胞の表面上で発現されたPD−Lタンパク質に結合することによって標的細胞へ結合することができる。したがって、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドが、PD−L1発現細胞とPD−1発現細胞tとの間の相互作用を阻害することによって、PD−1発現細胞中でのPD−1シグナル伝達の減少を促すことから、用語「標的細胞」はPD−L1−発現細胞を指すことができる。
【0076】
しかしながら、標的細胞はPD−L1を発現する必要はない。場合によっては、標的細胞(例えば、感染細胞、癌細胞など)はPD−L1を発現しない。いくつかのこうした場合には、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドの投与により、免疫系が刺激され、それにより、標的細胞が破壊されることになる。
【0077】
場合によっては、標的細胞は「損傷を受けた」細胞(例えば、「損傷を受けた」個体からの細胞)であり、用語「損傷を受けた」は、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドで処置することができる症状、病気、または疾患を抱える被験体を指すために本明細書では使用されている。「病気に罹患した」個体は、癌を抱えていることもあれば、感染症(例えば慢性感染症)を抱えていることもあれば、免疫障害(例えば、免疫抑制に関連する障害)を抱えていることもあれば、炎症性障害を抱えていることもあれば、および/または他の過剰増殖性の疾患、例えば、硬化症、繊維症などを抱えていることもある。「損傷を受けた細胞」は、症状、病気、または疾患を引き起こす細胞であり得る。非限定的な例として、病気に罹患した患者の損傷を受けた細胞は、PD−L1発現癌細胞、感染細胞、炎症細胞などであり得る。場合によっては、病気または疾患を主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドで治療することができるという1つの指標は、関与する細胞(つまり、損傷を受けた細胞(例えば、癌細胞、感染細胞、炎症細胞、免疫細胞など)がPD−L1を発現するということである。場合によっては、損傷を受けた細胞(例えば癌細胞)はPD−L1を発現しないが、その病気(例えば癌)は主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドを使用して依然として治療することが可能である。
【0078】
用語「処置」、「処置すること」、「処置する」などは、望ましい薬理学的および/または生理学的効果を達成することを一般に指すために本明細書で使用される。この効果は、病気またはその症状を完全にまたは部分的に予防する点では予防的であり得、および/または、病気および/またはその病気に起因する副作用の部分的または完全な安定化または治癒の観点からは治療的なこともある。用語「処置」は、哺乳動物、とりわけヒトの疾患の任意の処置も包含し、以下を含む:(a)疾患または症状に陥りやすいがまだそれに罹患していると診断されていない被験体で疾患および/または症状が生じることを防ぐこと;(b)疾患および/または症状を阻害すること、つまり、それらの発症を妨げること、または(c)病徴を軽減すること、つまり、疾患および/または症状の退行をもたらすこと。処置を必要としている人は、すでに病気に罹患した人(例えば、癌を抱える人、感染症を抱える人、免疫不全を抱える人など)や、予防が望ましい人(例えば、癌に対する罹患率が高い人、感染症の可能性が高い人、癌に罹る疑いのある人、感染症を抱える疑いのある人など)を含む。
【0079】
治療的処置とは被験体が投与前に病気に罹患した場合の治療であり、予防療法とは被験体が投与前に病気に罹患していない場合の治療である。いくつかの実施形態では、被験体は、処置の前に病気に罹患するか、病気に罹患している疑いのある可能性が高い。いくつかの実施形態では、被験体は、病気に罹患する可能性が高くなる疑いがある。
【0080】
本明細書で使用されるとき、「標識」という言葉は、主題のPD−1模倣ポリペプチドに直接または間接的に共役する検知可能な化合物または組成物を指す。標識それ自体は単独で検知可能なこともあり(例えば、放射性同位元素標識または蛍光性標識)、あるいは、酵素の標識の場合には、検知可能な基質化合物または組成物の化学変換を触媒することがある。
【0081】
「固相」によって、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドが付着することができる非水性のマトリックスを意味する。本明細書で包含される固相の例としては、ガラス(例えば、制御されたポアガラス)、多糖(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、およびシリコーンから部分的にまたは完全に形成されたものが挙げられる。ある実施形態では、文脈によっては、固相はアッセイプレートのウェルを含むことがあり、それ以外のものでは、精製カラム(例えば親和性クロマトグラフィーカラム)である。この用語はさらに離散粒子の不連続な固相を含んでいる。
【0082】
用語「抗体」は最も広範な意味で使用され、望ましい生物活性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長のモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを特異的に包含する。「抗体」(Abs)と「免疫グロブリン」(Ig)は同じ構造的な特性を有する糖タンパク質である。抗体が特異性抗原に対する結合特異性を示す一方で、免疫グロブリンは抗原特異性を欠いた抗体と他の抗体様分子の両方を含んでいる。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系により低いレベルで、および骨髄腫により高いレベルで生成される。
【0083】
「抗体フラグメント」およびそのすべての文法的な変異体は、本明細書で使用されるように、無処置の抗体の抗原結合部位または可変領域を含む無処置の抗体の一部として定義され、一部とは無処置の抗体のFc領域の定常重鎖ドメイン(つまり、抗体アイソタイプに依存してCH2、CH3、およびCH4)を含まない。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;任意の抗体フラグメント、それはポリペプチドである、一次構造を持っていること、切れ目がないアミノ酸残基(引用された、本明細書で「一本鎖の抗体フラグメント」または「一本鎖・ポリペプチド」として)の1つの中断されない配列からなること、限定(1)一本鎖Fv(scFv)分子、(2)1つの軽鎖可変ドメイン、または関連する重鎖部分のない軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含むそのフラグメントのみを含んでいる一本鎖ポリペプチド、(3)1つの重鎖可変領域、または関連する軽鎖部分のない重鎖可変領域の3つのCDRを含むそのフラグメントのみを含んでいる一本鎖ポリペプチド、および、(4)ヒト以外の種からの単一のIgドメインまたは他の特異的な単一ドメイン結合モジュールを含むナノボディ;および、抗体フラグメントから形成された多特異性構造または多価構造が挙げられる。1つ以上の重鎖を含む抗体フラグメントでは、重鎖は、無処置の抗体の非Fc領域で見られる任意の定常ドメイン配列(例えば、IgGアイソタイプ中のCH1)を含むことができ、および/または、無処置の抗体で見られる任意のヒンジ領域配列を含むことができ、および/または、重鎖のヒンジ領域配列または定常ドメイン配列に融合または位置するロイシンジッパー配列を含むことができる。
【0084】
「天然の抗体と免疫グロブリン」は通常、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。軽鎖はそれぞれ1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結されるが、ジスルフィド結合の数は様々な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。重鎖と軽鎖はそれぞれ規則的に距離をおいた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は一方の端部に可変ドメイン(VH)とその後の多くの定常ドメインを有する。各軽鎖は一方の端部に可変ドメイン(VL)を、もう一方の端部に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の最初の定常ドメインと位置合わせされ、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと位置合わせされる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖の可変ドメイン間のインタフェースを形成すると考えられている(Clothia et al., J. Mol. Biol. 186:651 (1985); Novotny and Haber, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:4592 (1985))。
【0085】
用語「可変」とは、可変ドメインの特定の部分が抗体中で大きく異なり、その特定の抗原について各々の特定の抗体の結合と特異性で使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメイン全体に均一に分布していない。それは、軽鎖と重鎖の両方の可変ドメイン中の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖と軽鎖の可変ドメインは各々、b−シート構造を接続する、場合によってはb−シート構造の一部を形成するループを形成する3つのCDRにより接続された、b−シート構造を採用している4つのFR領域を含む。各鎖のCDRはFR領域によって極めて接近して一緒に保持され、他の鎖からのCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照)。定常ドメインは抗体を抗原に結合することに直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。
【0086】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合性フラグメントと、その名前が容易に結晶させる能力を反映している残基「Fc」フラグメントを生成する。ペプシン処置により、2つの抗原結合部位を有するとともに依然として抗原を架橋結合することができるF(ab’)2フラグメントが生成される。
【0087】
「Fv」は、完全抗原認識部位と完全抗原結合部位を含む最小限の抗体フラグメントである。2つの鎖Fv種では、この領域は、緊密な非共有結合性会合中の1つの重鎖と1つの軽鎖の可変ドメインからなる。単一の鎖のFv種(scFv)では、1つの重鎖と1つの軽鎖の可変ドメインは、軽鎖と重鎖が2つの鎖Fv種においてそれに類似した「二量体」構造で会合することができるように、柔軟なペプチドリンカーによって共有結合することが可能である。VH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するために、それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用するのはこの構造内である。まとめて、6つのCDRが抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも親和性は低いが、1つの可変ドメインでも(または、抗原に特異的なわずか3つのCDRしか含まないFvの半分)、抗原を認識して結合する能力を有している。scFvの調査については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer−Verlag, New York, pp. 269−315 (1994)を参照されたい。
【0088】
Fabフラグメントはさらに、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に少数の残基を加えることでFabフラグメントとは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’に関する本明細書での命名である。F(ab’)2抗体フラグメントは、その間にヒンジ・システインを有するFav’フラグメントのペアとして生成された。抗体フラグメントの他の化学的結合も知られている。
【0089】
5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2に分けることが可能である。様々なクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、a、d、e、g、およびmと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造と三次元構造は周知である。免疫のエフェクターの機能、半減期、または血清安定性を増減させるものを含む免疫グロブリンサブクラスの操作された変異体もこの用語により包含される。
【0090】
それとは逆に別段の定めのない限り、本明細書に記載および主張される用語「抱合体」は、1つ以上の抗体フラグメントの1つ以上のポリマー分子との共有結合により形成された異種起源の分子として定義され、異種起源の分子は水に溶解可能であり、つまり、血液などの生理液に溶解可能であり、異種起源の分子は任意の構造化した凝集体を含まない。対象となる抱合体はPEGである。前述の定義の文脈において、用語「構造化した凝集体」とは、(1)異種起源の分子がミセルでも他のエマルジョン構造でもなく、脂質二重層、小胞、またはリポソームに固定されないように、スフェロイドまたはスフェロイド殻構造を有する水溶液中の分子の任意の凝集体、および、(2)水相と接触すると異種起源の分子を溶液へ放出しない、クロマトグラフィー・ビーズ・マトリックスなどの固体または不溶化形態の分子の任意の凝集体を指す。これに応じて、本明細書で定義されるような用語「抱合体」は、固体の水和時に前述の異種起源の分子を水溶液へ放出することができる、沈殿物、沈降物、生体分解性マトリックスまたは他の固体の前述の異種起源の分子を包含する。
【0091】
本開示で使用されるように、用語「エピトープ」は、抗体のパラトープが結合する抗原上の任意の抗原決定基を意味する。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または砂糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面のグループからなり、通常、比電荷特性と同様に特異的な3次元の構造的な特性を有している。
【0092】
(組成物)
高親和性PD−1模倣ポリペプチドとそのアナログが提供され、これは一般的に高親和性PD−1試薬と呼ばれることがある。高親和性PD−1模倣ポリペプチドは野生型ヒトPD−1タンパク質の変異体である。いくつかの実施形態では、本開示は高親和性PD−1模倣ポリペプチドを提供し、ポリペプチドはPD−1膜貫通ドメインを欠いており(および、溶解可能な高親和性PD−1でありえる)、野生型のPD−1配列に対して少なくとも1つのアミノ酸変化を含み、アミノ酸変化は、(例えば、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍またはそれ以上、オフレート(off rate)を低下させることによって)PD−L1への結合に対するPD−1模倣ポリペプチドの親和性を増加させる。主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドがPD−1膜貫通ドメインを欠いているとき、膜貫通ドメイン(例えばPD−1膜貫通ドメイン)からのいくつかのアミノ酸は依然として存在することがある(例えば、タンパク質が所望の機能を保持する限り、膜貫通ドメインからのいくつかのアミノ酸は保持されることがある)を理解されたい。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは溶解可能である。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドはPD−1膜貫通ドメインを欠いているが、異種起源の膜貫通ドメインを含む(つまり、膜貫通ドメインはPD−1以外のタンパク質を形成する)。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは膜貫通ドメインを含み(例えば、異種起源の膜貫通ドメイン、PD−1膜貫通ドメインなど)、外部ドメイン部分と膜貫通ドメインとの間に開裂可能なリンカーを含んでいる。
【0093】
(ポリペプチド)
本明細書で使用されるような「PD−1模倣ポリペプチド」は、認識しうる親和性でPD−L(例えばPD−L1および/またはPD−L2)に結合するのに十分であるが、膜貫通ドメインを欠いている(例えば、野生型PD−1タンパク質の天然に存在する膜貫通ドメインを欠いている)、PD−1タンパク質の一部を有するポリペプチドを指す。したがって、天然に存在するPD−1ポリペプチドとは異なり、主題のPD−1模倣ポリペプチドは、膜貫通ドメインによって細胞膜に永久には結合されない。いくつかの実施形態では、主題のPD−1模倣ポリペプチドは溶解可能である。細胞の原形質膜に通常結合されるタンパク質の細胞外ドメインは、当該技術分野ではしばしば外部ドメインと呼ばれる。したがって、PD−1模倣ポリペプチドは、PD−1の外部ドメインである(またはそれに由来する)とみなされることがあるか、あるいは、PD−1ポリペプチドの外部ドメインの少なくとも一部(またはそれに由来する一部)を含むとみなされ得る。
【0094】
野生型PD−1タンパク質は膜貫通ドメインを有しており、細胞表面上で発現し、細胞表面上で表現するそのPD−Lリガンド(PD−L1とPD−L2)に特異的に結合する。したがって、第1の細胞の表面上で発現される野生型PD−1は、第2の細胞の表面上で発現されるPD−L1および/またはPD−L2に特異的に結合する。PD−1模倣ポリペプチドが対応する(例えば、PD−1模倣ポリペプチドの由来する元である)PD−1タンパク質は、任意のPD−1タンパク質(例えば野生型PD−1タンパク質)であり得る。例として、PD−1タンパク質は、任意の種、例えば、哺乳動物のPD−1タンパク質、げっ歯動物のPD−1タンパク質、霊長類のPD−1タンパク質、ラットのPD−1タンパク質、マウスのPD−1タンパク質、ブタのPD−1タンパク質、ウシのPD−1タンパク質、ヒツジのPD−1タンパク質、ウサギのPD−1タンパク質、イヌのPD−1タンパク質、ヒトPD−1タンパク質などからのタンパク質を含む。様々な野生型PD−1ポリペプチド配列(例えば、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、げっ歯動物、マウス、ラット、ネコ、霊長類、サル、類人猿、チンパンジーなど)の配列は容易に見つけることが可能であり、当業者は容易に入手可能である。例えば、ヒトPD−1タンパク質(SEQ ID NO:1として示される)は次のとおりである:
【0095】
野生型ヒトPD−1
(「プログラム細胞死1」、PDCD1、CD279、PD1、SLEB2、hPD−1、hPD−lおよびhSLE1としても知られている)
【0097】
PD−Lタンパク質はPD−1への膜結合型リガンドである。当該技術分野でPD−L1とPD−L2と呼ばれる2つのヒトPD−Lタンパク質がある。例として、PD−Lタンパク質は、任意の種、例えば、哺乳動物のPD−Lタンパク質、げっ歯動物のPD−Lタンパク質、霊長類のPD−Lタンパク質、ラットのPD−Lタンパク質、マウスのPD−Lタンパク質、ブタのPD−Lタンパク質、ウシのPD−Lタンパク質、ヒツジのPD−Lタンパク質、ウサギのPD−Lタンパク質、イヌのPD−Lタンパク質、ヒトのPD−Lタンパク質などからのタンパク質を含んでいる。様々な野生型PD−Lポリペプチド配列(例えば、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、げっ歯動物、マウス、ラット、ネコ、霊長類、サル、類人猿、チンパンジーなど)の配列は容易に見つけることが可能であり、当業者は容易に入手可能である。例えば、ヒトのPD−L1とPD−L2のタンパク質(それぞれSEQ ID NO:36−38として示される)は次のとおりである:
【0098】
野生型ヒトPD−L1
(「プログラム細胞死1リガンド1」、PDCD1LG1、CD274、B7−H、B7H1、PDL1、PD−L1、PDCD1L1としても知られている)
【0101】
野生型ヒトPD−L2
(「プログラム細胞死1リガンド2」、PDCD1LG2、CD273、B7DC、Btdc、PDL2、PDCD1L2、bA574F11.2としても知られている)
【0103】
野生型PD−1の膜貫通ドメインは容易に識別可能である。例示的な例として、SEQ ID NO:1で示される野生型ヒトPD−1タンパク質上で3つの様々なドメイン予測プログラムが実行され、以下の重複するアミノ酸領域が膜貫通ドメインを定義すると判定された:168−191、167−189および169−191。したがって、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:1で示される野生型ヒトPD−1タンパク質のアミノ酸167−191(例えば、168−191、167−189、および/または169−191)に存在する。ゆえに、場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:1で示される野生型ヒトPD−1タンパク質のアミノ酸167−191、168−191、167−189、および/または169−191を欠いているか、あるいは、別の野生型PD−1タンパク質の対応する領域を欠いている。様々な追加の野生型PD−1ポリペプチド配列(例えば、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、げっ歯動物、マウス、ラット、ネコ、霊長類、サル、類人猿、チンパンジーなど)の配列は容易に見つけることが可能であり、当業者は容易に入手可能である。
【0104】
適切なPD−1模倣ポリペプチドはPD−L(例えば、標的細胞上、例えば癌細胞上のPD−L1および/またはPD−L2)に特異的に結合し、それによってPD−LとPD−1(例えば、免疫細胞、例えば、T細胞上のPD−1)との間の相互作用を低下させる(例えば、阻害する、防ぐなど)。ゆえに、主題のPD−1模倣ポリペプチドは、PD−L(例えば、PD−L1および/またはPD−L2)の操作されたデコイ受容体であると考えることができる。PD−LとPD−1の間の相互作用を低下させることによって、主題のPD−1模倣ポリペプチドは、PD−L/PD−1相互作用によって生成される免疫抑制シグナルを減少させることができ、したがって、(例えば、T細胞活性化を増加させることにより)免疫応答を増加させることができる。
【0105】
適切なPD−1模倣ポリペプチドは、認識しうる親和性、例えば、高親和性でPD−L1に結合するのに十分なPD−1の部分であって、シグナル配列と膜貫通ドメインの間に通常位置する部分、または結合活性を保持するそのフラグメントを含む。ゆえに、主題のPD−1模倣ポリペプチドは、免疫グロブリンドメイン、または認識しうる親和性でPD−L1と結合するのに十分な(以下に記載されるような)その一部を含むことができる。主題のPD−1模倣ポリペプチド(例えば、高親和性PD−1模倣ポリペプチド)は、例えば、SEQ ID NO:2と27−34で示される配列(または、他のPD−1タンパク質、例えば、他の哺乳動物のPD−1タンパク質の対応する配列)のいずれかの隣接するアミノ酸を含む、免疫グロブリンドメイン以外の野生型PD−1タンパク質の一部を含むことができる。
【0106】
場合によっては、PD−L1および/またはPD−L2に結合するのに十分なPD−1の部分は、当業者により容易に識別可能な野生型PD−1ポリペプチドの免疫グロブリンドメインのすべてまたは一部を含んでいる。例えば、SEQ ID NO:1で示される野生型のヒトPD−1配列の走査は、アミノ酸35−146からの領域が免疫グロブリンドメインを含むことを明らかにする(表1)。PD−1模倣ポリペプチド(例えば、高親和性PD−1模倣ポリペプチド)は、PD−1の免疫グロブリンドメインのすべてまたは一部を含むことがあり、免疫グロブリンドメインのPD−1外部からの1つ以上のアミノ酸をさらに含むことがあり、限定なしに免疫グロブリンFc領域配列を含む、PD−1以外のアミノ酸配列を含むことがある。
【0108】
場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1ポリペプチドに対して(例えば、野生型PD−1ポリペプチドの対応領域に対して)(例えば、哺乳動物の野生型PD−1ポリペプチド;SEQ ID NO:1に明記されるヒト野生型PD−1タンパク質など)、85%以上の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。
【0109】
場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1ポリペプチドの免疫グロブリンドメイン(例えば、免疫グロブリンV−セットドメイン又は免疫グロブリンV型ドメイン(IGvドメイン);免疫グロブリン様フォールド;免疫グロブリン可変ドメイン;免疫グロブリン様ドメインなど)に対して85%以上の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。様々な付加的な野生型PD−1ポリペプチド配列に関する配列(例えば、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、げっ歯類、マウス、ラット、ネコ、霊長類、サル、類人猿、チンパンジーなど)は、容易に見出すことができ、且つ当業者に容易に利用可能となる。
【0110】
場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に明記されるヒトPD−1アミノ酸配列の免疫グロブリンドメイン含有領域;又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域に対して85%の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に明記される野生型ヒトPD−1ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸35−145(SEQ ID NO:27)、38−128(SEQ ID NO:28)、39−145(SEQ ID NO:29)、39−146(SEQ ID NO:30)、49−125(SEQ ID NO:31)、42−136(SEQ ID NO:32)、39−125(SEQ ID NO:33)、35−146(SEQ ID NO:34)、1−166(SEQ ID NO:35)、及び/又は26−147(SEQ ID NO:2);又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域に対して、85%の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に明記される野生型ヒトPD−1タンパク質配列(アミノ酸配列)のアミノ酸35−145、38−128、39−145、39−146、49−125、42−136、39−125、35−146、1−166、及び/又は26−147(SEQ ID NO:2);又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域を含む。
【0111】
場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に明記される天然のPD−1模倣ポリペプチドのアミノ酸配列(即ち、SEQ ID NO:2に明記されるPD−1タンパク質フラグメント);又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域に対して85%の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。SEQ ID NO:2に明記されるポリペプチドは、野生型ヒトPD−1タンパク質(SEQ ID NO:1)のタンパク質フラグメント(アミノ酸26−147)である。SEQ ID NO:2に明記されるアミノ酸配列は、野生型ヒトPD−1ポリペプチドの免疫グロブリンドメインを含む。場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に明記されるアミノ酸配列(即ち、SEQ ID NO:1に明記されるヒトPD−1タンパク質配列のアミノ酸26−147)(即ち、場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドはSEQ ID NO:2に明記されるPD−1タンパク質フラグメントを含む);又は別の野生型PD−1タンパク質、例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質の対応領域を含む。
【0112】
場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:2−25の何れかに明記されるアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)(例えば、SEQ ID NO:3−25、SEQ ID NO:2−23、SEQ ID NO:3−23、SEQ ID NO:24−25などの何れかに対し85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。場合によっては、PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:2−25(例えば、SEQ ID NO:3−25、SEQ ID NO:2−23、SEQ ID NO:3−23、SEQ ID NO:24−25など)の何れかに明記されるアミノ酸配列を含む。
【0113】
野生型PD−1タンパク質の対応領域に対して変異がないPD−1模倣ポリペプチド(即ち、PD−1模倣ポリペプチドが野生型タンパク質のフラグメントである場合)は、本明細書では「天然のPD−1模倣ポリペプチド」と称される。天然のPD−1模倣ポリペプチドは、様々な例、例えば、PD−1模倣ポリペプチドが「高親和性PD−1模倣ポリペプチド」であるかどうかを判定する幾つかの場合において、対照として使用され得る。
【0114】
高親和性PD−1模倣ポリペプチド。「高親和性PD−1模倣ポリペプチド」は、野生型PD−1タンパク質に対して(例えば、野生型PD−1タンパク質の対応領域に対して、野生型PD−1タンパク質の細胞外ドメインに対して、野生型PD−1タンパク質の免疫グロブリンドメインに対して、天然のPD−1模倣ポリペプチドに対して、など)、アミノ酸の変異(例えば、アミノ酸の変化)があるPD−1模倣ポリペプチド(上記に定義されるようなものであり、故に野生型PD−1タンパク質の膜貫通ドメインを欠いている)であり、ここで、アミノ酸変異は、PD−L1に関する高親和性のPD−1模倣ポリペプチドの親和性が、PD−L1に関するPD−1模倣タンパク質(及び/又は、対応する天然のPD−1模倣ポリペプチド)の親和性よりも大きくなるように、PD−L1に関するPD−1模倣ポリペプチドの親和性を増加させる。例えば、アミノ酸変異は、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、又はそれ以上、オフレートを減らすことにより、親和性を増加することができる。
【0115】
本開示によれば、アミノ酸変異(即ち、変化)は、当該技術分野で既知の又は後に発見される、任意の自然発生又は人為的なアミノ酸修飾を含む。幾つかの実施形態において、アミノ酸変化は、例えば1以上のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入などを含む。幾つかの実施形態において、アミノ酸変化は、既存のアミノ酸を別のアミノ酸に置き換えることを含む。関連する実施形態において、アミノ酸変化は、1以上の既存のアミノ酸を非天然アミノ酸に置き換える、又は1以上の非天然アミノ酸を挿入することを含む。アミノ酸変化は、野生型配列に対して1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上など)のアミノ酸残基において行われ得る。1以上のアミノ酸変化は、高親和性PD−1模倣ポリペプチドに様々な特性を付与することができ、例えば、安定性、結合活性、及び/又は特異性などに影響を及ぼす。
【0116】
場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1ポリペプチド(例えば、哺乳動物の野生型PD−1ポリペプチド;SEQ ID NO:1に明記されるヒト野生型PD−1タンパク質)に対して(例えば、野生型PD−1ポリペプチドの対応領域に対して)、アミノ酸変化(例えば、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含む。
【0117】
場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1ポリペプチドの免疫グロブリンドメイン(例えば、SEQ ID NO:1に明記される野生型ヒトPD−1ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸35−145、38−128、39−145、39−146、49−125、42−136、39−125、35−146、1−166、及び/又は26−147(SEQ ID NO:2);又は別の野生型PD−1タンパク質、例えば別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質の対応領域)に対して、アミノ酸変化(例えば、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含む。場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1ポリペプチドの細胞外ドメインに対して、アミノ酸変化(例えば1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含む。
【0118】
場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、(上記に定義されるように、ヒトの「天然のPD−1模倣ポリペプチド」である)SEQ ID NO:2に明記されるアミノ酸配列;又は別の野生型PD−1タンパク質、例えば別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質の対応領域に対して、アミノ酸変化(例えば1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含む。場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NOs:2−25の何れかに明記されるアミノ酸配列に対して(例えば、SEQ ID NOs:3−25、SEQ ID NOs:2−23、SEQ ID NOs:3−23、SEQ ID NOs:24−25などの何れかに明記されるアミノ酸配列に対して)、アミノ酸変化(例えば1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含む。
【0119】
場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1ポリペプチド(例えば、野生型PD−1ポリペプチドの対応領域)(例えば、哺乳動物の野生型PD−1ポリペプチド;SEQ ID NO:1に明記されるヒト野生型PD−1タンパク質など)に対して、アミノ酸変化(例えば、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含み、且つ、野生型PD−1ポリペプチド(例えば、野生型PD−1ポリペプチドの対応領域)(例えば、哺乳動物の野生型PD−1ポリペプチド;SEQ ID NO:1に明記されるヒト野生型PD−1タンパク質など)に対して85%以上の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。
【0120】
場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1ポリペプチドの免疫グロブリンドメイン;又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域に対して、アミノ酸変化(例えば、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含み、且つ、野生型PD−1ポリペプチドの免疫グロブリンドメイン(例えば、SEQ ID NO:1に明記される野生型ヒトPD−1ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸35−145、38−128、39−145、39−146、49−125、42−136、39−125、又は35−146);又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域に対して85%以上の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。
【0121】
場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に明記される野生型ヒトPD−1ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸35−145、38−128、39−145、39−146、49−125、42−136、39−125、35−146、1−166、及び/又は26−147(SEQ ID NO:2);又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域に対して、アミノ酸変化(例えば1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含み、且つ、SEQ ID NO:1に明記される野生型ヒトPD−1ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸35−145、38−128、39−145、39−146、49−125、42−136、39−125、35−146、1−166、及び/又は26−147(SEQ ID NO:2);又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域に対して85%以上の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。
【0122】
場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に明記されるアミノ酸配列;又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域に対して、アミノ酸変化(例えば1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含み、且つ、SEQ ID NO:2に明記されるアミノ酸配列;又は別の野生型PD−1タンパク質(例えば、別の哺乳動物の野生型PD−1タンパク質)の対応領域に対して85%以上の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。
【0123】
場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NOs:2−25の何れかに明記されるアミノ酸配列に対して(例えば、SEQ ID NOs:3−25、SEQ ID NOs:2−23、SEQ ID NOs:3−23、SEQ ID NOs:24−25などの何れかに対して)、アミノ酸変化(例えば1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、又は20のアミノ酸変化)を含み、且つ、SEQ ID NOs:2−25の何れかに明記されるアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)(例えば、SEQ ID NOs:3−25、SEQ ID NOs:2−23、SEQ ID NOs:3−23、SEQ ID NOs:24−25などの何れかに対して85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上、99.8%以上、99.9%以上、又は100%の配列同一性)を有しているアミノ酸配列を含む。
【0124】
場合によっては、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−L1に接触するPD−1のアミノ酸位置に位置する、1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、14以上、15以上))のアミノ酸を含む。例えば、場合によっては、1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、14以上、15以上)のアミノ酸変化は、V39、N41、Y43、M45、S48、N49、Q50、T51、D52、K53、A56、Q63、G65、Q66、L97、S102、L103、A104、P105、K106、及びA107から選択される、(ヒト野生型PD−1タンパク質のタンパク質フラグメントである)SEQ ID NO:2に明記される(ヒト野生型PD−1の)タンパク質フラグメントに対して、アミノ酸位置に;又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置に位置付けられる。例えば、
図3を参照されたい。
【0125】
場合によっては、本開示の抗親和性PD−1模倣ポリペプチドは、1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、14以上、15以上)のアミノ酸変化は、V39、L40、N41、Y43、R44、M45、S48、N49、Q50、T51、D52、K53、A56、Q63、G65、Q66、V72、H82、M83、R90、Y96、L97、A100、S102、L103、A104、P105、K106、及びA107から選択される、(ヒト野生型PD−1タンパク質のタンパク質フラグメントである)SEQ ID NO:2に明記される(ヒト野生型PD−1の)タンパク質フラグメントに対して、アミノ酸位置に;又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置に位置付けられる。例えば、
図3を参照されたい。
【0126】
場合によっては、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、(ヒト野生型PD−1タンパク質のタンパク質フラグメントである)SEQ ID NO:2に明記される(ヒト野生型PD−1の)タンパク質フラグメントに対して、アミノ酸位置に、又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置に位置付けられるアミノ酸変化を含み、アミノ酸位置は、以下から選択される:(a)V39、N41、Y43、M45、S48、N49、Q50、K53、A56、Q63、G65、Q66、L97、S102、L103、A104、K106、及びA107、又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置;(b)V39、N41、Y43、M45、S48、Q50、T51、D52F、K53、A56、Q63、G65、Q66、L97、S102、L103、A104、K106、及びA107、又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置;(c)V39、L40、N41、Y43、R44、M45、N49、K53、M83、L97、A100、及びA107、又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置;(d)V39、L40、N41、Y43、M45、N49、K53、Q66P、M83、L97、及びA107、又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置;(e)V39、L40、N41、Y43、M45、N49、K53、Q66P、H82、M83、L97、A100、及びA107、又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置;(f)V39、L40、N41、Y43、M45、N49、K53、M83、L97、A100、及びA107、又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置;(g)V39、L40、N41、Y43、R44、M45、N49、K53、L97、A100、及びA107、又は別の野生型PD−1タンパク質に対する対応アミノ酸位置;及び(h)V39、L40、N41、Y43、M45、N49、K53、L97、A100、及びA107。例えば、
図3を参照されたい。
【0127】
場合によっては、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、(ヒト野生型PD−1タンパク質のタンパク質フラグメントである)SEQ ID NO:2に明記される(ヒト野生型PD−1の)タンパク質フラグメントに対して、1以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、14以上、15以上)のアミノ酸変化を含み、アミノ酸変化は以下から選択される:(1)V39H又はV39R;(2)L40V又はL40I;(3)N41I又はN41V;(4)Y43F又はY43H;(5)R44Y又はR44L;(6)M45Q、M45E、M45L、又はM45D;(7)S48D、S48L、S48N、S48G、又はS48V;(8)N49C、N49G、N49Y、又はN49S;(9)Q50K、Q50E、又はQ50H;(10)T51V、T51L、又はT51A;(11)D52F、D52R、D52Y、又はD52V;(12)K53T又はK53L;(13)A56S又はA56L;(14)Q63T、Q63I、Q63E、Q63L、又はQ63P;(15)G65N、G65R、G65I、G65L、G65F、又はG65V;(16)Q66P;(17)V72I;(18)H82Q;(19)M83L又はM83F;(20)R90K;(21)Y96F;(22)L97Y、L97V、又はL97I;(23)A100I又はA100V;(24)S102T又はS102A;(25)L103I、L103Y、又はL103F;(26)A104S、A104H、又はA104D;(27)P105A;(28)K106G、K106E、K106I、K106V、K106R、又はK106T;及び(29)A107P、A107I、又はA107V;又は、前記高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、別の野生型PD−1タンパク質に関連のある対応位置にて同じアミノ酸を結果としてもたらす変化を含む。例えば、
図3を参照されたい。
【0128】
場合によっては、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、(ヒト野生型PD−1タンパク質のタンパク質フラグメントである)SEQ ID NO:2に明記される(ヒト野生型PD−1の)タンパク質フラグメントに対して、アミノ酸変化を含み、アミノ酸変化は、以下から選択される。
(a){V39H又はV39R}、{N41I又はN41V}、{Y43F又はY43H}、{M45Q、M45E、M45L、又はM45D}、{S48D、S48L、S48N、S48G、又はS48V}、{N49C、N49G、N49Y、又はN49S}、{Q50K、Q50E、又はQ50H}、{K53T又はK53L}、{A56S又はA56L}、{Q63T、Q63I、Q63E、Q63L、又はQ63P}、{G65N、G65R、G65I、G65L、G65F、又はG65V}、{Q66P}、{L97Y、L97V、又はL97I}、{S102T又はS102A}、{L103I、L103Y、又はL103F}、{A104S、A104H、又はA104D}、{K106G、K106E、K106I、K106V、K106R、又はK106T}、及び{A107P、A107I、又はA107V};又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(b){V39H又はV39R}、{N41I又はN41V}、{Y43F又はY43H}、{M45Q、M45E、M45L、又はM45D}、{S48D、S48L、S48N、S48G、又はS48V}、{Q50K、Q50E、又はQ50H}、{T51V、T51L、又はT51A}、{D52F、D52R、D52Y、又はD52V}、{K53T又はK53L}、{A56S又はA56L}、{Q63T、Q63I、Q63E、Q63L、又はQ63P}、{G65N、G65R、G65I、G65L、G65F、又はG65V}、{Q66P}、{L97Y、L97V、又はL97I}、{S102T又はS102A}、{L103I、L103Y、又はL103F}、{A104S、A104H、又はA104D}、{K106G、K106E、K106I、K106V、K106R、又はK106T}、及び{A107P、A107I、又はA107V};又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(c){V39H又はV39R}、{L40V又はL40I}、{N41I又はN41V}、{Y43F又はY43H}、{R44Y又はR44L}、{M45Q、M45E、M45L、又はM45D}、{N49C、N49G、N49Y、又はN49S}、{K53T又はK53L}、{M83L又はM83F}、{L97Y、L97V、又はL97I}、{A100I又はA100V}、及び{A107P、A107I、又はA107V};又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(d){V39H又はV39R}、{L40V又はL40I}、{N41I又はN41V}、{Y43F又はY43H}、{M45Q、M45E、M45L、又はM45D}、{N49C、N49G、N49Y、又はN49S}、{K53T又はK53L}、{Q66P}、{M83L又はM83F}、{L97Y、L97V、又はL97I}、及び{A107P、A107I、又はA107V};又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(e){V39H又はV39R}、{L40V又はL40I}、{N41I又はN41V}、{Y43F又はY43H}、{M45Q、M45E、M45L、又はM45D}、{N49C、N49G、N49Y、又はN49S}、{K53T又はK53L}、{Q66P}、{H82Q}、{M83L又はM83F}、{L97Y、L97V、又はL97I}、{A100I又はA100V}、及び{A107P、A107I、又はA107V};又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(f){V39H又はV39R}、{L40V又はL40I}、{N41I又はN41V}、{Y43F又はY43H}、{M45Q、M45E、M45L、又はM45D}、{N49C、N49G、N49Y、又はN49S}、{K53T又はK53L}、{M83L又はM83F}、{L97Y、L97V、又はL97I}、{A100I又はA100V}、及び{A107P、A107I、又はA107V};又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(g){V39H又はV39R}、{L40V又はL40I}、{N41I又はN41V}、{Y43F又はY43H}、{R44Y又はR44L}、{M45Q、M45E、M45L、又はM45D}、{N49C、N49G、N49Y、又はN49S}、{K53T又はK53L}、{L97Y、L97V、又はL97I}、{A100I又はA100V}、及び{A107P、A107I、又はA107V};又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;及び
(h){V39H又はV39R}、{L40V又はL40I}、{N41I又はN41V}、{Y43F又はY43H}、{M45Q、M45E、M45L、又はM45D}、{N49C、N49G、N49Y、又はN49S}、{K53T又はK53L}、{L97Y、L97V、又はL97I}、{A100I又はA100V}、及び{A107P、A107I、又はA107V};又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化。例えば、
図3を参照されたい。
【0129】
場合によっては、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、(ヒト野生型PD−1タンパク質のタンパク質フラグメントである)SEQ ID NO:2に明記される(ヒト野生型PD−1の)タンパク質フラグメントに対して、アミノ酸変化を含み、アミノ酸変化は、以下から選択される。
(a)V39R、N41V、Y43H、M45E、S48G、N49Y、Q50E、K53T、A56S、Q63T、G65L、Q66P、L97V、S102A、L103F、A104H、K106V、及びA107I;又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(b)V39R、N41V、Y43H、M45E、S48N、Q50H、T51A、D52Y、K53T、A56L、Q63L、G65F、Q66P、L97I、S102T、L103F、A104D、K106R、及びA107I;又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(c)V39H、L40V、N41V、Y43H、R44Y、M45E、N49G、K53T、M83L、L97V、A100I、及びA107I;又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(d)V39H、L40V、N41V、Y43H、M45E、N49G、K53T、Q66P、M83L、L97V、及びA107I;又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(e)V39H、L40V、N41V、Y43H、M45E、N49S、K53T、Q66P、H82Q、M83L、L97V、A100V、及びA107I;又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(f)V39H、L40I、N41I、Y43H、M45E、N49G、K53T、M83L、L97V、A100V、及びA107I;又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(g)V39H、L40V、N41I、Y43H、R44L、M45E、N49G、K53T、L97V、A100V、及びA107I;又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;
(h)V39H、L40V、N41I、Y43H、M45E、N49G、K53T、L97V、A100V、及びA107I;又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化;及び
(i)V39H、L40V、N41V、Y43H、M45E、N49G、K53T、L97V、A100V、及びA107I;又は別の野生型PD−1タンパク質に対して対応する位置で同じアミノ酸を結果としてもたらす変化。例えば、
図3を参照されたい。
【0130】
<親和性>
主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1タンパク質のPD−L1に関する親和性と比較して、及び/又は、野生型PD−1ポリペプチド(例えば、上記に定義されるような天然のPD−1模倣ポリペプチド)の対応配列に対してアミノ酸変化が無いPD−1模倣ポリペプチドのPD−L1に関する親和性と比較して、PD−L1に関する増大した親和性を有している。
【0131】
幾つかの実施形態において、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−L1に関する1×10
−7M以下(例えば、10
−8M以下、10
−9M以下、10
−10M以下、10
−11M以下、10
−12M以下、10
−13M以下、10
−14M以下、10
−15M以下、又は10
−16M以下)のK
dを有している。場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、1fMから1μMの範囲(例えば、1fMから800nM、10fMから500nM、100fMから100nM、500fMから50nM、800fMから50nM、1pMから50nM、10pMから50nM、50pMから50nM、100pMから50nM、500fMから100nM、800fMから100nM、1pMから100nM、10pMから100nM、50pMから100nM、又は100pMから100nM)で、PD−L1に関する親和性を有している。場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、1μM以上(例えば、800nM以上、500nM以上、200nM以上、100nM以上、50nM以上、10nM以上、1nM以上、900pM以上、750pM以上、500pM以上、200pM以上、100pM以上、10pM以上、1pM以上など)の親和性でPD−L1に結合する(ここで、親和性は値を減少させるにつれて増加する)。
【0132】
幾つかの実施形態において、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1タンパク質のPD−L1に関する親和性よりも2倍以上大きい(例えば、5倍以上、10倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上倍、5000倍以上、10
4倍以上、10
5倍以上、10
6倍以上、10
7倍以上倍、10
8倍以上など);及び/又は、野生型PD−1ポリペプチド(例えば、上述に定められるような天然のPD−1模倣ポリペプチド)の対応配列に対してアミノ酸変化が無いPD−1模倣ポリペプチドのPD−L1に関する親和性よりも2倍以上大きい(例えば、5倍以上、10倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上、5000倍以上、10
4倍以上、10
5倍以上、10
6倍以上、10
7倍以上、10
8倍以上など)、PD−L1に関する親和性を有している。
【0133】
幾つかの実施形態において、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1タンパク質のPD−L1に関する解離半減期よりも2倍以上大きい(例えば、5倍以上、10倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上倍、5000倍以上、10
4倍以上、10
5倍以上、10
6倍以上、10
7倍以上、10
8倍以上など);及び/又は、野生型PD−1ポリペプチド(例えば、上述に定められるような天然のPD−1模倣ポリペプチド)の対応配列に対してアミノ酸変化が無いPD−1模倣ポリペプチドのPD−L1に関する解離半減期よりも2倍以上大きい(例えば、5倍以上、10倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上、5000倍以上、10
4倍以上、10
5倍以上、10
6倍以上、10
7倍以上、10
8倍以上など)、PD−L1に関する解離半減期を有している。例えば、場合によっては、(上記に定義されるような)天然のPD−1模倣ポリペプチドは、1秒未満のPD−L1に関する解離半減期を有しており、一方で主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、5秒以上(例えば、30秒以上、1分以上、5分以上、10分以上、20分以上、30分以上、40分以上など)の解離半減期を有し得る。例えば、被験体の抗親和性PD−1模倣ポリペプチドのアミノ酸変異は、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、又はそれ以上オフレート(off−rate)を減らすことにより、親和性を増加することができる。
【0134】
場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、野生型PD−1ポリペプチドに対してアミノ酸変化を有していない、対応するPD−1模倣ポリペプチドのPD−L2に関する親和性と比較して、PD−L2に関する減少した親和性を有している(例えば、上記に定義されるように、対応する天然のPD−1のPD−L2に関する親和性と比較して、PD−L2に関する減少した親和性)。
【0135】
場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−L2に関するものよりも大きな、PD−L1に関する親和性を有している。例えば、場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−L2ではなくPD−L1に特異的に結合する。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−L1に関する高親和性PD−1模倣ポリペプチドの親和性を特徴化するK
dよりも2倍以上大きな(例えば、5倍以上、10倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上、5000倍以上、10
4倍以上、10
5倍以上、10
6倍以上、10
7倍以上、10
8倍以上、など)K
d(解離定数)を特徴とする、PD−L2に関する親和性を有している。言いかえれば、場合によっては、PD−L1に関する主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドの親和性は、PD−L2に関する高親和性PD−1模倣ポリペプチドの親和性よりも2倍以上大きい(例えば、5倍以上、10倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上、5000倍以上、10
4倍以上、10
5倍以上、10
6倍以上、10
7倍以上、10
8倍以上、など)場合がある。
【0136】
PD−L1及び/又はPD−L2に結合する親和性は、例えば、アッセイプレート上で覆われる;微生物細胞表面上で表示される;溶液中に存在するPD−L1及び/又はPD−L2に、高親和性PD−1模倣ポリペプチドが結合する能力により、判定され得る。PD−L1及び/又はPD−L2に対する、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドの結合活性は、ビーズ、基質、細胞などに、リガンド(例えば、PD−L1及び/又はPD−L2)或いは高親和性PD−1模倣ポリペプチドを固定することにより、分析され得る。適切な緩衝液中に薬剤が加えられ、結合パートナーは与えられた温度で一定の期間にわたりインキュベートされる。洗浄により結合されない物質を取り除いた後、結合したタンパク質を、例えば、SDS、高pHを持つ緩衝液で放出し、分析することができる。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)のプロット(即ち、高親和性PD−1模倣ポリペプチドがPD−L1に結合する能力を試験したSPR実験に起因する)を表す
図4を参照する。結合はまた、例えば、標識化されていない高親和性PD−1模倣ポリペプチドが、PD−L1に結合するために標識化されたPD−1ポリペプチド(例えば、上記に定義されるような標識化された天然のPD−1模倣ポリペプチド)と競合する能力を測定することにより、判定され得る(例えば、
図5A−5Cと
図6A−6Bを参照)。従って、相対的な結合は、候補となる標識化されていない高親和性PD−1模倣ポリペプチドを用いた結果を、標識化されていない天然のPD−1模倣ポリペプチド(上記に定義されるように、野生型PD−1の対応配列に対してアミノ酸変化がないPD−1模倣ポリペプチド)と比較することにより、評価され得る。
【0137】
主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドを生成するのに任意の都合の良い方法が、使用され得る。限定しない一例として、変異したPD−1模倣ポリペプチドの集合を生成するために、変異誘発が実行され得る(更に大きな親和性を持つポリペプチドを生成するために、天然のPD−1模倣ポリペプチドで始まり、又は高親和性PD−1模倣ポリペプチドで始まる)。変異誘発は、特定のアミノ酸にて変化をもたらすために標的化され、又は無作為化され得る。その後、変異したPD−1模倣ポリペプチドは、PD−Lタンパク質(例えば、PD−L1及び/又はPD−L2)を結合する自身の能力についてスクリーニングされ得る。例えば、PD−Lタンパク質(又はPD−Lタンパク質の変異体、例えば膜貫通ドメインを欠くバージョン)は、(例えば、放射性同位体、蛍光部分などの直接の標識;又は抗原、親和性タグ、ビオチンなどの間接の標識により)標識化され、その後、候補となる高親和性PD−1模倣ポリペプチドに接触させるために使用され得る(例えば、ここで、候補となる高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、固体表面に付けられ、又は細胞(例えば酵母菌)の膜の上に表示され得る)。使用されるPD−Lの濃度を変えることにより、候補の中から(即ち、変異したPD−1模倣ポリペプチドの集合の中から)高親和性PD−1模倣ポリペプチドを識別することができる。主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをどのように識別することができるかについての限定しない例については、
図2A−2Bを参照。
【0138】
幾つかの実施形態において、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、融合タンパク質(例えば、第2ポリペプチド(融合パートナー)とフレーム中で融合される)である。幾つかの実施形態において、第2のポリペプチドは、例えば、融合タンパク質が循環から急速に取り除かれないように、融合タンパク質の大きさを増大することができる。組織透過性(即ち、組織に浸透する能力)が、その比較的小さな大きさにより(例えば、抗体(例えば抗PD−1又は抗PD−L抗体)などのはるかに大きなタンパク質と比較して)、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドを使用するという明確な利点であり得るので、場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、第2のポリペプチドに融合されず、或いは、(特定の方法及び/又は所望の結果のコンテキストに依存する)受け入れがたいレベルに高親和性PD−1模倣ポリペプチドの組織浸透を制限しないのに十分に小さな第2のポリペプチドに融合される。故に、場合によっては、第2のポリペプチド(即ち、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドが融合されるポリペプチド)は、200以下のアミノ酸(例えば、190以下のアミノ酸、180以下のアミノ酸、170以下のアミノ酸、160以下のアミノ酸、150以下のアミノ酸、140以下のアミノ酸、130以下のアミノ酸、120以下のアミノ酸、110以下のアミノ酸、100以下のアミノ酸、90以下のアミノ酸、80以下のアミノ酸、70以下のアミノ酸、60以下のアミノ酸、50以下のアミノ酸、40以下のアミノ酸、又は30以下のアミノ酸)である。場合によっては、融合タンパク質は、200kD以下、150kD以下、100kD以下、90kD以下、80kD以下、70kD以下、60kD以下、50kD以下、40kD以下、又は30kD以下の平均分子量を有している。
【0139】
幾つかの実施形態において、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域(例えば、ヒト免疫グロブリンFc領域)(例えば、抗体Fc配列、CH3ドメインなど)の一部又は全体である。他の実施形態において、第2のポリペプチドは、例えば大きさの増加、多量体化ドメイン、及び/又はIg分子との付加的な結合又は相互作用をもたらす、Fcと実質的に同様の任意の適切なポリペプチドである。このような融合タンパク質は、精製、多量体化を促進し、インビボでの半減期の増加を示すことができる。ジスルフィド連結多重体構造を持つ融合タンパク質はまた、モノマーの高親和性PD−1模倣ポリペプチド以外の分子の結合及び中和においてより効果的となり得る。
【0140】
異種のポリペプチドに融合された場合、高親和性PD−1模倣ポリペプチドに対応する部分は、「高親和性PD−1模倣ポリペプチド部分」と称され得る。高親和性PD−1模倣ポリペプチド(例えば、高親和性PD−1模倣ポリペプチド部分)は、膜貫通ドメインへのN末端である野生型タンパク質の部分(例えば、ヒトPD−1タンパク質に関する165−170のアミノ酸)の総長までの、長さ70以上のアミノ酸(例えば、75以上のアミノ酸、80以上のアミノ酸、85以上のアミノ酸、90以上のアミノ酸、95以上のアミノ酸、100以上のアミノ酸、105以上のアミノ酸、110以上のアミノ酸、115以上のアミノ酸、120以上のアミノ酸、125以上のアミノ酸、又は130以上のアミノ酸)であり、異種のポリペプチド、例えば免疫グロブリンFc)に融合され得る。場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチド(例えば、高親和性PD−1模倣ポリペプチド部分)は、70から170のアミノ酸の範囲での長さ(例えば、70から166のアミノ酸、75から170のアミノ酸、80から170のアミノ酸など)を有している。
【0141】
幾つかの実施形態において、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、キメラタンパク質を形成するために免疫グロブリン配列に融合されるか、そうでなければ結合される。免疫グロブリン配列は免疫グロブリン不変ドメインであり得る。そのようなキメラにおける免疫グロブリン部分は、任意の種(通常はヒト)から得られる場合があり、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の亜型、IgA、IgE、IgD、又はIgMを含む。免疫グロブリン部分は、1以上のドメイン、例えばCH1、CH2、CH3などを含み得る。
【0142】
適切な免疫グロブリン不変ドメイン配列に連結された配列から構築されたキメラは、当該技術分野で既知である。そのような融合において、コード化されたキメラのポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖の定常領域の、少なくとも機能的に活性なヒンジ、CH2、及びCH3のドメインを保持し得る。融合はまた、不変ドメインのFc部分のC末端、又は、直に重鎖のCH1或いは軽鎖の対応領域へのN末端に対して行われる。融合が行われる正確な部位は重大ではなく;特定の部位は周知であり、高親和性PD−1模倣ポリペプチド:免疫グロブリンキメラの生物活性、分泌、又は結合特性を最適化するために選択され得る。幾つかの実施形態において、高親和性PD−1模倣ポリペプチド:免疫グロブリンキメラは、モノマー、又はヘテロ多量体或いはホモ多量体、及び場合によっては二量体又は四量体として組み立てられる。
【0143】
免疫グロブリン軽鎖の存在は必要ではないが、免疫グロブリン軽鎖は、高親和性PD−1模倣ポリペプチド:免疫グロブリン重鎖融合ポリペプチドに共有結合的に関連付けられ、或いは該ポリペプチドに直接融合されることで、含まれる場合がある。重鎖及び軽鎖両方の定常領域を提供するために単鎖の構築物が使用され得る。
【0144】
他の融合タンパク質構築物において、第2のポリペプチドは、融合ポリペプチドの精製を促進するペプチドなどの、マーカー配列である。例えば、マーカーアミノ酸配列は、pQEベクトル(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, Calif., 91311)において提供されるタグなどのヘキサ−ヒスチジンペプチドであり得、とりわけそれらの多くは市販で入手可能である。Gentz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 821−824, 1989に記載されるように、例えば、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の都合の良い精製をもたらす。精製に有用な別のペプチドタグ、「HA」タグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに相当する。Wilson et al., Cell 37: 767, 1984。ポリペプチドの取り扱いを促進するペプチド部分の付加は、当該技術分野で良く知られた慣習的な技術である。
【0145】
場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、多価性(例えば4価)である。
【0146】
高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、単量体、又は多量体、即ち二量体、三量体、四量体などであり得る。例えば、1以上のPD−L1(及び/又はPD−L2)結合ドメインは、共有結合により連結され、或いは、非共有結合により、例えば、融合タンパク質として;ジスルフィド結合として;アビジン、ストレプトアビジンなどへのビオチン結合を介して連結され得る。そのような単量体又は多量体の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、免疫応答を刺激するための(例えば、全身的免疫応答を刺激、及び/又はPD−L1を発現する細胞、例えば癌細胞に向けられた反応を刺激する)単一の薬剤として;又は、他の結合剤(例えばモノクローナル抗体)と組み合わせて、有用となる。
【0147】
例えば、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、融合パートナーが、多量体化ドメイン(即ち、多量体化を促進するドメイン、例えば二量体化を促進するドメイン)を提供する、融合パートナーを有し得る。例えば、融合パートナーは、任意の都合の良いタンパク質間相互作用ドメイン(例えば、ロイシンジッパーモチーフ、synzipポリペプチド(ポリペプチドの対)、CH3ドメインなど)であり得る。
【0148】
本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは修飾され得、例えば、様々な目的のために多様な他のオリゴペプチド又はタンパク質に結合され得る。例えば、プレニル化、アセチル化、アミド化、カルボキシル化、グリコシル化、ペグ化(ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖の共有結合)などにより翻訳後に修飾される。そのような修飾はまた、グリコシル化の修飾、例えば、その合成及び処理の間に、又は更なる処理工程においてポリペプチドのグリコシル化パターンを修飾することにより、例えば、酵素をグリコシル化又は脱グリコシル化する哺乳動物などの、グリコシル化に影響する酵素にポリペプチドを晒すことにより行われるものを含み得る。幾つかの実施形態において、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、1以上のリン酸化したアミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホスホセリン、又はホスホトレオニンを有している。
【0149】
幾つかの他の実施形態において、本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、タンパク質分解に対する耐性を改善し且つ溶解特性を最適化するように、又は治療剤としてより適切なものにするように更に修飾された、試薬を含む。例えば、本開示の変異体は、自然発生のL−アミノ酸以外の残基、例えば、D−アミノ酸又は非自然発生の合成アミノ酸を含むアナログを更に含む。D−アミノ酸はアミノ酸残基の幾つか又は全てに置換され得る。
【0150】
様々な障害及び疾患の処置としての使用に加えて、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、例えば、(例えば、マクロファージ、樹状細胞、好中球、顆粒球、抗原提示細胞、T細胞などの多くの免疫細胞を刺激、又はその阻害を減少させることにより)(例えば、特定の結合剤、例えば抗体に、場合によっては本明細書で定められるような腫瘍細胞特異抗体に組み合わされる時に)免疫機能を増大させるためのアジュバントとして有用である。
【0151】
高親和性PD−1模倣ポリペプチドはまた、例えば、検知可能な標識に接合された時に、様々な目的のために、例えば診断薬として使用され得る、造影剤として有用である。例えば、場合によっては、主題の方法は、個体における癌(例えば、検知可能なPD−L1の存在、レベル、及び/又は位置が診断的(diagnostic)及び/又は予後徴候であり得る癌)を診断又は予後判定する方法である。
【0152】
本開示の幾つかの実施形態において、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、1以上の撮像部分、即ち検知可能な標識に結合又は接合される。本明細書で使用されるように、「細胞傷害性部分」は、細胞に近い又は細胞により吸収される場合、細胞増殖を阻害する又は細胞死を促進する部分を指す。この点における適切な細胞傷害性部分は、放射性同位体(放射性核種)、分化誘導物質及び小さな化学毒性薬物などの化学毒性薬剤、毒素タンパク質、及びそれらの誘導体を含む。
【0153】
本明細書で利用されるように、「撮像部分」、又は検知可能な標識は、可視化技術、例えばX線撮影法、陽電子放射断層撮影(PET)、磁気共鳴画像法(MRI)、直接又は間接的な目視検査において、腫瘍と周囲の健全な組織との間の対比を増大させるために利用され得る部分を指す。故に、適切な撮像部分は、X線撮影部分、例えば、重金属及び放射線放射部分、陽電子放出部分、磁気共鳴対比部分、光学的に視認できる部分(例えば、蛍光性又は可視スペクトルの色素、視認できる粒子など)を含む。治療部分であるものと、撮像部分であるものとの間には幾つかの重なりが生じることが、当業者に認識される。
【0154】
通常、治療剤又は造影剤は、患者にとっての薬物動態学的な安定性及び全体的な毒性の低減の必要性を適切に考慮して、任意の適切な技術により高親和性PD−1模倣ポリペプチド部分に共役され得る。薬剤とPD−L1との間の直接的な反応は、各々が他方に反応することが可能な官能基を持つ場合に可能である。例えば、アミノ基又はスルフヒドリル基などの求核基は、無水物又は酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基、又は優れた脱離基(例えばハロゲン化物)を含有するアルキル基に反応することが可能な場合もある。代替的に、適切な化学リンカー基が使用され得る。リンカー基は、結合能に対する干渉を回避するためにスペーサーとして機能することができる。
【0155】
様々な二官能性試薬又は多官能性試薬、ホモ官能性及びヘテロ官能性の両方(Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.のカタログに記載されるものなど)は、リンカー基として利用され得ることが、当業者に明らかとなる。結合は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、又は酸化炭水化物残基を介して達成され得る。そのような方法を説明する多くの言及が存在する。代替的に、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、ストレプトアビジン/ビオチン、又はアビジン/ビオチンなどの非共有結合の対を使用することにより、細胞傷害性部分又は撮像部分に連結される。これら実施形態において、対の一方のメンバーは、高親和性PD−1模倣ポリペプチドに共有結合され、結合対の他方のメンバーは、細胞傷害性部分又は撮像部分に共有結合される。1より多くの細胞傷害性部分及び/又は撮像部分を結合することが望ましい場合もある。高親和性PD−1模倣ポリペプチドをポリ誘導する(poly−derivatizing)ことにより、様々な戦略が一斉に実践されてもよく、抗体は、様々な可視化技術のために造影剤(contrasting agent)として有用なものとして作られ、又は治療抗体は、可視化技術による追跡のために標識化され得る。
【0156】
担体は、共有結合を直接又はリンカー基を介して含み、且つ非共有結合の集まりを含む、様々な方法における薬剤を有し得る。適切な共有結合担体は、アルブミン、ペプチド、及び、アミノデキストランなどの多糖類などのタンパク質を含み、その各々が、部分の結合のための複数の部位を有している。担体はまた、非共有結合などの非共有結合の集まりにより、又はカプセル化により、薬剤を有し得る。
【0157】
放射性核種薬剤に特異的な担体及びリンカーは、放射性ハロゲン化小分子及びキレート化化合物を含む。放射性核種キレート薬は、金属、又は金属酸化物、放射性核種の結合ためにドナー原子として窒素原子と硫黄原子を含有するものを含むキレート化化合物から、形成され得る。
【0158】
本開示において撮像部分として使用されるX線写真部分は、金、イリジウム、テクネチウム、バリウム、タリウム、ヨウ素、及びそれらの同位体などの比較的大きな原子を持つ、化合物及びキレート薬を含む。場合によっては、ヨウ素又はヨウ素同位体などの、あまり有毒でないX線写真の撮像部分が、本開示の組成物と方法において利用され得る。そのような部分は、許容可能な化学リンカー又はキレート化担体を介して、高親和性PD−1模倣ポリペプチドに共役され得る。本開示で使用される陽電子放出部分は
18Fを含み、これは、高親和性PD−1模倣ポリペプチドとのフッ素化反応により容易に共役され得る。PET放射体の例は、
64Cu、
68Ga、
89Zr、及び
18Fを含む。
【0159】
PET撮像は、タンパク質に陽電子放射体を結合することを含み得る。PET放射体の例は、
64Cu、
68Ga、
89Zr、及び
18Fを含む。このような薬剤は、例えば、キレート化基(例えば、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)、デフェロキサミン(DFO))を介して、任意の都合の良い方法を使用してタンパク質に結合され得る。そのようなキレート化剤は、任意の都合の良い方法を使用して、例えば、遊離システイン残基(例えば、システインR87C、N91C、及び/又はR122Cなどにおいて改変された遊離システイン残基)でのマレイミド化学により(SEQ ID NO:2に明記されるPD−1タンパク質フラグメントに対してR87C、とN91C、及び/又はR122Cに対応する変異)、共有結合的に及び部位特異的にタンパク質に結合され得る。
【0160】
本開示において撮像部分として使用される単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)部分。SPECTは、放射トレーサー物質の使用及びγ線の検出において、陽電子放射断層撮影(PET)と同様である。しかし、PETとは対照的に、SPECTに使用されるトレーサーは、直接測定されるγ線を放出する一方で、PETトレーサーは、数ミリメートル先に、電子と共に消滅する(annihilate)陽電子を放出し、反対方向に2つのガンマ光子を放出する。
【0161】
磁気共鳴対比部分は、クロミウム(III)、マンガン(II)、鉄(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジミウム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、及びイッテルビウム(III)のイオンのキレート薬を含み得る。それらの非常に強い磁気モーメントにより、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、及び鉄(III)のイオンも、対比部分と考慮される。
【0162】
撮像部分として使用される光学的に視認可能な部分は、蛍光色素、又は可視スペクトル色素、視認可能な粒子、及び他の視認可能な標識化部分を含む。フルオレセイン、クマリン、ローダミン、bodipy Texas red、及びシアニン色素などの蛍光色素は、視覚的に検査される部位に十分な励起エネルギーを提供することができる場合に有用である。内視鏡検査法の可視化手順は、そのような標識の使用に更に適合し得る。許容可能な色素は、毒性ではない、FDAに承認された食用色素及び着色料を含むが、内政のために承認された薬学的に許容可能な色素が好ましい。
【0163】
特定の患者に与えられる撮像用の結合体組成物の有効な量は、様々な要因に依存し得、その幾つかは患者ごとに異なる。有能な臨床医は、例えば腫瘍の可視化を促進するのに有効な量を判定することができる。投与量は、腫瘍、投与経路、治療の性質、治療、治療に対する腫瘍の感度などに依存する。当該技術分野における技術を用いて、有能な臨床医は、慣例的な臨床試験の間にわたり、特定の治療用又は撮像用組成物の投与量を最適化することができる。
【0164】
典型的な用量は、被験体の体重1キログラムにつき0.001から100ミリグラムの結合体であり得る。患者の体重1キログラムにつき0.1から10mgの範囲の比較的大量の用量が、比較的無毒な撮像部分を持つ撮像用結合体に使用され得る。利用される量は、撮像法の感度、及び撮像部分の相対的な毒性に依存する。
【0165】
本開示の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、当該技術分野で既知又は後に発見される任意の適切な手段により生成することができ、例えば、真核生物又は原核細胞から生成され、インビトロで合成されるなどである。タンパク質は、原核細胞により生成される場合、変性(例えば熱変性、DTT減少など)により更に処理され、及び当該技術分野で既知の方法を用いて更に再変性され得る。
【0166】
場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に明記されるPD−1タンパク質フラグメントに対して、R87C、N91C、及び/又はR122Cに対応する1以上の変異を含む。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NOs:3−25及び39−46の何れかに明記されるアミノ酸配列を含む。上述のように、場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、検知可能な標識(例えば、陽電子放射断層撮影(PET)撮像標識)を含む。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に明記されるPD−1タンパク質フラグメントに対して、R87C、N91C、及び/又はR122Cに対応する1以上の変異を含み、検知可能な標識(例えば、陽電子放射断層撮影(PET)撮像標識)も含む。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2に明記されるPD−1タンパク質フラグメントに対して、R87C、N91C、及び/又はR122Cに対応する1以上の変異を含む主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチド)は、陽電子放射断層撮影(PET)撮像(例えば、64Cu、68Ga、89Zr、及び18FなどのPET放射体)、SPECT(例えばγ線放射体)、及び/又は蛍光撮像(例えば、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、bodipy Texas red、シアニン色素などの蛍光色素)のための撮像部分を含む。
【0167】
ポリペプチドは、当該技術分野で既知の従来の方法を使用して、無細胞翻訳系又はインビトロでの合成により調製され得る。様々な商用の合成装置が利用可能であり、例えば、Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA, Beckmanの自動合成装置などがある。合成装置の使用により、自然発生のアミノ酸は、非天然のアミノ酸と置換され得る。特定の配列及び調製の方法は、利便性、経済性、必要とされる純度などにより決定される。
【0168】
ポリペプチドはまた、組み換え合成の従来の方法に従い分離且つ精製され得る。溶解物は発現宿主から調製され得、該溶解物は、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、親和性クロマトグラフィー、又は他の精製法を用いて精製される。大部分に関して、使用される組成物は、少なくとも20重量%の所望の生成物、より一般的には約75重量%、好ましくは約95重量%の生成物を含み、及び治療目的のために、生成物の調製及びその精製の方法に関連する汚染物質に関して、通常は少なくとも約99.5重量%の生成物を含む。通常、パーセンテージは総タンパク量に基づく。
【0169】
当業者に周知の方法は、コード配列、及び適切な転写/翻訳調節シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用され得る。このような方法は、例えば、インビトロでの組み換えDNA技術、合成技術、及びインビボでの組み換え又は遺伝子組み換えを含む。代替的に、対象のポリペプチドをコード化することができるRNAが化学的に合成されてもよい。当業者は、本開示のポリペプチドの何れかに関する適切なコード配列をもたらすために、周知のコドン利用表と合成方法を容易に利用することができる。核酸は実質的な純度で分離され且つ獲得され得る。通常、DNA又はRNAの何れかとしての核酸は、通常は少なくとも約50%、大抵は少なくとも約90%の純度である他の自然発生の核酸配列が実質的に無い状態で得られ、及び、前記核酸は典型的に「組み換え型」であり、例えば、自然発生の染色体上に通常は関連しない1以上のヌクレオチドによりフランクされる(flanked)。本開示の核酸は、直線分子として、又は環状分子内で提供され得、及び、自律複製分子(ベクター)内、又は複製配列の無い分子内で提供され得る。核酸の発現は、それ自体により、又は当該技術分野で既知の他の調節配列により調節され得る。本開示の核酸は、当該技術分野で利用可能な様々な技術を使用して、適切な宿主細胞に導入され得る。
【0170】
本開示によると、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、治療上の使用、例えばヒトの処置に適している医薬組成物(医薬製剤)において提供され得る。幾つかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、本開示の1以上の治療実態、又はその薬学的に許容可能な塩、エステル、或いは溶媒和物を含む。幾つかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、別の治療剤、例えば別の抗腫瘍剤と組み合わせた、本開示の1以上の治療実体を含む。
【0171】
本開示の治療実体は、活性な治療剤及び他の薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物(医薬製剤)として頻繁に投与される。好ましい形態は、投与と治療用途の意図した様式に依存する。組成物はまた、所望の製剤に依存して、薬学的に許容可能な、非毒性の担体又は希釈剤を含み得、これらは、動物又はヒトの投与のための医薬組成物を処方するために共通して使用されるビヒクルとして定められる。希釈剤は、組み合わせの生物活性に影響しないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理的なリン酸緩衝生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。加えて、医薬組成物又は製剤はまた、他の担体、アジュバント、又は非毒性の、非治療用の、非免疫原性の安定剤などを含み得る。
【0172】
また幾つかの他の実施形態において、本開示の医薬組成物はまた、タンパク質、キトサン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びコポリマー(ラテックス官能化Sepharose(商標)、アガロース、セルロースなど)などの多糖類、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び脂質凝集物(油の液滴又はリポソームなど)などの、大きくてゆっくりと代謝される巨大分子を含み得る。
【0173】
幾つかの実施形態において、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、多特異性(例えば二重特異性)である。用語「多特異性」又は「二重特異性」は通常、第1の抗原に特異的な(例えば、第1の抗原の可変領域に由来する)少なくとも1つの領域、及び、第2の抗原に特異的な(例えば、第2の抗原の可変領域に由来する)少なくとも第2の領域を持つことにより、2以上の異なる抗原を認識する抗体を指すように、当該技術分野で使用される(このような抗体は、二官能性抗体又は多官能性抗体としても知られる)。二重特異性抗体は、2つの標的抗原に特異的に結合し、故に多特異性抗体の一種である。多特異性抗体は、組換DNA方法により生成され得、又は、限定されないが任意の都合の良い方法により化学的に生成された抗体を含み得る。二重特異性抗体は、全ての抗体、抗体の結合体、又は2つの異なる抗原を認識することができる抗体のポリマー形態を含む。二重特異性抗体は、それらの二価の特徴を保持するように減少且つ改良された抗体、及び、各抗原に関する様々な抗原識別部を持つことができるように化学的に結合された抗体を含む。
【0174】
幾つかの実施形態において、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは多特異性(例えば二重特異性)である。例えば、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは多特異性(例えば二重特異性)であり得、それにより、ポリペプチドの第1の領域は、(PD−L1に特異的に結合する)主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチド配列、及び別の標的(例えば抗原、受容体、リガンドなど)に特異的に結合する第2の領域(融合パートナー)(例えば、抗体由来の配列、例えば、抗体のCDRを含む抗体の結合領域;特定の結合ポリペプチド;リガンドの結合部分;受容体の結合部分など)に相当する。例えば、場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−L1以外の標的配列に特異的に結合する、第2のポリペプチド(融合パートナー)に融合される。場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−L1以外の標的に特異的に結合する、第2のポリペプチド(融合パートナー)に融合される(故に、そのような多重結合の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは二重特異性であり、それ故2つの異なる標的/部分を結合することになる)。
【0175】
場合によっては、被験体の多重結合の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、その標的に結合する融合パートナーの結果としてシグナル伝達を変更する。例えば、場合によっては、融合パートナーは、融合パートナーとして、リガンド、又はリガンドの結合領域(例えば、サイトカイン、弱化されたサイトカインなど)を含み、多重結合の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、リガンドがその標的(例えば受容体)に結合する場合にシグナル伝達を変更する。同様に、場合によっては、融合パートナーは、融合パートナーとして、受容体または受容体の結合領域を含める。また、受容体がその標的(例えばリガンド)に結合する場合、多重結合の高親和性のPD−1の模倣のポリペプチドはシグナル伝達を変える。
【0176】
適切な融合パートナーの例は、限定されないが、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、CD279(PD−1)、EGFR、HER2、CD117、C−Met、PTHR2、HAVCR2(TIM3)などの癌細胞マーカーに対する抗体からの結合配列を含む。癌細胞マーカーへの特異的結合をもたらすCDRを持つ抗体の例は、限定されないが、CETUXIMAB(EGFRに結合)、PANITUMUMAB(EGFRに結合)、RITUXIMAB(CD20に結合)、TRASTUZUMAB(HER2に結合)、PERTUZUMAB(HER2に結合)、ALEMTUZUMAB(CD52に結合)、BRENTUXIMAB(CD30に結合)などを含む。
【0177】
適切な融合パートナーの例は、サイトカイン;弱化されたサイトカイン;41BB−アゴニスト;CD40−アゴニスト;BTLA及び/又はCD160の阻害剤;及びTIM3及び/又はCEACAM1の阻害剤を含む。例えば、場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、多特異性の高親和性PD−1模倣ポリペプチドであり、以下から選択された1以上の融合パートナーに融合される:サイトカイン;弱化されたサイトカイン;41BB−アゴニスト;CD40−アゴニスト;BTLA及び/又はCD160の阻害剤;及びTIM3及び/又はCEACAM1の阻害剤。例えば、多特異性の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、そのリガンド/受容体のために減少した親和性(対応する野生型サイトカインに対して減少される)を有している、修飾されたサイトカインである融合パートナーに融合され得る。そのような修飾されたサイトカインは、本明細書では「弱化されたサイトカイン」と称される。弱化されたサイトカインの一例は(可能な融合パートナーの一例)、IL−2受容体サブユニット(例えば、CD25への結合を減少させるF42A、及びCD122への結合を減少させるD20T)(例えば、SEQ ID NO:39を参照)のうち2つに関して親和性を減少させる変異を持つ、IL−2タンパク質である。
【0178】
場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、多特異性の高親和性PD−1模倣ポリペプチドであり、41BB−アゴニスト(例えば、41BBL(例えばSEQ ID NO:40を参照))である融合パートナーを有している。場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、多特異性の高親和性PD−1模倣ポリペプチドであり、CD40−アゴニスト(例えば、CD40L(例えばSEQ ID NO:41を参照))である融合パートナーを有している。場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、多特異性の高親和性PD−1模倣ポリペプチドであり、BTLA及び/又はCD160の阻害剤(例えば、SEQ ID NO:42を参照)である融合パートナーを有している。場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、多特異性の高親和性PD−1模倣ポリペプチドであり、TIM3及び/又はCEACAM1(例えば、SEQ ID NO:43を参照)である融合パートナーを有している。
【0179】
幾つかの実施形態において、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドと融合パートナーは、リンカー(例えばリンカーポリペプチド)により分離される。リンカーポリペプチドは、様々なアミノ酸配列の何れかを有し得る。タンパク質は、柔軟な性質を持ち得るリンカーポリペプチド(例えば柔軟なリンカーポリペプチド)により結合され得るが、他の化学結合は除外されない。適切なリンカーは、長さが約6のアミノ酸と約40のアミノ酸との間、又は長さが約6のアミノ酸と約25のアミノ酸との間で、ポリペプチドを含む。このようなリンカーは、タンパク質を結合するために合成的なリンカーコード化オリゴヌクレオチドを使用することにより生成され得る。ある程度の柔軟性を持つペプチドリンカーが使用され得る。結合ペプチドは事実上、任意のアミノ酸配列を有しており、場合によっては、リンカーは、通常柔軟なペプチドを結果としてもたらす配列を有することを念頭に置く。グリシン及びアラニンなどの小さなアミノ酸の使用は、柔軟なペプチドの作成に役立つ。このような配列の作成は、当業者には慣例的なものである。様々な異なるリンカーが市販で入手可能で、使用に適していると考慮される。
【0180】
リンカーポリペプチドの例は、グリシンポリマー(G)
n及びグリシン−セリンポリマー(例えば、(GS)
n、GSGGS
n(SEQ ID NO:47)、GGSGGS
n(SEQ ID NO:48)、及びGGGS
n(SEQ ID NO:49)を含み、ここで、nは少なくとも1つの整数であり(例えばnは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は10より上の整数である))、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマーを含む。例示的なリンカーは、GGSG(SEQ ID NO:50)、GGSGG(SEQ ID NO:51)、GSGSG(SEQ ID NO:52)、GSGGG(SEQ ID NO:53)、GGGSG(SEQ ID NO:54)、GSSSG(SEQ ID NO:55)などを含むがこれらに限定されないアミノ酸配列を含み得る。当業者は、上述の任意の要素に共役されるペプチドの設計は、全体的又は部分的に柔軟なリンカーを含み得、それにより、リンカーは、あまり柔軟でない構造を付与する1以上の部分と同様に、柔軟なリンカーも含み得ることを、認識する。
【0181】
核酸。本開示はまた、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する分離された核酸、核酸を含むベクター及び宿主細胞、及び高親和性PD−1模倣ポリペプチドの生成のための組み換え技術を提供する。
【0182】
高親和性PD−1模倣ポリペプチドの組み換え産生のために、高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸は、更なるクローン化(DNAの増幅)、又は発現のために複製可能なベクターに挿入され得る。主題の高親和性PD−1模倣のポリペプチドをコード化するDNAは、従来の手順を使用して容易に分離且つ配列され得る。多くのベクターが利用可能である。ベクターの構成要素は一般的に、限定されないが、以下のものの1以上を含む:シグナル配列、複製起点、1以上の標識遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列。
【0183】
本開示の主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、直接的だけでなく、異種又は同種のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして組み換えにより精製され得、これは、シグナル配列、又は、成熟したタンパク質或いはポリペプチドのN末端にて特異的な開裂部位を有する他のポリペプチド、免疫グロブリン定常領域配列などを含み得る。選択される異種のシグナル配列は、宿主細胞によって認識され且つ加工される(即ち、シグナルペプチターゼによって開裂される)ものが好ましい場合もある。天然の抗体シグナル配列を認識せず且つ加工しない原核生物の宿主細胞について、シグナル配列は、選択された原核生物のシグナル配列により置換される。
【0184】
「単離された」核酸分子は、単離前に、通常関係している少なくとも1つの汚染核酸分子から同定且つ分離される核酸分子である。単離された核酸分子は、自然に見出すことが可能な形態又は設定以外にも存在する。それ故、単離された核酸分子は、自然細胞に存在するため、核酸分子と区別される。
【0185】
被験体の核酸をクローン化又は発現するのに適切な宿主細胞の例は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞を含むが、これらに限定される必要はない。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40(COS−7ATCCCRL1651)によって変形されるサル腎臓CV1株;ヒト胎児腎臓株(懸濁培養における増殖のためにサブクローン化される293又は293の細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod. 23:243−251(1980));サル腎培養細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA,ATCC CCL2);ベビーハムスター腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL51);TR1細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44−68 (1.982));MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞癌株(Hep G2)である。宿主細胞は、高親和性PD−1模倣ポリペプチドの生成のために上述の発現ベクター又はクローン化ベクターにより変形され、及び、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコード化する遺伝子の増幅に適切なものとして修飾された、従来の栄養培地中で培養される。
【0186】
核酸の導入。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドが、高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸(例えば、RNA(例えばmRNA);又はDNA(例えば組み換え発現ベクター、直線DNA、環状DNA、プラスミド、ウイルスベクターなど))として、高親和性PD−1模倣ポリペプチドを提供することにより、個体に投与される。本開示は、そのような方法、及び該方法のための核酸も提供する。
【0187】
例えば、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化するmRNAは細胞に導入することができ、該細胞は後に翻訳されたタンパク質を分泌する(secret)ことができる。別の例として、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化するDNA(例えば、組み換え発現ベクター、直線DNA、環状DNA、プラスミド、ウイルスベクターなど)は、細胞に導入することができ、該細胞は後にコード化されたタンパク質を生成且つ分泌することができる。それ故、場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸は、シグナル配列(例えば、高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を持つフレームの上流、及びその中にある)をコード化するヌクレオチド配列を含む。当業者に容易に認識されるように、本明細書で引用されるようなシグナル配列は、真核細胞のシグナル認識粒子により認識され得る、新生タンパク質のアミノ末端に、又はその付近にあるアミノ酸配列であり、結果として、細胞の分泌経路へのタンパク質の輸送をもたらし、故に細胞からのタンパク質の分泌を促進する(例えば、シグナル配列はタンパク質から開裂され得る)。任意の都合の良いシグナル配列が使用され得る。
【0188】
場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸は、細胞(例えば、インビボ、エキソビボ、インビトロ)に導入され、該細胞は後にコード化されたタンパク質を生成且つ分泌することができる。場合によっては、細胞はインビトロである。場合によっては、細胞はエキソビボである。場合によっては、細胞はインビボである。例えば、場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸は、インビボである細胞に導入される(例えば、場合によっては、高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸は、個体に核酸を投与することによりインビボの細胞に導入される)。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸は、細胞(例えば、エキソビボ、インビトロ)に導入され、該細胞は後に個体に導入される。場合によっては、細胞は、個体に対して自家製である(autologous)(例えば、細胞は個体から単離され、又は個体から単離された細胞の後代である)。
【0189】
場合によっては(例えば、上述のシナリオ、例えばインビトロ、エキソビボ、インビボの何れかにおいて)、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸が導入される細胞は、免疫細胞(例えば、白血球、T細胞、CD8 T細胞、CD4 T細胞、メモリー/エフェクターT細胞、B細胞、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、マクロファージ、単球、NK細胞など)である。場合によっては(例えば、上述のシナリオ、例えばインビトロ、エキソビボ、インビボの何れかにおいて)、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸が導入される細胞は、幹細胞(例えば、造血幹細胞、多能性幹細胞、複能性幹細胞、組織制限幹細胞(tissue restricted stem cell)など)である。場合によっては(例えば、上述のシナリオ、例えばインビトロ、エキソビボ、インビボの何れかにおいて)、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸が導入される細胞は、免疫細胞(例えば、白血球、T細胞、CD8 T細胞、CD4 T細胞、メモリー/エフェクターT細胞、B細胞、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、マクロファージ、単球、NK細胞など)、又は幹細胞(例えば、造血幹細胞、多能性幹細胞、多能性幹細胞、組織制限幹細胞など)である。
【0190】
場合によっては(例えば、上述のシナリオ、例えばインビトロ、エキソビボ、インビボの何れかにおいて)、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸が導入される細胞は、操作されたT細胞受容体(TCR)を持つT細胞である(そのような細胞はまた、本明細書では「TCR−操作したT細胞」と称される)。本明細書で使用されるように、用語「TCR−操作したT細胞」は、T細胞に対して異種であるT細胞受容体を有する任意のT細胞を指す。適切な例は、限定されないが(i)キメラ抗原受容体(CAR)を含むT細胞(そのような細胞はまた、本明細書では「CAR−T細胞」又は「操作したCAR−T細胞」と称される);及び(ii)癌抗原などの抗原(例えば、MART1、NY−ESO−1、p53など)に結合する異種のTCRを含むT細胞(例えば、そのような細胞は、癌抗原などの抗原(例えば、MART1、NY−ESO−1、p53など)に結合するTCRなどの、異種のTCRのTcR−アルファ及びTcR−ベータポリペプチドをコード化する核酸を含み得る)を含む。
【0191】
場合によっては、適切なTCR−操作したT細胞は、癌マーカー(例えば、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、CD279(PD−1)、EGFR、HER2、CD117、C−Met、PTHR2、及び/又はHAVCR2(TIM3))に結合する、操作したTCR(例えば、抗原、CARなどに結合する、異種のTCR)を有し得る。場合によっては、適切なTCR−操作したT細胞は、PD−L1(例えば、抗PD−L1抗体由来のCAR)及びPD−1(例えば、抗PD−1抗体由来のCAR)から選択された標的抗原に結合する、操作したTCR(例えば、抗原、CARなどに結合する、異種のTCR)を有し得る。場合によっては、適切なTCR−操作したT細胞は、PD−L1(例えば、抗PD−L1抗体由来のCAR)に結合する、操作したTCR(例えば、抗原、CARなどに結合する、異種のTCR)を有し得る。場合によっては、適切なTCR−操作したT細胞は、PD−1(例えば、抗PD−1抗体由来のCAR)に結合する、操作したTCR(例えば、抗原、CARなどに結合する、異種のTCR)を有し得る。場合によっては、適切なTCR−操作したT細胞は、CD19(例えば、1D3 CAR)に結合する、操作したTCR(例えば、抗原、CARなどに結合する、異種のTCR)を有し得る。
【0192】
場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸は、T細胞受容体(TCR)をコード化するヌクレオチド配列も含む。幾つかのそのような場合において、核酸は、TCRのTCRアルファポリペプチド及びTCRベータポリペプチドの両方をコード化するヌクレオチド配列を含む。場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸は、異種のTCR(癌抗原などの抗原(例えばMART1、NY−ESO−1、p53など)に結合するTCRなど)のTcRアルファポリペプチド及びTcRベータポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列も含み、CAR(例えば、第一世代CAR、第二世代CAR、第三世代CARなど)をコード化する。主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する配列だけでなく、異種のTCRのTcRアルファポリペプチドとTcRベータポリペプチドをコード化する配列、及びCARをコード化する配列を含む、様々な構成成分は、モジュラーである。故に、様々な配列は各々、同じ又は異なるプロモーターに操作自在に結合され得る。同じプロモーターに操作自在に結合されるそのような構成成分は、別個のポリペプチドとしてタンパク質が最終的に存在するのを可能にする配列(例えば、内部リボソーム侵入部位(IRES)、2Aペプチド配列など)により、分離され得る。様々な可能な配置の例は、限定されないが、
図20A−20E及び
図21A−21Dに記載されるものを含む。故に、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化する核酸の例は、限定されないが、
図20A−20E及び
図21A−21Dに記載されるものを含む。
【0193】
「ベクター」又は「発現ベクター」は、プラスミド、ファージ、ウイルス、又はコスミドなどのレプリコンであり、これに対して別のDNAセグメント(即ち、「挿入物」)が結合され得、それにより細胞中の結合されたセグメントの複製が引き起こされる。
【0194】
「発現カセット」は、プロモーターに操作自在に結合されたDNAコード配列を含む。「操作自在に結合された」は並置を表わし、ここで、そのように記載された構成成分は、意図された方法でそれらを機能させるのを可能にする関連性にある。例えば、プロモーターは、その転写又は発現に影響する場合に、コード配列に操作自在に結合される。
【0195】
用語「組み換え発現ベクター」又は「DNA構築物」又は「発現ベクター」、及び当該技術分野で同様の用語は、ベクター及び少なくとも1つの挿入物を含むDNA分子を指すものとして、本明細書で互換的に使用される。組み換え発現ベクターは、挿入物を発現及び/又は伝播させるために、又は、他の組み換え型ヌクレオチド配列の構築のために生成され得る。挿入物(例えば、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列)は、プロモーター配列に操作自在に結合される又は結合されない場合があり、DNA調節配列に操作自在に結合される又はされない場合がある。故に、場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列は、プロモーター(例えば、所望の細胞型(例えば真核細胞、哺乳動物細胞、霊長類細胞、ヒト細胞、免疫細胞、白血球、T細胞、CD8 T細胞、CD4 T細胞、メモリー/エフェクターT細胞、B細胞、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、マクロファージ、単球、NK細胞、幹細胞、造血幹細胞、多能性幹細胞、複能性幹細胞、組織制限幹細胞など)において操作自在なもの)に操作自在に結合される。
【0196】
プロモーターは、構成的に活性なプロモーター(即ち、構成的に活性/「ON」の状態にあるプロモーター)、誘導プロモーター(即ち、活性/「ON」又は不活性/「OFF」という状態が、外部刺激(例えば、特定の温度、化合物、又はタンパク質の存在)により制御される、プロモーター)、空間的に制限されたプロモーター(即ち、転写調節要素、エンハンサーなど)(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)、一時的に制限されたプロモーター(即ち、プロモーターは、胚発生の特定の段階中、又は生物学的プロセス(例えば、マウスの毛嚢循環)の特定の段階中に、「ON」の状態又は「OFF」の状態にある)であり得る。
【0197】
適切なプロモーターは、ウイルス由来であり、それ故ウイルスのプロモーターと称され得、又は、原核生物或いは真核生物を含む任意の生体に由来し得る。適切なプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol III)による発現を促進するために使用され得る。例示的なプロモーターは、限定されないが、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、CMV即時型早期プロモーター領域(CMVIE)などのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6小核プロモーター(U6)(Miyagishi et al. , Nature Biotechnology 20, 497 − 500 (2002))、増強されたU6プロモーター(例えば、Xia et al., Nucleic Acids Res. 2003 Sep 1;31(17))、ヒトH1プロモータ(H1)などを含む。
【0198】
誘導プロモーターの例は、限定されないが、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、T3 RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル−ベータ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)−調節プロモーター、ラクトース誘導プロモーター、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節プロモーター、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、エストロゲン受容体調節プロモーターなどを含む。それ故、誘導プロモーターは、以下を含むがこれらに限定されない分子により調節され得る:ドキシサイクリン;RNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ;エストロゲン受容体;エストロゲン受容体融合物など。
【0199】
幾つかの実施形態において、プロモーターは、空間的に制限されたプロモーター(即ち、細胞型特異的プロモーター、組織特異的プロモーターなど)であり、それにより、多細胞の生体において、プロモーターは特異的細胞の亜群において活性(即ち、「ON」)である。立体的に制限されたプロモーターは、エンハンサー、転写調節要素、対照配列などとも称され得る。任意の都合の良い、空間的に制限されたプロモーターが使用され、適切なプロモーター(例えば、脳特異的プロモーター、神経細胞の亜群における発現を促進するプロモーター、生殖系列における発現を促進するプロモーター、肺における発現を促進するプロモーター、筋肉における発現を促進するプロモーター、膵臓の島細胞における発現を促進するプロモーターなど)の選択は、生体に依存する。例えば、様々な空間的に制限されたプロモーターは、植物、ハエ、蠕虫類、哺乳動物、マウスなどで知られている。故に、空間的に制限されたプロモーターは、生体に依存して、多様な異なる組織と細胞型における被験体の部位特異的な修飾ポリペプチドをコード化する核酸の発現を調節するために使用され得る。幾つかの空間的に制限されたプロモーターはまた、一時的に制限され、それにより、プロモーターは、胚発生の特定の段階中、又は生物学的プロセス(例えばマウスの毛嚢循環)の特定の段階中に、「ON」状態又は「OFF」状態にある。
【0200】
例示目的のために、空間的に制限されたプロモーターの例は、限定されないが、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、平滑筋特異的プロモーター、光受容体特異的プロモーターなどを含む。ニューロン特異的な空間的に制限されたプロモーターは、限定されないが、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(例えば、EMBL HSENO2,X51956を参照);芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)プロモーター;神経フィラメントプロモーター(例えば、GenBank HUMNFL,L04147を参照);シナプシンプロモーター(例えば、GenBank HUMSYNIB,M55301を参照);thy−1プロモーター(例えば、Chen et al. (1987) Cell 51:7−19;及びLlewellyn, et al. (2010) Nat. Med. 16(10):1161−1166を参照);セロトニン受容体プロモーター(例えばGenBank S62283を参照);チロシンヒドロキシラーゼプロモーター(TH)(例えば、Oh et al. (2009) Gene Ther 16:437; Sasaoka et al. (1992) Mol. Brain Res. 16:274; Boundy et al. (1998) J. Neurosci. 18:9989;及びKaneda et al. (1991) Neuron 6:583−594を参照);GnRHプロモーター(例えば、Radovick et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3402−3406を参照);L7プロモーター(例えば、Oberdick et al. (1990) Science 248:223−226を参照);DNMTプロモーター(例えば、Bartge et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3648−3652を参照);エンケファリンプロモーター(例えば、Comb et al. (1988) EMBO J. 17:3793−3805を参照);ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーター;Ca2+−カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII−アルファ(CamKIIα)プロモーター(例えば、Mayford et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:13250;及びCasanova et al. (2001) Genesis 31:37を参照);CMVエンハンサー/血小板由来増殖因子−βプロモーター(例えば、Liu et al. (2004) Gene Therapy 11:52−60を参照)など。
【0201】
脂肪細胞特異的な空間的に制限されたプロモーターは、限定されないが、aP2遺伝子プロモーター/エンハンサー、例えば、ヒトaP2遺伝子の−5.4kbから+21bpまでの領域(例えば、Tozzo et al. (1997) Endocrinol. 138:1604; Ross et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:9590;及びPavjani et al. (2005) Nat. Med. 11:797を参照);グルコース輸送体−4プロモーター(例えば、Knight et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:14725を参照);脂肪酸トランスロカーゼ(FAT/CD36)プロモーター(例えば、Kuriki et al. (2002) Biol. Pharm. Bull. 25:1476;及びSato et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:15703を参照);ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)プロモーター(Tabor et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:20603);レプチンプロモーター(例えば、Mason et al. (1998) Endocrinol. 139:1013;及びChen et al. (1999) Biochem. Biophys. Res. Comm. 262:187を参照);アディポネクチンプロモーター(例えば、Kita et al. (2005) Biochem. Biophys. Res. Comm. 331:484;及びChakrabarti (2010) Endocrinol. 151:2408を参照);アジプシンプロモーター(例えば、Platt et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:7490を参照);レジスチンプロモーター(例えば、Seo et al. (2003) Molec. Endocrinol. 17:1522を参照)など。
【0202】
心筋細胞特異的な空間的に制限されたプロモーターは、限定されないが、以下の遺伝子:ミオシン軽鎖−2、α−ミオシン重鎖、AE3、心筋トロポニンC、心臓アクチンなどに由来する対照配列を含む。Franz et al. (1997) Cardiovasc. Res. 35:560−566; Robbins et al. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 752:492−505; Linn et al. (1995) Circ. Res. 76:584−591; Parmacek et al. (1994) Mol. Cell. Biol. 14:1870−1885; Hunter et al. (1993) Hypertension 22:608−617;及びSartorelli et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4047−4051。
【0203】
平滑筋特異的な空間的に制限されたプロモーターは、限定されないが、SM22αプロモーター(例えば、Akyurek et al. (2000) Mol. Med. 6:983;及び米国特許第7,169,874号を参照);smoothelinプロモーター(例えば、WO2001/018048を参照);α−平滑筋アクチンプロモーターなどを含む。例えば、2つのCArG要素が中にある、SM22αプロモーターの0.4kbの領域は、血管平滑筋細胞特異的発現を媒介すると示されてきた(例えば、Kim, et al. (1997) Mol. Cell. Biol. 17, 2266−2278; Li, et al., (1996) J. Cell Biol. 132, 849−859;及びMoessler, et al. (1996) Development 122, 2415−2425を参照)。
【0204】
光受容体特異的な空間的に制限されたプロモーターは、限定されないが、ロドプシンプロモーター;ロドプシンキナーゼプロモーター(Young et al. (2003) Ophthalmol. Vis. Sci. 44:4076);ベータホスホジエステラーゼ遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007) J. Gene Med. 9:1015);色素性網膜炎遺伝子プロモーター(上述のNicoud et al. (2007));光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子エンハンサー(上述のNicoud et al. (2007));IRBP遺伝子プロモーター(Yokoyama et al. (1992) Exp Eye Res. 55:225)などを含む。
【0205】
本明細書で互換的に使用される用語「DNA調節配列」、「制御要素」、及び「調節要素」は、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター(terminators)、タンパク質分解シグナルなどの、転写制御配列と翻訳制御配列を指し、これらは、非コード配列(例えば、DNA標的RNA)又はコード配列(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド、又はCas9/Csn1ポリペプチド)の転写をもたらす及び/又は調節し、及び/又は、コード化されたポリペプチドの翻訳を調節する。
【0206】
適切な発現ベクターは、限定されないが、ウイルスベクター(例えば、牛痘ウイルスをベースとするウイルスベクター;を含む。ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549, 1994; Borras et al., Gene Ther 6:515 524, 1999; Li and Davidson, PNAS 92:7700 7704, 1995; Sakamoto et al., H Gene Ther 5:1088 1097, 1999; WO 94/12649, WO 93/03769; WO 93/19191; WO 94/28938; WO 95/11984、及びWO 95/00655を参照);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum Gene Ther 9:81 86, 1998, Flannery et al., PNAS 94:6916 6921, 1997; Bennett et al., Invest Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863, 1997; Jomary et al., Gene Ther 4:683 690, 1997, Rolling et al., Hum Gene Ther 10:641 648, 1999; Ali et al., Hum Mol Genet 5:591 594, 1996; Srivastava in WO 93/09239, Samulski et al., J. Vir. (1989) 63:3822 3828; Mendelson et al., Virol. (1988) 166:154 165;及びFlotte et al., PNAS (1993) 90:10613 10617を参照);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., PNAS 94:10319 23, 1997; Takahashi et al., J Virol 73:7812 7816, 1999を参照);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、及び、ニワトリ肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、ニワトリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、脊髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳癌ウイルスなどのレトロウイルス由来のベクター)などを含む。
【0207】
多数の適切な発現ベクターは、当業者に既知であり、その多くが市販で入手可能である。以下のベクターは一例として提供される;真核生物の宿主細胞:pXT1、pSG5(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40(Pharmacia)。しかし、任意の他のベクターが、宿主細胞に適合する限り使用されてもよい。
【0208】
利用された宿主/ベクターの系に依存して、構築プロモーター及び誘導プロモーター、転写エンハンサー要素、転写ターミネーターなどを含む、多くの適切な転写制御要素と翻訳制御要素の何れかは、発現ベクターに使用され得る(例えば、Bitter et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516−544を参照)。
【0209】
また、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、上述のようなもの)を含む細胞も、本開示に提供される。そのような細胞は、任意の生体に由来する細胞であり得る(例えば、細菌細胞、古細菌細胞、単細胞真核生物の細胞、植物細胞、藻細胞、真菌細胞(例えば酵母菌)、動物細胞、無脊髄動物(例えばショウジョウバエ、刺胞動物、棘皮動物、線虫など)由来の細胞、脊椎動物(例えば、魚、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物)由来の細胞、哺乳動物由来の細胞、げっ歯類由来の細胞、ヒト由来の細胞など)。
【0210】
<使用方法>
癌を処置、低減、及び/又は予防し;感染症(例えば慢性感染症)を処置、低減、及び/又は予防し;及び/又は免疫疾患或いは障害(例えば、炎症性疾患、免疫抑制に関連した疾病など)(例えば、多発性硬化症、関節炎など)を処置、低減、及び/又は予防する方法が、提供される。例えば、場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、免疫刺激剤(例えば、免疫強化のために使用される)として使用され得る。
【0211】
場合によっては、主題の方法は、個体の癌細胞の数の減少を結果としてもたらす。場合によっては、主題の方法は腫瘍の大きさの減少を結果としてもたらす。場合によっては、主題の方法は腫瘍の大きさの減少を結果としてもたらす。場合によっては、主題の方法は、第2の細胞上のPD−L1に対する第1の細胞上のPD−1の結合を減少させる。
【0212】
場合によっては、主題の方法は、個体を診断又は予後判定する方法である(例えば、個体の癌を診断及び/又は予後判定する)。例えば、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、造影剤として有用であり、例えば、PET標識及び/又は蛍光標識(例えば、本開示に別記されるようなもの)などの検知可能な標識に共役される場合に、それは診断/予後の試薬などの様々な目的のために使用され得る。例えば、場合によっては、主題の方法は、個体における癌(例えば、検知可能なPD−L1の存在、レベル、及び/又は位置が診断的(diagnostic)及び/又は予後徴候であり得る癌)を診断又は予後判定する方法である。
【0213】
治療剤(例えば、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチド)によるPD−1媒介性細胞シグナル伝達の阻害は、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞など)を活性化し、それ故、癌細胞増殖及び/又はウイルス感染を阻害するといった免疫細胞の機能を増強し、及びヒトの疾患を処置するために免疫監視機構と免疫記憶機能を回復することができる。主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドにより処置することができる、症状、病気、及び/又は疾患は、限定されないが、癌(癌腫、軟組織腫瘍、肉腫、奇形腫、黒色腫、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、固形腫瘍、中皮腫(MSTO)などを含むがこれらに限定されない癌の任意の形態);感染症(例えば、慢性感染症);及び/又は、免疫疾患又は障害(例えば、炎症性疾患)(例えば、多発性硬化症、関節炎など)を含む。例えば、場合によっては、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、免疫刺激剤(例えば、免疫強化のために使用される)として使用され得る。(例えば、PD−1、PD−L1、又はPD−L2シグナル伝達により誘導された、免疫抑制シグナルにより引き起こされる)免疫抑制に関与する任意の疾患、障害、又は病気(ailment)は、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドを使用して処置され得る。
【0214】
任意の癌は、主題の方法と組成物により処置されるのに適切な癌である。場合によっては、癌の癌細胞は、PD−L1を発現する(即ち、PD−L1発現に陽性である)。場合によっては、癌の癌細胞はPD−L1を発現しないが、しかし、そのような癌は、(例えば、高親和性PD−1模倣ポリペプチドによる免疫強化により)主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドで今なお処置され得る。
【0215】
本明細書で使用されるように、「癌」は、限定されないが、固形腫瘍癌(例えば、肺、前立腺、乳房、膀胱、結腸、卵巣、膵臓、腎臓、肝臓の癌、神経膠芽腫、髄芽細胞腫、平滑筋肉腫、頭部と頸部の扁平上皮癌、黒色腫、神経内分泌癌など)や液体の癌(例えば、血液の癌);細胞腫;軟組織腫瘍;肉腫;奇形腫;黒色腫;白血病;リンパ腫;および、微小残存病変を含む脳癌と、原発性腫瘍と転移性腫瘍の両方を含む、任意の形態の癌を含んでいる。任意の癌も主題の方法と組成物によって処置されるのに適切な癌である。場合によっては、癌細胞はPD−L1を発現する。場合によっては、癌細胞はPD−L1を発現しない(例えば、こうした場合、処置されている個体の免疫系の細胞はPD−L1を発現する)。
【0216】
細胞腫は上皮組織で生じる悪性腫瘍である。上皮細胞は身体の外表面を覆い、内部空洞を覆い、腺性組織の内層を形成する。細胞腫の例としては、限定されないが、腺癌(腺(分泌)細胞中で始まる癌)、例えば、乳房、膵臓、肺、前立腺、および結腸の癌は腺癌であり得る;副腎皮質癌;肝細胞癌;腎細胞癌;卵巣癌;上皮内癌;腺管癌;乳癌;基底細胞癌;扁平上皮癌;移行上皮癌;結腸癌;上咽頭癌;多胞性嚢胞性腎癌;燕麦細胞癌;大細胞肺癌;小細胞肺癌;非小細胞肺癌;などが挙げられる。細胞腫は、前立腺、膵臓、結腸、脳(通常、第2転移として)、肺、乳房、皮膚などで見られる。
【0217】
軟組織腫瘍は、結合組織に由来するまれな腫瘍の非常に多様な群である。軟組織腫瘍の例としては、限定されないが、胞状軟部肉種;血管腫様線維性組織球腫;軟骨粘液線維腫;骨格の軟骨肉腫;骨格外の粘液性軟骨肉腫;明細胞肉腫;線維形成性小円形細胞腫瘍;隆起性皮膚線維肉腫;子宮内膜間質腫瘍;ユーイング肉腫;線維腫症(デスモイド);乳児性の繊維肉腫;消化管間質腫瘍;骨巨細胞腫;腱滑膜巨細胞腫;炎症性筋線維芽細胞性腫瘍;子宮平滑筋腫;平滑筋肉腫;脂肪肉腫;典型的な脂肪腫;紡錘細胞または多形性脂肪腫;異型脂肪腫;軟骨様脂肪腫;十分に分化した脂肪肉腫;粘液性脂肪肉腫/円形細胞脂肪肉腫;多形態脂肪肉腫;粘液性悪性線維性組織球腫;高悪性度悪性線維性組織球腫;粘液線維肉腫;悪性末梢神経鞘腫;中皮腫;神経芽腫;骨軟骨腫;骨肉腫;原始神経外胚葉性腫瘍;胞巣状横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;良性または悪性のシュワン腫;滑膜肉腫;Evan腫瘍;結節性筋膜炎;デスモイドタイプ線維腫症;単発性線維性腫瘍;隆起性皮膚線維肉腫(DFSP);血管肉腫;類上皮性血管内皮腫;腱滑膜巨細胞腫(TGCT);色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS);繊維性異形成症;粘液線維肉腫;線維肉腫;滑膜肉腫;悪性末梢神経鞘腫;神経線維腫;および、軟組織の多形腺腫;ならびに、繊維芽細胞、筋線維芽細胞、組織球、血管細胞/内皮細胞および髄鞘細胞に由来する腫瘍形成が挙げられる。
【0218】
肉腫は、間充織起原の細胞、例えば骨または身体の軟組織、において生じる珍しい型の癌である。軟組織には軟骨、脂肪、筋肉、血管、線維組織または他の接続組織や支持組織を含む。異なる型の肉腫は、どこで癌を形成するかに基づく。例えば、骨肉腫は骨で形成され、脂肪肉腫は脂肪で形成され、そして横紋筋肉腫は筋肉で形成される。肉腫の例は、限定されないが次のものを含む:アスキン腫瘍;ブドウ状肉腫;軟骨肉腫;ユーイング肉腫;悪性血管内皮腫;悪性シュワン腫;骨肉腫;および軟部組織肉腫(例えば胞状軟部肉種;血管肉腫;葉状嚢胞性肉腫;隆起性皮膚線維肉腫(DFSP);硬性線維腫;線維形成性小円形細胞腫瘍;類上皮肉腫;骨外性軟骨肉腫;骨外性骨肉腫;線維肉腫;胃腸間質性腫瘍(GIST);血管周囲細胞腫;血管肉腫(hemangiosarcoma)(より一般に血管肉腫(angiosarcoma)と呼ばれる);カポジ肉腫;平滑筋肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;悪性末梢神経鞘腫(MPNST);神経線維肉腫;滑膜肉腫;未分多形肉腫など)。
【0219】
奇形腫は、いくつかの異なる種類の組織(例えば、3つの胚葉:内胚葉、中胚葉および外胚葉の由来のいずれかの及び/又はすべての組織を含み得る)を含むであろう一種の胚細胞腫瘍である。奇形腫は、例えば、毛、筋肉および骨を含む。奇形腫は、女性における卵巣、男性における精巣および、子供における尾骨において最も頻繁に生じる。
【0220】
黒色腫は、メラノサイト(色素メラニンを作る細胞)において発生する癌の形態である。それはホクロ(皮膚メラノーマ)において発生するかもしれないが、目または腸のような他の着色された組織でも発生し得る。
【0221】
白血病は、骨髄のような造血組織で始まる癌であり、また多くの異常な血液細胞を生成し血流に流し込む原因になる。例えば白血病は、血流において通常成熟する骨髄由来細胞を起源とすることができる。白血病は、疾患がどれくらいの速さで発達し進行するか(例えば、急性対慢性)、影響を受ける白血球の種類(例えば、脊髄性対リンパ性)に基づき名づけられる。骨髄性白血病は、また骨髄性白血病もしくは骨髄芽球性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病は、リンパ芽球性白血病もしくはリンパ性白血病とも呼ばれる。リンパ性白血病細胞はリンパ節に集まり肥大し得る。白血病の例は、限定されないが次のものを含む:急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)および慢性リンパ性白血病(CLL)。
【0222】
リンパ腫は、免疫系の細胞において発生する癌である。例えばリンパ腫は、リンパ系において通常成熟する骨髄由来細胞を起源とすることができる。リンパ腫瘍には2つの基本的分類がある。1つはホジキンリンパ腫(HL)であり、これはリード−ステルンベルグ細胞と呼ばれる一種の細胞の存在により特徴づけられる。現在、6つの認知されたHLの種類がある。ホジキンリンパ腫の例は、次のものを含む:結節性硬化症の古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、混合細胞型CHL、リンパ球減少性CHL、リンパ球豊富型CHLおよび結節性リンパ球優位型HL。
【0223】
他の分類のリンパ腫は非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、これは免疫系細胞の癌の大きく多様な群を含む。非ホジキンリンパ腫は、さらに遅発性の(ゆっくり成長する)経過がある癌と、侵攻性の(早く成長する)経過があるものに分けることができる。現在、61の認知されたNHLの種類がある。非ホジキンリンパ腫の例は、限定されないが次のものを含む:エイズ関連リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、バーキット様リンパ腫(小型非切れ込み核細胞性リンパ腫)、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、悪性皮膚T細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、腸疾患型T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、肝脾のガンマ・デルタT細胞リンパ腫、T細胞白血病、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、鼻部T細胞性リンパ腫、小児リンパ腫、末梢T細胞性リンパ腫、中枢神経原発リンパ腫、トランスフォームしたリンパ腫、治療に関連したT細胞リンパ腫およびワルデンストローム・マクログロブリン血症。
【0224】
脳腫瘍は、脳組織のいずれかの癌を含む。脳腫瘍の例は、限定されないが次のものを含む:神経膠腫(例えばグリア芽腫、星状細胞腫、希突起神経膠腫、脳室上衣細胞腫など)、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽細胞腫)、等。
【0225】
本明細書で使用されている用語の「感染症」は、感染病原体(例えば、被験体は細胞内病原体感染症、例えば、慢性細胞内病原体感染症を有する)により感染した生物体(すなわち被験体)の少なくとも1個の細胞におけるあらゆる状態を指す。本明細書で使用されている用語の「感染病原体」は、感染した生物体の少なくとも1個の細胞においてPD−L(PD−L1及び/又はPD−L2)発現(例えば増大したPD−L発現)を誘導する外来の生物学的存在(すなわち病原体)を指す。例えば感染病原体は、限定されないが細菌、ウイルス、原生動物、及び真菌を含む。細胞内病原体は、特に興味深い。感染症は感染病原体により引き起こされた障害である。幾つかの感染病原体は、ある条件の下では認識し得る症状や疾患を引き起こさないが、変化した条件の下では症状または疾患の原因となる可能性がある。主題となる方法は、慢性的な病原体感染の処置において使用され得る。例えば、該病原体感染は、限定されないが以下を含む。ウイルス感染(例えばレトロウイルス、レンチウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヒトパピローマウイルス、等);細胞内の細菌感染(例えばMycobacterium、Chlamydophila、Ehrlichia、Rickettsia、Brucella、Legionella、Francisella、Listeria、Coxiella、Neisseria、Salmonella、Yersinia sp.、Helicobacter pylori等);また細胞内の原生動物病原体(例えばPlasmodium sp.、 Trypanosoma sp.、 Giardia sp.、 Toxoplasma sp.、 Leishmania sp.等)。
【0226】
主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドを使用し処置し得る感染症は、限定されないが以下を含む。:HIV、インフルエンザ、ヘルペス、Giardia、Malaria、Leishmania;ウイルス肝炎(A、B及びC)、ヘルペスウイルス(例えばVZV、HSV−1、HAV−6、HSV−2、またCMV、エプスタイン−バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、デング熱ウイルス、乳頭腫ウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスによる病原性の感染症、細菌クラミジア、リケッチア性細菌、mycobacteria、staphylococci、streptococci、pneumonococci、meningococciとconococci、klebsiella、proteus、serratia、pseudomonas、E.coli、legionella、diphtheria、salmonella、bacilli、ジフテリア、salmonella、bacilli、コレラ、テタヌス、ボツリスム、炭疽、ペスト、レプトスピラ症、及びライム病細菌による病原性の感染症、菌類Candida(albicans、krusei、glabrata、tropicalis、など)、Cryptococcus neoformans、Aspergillus(fumigatus、niger、など)、Mucorales属(mucor、absidia、rhizophus)、Sporothrix schenkii、Blastomyces dermatitidis、Paracoccidioides brasiliensis、Coccidioides immitis及びHistoplasma capsulatumによる病原性の感染症、そしてEntamoeba histolytica、Balantidium coli、Naegleriafowleri、Acanthamoeba sp.、Giardia lambia、Cryptosporidium sp.、Pneumocystis carinii、Plasmodium vivax、Babesia microti、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzi、Leishmania donovani、Toxoplasma gondi、及び/又はNippostrongylus brasiliensisなど寄生生物による病原性の感染症。
【0227】
いくつかの実施形態において、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−L(例えばPD−L1及び/又はPD−L2)により誘導された阻害シグナルを遮断することができ、その結果として、免疫細胞の活性化を可能にする。したがって、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、免疫細胞、特に細胞表面上でPD−1を発現する免疫細胞によるサイトカイン及び/又はケモカイン生成を促進及び/又は刺激することができる。例えば、免疫細胞と相互に作用する免疫複合体(すなわち抗原−抗体複合体)の存在は、免疫細胞を活性化し、また免疫細胞によるサイトカイン生成を誘導する。しかし、この活性化(刺激)は、第2の細胞の表面上のPD−Lによって阻害され得る。主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、免疫細胞の免疫応答を変えるために使用され得る、またその結果として免疫疾患または障害(例えば免疫抑制に関連した障害)を処置または予防するのに有用かもしれない。言いかえれば、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは免疫系をシミュレート薬剤として免疫強化(免疫系の刺激)のために使用され得る。
【0228】
上記の方法は、高親和性PD−1模倣ポリペプチドと薬物(例えば化学療法薬、腫瘍特異抗体、抗炎症薬、感染症を処置する薬物、免疫刺激剤すなわち免疫増強剤、免疫系を刺激する薬剤など)の組み合わせを限定することなく、治療上有効な量または有効投与量を投与する工程を含み、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドを、処置を必要とする固体に投与する工程を含む。
【0229】
例えば癌の処置のための本開示の治療用薬剤の有効量は、投与の方法、標的部位、患者の生理学的な状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬、処置は予防的か治療的かどうかを含む様々な要因に依存して異なる。一般的に患者はヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどのコンパニオン・アニマル、ウサギ、マウス、ラットなどの実験用哺乳動物なども処置され得る。処置投与量は安全性と効果を最適化するように滴定され得る。
【0230】
いくつかの実施形態において治療上の投与量は、宿主体重の約0.0001〜100mg/kg、およびより一般的には0.01〜5mg/kgで範囲であり得る。例えば、投与量は、体重あたり1mg/kgまたは体重あたり10mg/kg、あるいは1−10mg/kgの範囲内になり得る。典型的な処置レジメは、2週ごとに1度、あるいは月に1度、あるいは3〜6か月に1度の投与を含む。本開示の治療用薬剤は、一般的に複数回投与される。1度の投与の間隔は、週1度、月1度、あるいは年1度であり得る。また間隔は、患者の治療用薬剤の血中濃度を測定することによって示されるように不規則になり得る。代替的に、本開示の治療用薬剤は持続放出製剤として投与され得る。その場合には、それほど頻繁な投与は必要ない。投与量と頻度は、患者のポリペプチドの半減期に依存し異なる。
【0231】
予防的な利用において、比較的少ない投与量は、長期にわたって比較的頻繁ではない間隔で投与され得る。残りの生涯にわたって処置を受け続ける患者もいる。他の治療利用において、疾患の進行が縮小するか終結するまで、および好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的多い投与量は、時に必要とされる。その後、本特許では予防的な治療法が施され得る。
【0232】
さらに他の実施形態において、本開示の方法は、上記の議論された状態、病気及び/又は疾患(例えばリンパ腫、白血病、癌腫、黒色腫、グリア芽腫、肉腫、骨髄腫、等を含む癌の腫瘍成長、腫瘍転移または腫瘍浸潤)のいずれかの処置、減少または予防する工程を含む。予防的な利用のために、生化学的な、組織学的な、及び/又は行動学的な疾患の症状、疾患の発達の間に提示される合併症と中間の病理学的な表現型を含む、疾患のリスクを除去または軽減するか、重症度を和らげるか、または疾患の発症を遅らせるために十分な量を、疾患を患い易いか、さもなければ疾患の他のリスクがある患者に、医薬品組成物または薬物は投与される。
【0233】
主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、インビトロとインビボで疾患治療の経過を監視するのに使用され得る。例えば、PD−L(PD−L1及び/又はPD−L2)を発現する細胞、特に慢性感染細胞及び/又はPD−L1を発現する癌細胞の数の増減を測定することによって、疾患の改善を目的とした特定の治療レジメが効果的かどうかを決定することができる。前記目的のために、高親和性PD−1模倣ポリペプチドは検出可能に標識化され得る。
【0234】
主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、液相中で利用されるか、又は固体相担体として利用され得る結合アッセイにおいてインビトロで使用され得る。さらに、これらの免疫アッセイのポリペプチドは、様々な方法で検出可能に標識化される。高親和性PD−1模倣ポリペプチドを利用できるアッセイの型の例は、FACS、MACS、組織化学、直接的または間接的な形式どちらかの競合的または非競合的免疫アッセイなどのフローサイトメトリーである。高親和性PD−1模倣ポリペプチドを使用するPD−Lの検知は、生理学的サンプルに関する組織学的アッセイを含む、順、逆のどちらか、または同時の様式で実行されるアッセイとして行われ得る。
【0235】
主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、様々な担体に結合し、PD−L(PD−L1及び/又はPD−L2)を発現する細胞の存在を検出するために使用され得る。周知の担体の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然と修飾されたセルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトを含む。担体の性質は、本開示の目的のために可溶性または不溶性であり得る。当業者は、結合タンパク質のために他の適切な担体として認識するだろう、または日常の実験などを使用して確認することができるだろう。
【0236】
当業者に知られた様々な異なる標識と標識化の方法がある。本開示で使用され得る標識のタイプの例は、限定されないが、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド金属、ナノ粒子、化学発光化合物およびバイオ発光化合物を含む。当業者は、本開示のポリペプチドに結合する他の適切な標識として認識するだろう、または日常の実験など使用して確認することができるだろう。更に、本開示のポリペプチドへのこれら標識の結合は、当業者が通常有する技術的範囲と使用して行われ得る。
【0237】
体液と組織においてPD−Lがある時、PD−Lは、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドにより検出されるかもしれない。検出可能な量のPD−Lを含んでいる任意のサンプルは使用され得る。サンプルは、尿、唾液、脳脊髄液、血液、血清などのような液体、または組織、便、生検などのような半固形物、または代替的に組織診に一般的に使用されるような固体の組織であり得る。
【0238】
結果的により高い好感度をもたらすであろう他の標識技術は、低分子量ハプテンにポリペプチドを結合することから成る。その後、これらのハプテンは、第2の反応によって明確に検出することができる。例えば、アビジンと反応するビオチン、または特異的な抗ハプテン抗体と反応するジニトロフェノール、ピリドキサール、またはフルオレセインのようなハプテンを使用することは一般的である。
【0239】
高親和性PD−1模倣ポリペプチドの画像化接合体は、一連の1回を超える投与として被験体に投与され得る。画像化接合組成物は、可視化技術の前の適切な時間に投与されるだろう。例えば、直接の目視検査前の1時間以内の投与は、適切であり得るか、あるいはPETまたはMRIスキャンの前12時間以内の投与が適切かもしれない。しかし、注意するべきことがある。それは、画像化化合物は患者の系から結局は除去されるであろうため、投与と可視化の間にあまり多くの時間を空けることはできない。
【0240】
処置のための(例えば癌、慢性感染症、免疫抑制、炎症、等の処置のための)組成物は、非経口、局所的、静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、もしくは筋肉内への手段により投与され得る。典型的な投与経路は静脈内かまたは腫瘍内である、しかし他の経路も等しく有効になり得る。
【0241】
組成物は、溶液または懸濁液のいずれかの注入可能なものとして調製され得る;注入前の液体ビヒクル中の溶液もしくは懸濁液に適切な固体形態も、また調製され得る。上に議論されるように、またその調剤は、リポソームまたはアジュバント効果を高めるためのポリラクチド、ポリグリコール酸あるいはコポリマーのようなミクロ粒子状物質の中で乳化されるかカプセル化されることもあり得る。Langer,Science 249:
1527, 1990 and Hanes, Advanced Drug Delivery Reviews 28:97−119, 1997.。本開示の薬剤は、有効成分の持続放出または拍動性放出を可能にするような方式で調剤され得るデポ注射またはインプラントの調製の形で投与され得る。医薬組成物は、無菌、実質的に等張なものとして、そしてアメリカ食品薬品局のすべての医薬品適正製造基準(GMP)の規則に完全に従って、一般的に調剤され得る。
【0242】
本明細書に記載されている高親和性PD−1模倣ポリペプチドの毒性は、細胞培養または実験動物における標準の製薬手順により、例えばLD
50(個体群の50%に対して致死的な量)またはLD
100(個体群の100%に対して致死的な量)によって決定され得る。有毒と治療効果の間の用量比は、治療指数である。細胞培養アッセイと動物研究から得たデータは、ヒトで使用に毒性のない投与量範囲を処方するために使用され得る。本明細書に記述されたタンパク質の投与量は、好ましくは毒性がほとんどない又は全くない有効量を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、利用される剤形及び利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。正確な製剤、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医者によって選択され得る。
【0243】
本開示の範囲内においては、本開示の組成物(例えば高親和性PD−1模倣ポリペプチドとその製剤)と使用説明書を含むキットがある。キットは、少なくとも1つの付加的な試薬、例えば化学療法薬、抗腫瘍抗体、抗感染症薬物、例えば抗ウイルス薬、をさらに含み得る。キットは、典型的にキットの内容物の意図した使用を示すラベルを含む。用語ラベルは、そのキット上、そうでなければキットと共に提供される、任意の記述または記録される材料を含む。
【0245】
野生型ヒトPD−1タンパク質
(PDCD1、CD279、PD1、SLEB2、hPD−1、hPD−lおよびhSLE1としても知られている)
(太字:膜貫通ドメイン、アミノ酸168−191;下線:アミノ酸26−147)
【0247】
野生型ヒトPD−1ポリペプチドのフラグメント(R87、N91およびR122は下線が引かれている)
(主題のPD−1模倣ポリペプチドの例; 「野生型フラグメントのPD−1の模のポリペプチド」)
【0249】
HAC−I PD−1(位置41でのイソロイシンを備えた高親和性コンセンサス)
【0251】
HAC−V PD−1(位置41でのバリンを備えた高親和性コンセンサス)
【0253】
G2 4−1(世代2、クローン4−1)
【0291】
多量体化された高親和性PD−1模倣ポリペプチド(例えば改善された薬物動態のための)
(すなわち多量体化ドメインへの融合)
HAC−V「ミクロボディ」
(ヒンジ領域を含むヒトIgG1 CH3ドメインに融合されたHAC−V PD−1)
【0293】
HAC−V Fc融合
(ヒトIgG Fcに融合したHAC−V PD−1;ここでは(他のFc領域と比較した)低下したエフェクター機能のためのヒトIgG4及びfabアーム交換を防ぐためのS228P変異;PD−1変異体とFcの間のAAAリンカーが含まれる)
【0295】
「弱毒化された」サイトカインへの融合:
例:HAC−IL2(F42a/D20T)
【0297】
41BB―アゴニストへの融合
例:HAC−41BBL
【0299】
CD40−アゴニストへの融合
例:HAC−CD40L
【0301】
BTLA及び/又はCD160の阻害剤への融合
例:HAC−BTLAデコイ:
【0303】
TIM3及び/又はCEACAM1の阻害剤への融合:
例:HAC−TIM3デコイ:
【0305】
システイン変異体(例えばPET標識化のための)
HAC−V N91C
【0311】
ここで完全に充分に本発明は、様々な変化と修正は本発明の精神または範囲から逸脱することなくなされる得ることが、当業者にとって明白になるでしょう。
【0312】
<実験>
以下の実施例は、本発明の作成及び使用の方法の完全な開示と記載を当業者に提供するように掲載されるものであり、本発明者が本発明と見なすものの範囲を限定するようには意図されておらず、以下の実験が、実行される全ての実験または唯一の実験であることを表わすようには意図されていない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関する正確さを確かなものとする努力がなされているが、実験的な誤差及び偏差もいくらか含まれるはずである。他に示されない限り、部分(parts)は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧(atmospheric)であるか又はそれに近いものである。
【0313】
本明細書で引用される全ての公報および特許出願は、個々の公報または特許出願が引用によって組み込まれるよう具体的且つ個別に示されたものであるかのように、引用によって本明細書に組み込まれる。
【0314】
本発明は、本発明の実施のための好ましい様式を含むために、本発明者によって発見または提案された特定の実施形態に関して記載されている。本開示に照らして、多数の修正および変更が、本発明の意図した範囲から逸脱することなく例証される特定の実施形態においてなされ得ることが当業者によって認識される。例えば、コドン縮重が原因で、タンパク質配列に影響を与えることなく、元々の(underlying)DNA配列において変更がなされ得る。さらに、生物学的な機能等価性の考慮が原因で、種類または量の点で生物学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造において変更がなされ得る。すべてのそのような修正は、本明細書に添付の請求項の範囲内に含まれるように意図される。
【0315】
<実施例1>
以下の実施例は、PD−1とそのリガンドPD−L1との間の相互作用を有効に拮抗する高親和性PD−1模倣ポリペプチドの生成を実証している。高親和性PD−1模倣ポリペプチドは、PD−1抗体およびPD−L1抗体としての同じ指標のための治療薬(例えば、現在臨床試験中であるもの)として使用され得る。
【0316】
図1Aは、T細胞の表面上のPD−1に特異的に結合して、T細胞の活性化を阻害し、それにより、腫瘍細胞が免疫系によって破壊を回避することを可能にする、腫瘍細胞の表面上のPD−L1を例証する概略図である。
図1Bは、癌細胞の表面上のPD−L1に特異的に結合し、それにより、T細胞活性化を阻害する癌細胞が能力を低下させ、続いて、免疫応答を回避する癌細胞の能力を低下させる、主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチドを例証する概略図を示す。
【0317】
図2Aは、PD−1(右上)とPD−L1(左下)との相互作用の構造表現を示す。PD−L1との接触部位に位置するPD−1の残基は、球体として表わされる。(野生型アミノ酸残基)を含むPD−1模倣ポリペプチドを、酵母細胞の表面上にディスプレイされた変異したポリペプチドの第一世代ライブラリ(世代1)を生成するためにPD−L1と接触する残基で変異誘発した。その後、結合に基づく選択を、100nのビオチン化したヒトPD−L1を使用して実行した。PD−L1に対してさらに大きな親和性を有するPD−1模倣ポリペプチドに対してスクリーニングするために、変異したポリペプチドの第二世代ライブラリ(世代2)を生成し、変異誘発を収束位置に集中させる。世代2ライブラリをスクリーニングするために、1nMのビオチン化したヒトPD−L1を使用した。スクリーニングからの結果に関して
図2Bを参照する。
【0318】
図3の表は、生成された操作した変異体(主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチド)の配列を反映している。「G1」変異体は世代1ライブラリからのものであり、「G2」変異体は世代2ライブラリからのものである(
図2A−2Bを参照)。各番号を付けた行は、SEQ ID NO:2として明記される天然PD−1模倣ポリペプチドに相対的な各々の示された残基に対するアミノ酸位置を表わす(SEQ ID NO:2のポリペプチドは、野生型PD−1配列を含むが、膜貫通ドメインを欠き、野生型PD−1の第1の25のアミノ酸を欠く、PD−1模倣ポリペプチドである)。回収された各PD−1模倣ポリペプチドのために、野生型アミノ酸残基との相違が、各変異体に対して結果として生じる変異のための一文字コードで示される。PD−L1に対する測定された表面プラズモン共鳴(SPR)の親和性が、(測定されるときに)右で示される。回収された配列に基づいて、コンセンサスアミノ酸変異を含む、高親和性PD−1模倣ポリペプチドが生成され、「HAC」(高親和性コンセンサス)と呼ばれている。
【0319】
図4は、実行された(PD−L1への結合のための)結合実験からの2つの代表的な表面プラズモン共鳴(SPR)プロットを示す。(野生型ヒトPD−1配列を有する)天然PD−1模倣ポリペプチドのための解離半減期は、1秒未満であった。対照的に、高親和性コンセンサスPD−1変異体HAC−I(主題の高親和性PD−1模倣ポリペプチド)のための解離半減期は、42.4分であり、したがって、高親和性PD−1模倣ポリペプチドが、天然PD−1模倣ポリペプチドよりもPD−L1へのはるかに高い親和性を有して結合されたことが実証されている。
【0320】
その後、天然PD−1模倣ポリペプチドと比較した、生成された高親和性PD−1模倣ポリペプチドの幾つかの結合特性をさらに試験するための実験を行った。
図5A−5Cは、生成した高親和性PD−1模倣ポリペプチドが、PD−L1に強力且つ特異的に結合したことを示す。酵母ディスプレイ:(
図5A)ヒトPD−L1、(
図5B)ヒトPD−L2、または(
図5C)マウスPD−L1を、標識化した天然PD−1模倣ポリペプチドのストレプトアビジン四量体(野生型ヒトPD−1配列を有し、Alexa647に結合された対照PD−1模倣ポリペプチド)を用いて染色した。PD−L1への標識化した天然PD−1模倣ポリペプチドの結合を、標識化していない高親和性PD−1模倣ポリペプチドの可変濃度(X軸上で示される濃度)と競合させた。
【0321】
(野生型ヒトPD−1配列を有する)標識化していない天然PD−1模倣ポリペプチドは、PD−1/PD−L1相互作用を拮抗した。高親和性PD−1模倣ポリペプチド(HAC−V PD−1、G2 4−1およびG2 4−2)は、天然PD−1模倣ポリペプチドよりもはるかに低い濃度でPD−1/PD−L1の相互作用を強力に拮抗し、それ故、それらが実際に高親和性PD−1模倣ポリペプチドであることが実証されている(
図1A)。高親和性PD1模倣ポリペプチドは、PD−1:PD−L2の相互作用の拮抗作用を実証しなかったが、天然PD1模倣ポリペプチドは、PD−1:PD−L2の相互作用を拮抗した。したがって、これら特定の高親和性PD1模倣ポリペプチドは、天然PD1模倣ポリペプチドのPD−L1に対する親和性と比較して、PD−L1に対する親和性を増大させたが、天然PD1模倣ポリペプチドのPD−L2に対する親和性と比較して、PD−L2に対する親和性を減少させた(
図1B)。生成された高親和性PD1模倣ポリペプチドは、マウスPD−L1(
図5C)への結合を競合することができた。
【0322】
その後、ヒト癌細胞に対してPD−L1を拮抗する生成された高親和性PD−1模倣ポリペプチドの能力を試験した。
図6Aは、24時間の2000U/mLのヒトインターフェロン−ガンマ(IFNγ)での刺激による誘導後にヒト黒色腫細胞株SKMEL28上で、PD−L1が発現されたことを実証している(PD−L1染色を、誘導(プラスIFNγ)条件対非誘導(マイナスIFNγ)条件下でフローサイトメトリーによって評価した)。IFNγ刺激したSKMEL28細胞を、標識化していない高親和性のPD−1模倣ポリペプチドの可変濃度(X軸上で示される濃度)で、標識化した天然PD−1模倣ポリペプチドのストレプトアビジン四量体(野生型ヒトPD−1配列を有し、Alexa647に結合された対照PD−1模倣ポリペプチド)を用いて染色した(
図6B)。(野生型ヒトPD−1配列を有する)標識化していない天然PD−1模倣ポリペプチドは、SKMEL28細胞への標識化した天然PD−1模倣ポリペプチドの結合を防ぐこと(防ぐために高濃度を必要とする)に有効ではなかった(IC
50=8.2μM)。対照的に、HAC−V(高親和性PD−1模倣ポリペプチド)は、標識化した天然PD−1模倣ポリペプチドの結合を強力に阻害した(210pMのIC
50)。HAC−MBH(ヒトIgG1のCH3ドメインへと融合した、HAC−V、高親和性PD−1模倣ポリペプチド)は、さらに増強された効能で標識化した天然PD−1模倣ポリペプチドの結合を阻害した(55pMのIC
50)。
【0323】
<実施例2:最適化された免疫療法とimmunoPET画像化のための高親和性PD−1変異体の操作(幾つかのデータは実施例1と共有される)>
免疫チェックポイントPD−1を介するシグナル伝達は、抗腫瘍免疫応答を低下させることによる腫瘍進行を可能にする。PD−1とモノクローナル抗体を有するそのリガンドPD−L1との間のシグナル伝達軸の治療的阻害は、癌の処置における著しい臨床的効果を示した。しかし、抗体は、乏しい組織/腫瘍浸透度および免疫細胞を枯渇させる有害なFcエフェクター機能を含む、このセッティングにおけるその効能を縮小しかねない固有の制限がある。PD−1/PD−L1に向けられた免疫療法が、より小さな、非抗体治療薬で改善され得るかを判定するために、酵母表面ディスプレイによる定向進化を本明細書で使用し、PD−1細胞外ドメインをPD−L1の高親和性(100pM)競合的アンタゴニストとして操作した。抗PD−L1モノクローナル抗体とは対照的に、高親和性PD−1は、末梢エフェクターT細胞の枯渇を誘導することなく優れた腫瘍浸透を実証した。これらの利点と一致して、同系CT26腫瘍モデルにおいて、高親和性PD−1は、小さな腫瘍(〜50mm
3)および大きな腫瘍(>150mm
3)の両方を処置するのに有効であったが、一方で抗PD−L1抗体の活性は、大きな腫瘍に対して完全に抑止された。さらに、高親和性PD−1を、放射標識し、PET画像化トレーサーとして適用して、生きたマウスにおいてPD−L1陽性腫瘍とPD−L1陰性腫瘍を効率的に区別し、侵襲的生検および組織学的分析の代案方法を提供する。これらの結果は、増強された癌免疫療法および免疫診断に対する、小さな、非抗体治療薬の好ましい薬理を強調している。
【0324】
<結果>
PD−L1を拮抗する高親和性PD−1変異体の定向進化。PD−L1(8.2μMのK
D)
18に対するその適度の親和性を考慮すると、野生型PD−1細胞外ドメインは、治療上の観点でPD−1:PD−L1の相互作用を競争的に拮抗するには不十分な候補である。それ故、PD−L1に対するPD−1の親和性を、酵母表面ディスプレイでの定向進化を使用して増強させた。操作戦略は、2ライブラリの(two−library)アプローチを利用した。親和性の大きな増加を与える変異「ホットスポット」を特定するために、第1ライブラリを使用し、第2ライブラリは、第1ライブラリに由来する良性変異の最適な組み合わせを判定する働きをした。
【0325】
最初の「第一世代」ライブラリを設計するために、ネズミPD−1(mPD−1)とヒトPD−L1(hPD−L1)
19との間の複合体の結晶構造を使用して、無作為化に関するPD−L1との接触界面でヒトPD−1(hPD−1)における22の対応する残基を特定した(
図7A;
図12A−12B)。このライブラリは、酵母の表面上にディスプレイされ、組み換え型の、ビオチン化したhPD−L1細胞外ドメインを選択試薬として使用して、4ラウンドの選択を実行した(
図7B、「世代1」)。表面プラズモン共鳴によって測定されるように、残りのクローンの生物物理学的特徴づけは、hPD−L1に対する親和性の400乃至500倍の増加を示した(
図7C)。しかし、クローンは乏しい生化学的挙動を示し、発現量の減少および凝集傾向があった。変異体の配列の検査(
図7C)は、1クローン当たり16の変異の平均を示し、無作為化された位置のいくつかが、変異の小さなセット(例えばV39、N41)に収束し、一方で、他の位置は、完全に相違した(例えば、S48、D52)か、または逆に、元の野生型残基(例えば、P105、E111)を厳密に優先した(a strict preference)ようであった。結果は、10
8の酵母形質転換体とともにサンプリングされたライブラリの非常に大きな理論的多様性(およそ10
20)を考慮して予期されるように、「第一世代」変異体が、良性変異、非機能性のパッセンジャー変異、および有害突然変異の混合物を含む傾向にあることを示唆した。
【0326】
したがって、「第二世代」ライブラリが不必要且つ有害な置換を排除するように作成されたが、増強された親和性を与える変異の組み合わせを同時に最適化していた(
図13A−13B)。ライブラリを、野生型から離れて収束するように見え、PD−1細胞外ドメイン内の「コア」位置で変更を導入したこれらの位置上に集中させた(
図7A)。5ラウンドの選択を通して、PD−L1に強く結合した変異体を得た(
図7B、「世代2」)。野生型hPD−1と比較して、選択された変異体は、15,000−40,000倍増強された親和性を有するhPD−L1と結合し、8つの接触残基および2つのコア残基を含む10のアミノ酸置換基のコンセンサス配列上への収束への強い傾向を示した(
図7C)。位置41でのイソロイシンまたはバリン(それぞれ、名付けられたHAC−IおよびHAC−Vと呼ばれる)のみが異なる、この「高親和性コンセンサス」(HAC)PD−1の2つのバージョンが生成され、親和性または生化学的挙動による区別がつかないことが分かった。HAC−PD−1変異体の両方が、容易に発現され得、単量体であり、およそ100pMのK
D値を有してhPD−L1と結合した(
図7C)。他の高親和性変異体と同様に、親和性のこの増加は、野生型のhPD−1:hPD−L1の相互作用の1秒未満と比較して、オフレートの劇的な低下によって大きく促進され、およそ40分の解離半減期がもたらされる(
図8A)。
【0327】
癌細胞上でPD−L1を拮抗する操作されたPD−1変異体が能力を評価するために、競合結合実験をヒトおよびネズミの黒色腫細胞株上で実行した。ヒトSK−MEL−28細胞上で、HAC−Vは、野生型PD−1(IC
50=8.2μM)と比較したときに、40,000倍の効能の増強となる、210pMのIC
50を有する野生型PD−1四量体の結合をブロックした(
図8B)。ヒトPD−L1を使用して選択を実行したが、HAC−Vもまた、野生型hPD−1(IC
50=2.6μM)と比較して、ネズミB16−F10細胞(IC
50=69nM)上のPD−L1の増強された遮断を示し、それにもかかわらず、ヒト細胞上のそのブロッキングに比べて効能が低下した(
図8B)。インビボの研究のための、mPD−L1をより効率的に拮抗することができるHAC−PD−1変異体を生成するために、HAC−Vの配列をヒトIgG1の二量体CH3ドメインに融合し、HAC「ミクロボディ」を作り出した(HACmb;
図14)。その二量体構造によって与えられた結合活性の増加によって、HACmbは、SKMEL28およびB16−F10の細胞上の、それぞれ、hPD−L1(IC
50=55pM)およびmPD−L1(IC
50=1.2nM)の両方を強力にブロックした(
図8B)。PD−1、PD−L2の第2リガンドのためのHAC−PD−1の交差反応性も特徴づけた。hPD−L2の細胞外ドメインをディスプレイする酵母に関する競合結合実験において、HAC−PD−1は、野生型PD−1(IC
50=2.5μM
図8B)と比較して、PD−1:PD−L2の相互作用を測定可能に阻害しなかった。まとめると、これらの結果は、HAC−PD−1がPD−L1を強力に且つ特異的に拮抗することができることを示した(およびそれ故、更なる操作のためのモジュラー足場(scaffold)としても有用であり得る)。
【0328】
腫瘍浸透およびT細胞枯渇試験。インビボでのHAC−PD−1のPD−L1結合および腫瘍浸透度を評価するために、ゲノム編集技術を使用して、mPD−L1発現に対して決定的に陰性であったか、またはmPD−L1に対して陰性であったがhPD−L1発現に対して構成的に陽性であった、マウス結腸癌株CT26の亜系統を生成した。これらのPD−L1陽性および陰性の細胞株は、蛍光標識した抗hPD−L1抗体または蛍光標識したHAC−PD−1タンパク質のいずれかでのインビボの染色によって容易に区別され得る(
図15A)。これらの操作した株を使用して、マウスにPD−L1陰性腫瘍およびhPD−L1陽性腫瘍を両側的に移植した。腫瘍が直径およそ1cmまで成長すると、蛍光標識した抗hPD−L1抗体と蛍光標識したHAC−PD−1の混合物を、 腹腔内注入によって全身に送達した。4時間後、対になった腫瘍を切開し、各薬剤による結合の程度を、蛍光顕微鏡法とFACS分析の両方を使用して評価した。
【0329】
すべてのPD−L1陰性腫瘍において、組織学的分析は、抗PD−L1抗体またはHAC−PD−1のいずれかによる検出可能な結合を明らかにせず、両方の薬剤の特異性を確証した(
図9A)。対照的に、hPD−L1陽性腫瘍における抗体とHAC−PD−1両方の結合が明確に観察されたが、著しく異なる分布であった。抗体関連の蛍光シグナルは、血管に近接している腫瘍および細胞の末梢領域に限定されたが、HAC−PD−1染色は広範囲であり、腫瘍内深くの領域まで及んだ(
図9Aおよび
図15B)。これらの定性的観察は、非酵素的な解離に続く対になったPD−L1陽性および陰性の腫瘍のFACS分析に支持された。抗体もHAC−PD−1も、PD−L1陰性腫瘍の細胞と認識できるほどには相互作用しなかった(
図9B)。しかし、hPD−L1発現する腫瘍において、多くの細胞がHAC−PD−1染色に対して陽性であり、相当な個体数が、抗PD−L1抗体およびHAC−PD−1結合の両方に対して陽性であった(
図9B)。対照的に、抗PD−L1抗体染色のみに対して陽性であった細胞は、あったとしてもごく少数であった(
図9B)。複数の実験にわたるこのシグナルの定量化は、HAC−PD−1結合(p<1×10
−4)の著しい利点を明らかにし、抗PD−L1抗体よりもHAC−PD−1によって平均で2倍を超える数の細胞が結合された(
図9C)。まとめると、これらのデータは、HAC−PD−1が腫瘍細胞上のPD−L1と結合することができた(さもなければ、抗体結合にアクセスできなかった)ことを例証している。
【0330】
そのより小さなサイズに加えて、HAC−PD−1はFcドメインを欠いており、それ故、抗体とは対照的に、それが循環するT細胞数の免疫媒介性の枯渇に寄与しないであろうことが説かれた。この仮説を試験するために、野生型Balb/cマウスに、同系結腸癌株CT26に由来する腫瘍を移植し、移植の14日後から、(mPD−L1へのその増強された結合のためにこの場合は使用される)PBS、抗PD−L1抗体、またはHACmbの毎日の処置を施した。処置の開始の72時間後に、抗PD−L1抗体を注入されたマウスは、循環する末梢血CD8+T細胞の15%の減少(p=0.011)を示した(
図9D)。PD−L1発現はCD4+およびCD8+の細胞の大多数上で検出可能であった(
図16)が、枯渇効果はCD8+T細胞に特有であり、CD4+区画(compartment)を残した(
図9D)。抗体とは対照的に、HACmbタンパク質による毎日の処置は、循環するT細胞レベル(
図9D)に対する検出可能な効果がなかったが、リンパ節T細胞に対するその効果はわずかにより複雑であった。血液中でのように、抗PD−L1抗体による処置は、CD8+T細胞の著しい枯渇につながった(
図9E、〜20%、p<1×10
−4)。しかしながら、効果がなかった血液中とは異なり、HACmbによる処置は、リンパ節におけるCD8+T細胞レベルのわずかな減少につながったが、抗PD−L1抗体よりも著しく少ない程度であった(
図9E、〜10%、p=0.022)。
この観察は、PD−1/PD−L1に向けられた薬剤が、Fc媒介性の枯渇の他に腫瘍へのT細胞移動のシミュレーションも含むT細胞動態に対する多面的効果を有し得ることを示唆している。
【0331】
同系腫瘍モデルにおけるHAC−PD−1の治療効果。HAC−PD−1薬剤がヒトおよびマウスのPD−L1両方を効果的に拮抗したことを考慮して、この遮断が、延長線上で(by extension)、抗PD−L1抗体の抗腫瘍効果を再生することができるかを試験した。野生型の、HAC−PD−1のインビボ効果の最初の試験として、抗PD−L1抗体に応答すると前に示された同系CT26腫瘍を免疫応答性Balb/cマウスに移植した。移植後7日目に、腫瘍が平均でおよそ50mm
3の大きさに達したときに、マウスを処置コホートに無作為化し、PBS、抗PD−L1抗体、またはHACmbによる毎日の注入を開始した(
図10A)。予想通り、PBS処置したマウスの腫瘍は急速に成長した(
図10B)。しかしながら、14日目までに、抗PD−L1またはHACmbのいずれかによる処置は、対照に比べて腫瘍成長を著しく遅らせた(
図10B、それぞれ、p=2×10
−4およびp<p<1×10
−4)。これらの2つの薬剤は、小腫瘍研究のほぼ同一の効果を示し、2つの治療群間に腫瘍成長の統計的差はなかった(
図10B、p=0.99)。これらのインビボでの治療結果から、比較的小さな腫瘍のセッティングにおいて、HACmbが、十分に検証された抗PD−L1モノクローナル抗体での処置と区別がつかないほど効果的であることが結論付けられる。
【0332】
初期実験の設計でのように、ネズミ癌モデルの多くの報告は、強い治療効果を実証するために、まさに早期の腫瘍の処置に依存する。しかしながら、HAC−PD−1の優れた組織浸透度と、循環するT細胞の逆効果の枯渇を誘導することなくPD−1:PD−L1の相互作用をブロックするその能力を考慮すると、抗体との比較におけるその利点が、より大きく、より問題のある腫瘍を処置しようとするときに最も明白であるかもしれないことが仮定された。この目的のために、実験を開始し、ここで、Balb/cマウスにCT26細胞を移植し、その腫瘍容積を毎日モニタリングした;個々の腫瘍が150mm
3の最小容積に達したとき、または前の実験の平均の開始時の大きさのおよそ3倍に達したときのみに、宿主マウスをコホートに無作為化し、処置を開始した。実験のプロトコルのこの単純な変更は、これらの薬剤の効力比較に対して甚大な効果があった。抗PD−L1抗体およびHACmbは、非常に小さなCT26腫瘍の処置において等価であった(
図10B)が、より大きな腫瘍の場合には、抗PD−L1抗体を毎日注入しても、PBS処置に対する測定可能な効果が示されなかった(
図10D、左、p=0.464)。全く対照的に、HACmbは、PBS処置したマウス(
図10D、右、p<1×10
−4)または抗体処置したマウス(
図10D、左、p<1×10
−4)のいずれと比較しても、研究の期間にわたって大きな腫瘍における腫瘍成長を著しく減少させた。
【0333】
次に、単独療法としてのHACmbの優れた効果が、組み合わせのセッティング(例えば、抗CTLA4抗体との)においても発揮されるかどうかを試験した。抗CTLA4抗体治療は、単独で、この大きな腫瘍モデルにおいて有効であり、PBS処置に比べて腫瘍の成長を遅らせた(
図10D、左および右、p<1×10
−4);しかし、抗PD−L1抗体と抗CTLA4抗体との併用治療は、抗CTLA4単独以上の付加的な利点をもたらさなかった(
図10D、左、p=0.756)。対照的に、HACmb(
図10D、p=0.012)、または抗CTLA4単独で(
図10D、p=0.006)と比較して、抗CTLA4とHACmbの組み合わせで処置したマウスは、著しくより小さな腫瘍を有していたため、HACmbは抗CTLA4治療を向上させた。
【0334】
要約すると、これらのインビボ研究は、HAC−PD−1が同系マウス腫瘍を処置するのに有効であることを実証している。重要なことに、結果は、腫瘍サイズの増大が抗PD−L1抗体の効能に偏った影響を与え(disproportionately affect)(実際には、腫瘍が一定のサイズ閾値を超えると効果がなくなる)、一方で、HAC−PD−1タンパク質が、困難且つより臨床的に現実的な腫瘍モデルにおいて効果的なままであることを例証している。したがって、この観察は、抗PD−1または抗PD−L1抗体が、PD−1:PD−L1遮断の最大の治療効果を十分には得ていないこと、および最適化された治療剤により更なる改善が可能であることを示唆している。
【0335】
64Cu放射標識したHAC−PD−1を用いる陽電子放射断層撮影(PET)によるPD−L1発現のインビボ検出。腫瘍PD−L1発現は、PD−1またはPD−L1に向けられた免疫療法に対する応答を予測する潜在的なバイオマーカーとして示唆されてきた。現在、腫瘍上のPD−L1発現は、最も一般的には、生検を介して評価され、免疫組織化学的染色が後続する。しかし、生検手順の関連する危険性と禁忌(contraindications)に加えて、結果として生じる組織解析は、腫瘍内のPD−L1の不均一な空間的発現パターンによって複雑化される。「ImmunoPET」は、組織を切除する必要性なしに腫瘍全体にわたってPD−L1の発現を同時に測定する、非侵襲的手段を提供することができる。PD−L1に対するその高親和性および特異性に加えて、その増強された組織透過性のおかげで、放射標識したHAC−PD1は、腫瘍PD−L1発現を評価する有効なPETプローブとして機能し得る。
【0336】
HAC−PD−1足場に基づいてPETトレーサーを発達させるために、変異した変異体、HAC−N91Cを、チオール反応性の二官能性キレートDOTA−マレイミド
20と結合させた。DOTA−HACの見かけのhPD−L1親和性がその親配列HAC−Vより弱かったが、DOTA−HACは、それにもかかわらず、WT PD−1より1,200倍より強力にhPD−L1を拮抗した(
図17A)。続く
64Cuでの放射標識は、hPD−L1特異的な放射性タンパク質(radio−protein)
64Cu−DOTA−HACをもたらし、これは、1μg当たり8−10μCiの比放射能および98%を超える放射化学的純度を有していた(
図17B)。このPETトレーサーを使用して、生きたマウスにおける全身のhPD−L1発現を視覚化した。
【0337】
64Cu−DOTA−HACは、注入の1時間後に強い腫瘍/筋肉のシグナル(6倍の増強、p<0.05)を示し(
図11A、
図18A)、腎臓では高い取り込みがあり、これは、血液からの遊離薬物の急速な腎クリアランスと、肝臓で発現したタンパク質による銅特異的結合と一致した、肝臓中の高いシグナルを示している(
図18B、
図18E)。PD−L1陰性腫瘍(
図11A、
図18C)内、または500μgの冷たいHAC−PD1の前の注入によってブロックされたhPD−L1陽性腫瘍(
図11A−11B)におけるシグナルの欠如は、PD−L1結合に対する
64Cu−DOTA−HAC−PD1の高度の特異性を示した。追加のスキャンを、2、4および24時間(
図18A、
図18D)で得て、24時間で生体内分布を評価した(
図19A−19B)。注入の1時間後に最大の腫瘍取り込みが観察されたが、強いシグナルが少なくとも24時間hPD−L1(+)腫瘍内で持続した。要するに、
64Cu−DOTA−HACの急速且つ特異的なhPD−L1(+)腫瘍取り込みは、臨床的画像適用のための試薬としてその使用を促進する。
【0338】
<考察>
癌免疫療法は、その顕著な治療可能性がまさに十分に実現され始めている治療パラダイムである。PD−1:PD−L1軸を標的とする抗体での成功が癌患者において達成されているが、本明細書で提供されるデータは、操作されたPD−1デコイ受容体(receptor decoy)、HAC−PD−1を使用して、追加の効能が達成され得ることを示している。このタンパク質は、乏しい腫瘍浸透およびエフェクターT細胞の望まれない枯渇の抗体固有の制限を共有していない。したがって、それは、より大きい且つより確立された腫瘍に対して、抗PD−L1抗体よりも増強された抗腫瘍活性を発揮する。それ故、これらの結果は、患者のための小さなタンパク質生物製剤の可能性および免疫系の調節におけるそれらの広範囲の適用を強調している。
【0339】
腫瘍への増強された送達に加えて、HAC−PD−1のような小さなタンパク質のモジュラー性質によって、他の免疫治療薬との容易な組み合わせが可能となる。これは、黒色腫患者
21におけるチェックポイント遮断とニボルマブ(抗PD−1)およびイピリムマブ(抗CTLA4)との組み合わせの効能に照らして、並びにPD−1/PD−L1およびTIM−3
22、LAG−3
23、GITR
24、OX−40
25、および4−1BB
26などの追加の免疫調節経路を標的とする抗体間の相乗効果を実証した多数の前臨床試験において、重要な考察である。HAC−PD−1の場合には、相乗的な免疫調節経路を標的とする多特異性の薬剤は、他の操作されたデコイ受容体または単一ドメイン抗体を含む、複数の小さなタンパク質モジュールを単に融合させることによって容易に産生され得る。この設計は、同じ細胞上の異なる免疫チェックポイントリガンド及び/又は受容体の同時発現を利用して、増強された結合力、それ故、効能を組み合わさった薬剤に提供する。さらに、多特異性の治療は、別々に投与された薬物の数を減少させることによって処置レジメンを単純化し、延長線上で、それらの別々の製造および開発に関連するコストを下げる。
【0340】
抗PD−1抗体および抗PD−L1抗体などの免疫調節薬は、幾つかの他の癌治療に比べて一般に十分に耐性があるが、自己免疫性肝炎、肺炎、および大腸炎
8,9を含む、軽度の下痢から生命を脅かす免疫関連の有害事象までの範囲に及ぶ毒性を有する。患者における不必要な毒性を回避する(さもなければ免疫療法から恩恵を得ない)ために、どの患者が処置に反応するかを特定するためのバイオマーカーおよび方法が緊急に必要とされている。免疫組織化学的検査(IHC)による腫瘍PD−L1発現は、ここまでのところ、抗PD−1/抗PD−L1応答
27の部分的ではあるが不完全な予測因子(predictor)を証明してきた。しかし、IHCは、腫瘍PD−L1発現の非感受性の手段(insensitive measure)であり得、この方法がPD−L1陽性腫瘍を陰性として誤って特徴づけ得ることが考えられる。ここで提示される研究は、免疫組織化学的検査に代わる代案方法として腫瘍PD−L1発現のHAC−PD−1 immunoPET画像化が使用され得ることを実証している。この非侵襲性のアプローチによって、PD−L1発現状態の原発腫瘍とは異なり得る、腫瘍全体および関連する転移の同時の撮像が可能となる。さらに、異なる時点(例えば、処置の前後)での同じ腫瘍の繰り返しの撮像にPET画像化が使用され得、それによって、従来の生検/IHCのアプローチで達成するのが困難であるか又は不可能であろう豊富なセットの診断情報がもたらされる。
【0341】
<方法>
マウス。スタンフォード大学のAdministrative Panel on Laboratory Animal Careからの承認に従って、動物研究を行った。同系腫瘍移植および処置に応じたT細胞レベルの評価のために使用される、6−8週齢のBalb/cマウスを、The Jackson Laboratoryから直接得た。腫瘍浸透度のインビボでの評価およびPET研究のために使用される、Nod.Cg−Prkdc.scid.IL2rg.tm1Wjl/SzJ(NSG)マウスを、室内の種畜から得た。
【0342】
細胞株。ヒト黒色腫細胞株SK−MEL−28、ネズミ黒色腫細胞株B16.F10、およびネズミ結腸癌細胞株CT26を、ATCCから得た。すべての細胞株を、37℃で、加湿した、5% CO
2インキュベーターにおいて維持した。SK−MEL−28細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS;Thermo Fisher Scientific)を補足したEMEM培地(ATCC)中で継代培養した。B16.F10細胞を、10%のFBSおよび55μMの2−メルカプトエタノール(Sigma)を補足したDMEM培地(Life Technologies)中で継代培養した。CT26細胞を、10%のFBSを補足したRPMI中で成長させた。CT26細胞とCas9発現するレンチウイルスとの同時の形質導入、およびgenome−engineering.org
28でのツールを使用して設計された、2つのmPD−L1を標的とするsgRNA[それぞれ、配列 GGCTCCAAAGGACTTGTACG(SEQ ID NO:56)およびGGTCCAGCTCCCGTTCTACA(SEQ ID NO:57)]の混合物をコード化するレンチウイルスのプールによって、CT26の遺伝子変異体を作成した。感染の6日後に、細胞を、100ng/mLのマウスIFNγによる処置を介して高レベルのPD−L1を発現するように誘導し、感染の7日後に、細胞を採取し、APC標識した10F.9G2抗体で染色した。陰性群を、選別し、培養し、細胞数の回収の数日後に、これらの細胞は、2ラウンドの追加の連続する選別を受けた。この安定した陰性群を、CT26−Δ(mPD−L1)として定義した。ヒトPD−L1発現するネズミ癌株を生成するために、hPD−L1の構成的な、EF1Aで促進された発現をコード化するレンチウイルスを、CT26−Δ(mPD−L1)細胞を感染させるように生成し、使用した。これらの細胞を採取し、PE−抗PD−L1(クローンMIH1、eBioscience)で染色し、純度ごとに選別した。この選別を合計3回繰り返して、操作された亜系統CT26−Tg(hPD−L1)−Δ(mPD−L1)を生成した。
【0343】
タンパク質の発現および精製。hPD−1 IgVドメイン(残基26−147)、hPD−L1 IgVおよびIgCのドメイン(残基19−239)、高親和性PD−1変異体、およびHACmbを、IDTによってgBlocksとして集め、バキュロウイルスを使用してTrichoplusia ni(High Five)細胞からの分泌物のためのカルボキシ末端8×ヒスチジン標識を有するpAcGP67aへとインフレームでクローン化した。N91C変異を、PCR媒介性の部位特異的変異誘発を使用してHAC−Vへと導入した。分泌タンパク質を、ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)クロマトグラフィーによって調整培地から精製し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)へと脱塩した。マウスにおける機能的研究またはインビボ研究のために使用されるタンパク質をさらに、Triton X−114を用いてカラム洗浄液(column washes)にさらし、内毒素を除去した。カルボキシ末端のビオチンアクセプターペプチド配列(GLNDIFEAQKIEWHE(SEQ ID NO:58))の付加およびBirAリガーゼでの酵素ビオチン化によって、ビオチン化したタンパク質を得た。
【0344】
アミン反応性プローブおよびシステイン反応性プローブでのタンパク質標識化。HAC−V N91Cを、上に記載されるように発現させ、精製し、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の適用によって、1mMの終末濃度まで還元した。その後、還元したタンパク質を、20倍モル過剰量のAlexaFluor 594 C5マレイミド(Life Technologies)、AlexaFluor 647 C2マレイミド(Life Technologies)、またはマレイミド−モノ−アミド−DOTA(Macrocyclics)と組み合わせ、1時間室温でインキュベートし、その後さらに12時間、4℃でインキュベートした。VivaSpinのタンパク質濃縮装置(Sartorius Stedim)を使用して、反応混合物をPBSへと脱塩することによって、過剰の遊離プローブを除去した。DOTA−HACに関して、反応タンパク質を、Hepes緩衝食塩水(HBS;10mMのHepes pH7.4、150mMのNaCl)に交換し、〜5mg/mLに濃縮した。1抗体当たりの結合されたキレート剤の数(c/a)を、未反応のHAC−N91CおよびHAC−DOTAの比較によって、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−TOF−MS)を用いて推測した。
【0345】
低内毒素/アジドを含まない抗hPD−L1(クローン29E.2A3、BioLegend)を、室温で2時間、8倍モル過剰量のAlexaFluor 488 NHSエステルで標識化した(Life Technologies)。遊離色素を、20mMの終末濃度までTRIS pH8.0を加えることによってクエンチし、標識抗体をVivaSpinのタンパク質濃縮装置で脱塩した。
【0346】
酵母ディスプレイおよび定向進化。hPD−1のIgVドメイン(残基26−147)、hPD−L1のIgVおよびIgCのドメイン(残基19−132)、およびhPD−L2(残基20−123)を、前に記載したようにpYALベクターを使用して、Aga2に対するN末端融合としてS.cerevisiae株EBY100の表面上にディスプレイした。
【0347】
第一世代hPD−1ライブラリの構築および選択:hPD−L1に複合体化されたhPD−1の結晶構造がまだ報告されていないため、22の有望な接触残基を、hPD−L1に結合されたmPD−1の構造(PDB ID 3SBW)によって推測した。表2にリストされるプライマーを用いるアセンブリPCRを使用して、
図12A−12Bに記載されるように、これらの残基を無作為化するライブラリを生成した。ライブラリは、理論的に多様なおよそ9.5×10
19の特有のタンパク質配列を有した。PCR産物を、pYALベクターに対する相同性を含んでいるプライマーを用いてさらに増幅し、直線化したpYALと一緒にEBY100酵母へと同時に電気穿孔した。結果として生じるライブラリは、0.9×10
8の形質転換体を含んでいた。
【0348】
形質転換酵母を回収し、30℃で液状のSDCAA培地中で膨張させ、液状のSGCAA培地への1:10の希釈により誘導し、24時間20℃で培養した。各ラウンドで適切な数の誘導された酵母を使用して、各工程でのライブラリの予期される多様性の少なくとも10倍の適用範囲(coverage)、および10
8以上の細胞を確かなものとした。すべての選択工程を、MACS緩衝液(0.5%のウシ血清アルブミンおよび2mMのEDTAを有するPBS)を使用して4℃で実行した。各ラウンド前に、ストレプトアビジン−AlexaFluor 647(室内で生成された)に対するプレクリアリング(pre−clearing)を、抗Cy5/Alexa Fluor 647ミクロビーズ(Miltenyi)およびLD MACSカラム(Miltenyi)を用いて実行した。ラウンド1−3に関して、4℃で1時間、誘導した酵母を1μMのビオチン化したhPD−L1で標識化すること、およびその後のストレプトアビジン−AlexaFluor 647での二次染色、および抗Cy5/AlexaFluor 647ミクロビーズおよびLS MACSカラム(Miltenyi)での磁気選別によって、正の選択を実行した。ラウンド4に関して、10nMのビオチン化したhPD−L1での染色およびストレプトアビジン−AlexaFluor 647での二次標識化によって、正の選択を実行した。AlexaFluor 488結合した抗cMyc(Cell Signaling Technologies)での染色によって、ディスプレイレベルを判定し、ディスプレイを標準化した(display−normalized)hPD−L1結合剤の上位1%を、FACS Ariaのセルソーターを用いる蛍光活性化細胞分類(FACS)を使用して分離した。選択の各ラウンド後に、回収した酵母を、一晩30℃でSDCAA培地中で膨張させ、その後、24時間SGCAA培地中への1:10の希釈によって20℃で誘導した。
【0349】
第二世代hPD−1ライブラリの構築および選択:第二世代ライブラリを、野生型残基から離れた収束を実証した第1ライブラリからの10の接触位置に加えて、7つの追加のコア位置を無作為化するように設計した。
図13で例証される設計は、理論的に多様なおよそ9.1×10
9の特有のタンパク質配列を有した。第一世代ライブラリと同様に、第二世代ライブラリを、表3にリストされるプライマーを用いてアセンブリPCRによって構築し、EBY100酵母へとpYALと同時に電気穿孔した。結果として生じるライブラリは、1.2×10
8の形質転換体をもたらした。第二世代ライブラリを、若干の修正を除いて第一世代ライブラリと同様に選択した。ラウンド1−3を、上に記載されるように、1μMのビオチン化したhPD−L1での染色および磁気ビーズ選択によって実行した。ラウンド4および5に関して、低下したオフレートを有する変異体を選択するために、動的選択(kinetic selection)を実行した。簡潔には、酵母を、4℃で1時間10nMのビオチン化したhPD−L1で染色した。MACS緩衝液で洗浄後、酵母を、撹拌しながら室温で6時間1μMのビオチン化していないhPD−L1でインキュベートした。競合後の酵母を、その後、ストレプトアビジン−AlexaFluor 647およびAlexaFluor 488結合した抗cMycで染色し、ディスプレイを標準化した結合剤の上位1%を、FACS分類によって分離した。
【0350】
表面プラズモン共鳴。
Biacore T100を使用して、25℃で実験を行った。ビオチン化したPD−L1を、Biacoreのストレプトアビジン(SA)センサチップ(GE Healthcare)上に固定して、およそ100RUのRmaxを得た。無関係なビオチン化したタンパク質(ヒトCD47のIgSFドメイン)を、一致するRU値を有する基準面上に固定して、非特異的結合に関して制御した。
図8Aに示されるように、HBS−P+緩衝液(10mMのHEPES pH7.4、150mMのNaCl、0.005%の界面活性剤P20)中のPD−1変異体の連続希釈によって測定を行った(GE Healthcare)。PD−L1表面を、50%のv/vエチレングリコール、100mMのグリシン pH9.5の3回の60秒の注入によって再生した。データをすべて、1:1のLangmuirの結合モデルを備えるBiacore T100の評価ソフトウェア・バージョン2.0を用いて分析した。
【0351】
PD−1細胞競合結合アッセイ。
ビオチン化したWT PD−1をAlexaFluor 647結合したストレプトアビジンで4:1のモル比でインキュベートすることによって、WT PD−1四量体を形成した。PD−L1発現を、2000U/mLのヒトIFNγによる一晩のシミュレーションによってGFP−ルシフェラーゼ+SK−MEL−28細胞上で誘導した。その後、100nMのWT PD−1四量体を、滴定濃度(titrating concentrations)のWT PD−1単量体、HAC−V、またはHACmbと組み合わせ、100,000の誘導されたSK−MEL−28細胞に同時に加えた。細胞を、60分間氷上で試薬混合物でインキュベートし、その後、洗浄して、非結合の四量体を除去した。AlexaFluor 647の蛍光強度を、Accuri C6のフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して、フローサイトメトリーによって定量化した。
【0352】
インビボでの腫瘍浸透の研究。
各注入に対して75%のRPMI(Life Technologies)および25%の中密度のマトリゲル(Corning)の50μLの懸濁液中で、6−8週齢の雌のNod.Cg−Prkdc.scid.IL2rg.tm1Wjl/SzJ(NSG)マウスに、遺伝子組換えの結腸癌株CT26−Δ(mPD−L1)の1×10
6細胞を左肩へと、およびCT26−Tg(hPD−L1)−Δ(mPD−L1)の1×10
6細胞を右肩へと皮下に注入した。14日後、腫瘍が直径およそ1cmまで成長したときに、マウスに、100μgのAlexaFluor 488結合した抗PD−L1抗体(クローン29E.2A3、BioLegend)と100μgのAlexaFluor 594結合したHAC PD−1単量体の混合物を腹腔内に注入した。4時間後、マウスを安楽死させ、それらの腫瘍を切開した。冷たいPBSで洗浄して過剰の血液を除去するいくらかのラウンド後に、各腫瘍をおよそ半分に切断した。半分を、振動させながら4℃で一晩PBS中の1%のPFAの溶液中でインキュベートし、PBSで洗浄し、Tissue Tek Optimal Cutting Temperature(O.C.T.)(Sakura)に埋め込んだ。これらの組織の7ミクロンの凍結切片を、切断し、30分間解凍し、4分間4℃でアセトン中で洗浄し、10分間空気乾燥し、PBSで洗浄し(3回、各5分)、およびFluoromount G(Southern Biotech)を取り付ける前に、Hoechst 33342(Invitrogen)で標識化した。
スライドを、10×または20×の倍率でEclipse e800の蛍光顕微鏡(Nikon)上で視覚化した。蛍光チャネルの虚色、チャネル合流(channel merge)、および明るさを含む、基本写真処理と、コントラスト調節を、Adobe Photoshop(Adobe)を使用して実行した。FACS分析のために、各腫瘍の残り半分を、西洋かみそりで細かく刻み、刻んだ組織を、100μMのメッシュセルストレーナー(mesh cell strainer)を介してプレスし、PBSで洗い流し、最終的に液体懸濁液中にある間に40μMのセルストレーナーに通した。すべての処理工程の全体にわたって、サンプルをできる限り4℃近くに維持した。最終的に、結果として生じる単一細胞の懸濁液を、1%のPFA溶液中に固定させ、LSRFortessa FACS Analyzer(BD Biosciences)上の抗体およびHAC由来の蛍光シグナルに対して分析した。
【0353】
T細胞枯渇の研究。
6−8週齢の野生型雌Balb/cマウスを、その下方背側上で剪毛し、75%のRPMI(Life Technologies)および25%の中密度のマトリゲル(Corning)の50μLの懸濁液中で、マウスに結腸癌株CT26の1×10
6細胞を皮下に注入した。目視検査によって7日以内の腫瘍の移植に失敗したと分かったマウスを、更なる研究から除外した。可視の、触知可能な腫瘍を有するマウスを、random.orgでのツールを使用して、1群当たり10匹のマウスの処置群に無作為化した。マウスを、各々が2.5mg/mLの濃度に調節された、100μlのPBS、250μgの抗PD−L1抗体(クローン10F.9G2、BioXcell)、または250μgの精製したHACmbタンパク質の1日1回の腹腔内注入によって3日間処置した。3日間の処置後、末梢血およびリンパ節を、各マウスから集め、抗体の以下のパネルで染色した(BioLegend):AlexaFluor488 CD45(クローン30−F11)、PerCP−Cy5−5 CD8(クローン53−6.7)、AlexaFluor700 Nk1.1(クローンPK136)、APC−Cy7 B220(クローンRA3−6B2)、PE−Dazzle CD11b(クローンM1/70)、PE−Cy5 F4/80(クローンBM8)、PE−Cy7 CD4(GK1.5)、およびAPC PD−L1(クローン10F.9G2)。DAPIを生存率染色として使用した。サンプルを、LSRFortessa FACS Analyzer(BD Biosciences)上で分析した。
【0354】
CT26腫瘍モデル。
6−8週齢の野生型雌Balb/cマウスを、その下方背側上で剪毛し、75%のRPMI(Life Technologies)および25%の中密度のマトリゲル(Corning)の50μLの懸濁液中で、マウスに結腸癌株CT26の1×10
6細胞を皮下に注入した。目視検査によって7日以内の腫瘍の移植に失敗したと分かったマウスを、更なる研究から除外した。小さな腫瘍の処置研究に関して、マウスを、random.orgでのリスト無作為ツール(list randomization tools)を使用してコホートへと無作為化し、すべてのマウスに対して移植の7日後から処置を開始した。これらの小さな腫瘍の研究において、デジタルキャリパー測定値(digital caliper measurements)を3日ごとに得て、10日目に測定値に正規化されるように、値を倍率変化としてグラフ表示した。大きな腫瘍の研究に関して、上に記載されるようにマウスに移植を行い、8日目から腫瘍を毎日測定した。すべての場合において移植のおよそ10−14日後に、マウスを処置コホートに個々に分類し、腫瘍が150mm
3の閾値に達したときにだけ処置を開始した。デジタルキャリパー測定値を、処置の期間の間、大きな腫瘍の実験においてすべてのマウスに対して毎日得た。測定値のランダムな日毎の変動を減少させるために、この実験においてグラフ表示した腫瘍容積は、当日、前日、および翌日の測定値を含むスライディングウィンドウ内で評価されるような平均である。大きな腫瘍の研究からの値を、絶対的な腫瘍容積(mm
3)としてグラフ表示した。両方の実験において、マウスに、各々が2.5mg/mLの濃度に調節された、100μlのPBS、250μgの抗PD−L1抗体(クローン10F.9G2、BioXcell)、または250μgの精製したHACmbタンパク質を、14日間毎日腹腔内に注入した。腫瘍を2つの半径xおよびyを有する楕円体として近似し、ここでxは腫瘍の最大の測定可能な寸法であり、yはxに直接に(immediately)垂直な寸法である:容積(4/3)
*(tt)
*(x/2)
*(y/2)
2。
【0355】
DOTA−HACの
64Cu標識化。DOTA−HACを、
64CuCl
2(ウィスコンシン大学マディソン校)で放射標識した:0.1mMの酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.5)、200μl中の500μgのDOTA−HACを、1時間37℃で中和した
64CuCl
2溶液の〜370MBq(〜10mCi)で反応させた。インキュベーション後、5mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)pH7.0を15分間室温で加え、反応混合物中でキレート化されていない
64CuCl
2を除去した(scavenge)。
64Cu−DOTA−HACの精製を、1.0mL/分の流速でSEC 3000 HPLCを使用して実行した(0.1Mのリン酸塩緩衝液、pH7.0)。放射化学的純度を放射性HPLCによって評価した。最終用量の放射性コンジュゲート(radioconjugate)を、0.2μmのフィルターに通して無菌バイアルへと移した。
【0356】
放射性トレーサーの細胞結合アッセイ
インビトロでの細胞結合アッセイを、hPDL1(+)細胞、HAC−Vで予めブロックされたhPDL1(+)細胞、および対照hPDL1(−)細胞を使用して実行し、免疫反応性を評価した。0.1mL中の2.5×10
5細胞を、3等分し、PBSA(1%のウシ血清アルブミンを補足したPBS)で洗浄した。各チューブを、45分間0.1mL、5nmol/Lの
64Cu−DOTA−HAC(5−6MBq/nmol)でインキュベートした。インキュベーション後、細胞を1%のPBSAで3回洗浄した。各細胞ペレットにおける活性を、ガンマカウンター(1470 WIZARD Automatic Gamma Counter; Perkin−Elmer)を使用して定量化した。
【0357】
小動物のMicro−PET画像化。皮下のhPDL1陽性(n=4)またはhPDL1陰性(n=4)のCT26腫瘍を有するNSGマウスに、
64Cu−DOTA−HAC(〜230μCi/25μgのタンパク質/200μlのPBS)を静脈内に注入した。1つの群は、PET放射性トレーサーの注入の2時間前に、遮断量(blocking dose)(n=2)の500μg/200μlの冷たいHACを受けた。マウスに麻酔をかけ、マウスを、注入の1、2、4、および24時間後の時点で、Siemens Inveonの小動物多様式PET/CTシステム(Preclinical Solutions; Siemens Healthcare)上で画像化した。CTの原画像を、コーンビームのマイクロX線源(50μmの焦点サイズ)および2,048×3,072ピクセルのX線検出器を用いて、80kVp/500μA、回転のハーフスキャン220°、ベッド(bed)位置当たり120の投影で、第2のベッド位置において取得した。CTデータセットを、Shepp−Loganのフィルターおよびコーンビームのフィルター補正逆投影を使用して復元した。CTスキャンからの減衰補正に基づいて、静的PET画像を、3.4nsのデフォルト一致のタイミングウィンドウおよび350−650keVのエネルギーウィンドウを用いて取得した。3分(1、2時間)、5分(4時間)、および10分(24時間)のPETスキャン取得時間の長さを、注入後の時間に基づいて選択した。PETデータセットを、二次元のサブセット化による期待値最大化法(two−dimensional ordered−subset expectation maximization)(OSEM 2D)アルゴリズム
29を使用して復元した。
画像分析を、Inveon Research Workspace (IRW)を利用して実行した。各microPETスキャンのために、三次元の関心領域(ROI)を、減衰補正した全身画像上で、肝臓、ひ臓、腎臓、および腫瘍に引いた。関心領域(ROI;nCi/cc)中の平均ピクセル値を注入量の合計で割ることによって、各器官中の組織のグラム当たりのパーセント注入量(%ID/g)を得た。部分的な容積補正は実行しなかった。統計分析を双方向ANOVA(GraphPad)によって実行した。
【0358】
生体内分布の研究。注入の24時間の時点でのマイクロ−PET/CT画像化の完了後に、生体内分布のために、マウスを安楽死させ、切開した。血液および器官(心臓、肺、肝臓、ひ臓、膵臓、胃、小腸、大腸、腎臓、筋肉、骨、骨髄、皮膚、脳、腫瘍、および尾部)を収集し、計量した。ガンマカウンター測定値からの各器官に対するCPM値を、組織のグラム当たりのパーセント注入量に変換した。データを注入時間に減衰補正した。