(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945470
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】付加造形体の製造システムおよび付加造形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20210927BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20210927BHJP
B22F 10/32 20210101ALI20210927BHJP
B22F 10/37 20210101ALI20210927BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20210927BHJP
B22F 10/80 20210101ALI20210927BHJP
B22F 12/49 20210101ALI20210927BHJP
B29C 64/364 20170101ALI20210927BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20210927BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20210927BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20210927BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20210927BHJP
【FI】
B29C64/153
B22F10/28
B22F10/32
B22F10/37
B22F10/38
B22F10/80
B22F12/49
B29C64/364
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-30765(P2018-30765)
(22)【出願日】2018年2月23日
(65)【公開番号】特開2019-142184(P2019-142184A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川中 啓嗣
(72)【発明者】
【氏名】青田 欣也
(72)【発明者】
【氏名】ヤン インジャ
(72)【発明者】
【氏名】大沼 篤彦
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−520091(JP,A)
【文献】
特表2016−522312(JP,A)
【文献】
特開2018−008403(JP,A)
【文献】
特開2017−078224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B22F 1/00−12/90
B33Y 10/00、30/00、50/00−50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を供給して粉末層を形成する工程と、熱源から前記粉末層に熱を供給し、前記粉末を溶融および凝固して固化層を形成する工程とを繰り返す付加造形処理を行う付加造形装置と、
前記粉末層または前記固化層を撮影する撮影機を有する検査装置と、
前記付加造形装置および前記検査装置の制御を行う制御装置とを備え、
前記撮影機は、可視光画像撮影機であり、繰り返し行われる前記粉末層を形成する工程ごとに前記粉末層を撮影可能であり、または繰り返し行われる前記固化層を形成する工程ごとに前記固化層を撮影可能であり、
前記制御装置は、前記付加造形処理の条件に応じて前記撮影機の撮影条件を選択し、前記可視光画像撮影機によって得られた画像を処理する可視光画像処理部を有し、
前記可視光画像処理部は、前記付加造形処理の条件に応じた前記撮影条件が保存された撮影条件データベースと、前記撮影条件を用いて前記可視光画像撮影機で撮影して得られた画像を解析する画像解析部と、前記画像解析部によって解析された画像と比較するためのリファレンスデータが格納されたリファレンスデータベースと、前記画像解析部によって解析された画像と前記リファレンスデータとを比較して前記粉末層または前記固化層の良否を判定する判定部と、前記判定部によって判定された結果を保存する記憶部とを有することを特徴とする付加造形体の製造システム。
【請求項2】
前記付加造形装置は、前記付加造形処理における雰囲気を制御可能な処理室を有し、
前記制御装置は、前記処理室の雰囲気に応じて前記撮影機の撮影条件を選択することを特徴とする請求項1に記載の付加造形体の製造システム。
【請求項3】
前記付加造形装置は、前記粉末層または前記固化層を加熱可能な加熱器を有し、
前記制御装置は、前記加熱器で加熱された前記粉末層または前記固化層の温度に応じて前記撮影機の撮影条件を選択することを特徴とする請求項1に記載の付加造形体の製造システム。
【請求項4】
前記付加造形処理の条件は、前記粉末の材料、前記粉末層のサイズまたは前記熱源から前記粉末層または前記固化層へ供給される入熱量であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の付加造形体の製造システム。
【請求項5】
前記撮影条件は、前記撮影のタイミング、前記撮影機の露光時間または前記撮影機の光源の照射条件であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の付加造形体の製造システム。
【請求項6】
前記撮影機は、赤外線画像撮影機をさらに有し、前記画像解析部によって解析された画像と前記リファレンスデータとを比較して前記固化層の良否を前記判定部によって判定することを特徴とする請求項1に記載の付加造形体の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加造形体の製造システムおよび付加造形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属粉末を敷詰めた粉末床(粉末層)を選択的に溶融凝固させることによって二次元平面を描写して造形面を作製し、これを複数回繰り返し積層することによって三次元の造形物(付加造形体)を製造する付加造形方法(Addtive Manufacturing Technology)が知られている。このとき、造形条件によっては、付加造形の途中段階で付加造形体(以下、「AM体」と称する。)の内部に欠陥が発生する。この内在欠陥は、粉末層の塗布状態、粉末層の溶融凝固の状態または積層前の固化層の表面状態に起因して発生することが経験的に解ってきている。
【0003】
付加造形中に発生する欠陥を検査する技術として、以下の特許文献1がある。特許文献1には、造形される三次元造形物の形状に応じて設定された領域に位置する材料に対して固化処理を施すことにより層状の固化層を形成し、形成した固化層の上部に新たに材料を供給して、当該新たな材料に対して固化処理を施すことで新たな固化層を形成することを繰り返し、複数の固化層が積層された三次元造形物を造形する造形部と、複数の固化層の積層途中において、既に積層された固化層を検査する検査部と、を備える三次元造形物製造装置が記載されている(請求項1)。検査部は、X線検査装置やガンマ線検査装置等を用いることが記載されている(明細書段落0013および0063)。
【0004】
特許文献2には、3次元物体を製造する方法であって、該物体は、各層における該物体に対応する位置において粉末材料を層単位で固化することによって形成され、塗布された粉末層から放出されるIR放射が局所的に検出され、それによってIR放射画像が取得され、塗布された粉末層の欠陥及び/又は幾何学的不規則性がIR放射画像に基づいて検出され、固化することは、電磁放射又は粒子放射を塗布された粉末層に当てることによって行われ、欠陥及び/又は幾何学的不規則性は、粉末層を固化する前に追加の層を塗布、形成することによって補正されることを特徴とする、方法が記載されている(請求項1)
特許文献3には、3次元造形体を製造する方法であって、a)基材の表面にディスペンサを用いて粉末床を形成する工程と、b)平坦化装置によって粉末床を平坦化する工程と、c)粉末床の所定の領域において、粉末床の粉末をバインダ溶液によって結合するか、放射線を照射して粉末を溶融または焼結することによって粉末床を固化する工程と、(a)〜(c)のいずれかの間に平坦化後または固化後の粉末床の光学観察像を記録し、粉末床の平面内の欠陥サイトを評価する3次元造形体を製造する方法が開示されている(クレーム1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/143137号
【特許文献2】特許第4964307号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0173946号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献に記載の技術では、評価の際に造形物の材料、造形時の温度や雰囲気および粉末層への入熱量の影響が考慮されていない。このため、評価結果の精度の向上に改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、付加造形中の欠陥の評価の精度を向上し、付加造形体の品質を向上することが可能な付加造形体の製造システムおよび付加造形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、粉末を供給して粉末層を形成する工程と、熱源から粉末層に熱を供給し、粉末を溶融および凝固して固化層を形成する工程とを繰り返す付加造形処理を行う付加造形装置と、粉末層または固化層を撮影する撮影機を有する検査装置と、付加造形装置および検査装置の制御を行う制御装置とを備え、撮影機は、
可視光画像撮影機であり、繰り返し行われる粉末層を形成する工程ごとに粉末層を撮影可能であり、または繰り返し行われる固化層を形成する工程ごとに固化層を撮影可能であり、制御装置は、付加造形処理の条件に応じて撮影機の撮影条件を選択
し、可視光画像撮影機によって得られた画像を処理する可視光画像処理部を有し、可視光画像処理部は、付加造形処理の条件に応じた撮影条件が保存された撮影条件データベースと、撮影条件を用いて可視光画像撮影機で撮影して得られた画像を解析する画像解析部と、画像解析部によって解析された画像と比較するためのリファレンスデータが格納されたリファレンスデータベースと、前記画像解析部によって解析された画像と前記リファレンスデータとを比較して粉末層または固化層の良否を判定する判定部と、判定部によって判定された結果を保存する記憶部とを有することを特徴とする付加造形体の製造システムである。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、粉末を供給して粉末層を形成する工程と、粉末層を撮影機によって撮影する工程と、撮影機によって得られた画像に基づき、粉末層の状態の良否を判定する工程と、粉末層の状態が良と判定された場合に粉末層に熱源から熱を供給して粉末を溶融および凝固して固化層を形成する工程と、固化層を撮影機によって撮影する工程と、撮影機によって得られた画像に基づき、固化層の状態の良否を判定する工程とを有し、撮影機の撮影条件を、粉末層を形成する工程および固化層を形成する工程の条件に応じて選択することを特徴とする付加造形体の製造方法である。
【0010】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、付加造形中の欠陥の評価の精度を向上し、付加造形体の品質を向上することが可能な付加造形体の製造システムおよび付加造形体の製造方法を提供することができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の付加造形体の製造システムの第1の例を示す模式図
【
図2】
図1の付加造形装置の一部と制御装置の可視光画像処理部を示す模式図
【
図3】
図1の付加造形装置の一部と制御装置の赤外線画像処理部を示す模式図
【
図4】本発明の付加造形体の製造システムの第2の例を示す模式図
【
図5】本発明の付加造形体の製造システムの第3の例を示す模式図
【
図6】本発明の付加造形体の製造方法を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の基本思想]
付加造形中の固化層の観察には、主に可視光画像および赤外光画像が用いられる。可視光画像からは、粉末層の塗布状態、固化層の空孔、割れおよび未溶融部の有無を評価できる。また、赤外光画像からは、溶融部の熱溜まりを検出することができる。これらの評価結果は、AM体の材料およびサイズ(厚さ)や、付加造形時の雰囲気、温度および熱源からの入熱量等の条件に依存して変化する。したがって、AM体を高い精度で評価するためには、これらの条件を考慮した上で評価する必要がある。
【0015】
上述した特許文献1のX線やガンマ線を用いて欠陥を検査する技術では、欠陥検出に時間がかかることが課題となるほか、造形厚さによって検出精度に影響が出ることが想定される。特許文献1では、造形厚さを考慮した評価については言及されていない。
【0016】
一方、特許文献2では、「新たに塗布された粉末層におけるこれらの欠陥及び/又は不規則性は、粉末を塗布した後赤外線カメラによって、異なる温度及び/又は異なる放射率及び/又は異なる反射率に基づいて検出される。同時に、異なる層の厚さを有する領域が、層の表面特性を示す異なる色によって再現される。したがって、新たに塗布された各層を、層ごとに実際の値と目標値とを比較することによって、カラー画像の画像処理によって観察することができる。」と記載されており(明細書段落0017)、表面の凹凸など不規則性の判定には有効な手段である。しかしながら、特許文献2に記載された方法および装置によれば、粉末材料の状態を赤外線カメラによって検出することが可能であるが、粉末材料が固化した後の形状、すなわち、付加造形処理中の物体の形状を測定することができないという課題がある。その他、正確な場所の特定が困難であり、不良信号の検出しかできない課題もある。
【0017】
また、特許文献3の場合は状態を可視化することが可能であるが、画像のみからの判定ではAM体の材料およびサイズ(厚さ)や、付加造形時の雰囲気、温度および熱源からの入熱量等の条件が考慮されていないため、欠陥要因となる凹凸の判定の精度にバラツキを生じやすいという課題がある。
【0018】
そこで、本発明は、AM体の材料およびサイズ(厚さ)や、付加造形時の雰囲気、温度および入熱量等の条件を考慮し、従来よりもAM体を高い精度で評価可能なシステムを構築した。以下、図面を参照しながら本発明の加造形体の製造システムおよび付加造形体の製造方法について説明する。
【0019】
[付加造形体の製造システム]
図1は本発明の付加造形体の製造システムの第1の例の模式図である。
図1に示すように、本発明の付加造形体の製造システム1aは、大別すると、付加造形処理を行う付加造形装置10aと、付加造形装置10aで形成される粉末層および固化層の評価を行う検査装置20と、付加造形装置10aおよび検査装置20の制御を行う制御装置30とを備える。
【0020】
本発明における付加造形装置10aは、粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)方式の金属3次元付加造形装置であって、AM体の原料となる金属粉末(原料粉末)が敷詰められた粉末層にエネルギーを照射して2次元平面の固化層を形成し、繰り返し積層することで造形物を製造するものである。
【0021】
図1では、原料粉末14で構成される粉末層を固化する熱源供給装置としてレーザー光照射装置を備えており、レーザー発振器2、プロセスファイバ3、ガルバノヘッド4およびレーザー同軸照明5を有する。熱源供給装置としては、粉末を溶融および凝固できるものなら特に限定は無く、レーザー光照射装置の他、電子ビーム照射装置であってもよい。
【0022】
AM体17が製造される処理室11は、ガス供給管12aおよびガス排気管12bを有しており、処理室11の雰囲気を制御可能な構成を有している。雰囲気制御は、例えば、熱源してレーザー光を用いる場合には不活性ガス雰囲気または真空雰囲気とし、熱源として電子ビームを用いる場合には真空雰囲気とする。
【0023】
処理室11の内部は、AM体の原料粉末14を保管する原料粉末保管領域110aと、原料粉末14を積層した粉末層の形成と、熱源供給装置によって粉末層を溶融および凝固して固化層を形成する付加造形領域111aと、付加造形領域111aで粉末層を形成する際に余った原料粉末が回収される原料粉末回収領域112aに分けられる。
【0024】
粉末供給機(粉敷き装置)13は、
図1の白色矢印の方向に移動して原料粉末保管領域110aから付加造形領域111aに粉末を供給する。粉末供給機13としては、例えばリコータ、コータ、スキージおよびブレードを用いることができる。原料粉末保管領域110aおよび付加造形領域111aにおいて、粉末が載置される試料台15aおよび15bは、
図1の黒色矢印の方向に上下可能な構成を有している。付加造形が行われる試料台15bは、図示していないが、粉末層または固化層を加熱可能な加熱器(ヒーター)を備えていてもよい。加熱器としては、25〜650℃程度まで加熱可能なものが好ましい。粉末層または固化層の加熱は、原料粉末中の水分除去あるいはビーム入熱量低減による造形スピードの向上や、温度分布を均一化して歪みを低減する効果が得られる。
【0025】
検査装置20として、本実施例では可視光画像撮影機6、赤外線画像撮影機7および溶融池観察機8を備えている。可視光画像撮影機6は、粉末層および固化層の可視光領域の画像を観察する。赤外線画像撮影機7は、粉末層および固化層の赤外線放射画像を撮影し、得られた熱画像を分析して不規則性を判定する。固化層の内部に欠陥を生じた場合は、熱伝導率が低くなると伴に熱拡散率も低下する。そのため、固化層を一定時間放熱させた後に赤外線放射による熱画像分析することで、熱溜まりを分析して内部欠陥を推定することが出来る。可視光領域の画像分析による判定と、赤外線熱画像による精度の高い不規則性判定によって、可視光画像の判定精度が高められる。溶融池観察機8は、粉末層に熱源が照射されて溶融された際の状態を観察する。
【0026】
赤外線画像撮影機7は、粉末層および固化層に対して画像撮影前に瞬間的な加熱を行うことが好ましい。この瞬間加熱により、固化層は熱伝導により温度が均一化する。撮影する際の固化層の表面の温度は、60℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。固化層の温度が60℃以上であれば熱溜まりが鮮明に写り、発見しやすい。このとき、熱伝導率が大きく異なる粉末への熱伝達は遮断される。また、固化層に生じた欠陥要因となる凹凸も温度差を発生させる。このときの熱画像を可視光画像と突き合わせて欠陥部位を判定することができる。
【0027】
瞬間加熱の熱源は、粉末層を固層化させるために用いる熱源供給装置を用いてもよいし、熱源供給装置とは別に設けた赤外線ランプなどでも良い。この加熱の条件は原料粉末14の種類や粉末層および固化層の温度および造形雰囲気によって変更することが好ましい。これは、固化層および粉末層の表面状態を変化させない程度の熱量であると共に、画像分析時にバラツキを生じないようにする必要があるためである。
【0028】
制御装置30は、付加造形装置10aおよび検査装置20に有線または無線で接続され、これらの動作の制御を行う。粉末供給機13と試料台15a,bの駆動およびレーザー発振器2とガルバノヘッド4の動作も制御装置30によって制御・監視される。
【0029】
また、制御装置30は、検査装置20の評価結果に基づいて、粉末層および固化層の良否の判定も行う。制御装置には、可視光画像撮影機6から得られた画像の処理と欠陥の有無の判定を行う可視光画像処理部と、赤外線画像撮影機7から得られた画像の処理と欠陥の有無の判定を行う赤外線画像処理部とを有する。以下、この2つの処理部について説明する。
【0030】
図2は
図1の付加造形装置の一部と制御装置の可視光画像処理部を示す模式図である。
図2に示すように、処理室11には、
図1では示していなかったが、可視光透過レンズ40および可視光画像撮影用照明41を備えている。
【0031】
制御装置30内の可視光画像処理部100は、可視光画像撮影機6によって得られた画像を解析する画像解析部101、画像解析部101で解析された結果を基に粉末層または固化層の良・不良を判定する判定部102、判定のためのリファレンスデータベース103、判定結果を保存する記憶部104および可視光画像撮影機6の撮影条件を保存する撮影条件データベース105を含む。可視光画像撮影機6での可視光画像の撮影は、撮影条件データベース105に格納されている撮影条件に基づいて行われる。撮影は、予め登録するか、撮影時に測定した粉末層の材料、サイズ(厚さ)、付加造形時の雰囲気、温度および入熱量等の条件に基づいて決定された撮影条件(撮影のタイミング、露光時間および可視光画像撮影用照明41の照度等)で行われる。制御装置30は、この撮影条件に基づいて、可視光画像撮影機6および可視光画像撮影用照明41をそれぞれの動作タイミングで動作させて可視光画像を撮影する。
【0032】
撮影したデータは画像解析部101で解析され、判定部102でリファレンスデータベース103と比較することで、良/不良判定を行う。なお、リファレンスデータベース103に格納されるリファレンスデータは、制御装置30で作成されたものでもよいし、付加造形体の製造システム1a外から持ってきたものであってもよい。
【0033】
撮影した画像および判定情報は記憶部104に保管され、AM体の検査情報となる。欠陥検査は、ビーム照射条件(ビーム出力、速度およびスポットサイズ等)と原料粉末の粒度分布、造形雰囲気および粉末層の厚さ等の造形データと、モニタリングデータおよび造形物の評価データを付き合わせたデータベースを作成・更新していくことで検査判定の精度を向上させることが出来る。
【0034】
図3は
図1の付加造形装置の一部と制御装置の赤外線画像処理部を示す模式図である。
図3に示すように、処理室11は、
図1では示していなかったが、赤外線透過レンズ42およびレーザー導光用レンズ43を備えている。
図3では、熱画像の取得に必要な加熱を、レーザー光照射装置を用いて行っている。
【0035】
赤外線画像処理部200にも、可視光画像処理部100と同様に、画像解析部201、判定部202、判定のためのリファレンスデータベース203、記憶部204および撮影条件データベース205が備えられている。赤外線画像撮影機7での撮影は、可視光画像撮影機6での撮影と同様に、予め登録するか、撮影時に測定したAM体の材料、サイズ(厚さ)、付加造形時の雰囲気、温度および入熱量等の条件に基づいて決定された撮影条件(撮影のタイミング、レーザー光のビーム条件等)で行われる。例えば、付加造形時の雰囲気によって熱伝導率が異なるため、加熱後の熱画像測定のタイミングが変わる。そのため、加熱方法、材料および雰囲気温度に応じて撮像タイミング変える。
【0036】
撮影したデータは画像解析部201で解析され、判定部202でリファレンスデータベース203と比較することで、良・不良判定を行う。撮影した画像および判定情報は記憶部204に保管され、AM体の検査情報となる。
【0037】
制御装置30は、可視光画像処理部100での可視光画像判定結果と赤外線画像処理部200での赤外線画像判定結果を統合または補正して固化層表面状態の良・不良判定を行う。
【0038】
なお、上述した付加造形装置10aは、
図1に示した態様に限られない。
図4は本発明の付加造形体の製造システムの第2の例を示す模式図である。
図1では原料粉末保管領域110a、付加造形領域111aおよび原料粉末回収領域112aが同じ高さに並べられているのに対し、
図4では原料粉末保管領域110bが付加造形領域111bよりも上部に位置している。原料粉末保管領域110bから原料粉末14が落下して粉末供給機13で付加造形領域111bに供給される。
【0039】
図5は本発明の付加造形体の製造システムの第3の例を示す模式図である。
図5に示す付加造形体の製造システム1cは、
図4と同様に原料粉末保管領域110cが付加造形領域111cよりも上部に位置し、粉末供給機を兼ねる構成であってもよい。
【0040】
[付加造形体の製造方法]
図6は本発明の付加造形体の製造方法を示すフロー図である。以下、本発明の付加造形体の製造方法について、
図1〜3および
図6を参照しながら説明する。まず始めに、
図1の粉末供給機13によって原料粉末保管領域110aから付加造形領域111aに原料粉末を移動し、粉末層を形成する(S1)。次に、可視光画像撮影機6によって粉末層を撮影し、可視光画像を取得する(S2)。撮影は、制御装置30の可視光画像処理部100の撮影条件データベース105に格納されている撮影条件によって実施される。そして、可視光画像処理部100によって、粉末層の状態が正常か否か(粉末層の良否)を判定する(S3)。リファレンスデータベース103に格納されている閾値データを元に観察エリアの凹凸の判定を行う。ここで不良判定が出た場合は、制御装置30は粉末層の形成をリトライするための専用動作指令を実行し、再度、粉末層形成(S1)および粉末層撮影(S2)が行われる。なお、S1〜S2の繰り返し数が指定回数に達した場合は、エラー発生として付加造形装置10aの動作を止めることができる。
【0041】
S3で粉末層の状態が正常と判定された場合には、粉末層にレーザー光16を照射して粉末層を固化する(S4)。レーザー光照射工程中に溶融池観察工程(S5)を実施しても良い。溶融池の観察で、溶融池の状態が正常と判定された場合は、固化層が正常に形成されたと判断し、後述する固化層の撮影を省略して次層の粉末層を形成してもよい。溶融池の状態が正常でないと判定された場合は、固化層に何らかの異常をもたらす場合が大きい。後述する赤外線画像による判定と合わせて固化層の状態が正常か否かを判定する。
【0042】
粉末層を固化して固化層を形成した後、固化層を撮影し(S7)、固化層の状態が正常か否かを判定する(S8)。観察は画像撮影によって実施し、可視光画像撮影機6および赤外線画像撮影機7の両方を用いる。固化層が正常であると判定された場合で、積層回数またはAM体の高さが所定値以上である場合には造形処理を終了する。一方、固化層が正常でないと判定された場合は、付加造形処理の条件を修正し、粉末層の形成から実施する。このときの粉末層形成の条件は、粉末層の厚さを通常よりも薄く敷き、全層の固化層を通常条件よりも深く溶融させる条件を設定することが好ましい。再び固化層を形成する工程(S8)を行い、固化層が正常と判断された場合には、付加造形処理の条件を通常に戻すことができる。
【0043】
以上、説明したように、本発明によれば、付加造形中の欠陥の評価の精度を向上し、付加造形体の品質を向上することが可能な付加造形体の製造システムおよび付加造形体の製造方法を提供することができることが実証された。本発明は、付加造形処理において繰り返される粉末層を形成する工程と固化層を形成する工程において、各工程の粉末層または固化層の検査を行うことができるため、製造されたAM体の品質を向上し、歩留まりを向上することができる。また、本発明は、特に雰囲気制御可能な処理室または加熱器を備えた付加造形処理装置において、AM体の品質を向上することができる。
【0044】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1a,1b,1c…付加造形体の製造システム、2…レーザー発振器、3…プロセスファイバ(光学系光路)、4…ガルバノヘッド、5…レーザー同軸照明、6…可視光画像撮影機、7…赤外線画像撮影機、8…溶融池観察機、10a,10b,10c…付加造形装置、11…処理室、12a…ガス供給管、12b…ガス排気管、13…粉末供給機、14…原料粉末、15a,15b…試料台、16…レーザー光、17…AM体、20…検査装置、30…制御装置、40…可視光透過レンズ、41…可視光画像撮影用照明、42…赤外線透過レンズ、43…、レーザー導光用レンズ、110a,110b,110c…原料粉末保管領域、111a,111b,111c…付加造形領域、112a…原料粉末回収領域。