(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、
図1から
図6を用いて、実施の形態1のマイクロ波終端器51を説明する。
図1は、マイクロ波終端器51の構成を示す。マイクロ波終端器51は、入力端子8に、直列抵抗7と定インピーダンス回路6とが縦続接続されている。定インピーダンス回路6は、抵抗1と先端開放線路2との直列回路に、抵抗3と、一端がスルーホール5で短絡された先端短絡線路4との直列回路が並列に接続されている。定インピーダンス回路6は、マイクロ波集積回路技術を用いて、誘電体基板上に形成されている。先端短絡線路4の一端を短絡する方法として、金属導体を用いて直接短絡する方法または低周波から高周波帯まで十分、低インピーダンスを有するキャパシタを介して高周波的に短絡する方法がある。
図1では、先端短絡線路4の一端がスルーホール5を介して短絡されている場合を示している。
【0013】
抵抗1、抵抗3及び直列抵抗7を、それぞれR1、R2、R3と表記する。先端開放線路2の特性インピーダンスをZ1、電気長をθ1、先端短絡線路4の特性インピーダンスをZ2、電気長をθ2と表記する。このように表記する場合、実施の形態1のマイクロ波終端器51の等価回路51aは
図2のように表される。
図2は、マイクロ波終端器51の等価回路51aを示す。等価回路51sにおいて、a点から見た定インピーダンス回路6のインピーダンスZaは、下記の(式1)で表わす事ができる。
【0014】
***実施の形態1の作用の説明***
Za=[R1・R2+Z1・Z2・cotθ1・tanθ2+j・(R1・Z2・tanθ2−R2・Z1・cotθ1)]/[R1+R2+j・(Z2・tanθ2−Z1・cotθ1)] (式1)
【0015】
(式1)において、虚数部が零になる条件を求めると以下のようになる。
R1=R2、θ1=θ2、Z1・Z2=R1・R2。
即ち、
抵抗1と抵抗3が等しい。
先端開放線路2と先端短絡線路4との電気長が等しい。
先端開放線路2と先端短絡線路4との特性インピーダンスの積と、抵抗1と抵抗3との積が等しい。
なお、θ1=θ2であれば、θ1、θ2は任意であっても(式1)の虚数部は零となる。
このような条件で、R1=R2=RaとするとZaは以下の(式2)となる。
【0016】
Za=Ra (式2)
図3は、マイクロ波終端器の簡易的な等価回路を示す図である。即ち、定インピーダンス回路6のインピーダンスZaは、等価的なシャント抵抗Raとなる。従って、マイクロ波終端器51は、簡易的に
図3に示すような直列抵抗7のR3と、シャント抵抗Raとの直列回路で表される。
図3の回路において、入力端子8に接続される電源インピーダンスをZ0(通常50Ω)とすれば、反射係数Γは以下の(式3)で表わされる。なお、電源インピーダンスZ0は通常50Ωである。
【0017】
Γ=[(R3+Ra)−Z0]/[(R3+Ra)+Z0] (式3)
【0018】
(式3)において,R3とRaとの和をZ0に等しく選ぶ事により、
Γ=0となる。
即ち、周波数に依存する事なく、広帯域にわたって良好な反射特性のマイクロ波終端器51を実現できる。
また、R3とRaとの和をZ0にほぼ等しく選んだ場合、
Γ≒0となり、
実用上問題とならない良好な反射特性が得られる。
なお、(R3+Ra)=Z0、あるいは、R3とRaとの和がZ0にほぼ等しく選ばれた構成のマイクロ波終端器51では、定インピーダンス回路6の等価的なシャント抵抗Raは
Ra<Z0に選ばれる。
【0019】
図4は、マイクロ波終端器51の反射特性の計算結果の一例である。
図4では、
R1=R2=30Ω、
Z1=Z2=30Ω、
θ1=θ2=30°、
R3=20.2Ω、
Z0=50Ω
に選び、周波数0〜20GHzにわたって計算した結果が示されている。
このような値に選ぶことにより、マイクロ波終端器51のインピーダンスは50.2(Ω)となる。
つまり、前述のように、
R1=R2=Raであるので
Ra=30Ω
である。
よって
図3から、R3+Ra=20.2+30=50.2(Ω)
となる。
図4に示すように、周波数に関係なく、反射波が−54dBと良好な反射特性が得られる。
また、R3=31.1Ωの場合、31.1+30=61.1(Ω)であるので、マイクロ波終端器51のインピーダンスは61.1Ωとなり、実用上問題とならない−20dBの反射特性が得られる。
ここで電源インピーダンスZ0=50(Ω)であるので、
R3+Ra=31.1+30=61.1(Ω)
の値、Z0の1.22倍である。
さらに、R3=20Ωに選んだ場合、マイクロ波終端器51のインピーダンスは50Ωとなる。
この場合、反射特性は−∞になるり、さらに良好な反射特性が得られる。
図4では周波数0から20GHzにわたって計算した結果を示したが、0〜∞の周波数でも、
図4に示す特性と同じ特性が得られる。
【0020】
また、(R3+Ra)=Z0、あるいは、R3とRaとの和がZ0にほぼ等しく選ばれた構成のマイクロ波終端器51では、入力端子8から入力されたマイクロ波は直列抵抗7(R3)で一部吸収され、残りは定インピーダンス回路6の抵抗1(R1)及び抵抗3(R2)でそれぞれ吸収される。
このため、例えば、2Wの耐電力を得るには従来のものでは抵抗の面積を4mm
2にする必要であった。しかし、この構成のマイクロ波終端器51では、それぞれの抵抗の面積を1.3mm
2と、従来の1/3の面積にできる。
このように、マイクロ波を複数個の抵抗で分散して吸収させる。
つまり、抵抗内で消費される電力が均一となるような波長に比べ無視できる大きさの抵抗を複数個配置する。複数個数の配置によって、耐電力に必要なトータル面積を確保して、抵抗の面積に比例した耐電力を得る。
【0021】
実施の形態1のマイクロ波終端器51では、直列抵抗7(R3)と定インピーダンス回路6とを縦続接続し、直列抵抗7と定インピーダンス回路6の等価的なシャント抵抗との和を、入力端子8に接続される電源インピーダンスと等しいか、ほぼ等しく選んでいる。
ここで、「入力端子8に接続される電源インピーダンスと等しいか、ほぼ等しい」という範囲は、入力端子8に接続される電源インピーダンスの0.75倍以上1.25倍以下である。これは、上記で述べた、電源インピーダンスZ0=50(Ω)、R3+Ra=61.1(Ω)に基づいている。つまり50(Ω)/61.1(Ω)=0.818に基づいている。「入力端子8に接続される電源インピーダンスと等しいか、ほぼ等しい」の範囲は、「入力端子8に接続される電源インピーダンスの0.75倍以上1.25倍以下」であることは、実施の形態1から実施の形態4において同じである。
【0022】
また、抵抗内で消費される電力が均一となるような、波長に比べ無視できる大きさの抵抗1、抵抗3および直列抵抗7を用いて、耐電力に必要な抵抗のトータル面積を確保している。このため、マイクロ波終端器51によれば、広帯域にわたって反射特性が良好で、抵抗の面積に比例した耐電力の高い特性が得られる効果がある。
【0023】
図5は、マイクロ波終端器51の変形例であるマイクロ波終端器51−1を示す。
図6は、等価回路51−1aである。
図1のマイクロ波終端器51では入力端子8に1個の直列抵抗7を接続した場合について示した。
図5及び
図6では、複数個の抵抗が直列抵抗7として、入力端子8に接続される。
図5及び
図6の構成においても複数個の直列抵抗7と定インピーダンス回路6の等価的なシャント抵抗の和を電源インピーダンスと等しく、あるいはほぼ等しく選ぶ事により、広帯域にわたって良好な反射特性のマイクロ波終端器51−1が得られる。また、入力端子8から入力されたマイクロ波をより多くの抵抗で吸収する事ができるので、より耐電力の高いマイクロ波終端器を実現できる効果がある。
【0024】
実施の形態1のマイクロ波終端器についてまとめると、以下のようである。
マイクロ波終端器は、入力端子、入力端子に接続された第1の抵抗、及び定インピーダンス回路を備えている。定インピーダンス回路は、第2の抵抗と先端開放線路との直列回路と、第3の抵抗と先端短絡線路との直列回路とが並列接続されており、第1の抵抗と従属接続されている。マイクロ波終端器は、第1の抵抗と、定インピーダンス回路の等価なシャント抵抗との合成抵抗の値が、入力端子に接続される電源インピーダンスの0.75倍以上1.25倍以下である。
【0025】
***実施の形態1の効果***
実施の形態1のマイクロ波終端器によれば、定インピーダンス回路は、入力端子と接地との間に装荷された等価的なシャント抵抗と見なす事ができる。このため、マイクロ波終端器の入力端子に接続された直列抵抗と、定インピーダンス回路の等価的なシャント抵抗との直列回路が、入力端子と接地との間に装荷された状態になる。従って、これらの抵抗の和を入力端子に接続される電源インピーダンスと等しいか、ほぼ等しく選ぶ事により、広帯域にわたって反射特性の良好なマイクロ波終端器が得られる。しかも、マイクロ波は入力端子に接続された直列抵抗と定インピーダンス回路を構成する2つの抵抗で分散して吸収される。このため、各抵抗が波長に比べて無視できる形状であっても、耐電力に必要なトータル面積を確保できるので、抵抗の面積に比例した耐電力特性が得られる効果もある。
【0026】
実施の形態2.
図7から
図10を用いて、実施の形態2のマイクロ波終端器52を説明する。なお、同一あるいは相当部分には同一符号を付してある。
図7は、マイクロ波終端器52の構成を示す。マイクロ波終端器52は、マイクロ波終端器51の直列抵抗7と定インピーダンス回路6との間に、伝送線路9が装荷された構成である。
【0027】
図8は、マイクロ波終端器の等価回路52aを示す。伝送線路9の特性インピーダンスをZ3、電気長をθ3と表記すると、
図7のマイクロ波終端器52は、
図8の等価回路52aで表される。伝送線路9の特性インピーダンスZ3を、定インピーダンス回路6の等価的なシャント抵抗Raと等しく選ぶ。この事により、伝送線路9を介して定インピーダンス回路6側を見たインピーダンス、即ち、
図8のb点から右側を見たインピーダンスは、伝送線路9の電気長θ3に関係なく、常に、Raとなる。
【0028】
このため、マイクロ波終端器52の簡易的な等価回路52aは
図3と同一となる。従って、実施の形態1で説明したように、マイクロ波終端器52では、広帯域で、耐電力の高い特性が得られる。さらに、マイクロ波終端器52の構成では、直列抵抗7(R3)と定インピーダンス回路6との間隔を自由に選べるため、設計の自由度が増す効果もある。
【0029】
図9は、マイクロ波終端器52の変形例であるマイクロ波終端器52−1を示す。マイクロ波終端器52−1では、直列抵抗7と定インピーダンス回路6との間に、抵抗10と伝送線路9との直列回路が装荷されている。
図10は、マイクロ波終端器52−1の等価回路52−1aを示す。ここで、抵抗10の抵抗値をR4とすれば、マイクロ波終端器52−1は、
図10のような等価回路で表すことができる。即ち、
図10の右側に示すように、マイクロ波終端器52−1は、簡易的に直列抵抗7のR3と、抵抗10のR4と、定インピーダンス回路6の等価的なシャント抵抗Raとの、直列回路と見なす事ができる。
【0030】
このため、マイクロ波終端器52−1では、R3とR4とRaの和を電源インピーダンスZ0に等しく、あるいはほぼ等しく選ぶことにより、広帯域で、耐電力の高いマイクロ波終端器を得る事ができる。このように、マイクロ波終端器52−1では、直列抵抗7と定インピーダンス回路6との間隔を自由に選べるため設計の自由度が増す。また、マイクロ波終端器52−1では、マイクロ波を吸収するための抵抗10を付加する事により、耐電力のより高いマイクロ波終端器が得られる効果もある。
【0031】
(1)
図7及び
図9では、直列抵抗7と定インピーダンス回路6との間に、「伝送線路9」あるいは「抵抗10と伝送線路9との直列回路」を装荷した場合について説明した。
実施の形態2のマイクロ波終端器では、入力端子8と直列抵抗7との間に、「伝送線路9」あるいは「抵抗10と伝送線路9との直列回路」が装荷されてもよい。この場合も、直列抵抗7と定インピーダンス回路6との間に、「伝送線路9」あるいは「抵抗10と伝送線路9との直列回路」が装荷された場合と同じ効果がある。
(2)なお、抵抗10が、「直列抵抗7と定インピーダンス回路6との間」または「入力端子8と直列抵抗7との間」に配置されてもよいが、この場合は、
図5及び
図6で説明した構成になる。
【0032】
実施の形態2のマイクロ波終端器についてまとめると、以下のようである。
(1)マイクロ波終端器が伝送線路を有する場合は以下のようである。マイクロ波終端器は、入力端子8と第1の抵抗である直列抵抗7との間と、直列抵抗7と定インピーダンス回路6との間とのいずれかの位置に、伝送線路9を備えている。
(2)マイクロ波終端器が、直列抵抗7とは異なる第4の抵抗を有する場合は以下のようである。マイクロ波終端器は、入力端子と、入力端子に接続された第1の抵抗と、第1の抵抗と従属接続された定インピーダンス回路と、入力端子と第1の抵抗との間と、第1の抵抗と定インピーダンス回路との間とのいずれかの位置に装荷された第4の抵抗とを備えている。定インピーダンス回路は、第2の抵抗と先端開放線路との直列回路と、第3の抵抗と先端短絡線路との直列回路とが並列接続され、第1の抵抗と従属接続されている。ここでマイクロ波終端器は、第1の抵抗と、定インピーダンス回路の等価なシャント抵抗と、第4の抵抗との合成抵抗の値が、入力端子に接続される電源インピーダンスの0.75倍以上1.25倍以下である。
(3)マイクロ波終端器が、第4の抵抗及び伝送線路を有する場合は以下のようである。
マイクロ波終端器は、第4の抵抗と直列接続された伝送線路を備える。
【0033】
***実施の形態2の効果***
また、実施の形態2のマイクロ波終端器によれば、入力端子と直列抵抗との間、あるいは直列抵抗と定インピーダンス回路との間に、伝送線路あるいは「抵抗と伝送線路との直列回路」が装荷される。そして、直列抵抗と抵抗および定インピーダンス回路の等価的なシャント抵抗の和、つまり合成抵抗を、電源インピーダンスと等しいか、ほぼ等しく選ぶことにより、広帯域にわたって良好な反射特性が得られる。また、入力端子から入力されたマイクロ波を各抵抗で分散して吸収させることができるため、高耐電力特性が得られる。
さらに、伝送線路を接続することで、入力端子と直列抵抗との間、あるいは直列抵抗と定インピーダンス回路との間の間隔を、自由に調整できるので、マイクロ波終端器の設計の自由度が増す効果もある。
【0034】
実施の形態3.
図11から
図14を用いて、実施の形態3のマイクロ波終端器53を説明する。
なお、同一あるいは相当部分には同一符号を付してある。
図11は、マイクロ波終端器53の構成図である。入力端子8には、抵抗11と先端開放線路12との直列回路に、抵抗13と先端短絡線路14との直列回路が並列接続された定インピーダンス回路15と、既に説明した定インピーダンス回路6とが縦続接続されている。
【0035】
抵抗11および抵抗13をそれぞれR5、R6とし、先端開放線路12の特性インピーダンスをZ4、電気長をθ4、先端短絡線路14の特性インピーダンスをZ5、電気長をθ5とすれば、マイクロ波終端器53は
図12の等価回路53aで表される。
図12は、マイクロ波終端器53の等価回路53aを示す。
定インピーダンス回路15において、インピーダンスの虚数部が零になる条件を求めると定インピーダンス回路6と同様に以下のようである。
R5=R6、
θ4=θ5、
Z4・Z5=R5・R6。
即ち、
抵抗11(R5)と抵抗13(R6)が等しい。
先端開放線路12(θ4)と先端短絡線路14(θ5)との電気長が等しい。
先端開放線路12(Z4)と先端短絡線路14(Z5)との特性インピーダンスとの積と、抵抗11(R5)と抵抗13(R6)との積がそれぞれ等しい。
これにより、θ4、θ5の電気長に関係なく、定インピーダンス回路15は、等価的にシャント抵抗のみとなる。
【0036】
このような条件で、R5=R6=Rbとすると、
定インピーダンス回路15のインピーダンスはRbとなる。
図13は、マイクロ波終端器53の簡易的な等価回路を示す。マイクロ波終端器53の簡易的な等価回路は、
図13に示すように、入力端子8と接地間にRaとRbとが並列に装荷された構成と見なせる。ここで、RaとRbとの並列回路の和(合成抵抗)を、電源インピーダンスZ0と等しく、あるいはほぼ等しく選ぶことにより、広帯域にわたって、反射特性の良好なマイクロ波終端器が得られる。
なお、この構成のマイクロ波終端器53では
Ra>Z0、Rb>Z0
に選ばれる。
【0037】
図14は、マイクロ波終端器53の反射特性の計算結果の一例である。
ここでは
R1=R2=Ra=90Ω、
Z1=Z2=90Ω、
θ1=θ2=45°、
R5=R6=Rb=110Ω、
Z4=Z5=110Ω、
θ4=θ5=30°、
Z0=50Ω
に選び、周波数0〜20GHzわたって計算した結果である。
このような値に選ぶことにより、マイクロ波終端器53のインピーダンスは49.5Ωとなり、
図14に示すように、周波数に関係なく、反射波が−58dBと良好な反射特性が得られる。
また、R5=R6=112.5Ω、Z4=Z5=112.5Ωに選んだ場合、マイクロ波終端器54のインピーダンスは50Ωとなり、−∞と、さらに良好な反射特性が得られる。
【0038】
また、力端子8から入力されたマイクロ波は、定インピーダンス回路6の抵抗1と抵抗3および定インピーダンス回路15の抵抗11と抵抗13とでそれぞれ吸収される。このため、抵抗1、抵抗3、抵抗11および抵抗13のトータル面積に比例した耐電力特性も得られる。
さらに、Ra>Z0、Rb>Z0に選ぶことにより、それぞれの定インピーダンス回路6、15を構成する先端開放線路2、12および先端短絡線路4、14の特性インピーダンスも電源インピーダンスよりも高くできるので、定インピーダンス回路の小型化もできる効果もある。
【0039】
(1)なお、以上はRaとRbとが異なる場合について述べたが、RaとRbとが等しい場合であっても効果は同じである。
(2)また、入力端子8に「定インピーダンス回路6と定インピーダンス回路15」とを縦続接続したについて述べたが、3つ以上の定インピーダンス回路を接続した場合であっても良い。これにより、より高い耐電力特性が得られる。
【0040】
実施の形態3のマイクロ波終端器についてまとめると、以下のようである。
マイクロ波終端器は、入力端子と、入力端子に対して従属接続された複数の定インピーダンス回路とを備える。複数の定インピーダンス回路のそれぞれの定インピーダンス回路は、抵抗と先端開放線路との直列回路と、抵抗と先端短絡線路との直列回路とが並列接続されている。マイクロ波終端器では、複数の定インピーダンス回路のそれぞれの定インピーダンス回路の等価なシャント抵抗の合成抵抗値が、入力端子に接続される電源インピーダンスの0.75倍以上1.25倍以下である。
【0041】
***実施の形態3の効果***
実施の形態3のマイクロ波終端器は、抵抗と先端開放線路との直列回路と、抵抗と先端短絡線路との直列回路とが並列接続された定インピーダンス回路が、入力端子に対して、複数個、縦続接続された構成である。実施の形態3のマイクロ波終端器では、それぞれの定インピーダンス回路の持つ等価的なシャント抵抗が、入力端子と接地との間に、複数個並列に装荷された構成と見なす事ができる。このため、これらの複数個の定インピーダンス回路の等価的な並列抵抗の和、つまり合成抵抗を、電源インピーダンスに等しいか、ほぼ等しく選ぶ事により、広帯域にわたって良好な反射特性が得られる。
また、入力端子から入力されたマイクロ波は定インピーダンス回路を構成する複数個の抵抗で分散して吸収される。このため、各抵抗が波長に比べて無視できる形状であっても、耐電力に必要な面積を確保でき、抵抗の面積に比例した耐電力特性が得られる。
さらに、複数個の定インピーダンス回路の等価的な抵抗を電源インピーダンスよりも高く選べる。
よって、それぞれの定インピーダンス回路を構成する先端開放線路および先端短絡線路の特性インピーダンスも電源インピーダンスよりも高くできるので、マイクロ波終端器の小形化もできる効果もある。
【0042】
実施の形態4.
以下、
図15から
図19を用いて実施の形態4のマイクロ波終端器54を説明する。
なお、同一あるいは相当部分には同一符号を付してある。
図15は、マイクロ波終端器54の構成を示す。
図15のマイクロ波終端器54は、
図11に示した実施の形態3の定インピーダンス回路6と定インピーダンス回路15との間に、伝送線路16を装荷した構成である。伝送線路16の特性インピーダンスをZ6、電気長をθ6とすると、
図16に示すような等価回路54aで表す事ができる。
図16は、マイクロ波終端器54の等価回路54aである。
【0043】
図16の等価回路54aにおいて、a点から定インピーダンス回路6側を見たインピーダンスをRaとし、伝送線路16の特性インピーダンスをZ6=Raに選ぶ。その場合、伝送線路16の左端、即ち、b点から定インピーダンス回路6側を見たインピーダンスは、伝送線路16の電気長θ6に関係なく、Raとなる。このため、入力端子8、即ち、c点から定インピーダンス回路6側を見た簡易的な等価回路は、実施の形態3の
図13と同じになる。従って、マイクロ波終端器54においても広帯域で、耐電力の高い特性が得られる。また、マイクロ波終端器54の構成のように伝送線路16を装荷する事で、定インピーダンス回路6と定インピーダンス回路15との間隔を自由に選べるため、設計の自由度が増す効果もある。
【0044】
図17は、マイクロ波終端器54の変形例であるマイクロ波終端器54−1の構成図である。マイクロ波終端器54−1では、
図15の定インピーダンス回路15と伝送線路16との間に、抵抗17が装荷されている。
図18は、マイクロ波終端器54−1の等価回路54−1aである。ここで抵抗17をR7とすれば、マイクロ波終端器54−1は
図18に示す等価回路54−1aで表される。
図19は、等価回路54−1aの簡易的な等価回路である。等価回路54−1aは、簡易的な等価回路として
図19として表される。即ち、等価回路54−1aは、定インピーダンス回路6の等価的なシャント抵抗Raと抵抗R7との直列回路に、定インピーダンス回路15の等価的なシャント抵抗Rbが並列接続された回路となる。従って、マイクロ波終端器54−1では、実施の形態1から実施の形態3と同様に、Ra、RbおよびR7の和、すなわちRa、RbおよびR7の合成抵抗値を電源インピーダンスZ0と等しく、または、ほぼ等しく選ぶ事により、広帯域で耐電力の高い特性が得られる。
【0045】
Ra、RbおよびR7の合成抵抗値を電源インピーダンスZ0と等しく、または、ほぼ等しく選ぶ構成のものでは、
Ra<Z0、Rb>Z0となる。
実施の形態1および実施の形態2の場合、
Ra<Z0、
実施の形態3の場合は
Ra>Z0
に限定される。
これに対し、
抵抗17を装荷しないマイクロ波終端器54の場合は
Ra>Z0となる。
また、抵抗17を装荷するマイクロ波終端器54−1の場合は
Ra<Z0
となる。
よって、定インピーダンス回路6の等価的なシャント抵抗Raに限定されることなく、設計の自由度がさらに増す効果もある。
【0046】
(1)以上は、伝送線路16あるいは「伝送線路16と抵抗17との直列回路」を、定インピーダンス回路6と定インピーダンス回路15との間に装荷した場合について述べたが、抵抗17のみを定インピーダンス回路6と定インピーダンス回路15との間に装荷しても良い。
(2)また、伝送線路16あるいは「伝送線路16と抵抗17との直列回路」を、入力端子8と定インピーダンス回路15との間に装荷しても良い。
(3)さらに、入力端子8と定インピーダンス回路15との間、および、定インピーダンス回路6と定インピーダンス回路15との間の両方に、伝送線路16あるいは「伝送線路16と抵抗17との直列回路」を装荷した場合であっても同じである。
【0047】
実施の形態4のマイクロ波終端器についてまとめると、以下のようである。
(1)マイクロ波終端器は、入力端子と、入力端子に従属接続された複数の定インピーダンス回路のうち入力端子に隣接する定インピーダンス回路との間に、伝送線路を備える。
(2)マイクロ波終端器は、入力端子と、入力端子に対して従属接続された複数の定インピーダンス回路と、入力端子に従属接続された複数の定インピーダンス回路のうち入力端子に隣接する定インピーダンス回路と入力端子との間に配置された抵抗である入力側抵抗とを備えている。複数の定インピーダンス回路は、抵抗と先端開放線路との直列回路と、抵抗と先端短絡線路との直列回路とが並列接続されている。ここで、マイクロ波終端器は、入力側抵抗に直列接続する伝送線路を備える構成でもよい。マイクロ波終端器では、複数の定インピーダンス回路のそれぞれの定インピーダンス回路の等価なシャント抵抗と入力側抵抗との合成抵抗の値が、入力端子に接続される電源インピーダンスの0.75倍以上1.25倍以下である。
(3)マイクロ波終端器は、入力端子と、入力端子に対して従属接続された複数の定インピーダンス回路と、従属接続された複数の定インピーダンス回路のうち隣接する定インピーダンス回路どうしの間に配置された「複数の抵抗」とを備えている。
複数の定インピーダンス回路は、抵抗と先端開放線路との直列回路と、抵抗と先端短絡線路との直列回路とが並列接続されている。ここで、マイクロ波終端器は、上記の「複数の抵抗」のそれぞれの抵抗と直列接続する抵抗ごとの伝送線路を備える構成でもよい。
マイクロ波終端器は、複数の定インピーダンス回路のそれぞれの定インピーダンス回路の等価なシャント抵抗と上記の「複数の抵抗」との合成抵抗の値が、入力端子に接続される電源インピーダンスの0.75倍以上1.25倍以下である。
【0048】
***実施の形態4の効果***
実施の形態4のマイクロ波終端器によれば、入力端子と定インピーダンス回路との間、または複数個の定インピーダンス回路における定インピーダンス回路と定インピーダンス回路との間に、直列に、抵抗、伝送線路、「抵抗と伝送線路との直列回路」のいずれかを装荷する。そして、直列に装荷された抵抗と、定インピーダンス回路の等価的な複数のシャント抵抗との和(合成抵抗)を、電源インピーダンスと等しいか、ほぼ等しく選ぶ。これにより、広帯域にわたって良好な反射特性が得られる。
また、マイクロ波は直列に装荷された抵抗と、定インピーダンス回路の等価的な複数個のシャント抵抗で分散して吸収される。このため、各抵抗が波長に比べて無視できる形状であっても耐電力に必要な面積を確保でき、抵抗の面積に比例した耐電力特性が得られる。
さらに、伝送線路を接続することで、入力端子と直列に装荷された抵抗との間、あるいは定インピーダンス回路と定インピーダンス回路との間の間隔を自由に調整できる。
また、伝送線路を接続することで、定インピーダンス回路の等価的なシャント抵抗を、かならずしも電源インピーダンスよりも高くする必要がなくなり、マイクロ波終端器の設計の自由度がより増す効果もある。
【0049】
なお、以上の実施の形態1から実施の形態4ではマイクロ波終端器の場合について述べたが、実施の形態1から実施の形態4の構成は、マイクロ波抵抗減衰器にも適用できる。