(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は減速機構付モータをコネクタ接続部側から見た斜視図を、
図2は減速機構付モータを出力軸側から見た斜視図を、
図3は減速機構付モータの内部構造を説明する斜視図を、
図4はピニオンギヤとヘリカルギヤとの噛み合い部分を拡大した斜視図を、
図5は
図4のA−A線に沿う断面図を、
図6は実施の形態1における芯間ピッチのずれ量と圧力角およびバックラッシの変化を説明する説明図を、
図7は比較例における芯間ピッチのずれ量と圧力角およびバックラッシの変化を説明する説明図を、
図8は実施の形態1および比較例のバックラッシの変化を比較したグラフを、
図9は実施の形態1および比較例の圧力角の変化を比較したグラフをそれぞれ示している。
【0027】
図1および
図2に示される減速機構付モータ10は、例えば、自動車等の車両に搭載されるワイパ装置(図示せず)の駆動源に用いられるものである。より具体的には、減速機構付モータ10は、フロントガラス(図示せず)の前方側に配置され、かつフロントガラス上に揺動自在に設けられたワイパ部材(図示せず)を、所定の払拭範囲(下反転位置と上反転位置との間)で揺動させるようになっている。
【0028】
減速機構付モータ10は、その外郭を形成するハウジング11を備えている。そして、このハウジング11の内部には、
図3に示されるように、ブラシレスモータ20および減速機構30が回転自在に収容されている。ここで、ハウジング11は、アルミ製のケーシング12およびプラスチック製のカバー部材13から形成されている。
【0029】
図1および
図2に示されるように、ケーシング12は、溶融されたアルミ材料を射出成形することにより、略お椀型形状に形成されている。具体的には、ケーシング12は、底壁部12aと、その周囲に一体に設けられた側壁部12bと、ケーシング12の開口側(図中左側)に設けられたケースフランジ12cと、を備えている。
【0030】
底壁部12aの略中央部分には、出力軸34を回転自在に保持する筒状のボス部12dが一体に設けられている。ボス部12dの径方向内側には、所謂メタルと呼ばれる筒状の軸受部材(図示せず)が装着されており、これにより出力軸34は、ボス部12dに対してがたつくこと無くスムーズに回転できるようになっている。
【0031】
また、ボス部12dの径方向外側には、ボス部12dを中心に放射状に延びる複数の補強リブ12eが一体に設けられている。これらの補強リブ12eは、ボス部12dと底壁部12aとの間に配置され、外観が略三角形形状に形成されている。これらの補強リブ12eは、ボス部12dの底壁部12aに対する固定強度を高めるものであって、ボス部12dが底壁部12aに対して傾斜する等の不具合の発生を防止している。
【0032】
さらに、底壁部12aのボス部12dから偏心した位置には、軸受部材収容部12fが一体に設けられている。軸受部材収容部12fは有底筒状に形成され、ボス部12dの突出方向と同じ方向に突出されている。そして、軸受部材収容部12fの内部には、
図3に示されるように、ピニオンギヤ31の先端側を回動自在に支持するボールベアリング33が収容されるようになっている。
【0033】
なお、
図2に示されるように、ボス部12dと出力軸34との間には、止め輪12gが設けられており、これにより、出力軸34がボス部12dの軸方向にがたつくことが防止される。よって、減速機構付モータ10の静粛性が確保されている。
【0034】
ハウジング11を形成するカバー部材13は、溶融されたプラスチック材料を射出成形することにより、略平板状に形成されている。具体的には、カバー部材13は、本体部13aと、その周囲に一体に設けられたカバーフランジ13bと、を備えている。そして、カバーフランジ13bは、Oリング等のシール部材(図示せず)を介して、ケースフランジ12cに突き当てられている。これにより、ハウジング11内への雨水等の進入が防止される。
【0035】
また、カバー部材13の本体部13aには、ブラシレスモータ20(
図3参照)を収容するモータ収容部13cが一体に設けられている。モータ収容部13cは有底筒状に形成され、ケーシング12側とは反対側に突出されている。モータ収容部13cは、カバー部材13をケーシング12に装着した状態で、ケーシング12の軸受部材収容部12fと対向している。そして、モータ収容部13cの内側には、ブラシレスモータ20のステータ21(
図3参照)が固定されるようになっている。
【0036】
さらに、カバー部材13の本体部13aには、車両側の外部コネクタ(図示せず)が接続されるコネクタ接続部13dが一体に設けられている。コネクタ接続部13dの内側には、ブラシレスモータ20に駆動電流を供給するための複数のターミナル部材13e(
図1では1つのみ示す)の一端側が露出されている。そして、これらのターミナル部材13eを介して、外部コネクタからブラシレスモータ20に駆動電流が供給される。
【0037】
なお、複数のターミナル部材13eの他端側とブラシレスモータ20との間には、ブラシレスモータ20の回転状態(回転数や回転方向等)を制御する制御基板(図示せず)が設けられている。これにより、出力軸34の先端側に固定されたワイパ部材が、フロントガラス上の所定の払拭範囲で揺動される。なお、制御基板は、カバー部材13における本体部13aの内側に固定されている。
【0038】
ハウジング11の内部に収容されるブラシレスモータ20は、
図3に示されるように、環状のステータ(固定子)21を備えている。ステータ21は、カバー部材13におけるモータ収容部13c(
図1参照)の内部に、回り止めされた状態で固定されている。
【0039】
ステータ21は、複数の薄い鋼板(磁性体)を積層して形成され、その径方向内側には複数のティース(図示せず)が設けられている。そして、これらのティースには、U相,V相,W相のコイル21aが、それぞれ集中巻き等により複数回巻装されている。これにより、それぞれのコイル21aに所定のタイミングで交互に駆動電流を供給することで、ステータ21の径方向内側に設けられたロータ22が、所定の回転方向に所定の駆動トルクで回転される。
【0040】
ステータ21の径方向内側には、微小隙間(エアギャップ)を介してロータ(回転子)22が回転自在に設けられている。ロータ22は、複数の薄い鋼板(磁性体)を積層して略円柱状に形成されたロータ本体22aを備えており、その外周部分には、筒状の永久磁石22bが設けられている。ここで、永久磁石22bは、その周方向にN極,S極,・・・と交互に磁極が並ぶよう着磁されている。そして、永久磁石22bはロータ本体22aに対して、接着剤等により一体回転可能に強固に固定されている。
【0041】
このように、本実施の形態に係るブラシレスモータ20は、ロータ本体22aの表面に永久磁石22bを固定したSPM(Surface Permanent Magnet)構造のブラシレスモータになっている。ただし、SPM構造のブラシレスモータに限らず、ロータ本体22aに複数の永久磁石を埋め込んだIPM(Interior Permanent Magnet)構造のブラシレスモータを採用することもできる。
【0042】
また、筒状に形成された1つの永久磁石22bに換えて、ロータ本体22aの軸線と交差する方向に沿う断面が略円弧状に形成された複数の永久磁石を、ロータ本体22aの周方向に磁極が交互に並ぶよう等間隔で配置したものであっても良い。さらには、永久磁石22bの極数は、ブラシレスモータ20の仕様に応じて、2極あるいは4極以上等、任意に設定することができる。
【0043】
ハウジング11の内部に収容される減速機構30は、
図3に示されるように、略棒状に形成されたピニオンギヤ(第1ギヤ)31と、略円盤状に形成されたヘリカルギヤ(第2ギヤ)32とを備えている。
【0044】
ここで、ピニオンギヤ31の軸線およびヘリカルギヤ32の軸線は互いに平行になっている。これにより、減速機構30では、互いの軸線が交差するウォームおよびウォームホイールを備えたウォーム減速機よりも、その体格をよりコンパクトにすることができる。
【0045】
また、ピニオンギヤ31は減速機構付モータ10の入力側(駆動源側)に配置され、ヘリカルギヤ32は減速機構付モータ10の出力側(駆動対象物側)に配置されている。つまり、減速機構30は、歯数が少ないピニオンギヤ31の高速回転を、歯数が多いヘリカルギヤ32の低速回転に減速するようになっている。
【0046】
ここで、ピニオンギヤ31の基端側は、ロータ本体22aの回転中心に圧入等により強固に固定されており、ピニオンギヤ31はロータ本体22aと一体回転するようになっている。つまり、ピニオンギヤ31は、減速機構付モータ10の駆動軸としての機能も備えており、ピニオンギヤ31自身を回転駆動するようになっている。つまり、ピニオンギヤ31は、本発明における回転軸を構成している。
【0047】
また、ピニオンギヤ31の先端側は、ボールベアリング33によって回動自在に支持されている。さらには、ヘリカルギヤ32の回転中心には、出力軸34の基端側が圧入等により強固に固定されており、出力軸34はヘリカルギヤ32と一体回転するようになっている。
【0048】
減速機構30を形成するピニオンギヤ31は金属製であって、
図3ないし
図6に示されるような形状になっている。具体的には、ピニオンギヤ31は、略円柱状に形成されたピニオン本体31aを有しており、その軸方向基端側がロータ本体22aに固定され、軸方向先端側がボールベアリング33に回動自在に支持されている。つまり、ピニオンギヤ31(ピニオン本体31a)の回転中心C1は、ロータ本体22aおよびボールベアリング33の回転中心に一致している。
【0049】
ピニオン本体31aの軸方向に沿うヘリカルギヤ32との対向部分には、螺旋状歯31bが一体に設けられている。具体的には、螺旋状歯31bの軸方向長さは、ヘリカルギヤ32の軸方向長さよりも若干長い長さ寸法に設定されている。これにより螺旋状歯31bは、ヘリカルギヤ32に確実に噛み合うことができる。
【0050】
そして、螺旋状歯31bは、ピニオンギヤ31の軸方向に螺旋状に連続して延びており、ピニオンギヤ31には、1つの螺旋状歯31bのみが設けられている。すなわち、ピニオンギヤ31の歯数は「1」に設定されている。
【0051】
図5に示されるように、螺旋状歯31bは、ピニオンギヤ31の軸方向と直交する方向に沿う断面が円形となるように形成され、その直径寸法はφとなっている。具体的には、本実施の形態では、φは5.45mmに設定されている。
【0052】
そして、螺旋状歯31bの中心C2は、ピニオンギヤ31の回転中心C1に対して、所定距離L1の分だけ偏心(オフセット)されている。これにより、螺旋状歯31bの中心C2は、ピニオンギヤ31の回転に伴って、軌跡OCを辿るようになっている。言い換えれば、軌跡OCは螺旋状歯31bの基準円を形成している。
【0053】
また、
図5に示されるように、ピニオンギヤ31の回転中心C1から螺旋状歯31bの中心C2に向けて(図中下方に向けて)補助線ALを引き、この補助線ALをさらに螺旋状歯31bの表面まで延ばすと、補助線ALと螺旋状歯31bの表面とが交差する。この交差点が、噛合凸部31cの頂点BPとなっている。
【0054】
ここで、噛合凸部31cは、螺旋状歯31bの一部を形成する噛み合い部分であり、当該噛合凸部31cにおいてもピニオンギヤ31の軸方向に螺旋状に延びている。そして、噛合凸部31cは、ヘリカルギヤ32の隣り合う斜歯32c同士の間の噛合凹部32dに噛み合わされるようになっている。
【0055】
噛合凸部31cは、螺旋状歯31bの一部を形成しており、ピニオンギヤ31の回転方向に沿って円弧形状に形成されている。これにより、噛合凸部31cの曲率半径R1は、φ/2(≒2.72mm)となっている。
【0056】
このように、噛合凸部31cは、螺旋状歯31bの頂点BP寄りの部分に設けられ、その曲率中心は、螺旋状歯31bの中心C2と一致している。ここで、噛合凸部31cの曲率半径R1は、本発明における第1曲率半径を構成している。
【0057】
そして、噛合凸部31cの頂点BPは、ピニオンギヤ31の回転に伴って、
図5に示されるピニオン本体31aの表面を形成する線上を辿るようになっている。これにより、ピニオンギヤ31の軸方向に沿う噛合凸部31cが、連続して次々と噛合凹部32dに噛み合わされていき、ひいては減速された状態でヘリカルギヤ32が回転される。
【0058】
なお、
図5においては、噛合凸部31cと噛合凹部32dとが互いに噛み合わされた状態を示している。
【0059】
減速機構30を形成するヘリカルギヤ32はプラスチック製であって、
図3ないし
図6に示されるような形状になっている。具体的には、ヘリカルギヤ32は、略円盤状に形成されたギヤ本体32aを備えており、当該ギヤ本体32aの中心部分に、出力軸34の基端側が圧入等により強固に固定されている。また、ギヤ本体32aの外周部分には、出力軸34の軸方向に延びる筒状部32bが一体に設けられている。
【0060】
筒状部32bの径方向外側には、筒状部32bの周方向に並ぶようにして、複数の斜歯32cが一体に設けられている。これらの斜歯32cは、ピニオンギヤ31の軸方向に対して所定角度で傾斜しており、これにより、螺旋状歯31bの回転に伴って、ヘリカルギヤ32は回転される。
【0061】
ここで、ヘリカルギヤ32に設けられる斜歯32cの数は「40」に設定されている。すなわち、本実施の形態では、ピニオンギヤ31およびヘリカルギヤ32からなる減速機構30の減速比は「40」となっている。
【0062】
図5に示されるように、隣り合う斜歯32c同士の間には、噛合凹部32dが設けられている。したがって、噛合凹部32dにおいても、斜歯32cと同様に、ピニオンギヤ31の軸方向に対して所定角度で傾斜している。そして、噛合凹部32dには、ピニオンギヤ31の噛合凸部31cが噛み合わされるようになっている。
【0063】
噛合凹部32dは、ヘリカルギヤ32の回転方向に沿って略円弧形状に形成されている。そして、ヘリカルギヤ32の回転方向に沿う噛合凹部32dの中央には、円弧状底部(底部)32eが設けられている。円弧状底部32eは、噛合凹部32dの最も深い部分を形成しており、噛合凸部31cと噛合凹部32dとの噛み合い状態において、噛合凸部31cの頂点BPの部分と、噛合凹部32dの円弧状底部32eとの間には、所定の隙間Sが形成されている。
【0064】
この隙間Sには、減速機構30の動作をスムーズにするための潤滑油G(図中網掛け部分)が収容されている。つまり、隙間Sは、潤滑油Gを保持する潤滑油保持部として機能するようになっている。なお、潤滑油Gは、
図6では図示を省略し、
図5のみに図示している。
【0065】
ここで、円弧状底部32eの曲率半径R2は、噛合凸部31cの曲率半径R1よりも小さい値に設定されている(R2<R1)。具体的には、本実施の形態では、曲率半径R2は2.5mmに設定されている。これにより、噛合凸部31cの頂点BPが噛合凹部32dの円弧状底部32eに底付きするようなことが起きても、隙間Sに保持された潤滑油Gが押し出されて枯渇するようなことが無い。よって、減速機構30のスムーズな動作が長期に亘って保たれる。
【0066】
また、噛合凹部32dは、一対の円弧状側壁部(側壁部)32fを備えている。これらの円弧状側壁部32fは、ヘリカルギヤ32の回転方向に沿う円弧状底部32eの両側に設けられ、円弧状底部32eの両側に滑らかに接続されている。すなわち、円弧状底部32eと一対の円弧状側壁部32fとの間には、段差等が何も形成されていない。これにより、噛合凸部31cと噛合凹部32dとの噛み合い点EPが、円弧状底部32eと円弧状側壁部32fとの間を行き来するようなことが起きても、減速機構30のスムーズな動作を阻害することが無い。
【0067】
ここで、一対の円弧状側壁部32fの離間距離、つまり噛合凹部32dの溝幅は、
図6の上段に示されるようにL2に設定されている。この離間距離L2は、螺旋状歯31bの直径寸法φよりも若干小さい寸法に設定されている(L2<φ)。
【0068】
さらに、一対の円弧状側壁部32fは、噛合凹部32dの径方向外側に向けて窪むように所定の曲率半径で形成されている。つまり、これらの円弧状側壁部32fは、円弧状の凹部になっている。そして、円弧状側壁部32fの曲率半径R3(
図5参照)は、噛合凸部31cの曲率半径R1の2倍の大きさに設定されている(R3=2×R1)。具体的には、本実施の形態では、曲率半径R3は5.45mmに設定されている。ここで、円弧状側壁部32fの曲率半径R3は、本発明における第2曲率半径を構成している。
【0069】
なお、本実施の形態においては、円弧状側壁部32fを、噛合凹部32dの径方向外側に向けて窪むように曲率半径R3で形成しているので、後述する実施の形態3の逆円弧状側壁部51(
図11参照)に比して、噛合凸部31cを噛合凹部32dから外れ難くできるというメリットを有している。
【0070】
それぞれの曲率半径R1ないしR3を纏めると、噛合凸部31cの曲率半径R1は2.72(=5.45÷2)mmになっており、円弧状底部32eの曲率半径R2は2.5mmになっており、円弧状側壁部32fの曲率半径R3は5.45mmになっている(R3>R1>R2)。
【0071】
そして、本実施の形態では、上述のような寸法関係を採ることで、ピニオンギヤ31とヘリカルギヤ32との噛み合い条件が以下のように設定されている。つまり、噛合凸部31cが噛合凹部32dに対して最も深く噛み合わされた状態(
図5に示される状態)において、噛合凸部31cの頂点BPと噛合凹部32dの円弧状底部32eとの間に潤滑油Gを保持する隙間Sが形成され、かつ噛合凸部31cと噛合凹部32dとの噛み合い点EPが円弧状側壁部32f上に配置される。
【0072】
ここで、
図5および
図6においては、円弧状底部32eと一対の円弧状側壁部32fとの境界部分を判り易くするために、当該境界部分に境界線BD(一点鎖線)を施している。
【0073】
次に、以上のように形成された減速機構30において、ピニオンギヤ31の回転中心C1とヘリカルギヤ32の回転中心C3(
図3参照)との間の距離(芯間ピッチ)がばらついた場合における、噛み合い点EPの変位に伴うバックラッシβおよび圧力角αの変化について、図面を用いて詳細に説明する。
【0074】
ここで、
図7は、従前の技術と略同様の比較例を示しており、ピニオンギヤ31は本発明と同じものを採用し、ヘリカルギヤ100については、一定の曲率半径Rの円弧形状に形成された噛合凹部101を備えたものを採用している。なお、噛合凸部31cの曲率半径R1と、噛合凹部101の曲率半径Rとは、略同じ大きさとなっている(R1≒R)。
【0075】
[芯間ピッチが±0の場合]
芯間ピッチのずれ量が0mmの場合には、
図6の中段に示されるように、本発明における噛み合い点EPは、円弧状側壁部32fの中央よりも少しだけ斜歯32cの歯先寄りの部分に配置されている。これに対し、
図7の中段に示されるように、比較例における噛み合い点EPにおいても、斜歯102の歯先寄りの部分に配置されている。
【0076】
このときのバックラッシβは、
図8に示されるように、本発明(実線)では中くらいよりも小さい値を示し、比較例(破線)では本発明よりも大きい(中くらいよりも大きい)値を示した。また、圧力角αにおいては、
図9に示されるように、本発明(実線)では中くらいの値を示し、比較例(破線)では本発明よりも小さい値を示した。
【0077】
[芯間ピッチが−0.1mmの場合]
芯間ピッチのずれ量がマイナス側に0.1mmの場合には、
図6の下段に示されるように、本発明における噛み合い点EPは、円弧状側壁部32fの略中央部分に配置されている。これに対し、
図7の下段に示されるように、比較例における噛み合い点EPは、大きく変位して噛合凹部101の最も深い部分寄りに配置されている。
【0078】
このときのバックラッシβは、
図8に示されるように、本発明(実線)では小さい値を示し、比較例(破線)では本発明よりも大きい値を示した。また、圧力角αにおいては、
図9に示されるように、本発明(実線)では[芯間ピッチが±0の場合]と同様に中くらいの値を示し、比較例(破線)では本発明よりも大幅に大きい値(略2倍の大きさ)を示した。
【0079】
[芯間ピッチが+0.1mmの場合]
芯間ピッチのずれ量がプラス側に0.1mmの場合には、
図6の上段に示されるように、本発明における噛み合い点EPは、芯間ピッチのずれ量が0mmの場合よりも、より斜歯32cの歯先に近い部分に配置されている。これに対し、
図7の上段に示されるように、比較例における噛み合い点EPは、斜歯102の歯先部分に配置されている。
【0080】
このときのバックラッシβは、
図8に示されるように、本発明(実線)では中くらいよりも大きい値を示し、比較例(破線)では本発明よりもさらに大きい値を示した。また、圧力角αにおいては、
図9に示されるように、本発明(実線)では[芯間ピッチが±0の場合]と同様に中くらいの値を示し、比較例(破線)では本発明よりも小さい値を示した。
【0081】
このように、ピニオンギヤ31とヘリカルギヤ32との芯間ピッチがばらついた場合に、本発明における減速機構30では、従前の技術と略同様の比較例における減速機構に比して、バックラッシβが小さい値側で変化することが判った(
図8参照)。
【0082】
また、圧力角αについては、比較例における減速機構では、中くらいよりも小さい値から大きい値の間で大きくばらつくが、本発明における減速機構30では、中くらいの値で安定する(ばらつかない)ことが判った(
図9参照)。
【0083】
以上詳述したように、実施の形態1では、ピニオンギヤ31に、当該ピニオンギヤ31の回転方向に沿って曲率半径R1の円弧形状に形成された噛合凸部31cを設け、ヘリカルギヤ32に、噛合凸部31cが噛み合わされる噛合凹部32dを設け、噛合凹部32dは、ヘリカルギヤ32の回転方向に沿う噛合凹部32dの中央に設けられる円弧状底部32eと、ヘリカルギヤ32の回転方向に沿う円弧状底部32eの両側に設けられる一対の円弧状側壁部32fと、を備え、円弧状側壁部32fが、曲率半径R1よりも大きい曲率半径R3の円弧状の凹部になっている。
【0084】
これにより、減速機構30を含む減速機構付モータ10の小型軽量化は勿論のこと、ピニオンギヤ31とヘリカルギヤ32との芯間ピッチがばらついても、圧力角αのばらつきを抑えることができ、かつバックラッシβを小さい値側で変化させることが可能となる。
【0085】
また、実施の形態1では、噛合凸部31cと噛合凹部32dとの噛み合い状態で、噛合凸部31cと円弧状底部32eとの間に、潤滑油Gを保持する隙間Sが設けられているので、減速機構30(減速機構付モータ10)のスムーズな動作を長期に亘って保つことができる。
【0086】
次に、本発明に係る複数の他の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0087】
図10は実施の形態2を示す
図5に対応した図を、
図11は実施の形態3を示す
図5に対応した図を、
図12は実施の形態4を示す
図5に対応した図を、
図13は実施の形態1,3,4の歯径比率とバックラッシのばらつきとの関係を示すグラフを、
図14は実施の形態1,3およびインボリュート歯車の歯径比率と圧力角のばらつきとの関係を示すグラフを、
図15は実施の形態1,3,4およびインボリュート歯車の芯間ピッチのずれ量と圧力角の変化を示すグラフをそれぞれ示している。
【0088】
[実施の形態2]
図10に示されるように、実施の形態2の減速機構40では、実施の形態1に比して、ヘリカルギヤ32に設けられる噛合凹部32dの形状のみが異なっている。実施の形態1の減速機構30(
図5参照)では、噛合凸部31cと噛合凹部32dとの噛み合い状態で、噛合凸部31cと円弧状底部32eとの間に、潤滑油Gを保持する隙間Sを形成していた。これに対し、実施の形態2では、噛合凸部31cと噛合凹部32dとの噛み合い状態で、噛合凸部31cと円弧状底部32eとの間に形成される隙間Sを狭くする(部分的に埋める)肉盛部41を設けている。
【0089】
具体的には、肉盛部41は、
図10に示されるように、円弧状底部32eの最も深い部分から厚み寸法Dの分だけ隙間Sを狭くしており、かつその表面は平坦面SFになっている。ただし、肉盛部41の厚み寸法Dの設定は、減速機構40の作動時において、噛合凸部31cと肉盛部41の平坦面SFとが接触しないように設定する。これにより、噛合凸部31cと平坦面SFとの間の微小な隙間Sに、潤滑油(図示せず)を保持することができる。
【0090】
以上のように形成した実施の形態2においても、実施の形態1と略同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態2では、斜歯32cの歯元の強度を高めることが可能となり、ひいては斜歯32cの変形を抑えてより高トルクの伝達が可能となる。
【0091】
[実施の形態3]
図11に示されるように、実施の形態3の減速機構50では、実施の形態1に比して、ヘリカルギヤ32に設けられる噛合凹部32dの形状のみが異なっている。実施の形態1の減速機構30(
図5参照)では、噛合凹部32dの径方向外側に向けて窪むように、曲率半径R3の円弧状側壁部32fを設けていた。つまり、実施の形態1では、円弧状側壁部32fが円弧状の凹部になっていた。これに対し、実施の形態3では、ヘリカルギヤ32の回転方向に沿う円弧状底部32eの両側に、一対の逆円弧状側壁部(側壁部)51を設けている。
【0092】
具体的には、逆円弧状側壁部51は、噛合凹部32dの径方向内側に向けて突出するように曲率半径R4で形成されている。つまり、これらの逆円弧状側壁部51は、円弧状の凸部になっている。なお、噛合凸部31cと円弧状底部32eとの間には、実施の形態1と同様に、潤滑油(図示せず)が設けられている。
【0093】
ここで、逆円弧状側壁部51の曲率半径R4は、噛合凸部31cの曲率半径R1の2倍の大きさに設定されている(R4=2×R1)。つまり、実施の形態1における円弧状側壁部32fの曲率半径R3と等しくなっている(R4=R3)。この逆円弧状側壁部51の曲率半径R4は、本発明における第2曲率半径を構成している。
【0094】
以上のように形成した実施の形態3においても、実施の形態1と略同様の作用効果を奏することができる。ここで、実施の形態3においても、
図10の実施の形態2に示されるように、噛合凸部31cと噛合凹部32dとの噛み合い状態で、噛合凸部31cと円弧状底部32eとの間に形成される隙間Sを狭くする肉盛部を設けることができる。
【0095】
[実施の形態4]
図12に示されるように、実施の形態4の減速機構60では、実施の形態1に比して、ヘリカルギヤ32に設けられる噛合凹部32dの形状のみが異なっている。実施の形態1の減速機構30(
図5参照)では、噛合凹部32dの径方向外側に向けて窪むように、曲率半径R3の円弧状側壁部32fを設けていた。これに対し、実施の形態4では、ヘリカルギヤ32の回転方向に沿う円弧状底部32eの両側に、円弧状底部32eから真っ直ぐに延びる平面からなる一対の平面状側壁部(側壁部)61を設けている。
【0096】
具体的には、一対の平面状側壁部61の傾斜角度は、斜歯32cの歯先の中央部を通る線分LNを中心に、それぞれ鏡像対称となるよう30°の傾斜角度で傾斜されている。なお、噛合凸部31cと円弧状底部32eとの間には、実施の形態1と同様に、潤滑油(図示せず)が設けられている。
【0097】
以上のように形成した実施の形態4においても、実施の形態1と略同様の作用効果を奏することができる。ここで、実施の形態4においても、
図10の実施の形態2に示されるように、噛合凸部31cと噛合凹部32dとの噛み合い状態で、噛合凸部31cと円弧状底部32eとの間に形成される隙間Sを狭くする肉盛部を設けることができる。
【0098】
ここで、実施の形態1の減速機構30(
図5参照),実施の形態3の減速機構50(
図11参照)および実施の形態4の減速機構60(
図12参照)のそれぞれの種々の特性について、
図13ないし
図15を用いて比較しつつ説明する。
【0099】
図13は、歯径比率とバックラッシのばらつき[mm]との関係を示すグラフであって、ここで言う歯径比率とは、噛合凸部31cの曲率半径R1と円弧状側壁部32fの曲率半径R3との比率を示している。したがって、上述した実施の形態1および実施の形態3においては、歯径比率は「2」(2倍)となる。
【0100】
図13に示されるように、一点鎖線で示した「実施の形態4」では、噛み合い点EP(
図12参照)の部分が直線状になっており、歯径比率とは関係無く、バックラッシのばらつきは、略中くらいの値で一定値を示している。実線で示した「実施の形態1」では、歯径比率が「2」以下になると、バックラッシのばらつきが大きくなることが判った。これに対し、破線で示した「実施の形態3」では、歯径比率の大きさに関わらず、バックラッシのばらつきは、略中くらいの値の近辺で安定していることが判った。すなわち、「実施の形態3」の方が、「実施の形態1」に比して、バックラッシのばらつきを抑える点において、より良い効果が得られることが判った。
【0101】
以上のような「バックラッシ」の観点からは、歯径比率は小さくとも概ね「2」程度とするのが望ましいことが判った。すなわち、円弧状側壁部32fの曲率半径R3および逆円弧状側壁部51の曲率半径R4は、いずれも少なくとも噛合凸部31cの曲率半径R1の2倍の大きさに設定するのが望ましい。
【0102】
図14は、歯径比率と圧力角のばらつき[°]との関係を示すグラフであって、「実施の形態4」においては、噛み合い点EP(
図12参照)の部分が直線状であるため、圧力角にばらつきは生じない。よって、
図14には「実施の形態4」のグラフを記載していない。その一方で、参考のために、既存のインボリュート歯車の特性を記載している。
【0103】
二点鎖線で示されるように、インボリュート歯車においては、その特性上、圧力角にばらつきが生じたとしても、極小さい角度範囲でばらつくことになる。これに対し、実線で示した「実施の形態1」では、歯径比率が「2」以下になると、圧力角のばらつきが急激に大きくなることが判った。なお、「実施の形態1」において歯径比率が「2」の場合の圧力角のばらつきは、製品として十分に許容し得るものである。一方、破線で示した「実施の形態3」では、歯径比率が「2」の場合において、「実施の形態1」の略1/2の圧力角のばらつきに抑えられていることが判った。すなわち、「実施の形態3」の方が、「実施の形態1」に比して、圧力角のばらつきを抑える点においても、より良い効果が得られることが判った。
【0104】
以上のような「圧力角」の観点からも、歯径比率は小さくとも概ね「2」程度とするのが望ましいことが判った。すなわち、円弧状側壁部32fの曲率半径R3および逆円弧状側壁部51の曲率半径R4は、いずれも少なくとも噛合凸部31cの曲率半径R1の2倍の大きさに設定するのが望ましい。
【0105】
ここで、
図7に示される比較例を
図14にプロットすると、星印の部分になる。つまり、歯径比率は略「1」であって、圧力角のばらつきは、
図14に記載した範囲において、最も大きい値となった。
【0106】
図15は、芯間ピッチのずれ量[mm]と圧力角[°]の関係を示すグラフであって、これを見ると、「実施の形態3」が、参考で示した既存のインボリュート歯車(二点鎖線)と同様の特性になり、これと正反対の特性になるのが「実施の形態1」であることが判った。なお、「実施の形態4」においては、噛み合い点EP(
図12参照)の部分が直線状であるため、圧力角は一定の値となる。
【0107】
以上のような芯間ピッチのずれ量と圧力角との関係から、互いに正反対の特性になる「実施の形態1」と「実施の形態3」とを、必要とされる減速機構の特性や、当該減速機構の使い方等に応じて、適宜選択して適用可能となる。言い換えれば、減速機構のバリエーションを容易に増やすことが可能となる。なお、これらの略中間のような特性を示す「実施の形態4」においても、減速機構のバリエーションに加えることができる。
【0108】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記各実施の形態では、減速機構30,40,50,60(減速機構付モータ10)を、車両に搭載されるワイパ装置の駆動源に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、パワーウィンドウ装置,サンルーフ装置,シートリフター装置等の他の駆動源にも適用することができる。
【0109】
さらに、上記各実施の形態では、減速機構30,40,50,60をブラシレスモータ20で駆動する減速機構付モータ10を示したが、本発明はこれに限らず、ブラシレスモータ20に換えてブラシ付きモータを採用して、当該ブラシ付きモータで減速機構30,40,50,60を駆動させることもできる。
【0110】
その他、上記各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記各実施の形態に限定されない。