(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945551
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】乾燥した液体量、特に血液を有する吸収性の試料キャリアを提供する装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20210927BHJP
G01N 1/12 20060101ALI20210927BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N1/12 B
G01N1/10 N
G01N33/48 S
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-557081(P2018-557081)
(86)(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公表番号】特表2019-525130(P2019-525130A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2017066177
(87)【国際公開番号】WO2018002249
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2020年6月22日
(31)【優先権主張番号】102016211911.7
(32)【優先日】2016年6月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597154612
【氏名又は名称】ザルシュテット アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Sarstedt AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク ヴァインシュトック
【審査官】
三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−017280(JP,A)
【文献】
特表2010−502991(JP,A)
【文献】
特表2002−519125(JP,A)
【文献】
特表2004−515108(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/067520(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/044454(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0314795(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0292398(US,A1)
【文献】
米国特許第04174048(US,A)
【文献】
米国特許第08586382(US,B2)
【文献】
独国特許出願公開第102013201505(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10
G01N 1/12
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の液体を収容するようにそれぞれ形成された試料キャリア(200−n)を提供する装置(100)であって、
内部にチューブ(110)の長手方向(L)に重ねられた複数の試料キャリアを収容するための収容室(112)を備えるチューブ(110)と、
前記チューブ(110)の前端部に、前記試料キャリアを前記収容室内に保持するように配置された少なくとも1つの保持手段(120)と、
前記チューブの後端部に、前記チューブの長手方向(L)に移動可能に支持されたプッシュロッド(130)とを有しており、該プッシュロッド(130)は、プッシュロッドヘッド(132)の形態の一方の端部でもって前記チューブ(110)内に進入して、前記保持手段(120)に対して前記収容室内の前記試料キャリアを押し当てており、かつ前記プッシュロッド(130)は、プッシュロッドグリップ(134)の形態の他方の端部でもって前記チューブから突出している装置(100)において、
前記保持手段(120)は、一方では前記収容室(112)内で前記試料キャリア(200−n)を保持するため、かつ他方では前記プッシュロッド(130)による力作用に基づく、前記収容室(112)からの前記試料キャリア(200−n)の個別放出を管理するために、弾性的に形成されており、
前記プッシュロッド(130)の少なくとも前記プッシュロッドグリップの領域には、複数の羽根(140−n)が前記プッシュロッドの長手方向(L)において間隔aだけ互いに離間して配置されており、隣り合う前記羽根は、前記プッシュロッド(130)の周方向(U)においてそれぞれ所定の周方向角度αだけ、互いにずらされており、
前記チューブ(110)の後端部には、前記プッシュロッド(130)の前記羽根(140−n)を少なくとも1つの所定の周方向角度位置においてのみ通過させるように形成された、通過開口(114)が設けられていることを特徴とする、装置(100)。
【請求項2】
前記羽根(140−n)は、それぞれ前記プッシュロッド(130)から半径方向に延びている、請求項1記載の装置(100)。
【請求項3】
それぞれ隣り合う2つの前記羽根が前記プッシュロッドに互いにずらされて配置されている前記周方向角度αは、α=90°である、請求項1または2記載の装置(100)。
【請求項4】
それぞれ隣り合う2つの前記羽根の間の前記間隔aは、少なくともほぼ、1つの前記試料キャリア(200−n)の直径または長手方向延在長さに相当する、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置(100)。
【請求項5】
前記チューブ(110)は、少なくとも前記収容室(112)の領域に、全周にわたって配分された複数の長手方向リブ(116)を有しており、これらの長手方向リブ(116)は、前記チューブの長手方向に延在すると共に、前記チューブの半径方向内側に突入して、前記収容室を半径方向において制限している、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(100)。
【請求項6】
前記長手方向リブ(116)は、前記チューブ(110)と一体的に、前記チューブの壁から該チューブの内部に突出した中空体として形成されている、請求項5記載の装置(100)。
【請求項7】
キャップまたは栓の形態の閉鎖部材(150)が、前記チューブ(110)の前記前端部を閉じるために設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置(100)。
【請求項8】
前記チューブ(110)は、透明な材料から製造されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置(100)。
【請求項9】
前記保持手段(120)は、弾性的な孔あき板の形態で、または半径方向において前記チューブ(110)の内部に向かって延在する少なくとも1つの弾性的なウェブまたは弾性的に支持されたウェブの形態で形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥した液体量、特に血液を有する吸収性の試料キャリアを分析評価用に提供する装置であって、委託された不特定量の液体が、毛管作用に基づき吸収性の試料キャリアに適用され、試料キャリアは液体量の乾燥後に後処理ユニット、例えば試験プレートに供給される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる乾燥血液スポット(DBS)分析がずっと以前から、血液試料の種々様々な臨床検査用に知られているが、医薬品研究、臨床化学、治療薬モニタリングまたは法医学的毒性学およびドーピング分析等の別の適用分野においても、とりわけ検出に強いLC−MS/MS(液体クロマトグラフィータンデム質量分析法)システムとの関連で知られている。DBS分析用には、患者の指先またはかかとから採取された僅かな血液滴で十分である。採取された血液は、例えば米国特許第8586382号明細書から公知のように、試料キャリアとしての特殊な吸収性の試験紙の、丸く印が付けられた領域に手で被着され、血液の乾燥後に場合により事前に保管されてから分析に提供され、これは後処理ユニットにおいて、自動化されたプロセス過程に組み込むことができる。被着され乾燥した血液は、不特定量の液体であるため、いずれにしろ最初は、試料キャリアまたは試験紙の印が付けられた領域から、そこで乾燥して分散した、数ミリメートルの直径の物質片を後続の検査のために取り除くことが必要であり、これにより、分析または診断用に所定量の血液を提供することができる。物質片は、適当な溶剤で洗浄される。このようにして得られた抽出物を溶剤分離のために精製した後で、物質を分析に提供することができる。
【0003】
国際公開第2015044454号に基づき、評価結果または測定結果を改良するために、試料キャリア紙から特に打抜きにより取り除かれるべき乾燥血液量を、毛管通路によってなお一層正確に決定することが公知である。このためには、採取された不特定体積の液体が、それぞれ所定量の血液を収容する複数の毛管通路内に導入され、これらの毛管通路が完全に満たされると、供給箇所に対する流入が中断される。その結果、各毛管通路の流出端部では、毛管通路の収容容積に基づき正確に決定されたまたは較正された血液量のみが、試料キャリア紙または試料キャリア集合カード上の、打抜き用に設けられた約6mmの直径を有する領域内に流入するに過ぎない。較正された血液量を試料キャリア集合カードの上方に案内することができるようにするために、毛管通路の流出端部には、溶解後に通流を可能にする可溶性のダイヤフラムが形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来技術を起点として、より簡単に、かつユーザにとっては液体、特に血液との接触に対してより安全に、特に試料キャリア集合カード等から個々の試料キャリアを取り除く必要無しに、試料キャリアを分析に供与することができる装置が提供されることが望ましい。本発明による装置は、特に従来技術に対して1つの代替手段を成すものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の対象によって解決される。請求項1の対象は、保持手段が、一方ではチューブの収容室内で試料キャリアを保持するため、かつ他方ではプッシュロッドによる力作用に基づく、収容室からの試料キャリアの個別放出を管理するために、弾性的に形成されており、プッシュロッドの少なくともプッシュロッドグリップの領域には、複数の羽根がプッシュロッドの長手方向において互いに離間して配置されており、隣り合う羽根は、プッシュロッドの周方向においてそれぞれ所定の周方向角度だけ、互いにずらされており、チューブの後端部には、プッシュロッドの羽根を、以下で通過角度位置とも呼ぶ少なくとも1つの所定の周方向角度位置においてのみ通過させるように形成された、通過開口が設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求する装置は、有利にはその都度1つの試料キャリアだけを調量して供給する、調量供給装置として働く。プッシュロッドの後端部に対して、例えば作業員の親指により加えられる力作用に基づき、プッシュロッドは例えば任意の距離を押しずらされるのではなく、所定の不連続的な行程長さだけ、チューブ内に押しずらされるに過ぎない。この行程長さは、2つの隣り合う羽根間の間隔にほぼ相当する。この行程長さは、1つの試料キャリアの直径または長さにもほぼ相当する。よって、行程長さは以下で、放出行程とも呼ばれる。行程長さの制限は、請求する特徴の組み合わせによって保証される。具体的には、最初はまだチューブ外に位置する先行の羽根が、その周方向角度位置が通過開口の通過角度位置に対応している場合にのみ、チューブの後端部における通過開口を通過することができる。ただしこの場合、最初はまだチューブ外に位置する、隣り合う次の後続の羽根が通過開口にぶつかるまで、プッシュロッドは所定の放出行程だけ、チューブ内に押し込まれるに過ぎない。この場合、先行する羽根に対する通過角度位置を有している通過開口は、後続の羽根に対しては、その周方向でのずれに基づき、最初は遮断されている。この点において、通過開口は、後続の羽根に対するストッパを形成しており、プッシュロッドの行程制限手段として用いられる。プッシュロッドが周方向に回動させられ、これにより後続の羽根の角度位置が通過開口の通過角度位置に対応して初めて、プッシュロッドを引き続く行程長さだけ、すなわち引き続く放出行程だけ、チューブ内へさらに押し込むことができ、ひいては次の試料キャリアをチューブから押し出すことができる。
【0007】
プッシュロッドグリップに対する力作用または押圧力は、その都度プッシュロッドおよびチューブの長手方向でプッシュロッドヘッドを介して、チューブの収容室内に1列にまたは重ねられて配置された一番後ろの試料キャリアから、一番前の試料キャリアに伝達される。この場合、一番前の試料キャリアは保持手段を直接に押圧する。力作用が十分に大きいと、保持手段はその弾性に基づき、最終的にその時々の一番前の試料キャリアだけを解放するので、この試料キャリアはチューブから外へ抜け出ることができる。
【0008】
請求する装置は、上述したように、特に試料キャリアを個別に試験プレートに提供するために役立つ。このような提供過程に際して、試験プレートは、典型的には水平なテーブルの上に載置されており、本発明による装置またはチューブは、テーブルに対して垂直に保持される。
【0009】
本明細書では、全ての思想をこの配置に関連付けて例として説明する。よって、具体的には、「前端部」は、チューブの、試験プレートに面した端部を意味し、前端部に保持手段が配置されており、前端部からその時々の一番前の試料キャリアが場合によって解放または放出される。これに相応して、同じ意味の「最下位の試料キャリア」または「一番前の試料キャリア」は、保持手段に直接に接触している、次に放出される試料キャリアを意味する。
【0010】
反対に、チューブの「後端部」は、チューブの、試験プレートおよび保持手段とは反対の側の端部または放出端部とは反対の側に位置する、プッシュロッドが支持された端部を意味する。この場合、「一番後ろの試料キャリア」は同じく、各試料キャリアのうち、プッシュロッドの、保持手段から遠い方の端部のところの試料キャリアを意味する。「一番後ろの試料キャリア」は、「一番上の試料キャリア」と同じ意味である。
【0011】
液体用にそれぞれ所定の収容容量を備えた試料キャリアは、それ自体が、委託された不特定量の液体からの、その時々の正確な部分量を特定するためのガイド値である。これにより、所定量の液体または血液の乾燥前に、既に系が解かれねばならないという事態を回避できる。よって、閉鎖部材により閉じられた系は、最大の安全性でもって、液状の血液が外部に流出する可能性を防いでいる。液状の血液はむしろ内部でのみ、吸収性の多孔質の試料キャリアの毛管作用に基づき的確に個々の試料キャリアに送られ、この場合、各試料キャリアはそれぞれ、全液体量のうちの事前に設定された(部分)体積のみを収容するに過ぎない。この部分量が乾燥して初めて系が開かれ、試料キャリアが上述のように順次放出される。この場合、キャップが被せ嵌められてまたはねじ嵌められて閉じられた系内で、試料キャリアは既に個別化されているため、従来技術において必要とされるような打抜き過程が完全に省かれる。
【0012】
液体の所定の部分量を収容するためには、自然な表面状態が毛管現象促進作用を有する極性を備えた、加圧された複数のプラスチック球から成る試料体が適している。プラスチック球は、表面処理により任意に吸収可能状態に変化することができる。この場合、試料キャリアの収容容積は、個々の球の間の空間により決定されるので、幾何学形状の寸法を選択することにより、複数の変化形が可能である。吸収性の試料体が、これらの試料体によりそれぞれ決められた液体部分量(収容容量)で連続的に満たされると、最早引き続いて毛管移動が生じることはない。委託された液体量の余剰分は、閉じられた系内に残留し、このために、スタック層の一番上の、すなわち先に挿入された試料体がパッドまたはリザーバとして使用されてよい。それというのも、ユーザは、透明な、すなわち見通せる材料、例えばガラスまたはプラスチックから成るチューブにおいて血液が一番上の試料キャリア内に流入すると直ぐに、飽和段階への到達を直ちに認めるからである。したがって、不特定量の血液の供給が即刻中断されてよい。血液は、例えばピペットから、あるいは患者の指先または例えば動物の耳たぶから採取してから、注射針を用いて提供することができる。この場合、チューブは液体乾燥後の試料体を取り出すためにしか、キャップを取り外すことにより開けられることはない。
【0013】
本発明の別の特徴および詳細は、各従属請求項に記載されている。
【0014】
本明細書には5つの図面が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】供給状態における試料キャリアチューブを示す全体斜視図である。
【
図2】前の
図1に示したものと同じ全体斜視図であるが、
図1に対して、委託された不特定量の血液を充填するためにキャップが外され、試料キャリアにアプローチすることができるようになっている。
【
図3】チューブの開いた前端部内を見えるようにした、
図2とは別の全体斜視図である。
【
図4】
図3に示したチューブを、試料キャリア乾燥用兼搬送用に被せ嵌められた閉鎖キャップと共に示す図である。
【
図5】最下位の試料キャリアを放出するために試験プレートに被せ嵌められた、
図3に示したチューブを初期位置で示す図である。
【
図6】
図5に示した、試験プレートに被せ嵌められたチューブを、放出された一番前の試料キャリアと共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、各図面を参照しながら本発明を実施例の形態で詳細に説明する。全ての図面において、同一の技術的要素には同一の符号が付されている。
【0017】
図1には、1<1<n<N個(n、Nは自然数の集合)の試料キャリア200−nを提供する、本発明による装置100の全体斜視図が示されている。各試料キャリア200−nは、所定量の液体、例えば血液を収容するように形成されている。
【0018】
本発明による装置100には、複数の試料キャリア200−nを収容するための収容室112を備えたチューブ110が含まれる。チューブ110内部の収容室112は、収容室112内に個々の試料キャリア200−nをチューブ110の長手方向Lに重ねて配置することができるように形成されている。チューブ110は、その前端部を、例えばキャップまたは栓の形態の閉鎖部材150により閉鎖されている。前端部とは反対の側に位置する後端部には、チューブの長手方向において摺動可能に、プッシュロッド130が支持されている。このプッシュロッド130は、プッシュロッドヘッド132の形態の一方の端部でもってチューブ110内に潜り込んで、試料キャリア用の収容室112を画定している。反対側に位置するプッシュロッドグリップの形態の他方の端部でもって、プッシュロッドはチューブ110から突出している。
【0019】
プッシュロッドには、少なくともそのプッシュロッドグリップ134の領域に複数の羽根140−nが配置されている。羽根140−nはそれぞれ、プッシュロッドの長手方向Lにおいて、所定の相互間隔aだけ離間して配置されている。さらに、各2つの隣り合う羽根は、プッシュロッド130の周方向Uにおいて、例えばα=90°を有する所定の周方向角度αだけ、互いにずらされている。
【0020】
チューブ110の、前端部とは反対側に位置する後端部は、通過開口114を有しており、通過開口114は、プッシュロッド130の羽根140-nを所定の周方向角度位置においてのみ通過させるように形成されている。
【0021】
羽根140−nは、それぞれプッシュロッド130からまたはプッシュロッド130の長手方向軸線Lから半径方向に延在している。
【0022】
図1に対応する長手方向部分縦断面A−Aには、収容室112内の試料キャリア200−nの配置が、より正確に示されている。具体的に認められるのは、例えば図示の5つの試料キャリアが収容室112内に相上下して重ねられて(スタックされて)配置されている点である。収容室112または試料キャリア200−nのスタックは、上方に対してまたはチューブの後端部に対して、プッシュロッド130のプッシュロッドヘッド132により制限されている。しかしながら、この制限は固定的なものではなく、互いに積み重ねられた試料キャリアの数に応じて可変である。
【0023】
通過開口が配置されたチューブ110の後端部は、作業員の操作快適性向上のために、半径方向に張り出したショルダとして形成されていてよい。具体的には、チューブが片手で握られ、同じ手の親指によりプッシュロッドグリップ134に押圧力または力Fが加えられる場合に、ショルダ118が人差し指に対する対応ホルダとして用いられてよい。
【0024】
通過開口は、例えば羽根の輪郭に適合したスリットとして形成されており、スリットは、各1つの羽根を、所定の周方向角度位置においてのみ、通過させる。通過開口は、各羽根をそれぞれ異なる周方向角度位置において通過させるように形成されていてもよい。この場合には、通過開口におけるこれらの通過角度位置が、2つの隣り合う羽根140−n間の周方向角度αとは同じでないと有利である。なぜならば、さもなければ通過開口114が後続の羽根に対するストッパとして働くことができず、力が作用すると直ぐに2つ以上の試料キャリアが放出されると考えられるからである。これは望ましくない。
【0025】
図2には、先に
図1に示したものと同じ装置100が示されているが、キャップ150が取り外されている。キャップの取外しは、特に収容室に試料キャリアを充填するため、および試料キャリアを液体、例えば血液で満たすために行われる。
【0026】
図3にもやはり、本発明による装置100の別の斜視図が示されており、この図面では有利には、チューブ110の開いた前端部内を見ることができる。チューブ110には複数の試料キャリア200−nが充填されており、試料キャリア用の収容室112は、その後端部に対してはプッシュロッドヘッド132によって、かつその前端部においては弾性的な保持手段120によって画定されている。保持手段120は、例えば弾性的な孔あき板の形態で、または少なくとも1つの弾性的なまたは弾性的に支持された、半径方向においてチューブ110の内部に向かって延在するウェブの形態で形成されていてよい。
図3では、全周にわたり配分された、例えば4つの上記のような保持手段が認められる。少なくとも1つの保持手段は、その時々で一番前の試料キャリア200−1を保持または位置固定するために役立つ。
【0027】
さらに、チューブ110は、
図3では少なくともその収容室112の領域に複数の長手方向リブ116を見せている。長手方向リブ116は、チューブの長手方向に延在しておりかつチューブ110の半径方向内側に突入して、半径方向において収容室112を画定している。特に周方向に配分された長手方向リブにより、収容室112は、試料キャリア200−nのスタック層がチューブ110の長手方向軸線Lに沿って好適には同心的にチューブ内に延在し、そこで長手方向リブ116により支持されるように、半径方向において画定される。長手方向リブは、射出成形技術的な理由から、好適にはチューブ110と一体的に、かつチューブの壁からチューブ内部に突出した中空体として形成されている。
【0028】
図3〜
図6では、試料キャリアは、試料キャリアの点によって示した液体で満たされている。
【0029】
本発明による装置100は、以下のように取り扱われる。
【0030】
第1のステップにおいて、最初はまだ空のチューブ110の前端部に設けられたキャップ150が取り外される。次いで第2のステップでは、前端部を介して収容室112に個々の試料キャリア200−1が連続的に充填される。すると、収容室112の後端部ではプッシュロッドヘッド132により支持され、かつ半径方向では長手方向リブ116に支持されて、充填された試料キャリア200−nは自動的に1つのスタック層に配置されることになる。収容室の前端部において、第1のまたは一番前の試料キャリア200−1は、装置100が鉛直方向に直立していて前端部が下側に位置している場合でも、設けられた少なくとも1つの弾性的な保持手段120により、収容室内に保持される。
【0031】
次いで第3のステップにおいて、液体、例えば血液が、チューブの開いた前端部を通じて、まず一番前の試料キャリア200−1に被着される。この場合、最初は第1の試料キャリア200−1だけが液体を一杯に吸収する。第1の試料キャリア200−1が飽和し、さらに多くの液体が適用されると、液体は試料キャリアの毛管作用に基づき試料キャリアから試料キャリアへと、最終的に一番後ろの試料キャリア200−Nが液体を一杯に吸収するかまたは液体で満たされるまで、移動する。最後の(スタックにおいて一番上の)試料キャリアが過剰な(不特定の)血液量のためのリザーバ/パッドとして利用される場合、この試料キャリアはチューブ内に残留して、チューブと共に廃棄されてよい。
【0032】
次いで第4のステップにおいて、典型的にはチューブ110の前端部を、閉鎖部材150により閉じる(
図4参照)。この場合、試料キャリア210内の液体は乾燥してよく、チューブは試料キャリアと共に搬送することができる。
【0033】
チューブに試料キャリアを充填するために、プッシュロッド130は少なくとも部分的に、好適には大幅にチューブから引き出されている。プッシュロッドが大きく引き出される程、試料キャリアの充填に供与可能な収容室112は増大する。
【0034】
各試料キャリア200−nは、それぞれ正確な液体設定量を収容することができるように形成されている。装置100への各試料キャリアおよび液体の充填は、後でそれぞれ1つの試料キャリアだけを、内部に含まれた液体量と共に分離することができるようにするために、すなわち特に試験プレート300の収容室に適用することができるようにするために役立つ。
【0035】
このために、充填された複数の試料キャリア200−nを含む本発明による装置は、キャップ150が取り外された後、
図5に示すように、その開いた前端部でもって、それぞれ充填されるべき収容室310の上に被せ嵌められる。
【0036】
図6には、試験プレート300の収容室310内への第1のまたは一番前の試料キャリア200−1の供給が示されている。このために、典型的には作業員の手または親指により、力Fが上からプッシュロッドグリップ134に加えられる。この場合に重要なのは、通過開口114の手前に留まっている、先行する羽根の角度位置が、通過開口114の周方向角度位置に相当する点である。この場合にのみ、力Fにより、先行する羽根140−1が通過開口114を通過させられると共に、力Fは、プッシュロッド130とプッシュロッドヘッド132とを介してまず、一番後ろの試料キャリア200−Nに伝達される。重ねられ、かつ長手方向リブ116によって半径方向において支持された試料キャリアの配置に基づき、次いで力が、一番後ろの試料キャリア200−Nから、一番前の試料キャリア200−1と保持手段120とに伝達される。力Fが十分に大きいと、保持手段120の保持抵抗に打ち勝ち、次いで一番前の試料キャリア200−1がチューブの収容室112から試験プレート300の開口310内へ押し出される。
【0037】
続いて第2の試料キャリア200−2が直ちに収容室から押し出されることは、プッシュロッド130が力作用によってチューブ内へ押し込まれる行程長さが、放出行程、すなわちプッシュロッドに設けられた2つの隣り合う羽根間の間隔に制限されていることによって、防止される。この制限は、本発明による装置100では構造上、2つの隣り合う羽根が周方向にずらされていることにより実現されている。先行する羽根140−1は、上述したように、その角度位置が通過開口の通過角度位置に対応しているため、通過開口114を通過することができる。ただし、次のまたは後続の羽根140−2は、プッシュロッドが周方向に回動されることはないので、最初は通過開口114の通過角度位置に対応していない別の独自の角度位置を有している。この角度位置は、最初は通過開口114の通過角度位置に対応していないため、後続の羽根140−2はまず、先行の羽根の通過後に、力作用に基づき通過開口にぶつかる。この点において、プッシュロッドが力作用時に移動する行程長さまたは放出行程は、先行する羽根と後続の羽根との間の間隔に制限されている。この放出行程は、典型的には1つの試料キャリア200−nの直径または長さまたは高さに相当する。次いで第2の試料キャリアを、典型的には試験プレート300の別の収容室310内へ放出しようとする場合には、事前にプッシュロッド130を回動させ、前は後続の羽根であり今は先行する羽根の角度位置を、通過開口の通過角度位置に対応させる必要がある。
【符号の説明】
【0038】
100 装置
110 チューブ
112 チューブの収容室
114 通過開口
116 長手方向リブ
118 ショルダ
120 保持手段
130 プッシュロッド
132 プッシュロッドヘッド
134 プッシュロッドグリップ
140−1 先行の羽根
140−2 後続の羽根
140−n 羽根
150 閉鎖部材
200−n 試料キャリア
300 試験プレート
310 試験プレートの収容室
a 間隔
L 長手方向
α 周方向角度
U 周方向
F 力