(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記方法はステップa)の前に、リグニンをフェノールのクラスから選択される化合物と反応させるステップi)を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記方法はステップb)の後に、ステップb)において形成された前記分散物にアルデヒド、アルデヒドの誘導体、またはそれらの組み合わせを加えるステップii)を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、リグニンの反応性を増加させるための方法に関し、この方法は以下のステップを含む。
a)71〜94℃の温度での加熱下で、アルカリおよびリグニンを含む水性分散物を形成するステップであって、ここでアルカリはアルカリ金属の水酸化物を含む、ステップ、および
b)アルカリ化リグニンを生成するために、ステップa)で形成された分散物を50〜95℃の温度で加熱するステップ。
【0017】
たとえばバイオマスなどからリグニンを分離または単離するための異なる方法の欠点は、使用される低pH環境のために、手順の間にリグニンが縮合されることである。よって分離されたリグニンは、比較的低い反応性および不均一な性質を有し、それが、たとえば結合剤組成物の生成などの際に他の反応物質成分との反応に影響する。リグニンの反応性の低さは、生体に基づくリグニンによる、たとえば結合剤組成物中の合成フェノールなどの置換レベルを高めることを妨げる一因となっている。最大50〜60%の合成フェノールがリグニンによって置換されている、現在入手可能な結合剤組成物の特性は、たとえば接着適用などに対して許容できるものではないことが認識されている。たとえば、接着接合部の強度が必要レベルではないなどである。
【0018】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の方法によってリグニンの反応性を増加できること、およびさらに、結合剤組成物の生成の際にこの種の活性化リグニンを用いるときに、たとえば結合剤組成物中の合成フェノールなどのより高い置換レベルを達成できることを見出した。
【0019】
本明細書において、別様に述べられない限り、「増加した反応性を有するリグニン」という表現は、本発明に従う方法によって処理されたリグニンを示すものと理解されるべきである。本発明に従う方法によってリグニンを処理することによって、リグニンを活性化し、さらなる適用に使用するためにより好適なものとする。よってリグニンの反応性は、本発明に従う方法によって処理されていないリグニンに比べて増加している。
【0020】
本明細書において、別様に述べられない限り、「リグニン」という表現は、本発明に用いるために好適な任意のリグニンであるものと理解されるべきである。
【0021】
リグニンは、本質的に純粋なリグニン、ならびにリグニン誘導体およびリグニン修飾を含んでもよい。
【0022】
「本質的に純粋なリグニン」という表現は、少なくとも90%純粋なリグニン、好ましくは少なくとも95%純粋なリグニンであるものと理解されるべきである。本発明の一実施形態において、本質的に純粋なリグニンは、最大10%、好ましくは最大5%の他の成分を含む。こうした他の成分の例として、抽出物およびたとえばヘミセルロースなどの炭水化物が示され得る。本発明の一実施形態において、リグニンは10重量%未満、好ましくは6重量%未満、およびより好ましくは4重量%未満の炭水化物を含有する。リグニンに存在する炭水化物の量は、規格SCAN−CM 71に従うパルスアンペロメトリック検出器を有する高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(high performance anion exchange chromatography with pulsed amperometric detector:HPAE−PAD)によって測定できる。本発明の一実施形態において、リグニンの灰パーセンテージは7.5重量%未満、好ましくは5重量%未満、およびより好ましくは3重量%未満である。灰含有量は、リグニンサンプルを炭化し、有機物質が燃焼する前にアルカリ塩が溶解しないように素早く燃焼させ(例、20〜200℃にて30分間、その後温度を200〜600℃に調整して1h、その後温度を600〜700℃に調整して1時間)、最後にリグニンサンプルを700℃にて1h強熱することによって定めることができる。リグニンサンプルの灰含有量は、燃焼および強熱後に残るサンプルの質量を示し、それはサンプルの乾燥含有量のパーセントとして示される。本発明の一実施形態において、リグニンの重量平均分子量(Mw)は1000〜15000g/mol、好ましくは2000〜10000g/mol、およびより好ましくは3000〜8000g/molである。本発明の一実施形態において、リグニンの数平均分子量(Mn)は700〜4000、好ましくは800〜3000、およびより好ましくは1000〜2500である。本発明の一実施形態において、リグニンの多分散性は1.0〜7、好ましくは1.2〜6、およびより好ましくは1.4〜4.5である。
【0023】
本発明の一実施形態において、リグニンの正規化ラジカルスカベンジャー指数(normalized radical scavenger index:NRSI)は0.01〜20、好ましくは0.05〜10、およびより好ましくは0.1〜6である。抽出物の抗酸化活性は、ジオキサン抽出物におけるDPPH法を用いて評価できる。ラジカルスカベンジング法の基礎は、マルテルド(Malterud)ら(ファーマコロジー・アンド・トキシコロジー(Pharmacol.Toxicol.)1996、78:111−116)に記載されている。この方法は、DPPHがそのラジカル特徴を失うときに、抽出物および純粋成分が1,1−ジフェニルピクリル−2−ヒドラジルラジカル(DPPH・)分子と反応する能力に基づくものである。ラジカル形状の減少を、分光光度計によって溶液色の紫色から黄色への変化として観察できる(波長515nmにて吸光度が測定される)。RSI(ラジカルスカベンジング指数(radical scavenging index))は、515nmにおけるDPPH吸光度の50%阻害を生じた濃度の逆数として定義される。次いで、そのサンプルRSIをブチルヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene:BHT)対照に対するRSI値で割ることによって、その結果を「正規化」(NRSI)できる。
【0024】
本発明の一実施形態において、リグニンは、リグニン1グラム当り0.1〜6mmol、好ましくは0.3〜3.5mmolの量の脂肪族ヒドロキシル基を有する。リグニンサンプルを亜リン酸化の後に31P NMR分光法によって特徴付けることによって、脂肪族ヒドロキシル基を定めることができ、その後脂肪族ヒドロキシル基を定量的に定めることができる。31P NMR分析のために、40mgのリグニンを計量して、300ulのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解してもよい。完全な溶解後に、200ulのピリジンと、400ul(0.05M)のエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドのピリジン/CDCl
3)内部標準溶液(internal standard solution:ISTD)と、100ulのCr(acac)
3のピリジン/CDCl
3溶液とを加える。次いで、200ulの亜リン酸化試薬2−クロロ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン(dioxaphopholane)を滴下して加える。最後に溶液に600ulのCDCl
3を加えて、清澄な茶色から黒色の溶液を得る。次いで新しく調製したサンプルを、室温にて31P NMRによって測定し得る。ブルカー(Bruker)500MHz NMR分光計を測定に用いることができる。31P NMR測定は、グラナータ(Grannata)およびアルギュロポウロス(Argyropoulos)によって開発された方法(グラナータ A.およびアルギュロポウロス D.S.、2−クロロ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン、リグニンにおける非縮合および縮合フェノール部分の正確な決定のための試薬(2−Chloro−4,4,5,5−tetramethyl−1,3,2−dioxaphospholane,a reagent for the accurate determination of the uncondensed and condensed phenolic moieties in lignins)、ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J.Agric.Food Chem)、1995、43:1538−1544)に基づくものである。その結果は、mmol/gリグニンとして算出される。
【0025】
本発明の一実施形態において、リグニンはクラフトリグニン、水蒸気爆砕リグニン、バイオリファイナリーリグニン、超臨界分離リグニン、加水分解リグニン、フラッシュ沈殿リグニン、バイオマス由来リグニン、アルカリパルプ化プロセスからのリグニン、ソーダプロセスからのリグニン、オルガノソルブパルプ化からのリグニン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。本発明の一実施形態において、リグニンは木材に基づくリグニンである。リグニンは、軟木、堅木、一年生植物、またはそれらの組み合わせから生じ得る。
【0026】
異なるリグニン成分は、異なる特性、たとえば分子量、モル質量、多分散性、ヘミセルロースおよび抽出物含有量などを有してもよい。本発明の一実施形態において、リグニンは水を含むが、溶媒は含まない。
【0027】
本明細書において、別様に述べられない限り、「クラフトリグニン」とはクラフト黒液から生じるリグニンであるものと理解されるべきである。黒液とは、クラフトパルプ化プロセスにおいて使用されるリグニン残基、ヘミセルロースおよび無機化学物質のアルカリ性水溶液である。パルプ化プロセスからの黒液は、さまざまな割合の異なる軟木および堅木種から生じる成分を含む。たとえば沈殿およびろ過などを含む異なる技術によって、黒液からリグニンを分離できる。リグニンは通常、11〜12より低いpH値において沈殿し始める。異なる特性を有するリグニン画分を沈殿させるために、異なるpH値が用いられ得る。これらのリグニン画分は、たとえばMwおよびMnなどの分子量分布、多分散性、ヘミセルロースおよび抽出物含有量が互いに異なっている。より高いpH値にて沈殿したリグニンのモル質量は、より低いpH値にて沈殿したリグニンのモル質量よりも高い。さらに、より低いpH値にて沈殿したリグニン画分の分子量分布は、より高いpH値にて沈殿したリグニン画分のものよりも広い。よって、接着適用の最終用途に依存して、リグニンの特性を変更できる。
【0028】
酸性洗浄ステップを用いて、無機不純物、ヘミセルロースおよび木材抽出物から沈殿リグニンを精製できる。ろ過によって、さらなる精製を達成できる。
【0029】
本発明の一実施形態において、リグニンの乾燥物質含有量は98%未満、好ましくは40〜80%、およびより好ましくは50〜70%である。1〜5gのリグニンサンプルを真空オーブン内で60℃以上の温度で4時間乾燥させることによって、乾燥固体含有量を測定できる。
【0030】
本発明の一実施形態において、リグニンはフラッシュ沈殿リグニンである。本明細書において「フラッシュ沈殿リグニン」という用語は、200〜1000kPaの過剰圧力の影響下で、二酸化炭素に基づく酸性化剤、好ましくは二酸化炭素を用いて、黒液流のpHをリグニンの沈殿レベルまで下げ、かつリグニンを沈殿させるためにその圧力を突然解除することによる連続的プロセスにおいて黒液から沈殿させたリグニンとして理解されるべきである。フラッシュ沈殿リグニンを生成するための方法は、特許出願フィンランド特許出願公開第20106073号に開示されている。上記方法における滞留時間は300s未満である。フラッシュ沈殿リグニン粒子は2μm未満の粒子直径を有し、塊を形成し、たとえばろ過などを用いてこの塊を黒液から分離できる。フラッシュ沈殿リグニンの利点は、それが通常のクラフトリグニンよりも高い反応性を有することである。さらなる処理のために必要であれば、フラッシュ沈殿リグニンを精製および/または活性化してもよい。
【0031】
本発明の一実施形態において、リグニンは純粋なバイオマスから分離される。分離プロセスは、バイオマスを強アルカリによって液化することから始まってもよく、その後に中和プロセスが続いてもよい。アルカリ処理の後に、上に示したのと類似の態様でリグニンを沈殿させ得る。本発明の一実施形態において、バイオマスからのリグニンの分離は、酵素処理のステップを含む。酵素処理によって、バイオマスから抽出されるようにリグニンを修飾する。純粋なバイオマスから分離されたリグニンは硫黄を含まないため、さらなる処理において有用である。
【0032】
本発明の一実施形態において、リグニンは水蒸気爆砕リグニンである。水蒸気爆砕は、木材およびその他の繊維状有機材料に適用され得るパルプ化および抽出技術である。
【0033】
本明細書において、別様に述べられない限り、「バイオリファイナリーリグニン」とは、バイオマスが燃料、化学物質およびその他の材料に転換される精製設備またはプロセスから回収され得るリグニンであるものと理解されるべきである。
【0034】
本明細書において、別様に述べられない限り、「超臨界分離リグニン」とは、超臨界流体分離または抽出技術を用いてバイオマスから回収され得るリグニンであるものと理解されるべきである。超臨界条件とは、所与の物質に対する臨界点より上の温度および圧力に対応する。超臨界条件においては、別個の液相および気相が存在しない。超臨界水または液体抽出とは、超臨界条件下の水または液体を用いることによって、バイオマスを分解してセルロース糖に転換する方法である。この水または液体は溶媒の働きをして、セルロースプラント物質から糖を抽出し、リグニンは固体粒子として残る。
【0035】
本発明の一実施形態において、リグニンは加水分解リグニンである。加水分解リグニンは、紙パルプまたは木材化学プロセスから回収され得る。
【0036】
本発明の一実施形態において、リグニンはオルガノソルブプロセスから生じる。オルガノソルブとは、リグニンおよびヘミセルロースを可溶化するために有機溶媒を用いるパルプ化技術である。
【0037】
本発明の一実施形態において、処理されるリグニンは1000〜15000g/mol、好ましくは2000〜10000g/mol、およびより好ましくは2500〜8000g/molの平均分子量を有する。
【0038】
アルカリは、アルカリ金属の水酸化物を含む。本発明の一実施形態において、アルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される。本発明の一実施形態において、アルカリは水酸化ナトリウムである。
【0039】
本発明の一実施形態において、アルカリの濃度は、ステップa)における分散物の総重量に基づいて5〜50重量%、および好ましくは10〜25重量%である。
【0040】
本発明の一実施形態において、ステップa)におけるリグニンの濃度は、ステップa)における分散物の総重量に基づいて10〜50重量%、好ましくは20〜50重量%、およびより好ましくは20〜45重量%である。
【0041】
本発明に従う方法のステップa)においては、71〜94℃の温度が用いられる。この高温は、均質な分散物を形成するために必要な時間に有益に影響する。本発明の一実施形態において、ステップa)における温度は好ましくは71〜90℃である。本発明の一実施形態において、ステップa)における温度は好ましくは76〜94℃、およびより好ましくは76〜90℃である。
【0042】
本発明の一実施形態において、ステップb)における温度は好ましくは60〜85℃である。
【0043】
本発明の一実施形態において、ステップb)は15分間〜24時間、好ましくは5時間以下、およびより好ましくは0.5〜1.5時間にわたって行われる。
【0044】
本発明に従う方法、特にアルカリ化ステップa)およびb)は、結果としてリグニンを活性化させる。上に考察したとおり、リグニンは酸性の単離または分離プロセスの間に縮合される。なぜリグニンのアルカリ化によってより反応性の高いリグニンが形成されるのかに関するあらゆる特定の理論に本発明を限定することなく、アルカリ化がリグニンの高分子構造を開くことによって、通常リグニン構造内の反応性の基を無能にしている立体障害が除去されることが考えられる。さらに、アルカリ化はリグニン高分子に荷電基を加え得る。たとえば結合剤組成物を生成するなどのためにアルカリ化リグニンを使用することの利点は、加熱または重合段階に非処理リグニンを用いた通常の場合よりも、適合性および反応挙動がかなり良好になることである。本発明の発明者らは、驚くべきことに、ステップa)において71〜94℃、および特に71〜85℃の温度を使用することが、リグニンをアルカリおよび水に溶解させる速度、ならびに溶解させ得るリグニンの総量に有益に影響することを見出した。本発明の発明者らはさらに、驚くべきことに、ステップa)において用いられ得る比較的短い分散および処理時間が、プロセスの間に起こる縮合を少なくする結果として、処理リグニンの高い反応性を有益にもたらすことを見出した。
【0045】
本発明の一実施形態において、この方法はステップa)の前に、リグニンをフェノールのクラスから選択される化合物と反応させるステップi)を含む。本発明の一実施形態において、その化合物はフェノール、クレゾール、レゾルシノール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。本発明の一実施形態において、その化合物はフェノールである。リグニンの脂肪族部分をたとえばフェノールなどと反応させることによって、リグニンの脂肪族部分に付加されるフェノールOH基の数が増加する。OH基の数が増加すると、たとえば結合剤生成法の加熱ステップなどにおけるリグニンの、他の反応物質成分との反応性が増加する。フェノール化リグニンをアルカリ化することの利点は、新たなフェノールOH基がリグニンに付加されることに加えて、上に考察したとおり、リグニン構造が開かれることである。リグニンの反応性が増加することは、最終結合剤組成物において、たとえばフェノールなどの合成反応物質をより大量に生体に基づくリグニンで置換することを可能にするという利点を有する。
【0046】
本発明の一実施形態において、ステップi)は、触媒の存在下で100〜140℃の温度にて1〜3時間行われる。本発明の一実施形態において、ステップi)において用いられる触媒は酸であり、好ましくは硫酸(H
2SO
4)である。
【0047】
本発明の一実施形態において、この方法はステップb)の後に、ステップb)において形成された分散物にアルデヒド、アルデヒドの誘導体、またはそれらの組み合わせを加えるステップii)を含む。本発明の一実施形態において、アルデヒドの誘導体はヘキサメチレンテトラミン、パラホルムアルデヒド、またはトリオキサンである。本発明の一実施形態においては、アルカリ化リグニンを芳香族アルデヒド、またはグリオキサールと反応させる。本発明の一実施形態において、芳香族アルデヒドはフルフリルアルデヒドである。本発明の一実施形態において、アルデヒドはホルムアルデヒドである。
【0048】
本発明の一実施形態においては、ヒドロキシメチル化リグニンを形成するために、アルカリ化リグニンをたとえばホルムアルデヒドなどのアルデヒドと反応させる。アルカリ化リグニンをたとえばホルムアルデヒドなどと反応させることによって、ヒドロキシメチル基が増加し、この基はたとえば樹脂加熱ステップなどの際に他の反応物質成分と容易に反応するために、リグニンの反応性がさらに増加する。
【0049】
本発明の一実施形態においては、ステップii)において、ステップb)からの分散物中のアルデヒド対リグニンの重量比は0.2〜0.7、および好ましくは0.3〜0.6である。
【0050】
本発明はさらに、本発明の方法によって得ることのできるリグニンに関する。本発明の一実施形態において、本発明の方法によって得ることのできるリグニンは、アルカリ化;フェノール化およびアルカリ化;アルカリ化およびヒドロキシメチル化;またはフェノール化、アルカリ化およびヒドロキシメチル化を受けたリグニンであり得る。
【0051】
本発明はさらに、結合剤組成物を生成するための方法に関し、この方法は、
(iii)予め定められた粘度値を有する結合剤組成物が形成されるまで反応物質成分を重合するために、本発明に従って処理されたリグニンを含む反応物質成分と、重合可能な物質と、架橋剤とを含む水性組成物を、触媒の存在下で60〜95℃の温度にて加熱するステップを含む。
【0052】
本発明の一実施形態において、結合剤組成物を生成するための方法に用いられるリグニンは、本発明に従ってアルカリ化されたリグニンである。本発明の一実施形態において、結合剤組成物を生成するための方法に用いられるリグニンは、本発明に従ってフェノール化およびアルカリ化されたリグニンである。本発明の一実施形態において、結合剤組成物を生成するための方法に用いられるリグニンは、本発明に従ってアルカリ化およびヒドロキシメチル化されたリグニンである。本発明の一実施形態において、結合剤組成物を生成するための方法に用いられるリグニンは、本発明に従ってフェノール化、アルカリ化およびヒドロキシメチル化されたリグニンである。
【0053】
本発明の一実施形態において、最終結合剤組成物の予め定められた粘度値は少なくとも40cP、好ましくは少なくとも50cP、およびより好ましくは少なくとも80cPである。本発明の一実施形態において、最終結合剤組成物の予め定められた粘度値は40cP以上250cP以下、好ましくは50cP以上150cP以下、およびより好ましくは80cP以上120cP以下である。
【0054】
本発明の一実施形態において、最終結合剤組成物の予め定められた粘度値は少なくとも250cP、好ましくは少なくとも300cP、およびより好ましくは少なくとも500cPである。本発明の一実施形態において、最終結合剤組成物の予め定められた粘度値は250cP以上1500cP以下、好ましくは300cP以上1200cP以下、およびより好ましくは500cP以上1000cP以下である。粘度は、回転式粘度計を用いて25℃にて測定される。最終結合剤組成物の予め定められた粘度値は、その結合剤組成物が使用される特定の適用によって変動してもよい。
【0055】
結合剤組成物生成のために必要とされる成分の組み合わせおよび/または添加の正確な順序は、たとえば形成される結合剤組成物に必要とされる特性などによって変動してもよい。必要な成分の組み合わせおよび/または添加の順序の選択は、当業者の知識の範囲内である。結合剤組成物を生成するために用いられる成分の正確な量は変動してもよく、異なる成分の量の選択は、本明細書に基づく当業者の知識の範囲内である。結合剤組成物の生成中に、組成物を冷却および/または加熱することによって温度を制御できる。
【0056】
結合剤生成法の必須の特徴は、たとえば本発明に従って処理されたリグニン、架橋剤および重合可能な物質などの反応物質成分を、水性の環境において触媒の存在下で、かつ反応物質成分が単に物理的に混合されるのではなく、ともに真に合成されるような加熱の下で、互いに反応させることである。
【0057】
驚くべきことに、本発明の方法によって、より環境に優しい結合剤組成物が得られる。なぜならこの結合剤生成法においては、フェノールポリマーである天然ポリマーのリグニンが、たとえばフェノールホルムアルデヒド樹脂などのフェノール組成物の生成において通常用いられる合成フェノール物質の少なくとも一部を置換しているからである。なぜ本発明の方法が前述の利点をもたらすのかに関するあらゆる特定の理論に本発明を限定することなく、たとえばフェノールなどの少なくとも一部をリグニンで置換することの適合性は、本発明の方法によって増加された反応性を有するリグニンが、フェノールとかなり類似した態様でたとえばホルムアルデヒドなどのアルデヒドと効果的に反応するという事実によるものであることが考えられる。
【0058】
本発明の一実施形態において、水性組成物は反応物質成分としてさらにタンニンを含む。
【0059】
本発明の一実施形態において、使用されるタンニンは任意の木材種に由来する。タンニンは、たとえば樹皮または心材などから生じたものであってもよい。タンニンの供給源となり得るものの例として、ケブラチョの木、ブナの木およびワットルの木が示される。本発明の一実施形態において、使用されるタンニンは軟木の樹皮から生じたものである。本発明の一実施形態において、タンニンは、製材鋸またはパルプ製造機のデバーキングユニットの軟木樹皮から分離される。この分離プロセスは、軟木樹皮のエタノール抽出プロセス、温水抽出プロセス、高温蒸気抽出プロセス、または水−エタノール抽出プロセスと組み合わされ得る。本発明の一実施形態において、タンニンは縮合タンニンである。縮合タンニンは高い乾燥含有量を有するため、本発明において用いるために好適である。縮合タンニンの乾燥物質含有量は、40〜100%の間、好適には60〜90%の間、および好ましくは70〜80%の間で変動してもよい。こうした乾燥物質含有量を有するタンニンは容易に分散できることから、他の反応物質成分との良好な反応性が達成される。加えて、タンニンは加水分解可能なタンニンであってもよい。
【0060】
本発明の一実施形態において、ステップ(iii)は、組成物を好ましくは65〜90℃の温度、およびより好ましくは75〜85℃の温度で加熱するステップを含む。
【0061】
本発明の一実施形態において、架橋剤はアルデヒド、アルデヒドの誘導体、アルデヒド形成化合物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。本発明の一実施形態において、アルデヒドの誘導体はヘキサメチレンテトラミン、パラホルムアルデヒド、またはトリオキサンである。本発明の一実施形態において、架橋剤は芳香族アルデヒド、グリオキサール、フルフリルアルコール、カプロラクタム、およびグリコール化合物からなる群より選択される。アルデヒドは、ホルムアルデヒドであり得る。芳香族アルデヒドは、フルフリルアルデヒドであり得る。本発明の一実施形態において、架橋剤は生体に基づく架橋剤である。本発明の一実施形態において、架橋剤はアルデヒドであり、好ましくはホルムアルデヒドである。
【0062】
本発明の一実施形態において、重合可能な物質はフェノール、クレゾール、レゾルシノール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。本発明の一実施形態において、重合可能な物質はフェノールである。本発明の一実施形態において、重合可能な物質は、生体に基づくヒドロキシフェノール、およびそれらの誘導体からなる群より選択される。本発明の一実施形態において、重合可能な物質は、生体に基づく重合可能な物質である。本発明の一実施形態において、重合可能な物質は、リグニンおよびタンニンからなる群より選択される。
【0063】
本発明の一実施形態において、ステップ(iii)における触媒は塩基である。本発明の一実施形態において、ステップ(iii)における触媒はアルカリ、またはアルカリ土類水酸化物である。本発明の一実施形態において、ステップ(iii)における触媒は、アルカリ金属の塩または水酸化物を含む。本発明の一実施形態において、ステップ(iii)における触媒は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの任意の混合物からなる群より選択される。本発明の一実施形態において、ステップ(iii)における触媒は水酸化ナトリウムである。本発明の一実施形態において、ステップ(iii)における触媒は有機アミンである。
【0064】
本発明の一実施形態において、結合剤組成物を生成するために使用されるリグニン、触媒/溶媒、重合可能な物質、および架橋剤の、それらの乾燥含有量に基づく量の関係は以下のとおりである。すなわち、18〜70重量%、好ましくは26〜45重量%の架橋剤および触媒/溶媒、ならびに82〜30重量%、好ましくは74〜55重量%の重合可能な物質およびリグニンである。
【0065】
本発明はさらに、本発明の方法によって得ることのできる結合剤組成物に関する。
【0066】
本発明はさらに、本発明に従う結合剤組成物を含む接着性組成物に関する。この接着性組成物はさらに、他の結合剤、エキステンダー、添加剤、触媒、および充填剤からなる群より選択される1つまたはそれ以上の接着性成分を含み得る。結合剤は、主にポリマーの成長および架橋を起こすことによってポリマー系の硬化を助ける役割をする物質である。エキステンダーは、たとえば水分を結合することなどによって物理的性質を調整することによって結合剤を助ける物質である。添加剤は、充填、軟化、コスト低減、水分調整、剛性の増加、および柔軟性の増加などの特性を助けるポリマーまたは無機化合物であってもよい。触媒は通常、硬化速度を上昇および調整する物質である。本明細書における「物質(substance)」は、化合物または組成物を含むものとして理解されるべきである。本発明の結合剤組成物は、接着性組成物において結合剤、エキステンダー、添加剤、触媒、および/または充填剤の働きをしてもよい。
【0067】
本発明はさらに、結合剤組成物の含浸適用における使用、コーティングとしての使用、プラスチックを強化するための使用、圧縮鋳造物、成形物、積層品もしくはラッカーを製造するための使用、または木材製品を接着するための使用に関する。本発明の結合剤組成物はさらに、プラスチックおよび木材の組み合わせを接着するために使用され得る。
【0068】
本発明はさらに、木材製品を接着するための、本発明の接着性組成物の使用に関する。
【0069】
本発明の一実施形態において、木材製品は木材ボード、ベニヤ板、および木材棒からなる群より選択される。
【0070】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのベニヤ板層を含む2つまたはそれ以上の層から層状複合構造が形成されてもよく、これらの層は互いの上に配置されており、本発明に従う結合剤組成物および/または本発明に従う接着性組成物による接着によって組み合わされている。本明細書において、別様に述べられない限り、「ベニヤ板」という用語は、たとえば木材に基づく材料、繊維材料、または複合材料などの任意の材料で形成され得るベニヤに向けて使用される。この状況において、ベニヤ板の厚さは変動し得る。典型的に、ベニヤ板の厚さは3mm未満である。
【0071】
本発明の一実施形態において、層状複合構造は、木材パネル製品、合板製品、複合製品、およびプレスパネル製品からなる群より選択される。層状複合構造はいくつかの層、好ましくはベニヤ板層から形成されてもよく、これらの層は互いの上に置かれてともに接着されている。
【0072】
前述の本発明の実施形態は、互いに任意の組み合わせで使用されてもよい。いくつかの実施形態をともに組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を形成してもよい。本発明が関係する方法、組成物または使用は、前述の本発明の実施形態の少なくとも1つを含んでもよい。
【0073】
本発明に従う方法の利点は、たとえばバイオマスなどから分離したリグニンの反応性を顕著に増加できること、およびリグニンの不均一な性質を減少できることである。
【0074】
本発明の利点は、本発明に従う方法、特にアルカリ化ステップによって、リグニンの反応性を増加できることである。本発明に従う方法によって処理されたリグニンは、非処理リグニンに比べて、リグニン構造に沿った反応性基の数が増加している。
【0075】
本発明に従う方法の利点は、リグニンをアルカリ化するステップに対して比較的短い分散および処理時間を達成できることである。短い処理時間の利点は、リグニンの縮合を減少または回避できることである。
【0076】
本発明に従う方法の利点は、リグニンをアルカリ化するステップa)において71〜94℃という高温を用いるときに、比較的高い乾燥固体含有量を達成できることである。
【0077】
本発明に従う方法の利点は、結合剤組成物の生成の際の反応物質成分として、本発明の方法によって増加された反応性を有するリグニンを使用することによって、より環境に優しい結合剤組成物が得られることである。驚くべきことに、結合剤生成プロセスの際に、この種のリグニンを反応物質成分として用いるとき、たとえばフェノールなどの合成フェノール物質などの重合可能な物質の量を顕著に減少できることが見出された。フェノールは合成化合物であり、リグニンは天然ポリマーであるため、最終結合剤組成物中に存在するフェノールの量を最小化できることが有利である。合成材料の量を低減することの利点は、最終結合剤組成物においてより高レベルの生体に基づく成分が達成されることである。
【0078】
本発明の利点は、非処理リグニンに比べて増加した反応性を有するリグニンを用いることによって、最終結合剤組成物の特性が接着適用に対してより好都合になることである。本発明に従う方法によって処理されたリグニンは、結合剤組成物の硬化、接着および引っ張り強さの性能を高める。本発明の利点は、生成される結合剤組成物または接着性組成物の接着性能が、その組成物をたとえば外部適用などに用いるために好適であることである。
【0079】
利点は、通常の非処理リグニンよりも高い反応性を有するリグニンを使用するときに、本発明に従う結合剤生成法のさらに良好な適合性および反応挙動がもたらされることである。
【実施例】
【0080】
ここで本発明の実施形態を詳細に参照する。実施形態の例を添付の図面に示している。
【0081】
以下の記載は、当業者がこの開示に基づいて本発明を使用できるように本発明のいくつかの実施形態を詳細に開示するものである。ステップの多くは、当業者にとって本明細書に基づいて自明となるので、実施形態のすべてのステップを詳細には考察していない。
【0082】
図1は、リグニンの反応性を増加させるための、本発明のいくつかの実施形態に従う方法と、そのリグニンのさらなる使用とを示す。
【0083】
図1は、リグニンの反応性を増加させるために用い得る異なる組み合わせの処理ステップを示すものである。
図1は、フェノール化ステップi)、アルカリ化ステップa)およびb)、ならびにヒドロキシメチル化ステップii)、ならびにリグニンを処理するためのそれらの組み合わせを示す。非処理リグニンに比べて増加した反応性を有するリグニンを、結合剤組成物を合成するステップ、すなわち
図1のステップiii)においてさらに使用することもできるし、
図1に示されるとおりあらゆるその他の好適な適用に使用することもできる。
【0084】
任意の処理ステップの前に、リグニンの供給源を選択する。上に示したとおり、リグニンはクラフトリグニン、水蒸気爆砕リグニン、バイオリファイナリーリグニン、超臨界分離リグニン、加水分解リグニン、フラッシュ沈殿リグニン、バイオマス由来リグニン、アルカリパルプ化プロセスからのリグニン、ソーダプロセスからのリグニン、オルガノソルブパルプ化からのリグニン、およびそれらの組み合わせから選択できる。加えて、本発明に従う方法において用いるその他の成分およびそれらの量を選択する。必要であれば、
図1の方法において使用する成分を、リグニン処理プロセスに対して好適になるように前処理してもよい。
【0085】
さまざまな調製および前処理の後に、
図1に示した本発明の実施形態の1つにおいては、ステップi)を行う。ステップi)は、触媒の存在下でリグニンと、フェノールのクラスから選択された化合物とを反応させるステップを含む。フェノール化のステップi)の結果として、リグニンの脂肪族部分に反応性フェノールOH基を付加する。
【0086】
ステップi)の後に、ステップa)を行う。代替的には、
図1に示されるとおり、リグニンを最初にステップi)に従って処理することなく、ステップa)に従って直接処理することもできる。
【0087】
ステップa)は、加熱下でアルカリおよびリグニンを含む水性分散物を形成するステップを含む。アルカリはアルカリ金属の水酸化物を含む。次いで、形成された分散物を50〜95℃の温度にて加熱することによって、ステップb)を行う。ステップa)およびステップb)の結果として、リグニンをアルカリ化によって活性化する。
【0088】
ステップb)の後、アルカリ化リグニン画分を結合剤組成物生成法の加熱ステップに導入してもよく、この加熱ステップの間に、前記リグニンは結合剤組成物生成法において使用される他の反応物質成分と重合する(
図1のステップiii))。
【0089】
代替的に、ステップb)からのアルカリ化リグニンを結合剤組成物の合成に導入する前に、ステップii)においてアルデヒドとさらに反応させてもよい。ステップb)からのアルカリ化リグニンの分散物に、たとえばホルムアルデヒドなどを加えることによってステップii)を行い、その結果としてヒドロキシメチル化生成物を形成させる。
【0090】
ステップiii)の結果として、所望の特性を有し、かつ特に大部分が生体に基づく成分に基づく結合剤組成物を生成する。この結合剤組成物をそのまま接着適用に用いることもできるし、接着性組成物を生成するためにこの結合剤組成物を他の接着性成分とともにさらに処理することもできる。
【0091】
上に示したとおり、結合剤組成物を生成するための方法において、ステップb)からのアルカリ化リグニンまたはステップii)からのヒドロキシメチル化リグニンを使用することに加えて、このアルカリ化リグニンまたはヒドロキシメチル化リグニンを、あらゆるその他の好適な適用にそのまま使用することもできる。
【0092】
実施例1−アルカリ化
この実施例においては、リグニンをアルカリ化することによってリグニンの反応性を増加させた。以下の成分およびそれらの量を使用した。
【0093】
濃度 量(g)
水 836
NaOH 50% 584
リグニン 75% 1270
【0094】
最初に水とNaOHとを混合して、混合物の加熱を開始した。次いで、アルカリおよび水の混合物にリグニンを撹拌しながら加え、同時に温度を80℃まで上昇させた。リグニンを加えたとき、混合物を約85℃の温度にて45分間加熱した。
【0095】
実施例1に従って処理したリグニンを、その後結合剤組成物の生成に用いた。38gのフェノール(90%)を105gのアルカリ化リグニンと混合し、その後79gのホルムアルデヒド(37%)を段階的な態様で加えた。触媒としてNaOHを用いた。温度を75℃未満に保った。その後、(25℃の温度で測定したときの)形成された組成物の粘度が約415cpとなるまで、85〜90℃における加熱を続けた。
【0096】
実施例2−アルカリ化、低温
この実施例においては、リグニンをアルカリ化することによってリグニンの反応性を増加させた。以下の成分およびそれらの量を使用した。
【0097】
濃度 量(g)
水 836
NaOH 50% 584
リグニン 75% 1270
【0098】
最初に水とNaOHとを混合して、混合物の加熱を開始した。次いで、アルカリおよび水の混合物中にリグニンを撹拌しながらゆっくり分散させ、同時に温度を77℃まで上昇させた。すべてのリグニンを分散させたとき、分散物を約60℃の温度にて約1時間加熱した。その結果として、リグニンはアルカリ化した。
【0099】
実施例3−アルカリ化、高温
この実施例においては、リグニンをアルカリ化することによってリグニンの反応性を増加させた。以下の成分およびそれらの量を使用した。
【0100】
濃度 量(g)
水 836
NaOH 50% 584
リグニン 75% 1270
【0101】
最初に水とNaOHとを混合して、混合物の加熱を開始した。次いで、アルカリおよび水の混合物中にリグニンを撹拌しながらゆっくり分散させ、同時に温度を71〜77℃まで上昇させた。すべてのリグニンを分散させたとき、分散物を約90〜95℃の温度にて約1時間加熱した。その結果として、リグニンはアルカリ化した。
【0102】
実施例2および実施例3に従ってアルカリ化したリグニンのホルムアルデヒド反応性をテストした。公報、ウーテン(Wooten)A.L.、セラーズ(Sellers)T.、およびタヒル(Tahir)P.M.、ホルムアルデヒドとリグニンとの反応(Reaction of formaldehyde with lignin)、フォレスト・プロダクツ・ジャーナル(Forest Products Journal)38(6):45−46、1988に記載される方法に従って、ホルムアルデヒド反応性を定めた。最初に、実施例2および実施例3に従って形成したアルカリ化リグニンを、60℃にて5時間にわたって水酸化ナトリウムの存在下でホルムアルデヒドと反応させることによってメチロール化した。組成物のpHは約12であり、リグニンの可溶性を確実にした。反応容器はスターラーと、温度計と、還流凝縮器と、加熱マントルとを備えた。塩酸ヒドロキシルアミン滴定法(ISO9397)によって、反応ホルムアルデヒドおよび遊離ホルムアルデヒドの量を定めた。反応の終点に達したことを確認するために、1時間に1回サンプリングを行った。
【0103】
加えて、実施例2および実施例3に従ってアルカリ化したリグニンを、結合剤組成物の生成に用いた。形成された結合剤組成物から遊離ホルムアルデヒド%の量を定めた。
【0104】
本発明に従う方法によって処理していない、すなわちアルカリ化していないリグニン、およびこうしたリグニンによって生成した結合剤組成物に対しても、対応する測定を行った(比較例)。
【0105】
上記測定の結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
この結果は、実施例2および実施例3に従ってアルカリ化したリグニンの反応性が高いことを示した。リグニンは増加した反応性を有するため、結合剤組成物生成の際に他の反応物質成分と容易に反応する。形成した結合剤組成物中の遊離ホルムアルデヒドの含有量が比較的低いことからも、高い反応性が示された。
【0108】
実施例4−フェノール化とアルカリ化との組み合わせ、および結合剤組成物を生成するための処理リグニンの使用
この実施例においては、リグニンをフェノール化およびアルカリ化することによってリグニンの反応性を増加させ、その後結合剤組成物を生成するために処理リグニンを用いた。
【0109】
最初にフェノール化を行った。以下の成分およびそれらの量を使用した。
【0110】
濃度 量(g)
水 364
フェノール 90% 381
リグニン 98% 446
H
2SO
4 96% 9
【0111】
水、フェノールおよびリグニンを撹拌しながら約5〜10分間混合し、その後H
2SO
4を加えた。次いで、約3時間にわたって温度を135℃までゆっくりと上昇させ、その温度で約1時間保った。次いで混合物を冷却して処理を終了し、結果としてフェノール化リグニンを得た。
【0112】
次いで、フェノール化リグニンをアルカリ化した。430gのフェノール化リグニンと、150gの50.0%NaOHとを加熱しながら混合した。次いで、その分散物を75℃の温度で約1時間加熱した。
【0113】
上記処理の結果として、フェノール化およびアルカリ化リグニンを形成した。
【0114】
フェノール化およびアルカリ化処理の後、組成物に38gの水および38gのフェノール(90%)を加え、その後に368gのホルムアルデヒド(39.3%)を段階的な態様で加えた。温度を75℃未満に保った。その後、(25℃の温度で測定したときの)形成された組成物の粘度が約415cpとなるまで、85〜90℃における加熱を続けた。
【0115】
実施例5−アルカリ化とヒドロキシメチル化との組み合わせ、および結合剤組成物を生成するための処理リグニンの使用
この実施例においては、リグニンをアルカリ化およびヒドロキシメチル化することによってリグニンの反応性を増加させ、その後結合剤組成物を生成するために処理リグニンを用いた。以下の成分およびそれらの量を使用した。
【0116】
水 220g
NaOH(第1の部分、アルカリ化)50% 146g
リグニン61% 752g
ホルムアルデヒド(第1の部分、ヒドロキシメチル化)39.30% 514g
フェノール90% 510g
ホルムアルデヒド(第2の部分、結合剤形成)39.30% 566g
NaOH(第2の部分、結合剤形成)50% 146g
NaOH(第3の部分、結合剤形成)50% 146g
【0117】
最初に水とNaOHとを混合して、混合物の加熱を開始した。次いで、アルカリおよび水の混合物中にリグニンを撹拌しながらゆっくり分散させ、同時に温度を約75℃まで上昇させた。すべてのリグニンを分散させたとき、分散物を約75℃にて約1時間加熱した。その結果として、リグニンはアルカリ化した。次いで分散物にホルムアルデヒドを加えて、反応を約1時間継続させることによって、結果としてリグニンをヒドロキシメチル化した。
【0118】
結合剤組成物を生成するために処理リグニンを用いた。組成物にフェノールを加え、その後にホルムアルデヒド、次いでNaOHを加えた。(25℃の温度で測定したときの)形成された組成物の粘度が約300cpとなるまで、NaOHを加えながら形成組成物の70〜90℃の温度における加熱を続けた。
【0119】
実施例7−接着性組成物の調製
この実施例においては、接着性組成物の生成のために、実施例4で生成した結合剤組成物を使用した。結合剤組成物に、エキステンダー、充填剤、触媒、添加剤を混合し、その例としてはたとえばデンプン、木粉、および硬化剤(例、タンニンまたは炭酸塩)を示すことができ、こうして接着性組成物を形成した。
【0120】
実施例8−合板製品を製造するための結合剤組成物の適用
7合板を製造するために、実施例5において生成した結合剤組成物によって、厚さ3mm未満のベニヤ板をともに接着した。その結果、ベニヤ板を接着するための接着効果は十分に良好であることを示した。
【0121】
実施例9−合板製品を製造するための接着性組成物の適用
この実施例においては、実施例7の接着性組成物をベニヤ板に適用した。合板を形成するために、ベニヤ板を接着性組成物によってともに連結した。接着性組成物の乾燥物質含有量は45%から55%の間であった。接着性組成物を有するベニヤ板を、120〜170℃の温度にてホットプレス技術によって加圧した。同時に接着性組成物は硬化した。本発明の接着性組成物は、ベニヤ板をともに接着して合板を製造するために好適であることを見出した。
【0122】
実施例10−積層品を製造するための結合剤組成物の適用
この実施例においては、実施例4で生成した結合剤組成物を含浸適用に用いた。積層品の製造の際に、結合剤組成物のアルコール溶液に紙を含浸し、その後含浸層を炉の中に移した。アルコールが揮発して、結合剤組成物は部分的に硬化した。こうした半硬化組成物を含む層を互いの上に配置し、均一なより厚いボードまたは積層品を形成するためにホットプレス技術によって焼成した。
【0123】
上記実施例において示した結合剤生成法においては、フェノールおよびホルムアルデヒドを用いる。しかし、本明細書に基づいて当業者に自明になるとおり、結合剤組成物生成法において、あらゆるその他の重合可能な物質または架橋剤を同等に良好に使用できる。
【0124】
技術の進歩によって、本発明の基本的アイデアがさまざまなやり方で実現され得ることが当業者には自明である。よって本発明およびその実施形態は上述の実施例に限定されず、請求項の範囲内で変化してもよい。