【文献】
S. M. Sze,Physics of Semiconductor Devices,Physics of Semiconductor Devices,2nd Edition,米国,John Wiley & Sons, Inc.,1981年,P.852
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応性ガス雰囲気を使用してアニーリングするステップ(420)は、最小0.1体積%の前記第1の反応性ガス種と最小0.1体積%の前記第2の反応性ガス種とを同時に含む反応性ガス雰囲気において行われる、
請求項1記載の方法(200、300、400)。
前記第1の反応性ガス種は、少なくとも1つの第1の反応性ガス種を使用してアニーリングするステップ(220、320)中、不活性ガスによって希釈され、これにより前記第1の反応性ガス種の体積割合は、最小1体積%かつ最大50体積%であり、前記第1の反応性ガス種は、酸化窒素である、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法(200、300、400)。
前記第2の反応性ガス種は、少なくとも1つの第2の反応性ガス種を使用してアニーリングするステップ(330)中、不活性ガスによって希釈され、これにより前記第2の反応性ガス種の体積割合は、最小0.1体積%かつ最大10体積%であり、前記第2の反応性ガス種は、アンモニアである、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法(200、300、400)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの例を図示した添付図を参照しながら、種々の例をここでより完全に説明する。図中、線の太さ、層および/または領域の厚さは、明瞭性のために強調的に示したところがある。
【0010】
したがって、別の各例では種々の修正形態および代替形態が可能であるが、そのうちいくつかの特定例を図示し、以下に詳細に説明する。ただし、ここでの詳細な説明は、別の各例を、説明する特定形態に制限するものではない。別の各例は、本開示の範囲内に該当する全ての修正物、等価物および代替物をカバーしうる。図の説明を通して、同一に実現可能であるか、または同一の機能もしくは類似の機能を提供するが相互に比較した場合には修正された形態として実現可能である、同様のもしくは類似の要素には、同一のまたは同様の番号を付してある。
【0011】
或る要素が別の要素に「接続されている」もしくは「結合されている」という場合、各要素は直接に接続もしくは結合されていてもよいし、または1つもしくは複数の介在要素を介して接続もしくは結合されていてもよいと理解されたい。2つの要素A,Bが「または」を使用して組み合わされている場合、明示的に(例えば「〜または〜のいずれか」なる語によって)または暗示的に別様に規定されていないかぎり、これは可能な組み合わせの全て、すなわちAのみ、Bのみ、ならびにAおよびBが開示されているものと理解されたい。同じ組み合わせについての代替表現は「AおよびBの少なくとも1つ」または「Aおよび/またはB」である。同じことが3つ以上の要素の組み合わせにも当てはまる。さらに、例えば「より高い」「より低い」「より長い」「より短い」「より多い」「より少ない」なる語句または類似の語句を使用して1つの値が異なる値と比較される場合、当該比較はつねに、「少なくとも」または「多くとも」の意味での比較の境界を含む。
【0012】
特定例を説明する目的においてここで使用している語句は、別の各例を限定する意図に発するものでない。「1つの」「或る」「前記1つの」などの単数形を使用しておりかつ唯一の要素を使用することが必須であると明示的にもまたは暗示的にも規定されていない場合、別の各例は、同一の機能を実現する複数の要素を使用することもできる。
【0013】
同様に、1つの機能が複数の要素を使用して実現されると以下に規定されている場合、別の各例では、単独の要素または処理エンティティを使用して同一の機能を実現することができる。また、「から成る」「から成っている」「含む」および/または「含んでいる」なる語句が使用されている場合、記述されている特徴、完全体、ステップ、演算、プロセス、動作、素子および/または部品の存在が規定されるが、1つもしくは複数の他の特徴、完全体、ステップ、演算、プロセス、動作、素子、部品および/またはこれらの任意のグループの存在または追加が排除されるものではないことを理解されたい。
【0014】
別の規定がないかぎり、(技術用語および学術用語を含む)全ての語句は、ここでは、各例の属する分野の通常の意味において使用しているものとする。
【0015】
いくつかのワイドバンドギャップ半導体デバイス、例えばSiCMOSFETは、例えばスモールバンドギャップ半導体デバイス、例えばSiMOSFETと比較して低い反転チャネル移動度および高い閾値電圧不安定性を有しうる。低い反転チャネル移動度は、SiCMOSFETの高いオン抵抗を生じさせることがある。高い閾値電圧不安定性は、SiCMOSFETの低い信頼性をもたらすことがある。
【0016】
SiMOSFETと比較した、SiCMOSFETの低い反転チャネル移動度および高いバイアス温度不安定性は、ワイドバンドギャップ半導体デバイスのバンドギャップが大きく、半導体材料内へのトラップの増大を生じさせうることに起因して、または炭素種の含有と複数のアニーリングプロセスを使用した不充分な欠陥パッシベーションとによって生じうるSiC基板と酸化物層との界面での高い界面状態および境界トラップ密度に起因して、発生しうる。
【0017】
他の手法は、高い反転チャネル移動度および高いバイアス温度不安定性、または低い反転チャネル移動度および低いバイアス温度不安定性、または低い反転チャネル移動度および高いバイアス温度不安定性のいずれかを有しうる。
【0018】
ワイドバンドギャップ半導体デバイスがMOSFET、特にSiCMOSFETである場合、ワイドバンドギャップ半導体デバイスの電圧等級に応じて、SiCMOSFETのチャネル抵抗が全RONxAの50%より大きくなることがある。ここで、RONxAは、オン抵抗とデバイス活性面積との積である(典型的には単位[mΩmm
2]で与えられる)。デバイス活性面積とは、全デバイス面積のうち電流を導通する部分である(すなわちゲートパッド、ゲートランナ、JTEなどは除外される)。こんにち達成される反転チャネル移動度は、炭化ケイ素の理論的なバルク移動度より小さい規模のオーダーを中心とした範囲にあってよい。印加中、高い閾値電圧ドリフトが発生すると、VTH(閾値電圧)ドリフトが正の方向へ向かっている場合には、オン抵抗またはRONxAにおける(例えば高い静的損失を含む)勾配増大が生じることがあり、またはVTHドリフトが負の方向へ向かっている場合には、再ターンオン(およびデバイス破壊)が生じることがある。
【0019】
例えばSiC/SiO
2(二酸化ケイ素)界面に対する種々の複数のポストオキシデーション技術を使用可能である。SiMOSFETとは異なり、炭素に関連する欠陥種の含有により、代替のパッシベーションスキーマが要求されうる。SiC/SiO
2系では、欠陥パッシベーションは、酸化窒素(NO)または一酸化二窒素(N
2O)での直接の酸化物成長によって達成可能である。付加的にまたは代替的に、少なくとも550℃または少なくとも600℃または少なくとも750℃または少なくとも900℃または少なくとも1100℃の温度で酸化窒素またはアンモニア(NH
3)でのポストオキシデーションアニーリング(POA)による、系の欠陥パッシベーションも利用可能である。ここで、「ポストオキシデーションアニーリング(POA)」なる語句は、半導体の酸化部分と堆積された酸化物層との双方を事後的にアニーリングすることをいう。特に、「ポストオキシデーションアニーリング(POA)」は、酸化物層のポストデポジション(すなわち堆積後の)アニーリングに対応しうる。標準的なフォーミングガスまたはH
2におけるアニーリングは、SiCではさほど有効でないが、SiC/SiO
2系でのきわめて効率的な界面状態パッシベーションを提供する。ただし、こうしたポストオキシデーション技術の全てが、SiC/SiO
2界面での全ての種類の点欠陥をパッシベートするための制限された能力しか有さない可能性がある。例えばNOPOAを使用することで大きな移動度およびRONxAの改善が既に達成可能であるにもかかわらず、理論的なパフォーマンス限界まで大きなギャップが存在しており、またRONxAを改善する大きな余地がある。
【0020】
上昇または増大した反転チャネル移動度、低下したオン抵抗、低下したバイアス温度不安定性および増大した信頼性を有するワイドバンドギャップ半導体デバイスを、上述もしくは下述の各例に関連して説明する技術手段によって提供することができる。
【0021】
図1には、一実施形態による、ワイドバンドギャップ半導体デバイスを形成する方法100の概略図が示されている。方法100は、ワイドバンドギャップ半導体基板上にゲート絶縁層を形成すること110、および少なくとも第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種を使用してゲート絶縁層をアニーリングすること120を含む。ゲート絶縁層のアニーリング120に使用される第1の反応性ガス種は、ゲート絶縁層のアニーリング120に使用される第2の反応性ガス種とは異なっていてよい。
【0022】
方法100は、一例によればさらに、ゲート絶縁層のアニーリング120の後、ゲート絶縁層上にゲート電極を形成すること130を含みうる。
【0023】
提案の方法100による、少なくとも第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種を使用したゲート絶縁層のアニーリング120は、ゲート絶縁層とワイドバンドギャップ半導体基板との界面の点欠陥を低減することができる。ゲート絶縁層のアニーリング120に少なくとも2つの異なる反応性ガス種を使用することにより、ゲート絶縁層のアニーリングに唯一の反応性ガス種のみを使用する場合に比べて、より多数の点欠陥を低減することができる。なぜなら、それぞれ異なる反応性ガス種により、種々の種類の点欠陥を低減できるからである。界面の点欠陥の数が低減されるので、結果として、ワイドバンドギャップ半導体デバイスの反転チャネル移動度の増大とオン抵抗の低減とがもたらされうる。少なくとも第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種を使用したゲート絶縁層のアニーリング120により、ワイドバンドギャップ半導体デバイスのパワー損失を低減して、その効率を増大することができる。
【0024】
ワイドバンドギャップ半導体デバイスの反転チャネル移動度の増大と同時に、2つ以上の異なる反応性ガス種を使用したゲート絶縁層のアニーリング120により、ワイドバンドギャップ半導体デバイスの閾値電圧ドリフトとバイアス温度不安定性BTIとを、ゲート絶縁層のアニーリングに唯一の反応性ガス種しか使用しない場合のワイドバンドギャップ半導体デバイスの閾値電圧ドリフトまたはBTIに比べて、低減することができる。2つ以上の反応性ガス種を使用したゲート絶縁層のアニーリング120により、閾値電圧ドリフトを低減でき、バイアス温度不安定性の低下によって、ワイドバンドギャップ半導体デバイスの信頼性を増大できる。
【0025】
ゲート絶縁層のアニーリング120は、1つもしくは複数のアニーリングプロセスを含むことができる。ゲート絶縁層120は、アニーリングプロセス中、規定されたガス雰囲気において加熱可能である。よって、アニーリングプロセスはポストオキシデーションアニーリングであってよい。
【0026】
アニーリングプロセスのために、ワイドバンドギャップ半導体基板上に設けられたゲート絶縁層は、アニーリングツール(例えばアニーリングシステム)のアニーリングチャンバ内に配置可能である。アニーリングプロセス中、アニーリングチャンバはアニーリングに使用される反応性ガスを含むガス雰囲気を含むことができる。
【0027】
例えば、ゲート絶縁層120は、少なくとも2つの異なる反応性ガス種を(例えば
図4に関連して示すように)同時に使用することによりアニーリング可能である。このために、ワイドバンドギャップ半導体基板上に設けられるゲート絶縁層を加熱する間、少なくとも2つの反応性ガス種を含むガス雰囲気がアニーリングチャンバ内に存在していてよい。
【0028】
代替的に、ゲート絶縁層は、種々のガス雰囲気を使用した2つの連続するアニーリングプロセスにおいて少なくとも2つの異なる反応性ガス種を使用することにより、アニーリング120可能である。言い換えれば、第1のアニーリングステップおよび第2のアニーリングステップが利用可能である。例えば、ゲート絶縁層は、(第1のアニーリングステップに対応する)第1の時間インターバル中は、第1の反応性ガス種を含む第1のガス雰囲気において、さらに(第2のアニーリングステップに対応する)第2の時間インターバル中は、第2の反応性ガス種を含む第2のガス雰囲気において、アニーリング120可能である。第1の時間インターバルと第2の時間インターバルとは、異なる長さまたは等しい長さのいずれを有してもよい。第1の時間インターバルおよび第2の時間インターバルは連続する時間インターバルである。第1のアニーリングステップにおけるアニーリング温度(すなわち第1のガス雰囲気の温度)は、第2のアニーリングステップにおけるアニーリング温度とは異なっていてよく、典型的にはこれよりも高くてよい。異なる例では、第1のアニーリングステップにおけるアニーリング温度は、第2のアニーリングステップにおけるアニーリング温度に等しい。
【0029】
例えば、ゲート絶縁層のアニーリングは、(例えば
図3に関連して示すように)少なくとも第1のアニーリングプロセスおよび第2のアニーリングプロセスを含みうる。第2のアニーリングプロセスは、第1のアニーリングプロセス後に実行可能である。第1のアニーリングプロセスは、0.1体積%超(または1体積%超、5体積%超、10体積%超もしくは20体積%超)の第1の反応性ガス種を含みかつ/または0.1体積%未満(または0.5体積%未満、1体積%未満もしくは0.01体積%未満)の第2の反応性ガス種を含む反応性ガス雰囲気において実行可能である。第2のアニーリングプロセスは、0.1体積%超(または1体積%超、5体積%超、10体積%超もしくは20体積%超)の第2の反応性ガス種を含みかつ/または0.1体積%未満(または0.5体積%未満、1体積%未満もしくは0.01体積%未満)の第1の反応性ガス種を含む反応性ガス雰囲気において実行可能である。いくつかの実施形態では、第1のアニーリングプロセスは、5%超または10%超(いずれも体積割合による)の第1の反応性ガス種を含みかつ/または20%未満または10%未満(いずれも体積割合による)の第2の反応性ガス種を含む反応性ガス雰囲気において実行可能であり、第2のアニーリングプロセスに対しては逆に、5%超または10%超(いずれも体積割合による)の第2の反応性ガス種を含みかつ/または20%未満または10%未満(いずれも体積割合による)の第1の反応性ガス種を含む反応性ガス雰囲気において実行可能である。
【0030】
例えば、少なくとも2つのアニーリングプロセスの間、第1の反応性ガス種を含む反応性ガス雰囲気は、第2の反応性ガス種を含む別の反応性ガス雰囲気によって置換可能であるか、または例えば付加的な反応性ガス種を反応性ガス雰囲気に添加することにより反応性ガス雰囲気を修正可能である。例えば、連続アニーリングプロセスは、ゲート絶縁層のアニーリング120に使用される各反応性ガス種に対して個別に行うことができる。
【0031】
種々の反応性ガス種に対して個別のアニーリングプロセスを使用するゲート絶縁層のアニーリング120により、アニーリングプロセスのパラメータ設定、例えばアニーリング時間またはアニーリング温度の設定に高い自由度を得ることができる。各パラメータは、例えば、対応するアニーリングプロセスで使用される反応性ガス種にしたがって最適化可能である。例えば、ワイドバンドギャップ半導体デバイスの高い反転チャネル移動度を達成するために、第1の反応性ガス種を使用したゲート絶縁層のアニーリングのプロセスパラメータを、第2の反応性ガス種を使用したゲート絶縁層のアニーリングのプロセスパラメータと異ならせることができる。ただし、いくつかの例では、ゲート絶縁層のアニーリングのための2つ以上の反応性ガス種を、共通のアニーリングプロセスにおいて、または1つの反応性ガス雰囲気において同時に、使用可能である。このようにすれば、全体の処理時間を低減することができる。
【0032】
例えば、第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種がゲート絶縁層のアニーリング120に使用される場合、第1のアニーリングプロセスにおいて第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種のうち一方のみを所定の期間にわたって供給し、続く第2のアニーリングプロセスにおいて第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種の双方を同時に供給することができる。このようにすれば、第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種に対して、異なるアニーリング期間を得ることができる。
【0033】
ゲート絶縁層のアニーリングに対して、処理の観点から、RONxAおよびBTIに関して改善された結果を達成するために、POA時間、温度、ガス組成、不活性ガスへの希釈度を調整することができる。1つのPOAプロセスまたは複数のPOAプロセスのシーケンスにおける種々の反応性ガスの組み合わせにより、デバイスパフォーマンスおよび信頼性を高めるための付加的手段を提供可能である。
【0034】
例えば、酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(N
2O)、水素(H
2)、アンモニア(NH
3)、過酸化水素(H
2O
2)、硝酸(HNO
3)、水蒸気(H
2O)、酸素(O
2,O
3)および/または塩化ホスホリル(POCl
3)を、ゲート絶縁層のアニーリングのための反応性ガス種として使用可能である。括弧書きの化学量論式は、各ガス種をこうした化学量論組成に限定するものでないことを理解されたい。上述した反応性ガス種の全てが、第1の反応性ガス種および/または第2の反応性ガス種として使用可能である。例えば、第1の反応性ガス種はNO,N
2O,H
2またはNH
3のいずれかであってよく、第2の反応性ガス種はNO,N
2O,H
2またはNH
3の別のいずれかであってよい。
【0035】
例えば、第1の反応性ガス種はNOであってよく、第2の反応性ガス種はNH
3であってよい。2つの反応性ガス種が別個のアニーリングプロセスに供給される場合、第1のアニーリングプロセスの反応性ガス雰囲気はNOを含んでいてよく、第2のアニーリングプロセスの反応性ガス雰囲気はNH
3を含んでいてよい。少なくとも、NOおよびNH
3を用いた連続アニーリングの場合、NOを用いたアニーリングのみが行われたゲート絶縁層に比べて、ゲート絶縁層内、例えばゲート絶縁層の材料内かつ/または基板との界面で、水素(H)量および/または窒素(N)量の増大を観察することができる。
【0036】
例えば、反応性ガス種は、ゲート絶縁層のアニーリング120に使用される場合、不活性ガスによって希釈することができる。例えば、第1の反応性ガス種は、当該第1の反応性ガス種が酸化窒素(NO)である場合、ゲート絶縁層のアニーリング中、1%超(または5%超、10%超もしくは20%超)かつ/または50%未満(または30%未満、20%未満もしくは10%未満)の体積割合で、不活性ガスにより希釈可能である。例えば、第1の反応性ガス種は、N
2および/またはアルゴンによって希釈可能である。例えば、第1の反応性ガス種NOは第1のアニーリングプロセスにおいて使用可能であり、これに続いて、第2の反応性ガス種を用いた第2のアニーリングプロセスが行われる。
【0037】
任意の手段として、第2の反応性ガス種も、ゲート絶縁層のアニーリング中、不活性ガスによって希釈可能である。第2の反応性ガス種の体積割合は、当該第2の反応性ガス種がアンモニア(NH
3)である場合、0.1%超(または0.5%超、1%超もしくは2%超)かつ/または10%未満(または5%未満、2%未満もしくは1%未満)であってよい。例えば、第2の反応性ガス種NH
3は、第1の反応性ガス種を用いた第1のアニーリングプロセスに続く第2のアニーリングプロセスにおいて、使用可能である。例えば、NH
3は、第1の反応性ガス種を含むガス雰囲気で使用されているのと同じ不活性ガスによって希釈可能である。例えば、第2の反応性ガス種は、N
2またはアルゴンによって希釈可能である。代替的に、NOおよびNO
3を、ゲート絶縁層のアニーリング120に同時に使用される1つの反応性ガス雰囲気として、不活性ガスによって共通に希釈することもできる。
【0038】
任意の手段として、方法100はさらに、ゲート絶縁層のアニーリング120の後、1200℃未満または1050℃未満または950℃未満の不活性ガス雰囲気においてゲート絶縁層を加熱することを含みうる。当該加熱は、ゲート電極の形成130前に、ゲート絶縁層内の水素濃度を低減するために実行可能である。例えば、加熱温度は、1200℃未満または1100℃未満または1000℃未満または900℃未満または800℃未満または700℃未満であってよい。例えば、不活性ガス雰囲気は、50%超のN
2および/またはアルゴンを含んでいてよい。不活性ガス雰囲気は、1%未満(または0.5%未満もしくは0.1%未満)の酸素を含みうる。
【0039】
任意の手段として、ゲート絶縁層のアニーリング120の期間は、10分超かつ/または600分未満であってよい。アニーリング期間とは、ゲート絶縁層が第1の反応性ガス種および/または第2の反応性ガス種(または不活性ガス種)を含む反応性ガス雰囲気(または不活性ガス雰囲気)において加熱されている時間であってよい。例えば、ゲート絶縁層のアニーリング期間は20分超、50分超、100分超または200分超であってよい。例えば、アニーリング期間は、520分未満、450分未満、350分未満または250分未満であってよい。
【0040】
例えば、2つ以上のアニーリングプロセスまたは別個のアニーリングプロセスが使用される場合、第1のアニーリングプロセスの期間および/または続く(例えば第2のかつ/またはさらなる)アニーリングプロセスの期間は、20分超、50分超、100分超または200分超であってよい。例えば、第1のアニーリングプロセスの期間および/または続くアニーリングプロセスの期間は、520分未満、450分未満、350分未満または250分未満であってよい。例えば、1つのアニーリングプロセスの期間は別のアニーリングプロセスの期間と異なっていてよい。
【0041】
任意の手段として、ゲート絶縁層のアニーリングのアニーリング温度は600℃超かつ/または1200℃未満であってよい。本願を通して、アニーリング温度は、ゲート絶縁層の平均温度および/またはゲート絶縁層のアニーリング中の反応性ガス雰囲気の平均温度であってよい。例えば、アニーリング温度は、1つもしくは複数のアニーリングプロセスの温度であってよい。例えば、種々のアニーリングプロセスのアニーリング温度は、アニーリングプロセスまたはこれに使用される反応性ガス種に応じて異なっていてよい。例えば、アニーリング温度は、650℃超、700℃超、800℃超または900℃超であってよい。例えば、アニーリング温度は、1100℃未満、1050℃未満、900℃未満または950℃未満であってよい。
【0042】
任意の手段として、提案の方法は、ゲート絶縁層を稠密化するために、ゲート絶縁層のアニーリング前に950℃超の温度の不活性ガス雰囲気においてゲート絶縁層を加熱することを含みうる。言い換えれば、ゲート絶縁層の加熱は、ゲート絶縁層の形成110の後、ゲート絶縁層のアニーリング120前に、実行可能である。例えば、ワイドバンドギャップ半導体デバイスのゲート絶縁層は、ゲート絶縁層のアニーリング前に加熱可能である。このことにより、ゲート絶縁層の密度および/またはゲート絶縁層の電界強度(例えばブレークスルー電界)を増大させることができる。例えば、不活性ガス雰囲気は、N
2および/またはアルゴンを含んでいてよい。例えば、加熱からゲート絶縁層のアニーリング120への遷移のため、少なくとも1つの反応性ガス種を不活性ガス雰囲気に追加可能であり、少なくとも1つの反応性ガス種の(例えば1%超の)濃度を有する反応性ガス雰囲気が提供される。
【0043】
例えば、第3の反応性ガス種を、ゲート絶縁層のアニーリング120に使用可能である。第1のアニーリングプロセスでは、反応性ガス雰囲気が、0.1%未満、0.05%未満または0.01%未満の第3の反応性ガス種を含んでいてよい。例えば、第3のアニーリングプロセスは、0.1%超、1%超、5%超または20%超の第3の反応性ガス種を含む一方、0.1%未満、0.05%未満または0.01%未満の第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種を含む反応性ガス雰囲気において、実行可能である。例えば、3つ以上の異なる反応性ガス種を同時に供給することができ、例えば反応性ガス雰囲気は、付加的に、それぞれ相互に異なる第3の反応性ガス種またはさらなる反応性ガス種を含むことができる。反応性ガス雰囲気は、例えば、0.1%超、1%超、5%超または10%超の第1の反応性ガス種および/または第2の反応性ガス種を含むことができる。例えば、いくつかの種類の異なる反応性ガス種は、ワイドバンドギャップ半導体デバイスの高い反転チャネル移動度および/または低いBTIを達成するために、同一もしくは類似のプロセスパラメータを要求しうる。1つの反応性ガス雰囲気に種々の反応性ガス種を同時に供給すると効率的であり、これによりゲート絶縁層のアニーリングに必要な時間を低減することができる。例えば、2つの異なる反応性ガス種を第1のアニーリングプロセスにおいて同時に供給できる一方、第3の反応性ガス種を第2のアニーリングプロセスで別個に供給できる。例えば、複数の異なる反応性ガス種を、連続する種々の反応性ガス雰囲気において使用してよく、第1の反応性ガス雰囲気の少なくとも1つの反応性ガス種を、少なくとも1つの他の反応性ガス雰囲気において供給不可としてもよい。
【0044】
例えば、ゲート絶縁層は、酸化物層または窒化物層であってよい。例えば、ゲート絶縁層は、二酸化ケイ素(SiO
2)層であってよい。例えば、ゲート絶縁層は、ワイドバンドギャップ半導体基板の表面の熱酸化によって、または化学蒸着法(CVP)によって形成110可能である。
【0045】
例えば、導電層(例えばポリシリコン層、銅層またはアルミニウム層)の堆積により、ゲート電極を形成130することができる。導電層の堆積後、当該導電層は、1つもしくは複数のトランジスタもしくはトランジスタセルの1つもしくは複数のゲート電極を取得するためにパターニング可能である。付加的にもしくは代替的に、ゲート電極は、ワイドバンドギャップ半導体基板の表面から当該基板内に延在するゲートトレンチから成るゲートトレンチ電極であってよい。この場合、トレンチは、ワイドバンドギャップ半導体基板内に、例えばエッチングにより形成可能である。ゲートトレンチを形成するために、ゲート絶縁層はトレンチの側壁に堆積可能であって、その後、導電層がゲート電極の形成130のためにトレンチ内に充填される。さらに、ゲート絶縁層はトレンチの底部に堆積可能である。例えば、ゲート絶縁層はトレンチ表面全体をカバーすることができる。
【0046】
一般に、ゲート絶縁層は、ゲート電極とワイドバンドギャップ半導体基板との間に位置決め可能である。言い換えれば、ゲート絶縁層は、半導体基板からゲート電極を分離可能、例えば電気的に分離可能である。
【0047】
形成されたゲート電極は、ワイドバンドギャップ半導体デバイスのトランジスタの、ゲート絶縁層によってワイドバンドギャップ半導体基板から絶縁されたゲート電極であってよい。例えば、ゲート電圧は、ワイドバンドギャップ半導体デバイスのトランジスタのゲート電極に印加可能であってよい。
【0048】
ゲート電極が形成された後、さらに、製造プロセスが実行可能となる。例えば、1つもしくは複数の接続層および/またはメタライゼーション層が形成可能となり、同じワイドバンドギャップ半導体ウェハ上に形成された各ワイドバンドギャップ半導体デバイスが(例えばダイシングにより)相互に分離可能となる。
【0049】
例えば、提案の方法100は、少なくともトランジスタもしくはトランジスタ装置を含むワイドバンドギャップ半導体デバイスを形成するために使用可能である。トランジスタは、電界効果トランジスタ(例えばMOSFETまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT)であってよい。トランジスタのゲートは、ゲート絶縁層およびゲート電極によって形成可能である。ゲートはゲートトレンチであってよい。例えば、ワイドバンドギャップ半導体基板は、トランジスタ装置の、1つもしくは複数のソース領域、1つもしくは複数のボディ領域およびドリフト領域を含むことができる。ソース領域およびドリフト領域は、それぞれ第1の導電型から形成されていてよい。ボディ領域は、第1の導電型とは反対の第2の導電型から形成されていてよい。さらに、ワイドバンドギャップ半導体基板が、ボディ領域と同じ導電型を有してよいダイオード領域、および/またはドリフト領域および/またはソース領域と同じ導電型を有してよい電流拡散領域を含むように構成可能である。ゲート絶縁層は、ワイドバンドギャップ半導体基板に直接に接してよい。特に、ゲート絶縁層は、半導体基板の異なる導電型を有する領域、例えば場合によりソース領域、ドリフト領域、ボディ領域、電流拡散領域および/またはダイオード領域に直接に接するように構成可能である。
【0050】
トランジスタ装置は、半導体基板の前側面と半導体基板の後側面との間に電流を導通するヴァーティカルトランジスタ構造を有することができる。例えば、半導体デバイスのトランジスタ装置は、ソース接続パターンに接続された複数のソースドープ領域、ゲート接続パターンに接続された複数のゲート電極もしくは1つのゲート電極グリッド、および裏面のドレインメタライゼーションを含むことができる。
【0051】
ワイドバンドギャップ半導体基板は、ワイドバンドギャップ半導体ベース基板、成長させたワイドバンドギャップ半導体エピタキシャル層を上部に有するワイドバンドギャップ半導体ベース基板、またはワイドバンドギャップ半導体エピタキシャル層のいずれかであってよい。
【0052】
例えば、ワイドバンドギャップ半導体基板は、ケイ素のバンドギャップ(1.1eV)より大きいバンドギャップを有してよい。例えば、ワイドバンドギャップ半導体基板は、炭化ケイ素半導体基板、またはガリウムヒ素(GaAs)半導体基板、または窒化ガリウム(GaN)半導体基板であってよい。例えば、ワイドバンドギャップ半導体基板は炭化ケイ素基板である。ワイドバンドギャップ半導体基板は半導体ウェハまたは半導体ダイであってもよい。
【0053】
形成されるワイドバンドギャップ半導体デバイスは、パワー半導体デバイスであってよい。パワー半導体デバイスまたはその電気構造(例えば半導体デバイスのトランジスタ装置)は、例えば、100V超の降伏電圧もしくは阻止電圧(例えば200V、300V、400Vもしくは500Vの降伏電圧)、または500V超の降伏電圧もしくは阻止電圧(例えば600V、700V、800Vもしくは1000Vの降伏電圧)、または1000V超の降伏電圧もしくは阻止電圧(例えば1200V、1500V、1700V、2000V、3300Vもしくは6500Vの降伏電圧)を有することができる。
【0054】
図2には、一実施形態による、ワイドバンドギャップ半導体デバイスを形成する方法200の概略図が示されている。方法200は、ワイドバンドギャップ半導体基板上にゲート絶縁層を形成すること210、少なくとも1つの反応性ガス種を含む反応性ガス雰囲気においてゲート絶縁層をアニーリングすること220を含む。方法200はさらに、反応性ガス雰囲気におけるゲート絶縁層のアニーリング220の後、不活性ガス雰囲気においてゲート絶縁層をアニーリングすること230を含む。
【0055】
方法200は、例えば、さらに、不活性ガス雰囲気におけるゲート絶縁層のアニーリング230の後、ゲート絶縁層上にゲート電極を形成すること240を含みうる。
【0056】
例えば、反応性ガス雰囲気におけるゲート絶縁層のアニーリング220は、反応性ガス雰囲気において単独の反応性ガス種を使用すること、または反応性ガス雰囲気において複数の反応性ガス種を同時に使用すること、もしくは連続する複数のアニーリングプロセスの各反応性ガス雰囲気において複数の反応性ガス種を使用することを含みうる。
【0057】
例えば、反応性ガス雰囲気におけるゲート絶縁層のアニーリング220後の不活性ガス雰囲気におけるゲート絶縁層のアニーリング230により、ゲート絶縁層内の水素濃度を低減し、増大された反転チャネル移動度および/または低減されたBTIを得ることができる。ワイドバンドギャップ半導体デバイス、例えばSiCMOSFETを形成する方法200を使用して、改善されたワイドバンドギャップ半導体デバイスを形成、生産もしくは製造することができる。
【0058】
例えば、反応性ガス種は、酸化窒素(NO)およびアンモニア(NH
3)の少なくとも一方を含むことができ、その体積割合は0.1%超であってよい。例えば、反応性ガス種の体積割合は、0.1%超、1%超、5%超または10%超であってよい。例えば、反応性ガス雰囲気は、1%超かつ50%未満の体積割合を有するNOを含むことができる。代替的にもしくは付加的に、反応性ガス雰囲気は、0.1%超かつ10%未満の体積割合を有するNH
3を含むことができる。例えば、反応性ガス種は窒素(N
2)またはアルゴンによって希釈可能である。どちらの場合にも、ガス雰囲気の残りの成分割合のうち少なくとも90%またはガス雰囲気の残りの成分割合の全体が、不活性ガスから成っていてよい。例えば、反応性ガス雰囲気は、それぞれ、少なくとも0.1%または少なくとも5%または少なくとも10%(体積割合)の反応性ガス種と、少なくとも99%または少なくとも94%または少なくとも89%(体積割合)の不活性ガス種とから成っていてよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、反応性ガス雰囲気は、5%超または8%超、例えば10%の体積割合を有する酸化窒素(NO)を含むことができ、さらに、反応性ガス雰囲気は、94%超または91%超、例えば90%の体積割合を有する窒素(N
2)を含むことができる。不活性ガス雰囲気は、少なくとも90%または少なくとも95%の体積割合を有する窒素ガス(N
2)を含むことができる。
【0060】
例えば、不活性ガス雰囲気は、0.5%未満の体積割合を有する酸素(O)の濃度を有することができる。例えば、不活性ガス雰囲気でのOの体積割合は、0.1%未満、1%未満、3%未満または5%未満であってよい。例えば、不活性ガス雰囲気は、90%超(または95%超、99%超もしくは99.5%超)の体積割合を有する1つもしくは複数の不活性ガス(例えばN
2および/またはアルゴン)を含むことができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、反応性ガス雰囲気におけるアニーリングは、最短240分もしくは最短260分かつ最長350分もしくは最長310分もしくは最長280分、例えば270分にわたって実行可能である。別個にもしくは組み合わせて、不活性ガス雰囲気におけるアニーリングは、最短20分もしくは最短25分かつ最長50分もしくは最長40分、例えば30分にわたって実行可能である。不活性ガス雰囲気におけるアニーリングは、反応性ガス雰囲気におけるアニーリングよりも短くてよい。例えば、不活性ガス雰囲気におけるアニーリングの期間は、反応性ガス雰囲気におけるアニーリングの期間の最大30%または最大20%または最大15%であってよい。不活性ガス雰囲気におけるアニーリングおよび/または反応性ガス雰囲気におけるアニーリングは、最低900℃かつ最高1200℃、例えば最低1050℃かつ最高1180℃(例えば1100℃または1130℃)で実行可能である。
【0062】
さらなる詳細および態様を、上述もしくは下述の実施形態に関連して言及する。
図2に示した実施形態は、提案のコンセプトまたは1つもしくは複数の上述もしくは下述の実施形態(例えば
図1,
図3−
図5)に関連して言及する1つもしくは複数の態様に対応する1つもしくは複数の任意の付加的な特徴を含みうる。
【0063】
図3には、一実施形態による、第1のアニーリングプロセスおよび第2のアニーリングプロセスにおいて第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種を使用してワイドバンドギャップ半導体デバイスを形成する方法300の概略図が示されている。方法300は、ゲート絶縁層を形成すること310、第1のアニーリングプロセスを実行すること320、および第2のアニーリングプロセスを実行すること330を含む。例えば、方法300は、ゲート電極を形成すること340を含みうる。
【0064】
図3に示した方法300は、別個のアニーリングプロセスを用いた例である。例えば、第1のアニーリングプロセスの実行320に対して、第1の反応性ガス種を含む第1の反応性ガス雰囲気を使用可能である。第2のアニーリングプロセスの実行330に対しては、第1の反応性ガス種とは異なる第2の反応性ガス種を含む第2の反応性ガス雰囲気を使用可能である。例えば、第1のアニーリングプロセスのアニーリング温度は、第2のアニーリングプロセスのアニーリング温度よりも高くすることができる。ただし、他の例では、第1のアニーリングプロセスのアニーリング温度は、第2のアニーリングプロセスのアニーリング温度より低くてもよい。
【0065】
方法300による例示の実施形態では、SiCMOSFETが、例えば化学蒸着法(CVD)を使用したゲート絶縁層の形成310と、アニーリングプロセスの実行320,330とによって形成される。例えば、SiCMOSFETのバルクゲート酸化物のCVD堆積後、標準のNOプロセスが第1のアニーリングプロセスとして実行され、NH
3プロセスが第2のアニーリングプロセスとして実行される。組み合わされたPOAプロセスのシーケンスでは、NOに続いてNH
3が行われる。
【0066】
NOでのPOAは、1000℃から1200℃の温度で、最短10分から最長600分までにわたり、N
2中にNOを1%から50%(典型的には10%)希釈して、実行可能である。NH
3でのPOAは、900℃から1200℃の温度で、最短10分かつ最長600分までにわたり、N
2中にNH
3を0.1%から10%(典型的には3.6%)希釈して、実行可能である。典型的には、NH
3でのPOAは、最低1050℃かつ最高1180℃(例えば1100℃または1130℃)の温度で、例えば最短50分かつ最長70分(例えば60分)または最短15分かつ最長25分(例えば20分)にわたり、実行される。
【0067】
ゲート絶縁層のアニーリングにNOおよびNH
3の双方を使用することにより、例えば、NOおよびNH
3の一方のみを使用する場合よりも大きな反転チャネル移動度を得ることができる。例えば、NOのみを使用する場合に比べて、NOおよびNH
3の双方を使用する場合、反転チャネル移動度を40%まで高めることができる。BTIに関しては、NOおよびNH
3双方を組み合わせたPOAを使用する場合、形成されるワイドバンドギャップ半導体デバイスのBTIを、ゲート絶縁層のアニーリングにNH
3のみを使用する場合に比べて低減可能である。
【0068】
さらなる詳細および態様を、上述もしくは下述の実施形態に関連して言及する。
図3に示した実施形態は、提案のコンセプトまたは1つもしくは複数の上述もしくは下述の実施形態(例えば
図1−
図2,
図4−
図5)に関連して言及する1つもしくは複数の態様に対応する1つもしくは複数の任意の付加的な特徴を含みうる。
【0069】
図4には、第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種を同時に含む反応性ガス雰囲気を使用してワイドバンドギャップ半導体デバイスを形成する方法400の一実施形態の概略図が示されている。方法400は、ゲート絶縁層を形成すること410、および2つの反応性ガス種を同時に含む反応性ガス雰囲気においてゲート絶縁層をアニーリングすること420を含む。方法400は、例えば、さらに、ゲート電極を形成すること430を含みうる。
【0070】
方法400によれば、ゲート絶縁層のアニーリングは、単独のアニーリングプロセスで実行可能である。例えば、第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種は、反応性ガス雰囲気を供給するために不活性ガスにおいて希釈可能であり、ここで、反応性ガス雰囲気における第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種の濃度は、例えば0.1%超または1%超であってよい。例えば、第1の反応性ガス種の濃度は、反応性ガス雰囲気中の第2の反応性ガス種の濃度とは異なっていてよい。任意の手段として、2つの反応性ガス種を同時に含む反応性ガス雰囲気におけるゲート絶縁層のアニーリング420は、さらに、反応性ガス雰囲気における付加的な反応性ガス種、例えば第3の反応性ガス種および/または第4の反応性ガス種を同時に含むことができる。
【0071】
さらなる詳細および態様を、上述もしくは下述の実施形態に関連して言及する。
図4に示した実施形態は、提案のコンセプトまたは1つもしくは複数の上述もしくは下述の実施形態(例えば
図1−
図3,
図5)に関連して言及する1つもしくは複数の態様に対応する1つもしくは複数の任意の付加的な特徴を含みうる。
【0072】
図5には、一実施形態によるワイドバンドギャップ半導体デバイス500の概略図が示されている。ワイドバンドギャップ半導体デバイス500は、ワイドバンドギャップ半導体基板510、トランジスタ、当該トランジスタのゲート絶縁層520および当該トランジスタのゲート電極530を含むことができる。ワイドバンドギャップ半導体デバイス500は、例えば、少なくとも1つの反応性ガス種を含む反応性ガス雰囲気におけるゲート絶縁層520のアニーリングを含む、
図1−
図4に示した例示の実施形態により形成可能である。当該ワイドバンドギャップ半導体デバイス500は、高い反転チャネル移動度および低いBTIを提供することができる。
【0073】
ワイドバンドギャップ半導体デバイス500のゲート絶縁層は、ワイドバンドギャップ半導体基板とゲート電極との間に位置しうる。ゲート絶縁層およびゲート電極は、ワイドバンドギャップ半導体デバイス500のトランジスタの一部分であってよい。例えば、ワイドバンドギャップ半導体デバイス500は、少なくとも1つのトランジスタ、例えばMOSFETであるかまたはこれを含む。一実施形態では、ワイドバンドギャップ半導体デバイス500は、例えば
図1−
図4の方法の実施形態に関連して説明したヴァーティカルトレンチゲートMOSFETであってよい。
【0074】
一例によれば、ワイドバンドギャップ半導体基板内のトランジスタのチャネル領域の電荷担体移動度は、50cm
2/Vsより高い。例えば、トランジスタのチャネル領域の電荷担体移動度は、70cm
2/Vsより高く、または90cm
2/Vsより高い。高い電荷担体移動度は、ワイドバンドギャップ半導体デバイス500の製造中、反応性ガス雰囲気においてゲート絶縁層520をアニーリングしたことによって得られる。
【0075】
一例によれば、トランジスタの閾値電圧は、1000時間にわたって150℃で公称ゲート電圧が印加される場合、公称閾値電圧の10%未満だけ、当該公称閾値電圧から変化してよい。例えば、公称閾値電圧は、1000時間かつ/または1000時間超、例えば1500時間超または2000時間超にわたって150℃で(または150℃に対し±10℃もしくは±30℃のトレランスで)公称ゲート電圧が印加される場合、公称閾値電圧の8%未満だけ、8%未満だけまたは8%未満だけ変化してよい。公称ゲート電圧の変化の小ささは、提案の方法100または200によるワイドバンドギャップ半導体デバイス500の製造中の、反応性ガス雰囲気におけるゲート絶縁層520のアニーリングによって達成される低いBTIによって得られる。
【0076】
一例によれば、ワイドバンドギャップ半導体デバイス500のゲート絶縁層520の屈折率は、1.457超かつ1.468未満である。当該屈折率は、最小631nmまたは最大633nm、例えば632nmの波長(特にヘリウム‐ネオンの波長632.816nm)で測定される屈折率であってよい。ゲート絶縁層520の比屈折率は、ワイドバンドギャップ半導体デバイス500の製造中の、2つの異なる反応性ガス種を使用した反応性ガス雰囲気におけるゲート絶縁層520のアニーリングによって得られる。例えば、屈折率は、1.459超もしくは1.461超かつ/または1.466未満もしくは1.464未満であってよい。例えば、屈折率は、1.457超かつ/または1.460未満、または1.465超かつ/または1.468未満であってよい。
【0077】
ゲート絶縁層520は、酸化物層であってよい。例えば、酸化物層は、SiO
2層であってよく、ゲート電極530は、ワイドバンドギャップ半導体デバイス500のトランジスタのゲート電極であってよい。ここで、ワイドバンドギャップ半導体デバイス500のワイドバンドギャップ半導体基板510は、例えばSiC基板であってよい。
【0078】
さらなる詳細および態様を、上述もしくは下述の実施形態に関連して言及する。
図5に示した実施形態は、提案のコンセプトまたは1つもしくは複数の上述もしくは下述の実施形態(例えば
図1−
図4)に関連して言及する1つもしくは複数の態様に対応する1つもしくは複数の任意の付加的な特徴を含みうる。
【0079】
いくつかの例は、ポストオキシデーションアニーリングにおける種々の反応性ガスの組み合わせを使用した、SiCMOSFETのパフォーマンスおよび閾値電圧安定性の改善に関する。いくつかの例によれば、ゲート酸化物の熱成長またはゲート酸化物のデポジション後、例えばN
2またはアルゴンの不活性ガスに希釈される反応性ガスとしてNO,N
2O,H
2またはNH
3のうち少なくとも2つの組み合わせを含むPOAが提案される。POAのプラトー温度は、10分から600分(典型的には60分から300分)の範囲のプラトー時間に対して900℃から1200℃(典型的には1100℃から1150℃)の範囲にあってよい。不活性ガスへの反応性ガスの希釈度は、1%から50%(典型的には3%から15%)の範囲であってよい。
【0080】
少なくとも2つの異なる反応性ガス種を用いたアニーリングプロセスは、ワイドバンドギャップ半導体基板上にゲート絶縁層を形成した後に実行可能であり、ゲート絶縁層のアニーリングに使用可能である。ゲート絶縁層の形成後に実行されるアニーリングプロセスは、ポストオキシデーションアニーリング(POA)と称することができる。言い換えれば、いくつかの例は、少なくとも2つの異なる反応性ガス種を含むPOAプロセスの組み合わせに関する。組み合わされたPOAプロセスにより、ワイドバンドギャップ半導体デバイス(例えばSiCMOSFET)の反転チャネル移動度を、他のPOAプロセスに対して40%まで増大させることができる。結果として、組み合わされたPOAプロセスを使用して、SiCMOSFETのRON(オン抵抗)を標準POAに対して20%まで低減することができる。同時に、BTIドリフトを、唯一の反応性ガス種を使用するPOAプロセスに比べて制限することができる。
【0081】
提案のPOAは、不活性ガスに一時点で希釈された唯一の反応性ガス種を使用した2つ以上のステップにおいて、または不活性ガスに同時に希釈された少なくとも2つの反応性ガスの混合物を使用した単独のステップにおいて、実行可能である。
【0082】
さらなる実施形態として、950℃超(典型的には1050℃または1100℃)の温度の不活性ガスにおいて上述した実際のPOAの前または後に実行可能な、特別の酸化物稠密化ステップが提案される。当該不活性の稠密化は、別個の炉の行程として実行可能であるか、または反応性ガスを用いた実際のPOAの前もしくは後の同じ炉の行程に含めることができる。
【0083】
1つのデバイス、例えばワイドバンドギャップ半導体デバイス500の低いRONxAは、所定の電流容量に対する専用システムにおいて使用しなければならないチップの数に影響する。低いRONxAにより、静的損失および冷却労力が低減される。ワイドバンドギャップ半導体デバイス500を形成および使用することにより、システム効率を増大し、コストを低減することができる。
【0084】
少なくとも1つの実施形態によれば、唯一の反応性ガスでなく、種々の反応性ガスの組み合わせが使用され、これによりSiCMOSFETにおけるチャネル移動度が改善可能であり、BTIが低減可能である。種々の反応性ガスの組み合わせがなぜチャネル移動度およびRONxAの改善をもたらしうるのかについての1つのアイデアは、種々の反応性ガス種がSiC/SiO
2界面の種々の性質の欠陥、例えば種々のエネルギの欠陥をパッシベート可能であるということである。例えば、NOでのPOAは欠陥をパッシベート可能であるだけでなく、SiC/SiO
2界面の幾らかの熱酸化を生じさせることができるが、NH
3は酸化を生じさせることはなく、これによりNOに反応しない他のタイプの欠陥をパッシベート可能である。
【0085】
RONxAの低減は、いずれも、直接に活性領域に作用し、直接に処理コストに影響しうる。BTIにおける低減は、いずれも、直接にデバイスのVGSTH_max(最大ゲート基板閾値電圧)およびRON_max(最大オン抵抗)の定格に作用しうることにより、直接に歩留まりおよびコストに影響しうる。
【0086】
例えば、ワイドバンドギャップ半導体デバイスを形成する提案の方法は、POAによらず、ゲート酸化物の熱成長またはデポジションの前の種々の洗浄シーケンスまたはバリウム/ストロンチウムのデポジションおよび/または窒化ケイ素のデポジションとともに動作する、完全に異なる界面パッシベーションスキーマに代えて、使用可能である。当該完全に異なる界面パッシベーションスキーマは、提案のPOAを使用する場合よりも良好な結果をもたらすことはできない。
【0087】
例えば、方法100により形成されるワイドバンドギャップ半導体デバイスは、SiCMOSFETである。SiCMOSFETのワイドバンドギャップ半導体基板は、炭化ケイ素(SiC)基板であってよく、SiCMOSFETの、形成されるゲート絶縁層は、二酸化ケイ素(SiO
2)層であってよい。少なくとも第1の反応性ガス種および第2の反応性ガス種を使用したSiO
2層のアニーリングは、SiCMOSFETのゲート電極の形成130前に実行されるPOAプロセスであってよい。一実施形態により2つの異なる反応性ガス種を使用すれば、効率および信頼性に関して改善されたSiCMOSFETの形成を可能にする手段を得ることができる。
【0088】
提案のコンセプトは、種々の反応性ガス種を使用したPOAの組み合わせを利用している。例えばNOでのPOAとNH
3でのPOAとを組み合わせた提案のプロセスシーケンスは、高められた移動度と制限されたBTIとの良好な妥結を提供できる。いくつかの分割ウェハでは、組み合わされたPOAにより、既に最適化されているNOプロセスに対して、SiCMOSFETの反転チャネル移動度を30%から50%まで高めることができ、RONxAを10%から30%まで低減することができる。同時に、NH
3のみの場合に比べ、BTIを制限した状態に留めることができる。
【0089】
1つもしくは複数の上述した例および図とともに言及および説明した態様および特徴も同様に、他の例の同様の特徴との置換のため、または当該特徴を他の例に付加的に導入するために、1つもしくは複数の他の例と組み合わせ可能である。
【0090】
説明および図は、単に開示の基本方式を説明するものに過ぎない。さらに、ここで言及した全ての例は、基本的に、当該分野の発展に寄与すべき発明者らによる開示の基本方式およびコンセプトについての読者の理解を助けるという例示の目的のためのみのものであることが明確に意図されている。基本方式、態様および開示の各例ならびにその特定の例に言及した全ての言説は、その等価物も包含することが意図されている。
【0091】
明細書または特許請求の範囲における複数の動作、プロセス、演算、ステップまたは機能の開示は、例えば技術的理由についての明示的もしくは暗示的な別様のことわりがないかぎり、特定の順序において実行されるものとして理解されるべきでない。したがって、複数の動作または機能の開示は、こうした動作または機能が技術的理由のために入れ替え不能でないかぎり、特定の順序に限定されない。さらに、いくつかの例では、単独の動作、機能、プロセス、演算またはステップは、複数のサブ動作、サブ機能、サブプロセス、サブ演算またはサブステップをそれぞれ含んでよく、またはこれらに分割可能である。こうしたサブ動作は、明示的に除外されていないかぎり、単独の動作の開示に含まれてその一部をなしてよい。
【0092】
さらに、これにより以下の特許請求の範囲が詳細な説明に組み込まれ、ここで、各請求項は、個別の例としてそれ自体で成立しうるものである。各請求項は個別の例としてそれ自体で成立しうるものであるが、(従属請求項が自身において1つもしくは複数の他の請求項との特定の組み合わせに言及している場合にも)他の例にはそれぞれ他の従属請求項または独立請求項の主題と当該従属請求項との組み合わせが含まれうることに注意されたい。こうした組み合わせは、特定の組み合わせを意図しないことが言明されていないかぎり、明示的に提案されているものとする。さらに、1つの請求項が直接に他のいずれかの独立請求項に従属しない場合にも、当該請求項の特徴は当該他のいずれかの独立請求項に含まれることが意図されている。