特許第6945610号(P6945610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945610
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】リチウムイオンによるMIC減少
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20210927BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20210927BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 43/32 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 33/20 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 43/80 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 47/48 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 41/10 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 43/88 20060101ALI20210927BHJP
   A01N 43/78 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   A01N25/00 101
   A01N59/00 C
   A01P3/00
   A01N31/08
   A01N43/40 101L
   A01N43/32
   A01N33/20 101
   A01N31/02
   A01N35/02
   A01N47/44
   A01N43/80 102
   A01N47/48
   A01N41/10 Z
   A01N43/88 101
   A01N43/78 E
【請求項の数】16
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2019-206960(P2019-206960)
(22)【出願日】2019年11月15日
(62)【分割の表示】特願2016-561701(P2016-561701)の分割
【原出願日】2015年4月8日
(65)【公開番号】特開2020-37586(P2020-37586A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】14164224.9
(32)【優先日】2014年4月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アニタ・ツムシュテーク
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・グラウビッツ
(72)【発明者】
【氏名】シモン・ウルワイラー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ブリ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・エイ・シー・ゲイン
【審査官】 武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0097311(US,A1)
【文献】 特開昭57−149203(JP,A)
【文献】 NICOLA DI MAIUTA; PATRICK SCHWARZENTRUBER; CRAWFORD S DOW,ENHANCEMENT OF THE ANTIMICROBIAL PERFORMANCE OF BIOCIDAL FORMULATIONS USED FOR THE 以下備考,APPLIED MICROBIOLOGY AND BIOTECHNOLOGY,ドイツ,SPRINGER,2010年09月28日,VOL:89, NR:2,PAGE(S):429 - 439,http://dx.doi.org/10.1007/s00253-010-2884-9,PRESERVATION OF WHITE MINERAL DISPERSIONS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00− 65/48
A01P 1/00− 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性調製物中で、エシェリキア属種(Escherichia sp.)、スタフィロコッカス属種(Staphylococcus sp.)およびこれらの混合物を含む群から選択される細菌の少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための方法であって、
a)水性調製物を提供する工程、
b)フェノール類、ハロゲン化フェノール類、ハロゲン含有化合物、ハロゲン放出性化合物、イソチアゾリノン類、ピリチオン類、カルバメート類およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の殺生物剤を提供する工程、
c)少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を提供する工程、
d)工程a)の水性調製物を工程b)の少なくとも1種の殺生物剤と接触させる工程であって、少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中に存在する場合に、前記少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が存在しない状態で、エシェリキア属種(Escherichia sp.)、スタフィロコッカス属種(Staphylococcus sp.)およびこれらの混合物を含む群から選択される細菌の少なくとも1種の菌株に対して有効である、工程、
e)工程a)の水性調製物を、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源と、工程d)の前および/または間および/または後に、前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(I)
MICwithoutLi/MICLi≧1.1 (I)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすような量で接触させる工程
を含み、
少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、リチウムイオンの総量が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、15.0から600.0mMol/Lであるように水性調製物の水相に存在し、
少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中の水の重量に対して計算して、0.4から6500.0ppmの量で水性調製物の水相に存在する、方法。
【請求項2】
工程a)の水性調製物が、
(i)少なくとも1種の無機粒子状材料、ならびに/または
(ii)少なくとも1種の有機材
含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の無機粒子状材料が、天然粉砕炭酸カルシウム、天然および/もしくは合成沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、カオリン、タルカム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタンならびにこれらの混合物を含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の無機粒子状材料が、天然粉砕炭酸カルシウムおよび/もしくは合成沈降炭酸カルシウムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の有機材料が、デンプン、糖類、セルロースおよびセルロース系パルプ、グリセロール、炭化水素およびこれらの混合物を含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
工程a)および/または工程d)および/または工程e)の水性調製物が、
(i)2から12のpH値、および/または
(ii)水性調製物の総重量に基づいて、85.0重量%までの固体含量
を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が、少なくとも1種のリチウム塩である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のリチウム塩が、炭酸リチウム、塩化リチウム、水酸化リチウム、リン酸リチウム、クエン酸リチウム、マレイン酸リチウム、酢酸リチウムおよび乳酸リチウム、リチウムのポリマー塩およびこれらの混合物から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウムのポリマー塩が、アクリルホモポリマー、アクリル酸とマレイン酸および/またはアクリルアミドとのコポリマー、ポリリン酸塩、およびこれらの混合物のリチウム塩から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リチウムのポリマー塩が、ポリリン酸LiNa、ヘキサメタリン酸リチウム−ナトリウムまたはポリアクリル酸リチウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程d)が、少なくとも1種の殺生物剤が、水性調製物に、
(i)前記細菌の少なくとも1種の菌株についての少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)よりも少なくとも9%低い量で、ならびに/または
(ii)水性調製物中の水の重量に対して計算して、0.5ppmから6000ppmの量で
添加されるという点において実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程e)が、前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(Ia
ICwithoutLi/MICLi≧1.5 (Ia
式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすように実施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程e)が、工程d)の前に実施される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程d)および/または工程e)が、1回以上繰り返される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に対して耐性であり、耐容性であり、および/またはそれらを分解する細菌の菌株が水性調製物中に存在する場合、工程d)および/または工程e)の水性調製物が、調製物中の水の重量に対して計算して、250.0から5000.0ppmの量のアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤を含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項で定義された水性調製物中で前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための、水溶性リチウムイオン源の使用であって、減少は、前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(I
ICwithoutLi/MICLi≧1.1 (I
式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での前記細菌の少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たす場合に達成される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための方法に関する。本発明はさらに、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための、水溶性リチウムイオン源の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
実際に、ミネラル、充填剤または顔料などの水不溶性固体の水性調製物、とりわけ懸濁液、分散液またはスラリーは、コーティング、充填剤、増量剤および顔料(製紙用)ならびに水性ラッカーおよび塗料として、紙、塗料、ゴムおよびプラスチック工業で広範囲に使用されている。例えば、炭酸カルシウム、タルクまたはカオリンの懸濁液またはスラリーは、コート紙の調製で充填剤および/または成分として大量に紙産業で使用されている。水不溶性固体の典型的な水性調製物は、それらが、調製物の総重量に基づいて0.1から99.0重量%の水不溶性固体含量を有して懸濁液、スラリーまたは分散液の形態で、水、水不溶性固体化合物、および任意選択的に分散剤のようなさらなる添加剤を含むことを特徴とする。典型的な水性調製物は、45.0から78.0重量%の固体含量を有する白色ミネラル分散液(White Mineral Dispersion(WMD))である。このような調製物中で、例えば、分散剤および/または粉砕助剤として使用されてもよい水溶性ポリマーおよびコポリマーは、例えば、US5,278,248に記載されている。
【0003】
上述の水性調製物は、真菌、酵母、原性動物ならびに/または好気性および嫌気性細菌のような微生物による汚染をしばしば受け、粘度および/またはpHの変化、変色または他の品質パラメータの低下のような調製物の特性の変化をもたらし、これらは、それらの商業的価値に悪影響を及ぼす。したがって、このような水性調製物の製造者は、通常は懸濁液、分散液またはスラリーを安定化させるための手段を取る。例えば、多くの殺生物剤が、水性調製物中のこのような微生物の発育および蓄積を減少させ、したがって、粘度変化(change)または不快な臭気のような、これらの調製物の望ましくない変化(alteration)の傾向を減少させ得ることは公知である。
【0004】
水性調製物の許容できる微生物学的品質を確保するために、防腐剤または殺生物剤が調製物のライフサイクル全体(生産、貯蔵、輸送、使用)にわたって使用される。当技術分野では、水性調製物の微生物学的品質を改善するためのいくつかの手法が提案されてきた。例えば、EP1139741には、溶液の形態で殺微生物剤および部分中和形態でフェノールの誘導体を含有する、ミネラル、充填剤および/または顔料の水性懸濁液または分散液が記載されている。US5,496,398は、低温の熱と抗微生物剤レベルの低減との組み合わせによってカオリンクレースラリー中の微生物を減少させるための方法に関する。WO02/052941には、少なくとも1種の金属酸化物および少なくとも一種の金属塩を含む、塗料、コーティング、プラスターおよびプラスチックス中に組みこむための殺生物剤組成物が記載されている。US2006/0111410には、工業材料および製品を微生物による攻撃および破壊に対して保護するための、1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)およびテトラメチロールアセチレン二尿素(TMAD)を含む混合物について述べられている。さらに、当技術分野において、微生物学的品質を改善するためにこのような水性調製物にホルムアルデヒド放出性物質を添加することが示唆されている。例えば、US4,655,815には、ホルムアルデヒド供与体を含む抗菌組成物について述べられている。さらに、WO2006/079911には、懸濁液のOHイオン濃度を増加させることによって微生物に対して保護する方法が記載されている。
【0005】
WO2004/040979A1は、1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)およびベンジルヘミホルマール(BHF)を含有する相乗的抗菌混合物に関する。対応する混合物は、例えば、顔料のスラリーに使用される。EP1661587A1は、活性成分としてフタルアルデヒドを含む殺菌組成物に関する。EP161587A1では、ハロゲン化イオン、炭酸塩および重炭酸塩が、高耐性バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)胞子に対するフタルアルデヒドの殺菌効力を増強し得ることが示されている。US2001/0009682A1は、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド、グリコールおよびリチウム系緩衝剤を含有し得る、改善された殺生物活性を有する消毒剤濃縮物に関する。US2001/009682A1には、濃縮物とその希釈物の両方のpHを所望の殺生物剤の有効範囲内に制御するために緩衝剤が必要であることが記載されている。EP2199348A1は、少なくとも1種のリチウムイオン中和水溶性有機ポリマーを使用して水性ミネラル材料懸濁液または乾燥ミネラル材料を製造するための方法、ならびに分散および/または粉砕増強剤としての、製造方法におけるリチウムイオン中和水溶性有機ポリマーの使用に関する。EP2374353A1は、例えば、炭酸カルシウム調製物のようなミネラル材料の水性調製物を防腐するための方法に関する。EP2596702A1は、水性ミネラル調製物を安定化させるための方法であって、少なくとも1種のアルデヒド含有および/またはアルデヒド放出性および/またはフェノール系および/またはイソチアゾリン殺生物剤を前記水性ミネラル調製物に添加する工程を含む方法に言及している。US4,871,754は、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのリチウム塩の水性製剤である殺生物剤の使用によって微生物による侵入から保護される水性溶液に言及している。EP2272348A1は、98%の1種以上のハロゲン不含イソチアゾリノンおよび1−500重量ppmの銅(II)イオンを含む殺生物剤(I)に言及している。BITはそのアルカリ金属塩の形態で提供されてもよいことがさらに記載されている。しかしながら、前記文書のいずれも、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の添加によって水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための方法に関するものではない。
【0006】
さらに、本出願人は、炭酸カルシウムスラリーのような水性調製物を細菌安定化させるための方法およびこのような水性調製物の殺生物処理に使用され得る組成物に言及しているEP2108260A2について知っている。特に、EP2108260A2には、前記調製物が、少なくとも1種のミネラル、ならびにアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に耐性であり、耐容性でありおよび/またはそれらを分解する細菌の少なくとも1種の菌株を含むことが記載されている。したがって、単独での殺生物剤は、調製物中に存在する細菌に対して効果をまったく示さず、その結果、細菌の妨げされない発育が観察される。さらに、調製物中に存在するアルデヒド放出性またはアルデヒド系殺生物剤に耐性であり、耐容性であり、および/またはそれらを分解すると考えられる細菌のために、殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)はまったく決定されなかった。水性調製物中での殺生物剤の使用は、とりわけ殺生物剤濃度に関して連続的に増加する限界下に置かれている。
【0007】
しかしながら、減少した殺生物剤濃度では、細菌、酵母および/またはカビに対するそれぞれの殺生物剤の効力は、通常は同じ殺生物剤のより高い濃度で観察される殺生物効力と比較するともはや満足できるものではなく、したがって、減少した殺生物剤濃度での得られた殺生物作用は、典型的には水性調製物の微生物誘発変化を避けるのには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,278,248号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1139741号明細書
【特許文献3】米国特許第5,496,398号明細書
【特許文献4】国際公開第02/052941号
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/011410号明細書
【特許文献6】米国特許第4,655,815号明細書
【特許文献7】国際公開第2006/079911号
【特許文献8】国際公開第2004/040979号
【特許文献9】欧州特許出願公開第1661587号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2001/0009682号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第2199348号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第2374353号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第2596702号明細書
【特許文献14】米国特許第4,871,754号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第2272348号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第2108260号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、減少した殺生物剤濃度で水性調製物の長期のおよび十分な安定化を達成するために溶液、懸濁液、分散液およびスラリーなどの水性調製物中で十分な殺生物活性を与えるための適切な方法に対して当技術分野で必要性が依然としてある。言い換えれば、有効な殺生物剤濃度がそれぞれの殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)より低い水性調製物中で十分な殺生物活性を与えるための方法に対して必要性が依然としてある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、減少した殺生物剤濃度で溶液、懸濁液、分散液およびスラリーのような水性調製物中で十分な殺生物活性を与えるための方法を提供することである。したがって、特に、本発明の目的は、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、水性調製物中で微生物の発育および蓄積が減少し、または防止されるように殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させ、したがって、これらの調製物の変化の傾向を有意に減少させ、それらの粘度、pH、光彩および色などの所望の化学的および機械的特性を維持し、悪臭を防止するための方法を提供することである。本発明の別の目的は、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための方法を提供することである。別の目的は、水性調製物の微生物汚染の細菌安定化および/または消毒および/または防腐および/または制御が与えられるように殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための方法を提供することである。本発明の実にさらなる目的は、減少した殺生物剤濃度で、すなわち、最小発育阻止濃度を減少させる化合物(MIC減少性化合物)の非存在下でのそれぞれの殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)未満である殺生物剤濃度において水性調製物中で十分な殺生物活性を与える水性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のこれらのおよび他の目的は、本発明で記載されおよび特許請求の範囲で定義されるとおりの方法および水性調製物によって解決され得る。
【0012】
本出願の一態様によれば、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための方法が提供される。この方法は、
a)水性調製物を提供する工程、
b)少なくとも1種の殺生物剤を提供する工程、
c)少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を提供する工程、
d)工程a)の水性調製物を工程b)の少なくとも1種の殺生物剤と接触させる工程であって、少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中に存在する場合、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である、工程、
e)工程a)の水性調製物を、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源と、工程d)の前および/または間および/または後に、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(I)
MICwithoutLi/MICLi≧1.1 (I)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすような量で接触させる工程
を含み、
少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、リチウムイオンの総量が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、15.0から800.0mMol/Lであるように水性調製物の水相に存在し、少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中の水の重量に対して計算して、0.4から6500.0ppmの量で水性調製物の水相に存在する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源のリチウムイオンは、殺生物剤の最小発育阻止濃度を減少させる化合物(MIC減少性化合物)と見なされてもよい。その後にMIC減少性化合物に言及される場合、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源のリチウムイオンが意味される。
【0014】
用語「最小発育阻止濃度(MIC)」は、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株の発育および/または蓄積を防止しまたは減少させるために必要な、すなわち、細菌濃度が実施例の項で記載されるとおりにMICを決定するための方法に従って測定して100cfu/プレート未満に低下したときの、それぞれの殺生物剤の最小濃度を指す。
【0015】
本発明の意味において、「MIC減少性化合物」は、MIC減少性化合物(水性調製物中に自然に存在し得るある含量の溶解リチウムイオン以外の)の非存在下でのそれぞれの殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)未満である殺生物剤濃度を有する水性調製物中で殺生物活性(例えば、細菌、酵母および/またはカビなどの微生物の発育および/または蓄積の減少または防止)を誘起しまたはもたらす化合物である。
【0016】
したがって、表現「水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための方法」は、殺生物剤の殺生物活性が、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の非存在下での殺生物剤のMIC未満であるMICに導く少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源によって誘起されまたはもたらされることを意味する。
【0017】
本発明の意味において、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して「有効で」ある殺生物剤は、通常の量で(例えば、殺生物剤の供給業者により提示されたとおりに)投与される場合に水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株の発育または蓄積を防止しまたは減少させる能力を有する殺生物剤を指す。
【0018】
本発明によれば、表現「発育または蓄積を防止しまたは減少させる」は、殺生物剤が存在する場合に細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株の有意な発育または蓄積が水性調製物中でまったく観察されないことを意味する。これは、好ましくは、本明細書で実施例の項に記載される細菌計数法を使用して、処理直前の調製物と比較されて、処理された水性調製物中のcfu値(コロニー形成単位)の減少、より好ましくは100cfu/プレート未満の値、さらにより好ましくは80cfu/プレート未満の値をもたらす。
【0019】
本発明によれば、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株の「有意な発育または蓄積」は、1週以内に試験され、およびトリプシン大豆寒天(TSA)上のプレートアウトにより測定される場合に細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株の発育が測定技術に伴う誤差より大きい場合に観察され、ここで、プレートは、本明細書で実施例の項に記載される細菌計数法に従って、30℃でイキュベートされ、48時間後に評価される。
【0020】
本発明によれば、水性調製物中のリチウムイオン含量は、膜ろ過(0.2ミクロンの細孔サイズ)により懸濁液中の固体を濾別し、イオンクロマトグラフィーによって濾液中のリチウムイオン含量を測定することによって評価され得る。
【0021】
本発明によれば、水相中の少なくとも1種の殺生物剤の含量は、HPLC(高圧液体クロマトグラフィー)によって評価され得る。必要に応じて、対応する殺生物剤は、HPLCによる評価前に誘導体に変換されてもよい。
【0022】
用語「含む(comprising)」が本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、それは他の要素を排除しない。本発明のために、用語「からなる(consisting of)」は、用語「含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると見なされる。以下である群が少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これはまた、ある群を開示すると理解されるべきであり、これは、好ましくはこれらの実施形態だけからなる。
【0023】
不定冠詞または定冠詞、例えば、「a」、「an」または「the」が単数形の名詞に言及するときに使用される場合、これには、何か他に特に記載が限り、その名詞の複数形が含まれる。
【0024】
「得られ得る(obtainable)」または「定義され得る(definable)」、および「得られた(obtained)」または「定義された(defined)」のような用語は、交換可能に使用される。これは、例えば、文脈により他に明らかな指示がない限り、用語「得られた」は、例えば、ある実施形態が、例えば、用語「得られた」に続く工程の順序によって得られなければならないことを、このような限定された理解は、好ましい実施形態として用語「得られた」または「定義された」によって常に含まれるけれども、示すことを意味しないことを意味する。
【0025】
さらに、本発明は、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための、水溶性リチウムイオン源の使用であって、減少は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(I)、好ましくは式(Ia)、より好ましくは式(Ib)、最も好ましくは式(Ic)
MICwithoutLi/MICLi≧1.1 (I)
MICwithoutLi/MICLi≧1.5 (Ia)
MICwithoutLi/MICLi≧2,0 (Ib)
MICwithoutLi/MICLi≧4.0 (Ic)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たす場合に達成される、使用を指す。
【0026】
本発明の別の態様によれば、
a)水性調製物中の水の重量に対して計算して、水性調製物の水相中15.0から800.0mMol/Lのリチウムイオン、および
b)細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である少なくとも1種の殺生物剤を含み、
水性調製物は、少なくとも1種の殺生物剤を、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(I)
MICwithoutLi/MICLi≧1.1 (I)
(式中、
MICwithoutLiは、水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の水溶性リチウムがない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の水溶性リチウムがある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすような量で含む、水性調製物が提供される。
【0027】
水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための本発明の方法の好ましい実施形態または技術的詳細について以下の言及がなされる場合、これらの好ましい実施形態または技術的詳細は、本発明の水性調製物および本明細書で定義されるとおりの水溶性リチウムイオン源の本発明の使用についても言及する(適用される限り)ことが理解されるべきである。例えば、本発明の方法の水性調製物が好ましくは少なくとも1種の無機粒子状材料を含むと提示される場合、やはり本発明の水性調製物および使用は、好ましくは少なくとも1種の無機粒子状材料を含む。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、工程a)の水性調製物は、(i)少なくとも1種の無機粒子状材料であって、好ましくは少なくとも1種の無機粒子状材料は、天然粉砕炭酸カルシウム、天然および/もしくは合成沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、カオリン、タルカム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタンならびにこれらの混合物を含む群から選択され、最も好ましくは少なくとも1種の無機粒子状材料は、天然粉砕炭酸カルシウムおよび/または合成沈降炭酸カルシウムを含む、少なくとも1種の無機粒子状材料、ならびに/または(ii)少なくとも1種の有機材料であって、好ましくは少なくとも1種の有機材料は、デンプンのような炭水化物、糖類、セルロースおよびセルロース系パルプ、グリセロール、炭化水素ならびにこれらの混合物を含む群から選択される、少なくとも1種の有機材料を含む。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、工程a)および/または工程d)および/または工程e)の水性調製物は、(i)2から12、好ましくは6から12、より好ましくは7から10.5のpH値、および/または(ii)水性調製物の総重量に基づいて、85.0重量%まで、好ましくは10.0から82.0重量%、より好ましくは20.0から80.0重量%の固体含量を含む。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態によれば、細菌の少なくとも1種の菌株は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
本発明の一施形態によれば、(i)細菌の少なくとも1種の菌株は、メチロバクテリウム属種(Methylobacterium sp.)、サルモネラ属種(Salmonella sp.)、エシェリキア・コリ(Echerichia coli)のようなエシェリキア属種(Escherichia sp.)、シゲラ属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)のようなシュードモナス属種(Pseudomonas sp.)、ブデロビブリオ属種(Bdellovibrio sp.)、アグロバクテリウム属種(Agrobacterium sp.)、アルカリゲネス属種(Alcaligenes sp.)、フラボバクテリウム属種(Flavobacterium sp.)、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)、スフィンゴバクテリウム属種(Sphigobacterium sp.)、アエロモナス属種(Aeromonas sp.)、クロモバクテリウム属種(Chromobacterium sp.)、ビブリオ属種(Vibrio sp.)、ヒホミクロビウム属種(Hyphomicrobium sp.)、レプトトリックス属種(Leptothrix sp.)、マイクロコッカス属種(Micrococcus sp.)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のようなスタフィロコッカス属種(Staphylococcus sp.)、アグロマイセス属種(Agromyces sp.)、アシドボラックス属種(Acidovorax sp.)およびこれらの混合物を含む群から選択され、ならびに/または(ii)酵母の少なくとも1種の菌株は、サッカロミケス亜門(Saccharomycotina)、タフリナ菌亜門(Taphrinomycotia)、シゾサッカロミケス綱(Schizosaccharomycetes)、担子菌門(Basidiomycota)、ハラタケ亜門(Agaricomycotina)、シロキクラゲ綱(Tremellomycetes)、プクシニア菌亜門(Pucciniomycotina)、ミクロボトリウム菌綱(Microbotryomycetes)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ギリエルモンジィ(Candida guilliermondii)、カンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniaea)、およびこれらの混合物のようなカンジダ属種(Candida sp.)、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)のようなヤロウィア属種(Yarrowia sp.)、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)およびクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neofarmans)のようなクリプトコッカス属種、ジゴサッカロマイセス属種(Zygosaccharomyces sp.)、ロドトルラ・ムシラギノサ(Rhodotorula mucilaginosa)のようなロドトルラ属種(Rhodotorula sp.)およびこれらの混合物を含む群から選択され、ならびに/または(iii)カビの少なくとも1種の菌株は、アクレモニウム属種(Acremonium sp.)、アルテルナリア属種(Alternaria sp.)、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)、クラドスポリウム属種(Cladosporium sp.)、フザリウム属種(Fusarium sp.)、ムコール属種(Mucor sp.)、ペニシリウム属種(Penicillium sp)、リゾプス属種(Rhizopus sp.)、スタキボトリス属種(Stachybotrys sp.)、トリコデルマ属種(Trichoderma sp.)、デマチアセ属種(Dematiaceae sp.)、フォーマ属種(Phoma sp.)、ユーロチウム属種(Eurotium sp.)、スコプラリオプシス属種(Scopulariopsis sp.)、アウレオバシジウム属種(Aureobasidium sp.)、モニリア属種(Monilia sp.)、ボトリチス属種(Botrytis sp.)、ステムフィリウム属種(Stemphylium sp.)、カエトミウム属種(Chaetomium sp.)、ミセリア属種(Mycelia sp.)、ニューロスポラ属種(Neurospora sp.)、ウロクラジウム属種(Ulocladium sp.)、パエシロマイセス属種(Paecilomyces sp.)、ワレミア属種(Wallemia sp.)、クルブラリア属種(Curvularia sp.)およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、工程b)の少なくとも1種の殺生物剤は、フェノール類、ハロゲン化フェノール類、ハロゲン含有化合物、ハロゲン放出性化合物、イソチアゾリノン類、アルデヒド含有化合物、アルデヒド放出性化合物、グアニジン類、スルホン類、チオシアネート類、ピリチオン類、β−ラクタム抗生物質のような抗生物質、第四級アンモニウム塩、過酸化物、過塩素酸塩、アミド類、アミン類、重金属、殺生物性酵素、殺生物性ポリペプチド、アゾール類、カルバメート類、グリホセート類、スルホンアミド類およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態によれば、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、少なくとも1種のリチウム塩であり、好ましくは少なくとも1種のリチウム塩は、炭酸リチウム、塩化リチウム、水酸化リチウム、リン酸リチウム、クエン酸リチウム、マレイン酸リチウム、酢酸リチウムおよび乳酸リチウム、リチウムのポリマー塩ならびにこれらの混合物から選択され、前記リチウムのポリマー塩は、好ましくはアクリルホモポリマー、アクリル酸とマレイン酸および/またはアクリルアミドとのコポリマーのようなアクリルコポリマー、ポリリン酸塩ならびにこれらの混合物のリチウム塩から選択され、前記リチウムのポリマー塩は、より好ましくはポリリン酸LiNa、ヘキサメタリン酸リチウム−ナトリウムまたはポリアクリル酸リチウムである。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、工程d)は、少なくとも1種の殺生物剤が、水性調製物に、(i)細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株についての少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)よりも少なくとも9%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%低い量で、および/または(ii)水性調製物中の水の重量に対して計算して、0.5ppmから6000ppmの量で添加されるという点において実施される。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、工程e)は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビに対する少なくとも1種の殺生物剤の少なくとも1種の菌株の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(Ia)、好ましくは式(Ib)、最も好ましくは式(Ic)
MICwithoutLi/MICLi≧1.5 (Ia)
MICwithoutLi/MICLi≧2,0 (Ib)
MICwithoutLi/MICLi≧4.0 (Ic)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすように実施される。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態によれば、工程e)は、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が、水性調製物に、水性調製物の水相中のリチウムイオンの総量が、調製物中の水の重量に対して計算して、15.0から700.0mMol/Lであるような量で添加されるという点において実施される。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、工程e)は、工程d)の前に実施される。
【0038】
本発明の別の実施形態によれば、工程d)および/または工程e)は、1回以上繰り返される。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態によれば、工程d)および/または工程e)の水性調製物は、アルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に耐性であり、耐容性であり、および/またはそれらを分解する細菌の菌株が水性調製物中に存在する場合、調製物中の水の重量に対して計算して、250.0から5000.0ppmの量のアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤を含まない。
【0040】
上に示されたとおり、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための本発明の方法は、工程a)、工程b)、工程c)、工程d)および工程e)を含む。以下において、それは、本発明のさらなる詳細、特に、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための本発明の方法の前述の工程について言及される。当業者は、本明細書で記載される多くの実施形態が一緒に組み合わせまたは適用され得ることを理解する。
【0041】
工程a)の特徴付け:水性調製物の提供
本発明の方法の工程a)によれば、水性調製物が提供される。
【0042】
本方法の工程a)で提供される水性調製物は、殺生物活性、すなわち、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株の発育および/または蓄積の減少または防止を必要とする任意の水性調製物であり得ることが認識される。
【0043】
用語「水性」調製物は、調製物の液相が、水を含む、好ましくは水からなる系を指す。しかしながら、前記用語は、水性調製物が、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール類、ケトン類、例えば、アセトンまたはアルデヒドのようなカルボニル基含有溶媒、酢酸イソプロピルのようなエステル類、ギ酸のようなカルボン酸類、ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類およびこれらの混合物を含む群から選択される有機溶媒を含むことを排除しない。水性調製物が有機溶媒を含む場合、水性調製物は、水性調製物の液相の総重量に基づいて、40.0重量%まで、好ましくは1.0から30.0重量%、最も好ましくは1.0から25.0重量%の量で有機溶媒含む。例えば、水性調製物の液相は、水からなる。水性調製物の液相が水からなる場合、使用されるべき水は、水道水および/または脱イオン水のような入手可能な任意の水であり得る。
【0044】
工程a)の水性調製物は、水溶液または水性懸濁液であり得る。本発明の一実施形態において、工程a)の水性調製物は水性懸濁液である。
【0045】
本発明の意味における用語「水溶液」は、離散固体粒子が溶媒中にまったく認められない系、すなわち、万一少なくとも1種の有機材料のようなさらなる材料が存在する場合、水とともの溶液が形成され、ここで、さらなる材料の可能な粒子は溶媒に溶解される系を指す。
【0046】
本発明の意味における用語「水性懸濁液」は、溶媒ならびに少なくとも1種の無機粒子状材料および/または少なくとも1種の有機材料を含む系であって、少なくとも1種の無機粒子状材料および/または少なくとも1種の有機材料の粒子の少なくとも一部は、溶媒中に不溶性固体として存在する系を指す。
【0047】
工程a)で提供される水性調製物は、好ましくは少なくとも1種の無機粒子状材料を含む。
【0048】
本発明の意味における用語「少なくとも1種の」無機粒子状材料は、無機粒子状材料が、1種以上の無機粒子状材料を含む、好ましくはそれらからなることを意味する。
【0049】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の無機粒子状材料は、1種の無機粒子状材料を含む、好ましくはそれからなる。
【0050】
代わりに、少なくとも1種の無機粒子状材料は、2種以上の無機粒子状材料を含む、好ましくはそれらからなる。例えば、少なくとも1種の無機粒子状材料は、2種または3種の無機粒子状材料を含む、好ましくはそれらからなる。好ましくは、少なくとも1種の無機粒子状材料は、1種の無機粒子状材料を含む、好ましくはそれからなる。
【0051】
例えば、少なくとも1種の無機粒子状材料は、天然粉砕炭酸カルシウム、天然および/または合成沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、カオリン、タルカム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0052】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の無機粒子状材料は、天然粉砕炭酸カルシウムおよび/または合成沈降炭酸カルシウムを含む。
【0053】
本発明の意味における「粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、石灰石、大理石または白亜のような天然源から得られ、粉砕、篩分けならびに/または湿式および/もしくは乾式による、例えば、サイクロンもしくは分級器による分別のような処理によって処理された炭酸カルシウムである。
【0054】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に水性環境中での二酸化炭素と石灰石との反応後の沈降、または水中でのカルシウムおよび炭酸イオンの沈降によって得られた、合成された材料である。
【0055】
天然粉砕炭酸カルシウムおよび/または合成沈降炭酸カルシウムは、例えば、ステアリン酸のような脂肪酸および対応するカルシウム塩によって追加的に表面処理されてもよい。
【0056】
工程a)で提供される水性調製物が少なくとも1種の無機粒子状材料を含む場合、少なくとも1種の無機粒子状材料は、生成される生成物の種類に関わる材料(複数可)に従来用いられるとおりの粒径分布を有してもよい。一般に、粒子の90%は、5マイクロメートル(μm)未満のesd(Sedigraph5100シリーズ、Micromeriticsを使用して沈降の周知技術によって測定された場合の球相当径)を有する。粗無機粒子状材料は、一般に(すなわち、少なくとも90重量%で)1から5ミクロンの範囲の粒子esdを有してもよい。微細無機粒子状材料は、一般に2μm未満、例えば、50.0から99.0重量%で2μm未満、好ましくは60,0から90.0重量%で2μm未満の粒子esdを有してもよい。水性調製物中の少なくとも1種の無機粒子状材料は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100を使用して測定して0.1から5μm、好ましくは0.2から2μm、最も好ましくは0.35から1μm、例えば0.7μmの重量メジアン粒径d50値を有することが好ましい。
【0057】
このような無機粒子状材料を水性調製物中に分散させたまま保ち、したがって、調製物の粘度が時間とともに実質的に同じままであることを確保するために、分散剤のような添加剤が使用され得る。本発明による好適な分散剤は、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イソクロトン酸、アコニット酸(シスまたはトランス)、メサコン酸、シナピン酸、ウンデシレン酸、アンゲリカ酸、カネル酸(canellic acid)、ヒドロキシアクリル酸、アクロレイン、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピロリドン、スチレン、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーおよび/またはコモノマーから作られているホモまたはコポリマーであり、ここで、ポリ(アクリル酸)またはポリ(メタクリル酸)の塩が、分散剤として好ましい。
【0058】
追加的または代わりに、工程a)の水性調製物は、少なくとも1種の有機粒子状材料を含む。例えば、少なくとも1種の有機材料は、グリコール類、CMCまたはデンプンのような炭水化物、セルロースおよびセルロース系パルプ、グリセロールならびにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0059】
本発明の一実施形態において、工程a)の水性調製物は、少なくとも1種の無機粒子状材料を含み、好ましくは天然粉砕炭酸カルシウム、天然および/または合成沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、カオリン、タルカム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタンならびにこれらの混合物を含む群から選択され、最も好ましくは天然粉砕炭酸カルシウムおよび/または合成沈降炭酸カルシウムを含む。
【0060】
したがって、工程a)の水性調製物は、好ましくは水性懸濁液である。
【0061】
工程a)で提供される水性調製物の固体含量は、85.0重量%までであり得ることが認識される。例えば、水性調製物の固体含量は、水性調製物の総重量に基づいて、10.0から82.0重量%、より好ましくは20.0から80.0重量%である。
【0062】
本出願の意味における総固体含量は、少なくとも3から5gの試料で測定して105℃で3時間乾燥後の水性調製物の残存重量に対応する。
【0063】
工程a)で提供される水性調製物のpHは、広い範囲で変わることができ、好ましくはこのような水性調製物について典型的に観察されるpH範囲である。したがって、工程a)の水性調製物は、好ましくは2から12のpH値を有することが認識される。例えば、工程a)の水性調製物は、6から12、より好ましくは7から10.5のpH値を有する。
【0064】
典型的には、工程a)で提供される水性調製物は、100rpmの速度で、LV−3スピンドルを備えたBrookfield DV−II粘度計によって測定して好ましくは50から2000mPa・s、好ましくは80から800mPa・sの範囲である粘度を有する。
【0065】
本発明による水性調製物は、当技術分野で公知の方法によって、例えば、水不溶性固体、好ましくは無機粒子状材料を、適切な場合、分散剤、適当な場合、さらに水中に添加剤を添加して、分散させ、懸濁させ、またはスラリー化することによって生成され得る。
【0066】
工程b)の特徴付け:少なくとも1種の殺生物剤の提供
本発明の方法の工程b)によれば、少なくとも1種の殺生物剤が提供される。
【0067】
本発明の意味においる用語「少なくとも1種の」殺生物剤は、殺生物剤が1種以上の殺生物剤を含む、好ましくはそれらからなることを意味する。
【0068】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の殺生物剤は、1種の殺生物剤を含む、好ましくはそれからなる。代わりに、少なくとも1種の殺生物剤は、2種以上の殺生物剤を含む、好ましくはそれらからなる。例えば、少なくとも1種の殺生物剤は、2または3種の殺生物剤を含む、好ましくはそれらからなる。好ましくは、少なくとも1種の殺生物剤は、2種以上の殺生物剤を含む、好ましくはそれらからなる。
【0069】
本発明に適した殺生物剤は、MIC減少性化合物、すなわち、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の非存在下での殺生物剤の最小発育阻止濃度で水性調製物中の細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である任意の殺生物剤であってもよい。
【0070】
本発明による好ましい殺生物剤には、フェノール類、ハロゲン化フェノール類、ハロゲン含有化合物、ハロゲン放出性化合物、イソチアゾリノン類、アルデヒド含有化合物、アルデヒド放出性化合物、グアニジン類、スルホン類、チオシアネート類、ピリチオン類、β−ラクタム抗生物質のような抗生物質、第四級アンモニウム塩、過酸化物、過塩素酸塩、アミド類、アミン類、重金属、殺生物性酵素、殺生物性ポリペプチド、アゾール類、カルバメート類、グリホセート類、スルホンアミド類およびこれらの混合物を含む群から選択される殺生物剤が含まれる。
【0071】
本発明のフェノール殺生物剤は、好ましくはそのナトリウム塩(CAS番号132−27−4)またはカリウム塩(CAS番号13707−65−8)のようなアルカリ金属塩の形態の2−フェニルフェノール(OPP)(CAS番号90−43−7)および/または2−フェニルフェノール(OPP)である。
【0072】
例えば、MIC減少性化合物の非存在下でのこのようなフェノール殺生物剤の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり1500から6000ppm(w/w)の活性殺生物剤である。
【0073】
本発明のハロゲン化フェノール殺生物剤は、好ましくは4−クロロ−3−メチルフェノール(CAS番号59−50−7)および/または4−クロロ−2−メチルフェノール(CA番号1570−64−5)である。
【0074】
例えば、MIC減少性化合物の非存在下でのこのようなハロゲン化フェノール殺生物剤の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり3900から25000ppm(w/w)の活性殺生物剤である。
【0075】
ハロゲン含有またはハロゲン放出性化合物である殺生物剤は、好ましくはブロノポール(CAS番号52−51−7)、ブロニドックス(CAS番号30007−47−7)、2,2−ジブロモ−3−ニトリルプロピオンアミド(DBNPA)(CAS番号10222−01−2)、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン(CAS番号35691−65−7)、モノクロロアミン(CAS番号10599−90−3)、臭化アンモニウム(CAS番号12124−97−9)、次亜塩素酸カルシウム(CAS番号7778−54−3)、ヨウ素(CAS番号7553−56−2)、三ヨウ素(CAS番号14900−04−0)、ヨウ素酸カリウム(CAS番号7758−05−6)およびこれらの混合物から選択される。
【0076】
本発明によれば、「ハロゲン含有殺生物剤」は、1個以上のハロゲン基を有する殺生物剤を指す。本発明によれば、「ハロゲン放出性殺生物剤」は、ハロゲン基を放出しまたは移動させることができる化合物を指す。
【0077】
例えば、MIC減少性化合物の非存在下でのこのようなハロゲン含有またはハロゲン放出性化合物(例えば、ブロノポール)の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり300から1500ppm(w/w)の活性殺生物剤である。
【0078】
イソチアゾリノン殺生物剤は、好ましくはイソチアゾリオン(IT)(CAS番号1003−07−2)、ベンズイソチアゾリノン(BIT)(CAS番号2634−33−5)、5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)(CAS番号26172−55−4)、2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン(MIT)(CAS番号2682−20−4)、オクチルイソチアゾリノン(OIT)(CAS番号26530−20−1)、ジクロロオクチルイソチアゾリノン(DOIT)(CAS番号64359−81−5)およびこれらの混合物を含む群から選択される。例えば、イソチアゾリノン殺生物剤CMIT/MIT(CAS番号55965−84−9)は、5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)と2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン(MIT)との3:1の重量比での混合物である。
【0079】
例えば、MIC減少性化合物の非存在下でのこのようなイソチアゾリノン殺生物剤の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり25から1500ppm(w/w)の活性殺生物剤である。例えば、MIC減少性化合物の非存在下でのベンズイソチアゾリノン(BIT)の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり240から1500ppm(w/w)の活性殺生物剤である。例えば、MIC減少性化合物の非存在下での2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン(MIT)の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり75から450ppm(w/w)の活性殺生物剤である。5−クロロ2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)と2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン(MIT)との混合物(重量比3:1)が殺生物剤として使用される場合、MIC減少性化合物の非存在下での前記混合物の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり27から99ppm(w/w)の活性殺生物剤である。
【0080】
アルデヒド含有化合物は、好ましくはホルムアルデヒド(CAS番号50−00−0)、アセトアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド(CAS番号111−30−8)、2−プロペナール、フタル酸ジアルデヒドおよびこれらの混合物を含む群から選択され、好ましくはホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドまたはこれらの混合物である。
【0081】
本発明によれば、「アルデヒド含有殺生物剤」は、1個以上のアルデヒド基を有する殺生物剤を指す。
【0082】
例えば、MIC減少性化合物の非存在下でのこのようなアルデヒド含有化合物の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり300から3000ppm(w/w)の活性殺生物剤である。例えば、MIC減少性化合物の非存在下でのグルタルアルデヒドの商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり300から3000ppm(w/w)の活性殺生物剤である。
【0083】
アルデヒド放出性殺生物剤は、好ましくはホルムアルデヒド放出性殺生物剤、アセトアルデヒド放出性殺生物剤、スクシンアルデヒド放出性殺生物剤、2−プロペナール放出性殺生物剤およびこれらの混合物を含む群、好ましくはホルムアルデヒド放出性殺生物剤から選択される。ホルムアルデヒド放出性殺生物剤は、好ましくはベンジルアルコールモノ(ポリ)ヘミホルマール(CAS番号14548−60−8)、テトラメチロールアセチレン二尿素(CAS番号5395−50−6)、チアジアジンチオン−テトラヒドロジメチル(DAZOMET)(CAS番号533−74−4)、(エチレンジオキシ)ジメタノール(EDDM)(CAS番号3586−55−8)、2−クロロ−N−(ヒドロキシメチル)アセトアミド(CAS番号2832−19−1)、ジメチルオキサゾリジン(DMO)(CAS番号51200−87−4)、ヘキサメチレンテトラミン(CAS番号100−97−0)、ビス[テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム]スルフェート(THPS)(CAS番号55566−30−8)、1−(シス−3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンクロリド(CAS番号51229−78−8)、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(ヒドロキシエチル)−s−トリアジン(CAS番号4719−04−4)およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0084】
本発明によれば、「アルデヒド放出性殺生物剤」は、モノ−、ジ−、および/またはトリ−アルデヒドを放出することができる化合物を指す。
【0085】
例えば、MIC減少性化合物の非存在下でのこのようなアルデヒド放出性化合物の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり375から750ppm(w/w)の活性殺生物剤(例えば、DAZOMETについて)である。
【0086】
グアニジン殺生物剤は、好ましくはグアニジンドデシルモノクロリド(CAS番号1350−97−1)および/またはポリエトキシエトキシエチルグアニジニウムヘキサクロリド(CAS番号374572−91−5)から選択される。スルホン殺生物剤は、好ましくはヘキサクロロジメチルスルホン(CAS番号3064−70−8)および/または4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(CAS番号80−08−0)である。チオシアネート殺生物剤は、好ましくはメチレンビス(チオシアネート)(CAS番号6317−18−6)および/または(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)メチルチオシアネート(CAS番号21564−17−0)である。抗生物質である殺生物剤は、好ましくはペニシリンG(CAS番号69−57−8)および/またはアンピシリン(CAS番号69−53−4)および/またはビアペネム(CAS番号120410−24−4)および/またはセフィキシム(CAS番号79350−37−1)のようなβ−ラクタム抗生物質から選択される。アミド殺生物剤は、好ましくは2,2−ジブロモ−3−ニトロプロピオンアミド(DBNPA)(CAS番号10222−01−2)である。アゾール殺生物剤は、好ましくは、硝酸ミコナゾール(CAS番号22832−87−7)のような塩の形態の殺生物剤を含めて、クリムバゾール(CAS番号38083−17−9)、ミコナゾール(CAS番号22916−47−8)、クロトリマゾール(CAS番号23593−75−1)およびこれらの混合物から選択され得る。カルバメート殺生物剤は、好ましくはヨードプロピニルブチルカルバメート(CAS番号55406−53−6)、アルジカルブ(CAS番号116−06−3)、カルボフラン(CAS番号1563−66−2)およびこれらの混合物から選択される。グリホセート殺生物剤は、好ましくは、アンモニウム塩またはイソプロピルアンモニウム塩(CAS番号40465−66−5およびCAS番号38641−94−0)のような塩の形態のN−(ホスホノメチル)グリシン(CAS番号1071−83−6)および/またはN−(ホスホノメチル)グリシンから選択される。
【0087】
ピリチオン殺生物剤は、好ましくはナトリウムピリチオン(CAS番号3811−73−2)および/または亜鉛ピリチオン(CAS番号13463−41−7)である。
【0088】
例えば、MIC減少性化合物の非存在下でのこのようなピリチオン殺生物剤の商業的供給業者による投与量推奨は、典型的には75重量%固体含量の炭酸カルシウムを有する水性調製物当たり600から1500ppm(w/w)の活性殺生物剤である。
【0089】
少なくとも1種の殺生物剤は、さらに好ましくは第四級アンモニウム塩、過酸化物、過塩素酸塩、トリブチル錫、重金属、殺生物性酵素、殺生物性ポリペプチド、スルホンアミドおよびこれらの混合物から選択され得る。
【0090】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の殺生物剤は、未希釈、すなわち、濃縮形態である。本発明の別の実施形態において、少なくとも1種の殺生物剤は、工程d)で水性調製物と接触させる前に適当な濃度に希釈される。希釈形態において、少なくとも1種の殺生物剤は、好ましくは水に溶解されており、ここで、対応する希釈組成物は、好ましくは組成物の総重量に基づいて、99.0重量%までの少なくとも1種の殺生物剤を含む。より好ましくは、水中での組成物は、組成物の総重量に基づいて、1.0から95.0重量%の少なくとも1種の殺生物剤、最も好ましくは1.0から85.0重量%の少なくとも1種の殺生物剤を含み、それによって組成物は、適当な安定剤をさらに含んでもよい。
【0091】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の殺生物剤は、アルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に耐性であり、耐容性であり、および/またはそれらを分解する細菌の菌株が水性調製物中に存在する場合、調製物中の水の重量に対して計算して、250.0から5000.0ppmの量のアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤を含まない。好ましくは、少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中のアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に耐性であり、耐容性であり、および/またはこれらを分解する細菌の菌株に対して、細菌のこのような菌株が水性調製物中に存在する場合、有効であるのに十分な量でアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系を含まない。したがって、また、本方法の工程d)および/または工程c)後に得られる水性調製物も、好ましくは、アルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に対して耐性であり、耐容性であり、および/またはこれらを分解する細菌の菌株が水性調製物中に存在する場合、調製物中の水の重量に対して計算して、250.0から5000.0ppmの量のアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤を含まない。より好ましくは、本方法の工程d)および/または工程e)後に得られる水性調製物は、水性調製物中でアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に対して耐性であり、耐容性であり、および/またはそれらを分解する細菌の菌株に対して、細菌のこのような菌株が水性調製物中に存在する場合、アルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤を有効であるのに十分な量で含まない。
【0092】
工程c)の特徴付け:少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の提供
本発明の方法の工程c)によれば、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が提供される。
【0093】
本発明の意味における用語「少なくとも1種の」水溶性リチウムイオン源は、水溶性リチウムイオン源が、1種以上の水溶性リチウムイオン源を含む、好ましくはそれらからなることを意味する。
【0094】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の水溶性リチウムイオンの源は、1種の水溶性リチウムイオン源を含む、好ましくはそれからなる。代わりに、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、2種以上の水溶性リチウムイオン源を含む、好ましくはそれからなる。例えば、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、2または3種の水溶性リチウムイオン源を含む、好ましくはそれらからなる。好ましくは、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、2種以上の水溶性リチウムイオン源を含む、好ましくはそれらからなる。
【0095】
本方法の工程c)で提供される少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、水に可溶性である任意のリチウムイオンを含む化合物であり得ることが認識される。
【0096】
したがって、本発明の意味における用語「水溶性」または「水に可溶性」リチウムイオン源は、リチウムイオン源の少なくとも一部が水と溶液を形成する、すなわち、少なくとも1種のリチウムイオン源の粒子の少なくとも一部が溶媒に溶解されている系を指す。特に、少なくとも1種のリチウムイオン源は、工程c)で提供される少なくとも1種のリチウムイオン源の少なくとも一部が水性調製物の水相に溶解されているリチウムイオンを形成する場合、「水溶性」であると見なされる。
【0097】
本発明の意味における少なくとも1種の水溶性「リチウムイオン源」という用語は、リチウムイオン、すなわち、リチウムカチオンを含む化合物を指す。
【0098】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、好ましくは少なくとも1種のリチウム塩の形態で提供される。好ましくは、少なくとも1種のリチウム塩のアニオン性基は、炭酸イオン、塩化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、マレイン酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオンおよびこれらの混合物を含む群から選択される。特に、少なくとも1種のリチウム塩は、炭酸リチウム、塩化リチウム、水酸化リチウム、リン酸リチウム、クエン酸リチウム、マレイン酸リチウム、酢酸リチウムおよび乳酸リチウムから選択され、本発明のMIC減少性化合物としてとりわけ好ましい。
【0099】
例えば、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、好ましくは炭酸リチウム(CAS番号554−13−2)、クエン酸リチウム(CAS番号919−16−4)または水酸化リチウム(CAS番号1310−65−2)である。
【0100】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、フッ化リチウムを含まない。したがって、また本方法の工程d)および/または工程e)後に得られる水性調製物は、好ましくは、フッ化リチウム、すなわち、フッ化物イオンを含まない。
【0101】
上述の実施形態は、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を介して水性調製物に添加されるフッ化物イオンの量を反映し、水性調製物中に天然に存在し得るいずれかの溶解フッ化物イオンに及ばないことが留意されるべきである。しかしながら、例えば、炭酸カルシウムスラリー中の溶解された天然に存在するフッ化物イオンの量は通常は無視できるほどであり、スラリーの顔料含量に基づいて、0.5ppmよりはるかに低い。
【0102】
追加的または代わりに、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、リチウムイオンで部分的または全体的に中和され得る複数の酸性部位を有するアクリルホモポリマー、アクリル酸とマレイン酸および/またはアクリルアミドとのコポリマーのようなアクリルコポリマー、ポリリン酸塩ならびにこれらの混合物のような、リチウムのポリマー塩を介して水性調製物に導入され得る。リチウムのポリマー塩は、好ましくはポリリン酸LiNa、ヘキサメタリン酸リチウム−ナトリウムまたはポリアクリル酸リチウムから選択される。
【0103】
本発明の工程c)で提供されてもよいリチウムのポリマー塩は、リチウムのイオンを含有する中和剤ならびに任意選択により、他のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を使用して、好ましくは5.0から100.0%程度に、好ましくは25.0から100.0%程度に、最も好ましくは75.0から100.0%程度に、好ましくは部分的または完全に中和される。一実施形態において、リチウムのポリマー塩の酸性部位は、リチウムだけを含有する中和剤を使用して中和される。せいぜい50000の平均分子量、好ましくは1000から25000の範囲、より好ましくは3000から12000の範囲の平均分子量を有する中和されたポリアクリル酸塩および/またはポリメタクリル酸塩がとりわけ好適である。
【0104】
一般に、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、水溶液、水性分散液または乾燥材料の形態で提供され得る。少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が水溶液の形態で提供される場合、水溶液は、水溶液の総重量に基づいて、1.0から45.0重量%、好ましくは5.0から25.0重量%の量で、少なくとも1種のリチウム源を含む。
【0105】
少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が水性分散液の形態で提供される場合、水性分散液は、水性分散液の総重量に基づいて、1.0から60.0重量%、好ましくは5.0から50.0重量%、より好ましくは15.0から45.0重量%の量で、少なくとも1種の水溶性リチウム源を含む。
【0106】
好ましくは、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、水溶液の形態で提供される。
【0107】
工程d)の特徴付け:水性調製物と少なくとも1種の殺生物剤との接触
本発明の方法の工程d)によれば、工程a)の水性調製物は、工程b)の少なくとも1種の殺生物剤と接触させる。工程b)の少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中に存在する場合に細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効であることが本発明の一つの要件である。
【0108】
したがって、少なくとも1種の殺生物剤は、少なくとも1種の殺生物剤が存在する場合に、水性調製物中の細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効であることが認識される。これは、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株の発育または蓄積を防止するまたは処理された水性調製物中のcfu値(コロニー形成単位)の減少をもたらすの、いずれかである。
【0109】
本発明の一実施形態において、細菌の少なくとも1種の菌株は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0110】
グラム陽性およびグラム陰性細菌は、当技術分野で周知であり、例えば、Biology of Microorganisms、「Brock」、Madigan MT、Martinko JM、Parker J、1997年、第8版に記載されている。特に、このような細菌は、それぞれが多数の細菌ファミリーを含む、進化的な非常に遠縁なクラスの細菌に相当する。グラム陰性細菌は、2枚の膜(外膜および内膜)を特徴とするが、グラム陽性細菌は、唯一つの膜を有する。通常、前者は、高量のリポ多糖およびペプチドグリカンの薄い単層を有するが、後者は、事実上リポ多糖を有さず、多層の厚いペプチドグリカンを有し、コートはテイコ酸を含有する。これらの違いのために、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌とは環境の影響に対して異なって反応する。グラム陽性細菌とグラム陰性細菌とを区別するための方法には、DNA配列決定法または生化学的特徴付けによる種同定が含まれる。代わりに、膜の数は、薄片透過型電子顕微鏡によって直接決定され得る。
【0111】
本発明の意味における用語「細菌の少なくとも1種の菌株」は、細菌の菌株が、細菌の1種以上の菌株を含む、好ましくはそれらからなることを意味する。
【0112】
本発明の一実施形態において、細菌の少なくとも1種の菌株は、細菌の1種の菌株を含む、好ましくはそれからなる。代わりに、細菌の少なくとも1種の菌株は、細菌の2種以上の菌株を含む、好ましくはそれらからなる。例えば、細菌の少なくとも1種の菌株は、細菌の2または3種の菌株を含む、好ましくはそれらからなる。好ましくは、細菌の少なくとも1種の菌株は、細菌の2種以上の菌株を含む、好ましくはそれらからなる。
【0113】
例えば、細菌の少なくとも1種の菌株は、メチロバクテリウム属種(Methylobacterium sp.)、サルモネラ属種(Salmonella sp.)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)のようなエシェリキア属種(Escherichia sp.)、シゲラ属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)のようなシュードモナス属種(Pseudomonas sp.)、ブデロビブリオ属種(Bdellovibrio sp.)、アグロバクテリウム属種(Agrobacterium sp.)、アルカリゲネス属種(Alcaligenes sp.)、フラボバクテリウム属種(Flavobacterium sp.)、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)、スフィンゴバクテリウム属種(Sphigobacterium sp.)、アエロモナス属種(Aeromonas sp.)、クロモバクテリウム属種(Chromobacterium sp.)、ビブリオ属種(Vibrio sp.)、ヒホミクロビウム属種(Hyphomicrobium sp.)、レプトトリックス属種(Leptothrix sp.)、マイクロコッカス属種(Micrococcus sp.)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のようなスタフィロコッカス属種(Staphylococcus sp.)、アグロマイセス属種(Agromyces sp.)、アシドボラックス属種(Acidovorax sp.)およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0114】
例えば、細菌の少なくとも1種の菌株は、エシェリキア・コリのようなエシェリキア属種、スタフィロコッカス・アウレウスのようなスタフィロコッカス属種およびこれらの混合物から選択される。
【0115】
追加的または代わりに、酵母の少なくとも1種の菌株は、サッカロミケス亜門(Saccharomycotina)、タフリナ菌亜門(Taphrinomycotia)、シゾサッカロミケス綱(Schizosaccharomycetes)、担子菌門(Basidiomycota)、ハラタケ亜門(Agaricomycotina)、シロキクラゲ綱(Tremellomycetes)、プクシニア菌亜門(Pucciniomycotina)、ミクロボトリウム菌綱(Microbotryomycetes)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・ギリエルモンジィ(Candida guilliermondii)、カンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniaea)およびこれらの混合物のようなカンジダ属種(Candida sp.)、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)のようなヤロウィア属種(Yarrowia sp.)、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)およびクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neofarmans)のようなクリプトコッカス属種、ジゴサッカロマイセス属種(Zygosaccharomyces sp.)、ロドトルラ・ムシラギノサ(Rhodotorula mucilaginosa)のようなロドトルラ属種(Rhodotorula sp.)、およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0116】
本発明の意味における用語「酵母の少なくとも1種の菌株」は、酵母の菌株が、酵母の1種以上の菌株を含む、好ましくはそれらからなることを意味する。
【0117】
本発明の一実施形態において、酵母の少なくとも1種の菌株は、酵母の1種の菌株を含む、好ましくはそれからなる。代わりに、酵母の少なくとも1種の菌株は、酵母の2種以上の菌株を含む、好ましくはそれからなる。例えば、酵母の少なくとも1種の菌株は、酵母の2または3種の菌株を含む、好ましくはそれからなる。好ましくは、酵母の少なくとも1種の菌株は、酵母の2種以上の菌株を含む、好ましくはそれらからなる。
【0118】
追加的または代わりに、カビの少なくとも1種の菌株は、アクレモニウム属種(Acremonium sp.)、アルテルナリア属種(Alternaria sp.)、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)、クラドスポリウム属種(Cladosporium sp.)、フザリウム属種(Fusarium sp.)、ムコール属種(Mucor sp.)、ペニシリウム属種(Penicillium sp)、リゾプス属種(Rhizopus sp.)、スタキボトリス属種(Stachybotrys sp.)、トリコデルマ属種(Trichoderma sp.)、デマチアセ属種(Dematiaceae sp.)、フォーマ属種(Phoma sp.)、ユーロチウム属種(Eurotium sp.)、スコプラリオプシス属種(Scopulariopsis sp.)、アウレオバシジウム属種(Aureobasidium sp.)、モニリア属種(Monilia sp.)、ボトリチス属種(Botrytis sp.)、ステムフィリウム属種(Stemphylium sp.)、カエトミウム属種(Chaetomium sp.)、ミセリア属種(Mycelia sp.)、ニューロスポラ属種(Neurospora sp.)、ウロクラジウム属種(Ulocladium sp.)、パエシロマイセス属種(Paecilomyces sp.)、ワレミア属種(Wallemia sp.)、クルブラリア属種(Curvularia sp.)およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0119】
本発明の意味における用語「カビの少なくとも1種の菌株」は、カビの菌株が、カビの1種以上の菌株を含む、好ましくはそれからなることを意味する。
【0120】
本発明の一実施形態において、カビの少なくとも1種の菌株は、カビの1種の菌株を含む、好ましくはそれからなる。代わりに、カビの少なくとも1種の菌株は、カビの2種以上の菌株を含む、好ましくはそれからなる。例えば、カビの少なくとも1種の菌株は、カビの2または3種の菌株を含む、好ましくはそれらからなる。好ましくは、カビの少なくとも1種の菌株は、カビの2種以上の菌株を含む、好ましくはそれらからなる。
【0121】
少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中に存在する場合に細菌の少なくとも1種の菌株および酵母の少なくとも1種の菌株およびカビの少なくとも1種の菌株に対して有効であることが好ましい。
【0122】
代わりに、少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中に存在する場合に細菌の少なくとも1種の菌株または酵母の少なくとも1種の菌株またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である。
【0123】
代わりに、少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中に存在する場合に細菌の少なくとも1種の菌株および酵母の少なくとも1種の菌株、もしくはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効であるまたは少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中に存在する場合に細菌の少なくとも1種の菌株もしくは酵母の少なくとも1種の菌株、およびカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である。
【0124】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の殺生物剤は、アルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に対して耐性であり、耐容性であり、および/またはそれらを分解する細菌の菌株が水性調製物中に存在する場合、調製物中の水の重量に対して計算して、250.0から5000.0ppmの量のアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤を含まない。好ましくは、少なくとも1種の殺生物剤は、水性調製物中でアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に対して耐性であり、耐容性であり、および/またはそれらを分解する細菌の菌株に対して、このような細菌の菌株が水性調製物中に存在する場合、有効であるのに十分な量のアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系を含まない。
【0125】
本発明の意味において、「に対して耐性」である細菌の菌株は、水性調製物中のアルデヒド放出性殺生物剤および/またはアルデヒド系殺生物剤の総量が、調製物中の水の量に対して計算して、250.0ppmから5000.0ppmであるような量で投与される場合、アルデヒド放出性殺生物剤および/またはアルデヒド系殺生物剤の効果に耐える能力を有する細菌を指す。本発明の意味において、「に対して耐容性」である細菌の菌株は、無作為の突然変異を発生することなくアルデヒド放出性殺生物剤および/またはアルデヒド系殺生物剤の存在下で生存する能力を有する細菌を指す。本発明の意味における前記アルデヒド放出性殺生物剤および/またはアルデヒド系殺生物剤を「分解する」細菌の菌株は、例えば、それらの経路における中間体としてこれらの基質を用いることによって、前記殺生物剤を不活性形態および/またはより小さい分子に変換する能力を有する細菌に対応する。
【0126】
一般に、工程a)の水性調製物および工程b)の少なくとも1種の殺生物剤は、当業者に公知の任意の従来の手段によって接触させることができる。
【0127】
接触工程d)は、好ましくは工程b)の少なくとも1種の殺生物剤を工程a)の水性調製物に添加することによって実施されることが認識される。
【0128】
本発明の一実施形態において、工程a)の水性調製物を工程b)の少なくとも1種の殺生物剤と接触させる工程は、少なくとも1種の殺生物剤が、混合下で水性調製物に添加されるという点において実施される。十分な混合は、水性調製物の振とうまたは攪拌によって達成されてもよく、これらはより徹底した混合を与え得る。本発明の一実施形態において、接触工程d)は、水性調製物と少なくとも1種の殺生物剤との徹底した混合を確保するために攪拌下で実施される。このような攪拌は、連続的または不連続的に実施することができる。
【0129】
本発明によれば、水性調製物は、少なくとも1種の殺生物剤が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、0.4から6500.0ppmの量で水性調製物の水相中に存在するように、少なくとも1種の殺生物剤と接触させる。
【0130】
例えば、接触工程d)は、少なくとも1種の殺生物剤が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、0.5ppmから6000.0ppmの量で水性調製物中に添加されるという点において実施される。
【0131】
追加的または代わりに、接触工程d)は、少なくとも1種の殺生物剤が、MIC減少性化合物、すなわち、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の非存在で、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)よりも少なくとも9%低い量で水性調製物に添加されるという点において実施される。
【0132】
例えば、接触工程d)は、少なくとも1種の殺生物剤が、MIC減少性化合物、すなわち、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の非存在で、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)よりも少なくとも33%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%低い量で水性調製物に添加されるという点において実施される。
【0133】
本発明の一実施形態において、水性調製物は、少なくとも1種の殺生物剤が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、0.4ppmから6500.0ppm、好ましくは0.5ppmから6000.0ppmの量で水性調製物の水相に存在するように、および少なくとも1種の殺生物剤が、MIC減少性化合物、すなわち、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の非存在で、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)よりも少なくとも9%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%低い量で水性調製物に添加されるように、少なくとも1種の殺生物剤と接触させる。
【0134】
接触工程d)は、1回以上繰り返しされ得ることが認識される。
【0135】
工程d)で得られる水性調製物は、好ましくは、工程a)で提供される水性調製物の固体含量に対応する固体含量を有する。したがって、工程d)で得られる水性調製物は、85.0重量%までの固体含量を有することが認識される。例えば、工程d)で得られる水性調製物の固体含量は、工程d)で得られる水性調製物の総重量に基づいて、10.0から82.0重量%、より好ましくは20.0から80.0重量%である。
【0136】
追加的または代わりに、工程d)で得られる水性調製物のpHは、好ましくは工程a)で提供される水性調製物のpHに対応する。したがって、工程d)で得られる水性調製物は、好ましくは、2から12のpH値を有することが認識される。例えば、工程d)で得られる水性調製物は、6から12、より好ましくは7から10.5のpH値を有する。
【0137】
典型的には、工程d)で得られる水性調製物は、100rpmの速度で、LV−3スピンドルを備えたBrookfield DV−II粘度計によって測定して好ましくは50から2000mPa・s、および好ましくは80から800mPa・sの範囲である粘度を有する。
【0138】
工程e)の特徴付け:水性調製物と少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源との接触
本発明の方法の工程e)によれば、工程a)の水性調製物は、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源と、工程d)の前および/または間および/または後に接触させる。
【0139】
工程a)の水性調製物および工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、当業者に公知の任意の従来の手段によって接触させ得る。
【0140】
接触工程e)は、好ましくは、工程b)の少なくとも1種の殺生物剤を工程a)の水性調製物に添加する前および/または間および/または後に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を工程a)の水性調製物に添加することによって実施される。
【0141】
例えば、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、好ましくは混合によって水性調製物中に添加される。十分な混合は、振とうまたは攪拌によって達成されてもよく、これらはより徹底した混合を与え得る。本発明の一実施形態において、接触工程e)は、水性調製物と少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源との徹底した混合を確保するために攪拌下で実施される。このような攪拌は、連続的または不連続的に行われ得る。
【0142】
本発明の一実施形態において、工程a)の水性調製物を工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源と接触させる工程は、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前および間および後に、水性調製物に添加されるという点において実施される。
【0143】
代わりに、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前および後に工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。代わりに、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前および間に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。代わりに、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する間および後に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。
【0144】
工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前および間および後に、または前および間に、または間および後に、または前および後に、水性調製物に添加される場合、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、好ましくは水性調製物を工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源と接触させるのに必要な期間にわたって数回に分けておよび/または連続的に添加される。
【0145】
工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が数回に分けて添加される場合、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、水性調製物にほぼ同等に分けてまたは同等でなく分けて添加され得る。
【0146】
本発明の一実施形態において、接触工程e)は、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前または間または後に、工程(a)の水性調製物に添加されるという点において実施される。
【0147】
例えば、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前または間に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。代わりに、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前または後に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。代わりに、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する間または後に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。
【0148】
本発明の一実施形態において、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。代わりに、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する間に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。代わりに、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する後に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。
【0149】
例えば、接触工程e)は、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前に、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源を水性調製物に添加することによって実施される。したがって、接触工程e)は、接触工程d)の前に実施されることが好ましい。
【0150】
代わりに、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、仕上げ混合物として工程b)の少なくとも1種の殺生物剤と組み合わせて水性調製物に添加される。したがって、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、好ましくは接触工程d)が実施される間に水性調製物に添加される。
【0151】
この実施形態において、本方法の接触工程e)は、好ましくは工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源および工程b)の少なくとも1種の殺生物剤を含む仕上げ混合物を工程a)の水性調製物に添加することによって実施される。
【0152】
工程b)の少なくとも1種の殺生物剤および工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が混合物の形態で提供される場合、混合物は、任意の適切な形態、例えば、乾燥材料の形態または水溶液の形態で存在し得る。
【0153】
工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が、少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前または間または後に水性調製物に添加される場合、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、好ましくは少なくとも1種の殺生物剤を水性調製物に添加する前または間または後に1回でおよび/または連続的に添加される。
【0154】
したがって、少なくとも1種の殺生物剤および少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、別個に(最初に少なくとも1種の殺生物剤、次いで、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源、または逆もまた同様)または同時に(例えば、水性混合物として)水性調製物に添加され得る。さらに、少なくとも1種の殺生物剤および/または少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は水性調製物に、1回または数回、例えば、特定の時間間隔で添加され得る。好ましくは、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は1回、および少なくとも1種の殺生物剤は1回または数回、例えば、特定の時間間隔で、水性調製物に添加される。
【0155】
接触工程e)は、1回以上繰り返され得ることが認識される。
【0156】
本発明の要件の一つは、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源が、リチウムイオンの総量が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、15.0から800.0mMol/Lであるように水性調製物の水相に存在することである。例えば、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、リチウムイオンの総量が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、15.0から700.0mMol/Lであるように水性調製物の水相に存在する。本発明の一実施形態において、工程c)の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、リチウムイオンの総量が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、15.0から600.0mMol/Lであるように水性調製物の水相に存在する。
【0157】
上述の数字は、MIC減少性化合物として少なくも1種の水溶性リチウムイオン源を介して水性調製物に添加されるリチウムイオンの量を反映し、水性調製物に天然に存在し得る任意の溶解リチウムイオンに及ばないことが留意されるべきである。しかしながら、例えば、炭酸カルシウムスラリー中の溶解された天然に存在するリチウムイオンの量は、通常は無視できるほどであり、スラリーの顔料含量に基づいて、50.0ppmよりはるかに低い。
【0158】
水性調製物に添加される少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の量は、水性調製物中に添加される少なくとも1種の殺生物剤に依存して個別に調整され得る。特に、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の量は、水性調製物中で使用される少なくとも1種の殺生物剤の性質および出現に依存する。規定範囲内で用いられる最適量は、予備試験および実験室規模での試験シリーズならびに補足的運用試験によって決定され得る。
【0159】
本発明によれば、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源のリチウムイオンは、MIC減少性化合物として作用し、したがって、本方法は、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるのに適する。
【0160】
特に、水性調製物は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(I)
MICwithoutLi/MICLi≧1.1 (I)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種のリチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすような量で少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源と接触させる。
【0161】
本発明の一実施形態において、接触工程e)は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(Ia)、好ましくは式(Ib)、最も好ましくは式(Ic)
MICwithoutLi/MICLi≧1.5 (Ia)
MICwithoutLi/MICLi≧2,0 (Ib)
MICwithoutLi/MICLi≧4.0 (Ic)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすように実施される。
【0162】
例えば、接触工程e)は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(II)、好ましくは式(IIa)、より好ましくは式(IIb)、最も好ましくは式(IIc)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦30.0 (II)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦25.0 (IIa)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦20.0 (IIb)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦10.0 (IIc)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすように実施される。
【0163】
本発明の一実施形態において、接触工程e)は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(III)、好ましくは式(IIIa)、より好ましくは式(IIIb)、最も好ましくは式(IIIc)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦30.0 (III)
1.5≦MICwithoutLi/MICLi≦25.0 (IIa)
2.0≦MICwithoutLi/MICLi≦20.0 (IIb)
4.0≦MICwithoutLi/MICLi≦10.0 (IIc)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすように実施される。
【0164】
本発明による少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の量は、それが、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるのに十分な、すなわち、十分高い、水性調製物中での少なくとも1種の殺生物剤との組み合わせであるように選択されることが理解されるべきである。言い換えれば、本発明の方法を使用することによって、殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)は、水性調製物中の少なくとも1種の殺生物剤の量が効率的な殺生物活性を与えるために、有意に減少され得るように減少される。
【0165】
したがって、本発明の水性調製物は、リチウムイオンを含むことが認識される。水性調製物は、好ましくは本発明の方法、すなわち、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株の殺生物剤に対する最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための方法によって得られ得る。
【0166】
少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源のリチウムイオンは、MIC減少性化合物と見なされる。したがって、水性調製物は、水相中のリチウムイオンの総量が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、15.0から800.0mMol/L、より好ましくは15.0から700.0mMol/L、最も好ましくは15.0から600.0mMol/Lであるようにリチウムイオンを含むことが必要とされる。
【0167】
追加的に、水性調製物は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である少なくとも1種の殺生物剤を含む。好ましくは、水性調製物は、少なくとも1種の殺生物剤を、水相中のその総量が、水性調製物中の水の重量に対して計算して、0.4から6500.0ppm、好ましくは0.5ppmから6000.0ppmであるように含む。
【0168】
少なくとも1種の殺生物剤、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株、ならびにこれらの好ましい実施形態の定義に関して、本発明の方法の技術的詳細を検討する場合に上で提供された記述について言及される。
【0169】
本発明の一実施形態において、本方法の水性調製物は、アルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に対して耐性であり、耐容性であり、および/またはそれらを分解する細菌の菌株が水性調製物中に存在する場合、調製物中の水の重量に対して計算して、250.0から5000.0ppmの量のアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤を含まない。好ましくは、本方法の水性調製物は、水性調製物中でアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤に対して耐性であり、耐容性であり、および/またはそれらを分解する細菌の菌株に対して、このような細菌の菌株が水性調製物中に存在する場合、有効であるのに十分な量のアルデヒド放出性および/またはアルデヒド系殺生物剤を含まない。
【0170】
上で既に述べられたとおり、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源のリチウムイオンは、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度の減少をもたらす。
【0171】
したがって、水性調製物は、リチウムイオンの非存在下で同じ殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)未満である量で少なくとも1種の殺生物剤を含む。
【0172】
したがって、本水性調製物は、MIC減少性化合物、すなわち、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の非存在下で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)よりも少なくとも9%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%低い量で少なくとも1種の殺生物剤を含むことが認識される。
【0173】
したがって、本水性調製物の特異的所見の一つは、それが、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(I)
MICwithoutLi/MICLi≧1.1 (I)
(式中、
MICwithoutLiは、水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種のリチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすような量で少なくとも1種の殺生物剤を含むことである。
【0174】
好ましくは、水性調製物は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(Ia)、好ましくは式(Ib)、最も好ましくは式(Ic)
MICwithoutLi/MICLi≧1.5 (Ia)
MICwithoutLi/MICLi≧2,0 (Ib)
MICwithoutLi/MICLi≧4.0 (Ic)
(式中、
MICwithoutLiは、水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすような量で少なくとも1種の殺生物剤を含む。
【0175】
例えば、水性調製物は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(II)、好ましくは式(IIa)、より好ましくは式(IIb)、最も好ましくは式(IIc)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦30.0 (II)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦25.0 (IIa)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦20.0 (IIb)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦10.0 (IIc)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすような量で少なくとも1種の殺生物剤を含む。
【0176】
本発明の一実施形態において、水性調製物は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(III)、好ましくは式(IIIa)、より好ましくは式(IIIb)、最も好ましくは式(IIIc)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦30.0 (III)
1.5≦MICwithoutLi/MICLi≦25.0 (IIa)
2.0≦MICwithoutLi/MICLi≦20.0 (IIb)
4.0≦MICwithoutLi/MICLi≦10.0 (IIc)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位での少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たすような量で少なくとも1種の殺生物剤を含む。
【0177】
水性調製物の液相は、水を含む、好ましくはそれからなる。本発明の一実施形態において、水性調製物は、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール類、ケトン、例えば、アセトンまたはアルデヒドのようなカルボニル基含有溶媒、酢酸イソプロピルのようなエステル類、ギ酸のようなカルボン酸類、ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類およびこれらの混合物を含む群から選択される有機溶媒を含む。水性調製物が有機溶媒を含む場合、水性調製物は、水性調製物の液相の総重量に基づいて、40.0重量%まで、好ましくは1.0から30.0重量%、最も好ましくは1.0から25.0重量%の量で有機溶媒を含む。例えば、水性調製物の液相は、水からなる。水性調製物の液相が水からなる場合、水は、水道水および/または脱イオン水のような任意の水であり得る。
【0178】
水性調製物は、好ましくは少なくとも1種の無機粒子状材料および/または少なくとも1種の有機材料を含む。
【0179】
少なくとも1種の無機粒子状材料、少なくとも1種の有機材料、およびこれらの好ましい実施形態の定義に関して、本発明の方法の技術的詳細を検討する場合に上で提供された記述について言及される。
【0180】
したがって、水性調製物は、好ましくは水性スラリーである。
【0181】
水性調製物は、好ましくは85.0重量%までの固体含量を有する。例えば、水性調製物の固体含量は、水性調製物の総重量に基づいて、10.0から82.0重量%、より好ましくは20.0から80.0重量%である。
【0182】
水性調製物は、好ましくは2から12のpH値を有する。例えば、水性調製物は、6から12、より好ましくは7から10.5のpH値を有する。
【0183】
典型的には、水性調製物は、好ましくは、100rpmの速度で、LV−3スピンドルを備えたBrookfield DV−II粘度計によって測定して、50から800mPa・s、好ましくは80から600mPa・sの間の範囲である粘度を有する。
【0184】
したがって、本発明の方法または水性調製物は、多数の改善された特性を有する。まず第一に、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源の形態での特定量のリチウムイオンの添加は、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対して有効である少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を、リチウムイオンの非存在下での同じ殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)と比較して、減少させる。したがって、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源のリチウムイオンは、MIC減少性化合物として作用する。したがって、本発明の方法は、殺生物活性を維持および/または改善して、水性調製物中の殺生物剤濃度の減少を可能にする。
【0185】
本発明の方法または組成物におけるリチウムイオンの添加は、水性調製物中での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株の減少したまたは防止された発育および蓄積をもたらし、これらの調製物の変化の傾向が減少し、一方で調製物の低粘度、色の光彩および匂い品質は維持され得る。さらに、水性調製物中での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株による攻撃および破壊に対するこのような調製物の安定化は、調製物の良好な微生物学的品質をもたらす。
【0186】
本発明によれば、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源は、MIC減少性化合物として使用される。本明細書で言及されるMIC減少性化合物は、このようなMIC減少性化合物をまったく有しない水性調製物に対して、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させることができる化合物である。言い換えれば、少なくとも1種の殺生物剤と組み合わせて本発明によって使用される、少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源のリチウムイオンは、水性調製物中で殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させる。
【0187】
得られた良好な結果を考慮して、本発明は、さらなる態様において、水性調製物中で細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)を減少させるための、水溶性リチウムイオン源の使用に言及する。減少は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(I)、好ましくは式(Ia)、より好ましくは式(Ib)、最も好ましくは式(Ic)
MICwithoutLi/MICLi≧1.1 (I)
MICwithoutLi/MICLi≧1.5 (Ia)
MICwithoutLi/MICLi≧2,0 (Ib)
MICwithoutLi/MICLi≧4.0 (Ic)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たす場合に達成されることが認識される。
【0188】
好ましくは、減少は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(II)、好ましくは式(IIa)、より好ましくは式(IIb)、最も好ましくは式(IIc)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦30.0 (II)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦25.0 (IIa)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦20.0 (IIb)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦10.0 (IIc)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たす場合に達成される。
【0189】
より好ましくは、減少は、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)が、式(III)、好ましくは式(IIIa)、より好ましくは式(IIIb)、最も好ましくは式(IIIc)
1.1≦MICwithoutLi/MICLi≦30.0 (III)
1.5≦MICwithoutLi/MICLi≦25.0 (IIa)
2.0≦MICwithoutLi/MICLi≦20.0 (IIb)
4.0≦MICwithoutLi/MICLi≦10.0 (IIc)
(式中、
MICwithoutLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位の少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がない状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であり、
MICLiは、工程a)の水性調製物中の水の重量に対して計算される、ppm単位での少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源がある状態での細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株に対する少なくとも1種の殺生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)である。)
を満たす場合に達成される。
【0190】
少なくとも1種の水溶性リチウムイオン源、水性調製物、少なくとも1種の殺生物剤、細菌の少なくとも1種の菌株および/または酵母の少なくとも1種の菌株および/またはカビの少なくとも1種の菌株、ならびにこれらの好ましい実施形態の定義に関して、本発明の方法の技術的詳細を検討する場合に上で提供された記述について言及される。
【0191】
以下の実施例は、本発明を追加的に例証し得るが、例示された実施形態に本発明を制限することは意味されない。以下の実施例は、本発明による組成物で保護されたミネル、顔料または充填剤の水性調製物の良好な微生物学的安定性を示す。
【実施例】
【0192】
測定方法
実施例および特許請求の範囲で得られたパラメータを評価するために、以下の測定方法を使用した。
【0193】
材料のBET比表面積
BET比表面積は、窒素を使用してISO9277に従ってBET法によって測定した。
【0194】
粒子状材料の粒径分布(<Xの直径を有する粒子の質量%)および重量メジアン直径(d50
粒子状材料の重量メジアン粒径および粒径質量分布は、沈殿法、すなわち、重力場での沈殿挙動の分析によって決定した。測定は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100で行った。
【0195】
この方法および機器は、当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒径を決定するために一般に使用されている。測定は、0.1重量%Naの水溶液で実施する。試料は、高速攪拌機および超音波を使用して分散させる。
【0196】
pH測定
水試料のpHは、およそ25℃で標準pH計を使用することによって測定する。
【0197】
ブルックフィールド粘度
ブルックフィールド粘度はすべて、100rpmの速度および室温(20±3℃)でLV−3スピンドルを備えたBrookfield DV−II粘度計で測定する。
【0198】
殺生物剤およびリチウムの量
ppmで記載された殺生物剤およびリチウムの量はすべて、水性調製物中の水のキログラム当たりのmg値を表す。リチウムイオン濃度は、水性調製物の水中の国際単位系に従ってmMol/L(リットル当たりミリモル)またはmM(ミリモル濃度)でさらに記載される。
【0199】
細菌数
他に指示がない場合、以下で表中の記載された細菌数(値はcfu/プレートである。)は、プレートアウトおよび30℃でのインキュベーションに続いて2日後に決定した。計数方法は、以下の通りである。水性調製物を綿スワップ(例えば、Applimed SA、番号1102245)と一緒に十分攪拌し;過剰の水性調製物を水性調製物容器の側面に穏やかに浸すことによって除去し、およそ200mgの水性調製物をスワップ上で残した。次いで、3本の同等のストリークをトリプシン大豆寒天プレート(TSA、BD236950を使用して調製)上に右から左に、3本をさらに最上部から最下部に作製した。次いで、TSAプレートを30℃で48時間インキュベートした。次いで、コロニー形成単位(cfu)を計数し、cfu/プレートとして報告した。プレート当たり100から999cfuの計数は、≧100cfu/プレートとして報告する。プレート当たり1000cfuおよびそれを超える計数は、≧1000cfu/プレートとして報告する。酵母およびカビは、以下の例外、a)TSAの代わりに、クロルアンフェニコールを含有するSabouraud Dextrose寒天(SDA)(例えば、heipha Dr.Muller GmbH、番号1460030020)を使用した、b)SDAプレートを25℃で5日間インキュベートした、ならびにc)インキュベーチョン48時間および5日後にcfuを計数および報告した、とともに細菌について記載したとおりに計数した。プレート当たり20から99cfuの酵母およびカビの計数は、≧20cfu/プレートとして報告する。プレート当たり100cfuおよびそれを超える酵母およびカビの計数は、≧100cfu/プレートとして報告する。
【0200】
固体含量
固体含量は、Mettler−Toledo MJ33の水分計を使用して測定する。この方法および機器は、当業者に公知である。
【0201】
最小発育阻止濃度(MIC)
MICを決定するために、試験した微生物、すなわち、細菌の菌株および/または酵母の菌株および/またはカビの菌株を、およそ10−10細胞/mlの密度に、個別の種の要件に従って対数発育期の最後まで新しく発育させた。
【0202】
例えば、細菌E.コリ、例えば、E.コリATCC11229、およびS.アウレウス、例えば、S.アウレウス菌株DSMZ346、の新しい細菌培養液を、ストック培養液から3mlの液体発育培地(トリプシン大豆ブロス、例えば、Flukaカタログ番号22092)に接種し、1分当たり150回転(rpm)で攪拌しながら30℃で16から20時間インキュベートし、およそ2×10細胞/mlの細胞密度をもたらすことによって調製した。殺生物剤含有CaCOスラリー中で条件に適合させた、耐性細菌の新しい培養液を、ストック培養液から50gの75重量%固体含量CaCOスラリーに接種することによって調製し、撹拌なしにて30℃で14から28日間インキュベートした。スラリーは、その菌株が以下に記載される濃度で耐性である対応する殺生物剤を含有した。rOmyAKは、750ppmの1,6−ジヒドロキシ−2,5−ジオキサン(CAS番号3586−55−8)と19ppmのCMIT/MIT(CAS番号55965−84−9)との殺生物剤混合物に耐性のシュードモナス・メンドシナ菌株である。rOPPは、600ppmの2−フェニルフェノール(OPP)(CAS番号90−43−7)に耐性のシュードモナス・メンドシナ菌株である。rGDA/ITは、340ppmのグルタルアルデヒド(CAS番号111−30−8)と20ppmCMIT/MIT(CAS番号55965−84−9)との殺生物剤混合物に耐性のシュードモナス・メンドシナ菌株である。
【0203】
水溶性リチウム塩を添加することによって、リチウムイオンを水性調製物(例えば、CaCOスラリー)に添加した。例えば、75%(w/w)の固体含量を有する50gのCaCOスラリーに、74g/lのLiCO懸濁液1.177mlを添加し、十分に混合し、水相中172mMまたは1205ppmのリチウムイオン濃度をもたらした。別の実施例として、75重量%(w/w)の固体含量を有する50gのCaCOスラリーに、0.04mlの292g/Lのクエン酸Li(2M)溶液を添加し、十分に混合し、水相中19mMまたは135ppmのリチウムイオン濃度をもたらした。
【0204】
試験される殺生物剤を、0ppm(殺生物剤なし)から出発して増加する濃度で水性調製物(例えば、リチウムイオンを有するまたは有しないCaCOスラリー)に添加した。濃度は、供給業者により推奨されたよりも高い濃度から非常に低い量(1ppm以下程度に低い)の範囲であった。それぞれの殺生物剤濃度について、水性調製物の3ml試料を20μlの新しい細菌培養液と組み合わせた。
【0205】
根治的MICを試験する場合、水性調製物3ml当たり20μlの新しい細菌培養液、または水性調製物3ml当たりスラリーからの耐性細菌の0.1mlの新しい培養液を使用して、殺生物剤およびリチウムを添加する前に細菌を水性調製物に添加した。
【0206】
試料はすべて、30℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレート当たりのコロニー形成単位(cfu)(cfu/プレート)を、細菌計数下で上に記載したとおりに決定した。
【0207】
細菌についてのMICは、試験したすべての試料のうちでリチウムイオンの存在下または非存在下での殺生物剤の最小濃度と定義され、ここで、細菌濃度は100cfu/プレート未満に低下した。酵母およびカビについてのMICは、試験したすべての試料のうちでリチウムイオンの存在下または非存在下での殺生物剤の最小濃度と定義され、ここで、微生物濃度は、20cfu/プレート未満に低下した。殺生物剤を有しない試料が、細菌について100cfu/プレート超、ならびに酵母およびカビについて20cfu/プレート超を示した場合にのみ、試験は有効であった。それぞれの殺生物剤を含有する試料のいずれも、細菌について100cfu/プレート未満ならびに酵母およびカビについて20cfu/プレート未満に低下しなかった場合、MICを、>試験した最大殺生物剤濃度(例えば、>1000ppm)として報告した。
【0208】
[実施例1]
炭酸カルシウムスラリーの調製
炭酸カルシウム[イタリア大理石(Italian marble);d50=10μm;21重量%<2μm]の水性スラリーを75重量%固体含量で調製した。200lの垂直ボールミル中ナトリウム/カルシウム中和ポリアクリレート粉砕剤(Mw6000)の乾燥固体材料に対して0.6重量%を使用して、スラリーを95℃でd50=0.7μm;90重量%<2μmの最終粒径分布に湿式粉砕した。
【0209】
[実施例2]
MIC決定および減少
種々の細菌種の菌株に対する、リチウムイオンの非存在下での種々の殺生物剤についての最小発育阻止濃度(MIC)およびリチウムイオンの存在下でのそれぞれの殺生物剤の対応するMIC減少の決定は、以下の表1から表4にまとめる。試験は、一定のリチウムイオン濃度で異なる殺生物剤濃度によって行った。数字は、cfu/プレートを示す。
【0210】
【表1】
【0211】
細菌についてのMICは、試験したすべての試料のうちでリチウムイオンの存在下または非存在下での殺生物剤の最小濃度として定義し、ここで、細菌濃度は100cfu/プレート未満に低下した。表1から収集され得るように、rOmy AK菌株に対するMITの最小発育阻止濃度(MIC)は、殺生物剤が記載された量で単独で実行される場合に明らかに35ppmMITを超えており、すなわち、リチウムイオンの非存在下で、MICwithoutLiは、106ppmである。これらの結果は、リチウムイオンがLiCOの添加によって単独で与えられる場合、それらは、rOmy AK菌株に対して抗菌効果をまったく有しないことも示す。しかしながら、殺生物剤がリチウムイオンと組み合わせて実行される場合、rOmy AK菌株に対するMITのMICLiは、35ppmMITに減少する。
【0212】
【表2】
【0213】
表2から収集され得るように、E.コリ菌株に対する4−クロロ−3−メチルフェノールの最小発育阻止濃度(MIC)は、殺生物剤が記載された量で単独で実行される場合に明らかに177ppm4−クロロ−3−メチルフェノールを超えており、すなわち、リチウムイオンの非存在下で、MICwithoutは、354ppmである。これらの結果は、リチウムイオンがLiCOの添加によって単独で与えられる場合、それらは、E.コリ菌株に対して抗菌効果をまったく有しないことも示す。しかしながら、殺生物剤がリチウムイオンと組み合わせて実行される場合、E.コリ菌株に対する4−クロロ−3−メチルフェノールのMICLiは、177ppm4−クロロ−3−メチルフェノールに減少する。
【0214】
【表3】
【0215】
表3から収集され得るように、S.アウレウス菌株に対するCMIT/MITの最小発育阻止濃度(MIC)は、殺生物剤が記載された量で単独で実行される場合に明らかに14ppmCMIT/MITを超えており、すなわち、リチウムイオンの非存在下で、MICwithoutLiは、28ppmである。これらの結果は、リチウムイオンがLiCOの添加によって単独で与えられる場合、それらは、S.アウレウス菌株に対して抗菌効果をまったく有しないことも示す。しかしながら、殺生物剤がリチウムイオンと組み合わせて実行される場合、S.アウレウス菌株に対するCMIT/MITのMICLiは、7ppmCMIT/MITに減少する。
【0216】
【表4】
【0217】
表4から収集され得るように、S.アウレウス菌株に対するナトリウムピリチオンの最小発育阻止濃度(MIC)は、殺生物剤が記載された量で単独で実行される場合に明らかに900ppmナトリウムピリチオンを超えており、すなわち、リチウムイオンの非存在下で、MICwithoutLiは、>900ppmである。これらの結果は、リチウムイオンがクエン酸リチウムの添加によって単独で与えられる場合、それらは、S.アウレウス菌株に対して抗菌効果をまったく有しないことも示す。しかしながら、殺生物剤がこれらのリチウムイオンと組み合わせて実行される場合、S.アウレウス菌株に対するナトリウムピリチオンのMICLiは、150ppmナトリウムピリチオンに減少する。
【0218】
[実施例3]
種々の殺生物剤についてのMIC減少
種々の細菌種の菌株に対するリチウムイオンの存在下での試験殺生物剤のMIC減少は、以下の表5に要約する。試験は、表5に記載されるとおりに異なる殺生物剤濃度、異なるリチウムイオン濃度および異なるリチウムイオン源によって行った。
【0219】
表5において、リチウムイオンの存在が、試験殺生物剤のMICを減少させることが示される。特に、MIC減少は、≧1.1のMIC比(MICwithoutLi/MICLi)によって表す。
【0220】
【表5】