(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光電変換部を備える基板と、絶縁膜と、反射防止膜と、層間絶縁膜と、シリコン窒化膜からなるパッシベーション膜と、がこの順に形成された積層構造を有する固体撮像素子の製造方法であって、
化学気相成長法により前記パッシベーション膜を形成し、
前記化学気相成長法では、
前記パッシベーション膜に印加する高周波パワーを増加する工程と、
前記パッシベーション膜に印加する圧力を低減する工程と、
前記パッシベーション膜を形成する時の温度を増加する工程と、
SiH4の添加量を低減する工程と、
N2の添加量を増加する工程と、の何れか1つ以上の工程を実施して、前記パッシベーション膜における圧縮方向の応力を−50kN/cm2以下にすることを特徴とする、固体撮像素子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサおよびCCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ等の固体撮像素子において、画素の微細化が進んでいる。当該微細化に伴い、各画素から出力される信号レベルが小さくなる傾向があり、固体撮像素子の感度向上および更なるノイズ低減が望まれている。
【0003】
固体撮像素子における性能劣化の原因の一つとして、固体撮像素子に光が入射していないにも関わらず発生する暗電流がある。例えば、固体撮像素子が備える半導体基板内に欠陥が発生すると、入射光が光電変換された電荷以外に、当該欠陥に起因した電荷が固体撮像素子の信号電荷蓄積部に流れ込むことで、暗電流が発生する。当該暗電流に起因して、固体撮像素子の出力画像において、入射光が無い場合に白傷が発生したり、入射光がある場合でも画素ごとに生じる暗電流のばらつきによってノイズが生じたりする。このように、暗電流を原因として固体撮像素子の出力画像の品質が著しく低下する問題があった。
【0004】
前記の欠陥としては、例えば半導体基板の表面と酸化物最上面との界面不完全性により発生する表面暗電流が挙げられる。特許文献1は、パッシベーション膜からの水素供給により、界面準位を低下させて表面暗電流を低減する技術が開示されている。
【0005】
また、半導体基板が有する応力に起因する暗電流対策として、特許文献2には、各光電変換部同士を互いに分離する素子分離領域に、半導体基板と同じ熱膨張係数を持つ材料を用いた固体撮像素子が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固体撮像素子の感度の向上のために、半導体基板上に反射防止膜を形成することで、入射光の反射を抑制する方法が知られている。当該反射防止膜の材料としては、屈折率2.0程度のシリコン窒化膜が用いられることが多く、より感度を向上させるためにはSi含有量がさらに多いシリコン窒化膜の採用も見られる。ただし、シリコン窒化膜のSi含有量が増加すると、反射防止膜が有する引張方向(テンサイル方向)の応力も大きくなり、固体撮像素子における暗電流の原因となる半導体基板の結晶欠陥を増大させる懸念があった。
【0008】
本発明は、暗電流の発生を低減できる固体撮像素子等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一実施形態は、光電変換部を備える基板と、絶縁膜と、反射防止膜と、層間絶縁膜と、パッシベーション膜と、がこの順に形成された積層構造を備え、前記パッシベーション膜は、圧縮方向の応力を有し、前記応力は、−50kN/cm
2以下である固体撮像素子
。
(
2)また、本発明のある実施形態は、前記(1)の構成に加え、前記積層構造には、前記層間絶縁膜および前記パッシベーション膜に陥入し、陥入した部分の側壁が前記パッシベーション膜に覆われた光導波路がさらに形成されている固体撮像素子。
(
3)また、本発明のある実施形態は、前記(1)
または前記(2)の構成に加え、前記基板は、前記光電変換部において生成された電荷を蓄積する電荷蓄積部をさらに備え、前記積層構造には、前記電荷蓄積部と前記層間絶縁膜との中間に、遮光膜がさらに形成されている固体撮像素子。
(
4)また、本発明のある実施形態は、前記(1)、前記(2)
または前記(3)の固体撮像素子を備える電子機器。
(
5)また、本発明のある実施形態は、光電変換部を備える基板と、絶縁膜と、反射防止膜と、層間絶縁膜と、シリコン窒化膜からなるパッシベーション膜と、がこの順に形成された積層構造を有する固体撮像素子の製造方法であって、化学気相成長法により前記パッシベーション膜を形成し、前記化学気相成長法では、前記パッシベーション膜に印加する高周波パワーを増加する工程と、前記パッシベーション膜に印加する圧力を低減する工程と、前記パッシベーション膜を形成する時の温度を増加する工程と、SiH
4の添加量を低減する工程と、N
2の添加量を増加する工程と、の何れか1つ以上の工程を実施して、前記パッシベーション膜における圧縮方向の応力を−50kN/cm
2以下にする、製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、暗電流の発生を低減できる固体撮像素子等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
<固体撮像素子の構造>
本発明の一実施形態について、
図1および
図2を参照して以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る固体撮像素子100は、半導体基板(基板)1と、第1絶縁膜(絶縁膜)4と、反射防止膜5と、層間絶縁膜6と、パッシベーション膜8と、平坦化膜9と、カラーフィルタ10と、マイクロレンズ11とがこの順に形成された積層構造を備えている。
【0013】
固体撮像素子100は、例えばCMOS型イメージセンサである。固体撮像素子100には複数の画素が形成されており、当該画素ごとに後述する光電変換部2等が備えられている。
【0014】
半導体基板1は、シリコン等の半導体材料により形成されている。また、半導体基板1は光電変換部2を備えている。光電変換部2は、固体撮像素子100に入射した入射光を電気信号に変換する部材であり、例えばフォトダイオード等であってよい。半導体基板1と第1絶縁膜4との間には、ゲート電極3が配置されている。ゲート電極3は、第1絶縁膜4に覆われるように形成されている。ゲート電極3は、光電変換部2への光の入射を妨げない位置に配置されることが好ましい。第1絶縁膜4は、ゲート電極3と、半導体基板1および反射防止膜5とを電気的に絶縁する部材である。
【0015】
層間絶縁膜6には、複数の配線を含む配線層7による多層配線構造が形成される。層間絶縁膜6は、配線層7に含まれる各配線を電気的に絶縁する部材である。第1絶縁膜4および層間絶縁膜6は、例えば酸化膜等であってよい。また、配線層7に含まれる配線は、例えば、Al(アルミニウム)配線またはCu(銅)配線等が挙げられる。
【0016】
なお、
図1では配線層7が3層により形成される例を示しているが、配線層7の層数はこれに限られず、1層または2層であってもよく、4層以上であってもよい。また、半導体基板1において画素が配される画素領域と、画素領域以外の領域とでは、配線層7の層数が異なっていてもよい。当該画素領域以外の領域とは、例えば画素領域から出力される電気信号を処理するための領域である。
【0017】
(反射防止膜)
反射防止膜5は、光電変換部に光が入射する際に生じる光の反射を抑制する部材であり、屈折率の高い材料が用いられる。当該屈折率の高い材料として、例えばシリコン窒化膜が挙げられる。また、反射防止膜5の屈折率をより高くするために、反射防止膜5を化学気相成長法(CVD法:Chemical Vapor Deposition)により形成する際のSiH
4ガス流量(添加量)を増加し、Si含有量が比較的多いシリコン窒化膜としてもよい。
【0018】
しかしながら、シリコン窒化膜は、Si含有量が多くなるほどテンサイル方向(引張方向)に生じる応力が大きくなるという特性を持つ。したがって、CVD法における高温アニール後には、反射防止膜5が有するテンサイル方向の応力に起因して、半導体基板1にはテンサイル方向の大きな反りが生じてしまう。
【0019】
ここで、平坦な基板上に薄い膜を形成すると、該膜の熱膨張率(熱膨張係数)と該基板の熱膨張率との違いにより、該膜に機械的応力が発生する。そして、前記応力を緩和するため、前記基板には反りが発生することになる。ここで、前記基板の周辺が引っ張られる方向は引張(テンサイル、Tensile)、前記基板の周辺が抑え込まれる方向は圧縮(コンプレッシブ、Compressive)とされる。したがって、前記の膜が有する応力の方向は、基板を基準に該基板の周辺を引っ張る方向に作用する場合はテンサイル方向であり、該基板の周辺を抑え込む方向に作用する場合はコンプレッシブ方向である。
【0020】
反射防止膜5における、テンサイル方向の応力による当該反りの発生は、半導体基板1内における結晶欠陥を誘起する。当該結晶欠陥に起因する暗電流は、固体撮像素子100の出力画像に白傷を発生させる原因となる。また、前記のテンサイル方向の応力は、前記の結晶欠陥を生じさせない程度の大きさであっても、バンドギャップ縮小による生成電流および表面リーク電流等の暗電流が発生する原因となる。したがって、反射防止膜5が有するテンサイル方向の応力を打ち消すことで、固体撮像素子100における暗電流を低減できる。
【0021】
(パッシベーション膜)
パッシベーション膜8は、シリコン窒化膜よりなる、腐食を防止する効果を有する保護膜である。またパッシベーション膜8は、水素電子を供給することでダングリングボンドを埋め、界面準位を低下させて、表面暗電流を低減する効果を有する。本発明の一実施形態において、パッシベーション膜8は、コンプレッシブ方向(圧縮方向)の応力を有するように形成される。パッシベーション膜8が有する当該コンプレッシブ方向の応力は、反射防止膜5が有するテンサイル方向の応力を打ち消し、さらに半導体基板1に対してコンプレッシブ方向の応力を印加できる。したがって、バンドギャップ拡大による生成電流および表面リーク電流等が減少するため、固体撮像素子100に生じる暗電流を低減できる。
【0022】
ここで、コンプレッシブ方向の応力に起因する暗電流低減のモデルについて説明する。固体撮像素子100に生じる暗電流は下記式(1)により示される。
【0024】
前記式(1)中、I
darkは暗電流を、I
genは生成電流成分を、I
leakは表面リーク電流成分を、qは電子の電荷を、wは空乏層幅を、Aはpn接合面積を、τ
gはライフタイムを、N
cは伝導帯における電子の実効状態密度を、N
νは価電子帯における正孔の実効状態密度を、E
gはバンドギャップを、kはボルツマン定数を、Tは温度を、σは捕獲断面積を、ν
thは熱速度を、N
stは空乏層内の界面準位密度を、A
sは表面接合面積を、それぞれ示す。
【0025】
なお、パッシベーション膜8等の応力により影響を受ける暗電流成分を考慮した場合、主要な暗電流成分は生成電流成分I
genおよび表面リーク電流成分I
leakである。したがって、拡散電流成分およびトンネル電流成分についてはここでは言及しない。
【0026】
パッシベーション膜8が有するコンプレッシブ方向の応力は、光電変換部2を含む半導体基板1の表面のシリコンまで伝搬すると、光電変換部2を含む半導体基板1の表面におけるシリコンの格子定数が小さくなる。このとき、シリコンのバンド構造はsp3混成軌道を取ることから、光電変換部2を含む半導体基板1の表面におけるシリコンのバンドギャップは大きくなる。
【0027】
前記式(1)に示されるように、バンドギャップE
gが大きくなると暗電流I
darkは指数関数的に低減されるため、パッシベーション膜8がコンプレッシブ方向の応力を有することにより、固体撮像素子100に生じる暗電流は効果的に低減される。
【0028】
図2のグラフはパッシベーション膜8が有する応力と、固体撮像素子100に生じる暗電流との関係を示しており、横軸は当該応力を、縦軸は暗電流を示す。なお暗電流は、パッシベーション膜8の応力が最も低い条件における暗電流の電気量を100とした場合の、相対的な電気量を示している。
【0029】
図2に示されるように、パッシベーション膜8が有する応力がコンプレッシブ方向に大きくなるほど、言い換えれば当該応力の値がマイナス方向に大きくなるほど、暗電流が低減する。特に、パッシベーション膜8が有する応力が−50kN/cm
2以下(−5E9dyne/cm
2以下)となる場合に、暗電流の低減効果が大きい。したがって、パッシベーション膜8が有する応力は、−50kN/cm
2以下であることが好ましい。
【0030】
なお、半導体基板1には、パッシベーション膜8に続けて、表面の凹凸を平坦化するための平坦化膜9と、画素に対応する波長の光のみ入射させるためのカラーフィルタ10と、光を集光するためのマイクロレンズ11とがこの順に積層されている。
【0031】
<固体撮像素子の製造方法>
本実施形態に係る固体撮像素子100が備える積層構造において、パッシベーション膜8以外の各部材については、従来一般的な製造方法を用いて製造することができる。パッシベーション膜8は、化学気相成長法により形成される。化学気相成長法の種類は特に限定されないが、例えばプラズマCVD法であることが好ましい。
【0032】
パッシベーション膜8の有する応力をコンプレッシブ方向に制御するために、化学気相成長法では、パッシベーション膜8に印加する高周波パワーを増加する工程と、パッシベーション膜8に印加する圧力を低減する工程と、パッシベーション膜8を形成する時の温度を増加する工程と、SiH
4の添加量を低減する工程と、N
2の添加量を増加する工程と、の何れか1つ以上の工程を実施して、パッシベーション膜8におけるコンプレッシブ方向の応力を大きくする。
【0033】
前記のように化学気相成長法における各パラメータを調整する構成によれば、得られるパッシベーション膜8の組成がNリッチとなる。これにより、パッシベーション膜8における窒化シリコンの実効的な格子定数が小さくなるため、Nリッチなパッシベーション膜8と、Siリッチな半導体基板1との格子定数差が大きくなる。当該格子定数差が大きいほど、パッシベーション膜8におけるコンプレッシブ方向の応力は大きくなる。
【0034】
したがって、上述の何れかの工程または2つ以上の工程を組み合わせることで、コンプレッシブ方向に応力を有するパッシベーション膜8が形成できる。上述の通り、パッシベーション膜8がコンプレッシブ方向の応力を有することで、固体撮像素子100に生じる暗電流を低減できる。したがって、本実施形態に係る製造方法によれば、発生する暗電流が小さい固体撮像素子100を得ることができる。
【0035】
<固体撮像素子を備える電子機器>
固体撮像素子100は、撮像部を有する種々の電子機器に備えられてよい。このような電子機器として、例えば、デジタルビデオカメラおよびデジタルスチルカメラ等のデジタルカメラ、監視カメラ等の画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、テレビジョン電話装置並びにカメラを備えた携帯電話装置等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図3を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0037】
本実施形態に係る固体撮像素子200は、光導波路12を備えている点において、実施形態1に係る固体撮像素子100と異なる。
図3に示すように、光導波路12は、固体撮像素子200が備える積層構造において、層間絶縁膜6およびパッシベーション膜8に陥入して形成されている。当該陥入した部分の側壁はパッシベーション膜8に覆われている。
【0038】
光導波路12は、半導体基板1に層間絶縁膜6を積層した後に、層間絶縁膜6に開口を形成し、当該開口内にパッシベーション膜8および透光性の材料をこの順に形成することにより得られる。当該透光性の材料は、その屈折率が層間絶縁膜6の屈折率より大きい部材であればよい。このような透光性の材料としては、例えば窒化シリコン、樹脂および有機高屈折率膜等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0039】
層間絶縁膜の屈折率は1.4程度であることが好ましく、この場合には前記の透光性の材料の屈折率は1.6以上2.2以下の範囲で設定されることが好ましい。光導波路12は、このような屈折率を有する透光性の材料により形成されることにより、屈折によって入射光を効率よく光電変換部2に導くことができる。
【0040】
なお、
図3には、光導波路12の底部が、パッシベーション膜8を介して反射防止膜5に接している例を示しているが、光導波路12と反射防止膜5とは互いに離間しており、その間に層間絶縁膜6が配置されていてもよい。
【0041】
固体撮像素子200は、光導波路12を備えることにより、入射光を効率よく光電変換部2に導くことができる。しかしながら、光導波路構造の採用により、光導波路12を形成するためのエッチング工程および透光性の材料の前記開口への埋め込み工程等において生じるプロセスダメージにより、半導体基板1に微小結晶欠陥が発生してしまうことが避けられない。
【0042】
ここで、固体撮像素子200はパッシベーション膜8が光導波路12の側壁に形成される構造を有する。これは、コンプレッシブ方向の応力を半導体基板1側により与えやすい構造であることから、固体撮像素子200に生じる暗電圧をより効果的に低減できる。すなわち、前記の微小結晶欠陥発生による暗電流の発生は、コンプレッシブ方向の応力を有するパッシベーション膜8によって効果的に抑制できるため、光導波路12による入射光の効率的な制御と、発生する暗電流の低減とを両立した固体撮像素子200を実現できる。
【0043】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、
図4を参照して以下に説明する。本実施形態に係る固体撮像素子300は、
図4に示すように、実施形態2に係る固体撮像素子200にさらに遮光膜13およびメモリー部(電荷蓄積部)14を備えている点において、実施形態1に係る固体撮像素子100と異なる。
【0044】
固体撮像素子300は、遮光膜13およびメモリー部14を備えることにより、フォーカルプレーン歪みの発生防止を目的としたグローバルシャッタ構造を採用できる。なお、遮光膜13およびメモリー部14は、固体撮像素子200ではなく、固体撮像素子100にさらに備えられる構成であってもよい。
【0045】
メモリー部14は、光電変換部2において生成された電荷を蓄積および転送する部材である。メモリー部14は、表面正孔濃度が低いことが好ましい。なぜならば、メモリー部14の表面正孔濃度が高いと、転送ゲートより伸びた空乏層が表面の正孔で終端し、電界がメモリー部14のN領域まで印加されにくくなる。その結果、電荷の転送が困難になる。また、メモリー部14の表面正孔濃度が低いことにより、パッシベーション膜8等の応力による影響を受けやすくなることから、コンプレッシブ方向の応力を有するパッシベーション膜8による暗電流の低減効果がより大きくなるためである。
【0046】
遮光膜13は、透光性の低い材料により形成される膜である。このような透光性が低い材料として、例えばタングステン等の金属が用いられる。遮光膜13は、入射光が直接メモリー部14に入射してノイズ成分とならないように、メモリー部14と層間絶縁膜6との中間に形成されている。なお、本実施形態において、遮光膜13はメモリー部14と略対向する位置のみに形成されるため、タングステン等の金属膜が有する応力が与える半導体基板1への影響を少なくできる。
【0047】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、
図5を参照して以下に説明する。本実施形態に係る固体撮像素子400は、
図5に示すように、配線層7が形成されておらず、半導体基板1が遮光膜13と、電荷転送部15と、チャネルストップ16とを備えている点において、実施形態1に係る固体撮像素子100と異なる。なお、固体撮像素子400に、光導波路12と、遮光膜13と、メモリー部14との何れか1つ以上が形成されていてもよい。
【0048】
電荷転送部15は、光電変換部2による光電変換により発生した電荷を転送する部材である。また、チャネルストップ16は、不純物のドープ濃度が高い層である。このように、固体撮像素子400は、固体撮像素子100のようなCMOS型イメージセンサではなく、電荷転送部15およびチャネルストップ16を備えるようなCCD型イメージセンサであってもよい。このような構成によれば、層間絶縁膜6に備えられる配線層7を簡略化または省略でき、光を効率的に光電変換部2に入射させることができるため、受光感度を容易に向上できる。
【0049】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る固体撮像素子(100)は、光電変換部(2)を備える基板(1)と、絶縁膜(第1絶縁膜4)と、反射防止膜(5)と、層間絶縁膜(6)と、パッシベーション膜(8)と、がこの順に形成された積層構造を備え、前記パッシベーション膜は、圧縮方向の応力を有する。
【0050】
本発明の態様2に係る固体撮像素子は、前記態様1において、前記応力は、−50kN/cm
2以下であることが好ましい。
【0051】
本発明の態様3に係る固体撮像素子は、前記態様1または2において、前記積層構造には、前記層間絶縁膜および前記パッシベーション膜に陥入し、陥入した部分の側壁が前記パッシベーション膜に覆われた光導波路(12)がさらに形成されていてもよい。
【0052】
本発明の態様4に係る固体撮像素子は、前記態様1から3において、前記基板は、前記光電変換部において生成された電荷を蓄積する電荷蓄積部(14)をさらに備え、前記積層構造には、前記電荷蓄積部と前記層間絶縁膜との中間に、遮光膜(13)がさらに形成されていてもよい。
【0053】
本発明の態様5に係る電子機器は、前記態様1から4の何れかの固体撮像素子を備える。
【0054】
本発明の態様6に係る製造方法は、光電変換部を備える基板と、絶縁膜と、反射防止膜と、層間絶縁膜と、シリコン窒化膜からなるパッシベーション膜と、がこの順に形成された積層構造を有する固体撮像素子の製造方法であって、化学気相成長法により前記パッシベーション膜を形成し、前記化学気相成長法では、前記パッシベーション膜に印加する高周波パワーを増加する工程と、前記パッシベーション膜に印加する圧力を低減する工程と、前記パッシベーション膜を形成する時の温度を増加する工程と、SiH
4の添加量を低減する工程と、N
2の添加量を増加する工程と、の何れか1つ以上の工程を実施して、前記パッシベーション膜における圧縮方向の応力を大きくする。
【0055】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。