特許第6945668号(P6945668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6945668ポリエステル薄膜及びポリエステル薄膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945668
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】ポリエステル薄膜及びポリエステル薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20210927BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20210927BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20210927BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20210927BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20210927BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20210927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210927BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   B32B27/36
   C08J3/20 ZCER
   C08J3/22CFD
   B29C48/08
   B29C48/21
   B32B27/34
   B32B27/00 103
   B32B37/00
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-27116(P2020-27116)
(22)【出願日】2020年2月20日
(65)【公開番号】特開2021-30724(P2021-30724A)
(43)【公開日】2021年3月1日
【審査請求日】2020年2月20日
(31)【優先権主張番号】108129565
(32)【優先日】2019年8月20日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】楊 文政
(72)【発明者】
【氏名】陳 豪昇
(72)【発明者】
【氏名】林 建志
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−053980(JP,A)
【文献】 特開2011−183714(JP,A)
【文献】 特開2011−068807(JP,A)
【文献】 特開平09−289242(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0326366(US,A1)
【文献】 特開2004−122699(JP,A)
【文献】 特開2009−209351(JP,A)
【文献】 特開2011−256254(JP,A)
【文献】 特開2012−102251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 3/20−3/22
B29C 48/08
B29C 48/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂アロイマスターバッチ製造ステップと、薄膜成形ステップと、を含むポリエステル薄膜の製造方法であって、
前記樹脂アロイマスターバッチ製造ステップでは、二軸スクリュー造粒機により、50重量%の耐高温樹脂材料及び50重量%のポリエステル樹脂材料に対し溶融及び混練を行い、樹アロイマスターバッチを形成し、
前記樹脂アロイマスターバッチ製造ステップにおいて、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー温度は、280℃〜300℃と、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー回転速度は、400rpm〜600rpmと設定されており、それにより、前記樹脂アロイマスターバッチにおいて、前記耐高温樹脂材料は50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法で前記ポリエステル樹脂材料に分散することとなり、
前記薄膜成形ステップでは、薄膜押出機により前記樹脂アロイマスターバッチと別のポリエステル樹脂材料とを混合して溶融及び押出を行い、30重量%の耐高温樹脂材料を含む耐熱層となるポリエステル薄膜を形成し、
前記ポリエステル薄膜の全体は15マイクロメートル〜350マイクロメートルの厚さを有し、
前記耐高温樹脂材料は、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリスルホン(polysulfone、PSU)、液晶ポリマー(liquid crystal polymer、LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、及びポリアミドイミド(polyamide−imide、PAI)から選択される少なくとも一種の材料である、
ことを特徴とするポリエステル薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記耐高温樹脂材料は、結晶性樹脂材料、半結晶性樹脂材料または非結晶性樹脂材料であり、前記耐高温樹脂材料は、180℃〜400℃のガラス転移温度、融点または熱変形温度を有する、請求項1に記載のポリエステル薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記薄膜成形ステップにおいて、さらに、前記樹脂アロイマスターバッチと別のポリエステル樹脂材料を前記薄膜押出機によって共押出し、前記ポリエステル薄膜に前記耐熱層及びポリエステル樹脂基層を含有させ、
前記耐熱層は、前記ポリエステル樹脂基層の一方の表面に設置される、請求項1に記載のポリエステル薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記薄膜成形ステップにおいて、さらに、前記ポリエステル樹脂基層を前記耐熱層と別の前記耐熱層に挟持させるために、前記ポリエステル樹脂基層の他方の表面に別の耐熱層を形成し、
前記別の耐熱層にも、前記耐高温樹脂材料及び前記ポリエステル樹脂材料が含まれる、請求項に記載のポリエステル薄膜の製造方法。
【請求項5】
耐高温樹脂材料及びポリエステル樹脂材料を含む耐熱層を含有する、ポリエステル薄膜であって、
前記耐高温樹脂材料は、50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法で前記ポリエステル樹脂材料に分散し、前記耐熱層における前記耐高温樹脂材料の含有量は30重量%であ
前記ポリエステル薄膜の全体は15マイクロメートル〜350マイクロメートルの厚さを有し、
前記耐高温樹脂材料は、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリスルホン(polysulfone、PSU)、液晶ポリマー(liquidcrystalpolymer、LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、及びポリアミドイミド(polyamide−imide、PAI)から選択される少なくとも一種の材料であることを特徴とするポリエステル薄膜。
【請求項6】
前記耐高温樹脂材料は、結晶性樹脂材料、半結晶性樹脂材料または非結晶性樹脂材料であり、前記耐高温樹脂材料は、180℃〜400℃のガラス転移温度、融点または熱変形温度を有する、請求項に記載のポリエステル薄膜。
【請求項7】
ポリエステル樹脂基層をさらに含み、
前記耐熱層は、前記ポリエステル樹脂基層の一方の表面に形成される、請求項に記載のポリエステル薄膜。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂基層が前記耐熱層と別の前記耐熱層に挟持されるように、前記ポリエステル樹脂基層の他方の表面に別の耐熱層が形成され、別の前記耐熱層にも前記耐高温樹脂材料及び前記ポリエステル樹脂材料が含まれ
記耐熱層の厚さは0.5マイクロメートル〜70マイクロメートルであり、前記別の耐熱層の厚さは0.5マイクロメートル〜70マイクロメートルである、請求項に記載のポリエステル薄膜。
【請求項9】
前記ポリエステル薄膜は、前記耐熱層が1つのみ含まれる単層薄膜構造を成し、前記耐熱層の厚さは15マイクロメートル〜350マイクロメートルである、請求項に記載のポリエステル薄膜。
【請求項10】
前記耐高温樹脂材料及び前記ポリエステル樹脂材料に混合された相溶化剤をさらに含み、
前記相溶化剤は、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる少なくとも1つである、請求項に記載のポリエステル薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル薄膜に関し、特に耐高温性及び耐屈曲性を有する透明ポリエステル薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル薄膜は高分子プラスチック薄膜であり、総合的性能が良好のため、多くの消費者が愛用している。しかし、既存のポリエステル薄膜は物理化学的特性(例えば、耐高温性及び耐屈曲性)における性能が良くない。そのため、特殊な分野(例えば:折り畳み携帯電話の保護フィルム)に応用できない。
【0003】
例えば、特許文献1には、二軸配向ポリエステル薄膜が開示されている。当該ポリエステル薄膜は、PETとPENがブレンドされることによって作られ、40℃〜80℃の結晶化パラメータ(Tcg)を有する。当該ポリエステル薄膜は優れた耐熱性及び耐湿熱性を有するが、ガラス転移温度(Tg)は約80℃のみである。そのため、当該ポリエステル薄膜は、耐高温性を必要とした応用に、依然として制限がある。
【0004】
特許文献2に開示されたポリエステル薄膜は、PETとPEIがブレンドされることによって作られ、当該ポリエステル薄膜のガラス転移温度(Tg)は約139℃に上昇する。しかし、当該ポリエステル薄膜のPEI添加量は40wt%以上であり、PETとPEIとの膨張係数の差異が大きいため、厚さが不均一(約11%)となる。また、特許文献2には、約230℃の高温でのポリエステル薄膜の使用状況について言及されていない。
【0005】
特許文献3に開示されたポリエステル薄膜は、PETと、PSU、PEEK、PAIなどの耐高温樹脂とブレンドされることによって作られ、寸法安定性のある膜材料に仕上がったものである。しかし、特許文献3には、ブレンド後の膜材の耐熱性、ガラス転移温度及び透明度について、言及されていない。
【0006】
そこで、本発明者は上述した欠点を改善すべく、科学原理を併用して鋭意に研究し、合理的でありながら上述した欠点を効果的に改善する本発明の開発に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾特許第104137871号
【特許文献2】中国特許第99118718.0号
【特許文献3】中国特許第201080031380.5号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来技術の不足に対し、ポリエステル薄膜及びポリエステル薄膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する技術的手段は、下記ポリエステル薄膜の製造方法を提供することである。当該ポリエステル薄膜の製造方法は、樹脂合金マスターバッチ製造ステップ及び薄膜成形ステップを含むポリエステル薄膜の製造方法である。前記樹脂合金マスターバッチ製造ステップは、二軸スクリュー造粒機により耐高温樹脂材料及びポリエステル樹脂材料に対し溶融及び混練を行い、複数の樹脂合金マスターバッチを形成する。前記薄膜成形ステップは、薄膜押出機により複数の前記樹脂合金マスターバッチに対し溶融及び押出を行い、ポリエステル薄膜を形成する。なかでも、前記樹脂合金マスターバッチ製造ステップにおいて、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー温度は250℃〜320℃と、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー回転速度は300rpm〜800rpmと設定されており、それにより、複数の前記樹脂合金マスターバッチにおいて前記耐高温樹脂材料が50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法で前記ポリエステル樹脂材料に分散するとなる。前記ポリエステル薄膜は耐熱層を含み、前記耐熱層に前記耐高温樹脂材料及び前記ポリエステル樹脂材料が含まれるよう、前記耐熱層は複数の前記樹脂合金マスターバッチで形成される。
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する別の技術的手段は下記のポリエステル薄膜を提供することである。当該ポリエステル薄膜は、耐高温樹脂材料及びポリエステル樹脂材料を含む耐熱層を含有するポリエステル薄膜である。前記耐高温樹脂材料は50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法で前記ポリエステル樹脂材料に分散し、前記耐熱層における前記耐高温樹脂材料の含有量は10wt%〜80wt%である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による有益な効果の一つは以下に挙げられる。本発明のポリエステル薄膜及びポリエステル薄膜の製造方法によれば、「前記耐高温樹脂材料が50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法で前記ポリエステル樹脂材料に分散する」及び「前記耐高温樹脂材料が50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法で前記ポリエステル樹脂材料に分散するよう、前記樹脂合金マスターバッチ製造ステップにおいて、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー温度は250℃〜320℃であり、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー回転速度は300rpm〜800rpmである」といった技術的特徴によって、最終的に、透明度を保ちながら、良好な耐高温及び耐屈曲の特性を有するポリエステル薄膜を製造することができる。そのため、最終的に製造されるポリエステル薄膜は折り畳み携帯電話の保護フィルム、またはプリント基板の高温プロセスに使用される保護フィルムに適用される。
【0012】
発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るポリエステル薄膜の製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に係るポリエステル薄膜を示す模式図である。
図3】本発明の別の実施形態に係るポリエステル薄膜を示す模式図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るポリエステル薄膜を示す模式図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るポリエステル薄膜を示す模式図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るポリエステル薄膜を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記より、本発明が開示する「ポリエステル薄膜及びポリエステル薄膜の製造方法」に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。
【0015】
[ポリエステル薄膜の製造方法]
図1及び図2に示すように、本実施形態では、ポリエステル薄膜の製造方法を開示する。前記ポリエステル薄膜の製造方法にはステップS110、ステップS120、ステップS130、及びステップS140が含まれる。ちなみに、本実施形態に記載される各ステップの順序及び実際の操作方式は需要によって調整可能であり、本実施形態に制限されない。
【0016】
ステップS110では材料選択ステップを行う。前記材料選択ステップは、耐高温樹脂材料11及びポリエステル樹脂材料12を提供することを含む。
【0017】
最終的に製造したポリエステル薄膜100に耐高温及び耐屈曲の特性を付与するために、前記耐高温樹脂材料は、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリスルホン(polysulfone、PSU)、液晶ポリマー(liquid crystal polymer、LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、及びポリアミドイミド(polyamide−imide、PAI)から選択される少なくとも一種の材料である。
【0018】
前記耐高温樹脂材料11において、ポリエーテルイミドは、非結晶性樹脂材料であり、約215℃のガラス転移温度を有する。ポリスルホンは、非結晶性樹脂材料であり、約185℃のガラス転移温度及び約280℃の融点を有する。液晶ポリマーは、結晶性樹脂材料であり、180°C〜260°Cの熱変形温度を有する。ポリエーテルエーテルケトンは、半結晶性樹脂材料であり、約340°Cのガラス転移温度を有する。ポリアミドイミドは、非結晶性樹脂材料であり、約280°C〜290°Cのガラス転移温度を有する。
【0019】
前記耐高温樹脂材料11は、例えば、結晶性樹脂材料、半結晶性樹脂材料または非結晶性樹脂材料である。それらの耐高温樹脂材料は例えば、180℃〜400℃のガラス転移温度、融点または熱変形温度を有する。
【0020】
さらに説明すると、前記ポリエステル樹脂材料12は、二塩基酸とグリコールまたはその誘導体が縮合重合反応を通して得られた高分子重合物である。好ましくは、前記ポリエステル樹脂材料12は、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)であるが、これに制限されない。
【0021】
ちなみに、前記ポリエステル樹脂材料12を形成する原料であるジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、1、5−ナフタレンジカルボン酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−ナフタレンジカルボン酸、ジ安息香酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルホスホニウムジカルボン酸、アントラセン−2、6−ジカルボン酸、1、3−シクロペンタンジカルボン酸、1、3−シクロヘキサンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3、3−コハク酸ジエチル、グルタル酸、2、2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、及びドデカン二酸から選択される少なくとも一種である。さらに、前記ポリエステル樹脂材料12を形成する原料であるグリコールはエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1、2−シクロヘキサンジメタノール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、1、10−デカンジオール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、及び2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、またはビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンから選択される少なくとも一種である。
【0022】
ステップS120では、樹脂合金マスターバッチ製造ステップを行う。前記樹脂合金マスターバッチ製造ステップは、二軸スクリュー造粒機により、前記耐高温樹脂材料11及びポリエステル樹脂材料12に対し、所定の重量%で、溶融及び混練を行い、複数の樹脂合金マスターバッチ(resin alloy master batches)を形成する。
【0023】
前記樹脂合金マスターバッチ製造ステップにおいて、前記耐高温樹脂材料11の使用量は、10重量%〜90重量%であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂材料12の使用量は、10重量%〜90重量%であることが好ましい。また、前記耐高温樹脂材料11の使用量は、5重量%〜60重量%であることがさらに好ましい。前記ポリエステル樹脂材料12の使用量は、40重量%〜95重量%であることがさらに好ましい。前記各成分の使用量の合計は100重量%である。さらに説明すると、最終的に製造したポリエステル薄膜100に、良好な耐高温及び耐折の特性を付与するために、本実施形態において、前記耐高温樹脂材料11はナノメートル級の寸法でポリエステル樹脂材料12に分散している。
【0024】
前記目的を達成させるために、前記樹脂合金マスターバッチ製造ステップにおいて、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー温度は、250℃〜320℃であり、280℃〜300℃であることが好ましい。前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー回転速度は、300rpm〜800rpmであり、400rpm〜600rpmであることが好ましい。それにより、複数の前記樹脂合金マスターバッチにおいて、前記耐高温樹脂材料11は50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法で前記ポリエステル樹脂材料12に分散できる。
【0025】
即ち、前記耐高温樹脂材料11は、主要に前記二軸スクリュー温度及び二軸スクリュー回転速度のプロセス条件により、ナノメートル級の寸法でポリエステル樹脂材料12に分散する。それにより、前記耐高温樹脂材料11はポリエステル薄膜100において材料の特性を発揮できるし、ポリエステル薄膜100に必要な透明度も保つことができる。
【0026】
ちなみに、前記耐高温樹脂材料11(例えば:PEI、PSU、LCP、PEEK、PAI)とポリエステル樹脂材料12(例えば:PET、PEN)との相溶性を向上させるために、本実施形態の樹脂合金マスターバッチ製造ステップ(ステップS120)はさらに相溶化剤を前記耐高温樹脂材料11及びポリエステル樹脂材料12に混合し、それらの樹脂材料と共に溶融及び混練を行うことを含んでもよい。前記相溶化剤は例えば、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテル樹脂の中の少なくとも1つでもよく、前記相溶化剤の、樹脂合金マスターバッチにおける使用量は0.01重量%〜1重量%である。
【0027】
ステップS130では薄膜成形ステップを行う。前記薄膜成形ステップは薄膜押出機(フィルム押出機と言うこともある)により、複数の前記樹脂合金マスターバッチに対し、溶融及び押出を行い、複数の前記樹脂合金マスターバッチを耐熱層1(図2参照)に形成する。前記耐熱層1は複数の樹脂合金マスターバッチで形成されるために、前記耐高温樹脂材料11及びポリエステル樹脂材料12を含む。前記耐高温樹脂材料11は複数の顆粒としてポリエステル樹脂材料12に分散しており、前記耐高温樹脂材料11の、耐熱層1における粒子径寸法は50ナノメートル〜200ナノメートルである。
【0028】
本発明の一実施形態において、複数の前記樹脂合金マスターバッチに対して、好ましくは、280℃〜300℃の操作温度範囲において、前記薄膜押出機により溶融及び押出を行い、複数の前記樹脂合金マスターバッチを前記耐熱層1に形成する。
【0029】
ちなみに、本実施形態の耐熱層1は複数の樹脂合金マスターバッチに対し直接溶融及び押出を行うことによって形成される。しかし、本発明はこれに制限されない。例えば、樹脂合金マスターバッチにおける前記耐高温樹脂材料11の含量が低い(例えば、40wt%よりも低い)場合、当該樹脂合金マスターバッチに対しては前記実施形態のように、直接溶融及び押出を行い、前記耐熱層1を形成してもよい。
【0030】
しかし、樹脂合金マスターバッチにおける前記耐高温樹脂材料11の含量が高い(例えば、50wt%よりも高い)場合、耐熱層1における耐高温樹脂材料11の濃度を下げるために、樹脂合金マスターバッチに対して他のポリエステル樹脂材料12と共に溶融及び押出を行い、前記耐熱層1を形成する必要がある。それにより、前記耐高温樹脂材料11は耐熱層1において適合な含有量を有し、最終的に製造されるポリエステル薄膜100は透明度を保ちながら、良好な耐高温及び耐屈曲の特性を有する。
【0031】
前記目的を達成させるために、本発明の一実施形態において、耐熱層1における前記耐高温樹脂材料11の含有量は、好ましくは、10wt%〜80wt%であり、特に好ましくは、15wt%〜70wt%である。耐熱層1における前記ポリエステル樹脂材料12の含有量は、好ましくは、20wt%〜90wt%であり、特に好ましくは30wt%〜85wt%である。
【0032】
具体的に説明すると、本実施形態におけるステップS130の薄膜成形ステップは:複数の前記樹脂合金マスターバッチと別のポリエステル樹脂材料21(例えば、PET、PEN)を、前記薄膜押出機により、共押出(Co−Extrusion)技術を通して共押出し、2つの耐熱層1、1’及び1つのポリエステル樹脂基層2を同時に形成することを含む。2つの前記耐熱層1、1’はそれぞれ、ポリエステル樹脂基層2の反対する両側に位置する2つの表面に形成される。それにより前記ポリエステル樹脂基層2は2つの前記耐熱層1、1’に挟持される。
【0033】
2つの前記耐熱層1、1’は複数の前記樹脂合金マスターバッチによって対応的に形成され、前記ポリエステル樹脂基層2は別の前記ポリエステル樹脂材料21のみによって形成される(図2及び図3参照)が、複数の前記樹脂合金マスターバッチによって形成されてもよい(図5及び図6参照)。2つの前記耐熱層1、1’の耐高温樹脂材料11及びポリエステル樹脂材料12の材料種類及び含有量は同じでもよく、異なってもよい。2つの前記耐熱層1、1’とポリエステル樹脂基層2のポリエステル樹脂材料の材料種類も同じでもよく、異なってもよい。本発明はこれに対し特に制限しない。
【0034】
図2に示すように、本実施形態の前記製造方法によって、本実施形態において最終的に製造されるポリエステル薄膜100は上層から下層まで順次に耐熱層1、ポリエステル樹脂基層2、及び別の耐熱層1’が積層される三層構造である。また、前記ポリエステル薄膜100が薄膜押出機によって押出された後、冷却ドラム(例えば、15℃〜50℃に冷却されたドラム)によって急冷されてもよい。しかし、本発明はこれに制限されない。
【0035】
ステップS140では二軸延伸ステップを行う。前記二軸延伸ステップは、三層構造をなすポリエステル薄膜100に対し二軸延伸を行い、二軸延伸されたポリエステル薄膜100を形成することを含む。また、前記二軸延伸は、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦軸−横軸逐次二軸延伸法、又は縦軸−横軸同時二軸延伸法で行うことができるが、本発明はこれに制限されない。なお、上記二軸延伸は例えば、50℃〜150℃の延伸温度で未延伸のポリエステル薄膜100を予熱し、異なる延伸比例に従って、未延伸のポリエステル薄膜100を幅方向(又は横方向、TDと称すこともある)に2.0倍〜5.0倍、好ましくは3.0倍〜4.0倍で延伸加工すると共に、未延伸のポリエステル薄膜100を長尺方向(又は縦方向、MDと称すこともある)に2.0倍〜5.0倍、好ましくは3.0倍〜4.5倍で延伸加工することによって実行してもよい。
【0036】
[ポリエステル薄膜]
図2に示すように、本実施形態ではポリエステル薄膜100をも開示する。前記ポリエステル薄膜100は前記ポリエステル薄膜の製造方法によって製造してもよいが、本発明はこれに制限されない。
【0037】
具体的に説明すると、前記ポリエステル薄膜100はポリエステル樹脂基層2及び2つの耐熱層1、1’を含む。前記ポリエステル樹脂基層2の材料は主にポリエステル樹脂材料21であるが(図2及び図3参照)、前記ポリエステル樹脂基層2の材料には選択的に耐高温樹脂材料11が混合されてもよい(図5及び図6参照)。2つの前記耐熱層1、1’はそれぞれ、ポリエステル樹脂基層2の反対する両側に位置する2つの表面に形成され、それにより前記ポリエステル樹脂基層2が2つの前記耐熱層1、1’に挟持される。2つの前記耐熱層1、1’のそれぞれは耐高温樹脂材料11及びポリエステル樹脂材料12を含み、前記耐高温樹脂材料11は50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法でポリエステル樹脂材料12に分散する。耐熱層1、1’における前記耐高温樹脂材料11の含有量は10wt%〜80wt%である。ちなみに、前記ポリエステル樹脂基層2にも耐高温樹脂材料11が混合された場合(図5及び図6参照)、前記ポリエステル樹脂基層2における耐高温樹脂材料11の含有量は5〜50wt%であり、前記耐熱層1、1’ における耐高温樹脂材料11の含有量は5〜80wt%である。
【0038】
図1に示すように、本実施形態において、ポリエステル薄膜100に良好な耐高温及び耐折の特性を付与すると共に良好な透明度を保たせるために、前記ポリエステル薄膜100のそれぞれの層は好ましい厚さ範囲を有する。具体的に説明すると、前記ポリエステル樹脂基層2は15マイクロメートル〜350マイクロメートルの厚さD1を有し、前記耐熱層1は0.5マイクロメートル〜70マイクロメートルの厚さD2を有し、別の前記耐熱層1は0.5マイクロメートル〜70マイクロメートルの厚さD3を有する。
【0039】
言い換えると、前記ポリエステル薄膜100の全体は15マイクロメートル〜350マイクロメートルの厚さを有する。また、前記耐熱層1、前記ポリエステル樹脂基層2、及び別の前記耐熱層1’の厚さの比例は、好ましくは、1:98:1〜20:60:20である。
【0040】
上述した配置により、本実施形態のポリエステル薄膜100には良好な耐高温及び耐屈曲の特性が付与されると共に、良好な透明度が保たれる。具体的に説明すると、本実施形態におけるポリエステル薄膜100の全体にわたって、ガラス転移温度は110℃〜150℃であり、透明度は80%以上であり、ヘイズ度は5%以下である。好ましくは、前記ポリエステル薄膜100では、ガラス転移温度は120℃〜140℃であり、透明度は88%以上であり、ヘイズ度は3%以下である。
【0041】
さらに、本実施形態におけるポリエステル薄膜100は(1)及び(2)の条件を満たす。
【0042】
(1)ホットプレス試験後または耐熱試験を経た後の前記ポリエステル薄膜100では、A4寸法における反り変形量が3mm以下であり、亀裂が生じない(亀裂が生じないこととは膜表面がクリアで膜表面に亀裂が生じないことを指す)。前記ホットプレス試験では、前記ポリエステル薄膜100を220℃〜240℃の温度環境に置き、2.5時間〜3.5時間で、40キロ〜50キロの荷重を前記ポリエステル薄膜にかけるように行う。前記耐熱試験では、前記ポリエステル薄膜100を220℃〜240℃の温度環境に置いて加熱し、次いで前記ポリエステル薄膜100を室温環境に置いて冷却するように行う。前記加熱するステップ及び冷却するステップは5回繰り返される。
(2)耐折試験を経た後の前記ポリエステル薄膜100では、亀裂が生じない。前記耐折試験では、前記ポリエステル薄膜100を、耐折度試験機により中断せずに25,000回〜30,000回折り曲げるように行う。
【0043】
ちなみに、本実施形態のポリエステル薄膜100において前記ホットプレス試験または耐熱試験後、当該ポリエステル薄膜100の色差△Eは2以上である。機械特性については、本実施形態におけるポリエステル薄膜100をASTM D882に準拠し試験を行うと、当該薄膜の長尺方向(MD)の破断強度は20kgf/mm以上であり、当該薄膜の横方向(TD)の破断強度は25kgf/mm以上である。当該薄膜の長尺方向(MD)の伸び率は230%以上であり、当該薄膜の横方向(TD)の伸び率は160%以上である。
【0044】
本実施形態におけるポリエステル薄膜100はASTM D1204に準拠し試験を行うと、室温において、当該薄膜の長尺方向(MD)における収縮率は0.35%〜0.4 %であり、当該薄膜の横方向(TD)における収縮率は0.05%〜0.15%である。また、220℃〜240℃の温度環境において、当該薄膜の長尺方向(MD)における収縮率は2.5%以下であり、当該薄膜の横方向(TD)における収縮率は4.5%以下である。
【0045】
本実施形態のポリエステル薄膜100には良好な耐高温及び耐折の特性が付与されると共に、良好な透明度が保たれる。そのため、本実施形態のポリエステル薄膜100は特に折り畳み携帯電話の保護フィルム、またはプリント基板の高温プロセスに使用される保護フィルムに適用される。
【0046】
ちなみに、本実施形態では、三層構造のポリエステル薄膜100(ポリエステル樹脂基層2及び2つの耐熱層1)を例に説明したが、本発明はこれに制限されない。例えば、図3に示すように、本発明の別の実施形態において、前記ポリエステル薄膜100’は二層構造をなすポリエステル薄膜100’(ポリエステル樹脂基層2及び該ポリエステル樹脂基層2の片側表面上に形成される耐熱層1を含む)でもよい。
【0047】
または、図4に示すように、本発明の他の実施形態において、前記ポリエステル薄膜100’’は単層構造をなすポリエステル薄膜100’’でもよい。即ち、前記ポリエステル薄膜100’’は耐熱層1を1つのみ含み、前記耐熱層1は15マイクロメートル〜350マイクロメートルの厚さを有する。それにより、前記ポリエステル薄膜100’’が単層に構成されても、前記ポリエステル薄膜100’’には、良好な耐高温及び耐折の特性が付与されると共に、一定の透明度が保たれる。
【0048】
図5及び図6に示す三層構造及び二層構造のポリエステル薄膜100’’’、100’’’’のように、前記ポリエステル樹脂基層2には耐高温樹脂材料11が混合されてもよい。
【0049】
前記ポリエステル樹脂基層2における耐高温樹脂材料11の含有量は5〜50wt%であり、前記耐熱層1、1’における耐高温樹脂材料11の含有量は5〜80wt%である。
【実施例】
【0050】
[試験データの測定]
以下に、実施例1〜3及び比較例1〜3を参照し、本発明の内容を詳しく説明する。しかし、以下の実施例は本発明を理解するためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例に制限されない。
【0051】
実施例1: 50重量%の耐高温樹脂材料PEI(Sabic社より購入、製品名UltemXH6050−1000)及び50重量%のポリエステル材料PET(NAN YA PLASTICS社より提供)を、スクリュー長さ/スクリュー直径の比の値が48である二軸スクリュー造粒機により混練し、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー温度は250℃〜320℃であり、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー回転速度は300rpm〜800rpmであり、PEI−PETの混合比率が50/50である耐高温樹脂合金マスターバッチを得た。その後、140℃、240minの条件において結晶化及び乾燥のプロセスを行う。
【0052】
ポリエステル樹脂と前記耐高温樹脂合金マスターバッチを異なる比例で混練し、A/B/A層の三層を共押出する。A層が30wt%のPEIを含み、B層が30wt%のPEIを含み、A/B/A層の厚さの比例は10/80/10である。二軸延伸のステップにおいて、縦延伸の予熱温度は95℃であり、縦延伸の倍率は3.0である。横延伸の予熱温度は120℃であり、横延伸の倍率は4.5である。熱処理温度は235℃であり、それによって耐高温耐屈曲の透明ポリエステル薄膜を得る。
【0053】
実施例2: 50重量%の耐高温樹脂材料PSU(Solvay社より購入、製品名P−3900)及び50重量%の樹脂材料PET(NAN YA PLASTICS社より提供)を、スクリュー長さ/スクリュー直径の比の値が48である二軸スクリュー造粒機により混練する。前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー温度は250℃〜320℃であり、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー回転速度は300rpm〜800rpmであり、PSU−PETの混合比率が50/50である耐高温樹脂合金マスターバッチを得る。その後、140℃、240minの条件において結晶化及び乾燥のプロセスを行う。
【0054】
実施例3: 50重量%の耐高温樹脂材料PAI(Solvay社より購入、製品名Toron 4000T)及び50重量%のポリエステル材料PET(NAN YA PLASTICS社より提供)を、スクリュー長さ/スクリュー直径の比の値が48である二軸スクリュー造粒機により混練し、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー温度は250℃〜320℃であり、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー回転速度は300rpm〜800rpmである。それにより、PAI−PETの混合比率が50/50である耐高温樹脂合金マスターバッチを得る。その後、140℃、240minの条件において結晶化及び乾燥のプロセスを行う。実施例2及び3の二軸延伸の製造条件が実施例1と同様のため、説明は省略する。
【0055】
比較例1: ポリエステル薄膜の製造方式は実施例1と同様であるが、比較例1の二軸スクリュー回転速度は200rpmである。
【0056】
比較例2: ポリエステル薄膜の製造方式は実施例1と同様であるが、比較例2のA/B/A層において、A層のPEI含量は5%であり、B層のPEI含量も5%である。
【0057】
比較例3: ポリエステル薄膜の製造方式は実施例1と同様であるが、比較例3のA/B/A層の全体の厚さが低い(15マイクロメートル以下)。
【0058】
各成分のプロセスパラメータ条件は表1に示す。
【0059】
実施例1〜3及び比較例1〜3によるポリエステル薄膜に対し物理化学的特性に関する試験を行い、それらのポリエステル薄膜の物理化学的特性を得た。例えば:ガラス転移温度(℃)、透明度(%)、及びヘイズ度(%)。試験方法は以下に説明し、試験結果は表1に示す。
【0060】
ガラス転移温度試験: 示差走査熱量計(DSC) TA Q20により、基板の融解エンタルピーを測定する。
【0061】
透明度及びヘイズ度試験: Tokyo Denshoku社のHaze Meter(製品名TC−HIII)により、実施例によるポリエステル薄膜の透明度(光透過率とも言われる)及びヘイズ度を測定する。試験方法はJIS K7705の基準に準拠する。
【0062】
ベーク後反り変形量試験: ポリエステル薄膜を一時間、220℃の温度環境に置くことを10回繰り返す。A4寸法の薄膜で反り変形量(mm)を観察する。
【0063】
薄膜亀裂試験(耐熱性): ポリエステル薄膜に対し、220℃、荷重45Kg、3hrの条件でホットプレス試験を行い、評価標準:膜表面がクリアで無劣化の場合、「◎」と評価し;膜表面破裂の場合、「×」と評価する。
【0064】
【表1】
【0065】
[試験結果]
実施例1〜3において、ポリエステル薄膜における各種の物理化学特性は需要に満足する。比較例1は、スクリュー回転速度が低いため、耐高温樹脂材料が均一に分散できない。比較例2は、耐高温樹脂材料の添加量が少ないため、ポリエステル薄膜全体の耐熱性が不足し、ベーク後の反り変形量が高い。比較例3は、薄膜全体の厚さが低いため、薄膜劣化試験の結果が不良である。
【0066】
[実施形態による有益な効果]
本発明による有益な効果の一つは以下に挙げられる。本発明のポリエステル薄膜及びポリエステル薄膜の製造方法によれば、「前記耐高温樹脂材料11が50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法で前記ポリエステル樹脂材料12に分散する」及び「前記耐高温樹脂材料11が50ナノメートル〜200ナノメートルの粒子径寸法で前記ポリエステル樹脂材料12に分散するよう、前記樹脂合金マスターバッチ製造ステップにおいて、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー温度は250℃〜320℃であり、前記二軸スクリュー造粒機の二軸スクリュー回転速度は300rpm〜500rpmである」といった技術的特徴によって、透明度を保ちながら、良好な耐高温及び耐屈曲の特性を有するポリエステル薄膜を最終的に製造することができる。そのため、最終的に製造したポリエステル薄膜は折り畳み携帯電話の保護フィルム、またはプリント基板の高温プロセスに使用される保護フィルムに適用される。
【0067】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施形態に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。そのため、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0068】
100、100’、100’’、100’’’、100’’’’:ポリエステル薄膜
1、1’:耐熱層
11:耐高温樹脂材料
12:ポリエステル樹脂材料
2:ポリエステル樹脂基層
21:別のポリエステル樹脂材料
D1、D2、D3:厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6