特許第6945692号(P6945692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6945692ブロック共重合体、組成物およびフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945692
(24)【登録日】2021年9月16日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】ブロック共重合体、組成物およびフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20210927BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20210927BHJP
   C08G 18/63 20060101ALI20210927BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20210927BHJP
   C09D 153/00 20060101ALI20210927BHJP
   C09D 133/08 20060101ALI20210927BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20210927BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   C08F293/00
   C08G59/40
   C08G18/63 030
   C09D5/00 D
   C09D153/00
   C09D133/08
   C09J133/08
   C09J153/00
【請求項の数】8
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2020-112548(P2020-112548)
(22)【出願日】2020年6月30日
(62)【分割の表示】特願2018-528513(P2018-528513)の分割
【原出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2020-169336(P2020-169336A)
(43)【公開日】2020年10月15日
【審査請求日】2020年6月30日
(31)【優先権主張番号】特願2016-143721(P2016-143721)
(32)【優先日】2016年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】石飛 宏幸
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−514425(JP,A)
【文献】 特開2002−080513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C08G 59/40
C08G 18/63
C09D 5/00
C09D 153/00
C09D 133/08
C09J 133/08
C09J 153/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック共重合体を含有する組成物であって、
前記組成物が、プライマー組成物、表面改質組成物、接着剤組成物、または、粘着剤組成物であり、
前記ブロック共重合体が、多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、ビニルモノマーに由来する構造単位を有するBブロックとを有するA−B−A型ブロック共重合体であり
前記AブロックとしてA1ブロックとA2ブロックとを有し、これらの質量比(A1/A2)が0.4以上であり、
前記Aブロックの平均ガラス転移温度が25℃以上、150℃以下であり、
前記Aブロック中の前記多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーに由来する構造単位の含有量が、前記Aブロック100質量%中において、40質量%以上であり、
前記多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーが、1−アダマンチルアクリレート、2−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、ノルボルニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、および、ジシクロペンテニルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記Bブロックのビニルモノマーに由来する構造単位を構成するビニルモノマーが、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、炭素数1〜10の脂肪族アルキル基を有する(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、および、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記Bブロックのガラス転移温度が前記Aブロックの平均ガラス転移温度よりも低く、前記Aブロックの平均ガラス転移温度と前記Bブロックのガラス転移温度との差が50℃以上、150℃以下であり、
前記Bブロックの含有率が、前記ブロック共重合体全体100質量%中において、5質量%〜60質量%であり、
前記ブロック共重合体の分子量分布(PDI)が、2.0以下であることを特徴とする組成物
【請求項2】
前記各Aブロックのガラス転移温度が、25℃以上、150℃以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体の重量平均分子量が、3,000〜1,000,000である請求項1または2に記載の組成物
【請求項4】
前記Aブロックが、反応性官能基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を有し、
前記反応性官能基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基またはエポキシ基であり、
前記Aブロック中の前記反応性官能基を有するビニルモノマーに由来する構造単位の含有率が、前記Aブロック100質量%中において、0.1質量%〜5.0質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物
【請求項5】
前記ブロック共重合体が、リビングラジカル重合により重合されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物
【請求項6】
前記ブロック共重合体は、最も高いガラス転移温度を有するAブロックのガラス転移温度(TgAmax)と最も低いガラス転移温度を有するAブロックのガラス転移温度(TgAmin)との差が、0℃以上、50℃未満である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
基材と、前記基材の少なくとも片面における少なくとも一部に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物から形成された層とを有することを特徴とするフィルム。
【請求項8】
前記基材が、ポリオレフィン系樹脂である請求項7に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体、前記ブロック共重合体を含有する組成物、および、前記組成物から形成された層を有するフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂(以下、「PP」ともいう。)およびポリエチレン樹脂(以下、「PE」ともいう。)は、安価であり、成形性、耐薬品性、耐水性、電気特性等が優れた汎用性樹脂である。このPP、PEは、自動車、家電、農業、印刷等の用途において広く用いられている。また、シクロオレフィン樹脂(以下、「COP」ともいう。)は、高透明性、低吸湿性、低比重等の優れた特徴を有している。このCOPは、ガラス代替材料、透明プラスチックス代替材料として、ディスプレイ、タッチパネル等の光学部材に用いられている。しかし、PP、PE、COP等のポリオレフィン系樹脂は、極性が小さく、部材表面に存在する官能基が少ないため、塗装、接着等が困難である。
【0003】
上記問題を解決する方法として、被着体(ポリオレフィン系樹脂)表面に、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の物理的処理、有機溶剤による化学的処理を施して、付着性を改良する方法が知られている。例えば、特許文献1では、有機溶剤による化学的処理が提案されている(特許文献1(段落0019、0023)参照)。しかし、物理的処理は特殊な装置を必要とし、物理刺激によるフィルム性能の低下のおそれがあるという問題がある。化学的処理は、有機溶剤により表面を溶解、膨潤するためフィルム性能の低下するおそれがあり、また、溶剤比率、処理時間等の品質管理が煩雑であるという問題がある。
【0004】
また、表面処理を行わずに接着性を高める方法として、特許文献2では、ポリオレフィン系樹脂に対して強い付着力を有する塩素化ポリオレフィン樹脂をプライマーまたは接着剤として用いることが提案されている(特許文献2(段落0008、0012)参照)。しかし、塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素を含んでいるため、昨今の環境問題への関心の高まりからその使用は回避される傾向にある。
【0005】
ところで、(メタ)アクリル系樹脂は、ディスプレイ、タッチパネル等の光学部材用の粘着剤、接着剤、プライマー、光学部材のハードコート用組成物として幅広く用いられている。この(メタ)アクリル系樹脂は、塩素を含まず、その原料となる単量体の種類が豊富であり、硬度、透明性、耐候性、耐薬品性等の物理的性質、化学的性質を任意にコントロールすることができる。しかしながら、(メタ)アクリル系樹脂は、極性が高い材料であるため、ポリオレフィン系樹脂よりなる部材には適さない。
【0006】
そこで、(メタ)アクリル系樹脂のポリオレフィン系樹脂に対する付着性を改善する技術が提案されている。例えば、特許文献3では、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含有する重合体を含有するプライマー組成物が記載されている(特許文献3(請求項1)参照)。特許文献4では、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基に脂環式炭化水素基が結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体を有する重合体と、粘着付与樹脂とを含有する組成物が記載されている(特許文献4(段落0008、0009)参照)。特許文献5では、アクリル系ポリマーと、三環以上の脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマーをモノマー単位として含む(メタ)アクリル系重合体を含有する組成物が記載されている(特許文献5(段落0039−0043)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−114456号公報
【特許文献2】特開平6−306227号公報
【特許文献3】国際公開第2004/018575号
【特許文献4】特開2008−239768号公報
【特許文献5】特開2014−74179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、(メタ)アクリル系樹脂のポリオレフィン系樹脂に対する付着性を改善する技術が提案されている。しかしながら、特許文献3〜5の方法でも、ポリオレフィン系樹脂に対する粘着力、接着力が低いという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、塩素を含む化合物を使用することなく、金属、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、トリアセチルセルロース等の高極性材料だけでなく、ポリオレフィン系樹脂等の低極性材料に対しても強い付着力(密着性)を有するブロック共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することができた本発明のブロック共重合体は、多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、ビニルモノマーに由来する構造単位を有するBブロックとを有し、前記Aブロックの平均ガラス転移温度が25℃以上であり、前記Bブロックの平均ガラス転移温度が前記Aブロックの平均ガラス転移温度よりも低く、前記Aブロックの平均ガラス転移温度と前記Bブロックの平均ガラス転移温度との差が50℃以上であることを特徴とする。
【0011】
Aブロックに多環式脂肪族炭化水素基が局在化していることで、ブロック共重合体の低極性材料(例えば、COPフィルム)に対する密着性(付着力)が向上すると考えられる。また、平均ガラス転移温度が低いBブロックが、ソフトセグメントとして機能し、塗工性、柔軟性が向上すると考えられる。さらに、Bブロックのビニルモノマーの種類を適宜選択することで、高極性材料(例えば、アクリルフィルム)に対する密着性も高めることができる。そのため、前記ブロック共重合体を用いることで、低極性材料と高極性材料との密着性を高めることができる。
【0012】
前記ブロック共重合体は、A−B−A型ブロック共重合体が好ましい。前記多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸多環式脂肪族炭化水素エステルが好ましい。前記Bブロックの含有率は、前記ブロック共重合体全体100質量%中において、5質量%〜60質量%であることが好ましい。前記ブロック共重合体の分子量分布(PDI)は、2.5以下であることが好ましい。前記ブロック共重合体は、リビングラジカル重合により重合されてなるものが好ましい。
【0013】
本発明には、前記ブロック共重合体を含有することを特徴とする組成物も含まれる。このような組成物としては、プライマー組成物、表面改質組成物、接着剤組成物、粘着剤組成物が挙げられる。また、本発明には、基材と、前記基材の少なくとも片面における少なくとも一部に、前記ブロック共重合体を含有する組成物から形成された層とを有することを特徴とするフィルムも含まれる。前記基材は、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塩素を含む化合物を使用することなく、高極性材料だけでなく、低極性材料に対しても強い付着力(密着性)を有するブロック共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示である。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。
【0016】
<1.ブロック共重合体>
ブロック共重合体は、多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、ビニルモノマーに由来する構造単位を有するBブロックとを有する。そして、本発明のブロック共重合体は、前記Aブロックの平均ガラス転移温度が25℃以上であり、前記Bブロックの平均ガラス転移温度が前記Aブロックの平均ガラス転移温度よりも低く、前記Aブロックの平均ガラス転移温度と前記Bブロックの平均ガラス転移温度との差が50℃以上である。
【0017】
前記Aブロックは「Aセグメント」と言い換えることができ、前記Bブロックは「Bセグメント」と言い換えることができる。前記「ビニルモノマー」とは、分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を有するモノマーであり、分子中にビニル基を有するモノマーが好ましい。
【0018】
本明細書において、「ビニルモノマーに由来する構造単位」とは、ビニルモノマーのラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合が炭素−炭素単結合になった構造単位をいう。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」を表し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」を表す。
【0019】
前記ブロックのガラス転移温度(Tg)とは、下記FOX式(数式(1))により算出された値である。数式(1)中、Tgはブロックのガラス転移温度(℃)を示す。Tgiはビニルモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(℃)を示す。Wiはブロックを形成する全ビニルモノマーにおけるビニルモノマーiの質量比率を示し、ΣWi=1である。iは1〜nの自然数である。
【0020】
【数1】
【0021】
代表的なホモポリマーのガラス転移温度を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
本発明のブロック共重合体の各種構成成分等について以下説明する。
【0024】
(Aブロック)
Aブロックは、多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を有する。前記多環式脂肪族炭化水素基とは、多環構造を有する脂環式炭化水素基であり、2個以上の脂肪族環(脂環)を有する炭化水素基を意味する。多環構造には、橋かけ環構造、スピロ環構造、縮合環構造が挙げられるが、橋かけ環構造が好ましい。橋かけ環構造は、環を構成する隣り合わない二つの炭素原子が1以上の炭素原子からなる炭素鎖で結ばれた構造である。橋かけ環式脂肪族炭化水素基には、炭素鎖で結ばれた構造以外に、縮合環構造、スピロ環構造を有してもよい。多環式脂肪族炭化水素基は、それを構成する炭素原子の数が、7以上が好ましく、より好ましくは9以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは15以下である。Aブロックに多環式脂肪族炭化水素基が局在化していることで、ブロック共重合体の低極性材料に対する密着性(付着力)が向上する。
【0025】
前記多環式脂肪族炭化水素基の具体例としては、アダマンチル基、2−メチルアダマンチル基、2−エチルアダマンチル基、ノルボルニル基、1−メチル−ノルボルニル基、5,6−ジメチル−ノルボルニル基、イソボルニル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、9−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、ボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基等が挙げられる。これらの中では入手容易性、溶解性、低極性材料に対しての密着性に優れる点等の観点から、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基およびジシクロペンタニル基が好ましい。
【0026】
多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸多環式脂肪族炭化水素エステルであることが好ましい。(メタ)アクリル酸多環式脂肪族炭化水素エステルの具体例としては、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記Aブロックの平均ガラス転移温度(TgAave)は、25℃以上であり、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、250℃以下が好ましく、より好ましくは230℃以下、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。上述のような嵩高い多環構造を有し、平均ガラス転移温度が25℃以上であることで、低極性材料に対して高い密着性を発現できるものと考えられる。前記Aブロックの平均ガラス転移温度は、全てのAブロックのモノマーから算出される値である。
【0028】
前記ブロック共重合体が複数のAブロックを有する場合、各Aブロックのガラス転移温度(TgA)は、25℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、250℃以下が好ましく、より好ましくは230℃以下、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。各Aブロックのガラス転移温度が上記範囲内であれば、低極性材料に対する密着性がより向上する。
【0029】
前記ブロック共重合体がプライマー組成物または表面改質組成物に使用される場合、前記Aブロックの平均ガラス転移温度(TgAave)は、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、250℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。Aブロックの平均ガラス転移温度が上記範囲内であれば、プライマー組成物または表面改質組成物に使用した際に、基材との密着性がより向上する。
【0030】
プライマー組成物または表面改質組成物に使用される前記ブロック共重合体が複数のAブロックを有する場合、各Aブロックのガラス転移温度(TgA)は、60℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上であり、250℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。各Aブロックのガラス転移温度が上記範囲内であれば、プライマー組成物または表面改質組成物に使用した際に、基材との密着性がより向上する。
【0031】
前記ブロック共重合体が接着組成物または粘着組成物に使用される場合、前記Aブロックの平均ガラス転移温度(TgAave)は、25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上であり、60℃未満が好ましく、より好ましくは58℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。Aブロックの平均ガラス転移温度が上記範囲内であれば、接着組成物または粘着組成物に使用した際に、基材と被着体との密着性がより向上する。
【0032】
接着組成物または粘着組成物に使用される前記ブロック共重合体が複数のAブロックを有する場合、各Aブロックのガラス転移温度(TgA)は、60℃未満が好ましく、より好ましくは58℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。全てのAブロックのガラス転移温度(TgA)が60℃未満であれば、接着組成物または粘着組成物に使用した際に、基材と被着体との密着性がより向上する。
【0033】
前記ブロック共重合体が、複数のAブロックを有する場合、最も高いガラス転移温度を有するAブロックのガラス転移温度(TgAmax)と最も低いガラス転移温度を有するAブロックのガラス転移温度(TgAmin)との差は、0℃以上、50℃未満が好ましく、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。
【0034】
前記Aブロックは、多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーに由来する構造単位のみから構成されることも好ましい。前記Aブロックは、Aブロックのガラス転移温度と、得られるブロック共重合体の低極性材料への密着性を保持できる範囲において、多環式脂肪族炭化水素基を有さないビニルモノマーに由来する構造単位(他の構造単位)を含有してもよい。
【0035】
この場合、多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーに由来する構造単位の含有量は、Aブロック100質量%中において、40質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。また、Aブロックに含まれる得る他の構造単位の含有量は、Aブロック100質量%中において60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0036】
Aブロックに含まれ得る他の構造単位は、多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーおよびBブロックを形成するビニルモノマーの全てと共重合し得るビニルモノマーにより形成されるものであれば特に制限はない。Aブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーの具体例としては、芳香族ビニルモノマー、ヒドロキシ基を有するビニルモノマー、カルボキシ基を有するビニルモノマー、スルホン酸基を有するビニルモノマー、リン酸基を有するビニルモノマー、3級アミンを含有するビニルモノマー、4級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマー、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、ビニルアミド、エポキシ基を含有するビニルモノマー、カルボン酸ビニル、α−オレフィン、ジエン類、(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。Aブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、1−ビニルナフタレン等が挙げられる。ヒドロキシ基を有するビニルモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。カルボキシ基を有するビニルモノマーとしては、前記ヒドロキシ基を有するビニルモノマーに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸が挙げられる。スルホン酸基を有するビニルモノマーとしては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジスルホン酸エチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スルホン酸エチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。リン酸基を有するビニルモノマーとしては、メタクリロイロキシエチルリン酸エステル等が挙げられる。3級アミンを含有するビニルモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。4級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマーとしては、N−2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、N−メタクリロイルアミノエチル−N,N,N−ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。ヘテロ環を含有するビニルモノマーとしては、2−ビニルチオフェン、N−メチル−2−ビニルピロール、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。ビニルアミドとしては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−ε−カプトラクタム等が挙げられる。エポキシ基を含有するビニルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。カルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。α−オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。ジエン類としては、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸脂肪族アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル)エステル、(メタ)アクリル酸脂環族アルキル(単環構造)エステル、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、スルホン酸基を有する(メタ)アクリレート、3級アミンを含有する(メタ)アクリレート、エポキシ基を含有する(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、芳香環基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリル酸脂肪族アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸脂環族アルキルエステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。スルホン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、ジスルホン酸エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。3級アミン含有不飽和モノマーとしては、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。エポキシ基を含有する(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレートとしては、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香環基を有する(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、Aブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーとしては、脂肪族アルキル基を有する(メタ)アクリレート、単環構造の脂環族アルキル基を有する(メタ)アクリレート、芳香族ビニルモノマー、ヒドロキシ基を有するビニルモノマー、カルボキシ基を有するビニルモノマーが好ましい。
【0041】
前記ブロック共重合体がプライマー組成物または表面改質組成物に使用される場合、脂肪族アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量は、Aブロック100質量%中において、15質量%未満が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。Aブロック中の脂肪族アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量が上記範囲内であれば、プライマー組成物または表面改質組成物に使用した際に、基材との密着性がより向上する。
【0042】
前記ブロック共重合体が接着組成物または粘着組成物に使用される場合、脂肪族アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量は、Aブロック100質量%中において、15質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。Aブロック中の脂肪族アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量が上記範囲内であれば、接着組成物または粘着組成物に使用した際に、基材と被着体との密着性がより向上する。
【0043】
また、前記ブロック共重合体が接着組成物または粘着組成物に使用される場合、Aブロックが反応性官能基を有することが好ましい。前記反応性官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基などが挙げられる。前記反応性官能基を導入する場合、反応性官能基をビニルモノマーに由来する構造単位の含有量は、Aブロック100質量%中において、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、5.0質量%以下が好ましく、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である。Aブロック中の反応性官能基を有するビニルモノマーに由来する構造単位の含有量が上記範囲内であれば、接着組成物または粘着組成物に使用した際に、基材と被着体との密着性がより向上する。
【0044】
Aブロックにおいて2種以上の構造単位が含有される場合は、Aブロックに含有される各種構造単位は、Aブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合等の何れの態様で含有されていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。本発明のブロック共重合体は、Aブロックを複数有していてもよい。Aブロックを複数有する場合、それぞれのAブロックのモノマー組成は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
(Bブロック)
Bブロックは、ビニルモノマーに由来する構造単位を有し、多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を実質的に有しない。「実質的に有しない」とは、その含有量がBブロック100質量%中において20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。また、前記Bブロックの平均ガラス転移温度(TgBave)は、前記Aブロックの平均ガラス転移温度(TgAave)よりも低く、前記Aブロックの平均ガラス転移温度(TgAave)と前記Bブロックの平均ガラス転移温度(TgBave)との差(TgAave−TgBave)は、50℃以上である。前記差(TgAave−TgBave)は、70℃以上が好ましく、より好ましくは90℃以上であり、250℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。平均ガラス転移温度が低いBブロックは、ソフトセグメントとして機能し、ブロック共重合体の塗工性、柔軟性が向上する。なお、Bブロックの平均ガラス転移温度は、前記数式(1)により計算する。前記Bブロックの平均ガラス転移温度は、全てのBブロックのモノマーから算出される値である。
【0046】
前記Bブロックの平均ガラス転移温度(TgBave)は、−100℃以上が好ましく、より好ましくは−70℃以上、さらに好ましくは−50℃以上であり、60℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。Bブロックの平均ガラス転移温度(TgBave)が−100℃以上であれば低極性材料に対しての塗工性が良化となり、60℃以下であれば高極性材料に対しての塗工性の良化、柔軟性が向上する。
【0047】
前記ブロック共重合体が複数のBブロックを有する場合、各Bブロックのガラス転移温度(TgB)は、−100℃以上が好ましく、より好ましくは−70℃以上、さらに好ましくは−50℃以上であり、60℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。各Bブロックのガラス転移温度(TgB)が−100℃以上であれば低極性材料に対しての塗工性が良化となり、60℃以下であれば高極性材料に対しての塗工性の良化、柔軟性が向上する。
【0048】
前記ブロック共重合体が、複数のBブロックを有する場合、最も高いガラス転移温度を有するBブロックのガラス転移温度(TgBmax)と最も低いガラス転移温度を有するBブロックのガラス転移温度(TgBmin)との差は、0℃以上、50℃未満が好ましく、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。
【0049】
前記ブロック共重合体が、Aブロックおよび/またはBブロックを複数有する場合、Aブロックのガラス転移温度の最小値(TgAmin)とBブロックのガラス転移温度の最大値(TgBmax)との差(TgAmin−TgBmax)は、50℃以上が好ましく、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。また、Aブロックのガラス転移温度の最大値(TgAmax)とBブロックのガラス転移温度の最小値(TgBmin)との差(TgAmax−TgBmin)は、250℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
【0050】
Bブロックに使用するビニルモノマーは、前記ガラス転移温度の要件を満たす範囲において、適宜選択することができる。また、前記ブロック共重合体を、粘着剤組成物、接着剤組成物として使用する場合、選択する被着体(高極性材料)の極性に応じて、Bブロックに使用するビニルモノマーを選択することが好ましい。
【0051】
Bブロックに使用するビニルモノマーの具体例としては、芳香族ビニルモノマー、ヒドロキシ基を有するビニルモノマー、カルボキシ基を有するビニルモノマー、スルホン酸基を有するビニルモノマー、リン酸基を有するビニルモノマー、3級アミンを含有するビニルモノマー、4級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマー、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、ビニルアミド、エポキシ基を含有するビニルモノマー、カルボン酸ビニル、α−オレフィン、ジエン類、(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。Bブロックに使用するビニルモノマーは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、1−ビニルナフタレン等が挙げられる。ヒドロキシ基を有するビニルモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。カルボキシ基を有するビニルモノマーとしては、前記ヒドロキシ基を有するビニルモノマーに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸が挙げられる。スルホン酸基を有するビニルモノマーとしては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジスルホン酸エチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スルホン酸エチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。リン酸基を有するビニルモノマーとしては、メタクリロイロキシエチルリン酸エステル等が挙げられる。3級アミンを含有するビニルモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。4級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマーとしては、N−2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、N−メタクリロイルアミノエチル−N,N,N−ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。ヘテロ環を含有するビニルモノマーとしては、2−ビニルチオフェン、N−メチル−2−ビニルピロール、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。ビニルアミドとしては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−ε−カプトラクタム等が挙げられる。エポキシ基を含有するビニルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。カルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。α−オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。ジエン類としては、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等が挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸脂肪族アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル)エステル、(メタ)アクリル酸脂環族アルキル(単環構造)エステル、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、スルホン酸基を有する(メタ)アクリレート、3級アミンを含有する(メタ)アクリレート、エポキシ基を含有する(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、芳香環基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリル酸脂肪族アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸脂環族アルキルエステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。スルホン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、ジスルホン酸エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。3級アミン含有不飽和モノマーとしては、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。エポキシ基を含有する(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレートとしては、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香環基を有する(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0055】
Bブロックに使用するビニルモノマーとしては、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、(メタ)アクリルモノマーが好ましく、より好ましくはヘテロ環を含有するビニルモノマー、(メタ)アクリル酸脂肪族アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル)エステル、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、さらに好ましくはヘテロ環を含有するビニルモノマー、脂肪族アルキル(炭素数1〜18が好ましく、より好ましくは炭素数1〜10)基を有する(メタ)アクリレートである。
【0056】
Bブロックにおいて2種以上の構造単位が含有される場合は、Bブロックに含有される各種構造単位は、Bブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合等の何れの態様で含有されていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。本発明のブロック共重合体は、Bブロックを複数有していてもよい。Bブロックを複数有する場合、それぞれのBブロックのモノマー組成は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
(ブロック共重合体)
前記ブロック共重合体は、AブロックとBブロックとを有する。前記ブロック共重合体は、AブロックとBブロックのみからなる態様も好ましい。前記ブロック共重合体は、ガラス転移温度、極性等の性質が異なる複数のポリマーブロックを有するため、ブロック共重合体は、塗工された基材表面で相分離を起こすものと考えられる。相分離とは、ブロック共重合体が、ガラス転移温度、極性等の性質の異なるブロックを有する場合に、同種ブロック同士の強い相互作用により、自己集合する現象である。例えば、前記ブロック共重合体の場合、Aブロック同士、Bブロック同士がそれぞれ隣接した相構造を発現する。相分離構造は、ブロック共重合体中の各ブロックの質量比、体積比率、重合度等によって、ラメラ構造、ジャイロ構造、シリンダー構造または海島構造を形成する。なお、相分離構造は、特に限定されない。
【0058】
多環式脂肪族炭化水素基がAブロックに局在化していることで、ブロック共重合体は低極性材料に対して高い密着性(付着力)を有する。また、前記相分離によりAブロック同士が物理的に擬似架橋を形成し更に優れた凝集力が発現すると考えられる。また、ガラス転移温度が低いBブロックがソフトセグメントとして機能し、ブロック共重合体の塗工性、柔軟性が向上する。さらに、Bブロックのビニルモノマーの種類を適宜選択することで、低極性材料の表面性を制御し、高極性材料との密着性を改善できるものと考えられる。
【0059】
本発明のブロック共重合体の構造は、線状ブロック共重合体、分岐状(星状)ブロック共重合体、またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、求められる共重合体の物性に応じて適宜選択すればよいが、コスト面、重合容易性の観点から、線状ブロック共重合体であることが好ましい。また、線状ブロック共重合体は、いずれの構造(配列)であっても良いが、線状ブロック共重合体の物性、または組成物の物性の観点から、AブロックをA、BブロックをBと表現したとき、(A−B)n型、(A−B)n−A型、(B−A)n−B型(nは1以上の整数、例えば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種の構造を持つ共重合体であることが好ましい。これらの構造において、AブロックとBブロックとは直接結合していてもよいし、これらのAブロックとBブロックとの間に、AブロックおよびBブロック以外の他のブロックが存在していてもよい。
【0060】
線状ブロック共重合体としては、第一のAブロックと、この第一のAブロックに直接または他のブロックを介して結合するBブロックと、このBブロックに直接または他のブロックを介して結合する第二のAブロックとを有する構造;第一のBブロックと、この第一のBブロックに直接または他のブロックを介して結合するAブロックと、このAブロックに直接または他のブロックを介して結合する第二のBブロックとを有する構造;が好ましい。前記第一のAブロックおよび第二のAブロックを有する構造では、第一のAブロックおよび第二のAブロックが、それぞれブロック共重合体の末端に存在することが好ましい。前記第一のBブロックおよび第二のBブロックを有する構造では、第一のBブロックおよび第二のBブロックが、それぞれブロック共重合体の末端に存在することが好ましい。
【0061】
これらの中でも、加工時の取扱い性、組成物の物性の観点から、A−Bで表されるジブロック共重合体、A−B−Aで表されるトリブロック共重合体、B−A−Bで表されるトリブロック共重合体が好ましく、さらに好ましくはA−B−Aで表されるトリブロック共重合体である。A−B−Aで表されるトリブロック体構造を構成することで、Aブロック同士の擬似架橋により共重合体同士の架橋構造がより高度なものとなる。よって、ポリマー層の凝集力が向上し、より高い密着性(付着力)が発現することができるものと考えられる。なお、A−B−Aで表されるトリブロック共重合体である場合、両端に位置する2つのAブロックは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、B−A−Bで表されるトリブロック共重合体である場合、両端に位置する2つのBブロックは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0062】
ブロック共重合体の平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定する。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、3,000以上が好ましく、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは800,000以下、さらに好ましくは500,000以下である。重量平均分子量が3,000以上であれば、密着性(付着力)が良好となり、重量平均分子量が1,000,000以下であれば、粘度が高くなりすぎず、塗工性が良好となる。
【0063】
前記ブロック共重合体がプライマー組成物または表面改質組成物に使用される場合、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、3,000以上が好ましく、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、200,000以下が好ましく、より好ましくは150,000以下、さらに好ましくは100,000以下、特に好ましくは80,000未満である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、プライマー組成物または表面改質組成物に使用した際に、基材との密着性がより向上する。
【0064】
前記ブロック共重合体が接着組成物または粘着組成物に使用される場合、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、3,000以上が好ましく、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは80,000以上であり、800,000以下が好ましく、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは300,000以下、特に好ましくは100,000以下である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、接着組成物または粘着組成物に使用した際に、基材と被着体との密着性がより向上する。
【0065】
ブロック共重合体の分子量分布(PDI)は、2.5以下が好ましく、より好ましくは2.2以下、さらに好ましくは2.0以下である。なお、本発明において、分子量分布(PDI)とは、(ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw))/(ブロック共重合体の数平均分子量(Mn))によって求められる。PDIが小さいほど分子量分布の幅が狭い、分子量のそろった共共重合体となり、その値が1.0のとき最も分子量分布の幅が狭い。PDIが2.5以下であれば、設計した共重合体の分子量に比べて、分子量の小さいものや、分子量の大きいものの含有量が低く、密着性(付着力)が向上する。
【0066】
前記ブロック共重合体中のAブロックの含有率は、ブロック共重合体全体100質量%中において40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。前記各ブロックの含有率は、ブロック共重合体を構成するモノマーの仕込み比および各モノマーの重合率から求める。
【0067】
前記ブロック共重合体中のBブロックの含有率は、ブロック共重合体全体100質量%中において5質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、60質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0068】
AブロックおよびBブロックの含有量を、前記範囲内に調整することで、目的の機能を有するブロック共重合体を調整することができる。ブロック共重合体がAブロックとしてA1ブロックとA2ブロックを有する場合、これらの質量比(A1/A2)は、0.4以上が好ましく、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、2.3以下が好ましく、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。
【0069】
ブロック共重合体がBブロックとしてB1ブロックとB2ブロックを有する場合、これらの質量比(B1/B2)は、0.4以上が好ましく、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、2.3以下が好ましく、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。
【0070】
本発明のブロック共重合体は、高極性材料だけでなく、ポリオレフィン系樹脂等の低極性材料に対しても強い付着力(密着性)を有する。よって、本発明のブロック共重合体は、低極性材料と高極性材料とを固定する際のプライマー組成物、接着剤組成物、粘着剤組成物として使用できる。また、本発明のブロック共重合体は、アクリル系粘着剤の粘着性付与剤として使用できる。
【0071】
(ブロック共重合体の製造方法)
本発明のブロック共重合体の製造方法としては、ビニルモノマーの重合反応によって、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックのモノマーを重合してもよく;Bブロックを先に製造し、BブロックにAブロックのモノマーを重合してもよく;ABブロックを製造し、ABブロックにさらにAブロックのモノマーを重合してABAブロックを製造してもよく;またはBAブロックを製造し、BAブロックにさらにBブロックのモノマーを重合してBABブロックを製造してもよい。
【0072】
重合法は特に限定されないが、リビングラジカル重合が好ましい。すなわち、前記ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合により重合されたものが好ましい。従来のラジカル重合法は、開始反応、成長反応だけでなく、停止反応、連鎖移動反応により成長末端の失活が起こり、様々な分子量、不均一な組成のポリマーの混合物となり易い傾向がある。これに対してリビングラジカル重合法は、従来のラジカル重合法の簡便性と汎用性を保ちながら、停止反応や、連鎖移動が起こりにくく、成長末端が失活することなく成長するため、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーの製造が容易である点で好ましい。
【0073】
リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法);硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT法);有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)等の方法がある。ATRP法は、アミン系錯体を使用するため、酸性基を有するビニルモノマーの酸性基を保護せず使用することができない場合がある。RAFT法は、多種のモノマーを使用した場合、低分子量分布になりづらく、かつ硫黄臭や着色等の不具合がある場合がある。これらの方法のなかでも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御、均一な組成、あるいは着色の観点から、TERP法を用いることが好ましい。
【0074】
また、リビングラジカル重合法、特にTERP法は、ポリマー鎖が均一にモノマーと反応しながら重合し、擬似架橋構造を形成する多環式脂肪族炭化水素基を有する構造単位等の全てのポリマーの組成は均一に近づき、多環式脂肪族炭化水素基が擬似架橋に関与する確立があがるため好ましい。
【0075】
TERP法とは、有機テルル化合物を重合開始剤として用い、ラジカル重合性化合物(ビニルモノマー)を重合させる方法であり、例えば、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された方法である。
【0076】
TERP法の具体的な重合法としては、下記(a)〜(d)が挙げられる。
(a)ビニルモノマーを、一般式(1)で表される有機テルル化合物を用いて重合する。
(b)ビニルモノマーを、一般式(1)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との混合物を用いて重合する。
(c)ビニルモノマーを、一般式(1)で表される有機テルル化合物と一般式(2)で表される有機ジテルル化合物との混合物を用いて重合する。
(d)ビニルモノマーを、一般式(1)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と一般式(2)で表される有機ジテルル化合物との混合物を用いて重合する。
【0077】
【化1】
[一般式(1)において、R1は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を示す。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。R4は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基を示す。
一般式(2)において、R5は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を示す。]
【0078】
1で表される基は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0079】
2およびR3で表される基は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、各基は、具体的には次の通りである。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0080】
4で表される基は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましくはフェニル基である。
置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等を挙げることができる。前記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−COR41で示されるカルボニル含有基(R41は炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基またはアリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、1個または2個置換しているのがよい。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、−CONR421422(R421、R422は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基)を挙げることがきる。
オキシカルボニル基としては、−COOR43(R43は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。
アリル基としては、−CR441442−CR443=CR444445(R441、R442は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基、R443、R444、R445は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基であり、それぞれの置換基が環状構造で繋がっていてもよい)等を挙げることができる。
プロパルギル基としては、−CR451452−C≡CR453(R451、R452は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基、R453は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基またはシリル基)等を挙げることができる。
【0081】
一般式(1)で表される有機テルル化合物は、具体的には(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート、エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート、(2−トリメチルシロキシエチル)−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート、(2−ヒドロキシエチル)−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネートまたは(3−トリメチルシリルプロパルギル)−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート等、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された有機テルル化合物の全てを例示することができる。
【0082】
5で表される基は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0083】
一般式(2)で表される有機ジテルル化合物の具体例としては、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−s−ブチルジテルリド、ジ−t−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリドまたはジピリジルジテルリド等を例示することができる。
【0084】
アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、または2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等を例示することができる。
【0085】
重合工程は、不活性ガスで置換した容器で、ビニルモノマーと式(1)の有機テルル化合物とに、ビニルモノマーの種類に応じて反応促進、分子量および分子量分布の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤および/または式(2)の有機ジテルル化合物を混合する。このとき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。
【0086】
前記(a)、(b)、(c)および(d)におけるビニルモノマーの使用量は、目的とする共重合体の物性により適宜調節すればよい。一般式(1)の有機テルル化合物1molに対しビニルモノマーを5mol〜10000molとすることが好ましい。
【0087】
前記(b)の一般式(1)の有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、一般式(1)の有機テルル化合物1molに対してアゾ系重合開始剤を0.01mol〜10molとすることが好ましい。
【0088】
前記(c)の一般式(1)の有機テルル化合物と一般式(2)の有機ジテルル化合物とを併用する場合、一般式(1)の有機テルル化合物1molに対して一般式(2)の有機ジテルル化合物を0.01mol〜100molとすることが好ましい。
【0089】
前記(d)の一般式(1)の有機テルル化合物と一般式(2)の有機ジテルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、一般式(1)の有機テルル化合物と一般式(2)の有機ジテルル化合物の合計1molに対してアゾ系重合開始剤を0.01mol〜100molとすることが好ましい。
【0090】
重合反応は、無溶媒でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される非プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒を使用し、前記混合物を撹拌して行なってもよい。使用できる非プロトン性溶媒は、例えば、アニソール、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、ジオキサン、ヘキサフルオロイソプロパオール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはトリフルオロメチルベンゼン等を例示することができる。また、プロトン性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノールまたはジアセトンアルコール等を例示することができる。
【0091】
溶媒の使用量としては、適宜調節すればよく、例えば、ビニルモノマー1gに対して、0.01ml以上が好ましく、より好ましくは0.05ml以上、さらに好ましくは0.1ml以上であり、50ml以下が好ましく、より好ましくは10ml以下、さらに好ましくは1ml以下である。
【0092】
重合反応は、ビニルモノマーと、前記一般式(1)の有機テルル化合物等を混合し、撹拌することで行うことができる。反応温度、反応時間は、得られる共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、0〜150℃で、1分〜100時間撹拌する。TERP法は、低い重合温度および短い重合時間であっても高い収率と精密な分子量分布を得ることができる。このとき、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧または減圧しても構わない。
【0093】
重合反応の終了後、得られた反応混合物から、通常の分離精製手段により使用溶媒、残存ビニルモノマーの除去等を行い、目的とする共重合体を分離することができる。
【0094】
本発明のブロック共重合体は、例えば、リビングラジカル重合法でブロックを構成するビニルモノマーを順次重合反応させることにより得られることができる。具体的には、ABAブロックの場合、リビングラジカル重合法で、2つのAブロックのうち一方のブロックを構成するビニルモノマーを重合して、一方のAブロックを重合する工程と、一方のAブロックを重合した後、Bブロックを構成するビニルモノマーを重合して、Bブロックを重合する工程と、Bブロックを重合した後、2つのAブロックのうちの他方のブロックを構成するビニルモノマーを重合して、他方のAブロックを重合する工程とを備えた重合方法が挙げられる。
【0095】
重合反応により得られる共重合体の成長末端は、テルル化合物由来の−TeR1(式中、R1は上記と同じである)の形態であり、重合反応終了後の空気中の操作により失活していくが、テルル原子が残存する場合がある。テルル原子が末端に残存した共重合体は着色したり、熱安定性が劣ったりするため、テルル原子を除去することが好ましい。
【0096】
テルル原子を除去する方法としては、トリブチルスタンナンまたはチオール化合物等を用いるラジカル還元方法;活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、モレキュラーシーブスおよび高分子吸着剤等で吸着する方法;イオン交換樹脂等で金属を吸着する方法;過酸化水素水または過酸化ベンゾイル等の過酸化物を添加したり、空気または酸素を系中に吹き込むことで共重合体末端のテルル原子を酸化分解させ、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留テルル化合物を除去する液−液抽出法や固−液抽出法;特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限界ろ過等の溶液状態での精製方法;を用いることができ、また、これらの方法を組み合わせて用いることもできる。
【0097】
<2.組成物>
前記ブロック共重合体は、ブロック共重合体を含有する組成物として使用することができる。前記組成物は、前記ブロック共重合体に加えて、有機溶剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)、カップリング剤、防腐剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤、架橋剤、フィラー等の添加剤を含有してもよい。前記組成物は、用途に応じて添加剤を適宜調整することで、プライマー組成物、表面改質組成物、接着剤組成物、粘着剤組成物等として用いることができる。
【0098】
前記組成物は、塩素を含む化合物を使用することなく、高極性材料だけでなく、低極性材料に対しても強い付着力(密着性)を有する。そのため、前記組成物を低極性材料からなるフィルム、成形品の表面に塗工することで、低極性材料への密着性が乏しい高極性材料の塗装、接着等が可能となる。特に、本発明の組成物は、低極性材料の中でもポリオレフィン系樹脂に対して好適に用いることができる。
【0099】
(プライマー組成物)
前記組成物をプライマー組成物とする場合、プライマー組成物は、前記ブロック共重合体と溶媒とを含有することが好ましい。前記プライマー組成物を、例えば、低極性材料表面に塗工することで、低極性材料表面に対する高極性材料の付着性を改良することができる。具体的には、低極性材料表面について、光学部材に幅広く使用されているハードコート用組成物の塗工や、高極性材料からなるフィルムの貼合が可能となる。
【0100】
前記溶媒としては、水、有機溶媒またはそれらの混合溶媒が用いられる。特に、プライマー組成物の塗工性を良好にするため、ブロック共重合体およびその他添加剤成分が可溶な有機溶媒を配合することが好ましい。また、プライマー組成物の取扱い性の観点から、ブロック共重合体および他の固形成分の合計濃度は50質量%以下とすることが好ましい。なお、前記溶媒は、プライマー組成物が塗布される基材(フィルム等)の性能を損ねないものが好ましい。
【0101】
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素化合物;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物;等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
(表面改質組成物)
前記プライマー組成物に各種添加剤を配合することで表面改質組成物としても使用できる。前記表面改質組成物としては、例えば、前記ブロック共重合体、溶媒、ハードコート剤を含有するハードコート用組成物が挙げられる。ハードコート用組成物を用いれば、低極性材料表面に、高極性材料を含有するハードコート層を直接形成できる。
【0103】
前記溶媒としては、プライマー組成物と同様のものが使用できる。前記ハードコート剤としては、例えば、アクリル系材料が挙げられる。アクリル系材料としては、特に限定されないが、例えば、モノマー系ラジカル重合タイプの1官能アクリレート、2官能アクリレート、3官能アクリレート、および4〜6官能アクリレート;オリゴマー系ラジカル重合タイプのエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、共重合系アクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、アミノ樹脂アクリレート等が挙げられる。アクリル系材料は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
ハードコート剤の硬化タイプとしては、特に限定されないが、例えば、光化学反応による紫外線(UV)硬化型;常温硬化型および二液反応硬化型の熱硬化型等が上げられる。すなわち、ハードコート剤としては、特に限定されないが、例えば、一般に知られているUV硬化樹脂型、ウレタン系樹脂、縮合系樹脂が挙げられる。
【0105】
(接着組成物)
前記組成物を接着剤組成物とする場合、接着剤組成物は、前記ブロック共重合体に加えて、エポキシ樹脂、硬化剤を配合することが好ましい。また、接着剤組成物は、硬化促進剤等を含有してもよい。前記接着剤組成物は、低極性材料と高極性材料との接着性に優れる。
【0106】
前記エポキシ樹脂としては、特に限定はなく、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂等の二官能以上のエポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の三官能以上のエポキシ樹脂が挙げられる。二官能以上とは、1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ樹脂である。三官能以上とは、1分子中にエポキシ基を3個以上含有するエポキシ樹脂である。
【0107】
前記エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に限定はなく、アミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化硼素、およびフェノール性ヒドロキシ基を1分子中に2個以上含有する化合物であるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSや、フェノール樹脂を挙げることができる。
【0108】
また、接着剤組成物は、塗工性を良好にするため、ブロック共重合体およびその他添加剤成分が可溶な有機溶媒を配合することが好ましい。この場合、接着剤組成物の取扱い性の観点から、ブロック共重合体および他の固形成分の合計濃度は50質量%以下とすることが好ましい。
【0109】
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0110】
(粘着組成物)
前記組成物を粘着剤組成物とする場合、粘着剤組成物は、前記ブロック共重合体と架橋剤とを含有することが好ましい。ブロック共重合体が有する反応性官能基と反応し得る架橋剤を混合し架橋することで、凝集力や密着性を更に向上することができる。架橋剤としては、特に限定はなく、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、ビニル基を有するウレタンアクリレート系架橋剤、オキサゾリン基を有する樹脂架橋剤、金属キレート型架橋剤、金属塩、金属アルコキシド、金属キレート化合物、アンモニウム塩、ヒドラジン化合物、アクリル系ポリマーシロップ等を挙げることができる。
【0111】
前記粘着剤組成物において、架橋剤の含有量は、前記ブロック共重合体100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、粘着力が良好となる。
【0112】
前記イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む。)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。前記イソシアネート系架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体などのイソシアネート付加物;キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物;ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物;ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネート;などが挙げられる。
【0114】
前記架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を使用する場合、イソシアネート系架橋剤の含有量は、前記ブロック共重合体100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、粘着力が良好となる。
【0115】
前記エポキシ系架橋剤は、エポキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能エポキシ化合物をいう。前記エポキシ系架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0116】
前記架橋剤としてエポキシ系架橋剤を使用する場合、エポキシ系架橋剤の含有量は、前記ブロック共重合体100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、5質量部以下が好ましく、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、粘着力が良好となる。
【0117】
前記粘着剤組成物は、必要に応じて、架橋促進剤、粘着付与剤等を混合してもよい。前記架橋促進剤としては、特に限定はなく、有機スズ、第3級アミン、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の公知の触媒や、エポキシ系化合物の場合ではトリフェニルホスフィン等のリン酸触媒を挙げることができる。前記粘着付与剤としては、特に限定はなく、重合ロジン、ロジンエステル類、C5系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、テルペン系石油樹脂、またはこれらの水添樹脂や、低分子量スチレン樹脂、低分子量α−メチルスチレン樹脂等を挙げることができる。
【0118】
前記粘着剤組成物は、塗工性を良好するためブロック共重合体およびその他添加剤成分が可溶な有機溶媒を配合することが好ましい。この場合、粘着剤組成物の取扱い性の観点から、ブロック共重合体および他の固形成分の合計濃度は50質量%以下とすることが好ましい。
【0119】
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
<3.フィルム>
本発明のフィルムは、基材と、前記基材の少なくとも片面における少なくとも一部に、前記組成物から形成された層とを有することを特徴とする。
【0121】
前記基材としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、シクロオレフィン樹脂(COP)等のポリオレフィン系樹脂等の低極性材料;金属、ガラス、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、トリアセチルセルロース等の高極性材料;が挙げられる。基材の形状としては、フィルム(テープ、シートを含む)が挙げられる。
【0122】
前記組成物から形成された層としては、プライマー層、表面改質層(例えば、ハードコート層)、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。
【0123】
前記プライマー層は、前記プライマー組成物を、基材に塗工し、乾燥させることにより形成できる。塗工方法としては、特に限定されないが、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、キスコート法、ワイヤーバーコード法、カーテンコート法、ディップコート法、バーコート法が挙げられる。塗工後の加熱乾燥温度は、基材の材質や用途によりも異なるが、基材の変形を抑えるため200℃以下であることが好ましく、ブロック共重合体の相分離の観点から25℃以上であることが好ましい。プライマー層の厚さ(乾燥後の厚さ)は、特に限定されないが、好ましくは10nm〜10μmである。
【0124】
前記表面改質層(例えば、ハードコート層)は、前記ハードコート用組成物を、基材に塗工し、乾燥させ、ハードコート剤を硬化させることにより形成できる。前記ハードコート用組成物の塗工方法は特に限定されないが、上記プライマー組成物と同様の方法が採用できる。ハードコート剤を硬化させる方法は、ハードコート剤に応じて適宜選択すればよい。
【0125】
前記接着剤層は、前記接着剤組成物を、基材に塗工し、乾燥させることにより形成できる。前記接着剤組成物の塗工方法としては、特に限定されないが、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、キスコート法、ワイヤーバーコード法、カーテンコート法、ディップコート法、バーコート法が挙げられる。前記乾燥条件としては、使用した溶剤が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常50℃〜200℃で、0.1分間〜60分間加熱することが好ましい。
【0126】
前記接着剤層を介して基材と被着体とを接着する場合、基材と被着体とを圧着し、接着層を加熱硬化させることで接着できる。圧着は、例えば、ロールラミネーター、平板プレス、ウエハラミネーター、真空ラミネーター、弾性体プレス、オートクレーブを使用できる。加圧条件としては、0.01MPa〜5.0MPaの圧力で、0.1分間〜5分間行なうことが好ましい。加熱硬化条件としては、接着剤組成物が硬化する条件であれば特に制限はないが、通常50℃〜200℃で、0.1分間〜180分間加熱することが好ましい。
【0127】
前記粘着剤層は、前記粘着剤組成物を基材に塗工した後、硬化処理を適宜施すことにより形成できる。前記粘着剤組成物の塗工は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。なお、粘着層は、基材に粘着剤組成物を直接塗工して粘着剤層を形成してもよいが、剥離ライナー上に形成した粘着剤層を基材に転写しても良い。前記粘着剤層の厚さは特に限定されないが、1μm〜200μmが好ましい。
【0128】
前記粘着剤組成物に対して二種以上の硬化処理(乾燥、架橋、重合等)を行う場合、これらは、同時に、または多段階に行うことができる。部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を用いた粘着剤組成物では、硬化処理として、最終的に共重合反応が行われる(部分重合を更なる共重合反応に供して完全重合物を形成する)。光硬化性の粘着剤組成物であれば、光照射が実施される。必要に応じて、架橋、乾燥等の硬化処理が実施されても良い。例えば、光硬化性粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合は、乾燥後に光硬化を行うとよい。完全重合物を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、必要に応じて乾燥(加熱乾燥)、架橋等の処理が実施される。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが何らこれらに限定されるものではない。また、各種物性測定は以下の機器により測定を行った。なお、略語の意味は下記のとおりである。
BTEE:エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート
AIBN:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)
IBXA:イソボルニルアクリレート
DCPTAA:ジシクロペンタニルアクリレート
CHA:シクロへキシルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
MA:メチルアクリレート
MEA:メトキシエチルアクリレート
DMAAm:N,N−ジメチルアクリルアミド
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
AA:アクリル酸
VP:ビニルピロリドン
Ani:アニソール
MP:1−メトキシ−2−プロパノール
MeOH:メタノール
【0130】
(重合率)
核磁気共鳴(NMR)測定装置(Bruker社製、型式AVANCE 500(周波数500MHz))を用いて、H−NMRを測定(溶媒:重水素化クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン)した。得られたNMRスペクトルについて、モノマー由来のビニル基と、ポリマーに由来するピークの積分比を求め、各モノマーの重合率を算出した。
【0131】
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(PDI))
高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、型式HLC−8320GPC)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。カラムとしてTSKgel SuperMultipore HZ−H(Φ4.6mm×150mm)(東ソー社製)を2本、移動相にテトラヒドロフラン、検出器に示差屈折率検出器を使用した。測定条件は、カラム温度を40℃、試料濃度を1mg/mL、試料注入量を10μL、流速を0.35mL/minとした。標準物質としてポリスチレン(東ソー社製、TSK Standard)を使用して検量線(校正曲線)を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、これらの測定値から分子量分布(PDI)を算出した。
【0132】
<共重合体の製造>
(ブロック共重合体No.1)
アルゴンガス導入管、撹拌翼を供えたフラスコに、BTEE 42.7mg、IBXA 3.70g、AIBN 4.7mg、アニソール3.50gを仕込み、60℃で24時間反応させA1ブロックを重合した。IBXAの重合率は99%であった。得られたA1ブロックのMwは19,920、PDIは1.33であった。
【0133】
反応液に、予めアルゴン置換したBA 1.14g、AIBN 4.7mg、アニソール1.20gの混合溶液をさらに加え、60℃で24時間反応させBブロックを重合した。BAの重合率は98%であった。得られたA1−Bブロック共重合体のMwは30,910、PDIは1.34であった。
【0134】
反応液に、予めアルゴン置換したIBXA 3.70g、AIBN 4.7mg、アニソール3.60gの混合溶液をさらに加え、60℃で58時間反応させA2ブロックを重合した。IBXAの重合率は99%であった。得られたA1−B−A2ブロック共重合体のMwは46,810、PDIは1.84であった。反応終了後、反応液に有機溶剤(アニソール等)を加え希釈した。希釈後の反応液を、撹拌下のアセトニトリル中に注ぎ、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを吸引濾過、乾燥することによりブロック共重合体No.1を得た。
【0135】
(ブロック共重合体No.2〜15)
ブロック共重合体No.1の作製方法と同様にしてブロック共重合体No.2〜15を作製した。表2、3に、使用した原料モノマー、有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤、溶媒、重合条件、重合率を示した。また、表4、5に、各ブロック共重合体のMw、PDI等を示した。
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
(ランダム共重合体No.1)
アルゴンガス導入管、撹拌翼を供えたフラスコに、BTEE 41.5mg、IBXA 5.40g、BA 2.90g、AIBN 4.5mg、アニソール7.50gを仕込み、60℃で87時間反応させ重合した。IBXAおよびBAの重合率は100%であった。また、得られたランダム共重合体No.1のMwは62,190、PDIは1.26であった。反応終了後、反応液に有機溶媒(アニソール等)を加えて希釈した。希釈後の反応液を、撹拌下のアセトニトリル中に注ぎ、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを吸引濾過、乾燥することによりランダム共重合体No.1を得た。
【0141】
(ランダム共重合体No.2〜4)
ランダム共重合体No.1の作製方法と同様にしてランダム共重合体No.2〜4を作製した。表6に、使用した原料モノマー、有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤、溶媒、重合条件、重合率、ならびに、各ランダム共重合体のMwおよびPDIを示した。
【0142】
【表6】
【0143】
上記で得たブロック共重合体およびランダム共重合体について、溶解性および基材密着性を評価した。
【0144】
(溶解性)
ブロック共重合体No.2および3、ランダム共重合体No.1および2について、溶媒に対する溶解性を評価した。具体的には、共重合体を、固形分30質量%となるように溶媒(メチルエチルケトン(MEK)または1−メトキシ−2−プロパノール(MP))に加え、23℃で、60分間撹拌した。撹拌後、目視にて溶解性を評価した。溶解性は、均一に溶解しているものを「○」、溶解していないもの(析出、不溶、乳化等)を「×」と評価した。結果を表7に示した。
【0145】
【表7】
【0146】
(基材密着性)
ブロック共重合体No.1〜8および13〜15、ランダム共重合体No.1〜3について、基材に対する密着性を評価した。具体的には、共重合体を、固形分1質量%となるように溶媒(MEK)に混合し、コート剤を作製した。得られたコート剤を、基材上に、バーコーター(ウェット皮膜厚;6.87μm)で塗布し、熱風乾燥器(130℃)中で10分間乾燥させ、コーティング基材を得た。なお、基材の材料には、脂肪族環状ポリオレフィン(COP)またはポリプロピレン(PP)を使用し、基材の厚さは100μmとした。
【0147】
得られたコーティング基材について、コート層を目視で観察し外観を評価した。外観は、白化またははじきがないものを「○」、白化またははじきがあるものを「×」と評価した。また、コート層の表面べたつきを評価した。表面べたつきは、コーティング面を指で押さえて、変化がないものを「○」、指紋が残ったり、コーティング層が付着するものを「×」と評価した。コート層の基材の密着性は、碁盤目テープ法(旧JIS K5400(1990)規格、切り傷の間隔1mm)で評価した。結果を表8に示した。
【0148】
【表8】
【0149】
上記で得たブロック共重合体およびランダム共重合体を用いて、接着剤組成物およびプライマー組成物を作製し、接着性等を評価した。
【0150】
(接着剤組成物)
ブロック共重合体No.9〜14を、固形分10質量%となるように溶媒(MEK)に混合し、接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物を、基材としてのCOPフィルム(厚さ100μm)上に、バーコーター(ウェット皮膜厚;50μm)で塗布し、熱風乾燥器(130℃)中で10分間乾燥させ、接着層(乾燥後の厚さ;2.5μm)を形成した。その後、接着層上に被着体となるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを載せ積層体を得た。この積層体を、プレス機(MP−WCH、東洋精機製作所製)を用いて100℃、1MPaの条件下で3分間熱圧着させて、異種フィルム複合体を作製した。
【0151】
得られた異種フィルム複合体を幅30mm、長さ100mmに切り出し、COPフィルム側面を剛性被着材(SUS板、長さ125mm)に固着して試験片を作製した。なお、前記異種フィルム複合体は、長さ方向の一方端から90mmの位置まで全幅に接着層が形成されている。この試験片について、引張圧縮試験機(SV−52NA、今田製作所製)を用いて、180度剥離試験を行った。前記試験片のたわみ性被着材(PETフィルム)の接着していない端を折返し、剛性被着材およびCOPフィルムを固定つかみで挟み、たわみ性被着材をもう一方のつかみに取り付けた。接着長さが25mm剥離するまで、つかみを50mm/分の速度で移動させ、その時の剥離力(抵抗力)(単位:N/30mm)を測定した。結果を表9に示した。なお、ブロック共重合体No.11〜13については、基材をPETフィルム(厚さ100μm)、被着体をPPフィルム(厚さ50μm)に変更したものについても、同様に試験を行った。
【0152】
【表9】
【0153】
(プライマー組成物)
ブロック共重合体No.2〜4、13および14、ランダム共重合体No.2および4を、固形分1質量%となるように溶媒(MEK)に混合し、プライマー組成物を作製した。得られたプライマー組成物を、コロナ処理を行ったCOPフィルム(厚さ100μm)上に、バーコーター(ウエット皮膜厚;6.87μm)で塗布し、熱風乾燥器(130℃)中で10分間乾燥させ、プライマー層を形成した。次いで、プライマー層上に、ウレタンアクリレート含有のハードコート組成物をバーコーター(ウエット皮膜厚;11.45μm)で塗布し、熱風乾燥器(80℃)中で1分間乾燥させ、ハードコート組成物層を形成した。その後、UV硬化装置(無電極UVランプシステム(LIGHT HAMMER(登録商標)6)、ヘレウス社製)を用いて、ピーク照度900(mW/cm2)、積算光量350(mJ/cm2)の条件で、ハードコート組成物層を硬化させ、COPフィルム上にハードコート層がコーティングされた材料を得た。
【0154】
得られた材料について、基材に対するハードコート層の密着性を碁盤目テープ法(旧JIS K5400(1990)規格、切り傷の間隔1mm)で評価し、結果を表10に示した。また、ハードコート表面層の硬度を耐スチールウール性試験で評価した。耐スチールウール性は、スチールウール番手#0000を丸めて、手動で数回往復させて擦り、傷が全くつかないものを「○」、傷がつくものを「×」と評価した。結果を表10に示した。
【0155】
【表10】
【0156】
(粘着剤組成物)
ブロック共重合体No.11または12を1質量部、溶剤(テトラヒドロフラン)を9質量部、架橋剤を混合して粘着剤組成物を調製した。なお、架橋剤は、架橋剤1(三菱ガス化学社製、TETRAD−X)または架橋剤2(旭化成社製、デュラネート(登録商標)TPA−100)を用いた。また、架橋剤の配合量は、架橋剤1(TETRADーX)の場合は0.021質量部、架橋剤2(D−TPA)の場合は0.0066質量部とした。
【0157】
得られた粘着剤組成物を、基材(厚さ100μm)上に、バーコーター(ウェット皮膜厚;50μm)で塗布し、熱風乾燥器(100℃)中で1分間乾燥し、粘着層(乾燥後の厚さ;2.5μm)を形成した。その後、粘着層上に被着体(厚さ50μm)を載せ、ニップロール(テスター産業株式会社製、SA−1100)を用いて、荷重100kgf(980N)で圧着させて、積層体を得た。この積層体を、23℃、相対湿度50%条件下で架橋させて、異種フィルム複合体を作製した。
【0158】
得られた異種フィルム複合体を幅30mm、長さ100mmに切り出し、基材側面を剛性被着材(SUS板、長さ125mm)に固着して試験片を作製した。なお、前記異種フィルム複合体は、長さ方向の一方端から90mmの位置まで全幅に粘着層が形成されている。この試験片について、前記接着剤組成物と同様に、180度剥離試験を行った。結果を表11に示した。
【0159】
【表11】
【0160】
本発明は下記の態様を含む。
【0161】
態様1
多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、ビニルモノマーに由来する構造単位を有するBブロックとを有し、前記Aブロックの平均ガラス転移温度が25℃以上であり、前記Bブロックの平均ガラス転移温度が前記Aブロックの平均ガラス転移温度よりも低く、前記Aブロックの平均ガラス転移温度と前記Bブロックの平均ガラス転移温度との差が50℃以上であることを特徴とするブロック共重合体。
【0162】
態様2
A−B−A型ブロック共重合体である態様1に記載のブロック共重合体。
【0163】
態様3
前記多環式脂肪族炭化水素基を有するビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸多環式脂肪族炭化水素エステルである態様1または2に記載のブロック共重合体。
【0164】
態様4
前記Bブロックの含有率が、前記ブロック共重合体全体100質量%中において、5質量%〜60質量%である態様1〜3のいずれか一項に記載のブロック共重合体。
【0165】
態様5
前記ブロック共重合体の分子量分布(PDI)が、2.5以下である態様1〜4のいずれか一項に記載のブロック共重合体。
【0166】
態様6
前記ブロック共重合体が、リビングラジカル重合により重合されたものである態様1〜5のいずれか一項に記載のブロック共重合体。
【0167】
態様7
態様1〜6に記載のブロック共重合体を含有することを特徴とする組成物。
【0168】
態様8
基材と、前記基材の少なくとも片面における少なくとも一部に、態様7に記載の組成物から形成された層とを有することを特徴とするフィルム。
【0169】
態様9
前記基材が、ポリオレフィン系樹脂である態様8に記載のフィルム。
【0170】
態様10
プライマー組成物である態様7に記載の組成物。
【0171】
態様11
表面改質組成物である態様7に記載の組成物。
【0172】
態様12
接着剤組成物である態様7に記載の組成物。
【0173】
態様13
粘着剤組成物である態様7に記載の組成物。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明のブロック共重合体は、高極性材料だけでなく、ポリオレフィン系樹脂等の低極性材料に対しても強い付着力(密着性)を有する。よって、本発明のブロック共重合体は、低極性材料と高極性材料とを固定する際のプライマー組成物、接着剤組成物、粘着剤組成物として使用できる。また、本発明のブロック共重合体は、アクリル系粘着剤の粘着性付与剤として使用できる。