【0042】
(1)非導電性微粒子とニッケルイオンと水からなることを特徴とするコンポジットめっき液用の添加剤。
(2)コンポジットめっきがサテンニッケルめっき液およびマイクロポーラスニッケルめっき液である(1)に記載のコンポジットめっき液用の添加剤。
(3)非導電性微粒子がケイ素、バリウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタンの酸化物、窒化物、硫化物および無機塩から選ばれる1種以上である(1)または(2)記載のコンポジットめっき液用の添加剤。
(4)ニッケルイオンの供給源が、硫酸ニッケル6水和物、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケルから1種もしくは2種以上から選択される(1)〜(3)の何れか1記載のコンポジットめっき液用の添加剤。
(5)非導電性微粒子、
ニッケルイオン、
電荷付与剤、界面活性剤および光沢剤から選ばれる1種以上、
からなることを特徴とするコンポジットめっき液用の添加剤。
(6)非導電性微粒子、
ワット浴またはスルファミン酸浴からなることを特徴とするコンポジットめっき液用の添加剤。
(7)非導電性微粒子、
ワット浴またはスルファミン酸浴、
電荷付与剤、界面活性剤および光沢剤から選ばれる1種以上、
からなることを特徴とするコンポジットめっき液用の添加剤。
(8)非導電性微粒子と水を含有するコンポジットめっき液用の添加剤に、ニッケルイオンを含有させることを特徴とするコンポジットめっき液用の添加剤における非導電性微粒子の沈殿防止方法。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等になんら制約されるものではない。なお、実施例および比較例での添加剤調製においては、ガラス製のスクリュー管瓶 110mL(アズワン株式会社製、9−852−10)(以下、スクリュー管瓶)を使用した。
【0047】
実施例1
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケルの500g/L水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH5.31)。
【0048】
実施例2
ワット浴を使用した添加剤の調製:
以下の組成で調製したワット浴100mLと二酸化ケイ素(平均粒子径は1.5μm)の粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで撹拌・混合し、添加剤を得た(pH3.69)。
【0049】
<ワット浴>
硫酸ニッケル(NiSO
4・6H
2O):250g/L
塩化ニッケル(NiCl
2・6H
2O):40g/L
ほう酸(H
3BO
3):40g/L
【0050】
実施例3
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケルの500g/L水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらにポリ塩化アルミニウム(南海化学株式会社、PAC)をアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.92)。
【0051】
実施例4
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケルの60g/L水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらにポリ塩化アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.99)。
【0052】
実施例5
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケルの10g/L水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらにポリ塩化アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH4.05)。
【0053】
実施例6
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケルの1g/L水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらにポリ塩化アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.86)。
【0054】
実施例7
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル450g/L、塩化ニッケル40g/L、ホウ酸40g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらにポリ塩化アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.62)。
【0055】
実施例8
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル40g/L、ホウ酸40g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらにポリ塩化アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.74)。
【0056】
実施例9
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル10g/L、塩化ニッケル1.6g/L、ホウ酸1.6g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらにポリ塩化アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.96)。
【0057】
実施例10
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル1g/L、塩化ニッケル0.16g/L、ホウ酸0.16g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらにポリ塩化アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.85)。
【0058】
実施例11
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケルの500g/L水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらに硫酸アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.31)。
【0059】
実施例12
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケルの60g/L水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらに硫酸アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.24)。
【0060】
実施例13
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケルの10g/L水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、更に硫酸アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.41)。
【0061】
実施例14
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケルの1g/L水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらに硫酸アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.31)。
【0062】
実施例15
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル450g/L、塩化ニッケル40g/L、ホウ酸40g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらに硫酸アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.08)。
【0063】
実施例16
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル40g/L、ホウ酸40g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらに硫酸アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.00)。
【0064】
実施例17
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル10g/L、塩化ニッケル1.6g/L、ホウ酸1.6g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらに硫酸アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.30)。
【0065】
実施例18
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル1g/L、塩化ニッケル0.16g/L、ホウ酸0.16g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6g、さらに硫酸アルミニウムをアルミニウムとして0.07gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.30)。
【0066】
実施例19
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル100g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化ケイ素の粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH5.63)。
【0067】
実施例20
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル100g/Lにて調整した水溶液を100mLと二酸化チタン(平均粒子径は0.01μm)の粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH4.94)。
【0068】
実施例21
ニッケル塩を使用した添加剤の調製:
硫酸ニッケル100g/Lにて調整した水溶液を100mLとケイ酸ジルコニウム(平均粒子径は1.1μm)の粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH5.64)。
【0069】
比較例として、非導電性微粒子の分散溶媒にニッケルイオンを含まず、実質的に水を主溶媒とした場合を以下に示す。
【0070】
比較例1
水のみで調製した添加剤の調製:
純水100mLと二酸化ケイ素の粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH7.17)。
【0071】
比較例2
水のみで調製した添加剤の調製:
純水100mLと二酸化チタンの粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH7.61)。
【0072】
比較例3
水のみで調製した添加剤の調製:
純水100mLとケイ酸ジルコニウムの粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH6.91)。
【0073】
比較例4
水のみで調製した添加剤の調製:
純水100mLと二酸化ケイ素の粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、均一になるまで攪拌・混合し、少量の硫酸にてpH3以下となるように調整した添加剤を得た(pH2.34)。
【0074】
比較例5
水のみで調製した添加剤の調製:
純水100mLと二酸化ケイ素の粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、さらにポリ塩化アルミニウムをアルミニウムとして0.07gを入れて、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.36)。
【0075】
比較例6
水のみで調製した添加剤の調製:
純水100mLと二酸化ケイ素の粉体6gをスクリュー管瓶に入れ、さらに硫酸アルミニウムをアルミニウムとして0.07gを入れて、均一になるまで攪拌・混合し、添加剤を得た(pH3.84)。
【0076】
試験例1
分散性試験:
実施例1〜21と比較例1〜6をスクリュー管瓶に入れた状態にて密封し、均一になるまで振盪後、24時間経過による添加剤の状態を確認した。また、沈殿が発生している場合、再度振盪して非導電性微粒子の再分散性を確認した。振盪はスクリュー管瓶を上下に30回振った。振盪後、24時間経過した添加剤の沈殿の有無を目視で評価し、更に再度振盪した後の再分散性を以下の基準で評価した。それらの結果を表1に示した。
【0077】
<再分散性評価基準>
評価 内容
○:振盪すると均一化する。
×:振盪しても均一化しない。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例1〜21については、沈殿は発生しているものの、再度振盪した場合、容易に再分散し均一な分散性を確認できた。
【0080】
一方、比較例1、比較例3、比較例4については、沈殿が発生し、再度振盪しても固化して再分散しなかった。また、比較例2、比較例5、比較例6は、沈殿は発生しているものの、再度振盪した場合、容易に再分散し均一な分散性を確認できた。
【0081】
試験例2
長期保存後の分散性試験:
実施例1〜21と比較例1〜6をスクリュー管瓶に入れた状態にて密封し、均一になるまで振盪後、168時間経過による添加剤の状態を確認した。また、沈殿が発生している場合、再度振盪して非導電性微粒子の再分散性を確認した。振盪はスクリュー管瓶を上下に30回振った。振盪後、168時間経過した添加剤の沈殿の有無を目視で評価し、再度振盪した後の再分散性を試験例1と同様の基準で評価した。それらの結果を表2に示した。
また、比較例1の添加剤の結果を
図1および
図4に、実施例1の添加剤の結果を
図2および
図5に、実施例2の添加剤の結果を
図3および
図6に示した。
【0082】
【表2】
【0083】
実施例1〜21については、沈殿は発生しているものの、再度振盪した場合、容易に再分散し均一な分散性を確認できた。
【0084】
一方、比較例1、比較例3、比較例4、比較例5については、沈殿が発生し、再度振盪しても固化して再分散しなかった。また、比較例2、比較例5は、沈殿は発生しているものの、再度振盪した場合、容易に再分散し均一な分散性を確認できた。
【0085】
試験例1および試験例2の結果から、非導電性微粒子の沈殿・沈降物を固化させず、分散性の良い液体の状態にするには、非導電性微粒子と共にニッケルイオンを含有させることで、再分散性に効果があることが分かった。
【0086】
試験例3
めっき試験:
実施例1で調製した添加剤を、以下の組成のめっき浴に対し、0.5ml/L添加し、マイクロポーラスめっき液を調製した。
【0087】
<めっき浴>
硫酸ニッケル(NiSO
4・6H
2O):260g/L
塩化ニッケル(NiCl
2・6H
2O):45g/L
ほう酸(H
3BO
3):45g/L
光沢剤#810
*:3ml/L
光沢剤MP333
*:10ml/L
ポリ塩化アルミニウム:0.3mg/L(アルミニウムとして)
浴温:55℃
比重:1.205
*株式会社JCU製
【0088】
次に、試験片として
図7の形状のベントカソードテストピース(真鍮:株式会社山本鍍金試験機製)を用い、以下の工程でマイクロポーラスめっき製品を製造した。
【0089】
(脱脂・酸活性)
試験片をSK−144(株式会社JCU製)で5分間処理して脱脂を行った後、V−345(株式会社JCU製)で30秒処理を行い、酸活性を行った。
【0090】
(光沢ニッケルめっき)
上記で脱脂・酸活性処理を行った試験片を以下のニッケルめっき液中、4A/dm
2で3分間めっきを行った。
<光沢ニッケルめっき浴>
硫酸ニッケル(NiSO
4・6H
2O):260g/L
塩化ニッケル(NiCl
2・6H
2O):45g/L
ほう酸(H
3BO
3):45g/L
光沢剤#810
*:3ml/L
光沢剤#83
*:10ml/L
*株式会社JCU製
【0091】
(マイクロポーラスめっき)
光沢めっきを施した試験片を上記で調製したマイクロポーラスめっき液中で3A/dm
2で3分間めっきを行った。
【0092】
(クロムめっき)
上記マイクロポーラスニッケルめっきを施した試験片を以下の組成の六価クロムめっき液中で10A/dm
2で3分間めっきを行った。
【0093】
<六価クロムめっき浴>
無水クロム酸(CrO
3):250g/L
硫酸(H
2SO
4):1g/L
添加剤ECR 300LN
*:10ml/L
ミストシャットMISTSHUT NP
*:0.1ml/L
*株式会社JCU製
【0094】
(微孔数の測定手順1)
クロムめっきあがりの試験片に対して以下の組成の硫酸銅めっき液に3分間浸漬を行い、その後、その硫酸銅めっき液中で0.5A/dm
2で3分間めっきを行った。
【0095】
<硫酸銅めっき浴>
硫酸銅(CuSO
4・5H
2O):220g/L
硫酸(H
2SO
4):50g/L
塩酸(HCl):0.15ml/L
【0096】
(微孔数の測定手順2)
硫酸銅めっき後、試験片を静かに水洗し、風乾させた後に、めっき皮膜の微孔数を測定した。なお、微孔数の測定は、試験片の評価面に対して行い、株式会社キーエンス製のマイクロスコープVHX−200を使用して行った。微孔数の測定結果を表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
本発明添加剤により、液体の状態で非導電性微粒子を添加してマイクロポーラスニッケルめっき液を調製しても、期待される微孔数を得ることができた。