(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動調整器は、前記循環体の外周面が外力を受けていない自由状態における前記第2駆動器の負荷よりも、前記像の転写を受ける時の該第2駆動器の負荷の方が大きな負荷となる範囲で該第2駆動器による駆動を調整するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
前記像保持体および前記循環体の少なくとも一方が、循環移動の駆動力を受ける回転軸よりも弾性が高くて前記外周面を成す弾性層を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記回転体が、前記像保持体の外周面における剛性率の10分の1以下の剛性率の弾性層を有するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、像保持体と循環体との周面速度差を所望の値に制御するために、像保持体や循環体に対して直接に制御や検出を行っており、制御や検出のために構成が複雑化する。
【0007】
本発明は、像保持体や循環体に対する直接の制御や検出を行わなくても所望の周面速度差を実現することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1 に係る画像形成装置は、
外周面上に像が形成されてその像を保持し、当該外周面に沿って循環移動する像保持体と、
外周面に沿って循環移動し、上記像保持体からの像の転写を、その像保持体の外周面に接した自分の外周面上に受けるか、あるいは、その像保持体の外周面と自分の外周面との間に挟んで搬送する記録材上に受ける循環体と、
上記像保持体を駆動して循環移動させる第1 駆動器と、
上記第1駆動器の駆動力とは独立な駆動力によって前記循環体を駆動して循環移動させる第2駆動器と、
上記第1駆動器および上記第2駆動器の少なくとも一方の駆動器における駆動の負荷を検知する負荷検知器と、
上記負荷検知器によって検知される負荷が予め決められた
固定値となるように、上記第2駆動器による駆動を調整する駆動調整器と、
を備え
、
上記負荷検知器が上記第2駆動器における駆動の負荷を検知するものであり、
上記第2駆動器が、上記循環体を駆動する回転体を駆動するものであり、
上記循環体が上記回転体と接触した位置を除いた他の位置でその循環体に対し、循環移動に対する負荷を与える第1の負荷部材を備え、
上記回転体が、上記像保持体の外周面における剛性率よりも小さい剛性率の弾性層を有するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る画像形成装置は、請求項1の画像形成装置において、
上記循環体と上記像保持体とが接触した接触位置と、その循環体とその像保持体とが離間した離間位置とに、その循環体とその像保持体との相対位置を変更する接離器と、
上記循環体と上記像保持体とが上記離間位置に在る時に上記負荷検知器によって検知された負荷を記憶する記憶器と、を備え、
上記駆動調整器は、上記
押し合い位置で上記負荷検知器によって検知される負荷が、上記記憶器に記憶されている負荷に対して予め決められた関係の固定値となるように、上記第2駆動器による駆動を調整するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項
3に係る画像形成装置は、請求項
1の画像形成装置において、
上記駆動調整器は、上記循環体の外周面が外力を受けていない自由状態における上記第2駆動器の負荷よりも、上記像の転写を受ける時のその第2駆動器の負荷の方が大きな負荷となる範囲でその第2駆動器による駆動を調整するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項
4に係る画像形成装置は、請求項1から
3の画像形成装置において、
上記循環体は、上記像の転写を上記記録材上に受けるものであり、
上記駆動調整器は、上記負荷検知器によって検知される負荷が、上記記録材の種類に応じて予め決められた負荷となるように、上記第2 駆動器による駆動を調整するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項
5に係る画像形成装置は、請求項1から
4の画像形成装置において、
上記像保持体および上記循環体の少なくとも一方が、循環移動の駆動力を受ける回転軸よりも弾性が高くて上記外周面を成す弾性層を有することを特徴とする。
【0016】
請求項
6に係る画像形成装置は、請求項
1から5の画像形成装置において、
上記回転体が、上記像保持体の外周面における剛性率の10分の1以下の剛性率の弾性層を有するものであることを特徴とする。
【0017】
請求項
7に係る画像形成装置は、請求項
1から6の画像形成装置において、
上記像保持体が金属製であり、
上記回転体の上記弾性層がゴム製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る画像形成装置によれば、像保持体や循環体に対する制御や検出を行わなくても像保持体と循環体との所望の周面速度差を実現することができる。
【0020】
請求項
2に係る画像形成装置によれば、離間位置に在る時の負荷を制御に用いない場合に較べて制御の精度が向上する。
【0021】
請求項
3に係る画像形成装置によれば、転写時の負荷が自由状態における負荷以下である場合に較べて転写性が向上する。
【0022】
請求項
4に係る画像形成装置によれば、記録材の種類に対応した制御を実現することができる。
【0023】
請求項
5に係る画像形成装置によれば、弾性層を有しない場合に較べて記録材の搬送性が向上する。
【0026】
請求項
6に係る画像形成装置によれば、所望の周面速度差の実現精度が高い。
【0027】
請求項
7に係る画像形成装置によれば、所望の周面速度差の実現精度が高い。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態としての画像形成装置の概略構成図である。
【0031】
この画像形成装置1は、いわゆる直接転写方式のモノクロプリンタである。
【0032】
この画像形成装置1は、感光体ドラム10を備えている。この感光体ドラム10は、ドラム支持フレーム10Aに回転自在に支持されていて、感光体モータ16によって駆動されて矢印Aの向きに回転する。この感光体ドラム10の周りには、帯電器11、露光器12、および現像器13が備えられている。そして、帯電器11による帯電と、露光器12による露光と、現像器13による現像との各プロセスを経て感光体ドラム10の表面にトナー像が形成され、そのトナー像が感光体ドラム10上に保持される。ここで、露光器12は、画像形成装置1の外部から送られてくる画像データに従って感光体ドラム10を露光し、画像データが表す画像がトナー像として感光体ドラム10上に形成される。このような露光の精度確保のため、感光体ドラム10は感光体モータ16によって安定した回転速度で駆動されている。この感光体ドラム10が、本発明にいう像保持体の一例に相当し、感光体モータ16が、本発明にいう第1駆動器の一例に相当する。
【0033】
一方、不図示の用紙搬送器によって記録材の一種である用紙P(いわゆるカット紙)が矢印Xの向きに搬送され、感光体ドラム10と後述する転写装置20とに挟まれた転写領域Tを通過する。そして、この転写領域Tを通過する間に感光体ドラム10上のトナー像が用紙P上に転写される。転写領域Tにおいてトナー像が転写された後の残りの、感光体ドラム10上の残存トナーは、クリーナ14により、感光体ドラム10上から除去される。
【0034】
転写領域Tでトナー像の転写を受けた用紙Pはさらに矢印Yの向きに搬送され、定着装置30に送り込まれる。この定着装置30は、矢印Dの向きに回転する加熱ロール31と、矢印Eの向きに回転する加圧ロール32とを備えている。それらの加熱ロール31と加圧ロール32は、互いに接触して定着領域Sを形成している。矢印Y方向に走行してきた用紙Pはその定着領域Sに突入し、その定着領域Sを通過する間に加熱および加圧を受けて用紙P上のトナー像がその用紙P上に定着される。この定着の結果、用紙P上に定着トナー像からなる画像が形成される。画像が形成された用紙Pは、不図示の用紙送出器によってこの画像形成装置1の外部へと送り出される。
【0035】
転写装置20は、転写ロール21と、圧接ロール22と、剥離ロール23と、それらのロールに架け回された無端状の転写ベルト24を備えている。転写ロール21、圧接ロール22、および剥離ロール23は、転写器支持フレーム20Aに回転自在に支持されている。
【0036】
転写ロール21は、転写モータ26によって駆動されて矢印Bの向きに回転し、転写ベルト24を駆動する。転写ベルト24は、伸縮性の小さい樹脂ベルトであり、転写ロール21による駆動力を受けて矢印Cの向きに循環移動する。転写ベルト24が、本発明にいう循環体の一例に相当し、転写モータ26が、本発明にいう第2駆動器の一例に相当する。
【0037】
転写ロール21は、感光体ドラム10の回転中心軸よりも用紙走行方向上流側に位置していて、転写ベルト24の内側から転写ベルト24を感光体ドラム10に押し当てている。そして、この転写ロール21により、感光体ドラム10と転写ベルト24とが互いに接触した転写領域Tの上流側の縁が定められている。
【0038】
また、圧接ロール22は、感光体ドラム10の回転中心軸よりも用紙走行方向下流側に位置していて、転写ベルト24の内側から転写ベルト24を感光体ドラム10側に押し上げている。そして、この圧接ロール22により、転写領域Tの下流側の縁が定められている。
【0039】
また、剥離ロール23は、転写ロール21と比べ径の小さなロールであり、この剥離ロール23で転写ベルト24の走行方向を急激に曲げることで、その転写ベルト24の上に載った状態にある用紙Pの先端を転写ベルト24から剥離させる。転写ベルト24から剥離した用紙Pは、ガイド部材41に案内されて矢印Y方向に進み、上述の通り、定着装置30へと送られる。
【0040】
また、この転写装置20はクリーナ25を備えている。転写ベルト24に付着したトナーやその他の汚れは、このクリーナ25により、転写ベルト24上から除去される。
【0041】
転写ロール21は不図示の電源に接続されていて、その電源から転写バイアスが転写ロール21に印加される。その転写バイアスの作用により、用紙Pが転写領域Tを通過する間に、感光体ドラム10上のトナー像が用紙P上に転写される。
【0042】
転写ロール21は、回転軸211を有し、その回転軸211は軸支持フレーム212に回転自在に支持されている。この軸支持フレーム212は、転写装置20の全体を支持する転写器支持フレーム20A(
図1参照)に、上下動自在に支持されている。
【0043】
軸支持フレーム212とドラム支持フレーム10Aとの間には、軸支持フレーム212をドラム支持フレーム10Aから離れる方向へと付勢する押しバネ27が備えられている。また、転写装置20には、転写器支持フレーム20Aに固定され、軸支持フレーム212を押しバネ27の付勢力に逆らってドラム支持フレーム10A側に押すソレノイド28も備えられている。
図1には、軸支持フレーム212がソレノイド28によって押されたことで転写ロール21が転写ベルト24を感光体ドラム10に押し付けた状態が示されている。
【0044】
転写装置20には、演算部としてのCPUや記憶部29AとしてのRAMやROMを備えた制御部29が備えられており、この制御部29による制御によってソレノイド28のオンオフが切り換えられる。ソレノイド28がオフになると、軸支持フレーム212は押しバネ27によってドラム支持フレーム10Aから離れる方向へと押され、その結果、転写ロール21および転写ベルト24が感光体ドラム10から離間する。押しバネ27とソレノイド28とを併せたものが、本発明にいう接離機の一例に相当する。
【0045】
制御部29は、転写モータ26による転写ロール21の駆動も制御し、更に、転写モータ26に供給される駆動電流をモニタすることによって転写モータ26の負荷も検知している。制御部29は、検知した負荷を記憶部29Aに記憶する。そして制御部29は、検知した負荷に基づいて転写モータ26の駆動を制御することによって、転写ベルト24の駆動を、感光体ドラム10の周面速度に合わせた駆動となるように調整している。制御部29が、本発明にいう負荷検知器および駆動調整器を兼ねた一例に相当し、記憶部29Aが、本発明にいう記憶器の一例に相当する。
【0046】
図2は、駆動制御を説明するためのグラフである。
【0047】
図2の横軸は、転写ベルト24と感光体ドラム10との周面速度差を、感光体ドラム10の周面速度に対する比率で表しており、縦軸は、モータの駆動電流値を表している。また、
図2に示すグラフに示された、白丸印の付いたグラフ曲線L1は、感光体モータ16の駆動電流値を表し、黒丸印の付いたグラフ曲線L2は、転写ベルト24が感光体ドラム10に接触している状態で転写ロール21を駆動する転写モータ26の駆動電流値を表している。また、点線のグラフ曲線L3は、転写ベルト24が感光体ドラム10から離間している状態で転写ロール21を駆動する転写モータ26の駆動電流値を表している。
【0048】
モータの駆動電流値は、そのモータにおける駆動の負荷を表しており、転写ベルト24が感光体ドラム10から離間している状態では転写ベルト24に感光体ドラム10からの外力が掛かっていないので、転写ベルト24の周速が安定していれば、点線のグラフ曲線L3が示すように、転写モータ26の駆動電流値はほぼ変化しない。
【0049】
一方、白丸印の付いたグラフ曲線L1と黒丸印の付いたグラフ曲線L2は、感光体ドラム10と転写ベルト24が接触している状態における各モータの駆動電流値を表している。
【0050】
このように感光体ドラム10と転写ベルト24が接触している場合には、転写モータ26と感光体モータ16は、互いに回転をアシストする状態となる。即ち、グラフの左側で白丸印の付いたグラフ曲線L1は上がっていて負荷が大きく、黒丸印の付いたグラフ曲線L2が下がっていて負荷が小さいので、グラフの左側では感光体ドラム10が転写ベルト24の回転をアシストしていることになる。逆に、グラフの右側で白丸印の付いたグラフ曲線L1は下がっていて黒丸印の付いたグラフ曲線L2が上がっているので、グラフの右側では転写ベルト24が感光体ドラム10の回転をアシストしていることになる。
【0051】
また、転写モータ26の駆動電流値について見れば、グラフの左側で、黒丸印の付いたグラフ曲線L2は点線のグラフ曲線L3よりも下に下がっているので、転写ベルト24に感光体ドラム10からの外力が掛かっていない自由回転の状態よりも、転写ベルト24が感光体ドラム10と接触している状態の方が駆動の負荷が少なく、転写モータ26が回転のアシストを受けていることを表している。また、グラフの右側で、黒丸印の付いたグラフ曲線L2は点線のグラフ曲線L3よりも上に上がっているので、自由回転の状態よりも、転写ベルト24が感光体ドラム10と接触している状態の方が駆動の負荷が大きく、転写モータ26が感光体ドラム10の回転をアシストしていることを表している。
【0052】
従って、転写モータ26について、転写ベルト24が感光体ドラム10と接触している状態での駆動電流値が、自由回転の状態における駆動電流値を基準として制御されることで、転写ベルト24と感光体ドラム10との相互における回転のアシスト関係が調整されることになる。即ち、転写ベルト24が感光体ドラム10と接触している状態での駆動電流値が、自由回転の状態における駆動電流値と等しい駆動電流値に制御されると、転写ベルト24と感光体ドラム10とが互いにアシストせずアシストされもしない状態となる。また、転写ベルト24が感光体ドラム10と接触している状態での駆動電流値が、自由回転の状態における駆動電流値よりも大きめの駆動電流値に制御されると、転写ベルト24が感光体ドラム10の回転をややアシストする状態となる。
【0053】
実際の制御では、例えば1%程度の周速差で転写ベルト24が感光体ドラム10よりも速く回るように、転写ロール21を駆動する転写モータ26の駆動について、自由回転の状態よりも負荷が大きくなる駆動制御が行われる。このように、転写ベルト24が感光体ドラム10よりも速く回ることで、感光体ドラム10から転写ベルト24へのトナー像の転写性が向上するとともに、転写モータ26から転写ロール21に至る駆動系に組み込まれているギヤのバックラッシュが防止される。
【0054】
また、本実施形態では、駆動制御の基準値である自由回転の状態における駆動電流値が制御部29によって、適宜の時間間隔を経て検出し直される。これにより、駆動制御の基準値がリセットされ、制御の精度が向上する。また、検出のし直しがない場合であっても、自由回転の状態における駆動電流値が制御の基準値に用いられることで、画像形成装置1の機差などが是正されて制御の精度が向上する。
【0055】
次に、上記実施形態とは異なる別の実施形態について説明する。この別の実施形態は、
図1に示す構成と同様の構成を有するが、転写ベルト24が、樹脂ベルトではなく、転写ロール21よりも弾性が高い例えばゴム製の弾性ベルトである。このような弾性ベルトである転写ベルト24が、本発明にいう弾性層の一例に相当し、この場合、転写ロール21が、本発明にいう回転軸の一例として観念される。
【0056】
このように転写ベルト24が弾性ベルトであっても、転写モータ26の負荷の検出によって転写ベルト24と感光体ドラム10との相互における回転のアシスト関係が判別され、転写モータ26の負荷が適切な値となるように転写モータ26の駆動が制御されることで回転のアシスト関係が調整されることは上記実施形態と変わらない。但し、転写ベルト24が弾性ベルトであると、転写モータ26の駆動の制御に際して、自由回転の状態における駆動電流値は基準値として適切でない場合がある。そのため、この別の実施形態では、転写モータ26の駆動の制御における基準値としては、例えば装置の生産時などに転写ベルト24と感光体ドラム10との周速差がゼロであることが確認された状態で予め測定されて記憶された駆動電流値の固定値が用いられる。このような固定値が基準値として用いられることで駆動の制御は簡素な制御となる。
【0057】
また、この別の実施形態では、転写ベルト24と感光体ドラム10との周速差がゼロであるときの転写モータ26の負荷よりも高い負荷となるように転写モータ26の駆動が制御される。これにより、弾性ベルトである転写ベルト24と用紙Pとの間にヒステリシス摩擦が生じ、転写ベルト24による用紙Pの搬送性が向上する。
【0058】
更に、転写モータ26の負荷は用紙Pの厚さが厚いほど大きな負荷となるように、転写モータ26の駆動が制御される。このような制御により、用紙Pの厚さが厚いほど高い搬送性が実現し、用紙Pは転写ベルト24と感光体ドラム10との間を確実に通過することとなる。また、用紙Pの表面が滑らかであるほど転写モータ26の負荷が大きな負荷となるように、転写モータ26の駆動が制御されることでも、用紙Pの種類に応じた適切な搬送性が得られることとなる。
【0059】
次に、自由回転の状態における駆動電流値を基準とした転写モータ26の制御が適している場合と、駆動電流値の固定値を基準とした転写モータ26の制御が適している場合とのそれぞれにおける条件に付いて詳しく検討する。
【0060】
図3は、制御の適用条件を検討するために必要な要素を
図1の画像形成装置1から抜き出して示した図である。
【0061】
図3に示すように、感光体ドラム10と転写ロール21との間に転写ベルト24が挟まれていて、その転写ベルト24に対してクリーナ25等が接触していると、クリーナ25等は、転写ベルト24に対して回転移動の負荷を与える負荷部材となる。このような負荷は、転写ベルト24を介して感光体ドラム10と転写ロール21に伝わり、感光体ドラム10を駆動する感光体モータ16と転写ロール21を駆動する転写モータ26がこの負荷を分担することになる。この負荷の分担は、感光体ドラム10と転写ロール21との剛性率の比によって決まることが発明者の検討によって明らかになった。ここで、剛性率について説明する。
【0062】
図4は、剛性率を求めるために必要な諸量を示す図である。
【0063】
剛性率は剪断力に対する物体の硬さを表したものである。
図4に示すように、長さ(厚み)Lで断面積(表面積)Aの物体の表面に、表面に沿った方向の力Fが加わって変位Δxが生じたとする。剛性率Gは、剪断応力τxyと剪断歪みγxyによって
G=τxy/γxy
と定義され、剪断応力τxyと剪断歪みγxyは、
τxy=F/A
γxy=Δx/L
と表される。従って、
G=(F/A)/(Δx/L)=FL/AΔx
となる。一方、剛性率Gは、ヤング率Eとポワソン比νによって
G=E/2(1+ν)
と表されるので、これらの式を併せると、
F=f(E/L)Δx
という関係式が得られる。結局、バネ定数に相当するf(E/L)で、力Fと変位Δxが関係づけられていることになり、感光体ドラム10と転写ロール21のようなロール状の部材(ロール部材)は、周面に対して接線方向に加えられる力に対してf(E/L)のバネ定数を有したバネとして働くことを意味している。
【0064】
そして、
図3に示す感光体ドラム10と転写ロール21と転写ベルト24のように、ロール部材Aとロール部材Bとにベルト部材Cが挟まれている場合には、ベルト部材Cを介して伝えられる外部負荷はロール部材Aとロール部材Bの2つの並行バネで支えられることになる。各バネの強さは、ロール部材Aとロール部材Bそれぞれの剛性率に比例しているので、ロール部材Aの剛性率をG1、ロール部材Bの剛性率をG2とすると、ベルト部材Cを介して伝えられる外部負荷F0の寄与配分は、
ロール部材Aへの寄与分=F0*G1/(G1+G2)
ロール部材Bへの寄与分=F0*G2/(G1+G2)
と表されることになる。例えば、ロール部材Aとロール部材Bが同一の剛性率を有している場合には寄与分は1:1で分担されることになる。
【0065】
クリーナ25等といった負荷部材によって生じる外部負荷F0は、画像形成装置1の設置環境の変化になどに伴う変動や、部材のばらつきによる変動や、取り付けのばらつきによる変動などが考えられるので、ロール部材における駆動負荷の検知や駆動制御に際して誤差となる。特に、駆動電流値の固定値を基準とした制御が行われ、負荷の検知と駆動制御とが同一のロール部材側(例えばロール部材B側)で行われる場合には、制御側のロール部材に係る外部負荷F0の寄与分がそのまま誤差になると考えられる。従って、制御側のロール部材(例えばロール部材B)の方がもう一方のロール部材(例えばロール部材A)よりも柔らかいと、制御側では外部負荷F0の寄与分がもう一方よりも少ないので、制御誤差が少なく、駆動電流値の固定値を基準とした駆動制御が好ましい。
【0066】
このような外部負荷F0による誤差について以下更に詳しく検討する。
【0067】
図5は、ロール部材Aとロール部材Bにおける相対的な硬さが制御誤差に与える影響を示すグラフである。
【0068】
図5のグラフの横軸は、ロール部材Aとロール部材Bにおける弾性硬度(JIS−A硬度)の比(A/B)を表し、縦軸は弾性厚みの比(B/A)を表している。
【0069】
ロール部材Aとロール部材Bとの剛性率比は、弾性硬度比と弾性厚み比との積に等しい。従って、剛性率比が一定である場合は、
図5のグラフ上で反比例の曲線となる。
【0070】
丸印が付された曲線L1は、ロール部材Aの方がロール部材Bよりも硬くて剛性率比が40である場合を示しており、この場合にロール部材B側で負荷の検知と駆動制御が行われると、制御の誤差(即ちロール部材Bに対する外部負荷F0の寄与分)は外部負荷F0の1.2%となる。
【0071】
菱形の印が付された曲線L2は、剛性率比が20である場合を示しており、この場合における外部負荷の誤差は2.5%となる。
【0072】
四角印が付された曲線L3は、剛性率比が10である場合を示しており、この場合における外部負荷の誤差は5%となる。
【0073】
三角印が付された曲線L4は、剛性率比が5である場合を示しており、この場合における外部負荷の誤差は10%となる。
【0074】
×印が付された曲線L5は、剛性率比が2.5である場合を示しており、この場合における外部負荷の誤差は20%となる。
【0075】
ロール部材(例えば転写ロール21)の駆動制御における誤差が大きいと転写時における画像位置の制御に不具合が生じることになるが、誤差が5%程度であれば画像位置の制御には特に問題が無い。従って、制御側のロール部材の方が柔らかくて剛性率比が10以上であると、駆動電流値の固定値を基準とした制御により、十分に高い精度での駆動制御が実現されることになる。言い換えると、外部負荷の寄与分が制御側で5%以下となる程度に制御側のロール部材の方が柔らかいと、十分に高い精度での駆動制御が実現されることになる。更に別の観点で言えば、ロール部材の周面の接線方向に掛かる力に対するロール部材のバネ定数が制御側で小さくてバネ定数の比が10以上であると、十分に高い精度での駆動制御が実現されることになる。
【0076】
以下、具体的な例について制御誤差を検討する。
【0077】
ロール部材Aが金属であるアルミ製の感光体ドラムで、ロール部材Bが弾性厚み8mmで硬度40の発泡弾性ゴム製の転写ロールである場合は、弾性硬度比(A/B)=100/40=2.5となる。また、ロール部材Aにおける弾性厚みはほぼ0と考えてよいので弾性厚み比(B/A)=8/0=∞となる。従って、剛性率比=弾性硬度比(A/B)×弾性厚み比(B/A)=∞となって、外部負荷の誤差はほぼ0%と考えてよい。一般に、非制御側のロール部材が金属製で、制御側のロール部材がゴム製であると、外部負荷の誤差はほぼ0%となる。
【0078】
次に、ロール部材Aとロール部材Bの双方がゴム製ロールであり、ロール部材Aが弾性厚み0.5mmで硬度70、ロール部材Bが弾性厚み6mmで硬度30である場合を検討する。この場合には、弾性硬度比(A/B)=70/30=2.3で、弾性厚み比(B/A)=6/0.5=30である。従って、剛性率比=弾性硬度比(A/B)×弾性厚み比(B/A)=69となって、この場合も外部負荷の誤差はほぼ0%と考えてよい。
【0079】
次に、ロール部材Aがアルミ製の感光体ドラムで、ロール部材Bがアルミ製の転写ロールである場合を検討する。この場合には、弾性硬度比(A/B)=100/100=1で、弾性厚み比(B/A)=0/0=1である。従って、剛性率比=弾性硬度比(A/B)×弾性厚み比(B/A)=1となるので外部負荷の誤差は50%となる。この場合には、駆動電流値の固定値を基準とした制御では不具合を生じる虞がある。
【0080】
ところで、外部負荷F0がロール部材Aとロール部材Bに上述したように分担されるためには、クリーナ25のような負荷部材が、制御側のロール部材(例えばロール部材B)とベルト部材Cとが接触する箇所とは異なる箇所(例えば制御側のロール部材から離れた箇所)でベルト部材Cに接触していることが前提となる。この場合の負荷部材は、本発明にいう第1の負荷部材の一例に相当する。
【0081】
一方、負荷部材が、制御側のロール部材における回転移動に対して外部負荷を与える物である場合は、本発明にいう第2の負荷部材の一例に相当し、上述したような負荷の分担が生じない。
【0082】
図6は、本発明にいう第2の負荷部材の一例を有する場合を示す図である。
【0083】
図6には、
図3と同様に、感光体ドラム10と転写ロール21との間に転写ベルト24が挟まれている状態が示されているが、
図3とは異なり、クリーナ25が、転写ベルト24を挟んで転写ロール21と対向した箇所で転写ベルト24に接触している。転写ロール21との間に転写ベルト24を挟んでいることによりクリーナ25は、転写ロール21に回転移動の負荷を付与していることになる。
図6に示す配置の場合、クリーナ25による外部負荷はすべて転写ロール21によって担われることになり、感光体ドラム10は外部負荷を分担しない。
【0084】
このように、外部負荷が転写ロール21側(即ち制御側)に掛かって感光体ドラム10側に掛からない場合には、転写ロール21に内部負荷のみが掛かっているのと同等であるので、自由回転の状態における駆動電流値を基準とした転写ロール21の駆動制御(即ち転写モータ26の制御)が適している。
【0085】
なお、本発明にいう第2の負荷部材としては、制御側のロール部材との間にベルト部材を挟み込んだ負荷部材だけでなく、制御側のロール部材と非制御側のロール部材が直接に接触していてベルト部材が用いられない形態において制御側のロール部材に接触した負荷部材も該当する。
【0086】
また、上記説明では、本発明にいう記録材としてカット紙が例示されているが、本発明にいう記録材は連続紙であってもよい。
【0087】
また、上記説明では、本発明の画像形成装置の実施形態としてモノクロプリンタが例示されているが、本発明の画像形成装置は、カラープリンタであってもよいし、複写機やファクシミリや複合機であってもよい。
【0088】
また、上記説明では、転写モータ26の負荷が検出されて転写モータ26の駆動制御に用いられる例が示されているが、本発明の実施形態としては、感光体モータ16の負荷が検出されて転写モータ26の駆動制御に用いられるものであってもよい。
【0089】
また、上記説明では、本発明の画像形成装置の実施形態として直接転写方式の装置が例示されているが、本発明の画像形成装置は、感光体から中間転写体を経て記録材に像が転写される間接転写方式の装置であってもよい。また、そのような間接転写方式の装置である場合には、本発明の構成が、感光体から中間転写体へ像が1次転写される箇所に適用されてもよいし、中間転写体から記録材へ像が2次転写される箇所に適用されてもよい。
【0090】
また、上記説明では、本発明にいう弾性層として弾性ベルトが例示されているが、本発明にいう弾性層は、ロール状の部材の表面に形成された弾性層であってもよい。
【0091】
また、本発明の画像形成装置によれば、像保持体や循環体に対する直接の制御や検出が行われなくても所望の速度差は実現されるが、本発明の画像形成装置は、より高い精度の制御などを目的として像保持体や循環体に対する直接制御や直接検出が併用されることを妨げるものではない。