【実施例】
【0014】
次に本発明の通気構造を有する衣服の一実施例を図面にて説明する。
図2は本発明の通気構造を有する雨衣の通気構造1の説明図である。通気構造1は雨衣の前身頃及び後見頃を上下に分割した上段布帛2と下段布帛3の重ね合せ部4に10〜20mmの細幅状の3次元立体編物5が配置されている。3次元立体編物の上面編地は接着剤層11を介して下段布帛3の上部に接合されている。該3次元立体編物が接合された下段布帛3の下部
逢着部Aに疎水性のメッシュ布帛6の端部が逢着され、該逢着部Aから3次元立体編物の下部切断面を被覆するように、該上段布帛2の先端部を内側に折り返した折り返し片7の下部
逢着部に逢着Bされる。さらにメッシュ布帛6は逢着部Bから上部に折り曲げられて、該折り返し片7の
3次元立体編物の上部
逢着部Cに逢着される。メッシュ布帛6は逢着部Cから細幅状
3次元立体編物5の上部切断面を被覆するように
折り曲げられて下部布帛3の上端部逢着部Dに逢着される。3次元立体編物は上段布帛2と下段布帛3
の重ね合せ部4間に形成された筒状のメッシュ布帛内に収容・固定され
る。該3次元立体織物の上部切断面が第一の通気口X、下部切断面が第二の通気口Yとなる。上段布帛2を折り返した折返し片7の上端は上段布帛の裏面に止水テープ8などで上段布帛に接合される。折返し片7の上端を上段布帛に接着剤あるいは逢着して固定してもよいが、その場合は上段布帛の表面に皺や逢着ラインが発生し意匠性を損なう恐れがある。逢着
する場合
は折り返し片7の裏面の縫着ラインの上から目止めテープ(図示せず)が貼着される。下段布帛3とメッシュ布帛6の逢着
部A及び上段布帛2とメッシュ布帛の縫着
部Bからの雨の侵入を防ぐため、下段布帛及び上段布帛の折り返し片の裏面の縫着ラインの上から目止めテープ(図示せず)が貼着される。
【0015】
下段布帛3の上端部Cは型崩れ防止のため玉縁処理(パイピング)を施しておくことが好ましい。該玉縁処理(パイピング)は、例えば下段布帛の上端部にバイアス布、テープ、リボン、撚糸やコードなどの芯材を包むように施される。玉縁処理されたパイピングテープなどを下段布帛3の上端に取付けてもよい。布帛の先端が玉縁処理されているため先端部が硬くなり、下段布帛3が下方に引っ張られたとしても雨衣の型崩れが防止できるとともに、下段布帛3の先端部が折れて3次元立体織物の上部切断面(第一の通気口X)が閉塞されて通気性が低下することも防止できる。
【0016】
3次元立体編物が接合された下段布帛3の下部に逢着された疎水性のメッシュ布帛6の逢着部Aから3次元立体編物の下部切断面を被覆するように該上段布帛2の先端部を内側に折り返した折り返し片6の下部にメッシュ体4が逢着Bされる。また該上段布帛2の3次元立体編物の下端部から5〜15mm垂れた位置で折り返された舌部10が設けられており、第2の開口からの雨の侵入を防止する。
【0017】
次に、通気構造の製作方法の一例を
図3〜
図6で説明する。まず、
図3に示すように雨カッパの後見頃を形成する下段布帛3の上部に積層一体化された3次元立体編物5の下方で、かつ立体編物と重ならない位置にメッシュ布帛6の端部を逢着する(A)。次いで、3次元立体編物の厚み分を開けて上段布帛2の折り返し部Tから5〜15mm上方にメッシュ布帛を逢着する(B)。更に折り返し部Tから上部に折り曲げた折り返し片7の3次元立体編物の幅位置でメッシュ布帛を逢着する(C)。次に
図4に示すように3次元立体編物の上面編地を接着剤層11を介して下段布帛3の上部に接合する。上記メッシュ布帛と折り返し部7との逢着及びメッシュ布帛と折り返し片上部での逢着(B)、(C)はメッシュ布帛と3次元立体編物を接着剤層11を介して下段布帛3の上部に接合する工程の後に行ってもよい。
【0018】
3次元立体編物を下段布帛3接合する方法は特に限定されないが、例えば、下段布帛3の上面に接着剤層11を設けた後、帯状の3次元立体編物5を接着剤層11上に積層し、その後、熱プレス機の成形型間に介装させて加熱、加圧することにより積層一体化することができる。加熱手段は加熱ヒーター、高周波、超音波などが適用できる。また、接着性樹脂フィルムを用いる場合は、上段布帛3と帯状3次元立体編物5との間に両面接着フィルムを介装させて積層し、その後、加熱、加圧することにより積層一体化することもできる。ここで用いる接着剤としては、例えば合成ゴム系接着剤、熱可塑性接着剤が用いられる。
【0019】
次に
図5に示すようにメッシュ布帛は折り返し部との逢着部(C)から3次元立体編物の上部切断面を覆い、下段布帛3の上端部に逢着される。メッシュ布帛6が下段布帛との逢着部(A)、上段布帛の折り返し部との逢着部(B)、(C)から下段布帛の上端部に逢着(D)されるため、3次元立体編物5がメッシュ布帛6を介して下段布帛3と上段布帛2の重ね合わせ部4に包み込まれた状態で固定される。該メッシュ布帛6は3次元立体編物5の紫外線による劣化を防止するため、紫外線が透過し難い、例えば黒や紺色などの暗黒色系統の色が好ましい。暗黒色系統の色でない場合は、通気構造を形成する3次元立体編物5の連結糸(図示せず)が目立たない色、例えば上下段布帛の色に近い色を使用することが好ましい。次いで上段布帛2の先端部を内側に折り返した折り返し片7の上端部を上段布帛の裏面に止水テープ8で接合する。
【0020】
上面編地と下面編地を連結する多数の連結糸からなる3次元立体編物5は通気抵抗が少なく、かつ雨の侵入を阻止するために、厚さが5〜15mm、好ましくは8〜10mm(通気面積を大きくするには厚い程好ましいが、厚さ15mm以上の立体編物は市販されていない)。厚さが5mm以下では通気面積が少ない。幅は10〜40mm、好ましくは15〜25mmの3次元立体編物が使用される。また、3次元立体編物5の幅が10mm以下では立体編物の切断が困難である。幅が40mm以上では通気抵抗により通気性が低下する。雨衣以外の衣服に使用する3次元立体編物の厚さと幅は通気性とともに着心地やデザインなどを考慮して決定される。
【0021】
3次元立体編物5は、表裏二層の編地を繊維経0.05〜0.3mmが無数の連結糸で連結した構造であり、通常ダブルラッセル編機、ダブルトリコット編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成される。表裏面二層の編地を構成する糸としてはポリエステル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維などの疎水性の繊維が用いられる。また表裏面二層の編地を連結する連結糸は上記表裏面二層の編地と同じ繊維が使用されるが、通常圧縮回復率の優れたポリエステル系繊維が好ましく用いられる。
【0022】
本発明の通気構造を有する衣服は、衣服とシャツなどのアンダーウエアとの密着防止と、衣服着用時に重ね合せ部4に形成された第一の通気口Xに手を引掛けないよう、衣服の内側に通気性の裏地、例えばメッシュ布帛を取り付けることが好ましい。通気性のメッシュ布帛によりアンダーウエアと衣服との間に隙間が形成されて衣服の内部で通気性が向上し、かつアンダーウエアとのべとつき等がなく清涼感を保つことができる。
【0023】
図6は本発明の通気構造を有する雨衣21の前面模式図であり、左右の前身頃a,a’の上下二か所にそれぞれ通気構造4が設けられている。また、左右の脇見頃b、b’の上部に通気部24が設けられている。該通気部24は多数の通気孔を設けていても、上下の布帛を重ね合わせて上下の布帛の隙間にメッシュ布帛や薄い
3次元立体編物を設けてもよい。25は左右の脇見頃に設けられた脇ポケットである。帽子23は雨衣の首回りに予め取付けていても、ホックや面ファスナーなどで着脱自在に取付けてもよい。
図7は雨衣21と帽子の背面模式図であり、後身頃の上下二カ所に通気構造4が設けられている。通気構造4はベンチュレーション効果による通気性向上させるため上下二カ所に設けることが好ましい。後身頃に設けられた下部通気構造の表面には再帰反射素材のパイピング27が施されている。また上部通気構造は肩甲骨の近傍に設けると背面での通気性が向上するため好ましい。また。雨衣に着脱自在に取付けられる帽子23の後方にも空気流出用の通気構造4が設けられ、帽子の前面から帽子内に侵入する風を通気構造4から後方に流出させて帽子が飛ぶのを防止している。
【0024】
図8はズボン29の前面をモデル的に示す模式図である。ズボン29では脚を動かし易いように通気構造4を膝下部に設けるのが好ましい。通気構造はズボンの全周であっても前半周であってもよい。また、ベルト又はゴムライン22の下部に、幅2〜3cmのメッシュ布帛を胴回り全周、半周、あるいは長さ5〜10cmのメッシュ布帛を複数取り付けるか、または、内径6.5〜15mmのアイレットを、例えば5〜8個取り付けて重ね合せ部4から流入する外気の排出口としてもよい。メッシュ布帛を胴回り全周又は半周取り付ける場合は、ベルトラインの下部と上段布帛を細幅の布帛で連結し、メッシュ布帛を補強することが好ましい。ベルト付近に設けられたメッシュ布帛、又はアイレットは上着を着用すると隠れるため雨水が流入することはない。31はポケットである。
【0025】
上着及びズボンに設けられた通気構造4の位置と形状は、布帛の種類、着用者の身体の大きさ、着用場所、デザイン等を考慮して適宜決定される。例えば後見頃の通気構造をハの字状に設けると腕をスムースに動かすことができ好ましい。