特許第6945797号(P6945797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945797
(24)【登録日】2021年9月17日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】通気構造を有する衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/28 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   A41D27/28 A
   A41D27/28 E
   A41D27/28 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-191521(P2019-191521)
(22)【出願日】2019年9月30日
(65)【公開番号】特開2021-55237(P2021-55237A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2020年11月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520477876
【氏名又は名称】福山商事株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福山 照芳
(72)【発明者】
【氏名】尾川 晃一
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−256746(JP,A)
【文献】 特開2015−096323(JP,A)
【文献】 特開2003−013318(JP,A)
【文献】 特開2008−038323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/28
A41D 13/002
A41D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面編地と下面編地を連結する多数の連結糸からなる疎水性の細幅状次元立体編物が上下に重なるように配置された上段布帛と下段布帛の重ね合せ部に配置され、該次元立体編物の上面が接着剤層を介して下段布帛の上部に接合され、該次元立体編物が接合された下段布帛の下部に疎水性のメッシュ体の一端部が逢着され、該メッシュ体が上段布帛の先端部を内側に折り返した折り返し片の下部逢着部に逢着され、該逢着部から折り返し片の次元立体編物の上端面より上部に逢着され、該メッシュ体の他端部が細幅状次元立体編物を包むように下部布帛の上端部に逢着されて、該下段布帛の上端部と3次元立体編物の上端切断面に第一の通気口、該3次元立体編物の下端切断面に第ニの通気口を設けたことを特徴とする通気構造を有する衣服。
【請求項2】
該下段布帛の上端部が玉縁処理されてなることを特徴とする請求項1記載の通気構造を有する衣服。
【請求項3】
該上段布帛の先端部を内側に折り返した折り返し片の下端に次元立体編物の下端から5〜10mm垂れた舌部を設けるとともに、折り返し片の上端が上段布帛の裏面に接合されてなることを特徴とする請求項1乃至2記載の通気構造を有する衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気構造を有する衣服に関するものである。
【0002】
本発明の通気構造を有する衣服は、内部に蓄積する熱気と湿気を外部に効率よく放散することができるため、作業着、ワイシャツ、ユニフォーム、ジャンパー、コート、カジュアルウエア、運動用衣服、学生服、スポーツウエア、白衣、アンダーウエアなどに使用される。特に、レインコート、レインスーツ、ヤッケ、アノラック、ウインドブレーカー、トレーナー、ポンチョ、登山衣、ブルゾンなどの防水性衣服に好適である。
【背景技術】
【0003】
従来より雨天に着用するレインコート、レインスーツなどの防水性衣服(以下「雨衣」という)は、通気性が乏しく、内部が蒸れて発汗して不快感を生じるため、防水性とともに、通気性、透湿性の機能を備えた雨衣が求められている。
【0004】
防水性と透湿性の両方の機能を備えた雨衣として、防水透湿性フィルムを布帛に積層した防水透湿性布帛や、防水透湿性フィルムの表面に織物の表生地を積層し、その裏面に裏生地を積層した防水透湿性を有する布帛を使用した雨衣が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、従来の防水透湿性を有する雨衣には、次のような問題があった
(1)雨衣の表面に水膜ができると通気孔が塞がれて透湿性が低下する。例えば、長年の使用により雨衣表面の撥水性能が低下して表面に水膜ができる。また、綿生地のような保水性のアンダーウエアを着用した場合にアンダーウエアが汗を吸って濡れて透湿性を阻害する。
(2)防水透湿性を有する雨衣は、内部で発生した水蒸気が外気圧以上に上昇すると湿度が雨衣を透過するが、水蒸気圧が上昇するまで雨衣の内部は蒸れた状態にある。
(3)防水透湿性の雨衣、例えばスポーツ用の雨衣は、通気性がないため風であおられた時などに布帛同士が擦れて音が発生し耳障りである。特にゴルフではスイング時の耳障りな音と雨衣の上衣が体にまとわりつくことでスムースなスイングができない。
【0006】
本発明者らは、従来の防水防湿性を有する雨衣を徹底的に検討した結果、従来の防水透湿性を有する布帛を使用した雨衣は基本的に上記問題点の解決が困難であり、通気性は雨衣の構造によってのみ改善されるとの結論に到達し、雨衣を形成する前見頃及び後見頃に通気口を設けると下記の理由で上記問題が解決できることを見出した。
(1)通気口から流入した空気が雨衣内部の湿気を同伴して流出口から排出されるため蒸れが解消できる。
(2)通気口からの雨の侵入を確実に阻止する構造を採用することで雨衣の防水性が確保される。
さらに、本発明者らは通気口からの雨の侵入を確実に阻止する構造を検討した結果、前身頃及び後見頃を上下に分割し、該分割された上段布帛の下部と下段布帛の上部を重ね合わせ、かつ、該重ね合わせ部に3次元立体編物を取り付け、該下段布帛の上端部に取り付けた3次元立体編物の上端切断面を第一の通気口とし、該上段布帛の下端部に取り付けた3次元立体編物の下端切断面を第ニの通気口とした通気構造を有する下記3種類の雨衣を提案した。
(1)分割された上段布帛の下部と下段布帛の上部の重ね合わせ部に上下布帛を連結するよう取り付けた筒状のメッシュ体内に3次元立体編物を挿入した通気構造を有する雨衣(特許文献3)
(2)帯状の上下補助布帛を連結するよう逢着した筒状のメッシュ体内に3次元立体編物を挿入した通気部材を重ね合わせ部に取り付けた通気構造を有する雨衣(特許文献4)
(3)帯状の上下補助布帛に3次元立体編物を接着一体化した通気部材を重ね合わせ部に取り付けた通気構造を有する雨衣(特許文献5)
【0007】
上記提案は防水防湿性に加えて通気性も有する雨衣の画期的な提案であったが、上記提案のうち(1)及び(2)は弱い雨では使用できても、雨カッパ着用者が前かがみで作業するとき、あるいは着用者の後ろ斜め下方向から雨が吹き付ける大雨や豪雨の場合には雨が通気構造を形成する下部布帛と3次元立体編物を包んだメッシュ体の隙間から侵入するため専ら弱い雨での立ち作業やゴルフなどの用途に限定される問題があった。
また(3)は3次元立体編物が上下の帯状補助布帛間に積層固定されているため下部布帛と通気部材間からの雨の侵入は阻止されるが、雨カッパを装着したときに通気部材が曲面を有する装着者との追従性が悪く意匠性に劣るという問題とともに、製作も困難という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−61009号
【特許文献2】特開昭60−039014号
【特許文献3】特開2013−25746号
【特許文献4】特許第6375617号
【特許文献5】特許第6327609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の第一の目的は3次元立体編物を使用した、通気構造を改良して着用者が前屈みなどの姿勢をとっても、また強風下で着用者の斜め下方向から雨が吹き付けても雨の侵入する恐れのない通気構造を有する衣服を提供することである。
本発明の第二の目的は布帛の撥水性が低下して布帛の表面に水膜ができたとしても、水膜が侵入しない通気構造を有する衣服を提供することである。
本発明の第三の目的は、製造が容易で大量生産可能な安価な通気構造を有する衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは通気構造を有する雨衣を着用した時の雨衣と雨との関係について特許文献3に記載の雨衣を用いて徹底的に検討した結果、図1に示すように傘をさして歩ける状態の雨Wは上下段布帛2、3にあたった後、上下段布帛表面に沿って流下する。雨を同伴する外気は第二の開口Yから3次元立体編物5を構成する多数の連結糸(図示せず)間に侵入するが、雨は疎水性の連結糸に雨滴として付着し、更にその上に微細な雨滴が付着する現象の繰り返しにより微細な雨滴が集合して次第に大きく成長し、ついには、大きな雨滴の集合物(例えば直径20〜100μm)として外部に流れ出るため雨衣内部への雨の侵入が確実に阻止される。3次元立体編物5の連結糸間を通過して雨衣の内部に侵入した外気は雨衣内の暖かく湿った空気を同伴しながら3次元立体編物の上端切断面に設けられた第一の開口Xを経て3次元立体編物の下端切断面に設けられた第二の開口Yから外部に排出される。しかし傘をさしてもずぶ濡れになる大雨や豪雨のとき雨は雨衣の横方向あるいは斜め下方向から降り込んで立体編物の下面編地と下部布帛の接合部Mから雨衣内部に侵入するが、反対側の上部布帛と立体編物の上面編地との接合部Nからは侵入しないことに着目し、更に検討した結果、3次元立体編物の上面編地を下部布帛の上部に接合することで装着者が前にかがみ込んで作業しても、傘をさして歩けないような大雨や豪雨のときに着用しても第二の開口Yから雨の侵入が防止できることを見出し、更に3次元立体編物の下面編地を上部布帛に固定せずにフリーな状態とすることで、3次元立体編物が曲面を有する装着者に追従して意匠性が阻害されないことも見出し、本発明に到達したものである。なお、8は折り返し片の上端を上段布帛の裏面に接合する試着テープであり、6はメッシュ布帛である。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)上面編地と下面編地を連結する多数の連結糸からなる疎水性の細幅状次元立体編物が、前身後又は後見頃を形成する上下に重なるように配置された上段布帛と下段布帛の重ね合せ部に配置され、該次元立体編物の上面編地が接着剤層を介して下段布帛の上部に接合され、該次元立体編物が接合された下段布帛の下部に疎水性のメッシュ布帛の端部が逢着され、該メッシュ布帛が上段布帛の先端部を内側に折り返した折り返し片の下部逢着部に逢着され、該逢着部から折り返し片の次元立体編物の上面より上部に逢着され、かつ該メッシュ布帛の他端部が細幅状次元立体編物を包むように下部布帛の上端部に逢着されて、該3次元立体編物の上端断面を第一の通気口、該3次元立体編物の下端断面を第ニの通気口としたことを特徴とする通気構造を有する衣服である。
(2)該下段布帛の上端部が玉縁処理されてなることを特徴とする上記(1)記載の通気構造を有する衣服である。
(3)該上段布帛の先端部を内側に折り返した折り返し片の下端に3次元立体編物の下端部から5〜15mm垂れた舌部を設けるとともに、折り返し片の上端が接着テープで上段布帛の裏面に接合されてなることを特徴とする上記(1)記載の通気構造を有する衣服である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の通気構造を有する衣服は、
(1)3次元立体編物の上面編地と下面編地の間から侵入する雨は上下編地を連結する多数の疎水性連結糸に接触して捕捉される。また、下段布帛の表面に拡散する水膜は下段布帛と3次元立体編物を接着する接着剤層で侵入が阻止される。そのため雨衣内部への雨の侵入が確実に防止できる。
(2)下段布帛に逢着されたメッシュ布帛が上段布帛端部を折り返した折り返し片の上下部及び下段布帛の上端部に逢着されて次元立体編物を包み込んでいるため上段布帛の表面に皴や次元立体編物の表面凹凸は現れない。また、3次元立体編物の上面が接着剤層を介して下段布帛に接合しているが3次元立体編物の下面が接着されず、フリーなため曲面を有する装着者への追従性が優れ、意匠性にも優れている。
(3)特許文献4、5記載の従来の製作方法に比べて製作が容易なため、コストダウンが可能である。
(4)薄い布帛の場合は下段補助布帛の上端を玉縁処理して剛性を付与することで上端部が倒れて3次元立体編物の上面をふさぐことが防止できる。
(5)上段布帛の先端部を内側に折り返した折り返し片の下端に舌部を有しているため強風時に雨が上部布帛に積層された3次元立体編物の下面側に降りこむことが防止される。
(6)本発明の通気構造を有する雨衣は通気性を有しているため着用者に対する負担が少なく、従来の雨カッパに比べ疲労が少ない。
などの優れた効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】通気構造を有する雨衣と雨の関係説明図
図2】通気構造を有する衣服の通気構造の説明図
図3】通気構造の製作工程図(1)
図4】通気構造の製作工程図(2)
図5】通気構造の製作工程図(3)
図6】雨衣の前面模式図
図7】雨衣の背面模式図
図8】ズボンの模式図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
次に本発明の通気構造を有する衣服の一実施例を図面にて説明する。図2は本発明の通気構造を有する雨衣の通気構造1の説明図である。通気構造1は雨衣の前身頃及び後見頃を上下に分割した上段布帛2と下段布帛3の重ね合せ部4に10〜20mmの細幅状の3次元立体編物5が配置されている。3次元立体編物の上面編地は接着剤層11を介して下段布帛3の上部に接合されている。該3次元立体編物が接合された下段布帛3の下部逢着部Aに疎水性のメッシュ布帛6の端部が逢着され、該逢着部Aから3次元立体編物の下部切断面を被覆するように、該上段布帛2の先端部を内側に折り返した折り返し片7の下部逢着部に逢着Bされる。さらにメッシュ布帛6は逢着部Bから上部に折り曲げられて、該折り返し片7の次元立体編物の上部逢着部Cに逢着される。メッシュ布帛6は逢着部Cから細幅状次元立体編物5の上部切断面を被覆するように折り曲げられて下部布帛3の上端部逢着部Dに逢着される。3次元立体編物は上段布帛2と下段布帛3重ね合せ部4間に形成された筒状のメッシュ布帛内に収容・固定される。該3次元立体織物の上部切断面が第一の通気口X、下部切断面が第二の通気口Yとなる。上段布帛2を折り返した折返し片7の上端は上段布帛の裏面に止水テープ8などで上段布帛に接合される。折返し片7の上端を上段布帛に接着剤あるいは逢着して固定してもよいが、その場合は上段布帛の表面に皺や逢着ラインが発生し意匠性を損なう恐れがある。逢着する場合折り返し片7の裏面の縫着ラインの上から目止めテープ(図示せず)が貼着される。下段布帛3とメッシュ布帛6の逢着部A及び上段布帛2とメッシュ布帛の縫着部Bからの雨の侵入を防ぐため、下段布帛及び上段布帛の折り返し片の裏面の縫着ラインの上から目止めテープ(図示せず)が貼着される。
【0015】
下段布帛3の上端部Cは型崩れ防止のため玉縁処理(パイピング)を施しておくことが好ましい。該玉縁処理(パイピング)は、例えば下段布帛の上端部にバイアス布、テープ、リボン、撚糸やコードなどの芯材を包むように施される。玉縁処理されたパイピングテープなどを下段布帛3の上端に取付けてもよい。布帛の先端が玉縁処理されているため先端部が硬くなり、下段布帛3が下方に引っ張られたとしても雨衣の型崩れが防止できるとともに、下段布帛3の先端部が折れて3次元立体織物の上部切断面(第一の通気口X)が閉塞されて通気性が低下することも防止できる。
【0016】
3次元立体編物が接合された下段布帛3の下部に逢着された疎水性のメッシュ布帛6の逢着部Aから3次元立体編物の下部切断面を被覆するように該上段布帛2の先端部を内側に折り返した折り返し片6の下部にメッシュ体4が逢着Bされる。また該上段布帛2の3次元立体編物の下端部から5〜15mm垂れた位置で折り返された舌部10が設けられており、第2の開口からの雨の侵入を防止する。
【0017】
次に、通気構造の製作方法の一例を図3図6で説明する。まず、図3に示すように雨カッパの後見頃を形成する下段布帛3の上部に積層一体化された3次元立体編物5の下方で、かつ立体編物と重ならない位置にメッシュ布帛6の端部を逢着する(A)。次いで、3次元立体編物の厚み分を開けて上段布帛2の折り返し部Tから5〜15mm上方にメッシュ布帛を逢着する(B)。更に折り返し部Tから上部に折り曲げた折り返し片7の3次元立体編物の幅位置でメッシュ布帛を逢着する(C)。次に図4に示すように3次元立体編物の上面編地を接着剤層11を介して下段布帛3の上部に接合する。上記メッシュ布帛と折り返し部7との逢着及びメッシュ布帛と折り返し片上部での逢着(B)、(C)はメッシュ布帛と3次元立体編物を接着剤層11を介して下段布帛3の上部に接合する工程の後に行ってもよい。
【0018】
3次元立体編物を下段布帛3接合する方法は特に限定されないが、例えば、下段布帛3の上面に接着剤層11を設けた後、帯状の3次元立体編物5を接着剤層11上に積層し、その後、熱プレス機の成形型間に介装させて加熱、加圧することにより積層一体化することができる。加熱手段は加熱ヒーター、高周波、超音波などが適用できる。また、接着性樹脂フィルムを用いる場合は、上段布帛3と帯状3次元立体編物5との間に両面接着フィルムを介装させて積層し、その後、加熱、加圧することにより積層一体化することもできる。ここで用いる接着剤としては、例えば合成ゴム系接着剤、熱可塑性接着剤が用いられる。
【0019】
次に図5に示すようにメッシュ布帛は折り返し部との逢着部(C)から3次元立体編物の上部切断面を覆い、下段布帛3の上端部に逢着される。メッシュ布帛6が下段布帛との逢着部(A)、上段布帛の折り返し部との逢着部(B)、(C)から下段布帛の上端部に逢着(D)されるため、3次元立体編物5がメッシュ布帛6を介して下段布帛3と上段布帛2の重ね合わせ部4に包み込まれた状態で固定される。該メッシュ布帛6は3次元立体編物5の紫外線による劣化を防止するため、紫外線が透過し難い、例えば黒や紺色などの暗黒色系統の色が好ましい。暗黒色系統の色でない場合は、通気構造を形成する3次元立体編物5の連結糸(図示せず)が目立たない色、例えば上下段布帛の色に近い色を使用することが好ましい。次いで上段布帛2の先端部を内側に折り返した折り返し片7の上端部を上段布帛の裏面に止水テープ8で接合する。
【0020】
上面編地と下面編地を連結する多数の連結糸からなる3次元立体編物5は通気抵抗が少なく、かつ雨の侵入を阻止するために、厚さが5〜15mm、好ましくは8〜10mm(通気面積を大きくするには厚い程好ましいが、厚さ15mm以上の立体編物は市販されていない)。厚さが5mm以下では通気面積が少ない。幅は10〜40mm、好ましくは15〜25mmの3次元立体編物が使用される。また、3次元立体編物5の幅が10mm以下では立体編物の切断が困難である。幅が40mm以上では通気抵抗により通気性が低下する。雨衣以外の衣服に使用する3次元立体編物の厚さと幅は通気性とともに着心地やデザインなどを考慮して決定される。
【0021】
3次元立体編物5は、表裏二層の編地を繊維経0.05〜0.3mmが無数の連結糸で連結した構造であり、通常ダブルラッセル編機、ダブルトリコット編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成される。表裏面二層の編地を構成する糸としてはポリエステル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維などの疎水性の繊維が用いられる。また表裏面二層の編地を連結する連結糸は上記表裏面二層の編地と同じ繊維が使用されるが、通常圧縮回復率の優れたポリエステル系繊維が好ましく用いられる。
【0022】
本発明の通気構造を有する衣服は、衣服とシャツなどのアンダーウエアとの密着防止と、衣服着用時に重ね合せ部4に形成された第一の通気口Xに手を引掛けないよう、衣服の内側に通気性の裏地、例えばメッシュ布帛を取り付けることが好ましい。通気性のメッシュ布帛によりアンダーウエアと衣服との間に隙間が形成されて衣服の内部で通気性が向上し、かつアンダーウエアとのべとつき等がなく清涼感を保つことができる。
【0023】
図6は本発明の通気構造を有する雨衣21の前面模式図であり、左右の前身頃a,a’の上下二か所にそれぞれ通気構造4が設けられている。また、左右の脇見頃b、b’の上部に通気部24が設けられている。該通気部24は多数の通気孔を設けていても、上下の布帛を重ね合わせて上下の布帛の隙間にメッシュ布帛や薄い次元立体編物を設けてもよい。25は左右の脇見頃に設けられた脇ポケットである。帽子23は雨衣の首回りに予め取付けていても、ホックや面ファスナーなどで着脱自在に取付けてもよい。図7は雨衣21と帽子の背面模式図であり、後身頃の上下二カ所に通気構造4が設けられている。通気構造4はベンチュレーション効果による通気性向上させるため上下二カ所に設けることが好ましい。後身頃に設けられた下部通気構造の表面には再帰反射素材のパイピング27が施されている。また上部通気構造は肩甲骨の近傍に設けると背面での通気性が向上するため好ましい。また。雨衣に着脱自在に取付けられる帽子23の後方にも空気流出用の通気構造4が設けられ、帽子の前面から帽子内に侵入する風を通気構造4から後方に流出させて帽子が飛ぶのを防止している。
【0024】
図8はズボン29の前面をモデル的に示す模式図である。ズボン29では脚を動かし易いように通気構造4を膝下部に設けるのが好ましい。通気構造はズボンの全周であっても前半周であってもよい。また、ベルト又はゴムライン22の下部に、幅2〜3cmのメッシュ布帛を胴回り全周、半周、あるいは長さ5〜10cmのメッシュ布帛を複数取り付けるか、または、内径6.5〜15mmのアイレットを、例えば5〜8個取り付けて重ね合せ部4から流入する外気の排出口としてもよい。メッシュ布帛を胴回り全周又は半周取り付ける場合は、ベルトラインの下部と上段布帛を細幅の布帛で連結し、メッシュ布帛を補強することが好ましい。ベルト付近に設けられたメッシュ布帛、又はアイレットは上着を着用すると隠れるため雨水が流入することはない。31はポケットである。
【0025】
上着及びズボンに設けられた通気構造4の位置と形状は、布帛の種類、着用者の身体の大きさ、着用場所、デザイン等を考慮して適宜決定される。例えば後見頃の通気構造をハの字状に設けると腕をスムースに動かすことができ好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の通気構造を有する衣服は、型崩れがなく、かつ通気性に優れ、しかも通気用の開口が閉止されることがないため衣服内部に蓄積する熱気と湿気が外部に効率よく放散でき、作業服、ユニフォーム、カッターシャツ、ジャンバー、学生服等に適用される。特に内部に熱気と湿気が蓄積して蒸れやすいレインコート、ヤッケ、アノラックなどの雨衣に好適である。
【符号の説明】
【0027】
1 通気構造 2 上段布帛
3 下段布帛 4 重ね合せ部
5 3次元立体編物 6 メッシュ布帛
7 折り返し片 8 止水テープ
10 舌部
11 接着剤層 21 雨衣
22 ベルト又はゴムライン 23 帽子
25 脇ポケット 27 再帰反射素材のパイピング
29 ズボン 31 ポケット
A 逢着部 B 逢着部
C 逢着部 D 逢着部
X 第一の開口(3次元立体編物の上端切断面)
Y 第二の開口(3次元立体編物の下端切断面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8