【実施例】
【0014】
図1〜
図10に、実施例のレーザ加工装置4とその変形とを示す。
図1は、レーザ加工装置4とパレット交換機5とから成る、レーザ加工システム2を示す。パレット6はワーク20を載せ、パレット交換機5は、レーザ加工装置4との間で、パレット6を交換する。例えば加工済みのワークを載せたパレット6をレーザ加工装置4からパレット交換機5が搬出し、これと同時に、未加工のワークを載せたパレット6をパレット交換機5がレーザ加工装置4へ搬入する。
【0015】
パレット6はワーククランパ8を複数備え、長方形のパレット6の例えば各長辺に、ワーククランパ8を2個ずつ設置する。ただし長辺の1方にワーククランパ8を1個、他方に2個、あるいは各長辺に3個以上ずつ、長辺と短辺の各辺に各1個など、ワーククランパ8の個数と位置は任意である。また
図3に示すように、ワーククランパ8を、パレット6ではなく、レーザ加工装置4の機体に設置しても良い。実施例ではエアシリンダによりワーククランパ8を動作させるので、レーザ加工装置4内にエア等の配管を設ける。またパレット交換機5内では、ワーククランパ8を使用しても、しなくても良く、使用する場合、パレット交換機5にもエアの配管を設ける。なおエアの代わりに窒素等を用いても良く、また油圧、あるいはモータ等により、ワーククランパ8を動作させても良い。
【0016】
この明細書では、レーザ加工装置4の長手方向をx方向、短辺方向をy方向、鉛直方向をz方向とする。レーザヘッド支持体10はx方向に移動自在なクロスレール12に取り付けられ、クロスレール12に沿ってy方向に移動する。レーザヘッド支持体10は、例えばレーザ光源を備え、レーザヘッドからレーザ光を出射する。レーザ光の焦点高さは、ワーク20の肉厚、加工位置の深さ等に応じて変更自在である。なおレーザ加工装置4は図示しないカバーで覆われ、レーザ光源はレーザヘッド支持体10の外部に設けても良い。またワーク20は例えば金属板である。
【0017】
図2はパレット6を示し、ワーククランパ8は例えばパレット6の各長辺13,13に2個ずつ設置されている。ワーク載置部15は点状の頂部16を複数備える鉛直な板状の部材から成り、例えばパレット6の短辺14,14の間に、短辺14,14に対して複数平行に配置されている。ワーク載置部15の頂部16が、パレット6内でx方向にもy方向にも間隔を置いて設けられ、頂部16によりワークの底面を支持する。レーザ加工により生じたスラグは、ワーク載置部15,15の間を介して下方に落下、図示しないコンベアで機外へ排出される。
【0018】
図3は変形例のレーザ加工装置44を示し、ワーククランパ8を、パレット6'ではなく、レーザ加工装置44の機体に設ける。他の点では、
図1のレーザ加工装置4と同様である。
【0019】
図4〜
図8は、ワーククランパ8の構造を示す。ワーククランパ8の最上部のクランプ部材18は、鉛直の軸部24の上端に取り付けられている。軸部24はワーククランパ8のハウジング22内に収容され、軸部24の底部のフランジ25は、スプリングコイル等の付勢部材26により鉛直方向下向きに付勢されている。この付勢力が、クランプ部材18をワーク20に当接させる力となる。
【0020】
図4はクランプ状態のクランプ部材18を、
図5はアンクランプ状態のクランプ部材18を示す。
図4の状態から
図5の状態へ変化する間に、クランプ部材18は180°旋回するとともに下降し、
図5に示すように、アンクランプ部材18の上面はワーク20の上面よりも低い位置へ移動する。このためレーザヘッド支持体10の底部に設けられたレーザヘッド11は、
図5の状態のアンクランプ部材18と干渉せずに、ワーク20を端部まで加工できる。
【0021】
例えば軸部24の下端のフランジ25にカム部27が固定され、カム部27のカム溝28に、ハウジング22に固定のピン29が係合している。カム部27とピン29とでカム機構を構成し、カム部27の底部は、エアシリンダ30のピストン31により、鉛直軸回りに回転自在に支持され、ピストン31によって昇降する。なおエアシリンダ30はエアパイプ39からエアを供給されるが、エアの代わりに窒素ガス、オイル等の他の流体を用いても良い。
【0022】
クランプ部材18は、例えば
図6の矢印の向きに、軸部24と共に360°回転し、この間に高さ方向に少なくとも2往復する。実線で示すクランプ位置でクランプ部材18は低い位置にあり、パレット上のワーク端部に接触し、付勢部材26からの力でワークをクランプする。クランプ位置から180°回転した鎖線の位置18c(アンクランプ位置)で、クランプ部材18は最も下降し、クランプ部材18はパレット6の外側を向き、クランプ部材18の上面はワーク20の上面以下の高さとなる。このため、アンクランプ位置でクランプ部材18はレーザヘッド支持体10と干渉しない。そして実線で示す位置(クランプ位置)と鎖線の位置18c(アンクランプ位置)との間の中間位置18b,18dで、クランプ部材18は最上昇し、パレット6のフレーム13等を回避する。なお
図7に、カム溝28とピン29との係合を模式的に示す。
【0023】
図8は、円柱状のカム部27の表面に設けたカム溝28を展開して示し、
図8の左側のB-B線と右側のB'-B'線は同じ位置にある線である。ピン29は
図8の白抜き矢印の向きに移動し、B-B線からB'-B'線へ左から右へ移動する。これは
図6で、クランプ部材18が実線の位置から、位置18b→18c(アンクランプ位置)→18d→実線の位置の順に1回転することと対応する。ピン29が固定なので、カム溝28に対しピン29が上昇する場合、クランプ部材18が下降し、ピン29が下降すると、クランプ部材18が上昇する。クランプ部材18の位置を説明する。垂直溝32にピン29があると、
図6の実線のクランプ位置にクランプ部材18が現れ、垂直溝33では
図6の鎖線18cのアンクランプ位置にクランプ部材18が現れる。垂直溝34では鎖線18bの中間位置にクランプ部材18が現れ、垂直溝35では鎖線18dの中間位置にクランプ部材18が現れる。
【0024】
カム溝28には2種類の傾斜溝36,37があり、傾斜溝36は傾斜溝37よりも低い位置にあり、共に垂直溝32-35間を接続する。そしてカム溝28をピン29が下降する場合、ピン29は傾斜溝36を通り、上昇する場合は傾斜溝37を通る。これは、エアシリンダと付勢部材により昇降させるので、カム部27はなるべく鉛直に昇降しようとするためである。垂直溝32,33は最高点の高さが共通であるが、垂直溝32では、クランプ部材がパレット上のワークに接触するため、最高点までピン29は上昇しない。垂直溝32でのピン29の最上昇位置の範囲をSで示す。ピン29は垂直溝33の最高点まで上昇し、このためアンクランプ状態で、クランプ部材の上面はワークの上面よりも低い位置にある。以上のようにして、軸部24は旋回と同時に昇降し、クランプ部材18はクランプ位置とアンクランプ位置の間を、昇降後に旋回するものと比較して速く移動する。
【0025】
ピン29を軸部24側に、カム部27'をハウジング22側に設けても良い。このような変形例のカム溝の配置を
図9に示す。
図8のカム溝28とは、垂直溝32'-35'の上下が反転し、傾斜溝36',37'は
図8の傾斜溝36,37に対し上下左右が反転している。なお実施例では、付勢部材26を上に、カム部27を下に配置したが、これらの上下を逆にしても良い。また実施例では4つの位置の間で、クランプ部材を回転させるが、クランプ位置とアンクランプ位置の間で往復させても良い。この場合、
図6の実線のクランプ位置から中間位置18bを介してアンクランプ位置18cの間を、往復させればよい。
【0026】
図10はレーザ加工システムの制御系を示し、メインコントローラ40は、レーザヘッド支持体10,クロスレール12、パレット交換機5を制御する。メインコントローラ40がこれらを直接制御しても、あるいはこれらに設けられた個別のコントローラを介して制御しても良い。クランパコントローラ42は、ワーククランパ8毎のエアシリンダを個別に制御し、メインコントローラ40と一体でも別体でも良い。
【0027】
メインコントローラ40からの指令により、レーザヘッド支持体10はクロスレール12により所定のルートに沿って移動し、ワークを切断する。レーザヘッド支持体10の位置は、レーザヘッド支持体10あるいはメインコントローラ40等から、クランパコントローラ42に送出され、レーザヘッド支持体10がクランプ部材と干渉する位置まで接近する場合、クランプ部材を180°回転させ、アンクランプ位置へ退避させる。そしてアンクランプ位置でクランプ部材の上面は、パレット上のワークの上面以下の高さにあり、レーザヘッド支持体とクランプ部材は干渉しない。またワーククランパは個別に制御できるので、1個のワーククランパが退避しても、他のワーククランパがワークをクランプし、ワークは位置ずれも回転も起こさない。これらのためワークを端まで加工でき、ワークの歩留まりが向上する。
【0028】
実施例では以下の効果が得られる。
1) レーザヘッド支持体10との干渉を回避するように、クランプ部材18をアンクランプ位置へ退避させるので、ワークを端まで加工でき、歩留まりが向上する。
2) 複数のワーククランパ8を用いると、1個のクランプをアンクランプ位置へ退避させても、残りのワーククランパでワークをクランプできる。特に3個以上のワーククランパ8を用いると、1個のクランプをアンクランプ位置へ退避させた際に、2個以上のーククランパでワークをクランプできるので、加工中のワークの位置ずれをより確実に防止できる。
3) カム部27とピン29とエアシリンダ30を用いることにより、クランプ部材18を昇降させながら回転させ、クランプ位置とアンクランプ位置の間を円滑に移動させることができる。
4) エアをエアシリンダ30が消費するのは、クランプ部材18を上昇させる時のみで、クランプ時にもアンクランプ時にもエアを消費しない。従って、エアの消費量が少ない。