(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような排水弁装置において、洗浄水タンクから便器へ供給された洗浄水は、便器の導水路を流れるときに圧力損失を受ける。この圧力損失が大きくなると、導水路内に溜まっていた空気が排水弁装置に逆流して排水弁装置内が満水にならず、結果として排水弁装置の弁体の閉じるタイミング(洗浄水タンクの死水水位)がバラついてしまう。これにより、洗浄水タンクから便器へ供給される洗浄水の量にバラつきが生じてしまうことで便器洗浄性能が損なわれ、確実な便器洗浄を行なうことが難しいという問題がある。
特に、便器の導水路の下流端であり、ボウル面に洗浄水を吐水するリム吐水口の開口面積が小さいと、導水路から排水弁装置への空気の逆流が起きやすくなり、上述した問題が顕著となる。
【0005】
本件発明者は、洗浄水タンクから便器へ供給された洗浄水が便器の導水路内で受ける圧力損失による排水弁装置への影響を低減する構造について、鋭意検討を重ねてきた。その結果、排水弁装置の下流端付近に流路の開口断面積を縮小させる絞り部を設けるような構成とすることが有効であることを知見した。この絞り部が排水弁装置内を流れる洗浄水の流れの抵抗となることで、排水弁装置から便器へ排出される洗浄水の瞬間流量を低減させ、これにより洗浄水が導水路内で受ける圧力損失の影響が小さくなることが分かった。
【0006】
しかしながら、上述したような絞り部を排水弁装置に設けると、排水弁装置から排出される洗浄水の瞬間流量が低下するため、オーバーフロー管から排水弁装置を通して便器へ排出される洗浄水の瞬間流量も低下してしまい、オーバーフロー能力が低下してしまう。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、洗浄水タンクから便器へ供給される洗浄水の量にバラつきが生じることを抑制しつつ、オーバーフロー能力の低下を抑制することができる排水弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る排水弁装置は、便器を洗浄するための洗浄水を貯える洗浄水タンクの排水口に取り付けられる排水弁装置であって、上記排水口に取り付けられ、上記洗浄水タンク内の洗浄水を上記便器へ導く流路を内側に形成する排水部本体と、上記排水部本体の流路を開閉する排水弁体と、上記排水部本体の流路が閉鎖された状態のときに上記排水弁体が当接する弁座部と、上記排水部本体の側方に設けられ、上記排水部本体の流路と連通するオーバーフロー管と、を備えており、上記排水部本体には、上記弁座部よりも下流側において、上記排水部本体の流路の開口断面積を縮小させる絞り部が全周に亘って設けられ、上記絞り部には、外側に向かって切り欠かれた切り欠き部が形成される。
【0009】
この構成によれば、排水部本体には、弁座部よりも下流側において、排水部本体の流路の開口断面積を縮小させる絞り部が全周に亘って設けられているため、洗浄水タンクの死水水位のバラつきを抑制することができる。また、絞り部には、外側に向かって切り欠かれた切り欠き部が形成されているため、切り欠き部を設けない場合に比べて絞り部における排水部本体の流路の開口断面積を大きく確保することができる。したがって、洗浄水タンクから便器へ供給される洗浄水の量にバラつきが生じることを抑制しつつ、オーバーフロー能力の低下を抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る排水弁装置において、好ましくは、上記切り欠き部は、平面視において、上記排水部本体の流路に対して上記オーバーフロー管が連通した連通部の投影上に形成される。
【0011】
この構成によれば、切り欠き部は、平面視において、排水部本体の流路に対してオーバーフロー管が連通下連通部の投影上に形成されているため、オーバーフロー管に流入して連通部から排水部本体の流路内に流入した洗浄水が、内側への突出量の少ない部分の絞り部に衝突しやすくなるため、オーバーフロー管から排水部本体の流路を介して便器に排出される洗浄水の瞬間流量の低下を抑制することができ、排水弁装置のオーバーフロー能力の低下を抑制することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る排水弁装置において、好ましくは、この排水弁装置が上記排水口に取り付けられた上記洗浄水タンクと、この洗浄水タンクが一体的に形成された便器本体と、を有することを特徴とするワンピース式水洗大便器。
【0013】
この構成によれば、排水弁装置を洗浄水タンクに取り付ける際、金具等が排水口から落下した場合に排水弁装置の排水部本体の流路の開口断面積が小さいと、手が挿入しにくくなるため落下した金具等が拾いにくくなっている。しかし、本発明の一態様に関わる排水弁装置は、切り欠き部を設けない排水弁装置に比べて絞り部における排水部本体の流路の開口断面積を大きく確保することができている。そのため、排水口から落下した金具等を拾いやすくなっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排水弁装置によれば、洗浄水タンクから便器へ供給される洗浄水の量にバラつきが生じることを抑制しつつ、オーバーフロー能力の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0017】
<水洗大便器の構成>
まず、
図1及び
図2により、本発明の一実施形態による排水弁装置が適用されるワンピースの水洗大便器について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による排水弁装置が適用されたワンピースの水洗大便器の斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態による排水弁装置が適用されたワンピースの水洗大便器の側面断面図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態による排水弁装置1が適用されたワンピースの水洗大便器2は、便器本体部4と、この便器本体部4の上面後方に一体的に形成された洗浄水タンク部6とを備えている。洗浄水タンク部6は、便器を洗浄するための洗浄水を貯える貯水タンク8を備えている。また、この貯水タンク8の底部8aには、上下方向に貫く排水口10が設けられている。この排水口10は、より厳密には、詳細は後述する本実施形態の排水弁装置1が取り付けられる貯水タンク8の底部8aの取付穴8bに相当している。
なお、本実施形態においては、便器本体部4と洗浄水タンク部6とが一体的に形成されたワンピースの水洗大便器としたが、本発明はこれに限らず、便器本体部4と洗浄水タンク部6とが別体に形成されたツーピースの水洗大便器にも適用可能である。
【0019】
水洗大便器2の便器本体部4は、その前方側に設けられたボウル部12と、このボウル部12の上縁に形成されたリム部14と、このリム部14の内周に形成された棚部16とを備えている。
また、便器本体部4のボウル部12の底部には、排水トラップ管路18の入口18aが開口し、この排水トラップ管路18は、上方に延びる上昇管18bと、下方に延びる下降管18cを備えている。この排水トラップ管路18の形状から分かるように、本実施形態による水洗大便器2は、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式の水洗大便器である。
なお、水洗大便器2としては、サイホン式の水洗大便器に限定されず、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、洗い落し式の水洗大便器等の他のタイプの水洗便器にも適用可能である。
【0020】
つぎに、便器本体部4は、洗浄水タンク部6の排水口10から排出される洗浄水が流入する導水路20と、リム部14の前方から見て左側中央に形成された第1リム吐水口22と、リム部14の前方から見て右側後方に形成された第2リム吐水口24(
図1参照)とを備えている。
また、導水路20は、下流に向かってリム部14の後壁面14a付近の分岐領域20aまで延びた後、この分岐領域20aから第1リム吐水口22まで延びる第1導水路20bと、分岐領域20aから第2リム吐水口24まで延びる第2導水路20cと備えており、導水路20の洗浄水は、分岐領域20aから第1導水路20bを経て第1リム吐水口22に到達する一方、分岐領域20aから第2導水路20cを経て第2リム吐水口24に到達し、第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24のそれぞれから吐水され、ボウル部12が洗浄され、汚物が排水トラップ管路18から排出されるようになっている。
【0021】
<洗浄水タンクの構成>
つぎに、
図2及び
図3により、本発明の一実施形態による排水弁装置が適用されたワンピースの水洗大便器の洗浄水タンク部の内部構造について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による排水弁装置が適用されたワンピースの水洗大便器の洗浄水タンク部について、貯水タンクの上蓋及び前側壁面を省略して内部構造を前方斜め上方から見た斜視図である。
【0022】
図2及び
図3に示すように、本発明の一実施形態による排水弁装置1が適用されたワンピースの水洗大便器2の洗浄水タンク部6の貯水タンク8内には、この貯水タンク8内に洗浄水を供給する給水装置26と、貯水タンク8に貯えられた洗浄水について排水口10を開放して便器本体部4の導水路20に流出させる、詳細は後述する排水弁装置1が設けられている。この排水弁装置1は、操作装置28の操作レバー30の操作により1本の操作ワイヤ32が引き上げられることによって弁体34が上昇して貯水タンク8の排水口10が開放される、いわゆる、ワイヤ駆動式の直動型の排水弁装置である。
【0023】
また、給水装置26は、外部の給水源(図示せず)に接続され且つ貯水タンク8の底部から上方に延びるように設けられた給水管36と、この給水管36の上端部に取り付けられ、給水管36から給水される洗浄水の貯水タンク8内への吐水と止水を切り替える給水バルブ38と、貯水タンク8内の水位の変動に応じて上下動して給水バルブ38による吐水と止水を切り替えるフロート40とを備えている。
【0024】
給水管36の外周側下端部には、複数の吐水口42が形成され、給水バルブ38を通過した洗浄水が吐水口42から貯水タンク8内に吐水されるようになっている。
また、給水装置26においては、排水弁装置1により、貯水タンク8内の洗浄水が便器に排水されると、洗浄水の水位が低下してフロート40が下降し、それにより給水バルブ38が開き、吐水口42からの吐水が開始され、洗浄水タンク部6の外部の給水源(図示せず)から貯水タンク8内への吐水が開始されるようになっている。
さらに、吐水が継続されて貯水タンク8内の水位が上昇すると、フロート40が上昇し、それにより給水バルブ38が閉鎖され、吐水口42からの吐水が止水されるようになっている。これにより、貯水タンク8内の洗浄水の水位が満水時の所定水位(以下「満水水位W0」)に維持されるようになっている。ここで、満水水位W0は、実質的には、排水開始前の貯水タンク8内の初期水位にも相当している。
なお、給水装置26は、本実施形態では説明を省略するが、リフィール管(図示せず)等を備えており、このリフィール管(図示せず)から流出する一部の洗浄水が、オーバーフロー管44内に流れ込み、便器本体部4の導水路20を経て補給水としてボウル部12内に供給されることができるようになっている。
【0025】
また、
図3に示すように、排水弁装置1の動作を操作する操作装置28は、貯水タンク8の外部に取り付けられた操作レバー30と、貯水タンク8の内部に設けられて操作レバー30に連結されるワイヤ巻取り装置46を備えている。このワイヤ巻取り装置46は、操作レバー30が手動により回転操作されたときの回転力がワイヤ巻取り装置46のケーシング46a内のプーリやギヤ等の回転機構部材(図示せず)に伝達されるようになっている。また、ワイヤ巻取り装置46と排水弁装置1とは、操作ワイヤ32によって互いに連結されており、操作装置28の操作レバー30を手動で回転操作することにより、ワイヤ巻取り装置46を介して1本の操作ワイヤ32が引き上げられ、弁体34が上昇して貯水タンク8の排水口10が開放されるようになっている。
【0026】
なお、本実施形態では、操作装置28の操作レバー30を手動で回転操作することによりワイヤ巻取り装置46を操作し、操作ワイヤ32の引き上げ操作が可能な例について説明するが、操作レバー30の代わりに押しボタンのようなものを採用してもよいし、操作レバーを回動させるためのモータ等の駆動手段を設け、操作装置の操作レバーやワイヤ巻取り装置を電動で駆動させるような形態にしてもよい。また、外部に設定された操作ボタン又は人感センサーからの指令信号によって駆動手段の作動を自動的に制御するような操作形態にしてもよい。
【0027】
<排水弁装置の構成>
つぎに、
図1〜
図6を参照して、本発明の一実施形態による排水弁装置の詳細について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による排水弁装置を示す正面図である。
図5は、本発明の一実施形態による排水弁装置を示す正面断面図である。
図6は、
図4のVI−VI線に沿って見た断面図である。
【0028】
図3〜
図6に示すように、本実施形態の排水弁装置1は、貯水タンク8の底部8aの取付穴8bに取り付けられ且つ便器本体部4の導水路20に連通する排水口10を形成する排水部本体部材48を備えている。この排水部本体部材48の側方には、上下方向に延びるオーバーフロー管44が設けられており、このオーバーフロー管44内の下方流路44aの下流側端部は、連通部44bにおいて排水部本体部材48の内側に形成されている排水流路50と連通している。
また、
図3〜
図6に示すように、排水部本体部材48は、管状の排水流路50を形成し且つ貯水タンク8の底部8aの取付穴8bに取り付けられる側壁部52と、この側壁部52の外側に所定間隔を置いて環状に形成され且つ貯水タンク8の底部8aの上側面8cに取り付けられるベース部54を備えている。
さらに、
図5に示すように、側壁部52とベース部54との間に形成される環状の空間には、パッキン等のシール部材56が取り付けられており、このシール部材56により、ベース部54の外側の洗浄水が貯水タンク8の底部8aの取付穴8bと側壁部52の外側面52aとの隙間から漏出しないように密封されている。
また、
図5に示すように、排水部本体部材48の側壁部52の外側面52aは、貯水タンク8の底部8aの取付穴8bに挿入されてシール部材56の下面よりも下方に延び、貯水タンク8の底部8aの下側面8dとほぼ面一となるように位置し、排水流路50の流出口50aを形成している。
【0029】
つぎに、
図5、6に示すように、排水弁装置1は、排水部本体部材48を貯水タンク8の底部8aの取付穴8bに取り付けた状態で固定する固定部58を備えている。この固定部58は、一対の皿ねじ60,62を備えている。
また、固定部58は、排水部本体部材48の側壁部52の内側面52cに一体的に形成されて排水流路50内に突出し且つ各皿ねじ60,62の取付穴64,66が上下方向に貫くように形成されている一対の皿ねじ取付部68,70を備えている。
さらに、固定部58は、各皿ねじ取付部68,70に取り付けられた各皿ねじ60,62の下方部分にそれぞれ螺合される一対の固定金具72,74を備えている。
【0030】
各固定金具72,74の外側先端部72a,74aは、排水部本体部材48の側壁部52よりも外側に位置しており、各固定金具72,74は、排水部本体部材48の側壁部52の下端面52bよりも下方に位置している。
また、各皿ねじ60,62をその中心軸線回りに締め付ける方向に回転させると、各固定金具72,74を上昇させるように調整することができるようになっており、各固定金具72,74の外側先端部72a,74aの上面72b,74bが貯水タンク8の底部8aの下側面8dに当接することにより、貯水タンク8の底部8aが上方の排水部本体部材48のベース部54と下方の各固定金具72,74とによって挟持されるようになっている。そして、このように貯水タンク8の底部8aが排水部本体部材48のベース部54と各固定金具72,74とにより挟持された状態で各皿ねじ60,62を完全に締め付けると、排水部本体部材48が貯水タンク8の底部8aに対して完全に固定されるようになっている。
【0031】
また、排水部本体部材48の排水流路50の流入口50bには、その上縁全周に亘って形成され且つ上方に突出する弁座部78が設けられている。
さらに、弁座部78には、弁体34が当接可能に設けられており、
図5に鎖線34で示すように、弁体34が弁座部78に当接して排水流路50の流入口50bを閉止した状態では、排水流路50(排水口10)が閉鎖された状態となり、貯水タンク8内の洗浄水が便器本体部4の導水路20に供給されないようになっている。なお、オーバーフロー管44と排水流路50との連通部44bは、弁座部78よりも下流側(下方)に形成されている。そのため、弁体34が弁座部78に当接して排水流路50の流入口50bを閉止した状態においても、オーバーフロー管44に流入した洗浄水は連通部44bから排水流路50を経由して便器本体部4の導水路20に排出される。
【0032】
図5、6に示すように、排水部本体部材48の側壁部52の内側面52cには、排水流路50の開口断面積を縮小させる絞り部53が、内側面52cの全周に亘って設けられている。絞り部53は、弁座部78よりも下流側(下方)、且つオーバーフロー管44と排水流路50との連通部44bよりも下流側(下方)に設けられている。
また、絞り部53には、排水流路50の開口断面積が広がる方向(外側)に向かって切り欠かれた切り欠き部53aが形成されている。この切り欠き部53aは、平面視において、連通部44bの投影上(連通部44bに対向した内側面52cに向けて、平面視で連通部44bの左右両端部を直線状に延ばした延長線X1,X2上)に形成されている。この切り欠き部53aが形成されることにより、絞り部53は、内側に向けてわずかに突出した第1絞り部53bと、内側に向けて第1絞り部53bよりも大きく突出した第2絞り部53cと、を有する。
【0033】
図5に示すように、弁体34は、上下方向に延びる排水弁軸部材80の下端部に固定されている。この排水弁軸部材80の上端部には、操作ワイヤ32の下端接続部32aが上下方向に摺動可能に接続されるフック部80aが一体的に設けられている。
また、排水弁軸部材80は、排水部本体部材48の上方に設けられたハウジング82内で上下動可能に設けられている。特に、排水弁軸部材80は、操作装置28の操作レバー30の操作により1本の操作ワイヤ32が引き上げられることによってフック部80aが引き上げられて上昇するようになっている。そして、弁体34が排水弁軸部材80と共に上昇するし、排水流路50の流入口50bが開放され、排水流路50(排水口10)が開放された状態となり、貯水タンク8内の洗浄水が便器本体部4の導水路20に供給されるようになっている。
なお、
図5に実線で示す弁体34においては、弁座部78に対して最大の上昇高さ(最大ストローク)H1で引き上げられて大洗浄モードの便器洗浄が開始される状態を示している。ちなみに、
図5では、小洗浄モードの便器洗浄が開始される状態の弁体34の上昇高さをH2で示している。
【0034】
また、
図3〜
図5に示すように、排水部本体部材48は、弁座部78から外側に向かって所定間隔を置いた位置から排水部本体部材48の上端部まで上下方向に延びる複数の支柱部84を備え、これらの支柱部84は、周方向に沿って所定間隔を置いて配置されており、隣り合う支柱部84同士の間に排水弁装置1の外側の洗浄水を排水流路50(排水口10)へ流入させるための複数の連通口86を形成している。
さらに、
図3〜
図5に示すように、ハウジング82の側面には、複数の縦穴82aが形成され、ハウジング82の内側とその外側の貯水タンク8の内部は、これらの複数の縦穴82aによって連通している。これにより、排水弁軸部材80と弁体34は、弁座部78に対して上昇している状態では、ハウジング82内及び貯水タンク8内の水位の低下と共に、下降するようになっている。
なお、
図5に示すように、ハウジング82の内部には、排水弁軸部材80及び弁体34以外にも、大洗浄モードと小洗浄モードのそれぞれの場合の便器洗浄が開始されるタイミングを調整するための種々の関連部材等が設けられているが、これらの関連部材については、省略しても、操作ワイヤ32による排水弁軸部材80及び弁体34の引き上げ機能は最低限確保することができるため、説明は省略する。
【0035】
また、
図3及び
図5に示すように、排水弁装置1の大洗浄モードにおける弁体34の開弁時の状態では、使用者が操作装置28の操作レバー30を所定の大洗浄モードを実行する方向に回転操作すると、操作装置28のワイヤ巻取り装置46により操作ワイヤ32が所定の最大量の巻き取り量で巻き取られ、排水弁軸部材80及び弁体34が小洗浄モード開始時の上昇高さH2よりも高い最大の上昇高さ(最大ストローク)H1で引き上げられ(H1>H2)、貯水タンク8内から比較的多い洗浄水量の洗浄水がワンピースの水洗大便器2の便器本体部4の導水路20に供給され、大洗浄モードによる便器洗浄が開始されるようになっている。
【0036】
一方、
図3及び
図5に示すように、排水弁装置1の小洗浄モードにおける弁体34の開弁時の状態では、使用者が操作レバー30を所定の小洗浄モードを実行する方向に回転操作すると、操作装置28のワイヤ巻取り装置46により大洗浄モードの場合の最大巻き取り量よりも少ない巻き取り量で巻き取られ、排水弁軸部材80及び弁体34が、大洗浄モード開始時の最大上昇高さ(最大ストローク)H1よりも低い小洗浄モード開始時の上昇高さH2で引き上げられ、貯水タンク8内から大洗浄モードによる洗浄水量よりも少ない洗浄水量の洗浄水がワンピースの水洗大便器2の便器本体部4の導水路20に供給され、小洗浄モードによる便器洗浄が開始されるようになっている。
【0037】
また、
図3及び
図5に示すように、排水弁装置1においては、大洗浄モードと小洗浄モードのそれぞれの操作ワイヤ32の引き上げ量に応じて弁体34が操作ワイヤ32により引き上げられた後、所定の動作をしながら、水位の低下と共にさらに下降するようになっている。そして、
図5に鎖線で示すように、弁体34が弁座部78に当接して、排水口10、より厳密には、排水流路50の流入口50bが閉止された状態となり、排水弁装置1の大洗浄モード又は小洗浄モードにおける排水が終了するようになっている。そして、貯水タンク8内の洗浄水は、給水装置26による給水によって、所定の止水水位(満水水位W0)まで貯水されるようになっている。
【0038】
つぎに、
図1〜
図6を参照して、本発明の一実施形態による排水弁装置の動作及び作用について説明する。
図1〜
図6に示すように、使用者が操作装置28の操作レバー30を所定の方向に回転操作し、大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれかの洗浄モードによる便器洗浄を開始すると、操作装置28のワイヤ巻取り装置46により操作ワイヤ32が巻き取られて引き上げられ、大洗浄モードの場合には、排水弁軸部材80及び弁体34が最大の上昇高さH1まで上昇し、小洗浄モードの場合には、排水弁軸部材80及び弁体34が最大の上昇高さH1よりも低い所定の上昇高さH2まで上昇し、排水部本体部材48の排水流路50の流入口50bが開放される。
そして、貯水タンク8内の洗浄水が排水部本体部材48の連通口86の外側から内部に流入し、排水流路50の流入口50bから排水流路50内に流入すると共に、ハウジング82内の洗浄水についても、排水流路50の流入口50bから排水流路50内に流入する。
排水流路50の流入口50bから排水流路50内に流入した洗浄水のうち、排水部本体部材48の側壁部52の内側面52c付近を流れる洗浄水の一部は、内側面52cに形成された絞り部53に衝突することで瞬間流量が低減した後に便器本体部4の導水路20に供給される。導水路20の洗浄水は、第1リム吐水口22及び第2リム吐水口24のそれぞれから吐水され、ボウル部12が洗浄されて汚物が排水トラップ管路18から排出される。
【0039】
<瞬間流量について>
次に、
図6〜8を参照して、本発明の一実施形態による排水弁装置から排出される洗浄水の瞬間流量について説明する。
図7は、(a)排水流路に設ける絞り部に切り欠き部を設けない排水弁装置100を示した図であり、(b)排水流路の一部に絞り部を設けた排水弁装置200を示した図である。
図8(a)〜(c)は、排水弁装置1,100,200それぞれの開弁時間に対して排水弁装置から排出される瞬間流量について測定した実験データのグラフである。
ここで、
図8の横軸は、弁体が開弁してからの時間を示し、
図8の縦軸は、排水弁装置から排出される洗浄水の瞬間流量を示している。
【0040】
図6に示すように、本実施形態の排水弁装置1には、内側面52cに設けられた排水流路50の開口断面積を縮小させる絞り部53に対して、排水流路50の開口断面積を拡大させる切り欠き部53aが形成されている。
一方で、
図7(a)に示すように、排水弁装置100は、本実施形態の排水弁装置1と同じように、内側面152cに排水流路150の開口断面積を縮小させる絞り部153が設けられている一方で、本実施形態の排水弁装置1のように絞り部に対して切り欠き部は設けられていない。すなわち、この絞り部153における排水流路150の開口断面積S100は、本実施形態の排水弁装置1の絞り部53における排水流路50の開口断面積S1よりも小さい。
また、
図7(b)に示すように、排水弁装置200は、内側面252cの一部に排水流路250の開口断面積を縮小させる絞り部253が設けられている。なお、この絞り部253は、全周に亘っては設けられておらず一部に設けられている。すなわち、この絞り部253における排水流路250の開口断面積S200は、本実施形態の排水弁装置1の絞り部53における排水流路50の開口断面積S1よりも大きい。
【0041】
図8では、排水弁装置1,100,200それぞれの開弁時間に対して排水弁装置から排出される瞬間流量についての測定を複数回繰り返し実施し、その実験データをグラフに示している。
【0042】
図8(a)、(b)に示すように、本実施形態の排水弁装置1および
図7(a)に示したような排水弁装置100は、便器本体部4の導水路20へ供給される洗浄水の瞬間流量のバラつきが小さい。一方で、
図8(c)に示すように、
図7(b)に示したような排水弁装置200は、便器本体部4の導水路20へ供給される洗浄水の瞬間流量のバラつきが大きい。このことから、排水弁装置の排水流路に設ける絞り部は、排水弁装置200のように一部に設けるのではなく、排水弁装置1,100のように全周に亘って設けた方が、弁体の閉じるタイミング(貯水タンク8の死水水位)のバラつきを抑制することができ、貯水タンク8から便器本体部4の導水路20に供給される洗浄水の量のバラつきを抑制できることが分かった。
【0043】
そして、
図8(a)、(b)に示すように、本実施形態の排水弁装置1は、絞り部53における排水流路50の開口断面積S1を排水弁装置100の開口断面積S100より大きく確保しつつも、便器本体部4の導水路20へ供給される洗浄水の瞬間流量のバラつきの抑制について、切り欠き53を設けていない排水弁装置100とほぼ同様の効果を得ることができている。
【0044】
<作用効果>
つぎに、上述した本発明の一実施形態による排水弁装置1における作用効果について説明する。
まず、本発明の一実施形態による排水弁装置1によれば、排水部本体部材48の側壁部52の内側面52cには、排水流路50の開口断面積を縮小させる絞り部53が、内側面52cの全周に亘って設けられており、絞り部53には、排水流路50の開口断面積が広がる方向(外側)に向かって切り欠かれた切り欠き部53aが形成されている。これにより、弁体34の閉じるタイミング(貯水タンク8の死水水位)のバラつきを抑制しつつ、絞り部53における排水流路50の開口断面積S1を大きく確保することができる。したがって、貯水タンク8から便器本体部4の導水路20に供給される洗浄水の量にバラつきが生じることを抑制しつつ、オーバーフロー能力の低下を抑制することができる。
【0045】
また、切り欠き部53aは、平面視において、連通部44bの投影上(連通部44bに対向した内側面52cに向けて、平面視で連通部44bの左右両端部を直線状に延ばした延長線X1,X2上)に形成されている。これにより、オーバーフロー管44に流入して連通部44bから排水流路50内に流入した洗浄水が、第2絞り部53cよりも突出量が少ない第1絞り部bに衝突しやすくなるため、オーバーフロー管44から排水流路50を介して便器本体部4の導水路20に排出される洗浄水の瞬間流量の低下を抑制することができ、排水弁装置1のオーバーフロー能力の低下を抑制することができる。
【0046】
また、排水弁装置1が適用された水洗大便器2は、便器本体部4と洗浄水タンク部6とが一体的に形成されたワンピースの水洗大便器である。そのため、排水弁装置1を貯水タンク8の底部8aに取り付ける際、金具等が排水口10から落下した場合に排水弁装置1の排水流路50の開口断面積が小さいと、手が挿入しにくくなっているため落下した金具等が拾いにくくなっている。しかし、本発明の一実施形態による排水弁装置1によれば、切り欠き部53aを設けない排水弁装置に比べて絞り部53における排水流路50の開口断面積S1を大きく確保することができているため、排水口10から落下した金具等を拾いやすくなっている。
【0047】
前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。