(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脱墨泡収集排出部は、脱墨槽内で開口し、脱墨泡を落とし込む受泡部を有し、前記掻き寄せ部材は、脱墨槽内の液面上に浮遊する脱墨泡を回転することにより前記受泡部に掻き寄せるように構成され、前記掻き寄せ部材駆動部は、前記掻き寄せ部材を回転駆動することを特徴とする請求項1に記載の脱墨装置。
前記脱墨泡検出部は、前記受け取り部に対する光の照射位置が異なる位置となるように光センサを複数配置し、前記複数の光センサによる脱墨泡検出の有無の組合せにより、脱墨泡の発生量を判定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の脱墨装置。
脱墨槽内のパルプ溶液の基準液位を検出する液位検出部を備え、前記基準液位を検出した場合は、掻き寄せ部材を駆動させ、脱墨槽内の液面上に浮遊する脱墨泡を受泡部に掻き寄せた後、前記脱墨泡検出部における判定手段により脱墨泡の発生量を判定することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の脱墨装置。
運転中断または運転終了の少なくともいずれかのとき、洗浄液供給部による洗浄液の供給量を、通常運転時より多くなるよう調整する調整手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の脱墨装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
損失量の測定は、脱墨排液量を直接的に測定することが好ましい。しかし、脱墨排液は泡沫として排出されるので、泡の量をセンサ等を用いて直接的に測定することは困難である。
【0008】
このため、排水タンクに廃棄した泡沫状の脱墨排液(脱墨泡)を破泡処理等を行った後に沈殿槽に廃棄排水として移送し、この移送量や移送に要する時間を疑似的に損失量として扱い、脱墨槽で発生させる気泡量を制御する指標としていた。
【0009】
しかし、排水タンクには他の経路からも排水が流入するので、この他の経路から流入する排水量を算出する減算する必要があり、計算が複雑となって測定結果を出すまでの時間が長くなる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の脱墨装置は、古紙を離解してなるパルプ溶液を脱墨する脱墨槽と、脱墨槽で生じる脱墨排液の脱墨泡を集めて排出する脱墨泡収集排出部を備えた脱墨装置において、
前記脱墨槽は、脱墨槽内のパルプ溶液中に気泡を放出する気泡放出装置が配置され、さらに、前記気泡放出装置に空気を供給する空気供給装置を備え、
前記脱墨泡収集排出部は、脱墨泡を落とし込む受泡部と、脱墨槽内で移動して脱墨槽内の液面上に浮遊する脱墨泡を前記受泡部に掻き寄せる掻き寄せ部材と、掻き寄せ部材を駆動する掻き寄せ部材駆動部を有し、前記受泡部は、前記掻き寄せ部材により掻き寄せられた脱墨泡を受け取る受け取り部と、前記受け取り部上の脱墨泡の発生量を検出する脱墨泡検出部と、前記受け取り部上の脱墨泡bを受容し、排出路を介して脱墨槽の外部に排出する脱墨泡排出部を有し、前記脱墨泡検出部は、前記受け取り部の上方に対向して設置され、光を照射するとともに、入射する光を受光する光センサと、前記受け取り部は前記光センサから照射された光が受け取り部の表面で反射可能となるように構成され、前記受け取り部の表面で反射された光を光センサにより検出することにより脱墨泡の発生量を判定する判定手段とを備える、ことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の脱墨装置において、前記脱墨泡収集排出部は、脱墨槽内で開口し、脱墨泡を落とし込む受泡部を有し、前記掻き寄せ部材は、脱墨槽内の液面上に浮遊する脱墨泡を回転することにより前記受泡部に掻き寄せるように構成され、前記掻き寄せ部材駆動部は、前記掻き寄せ部材を回転駆動することを特徴とするものである。
【0012】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の脱墨装置において、前記脱墨槽は、槽体が二重の円筒状体をなし、二重の円筒状体の内壁の内部に前記脱墨泡の排出路を一体的に設けていることを特徴とするものである。
【0013】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3に記載の脱墨装置において、
前記判定された脱墨泡の発生量に応じて、空気供給装置の空気供給量を制御する制御部を備えることを特徴とするものである。
【0014】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項4に記載の脱墨装置において、
脱墨槽に界面活性剤を投入する界面活性剤投入手段をさらに備え、
前記判定された脱墨泡の発生量に応じて、脱墨槽への界面活性剤の投入量を制御する制御部を備えることを特徴とするものである。
【0015】
更に、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の脱墨装置において、前記判定された脱墨泡の発生量が少ない場合であって、空気供給装置の空気供給量を最大値まで増加させても脱墨泡の発生量が適正量とならない場合に限り、前記脱墨槽への界面活性剤の投入を行うことを特徴とするものである。
【0016】
更に、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6に記載の脱墨装置において、
前記脱墨泡検出部は、前記受け取り部に対する光の照射位置が異なる位置となるように光センサを複数配置し、前記複数の光センサによる脱墨泡検出の有無の組合せにより、脱墨泡の発生量を判定することを特徴とするものである。
【0017】
更に、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7に記載の脱墨装置において、
脱墨槽内のパルプ溶液の基準液位を検出する液位検出部を備え、前記基準液位を検出した場合は、掻き寄せ部材を駆動させ、脱墨槽内の液面上に浮遊する脱墨泡を受泡部に掻き寄せた後、前記脱墨泡検出部における判定手段により脱墨泡の発生量を判定することを特徴とするものである。
【0018】
更に、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8に記載の脱墨装置において、
前記受け取り部は、前記脱墨泡排出開口部に向けて下り傾斜していることを特徴とするものである。
【0019】
更に、請求項10に記載の発明は、請求項1乃至請求項9に記載の脱墨装置において、
前記受け取り部の上方には、受け取った脱墨泡を前記脱墨泡排出開口部に洗い流す洗浄液供給部を備えることを特徴とするものである。
【0020】
更に、請求項11に記載の発明は、運転中断または運転終了の少なくともいずれかのとき、洗浄液供給部による洗浄液の供給量を、通常運転時より多くなるよう調整する調整手段を備えることを特徴とするものである。
【0021】
更に、請求項12に記載の発明は、前記光センサは、レーザタイプの光電センサであることを特徴とするものである。
【0022】
更に、請求項13に記載の発明は、前記レーザスポット光は、前記受け取り部の表面において直径5mm以内となるように設定することを特徴とするものである。
【0023】
更に、請求項14に記載の発明は、請求項1乃至請求項12のいづれか1つに記載の脱墨装置を備える古紙再生処理装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、脱墨部における脱墨処理の運転状態を簡単な構成で検知して効率良く制御することができる。さらには、脱墨泡の掻き寄せを行う装置構成も脱墨槽内に配置することで装置構成の一層の簡素化を実現し、古紙再生処理装置の小型化に貢献できる。
【0025】
又、脱墨槽内に配置される脱墨泡収集排出部に、脱墨泡を受け取る受け取り部と、前記受け取った脱墨泡の発生量を検出する脱墨泡検出部を備えたので、前記検出した受け取り部上の脱墨泡の分布に基づき、容易に(簡易に)脱墨槽における脱墨泡の発生量を判定することができる。
【0026】
又、前記脱墨泡検出部においては、光センサとしてレーザタイプの光電センサを用いることにより、ビームが鋭く、焦点距離を長くとることができる為、センサ検出面を脱墨槽の液面から十分に離すことができ、液面からのパルプ溶液の飛散によるセンサ検出面の汚れを防ぐことができる。又、受け取り部の表面における、レーザスポット光の照射範囲が限定された小さい範囲となる為、レーザスポット光の照射位置の調整も容易である。
【0027】
又、前記脱墨泡検出部において、光センサ(光電センサ)から照射された光が受け取り部上の脱墨泡により分散(吸収)され、その反射光が光センサに受光しなければ、所定の検出位置にて脱墨泡を検出したものと判断することにより、前記所定の検出位置における脱墨泡の有無を安定して検出することができる。又、その判断結果を用いることにより、疑似的に脱墨部においての脱墨泡の発生量を判定することができ、直接的に測定することが困難な脱墨部での脱墨泡の発生量を簡易な構成で検出し、判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(古紙再生処理装置の全体構成)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、古紙再生処理装置は、古紙再生処理系を構成する複数の処理部を有しており、処理部には、古紙投入部1、パルパー部9、脱墨部11、抄紙部13、乾燥部14、仕上部15、紙受部63、白水タンク部100がある。また、古紙再生処理装置は各処理部の運転を制御する制御部700を備えている。
【0030】
古紙投入部1は、再生原料の古紙をパルパー部9に投入するものであり、古紙を枚葉紙のままの状態であるいは裁断した状態でパルパー部9に投入する。パルパー部9は、槽体91と、槽体91内に設けた攪拌装置92を有し、古紙を離解して再生パルプを含むパルプ溶液を製造するものである。
【0031】
脱墨部11は、パルプ溶液を脱墨して脱墨パルプを調製するものであり、脱墨槽501と、脱墨槽501の底部から気泡を放出する気泡放出装置601と、気泡放出装置601に空気を供給する空気供給装置(エアポンプ等)602を有している。気泡放出装置601は、脱墨槽501内の底部に配置され、通気性を有する多孔質のエアストーン等で構成されており、上面が気泡放出面として形成されている。
【0032】
抄紙部13は、脱墨部11において脱墨されたパルプ混合液を脱水して湿紙を製造するものである。乾燥部14は、脱水した湿紙を乾燥して再生紙にするものである。
仕上部15は、再生紙に対して仕上工程を行い、得られた再生紙を紙受部63に排出する。
白水タンク部100は、抄紙部13から流入する再生パルプを含む排水である白水を貯留するものであり、白水を白水返送系105、106を通して古紙再生処理系の各所へ返送する。給水源、ここでは上水配管107から用水を供給する給水配管108が白水タンク100に接続しており、給水配管108に電磁弁からなる緊急停止用の元弁装置109を設けている。
【0033】
(脱墨部の第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態における脱墨部について、
図2から
図4に基づき具体的に説明する。
図2は、脱墨装置を正面から見た斜視図であり、
図3は、脱墨装置を上方から見た平面図であり、
図4は、
図3のA−A矢視断面図である。尚、説明の都合上、
図2においては、脱墨槽501の外壁541の一部を切り欠いて図示している。
【0034】
本実施の形態において、脱墨装置をなす脱墨部11は、古紙再生処理装置の小型化を実現するための特徴的な構造を備えている。
【0035】
図2から
図4において、脱墨部11は槽体が二重の円筒状体をなす脱墨槽501を有し、縦方向に配置した二重の円筒状体は外壁541と内壁542の間が脱墨槽501の槽内空間をなし、二重の円筒状体の内壁542の内部に、脱墨泡bを脱墨槽501の外部に排出する脱墨泡排出部550を設けている。この構造により、装置の簡素化を実現している。
【0036】
脱墨槽501は、槽体の側部に前記脱墨槽501の槽内空間と連通するパルプ溶液流入部502を備える。前記パルプ溶液流入部502は、パルパー部9からパルプ溶液排出部505を介して排出されるパルプ溶液を受入れる。又、脱墨槽501内の底部には、通気性を有する多孔質のエアストーン等で構成された気泡放出装置601が配置され、上面が気泡放出面として形成されている。さらに、気泡放出装置601に空気を供給する空気供給装置(エアポンプ等)602を備えている。尚、
図2〜
図4においては、前記気泡放出装置601及び、空気供給装置602は省略されている。
【0037】
脱墨槽501は、二重の円筒状体の外壁541の周方向の一部に開放部507を有し、外壁541の周方向において開放部507の左右には外壁541と内壁542の間を閉塞して脱墨槽501の槽壁をなす終端壁508、509を設けており、開放部507の上部に、脱墨泡排出部550を有する受泡部551を設けている。
【0038】
前記、脱墨泡bを落とし込む受泡部551は、脱墨槽内で発生した脱墨泡bを前記受泡部551に掻き寄せる掻き寄せ部材556と、掻き寄せ部材556を駆動する掻き寄せ部材駆動部(不図示)をさらに備えて、脱墨泡収集排出部555を構成する。
【0039】
掻き寄せ部材556は、脱墨泡bを掻き寄せる掻き寄せブレード5562と、掻き寄せブレード5562を支持する支持部材5561で構成される。掻き寄せブレード5562は、合成樹脂又は、ゴム等の可撓性材料により形成されている。支持部材5561は、回転駆動軸23に固定されており、回転駆動軸23の回転に伴い、掻き寄せブレード5562とともに回転する。前記掻き寄せブレード5562の回転により、脱墨槽501の内部で受泡部551の終端壁508、509の上方を1方向(a方向)に旋回し、脱墨泡bを終端壁508、509の間の受泡部551に掻き寄せる。
【0040】
図4に示すように、回転駆動軸23には遮光板563を一体的に設けており、前記遮光板563の回転軌跡上にフォトインタラプタ等の検出センサ564を設けている。
前記遮光板563により検出センサ564が遮られる位置が掻き寄せ部材556のホームポジション位置となり、その位置を基準に掻き寄せ部材駆動部(不図示)により、回転駆動軸23と共に掻き寄せ部材556を回転駆動する。
【0041】
上記構成によれば、脱墨槽の槽体が二重の円筒状体をなし、二重の円筒状体の内壁の内部に前記脱墨泡bの排出路を一体的に設けることにより、脱墨泡bを逃すことなく、さらに効率良く受泡部551に掻き寄せることができる。又、掻き寄せ部材556を一方向に回転するだけで、脱墨泡bを受泡部に安定して掻き寄せることができ、駆動機構を簡易に構成できる。
【0042】
受泡部551は、受け取り部552で開放部507と隔てられ、終端壁508、509で脱墨槽501と隔てられ、平面視で扇状をなしている受け取り部552の内側縁部が内壁542よりも内側に突出して受泡部551が二重の円筒状体の内壁542の内側空間に連通している。
【0043】
前記受泡部551は、前記掻き寄せ部材556により掻き寄せられた脱墨泡bを受け取る受け取り部552と、前記受け取り部上の脱墨泡bの発生量を検出する脱墨泡検出部603と、前記受け取り部上の脱墨泡bを受容し、排出路を介して脱墨槽の外部に排出する脱墨泡排出部550を有している。
【0044】
前記脱墨泡検出部603は、前記受け取り部552の上方に対向して設置され、光を照射するとともに、入射する光を受光する光センサ25、26と、前記受け取り部552は前記光センサ25、26から照射された光が受け取り部552の表面で反射可能となるように構成され、前記受け取り部552の表面で反射された光を光センサにより検出することにより脱墨泡bの発生量を判定する判定手段(不図示)とを備える。
【0045】
前記光センサ25、26は、レーザタイプの光電センサを用いることが好ましい。レーザタイプの光電センサを用いることにより、ビームが鋭く、焦点距離を長くとることができる為、センサ検出面を脱墨槽の液面から十分に離すことができ、脱墨槽の液面からのパルプ溶液の飛散によるセンサ検出面の汚れを防ぐことができる。又、受け取り部の表面における、レーザスポット光の照射範囲が限定された小さい範囲となる為、レーザスポット光の照射位置の調整も容易である。さらに好ましくは、光電センサの光軸上にレーザスポット光を逃がす程度の穴を開けたガイド部材を備えれば、脱墨槽の液面からのパルプ溶液の飛散によるセンサ検出面の汚れをさらに有効に防ぐことができる。
【0046】
又、前記レーザスポット光は、前記受け取り部の表面において直径5mm以内となるように設定することにより、センサ検出面を脱墨槽の液面から十分に離すことができると共に、レーザスポット光の照射位置を精度よく調整可能である。
【0047】
以上の構成の脱墨装置によれば、次のような効果を発揮できる。
【0048】
脱墨泡収集排出部555に、脱墨泡bを受け取る受け取り部552と、前記受け取った脱墨泡bの発生量を検出する脱墨泡検出部603を備えたので、前記検出した受け取り部552上の脱墨泡bの分布に基づき、容易に(簡易に)脱墨槽501における脱墨泡bの発生量を判定することができる。
【0049】
(脱墨部の作用)
次に、上述した脱墨部11の作用について説明する。
図2に示すように、パルプ溶液流入部502から脱墨槽501の槽内空間に流入したパルプ溶液は、槽内空間に放射状に形成された複数の仕切り板(不図示)を越えながら移送され、その間に気泡放出装置601から散気する微細気泡によってインク等の固形成分の不純物が脱墨泡bとともに分離され、脱墨されたパルプ溶液が槽出口506から抄紙部13に移送される。
【0050】
図4に示すように、掻き寄せ部材駆動部(不図示)は、回転駆動軸23を回転駆動して掻き寄せ部材556を脱墨槽501の内部で受泡部551の終端壁508、509の上方をホームポジション位置からホームポジション位置まで1方向(
図3のa方向)に旋回し、脱墨泡bを終端壁508、509の間の受泡部551における受け取り部552上に掻き寄せる。受け取り部552上に掻き寄せられた脱墨泡bは、受け取り部552上の脱墨泡bを受容し、排出路を介して脱墨槽の外部に排出する脱墨泡排出部550に移送される。
【0051】
(脱墨槽の水位制御)
次に脱墨槽501の水位制御について、以下に説明する。
【0052】
パルパー部9からパルプ溶液排出部505を介して、脱墨槽501の槽内空間に供給されるパルプ溶液の供給量は上限検知センサ605を用いて制御される。上限検知センサ605としては、例えば、
図2又は、
図3のような導電性の2つのセンサ(電極)が用いられ、2つのセンサ(電極)間にパルプ溶液の水位が達すると両極間に電流が流れ導通状態となることで、パルプ溶液が所定の上限水位(基準液位)になったことを検出する。
【0053】
尚、脱墨槽501の槽内空間に供給されるパルプ溶液の供給量は、前記槽内空間と連通するパルプ溶液流入部502に取付けられた上限検知センサ605にて検出される。上限検知センサ605を、脱墨槽501の円形状の表面に直接取付けて検出することもできるが、パルプ溶液流入部502という別室を設けて検出する方が液面が波立たずに検出結果が安定する。又、パルプ溶液流入部502の表面はフラットである為、脱墨槽501の円形状の表面に直接取付けるよりは、取付けが容易である。
【0054】
本実施例の古紙再生処理装置においては、前記脱墨槽501は上限検知センサ605が検出状態である上限水位から運転が開始され、運転開始後は、パルパー部9から脱墨槽501に適時パルプ溶液を補充しながら、脱墨部11にて脱墨されたパルプ溶液を脱墨槽501から抄紙部13に移送され続けるように制御される。脱墨槽501内の貯留量が上限水位から1.5L減少すると、パルパー部9から脱墨槽501への供給が開始され、再び、上限検知センサ605が上限水位を検出すると、パルパー部9からの供給は停止される。以後、同様の操作を繰り返す。
【0055】
(脱墨泡の判定手段及び判定結果に基づく制御)
脱墨部11における脱墨処理の運転状態を簡易に判定する手段として、脱墨泡収集排出部555において、脱墨泡bを受け取る受け取り部552と、所定タイミングで掻き寄せ部材556を回転させ、受け取り部552上に受け取った脱墨泡bの分布を検出する脱墨泡検出部603を備え、前記検出した受け取り部552上の脱墨泡bの泡の分布に基づき、脱墨処理の運転状態としての脱墨槽(全体)における脱墨泡bの発生量を推測し、判定することができる。
【0056】
前記、受け取り部552上に受け取った脱墨泡bの分布を検出するにあたっては、受け取り部552に対する光センサ25、26による光の照射位置が脱墨泡bの分布を判定する上で重要なポイントとなる。実施例においては、
図6に示すように、光センサ25、26による受け取り部552に対する光の照射位置は、A点とB点の2箇所に設定している。
図6においては、掻き寄せ部材556は、遮光板563により検出センサ564が遮られるホームポジション位置を示しており、ホームポジション位置を基準に所定タイミングで掻き寄せ部材556を毎回1回転させ、受け取り部552上に脱墨泡bを排出する。
【0057】
受け取り部552に対する光の照射位置の設定は、前記ホームポジション位置より掻き寄せ部材556より離れている方が、脱墨泡bを検出する(脱墨泡bにより光の照射を遮る)為の泡の発生量を多く必要とする。又、扇状の受け取り部552において、内周部(回転駆動軸23に近い側)より外周部に設定した方が脱墨泡bを検出する為の泡の発生量を多く必要とする。すなわち、
図6では、A点よりB点の方が脱墨泡bを検出する為の泡の発生量を多く必要とする。尚、光センサ25、26としては、例えば、
図4のように、発光側センサ、受光側センサの1組が1パッケージに収納されているものを用いる。
【0058】
以上のように、脱墨泡検出部603において、受け取り部552に対する光の照射位置が異なる位置となるように光センサを複数配置し、前記複数の光センサ25,26による脱墨泡b検出の有無の組合せ(泡の分布)に基づき、脱墨処理の運転状態としての脱墨槽における脱墨泡bの発生量を判定する。尚、光センサは発光側センサ、受光側センサの1組・1パッケージ×2個に限らず、発光側センサ、受光側センサの1組・1パッケージ×1個だけ配置してもよい。その場合は、前述の光の照射位置の設定を考慮すれば、適切に泡の発生量を判定することが可能である。又、光センサは発光側センサ、受光側センサの1組・1パッケージ×3個以上設置してもよい。その場合、さらに詳細に泡の分布を判定することが可能となる。又、本実施例においては、光センサは、発光側センサ、受光側センサの1組が1パッケージに収納されているものを用いたが、発光側センサ、受光側センサが1パッケージに収納されることなく別々となっているものを使用してもよい。
【0059】
次に、前述の脱墨泡bの判定手段について、
図5に示すフローチャートに基づいてさらに具体的に説明する。
(1)上限検知センサ605が脱墨槽501の上限水位を検出しない間は、掻き寄せ部材556を回転させず、脱墨泡bの判定は行わない(S1)。上限検知センサ605が上限水位を検出すると(S1)、掻き寄せ部材556をホームポジション位置からホームポジション位置まで1回転させ、受け取り部552上に脱墨泡bを掻き寄せる(S2)。
【0060】
脱墨槽501の水位は上述の脱墨槽501の水位制御に基づいて制御されるが、前記水位制御において、上限検知センサ605が上限水位を検出する毎に掻き寄せ部材556を回転させ、受け取り部552上に受け取った脱墨泡bの分布を検出する。上限水位においては、脱墨泡bも上昇している為、最も掻き寄せ易い状態となっており、脱墨泡bの判定に適するタイミングである。
【0061】
上記構成によれば、脱墨泡bを受泡部に掻き寄せるタイミングが一定となり、脱墨泡bの発生量を判定するタイミングが毎回同一条件下で判定できる。
【0062】
又、エコモード時においては、例えば、以下a.又はb.のようなタイミングで脱墨泡bの判定をしてもよい。エコモードとは、成果物の品質(脱墨品質)を下げる代わりに、再生枚数を増やすモードである。
a.上限検知センサが上限水位を検出する複数回に1回毎に、掻き寄せ部材を回転させ、受け取り部上に受け取った脱墨泡bの発生量を検出する。
b.上限検知センサが上限水位を検出後、(パルパー部から脱墨槽への供給停止状態で)
脱墨槽内の貯留量が上限水位から通常モード時(1.5L)を超える任意の量(例えば、2.0L)が減少する毎に、掻き寄せ部材を回転させ、受け取り部上に受け取った脱墨泡bの発生量を検出する。
【0063】
(2)次に、受け取り部552上に受け取った脱墨泡bの発生量を、光センサ25、26にて検出し、判定する(S3)。
【0064】
泡判定のサブルーチン(S3)については、
図7に示す脱墨泡bの検出結果と、その結果に対応する制御(エアポンプ及び、界面活性剤の投入)との相関を定義したデータテーブルに基づいて制御される。前記脱墨泡bの検出結果とは、光センサ25、26に対応する光の照射位置A点とB点における脱墨泡bの検出(脱墨泡bにより光の照射を遮る)状態の組合せとその結果(組合せ)に対応する脱墨泡bの発生状態の判定結果のことである。
尚、データテーブル中の「〇」印は、脱墨泡bの検出(脱墨泡bにより光の照射を遮る)状態であり、「×」印は、脱墨泡bの非検出(脱墨泡bにより光の照射を遮らない、反射光を受光可能な)状態のことである。
【0065】
前記脱墨泡検出部603において、光センサ25、26(光電センサ)から照射された光が受け取り部上の脱墨泡bにより分散(吸収)され、その反射光が光センサ25、26に受光しなければ、所定の検出位置にて脱墨泡bを検出したものと判断することにより、前記所定の検出位置における脱墨泡bの有無を安定して検出することができる(前記データテーブル中の「〇」印)。又、その判断結果を用いることにより、疑似的に脱墨部11においての脱墨泡bの発生量を判定することができ、直接的に測定することが困難な脱墨部11での泡の発生量を簡易な構成で検出し、判定することができる。
【0066】
図8に示すように、光センサ25、26に対応する光の照射位置A点とB点の組合せが、〔A点;×、B点;×〕の場合、
図7に示すように、泡の発生状態は「少ない」と判定し、エアポンプの供給量を増加(印加DutyをUP)する。尚、空気供給装置の空気供給量を最大値まで増加させても脱墨泡bの発生量が適正量とならない場合に限り、脱墨槽501への界面活性剤の投入を行う。
【0067】
図9に示すように、光の照射位置A点とB点の組合せが、〔A点;〇、B点;×〕の場合は、
図7に示すように、泡の発生状態は「適量」と判定し、エアポンプの供給量は現状のままキープする。
【0068】
図10に示すように、光の照射位置A点とB点の組合せが、〔A点;〇、B点;〇〕の場合は、
図7に示すように、泡の発生状態は「多い」と判定し、エアポンプの供給量を減少(印加DutyをDOWN)させる。
【0069】
図11に示すように、光の照射位置A点とB点の組合せが、〔A点;×、B点;〇〕の場合は、
図7に示すように、「センサ異常」と判定し、所定のエラー処理を行う。通常、A点を飛び越えてB点だけを検出することはあり得ない状態である。
【0070】
(3)前述の泡判定が終わると、
図12に示す受け取り部552の上方に設置した洗浄液供給部608における複数のシャワーノズル609により、掻き寄せ部材556及び、受け取り部552上の脱墨泡bを洗い流して、次回の泡判定に備える(S4)。前記シャワーノズル609による洗浄時にさらに、ワイパー等により受け取り部552上の脱墨泡bを直接クリーニングするように構成してもよい。
【0071】
上記構成によれば、簡易な手段で判定された脱墨泡bの発生量に応じて、脱墨部への空気供給量を適正に制御し、脱墨処理を適正に実施することができる。又、判定された脱墨泡bの発生量に応じて、脱墨部への界面活性剤の投入量を適正に制御するように構成すれば、脱墨処理を適正に実施することができる。さらに、空気供給装置の空気供給量を最大値まで増加させても脱墨泡bの発生量が適正量とならない場合に限り、前記脱墨槽への界面活性剤の投入を行うように構成してもよい。そうすることにより、界面活性剤の無駄がない。
【0072】
又、複数の光センサ25、26を備え、光センサ25、26による脱墨泡b検出の有無の組合せにより、受け取り部上の脱墨泡bの分布を判断するように構成すれば、容易に脱墨槽における脱墨泡bの発生状況を判定することができる。
【0073】
前記受け取り部552は、前記脱墨泡排出部550に向けて下り傾斜しており、脱墨泡bの発生量を判定した後は、受け取った脱墨泡bを脱墨泡b排出開口部に容易に移送することができる。さらに、受け取り部552の上方に、受け取った脱墨泡bを脱墨泡排出部550に洗い流す洗浄液供給部608を備えることにより、脱墨泡bの発生量を判定した後は、受け取った脱墨泡bを脱墨泡排出部550に容易に洗い流すことができる。
【0074】
洗浄液供給部608のシャワーノズル609を用いた洗浄動作では、脱墨泡bを受け取り部から取り除くことが可能な程度の洗浄液を使用すればよい。これより、脱墨泡bの量を適正に判定しつつ洗浄液に用いる白水または上水を節約することができる。
更に、ジャム等何らからのエラーが発生し、運転を中断するとき、または一日や一定期間といった所定時間運転継続した後に運転を終了するときの少なくともいずれかのときには、洗浄液供給部608による洗浄液の供給量を、通常運転時より多くなるよう調整する調整手段を備えてもよい。これより、運転中断時や終了時に、受け取り部の汚れをより多く除去でき、汚れの蓄積による誤作動を抑制し、運転再開時適正に判定できるようすることができる。
洗浄液の量を多くするには、シャワーノズル609から吐出する洗浄液の単位時間当たりの液量を多くし、吐出する時間を通常運転時と同じかまたは長くしてもよく、単位時間当たりの液量は通常運転時と同じままで、吐出時間を長くすることも可能である。
【0075】
本発明の古紙再生処理装置は、上述の脱墨装置を備えているので、脱墨部における脱墨処理の運転状態を簡単な構成で検知して効率良く制御することができる
【0076】
(脱墨部の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を
図13に基づいて説明する。尚、説明にあたっては、上述の第1の実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0077】
第1の実施形態においては、脱墨槽501は、槽体が二重の円筒状体をなすように構成されており、二重の円筒状体の内壁542の“内部”に、脱墨泡bを脱墨槽の外部に排出する脱墨泡排出部550を設けていた。又、脱墨槽501内で発生した脱墨泡bは、掻き寄せ部材556の“回転駆動”により、脱墨槽501内の受泡部551に掻き寄せられるように構成されていた。
【0078】
第2の実施形態においては、
図13に示すように、脱墨槽501は、上部の幅が次第に縮小するように傾斜した一対の傾斜部36a、36bを有している。脱墨槽501の上端部で且つ傾斜部36a、36bの上方には、平面視において四本(複数本の一例)の辺を有する四角形(多角形の一例)の開口部37が形成されている。開口部37の一方向の端部の一辺には、脱墨泡bを脱墨槽501内から“槽外”へ溢流させる脱墨泡排出部550が形成されている。
【0079】
脱墨槽501の上方には、掻き寄せ部材556を設けており、掻き寄せ部材556は、掻き寄せ部材556を“スライド移動”させる移動装置82により、脱墨槽501の開口部37から脱墨槽23の外部へ溢れ出す脱墨泡bを、受泡部551から脱墨泡排出部550へ押し出すように構成される。
【0080】
移動装置82は、掻き寄せ部材556が一体的に取付けられた可動体86を、シャフト94に沿って一方向Cおよび戻り方向Dへ往復移動させる。
【0081】
前記受泡部551は、前記掻き寄せ部材556により掻き寄せられた脱墨泡bを受け取る受け取り部552と、前記受け取り部552上の脱墨泡bの発生量を検出する脱墨泡検出部603と、前記受け取り部上の脱墨泡bを受容し、排出路を介して脱墨槽の外部に排出する脱墨泡排出部550を有している。
【0082】
前記脱墨泡検出部603は、前記受け取り部552の上方に対向して設置され、光を照射するとともに、入射する光を受光する光センサ25、26と、前記受け取り部552は前記光センサ25、26から照射された光が受け取り部552の表面で反射可能となるように構成され、前記受け取り部552の表面で反射された光を光センサにより検出することにより脱墨泡bの発生量を判定する判定手段(不図示)とを備える。
【0083】
又、受け取り部552の上方には、上下方向に回動可能なシャワーノズル609を有しており、第1の実施形態と同様の泡判定が終わると、シャワーノズル609により、掻き寄せ部材556及び、受け取り部552上の脱墨泡bを洗い流して、次回の泡判定に備える。
【0084】
(脱墨部の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を
図14及び、
図15に基づいて説明する。尚、説明にあたっては、上述の第2の実施形態と異なる構成を中心に説明する。
前述した第2の実施形態と第3の実施形態との違いは、脱墨泡検出部603における、光センサ25、26と、光センサ25、26から照射された光を反射する反射部材(受け取り部552)との配置が異なる。
【0085】
第3の実施形態においては、
図14に示すように、光センサ25、26は
図14の紙面の手前に配置し、又、受け取り部552を用いることなく、
図14の紙面の奥側に反射板28を配置して、光センサ25、26の光の照射位置がA点及び、B点となるように設置する。
【0086】
そして、
図15に示す例では、掻き寄せ部材556により掻き寄せられた脱墨泡bを〔A点;〇、B点;×〕のように検出する。尚、
図15においては、説明の都合上、
図15の紙面の手前に配置されている光センサ25、26は省略している。
【0087】
図14、
図15に示す第3の実施形態においては、光の照射位置A点及び、B点を受け取り部552から離れる方向に距離をとれば、泡の積上げ高さ分で光センサ25、26の検出感度を調整することが可能である。
【0088】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
脱墨部11の槽体の形状は円筒に限らず、平面視多角形の筒状体に形成することも可能である。例えば、外壁541を平面視で四角形、六角形等の筒状体とし、内壁542を四角形、六角形等の筒状体とすることも可能であり、それらの組合せも可能である。