特許第6945863号(P6945863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6945863セルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945863
(24)【登録日】2021年9月17日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】セルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/10 20060101AFI20210927BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20210927BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20210927BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   C08L1/10
   C08L67/02
   C08G63/16
   C08J5/18CEP
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-520815(P2018-520815)
(86)(22)【出願日】2017年5月23日
(86)【国際出願番号】JP2017019154
(87)【国際公開番号】WO2017208895
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2020年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-111094(P2016-111094)
(32)【優先日】2016年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149561
【氏名又は名称】大八化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 昌之
(72)【発明者】
【氏名】富岡 毅
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−155455(JP,A)
【文献】 特開平05−155809(JP,A)
【文献】 特開2005−015587(JP,A)
【文献】 特公昭47−032315(JP,B1)
【文献】 特公昭47−032316(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08G
C08J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式(1)中、A及びAは、同一又は異なって、シュウ酸、マロン酸及びコハク酸からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸残基を示す。Gは、2価アルコール残基を示し、前記2価アルコール残基は、脂肪族の2価アルコール残基、又は脂肪族の2価アルコール残基及び芳香族の2価アルコール残基の組合せである。前記脂肪族の2価アルコール残基は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール及び2−メチル−1,3−プロパンジオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の2価アルコール残基である。前記芳香族の2価アルコール残基は、ハイドロキノン、レゾルシノール、1,2−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,2−ベンゼンジエタノール及び1,4−ベンゼンジエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の2価アルコール残基である。及びMは、同一又は異なって、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、ベンジルアルコール、2−メチルベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、2−ベンジルオキシエタノール及び2−フェノキシエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族モノアルコール残基を示す。nは1以上の整数である。]
で表されるエステル化合物を含むセルロースエステル樹脂用改質剤。
【請求項2】
前記エステル化合物の数平均分子量が500〜2500である、請求項1に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
【請求項3】
前記M及びMが、2−ベンジルオキシエタノール及び2−フェノキシエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族モノアルコールの残基である、請求項1又は2に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
【請求項4】
前記Gが、前記脂肪族の2価アルコール残基である、請求項1〜のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
【請求項5】
前記Gが、前記脂肪族の2価アルコール残基及び芳香族の2価アルコール残基の組合せであり、前記エステル化合物における前記2価アルコール残基中の前記芳香族の2価アルコール残基のモル比率が、80%以下である、請求項1〜のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
【請求項6】
前記エステル化合物の水酸基価が30mgKOH/g以下である、請求項1〜のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
【請求項7】
前記エステル化合物の酸価が3mgKOH/g以下である、請求項1〜のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤、及びセルロースエステル樹脂を含むセルロースエステル樹脂組成物。
【請求項9】
請求項に記載のセルロースエステル樹脂組成物を含む光学用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロースエステル樹脂は、その強靭性及び透明性から写真用支持体として使用されてきた。セルロースエステル樹脂は、光学的に透明性が高いだけでなく、光学的に等方性が高いことから、近年では、液晶ディスプレイのように偏光を取り扱う装置用の光学材料として利用されており、偏光子の保護フィルム、斜め方向からの見た表示を良化する光学補償フィルム等の支持体として用いられている。
【0003】
液晶ディスプレイ用の部材である偏光板に用いられる偏光子の保護フィルムとして、前記セルロースエステル樹脂からなるフィルムを使用した場合、該セルロースエステルフィルムは、湿気などの水分の浸入を十分に防止することができないため、偏光子の劣化、偏光子と保護フィルムとの間が剥離する等の問題があった。そのため、従来は、セルロースエステル樹脂に、トリフェニルホスフェート等の可塑剤を添加し、耐透湿性を付与したフィルムを偏光子保護フィルムとして使用していた。
【0004】
近年、液晶ディスプレイの薄型化に対する要求が高くなっている。液晶ディスプレイの薄型化に伴い、偏光子保護フィルムの薄膜化が検討されている。前記可塑剤とセルロースエステル樹脂とを含有する偏光子保護フィルムの膜厚を要求レベルにまで薄くした場合、耐透湿性が著しく低下するという問題があった。充分な耐透湿性を得るために、前記可塑剤の量を増やすことが考えられるが、その場合、可塑剤のブリードアウト、フィルム自体の強度低下等の問題が生じるおそれがあった。特定範囲の重量平均分子量を持つポリマー(ポリエステルもしくはポリエーテルエステル)をセルロースエステル樹脂に添加することにより、フィルムの耐透湿性を向上させることも提案されているが(特許文献1)、充分な効果は得られなかった。
【0005】
その後、セルロースエステル樹脂用改質剤として、様々な種類のポリエステル化合物が検討されてきた(例えば、特許文献2〜6)。特許文献2には、芳香族系ジカルボン酸と低炭素数のグリコールとの縮合物において末端を芳香族モノカルボン酸で封止したポリエステルが記載されている。特許文献3には、脂肪族ジカルボン酸と低炭素数のグリコールとの縮合物において末端を脂肪族モノアルコールもしくは脂肪族モノカルボン酸で封止したポリエステルが記載されている。特許文献4には、芳香族ジカルボン酸を特定量含む多塩基酸と多価アルコールとの縮合物において末端をエーテルアルコールで封止したポリエステルが記載されている。特許文献5には、芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であるポリエステルが記載されている。特許文献6には、脂肪族系ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と低炭素数のグリコールとの縮合物において末端を酢酸もしくは安息香酸で封止したポリエステルが記載されている。しかしながら、特許文献2〜6に記載された改質剤及びセルロースエステル樹脂を用いて形成されたフィルムの耐透湿性は充分とはいえず、他の添加剤(防湿剤)を必要とするレベルであった。そのため、セルロースエステル樹脂に優れた耐透湿性を付与することができるポリエステル系改質剤が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2002−022956号公報
【特許文献2】日本国特開2006−282987号公報
【特許文献3】日本国特開2009−046531号公報
【特許文献4】日本国特開2009−173742号公報
【特許文献5】日本国特開2010−138379号公報
【特許文献6】国際公開第10/087219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、セルロースエステル樹脂に優れた耐透湿性を付与し、且つセルロースエステル樹脂が元来有している透明性を阻害しない改質剤を提供することを主な目的とする。本発明はさらに、該改質剤を含むセルロースエステル樹脂組成物、及び該樹脂組成物から作られた耐透湿性及び透明性に優れた光学用セルロースエステル系樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らがセルロースエステル樹脂に優れた耐透湿性を付与し、且つセルロースエステル樹脂が元来有している透明性を阻害しない改質剤を開発すべく鋭意検討した結果、末端を芳香族モノアルコールで封止した特定のエステル化合物をセルロースエステル系樹脂用改質剤として用いることで、上記課題を解決できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記項1〜項10に示すセルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルムに係る。
項1. 下記式(1):
【0010】
【化1】
【0011】
[式(1)中、A及びAは、同一又は異なって、脂肪族ジカルボン酸残基を示す。Gは、2価アルコール残基を示し、前記2価アルコール残基は、脂肪族の2価アルコール残基、又は脂肪族の2価アルコール残基及び芳香族の2価アルコール残基の組合せである。M及びMは、同一又は異なって、芳香族モノアルコール残基を示す。nは1以上の整数である。]
で表されるエステル化合物を含むセルロースエステル樹脂用改質剤。
項2. 前記エステル化合物の数平均分子量が500〜2500である、項1に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項3. 前記M及びMが、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、ベンジルアルコール、2−メチルベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、2−ベンジルオキシエタノール及び2−フェノキシエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族モノアルコールの残基である、項1又は2に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項4. 前記M及びMが、2−ベンジルオキシエタノール及び2−フェノキシエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族モノアルコールの残基である、項3に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項5. 前記Gが、前記脂肪族の2価アルコール残基である、項1〜4のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項6. 前記Gが、前記脂肪族の2価アルコール残基及び芳香族の2価アルコール残基の組合せであり、前記エステル化合物における前記2価アルコール残基中の前記芳香族の2価アルコール残基のモル比率が、80%以下である、項1〜4のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項7. 前記エステル化合物の水酸基価が30mgKOH/g以下である、項1〜6のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項8. 前記エステル化合物の酸価が3mgKOH/g以下である、項1〜7のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項9. 項1〜8のいずれかに記載のセルロースエステル樹脂用改質剤、及びセルロースエステル樹脂を含むセルロースエステル樹脂組成物。
項10. 項9に記載のセルロースエステル樹脂組成物を含む光学用フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セルロースエステル樹脂に優れた耐透湿性を付与し、且つセルロースエステル樹脂が元来有している透明性を阻害しない改質剤を提供することができる。本発明のセルロースエステル系樹脂用改質剤をセルロースエステル樹脂に添加することにより、該改質剤及びセルロースエステル樹脂を含有するセルロースエステル樹脂組成物で作られたフィルムに優れた透明性及び耐透湿性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルムについて説明する。
【0014】
1.セルロースエステル樹脂用改質剤
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤は、下記式(1):
【0015】
【化2】
【0016】
[式(1)中、A及びAは、同一又は異なって、脂肪族ジカルボン酸残基を示す。Gは、2価アルコール残基を示し、前記2価アルコール残基は、脂肪族の2価アルコール残基、又は脂肪族の2価アルコール残基及び芳香族の2価アルコール残基の組合せである。M及びMは、同一又は異なって、芳香族モノアルコール残基を示す。nは1以上の整数である。]
で表されるエステル化合物を含む。
【0017】
<エステル化合物>
前記エステル化合物は、脂肪族ジカルボン酸、2価アルコール、及び芳香族モノアルコールの反応生成物である。すなわち、前記エステル化合物は、脂肪族ジカルボン酸と2価アルコールとをエステル化反応させて得られるポリエステル(脂肪族ジカルボン酸及び2価アルコールに基づく繰り返し単位を有するポリマー)の両末端のカルボン酸が芳香族モノアルコールによって封止された構造を有する。
【0018】
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤が前記エステル化合物を含むことにより、該改質剤及びセルロースエステル樹脂を含有するセルロースエステル樹脂組成物から得られる光学用フィルムの透明性及び耐透湿性を格段に向上させることができる。
【0019】
ここで、脂肪族ジカルボン酸残基とは、脂肪族ジカルボン酸が有する2つのカルボキシル基からそれぞれ水酸基を除いた残りの基をいう。2価アルコール残基とは、2価アルコールが有する2つの水酸基からそれぞれ水素を除いた残りの基をいう。芳香族モノアルコール残基とは、芳香族モノアルコールが有する水酸基から水素を除いた残りの基をいう。
【0020】
反応により上記式(1)のA及びAで示される脂肪族ジカルボン酸残基を形成する脂肪族ジカルボン酸は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、脂環式構造を有していてもよい。脂肪族ジカルボン酸中の炭素原子数は2〜15であることが好ましく、より好ましくは2〜10であり、特に好ましくは2〜4である。
【0021】
前記脂肪族ジカルボン酸として、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アゼライン酸、ヘプタン−4,4−ジカルボン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,1−シクロペンタン二酢酸、マレイン酸、フマル酸及びアセチレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
これらの脂肪族ジカルボン酸の中で、好ましくは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、及びフマル酸であり、特に好ましくは、シュウ酸、マロン酸、及びコハク酸である。
【0023】
前記脂肪族ジカルボン酸には、そのエステル化物、酸塩化物、酸無水物等のカルボン酸誘導体が含まれる。前記脂肪族ジカルボン酸は、単独で使用することができ、又は2種以上を併用することができる。
【0024】
上記式(1)のGで示される2価アルコール残基には、脂肪族の2価アルコール残基が含まれる。改質剤中に脂肪族の2価アルコール残基が含まれることで、セルロースエステル樹脂との相溶性が向上するため、得られるフィルムの透明性を保つことができる。反応により上記式(1)のGで示される2価アルコール残基を形成する2価アルコールとして、脂肪族の2価アルコールだけを使用することができ、又は脂肪族の2価アルコール及び芳香族の2価アルコールを組合せて使用することもできる。特に好ましいのは、脂肪族の2価アルコールだけを使用することである。
【0025】
前記脂肪族の2価アルコールは、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、脂環式構造を有していてもよい。脂肪族の2価アルコール中の炭素原子数は2〜15であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。
【0026】
前記脂肪族の2価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,1−シクロヘキサンジエタノール等が挙げられる。
【0027】
これらの脂肪族の2価アルコールの中で、好ましくは、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジオールであり、特に好ましくは、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール及び2−メチル−1,3−プロパンジオールである。
【0028】
これらの脂肪族の2価アルコールは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記芳香族の2価アルコールは、分子内に芳香環構造を少なくとも1つを有し、且つ水酸基を2つ有する化合物をいう。化合物中の水酸基は芳香環に直接結合していてもよく、芳香環に結合しているアルキル基等他の官能基に結合していてもよい。芳香族の2価アルコール中の炭素原子数は6〜25であることが好ましく、6〜15であることがより好ましく、6〜10であることが特に好ましい。
【0030】
前記芳香族の2価アルコールとして、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,2−ベンゼンジエタノール、1,4−ベンゼンジエタノール及び2,2’−(1,3−フェニレン)ビス(2−プロパノール)などが挙げられる。
【0031】
これらの芳香族の2価アルコールの中で、好ましくはハイドロキノン、レゾルシノール、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,2−ベンゼンジエタノール及び1,4−ベンゼンジエタノールであり、特に好ましくは、ハイドロキノン、レゾルシノール、1,2−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,2−ベンゼンジエタノール及び1,4−ベンゼンジエタノールである。
【0032】
これらの芳香族の2価アルコールは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0033】
で示される2価アルコール残基が、脂肪族の2価アルコール残基及び芳香族の2価アルコール残基の組合せである場合、前記エステル化合物における前記2価アルコール残基中の前記芳香族の2価アルコール残基のモル比率は80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることが特に好ましい。
【0034】
ここで、芳香族の2価アルコール残基のモル比率が「80%以下である」とは、モル比率が「0%を超え且つ80%以下である」ことを意味する。そのモル比率の下限は0.01%であることが好ましく、0.1%であることがより好ましく、1%であることがさらに好ましく、10%が特に好ましい。
【0035】
反応により上記式(1)のM及びMで示される芳香族モノアルコール残基を形成する芳香族モノアルコールは、分子内に芳香環構造を少なくとも1つを有し、且つ水酸基を1つ有する化合物をいう。改質剤中に芳香族モノアルコール残基が含まれることで、得られるフィルムの耐透湿性を向上させることができる。該芳香族モノアルコールは、エステル化合物の封止剤として作用する。化合物中の水酸基は芳香環に直接結合していてもよく、芳香環に結合しているアルキル基等他の置換基に結合していてもよい。前記芳香族モノアルコールの特に好ましい形態は、芳香環に結合しているアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシアルキル基に水酸基が結合しているものであり、最も好ましい形態は、芳香環に結合しているアルコキシ基に水酸基が結合しているものである。前記芳香族モノアルコールの炭素原子数は6〜20であることが好ましく、7〜15であることがより好ましく、8〜10であることが特に好ましい。
【0036】
前記芳香族モノアルコールとして、例えば、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−フェニルフェノール及び4−フェニルフェノール等の水酸基が芳香環に直接結合している芳香族モノアルコール;ベンジルアルコール、2−メチルベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、2−エチルベンジルアルコール、3−エチルベンジルアルコール、4−エチルベンジルアルコール、2,3−ジメチルベンジルアルコール、2,4−ジメチルベンジルアルコール、3,5−ジメチルベンジルアルコール、2,6−ジメチルベンジルアルコール、4−イソプロピルベンジルアルコール、2,4,6−トリメチルベンジルアルコール、3,4,5−トリメチルベンジルアルコール、3−フェノキシベンジルアルコール、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、2−ベンジルオキシエタノール及び2−フェノキシエタノール等の水酸基が芳香環に結合している他の置換基に結合している芳香族モノアルコールが挙げられる。
【0037】
これらの芳香族モノアルコールの中で、好ましくはフェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、4−プロピルフェノール、ベンジルアルコール、2−メチルベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、2−エチルベンジルアルコール、3−エチルベンジルアルコール、4−エチルベンジルアルコール、4−イソプロピルベンジルアルコール、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、2−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、2−ベンジルオキシエタノール及び2−フェノキシエタノールであり、より好ましくは、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、ベンジルアルコール、2−メチルベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、2−ベンジルオキシエタノール及び2−フェノキシエタノールであり、さらに好ましくはベンジルアルコール、2−メチルベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、2−ベンジルオキシエタノール及び2−フェノキシエタノールであり、特に好ましくは、2−ベンジルオキシエタノール及び2−フェノキシエタノールである。
【0038】
これらの芳香族モノアルコールは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0039】
nは繰り返し単位数を示す。nは、1以上の整数であり、通常1〜20であり、2〜15であることが好ましく、3〜10であることがより好ましい。上記範囲であれば、セルロースエステル樹脂との相溶性に優れ、可塑性を付与する効果にも優れる。
【0040】
前記エステル化合物の数平均分子量は500〜2500であることが好ましく、700〜2000であることがより好ましく、800〜1800であることが特に好ましい。前記エステル化合物の数平均分子量が上記範囲であれば、セルロースエステル樹脂用改質剤は、高温多湿下でも耐ブリード性に優れ、フィルムの製造工程をはじめとする高温条件下でも揮発しにくく、製造工程の装置及び作業環境の汚染を抑制し、改善することができる。なお、数平均分子量とは、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として使用し、ポリスチレン換算によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)により測定した値である。詳細な測定条件については、実施例に記載する。
【0041】
前記エステル化合物の酸価は、2価アルコールと脂肪族ジカルボン酸とが反応した際に生成し得るポリエステルの末端に存在するカルボキシル基のうち、前記芳香族モノアルコールによって封止されていないカルボキシル基に由来するものである。フィルムに優れた耐透湿性を付与し、且つ、セルロースエステル樹脂用改質剤自体の安定性を維持するうえで、前記セルロースエステル樹脂用改質剤中に含まれる、末端にカルボキシル基を有するポリエステルの含有量は極力少ないことが好ましい。よって、酸価として最も好ましい値は0であるが、酸価がある場合でも、以下に示す範囲であれば、本発明の効果を充分に示すことができる。酸価がある場合の上限としては、3mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましく、0.7mgKOH/g以下が特に好ましい。酸価がある場合の下限としては、0.005mgKOH/g程度が好ましい。
【0042】
前記エステル化合物の水酸基価は、2価アルコールと脂肪族ジカルボン酸とが反応した際に生成し得るポリエステルの末端に存在する水酸基に由来するもの;使用した2価アルコールの未反応の水酸基に由来するもの等である。水酸基は水との親和性が強いので、得られるフィルムの耐透湿性を維持するためには、水酸基は少ないことが好ましい。水酸基価として最も好ましい値は0であるが、水酸基価がある場合でも、以下に示す範囲であれば、本発明の効果を充分に示すことができる。水酸基価がある場合の上限としては、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以下が特に好ましい。水酸基価がある場合の下限としては、0.1mgKOH/g程度が好ましい。
【0043】
<エステル化合物の製造方法>
前記エステル化合物は、前記脂肪族ジカルボン酸と前記2価アルコールと前記芳香族モノアルコールとを反応させることにより得ることができる。具体的には、前記脂肪族ジカルボン酸、前記2価アルコール及び前記芳香族モノアルコールを、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば100〜250℃の温度範囲内で、10〜25時間程度、周知慣用の方法でエステル化反応させることによって前記エステル化合物を製造することができる。なお、エステル化反応の温度、時間等の条件は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0044】
前記脂肪族ジカルボン酸、前記2価アルコール、及び前記芳香族モノアルコールには、それぞれ上述したものを使用することができる。製造の際に用いられる上記各成分の比は、用いられる成分の種類、目的とする可塑剤の特性、分子量等により変化する。一般には、前記脂肪族ジカルボン酸10〜80質量%、前記2価アルコール10〜80質量%、及び前記芳香族モノアルコール1〜50質量%の比率で用いられる。
【0045】
前記2価アルコールとして前記脂肪族の2価アルコール及び前記芳香族の2価アルコールを組合せて使用する場合には、前記エステル化合物における前記2価アルコール中の前記芳香族の2価アルコールのモル比率が80%以下の範囲で、且つその合計量が上記範囲となるように適宜調整する。前記2価アルコールとして前記脂肪族の2価アルコール及び前記芳香族の2価アルコールを組合せて使用した場合、得られるエステル化合物は、式(1)において、Aが脂肪族ジカルボン酸残基であり、Gが脂肪族の2価アルコール残基である(A−G)と、Aが脂肪族ジカルボン酸残基であり、Gが芳香族の2価アルコール残基である(A−G)とはランダムに結合している。
【0046】
前記エステル化触媒としては、周期表2族、3族、及び4族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属又は有機金属化合物が挙げられる。具体的には、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート等のチタンアルコキサイド類;オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、四塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、四塩化ハフニウム、四塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物などが挙げられる。反応性、取扱いやすさ、エステル化反応により得られたエステル化合物の保存安定性等の面から、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート等のチタンアルコキサイド類が好ましい。
【0047】
前記エステル化触媒は、前記脂肪族ジカルボン酸、前記2価アルコール、及び前記芳香族モノアルコールの全量100質量部に対して0.005〜0.05質量部程度使用することが好ましい。
【0048】
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤は、前記エステル化合物を含むものであり、前記エステル化合物からなることが好ましい。なお、本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤として、上記製造方法で得られた生成物を精製することなくそのまま使用することも可能である。この場合、前記エステル化合物だけでなく、それ以外の不純物(上述の2価アルコールと脂肪族ジカルボン酸とが反応した際に生成し得る、末端に水酸基を有するポリエステル、ポリエステルの末端に存在するカルボキシル基が前記モノアルコールによって封止されていないポリエステル等)が含まれるが、改質剤の作用を特に阻害するものではない。
【0049】
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤は、構成するエステル化合物の数平均分子量及び組成によって異なるが、液体状又は固体状である。
【0050】
2.セルロースエステル樹脂組成物
本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂及び前記セルロースエステル樹脂用改質剤を含む樹脂組成物である。本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂100質量部に対して前記セルロースエステル樹脂用改質剤を3〜30質量部程度含むことが好ましく、4〜25質量部程度含むことがより好ましく、5〜20質量部程度含むことが特に好ましい。上記範囲の組成の樹脂組成物であれば透明性及び耐透湿性に優れたフィルムを作成することができる。
【0051】
前記セルロースエステル樹脂は、主としてセルロースアセテートからなるセルロ−スの混合脂肪酸エステル(セルロースアシレート)である。セルロースアシレートの原料のセルロースとしては、特に限定はなく、例えば、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基及び他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)又はそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。また、セルロースアシレートとしては、例えば、L−20、L−30、L−50、L−70、LT−55(株式会社ダイセル製)、CA−394−60LF (イーストマン・ケミカル・カンパニー製)などの市販品を使用することもできる。
【0052】
本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲において、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては上記以外のポリエステル系改質剤、可塑剤、防湿剤、レタデーション発現剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、無機微粒子、染料などの添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、通常使用されている公知のものを用いることができる。
【0053】
3.光学用フィルム
本発明の光学用フィルムは、前記セルロースエステル樹脂組成物を含むフィルムである。
【0054】
本発明の光学用フィルムは、前記セルロースエステル樹脂組成物をフィルム状に成形することにより得られる。成形方法としては、例えば、前記セルロースエステル樹脂組成物を押出機等で溶融混練し、Tダイ等を用いることでフィルム状に成形する方法が挙げられる。また、前記セルロースエステル樹脂組成物を有機溶剤中に均一に溶解、混合して得られた樹脂溶液を支持体上に流延し乾燥させる溶液流延法での成形によっても得られる。溶液流延法の場合、成形途中でのフィルム中の前記セルロースエステル樹脂の配向を抑制することができるため、得られるフィルムは、実質的に光学等方性を示す。この光学等方性を示すフィルムは、光学フィルムとして液晶ディスプレイ等の部材として使用することができ、偏光板保護フィルム又は光学補償フィルム(IPS駆動方式の液晶ディスプレイ用)として有用である。
【実施例】
【0055】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
【0056】
<測定方法>
(a)エステル化合物の酸価
三角フラスコにTHF/エタノール=5/1(質量比)の溶媒を60g入れる。そこにフェノールフタレインを指示薬として加え0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で微紅色が確認されるまで滴定する。この中に任意の量の試料を秤取し、完全に溶解させた後、0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で微紅色が確認されるまで滴定する。滴定結果より、以下の計算式にて酸価を求める。
【0057】
【数1】
【0058】
(b)エステル化合物の水酸基価
試料5gをヨードフラスコに秤取し、ピリジン/無水酢酸=7/1(質量比)の混合溶液5mlを加え、空冷管をとりつける。このヨードフラスコをウォーターバス上で1.5時間加熱し、その後、空冷管の上部より水5mlを加え、再び10分間加熱する。室温まで冷却後、エタノール50mlを用いて空冷管の内壁を洗い流した上で空冷管を取り外す。フェノールフタレインを指示薬として加え、0.5mol/l水酸化ナトリウム溶液で微紅色が確認されるまで滴定する。
【0059】
これと別に、同一操作で空試験を行い、これらの滴定結果より、以下の計算式にて水酸基価を求める。
【0060】
【数2】
【0061】
(c)エステル化合物の数平均分子量
分子量既知のポリスチレンを標準物質として、下記条件でGPCにより測定した。
使用機器:HLC−8320(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel SuperHZ3000 + TSKgel Super HZ2000 + TSKgel SuperHZ1000 各1本直列
溶剤:THF
流量:0.3ml/min
検出器:RI
【0062】
(d)エステル化合物の2価アルコール残基又はジカルボン酸残基の組成比率
下記条件でH−NMRにより測定し、各々の残基に関するプロトンのピーク強度比を基に、通常用いられる方法により算出した。
使用機器:JNM−ECS−400(日本電子株式会社製)
溶剤:重クロロホルム
【0063】
(e)フィルムの厚み
マイクロメーター(QuantuMike 株式会社ミツトヨ製)を用いてフィルムの厚みを測定した。
【0064】
(f)フィルムの透湿度
試験片及び操作はJIS Z0218に準拠する。
但し、促進試験として温度条件は50℃とし、試験開始1時間目と3時間目のカップの質量差を用いてJIS Z0218記載の算出方法で計算した値を実測値とし、下記式でフィルムの厚みを80μmに換算した値を透湿度とした。
【0065】
【数3】
【0066】
(g)フィルムの透明性(ヘイズ)
JIS K7136に準拠する。
使用機器:HazeMeterNDH 4000(日本電色工業株式会社製)
【0067】
<使用原料>
セルロースエステル樹脂:酢酸セルロース(株式会社ダイセル製 LT−55)
リン酸エステル系可塑剤1:トリフェニルホスフェート(TPP)
リン酸エステル系可塑剤2:ビフェニリルジフェニルホスフェート(BDP)
エステル化合物A〜K:後述する実施例及び比較例で合成したエステル化合物
【0068】
<エステル化合物の合成>
実施例1
エステル化合物Aの合成
撹拌機、温度計、及び精留装置を備え付けた1Lのガラス製4つ口丸底フラスコに、芳香族モノアルコールとしてベンジルアルコール324g(3.0mol)、2価アルコールとしてエチレングリコール298g(4.8mol)、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸486g(4.1mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.17gを仕込んだ後、常圧下160℃まで7時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他低沸分に分けて、水は回収し、その他低沸分はフラスコ内に戻した。ガスの流出が止まるまで冷却した後、精留装置を外して、ト字管、冷却管、及び200mlナスフラスコを丸底フラスコに取り付け、再び常圧下200℃まで10時間かけて昇温し、200℃を7時間保持した。その後、減圧装置を丸底フラスコに取り付け、33kPaの減圧下で180〜200℃を2時間保持した。常圧の昇温から減圧の温度保持の間に反応で生成してくる水は200mlナスフラスコに回収した。その後、3kPaまで減圧してから230℃まで7.5時間かけて昇温し重縮合を行った。その結果、下記式が主成分である黄褐色固体が658g得られた。エステル化合物Aの数平均分子量は1200、酸価は0.12mgKOH/g、水酸基価は13.8mgKOH/gであった。
【0069】
【化3】
【0070】
実施例2
エステル化合物Bの合成
撹拌機、温度計、及び精留装置を備え付けた500mlのガラス製4つ口丸底フラスコに、芳香族モノアルコールとしてベンジルアルコール116g(1.1mol)、2価アルコールとして1,4−ベンゼンジメタノール79g(0.6mol)及び1,2−プロパンジオール87g(1.1mol)、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸170g(1.4mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.06gを仕込んだ後、230℃まで常圧で9時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他に分けて、水は回収し、その他はフラスコ内に戻した。ガスの流出が止まるまで冷却した後、精留装置を外して、ト字管、冷却管、及び200mlナスフラスコを丸底フラスコに取り付け、再び230℃まで常圧で2時間かけて昇温し、230℃を30分間保持した。その後、減圧装置を丸底フラスコに取り付け、13.3kPaの減圧下で160〜180℃を2時間保持した。常圧の昇温から減圧の温度保持の間に反応で生成してくる水は200mlナスフラスコに回収した。その後、0.4kPaまで減圧してから180℃まで6.5時間かけ昇温し重縮合を行った。その結果、下記式が主成分である黄褐色透明な高粘調液体が299g得られた。エステル化合物Bの数平均分子量は1220、酸価は0.20mgKOH/g、水酸基価は11.8mgKOH/g、1,4−ベンゼンジメタノール残基と1,2−プロパンジオール残基とのモル比率は4:6であった。
【0071】
【化4】
【0072】
実施例3
エステル化合物Hの合成
撹拌機、温度計、及び精留装置を備え付けた1Lのガラス製4つ口丸底フラスコに、芳香族モノアルコールとして2−フェノキシエタノール242g(1.8mol)、2価アルコールとしてエチレングリコール249g(4.0mol)、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸322g(2.7mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.11gを仕込んだ後、常圧下225℃まで5時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他低沸分に分けて、水は回収し、その他低沸分はフラスコ内に戻した。ガスの流出が止まるまで冷却した後、精留装置を外して、ト字管、冷却管、及び200mlナスフラスコを丸底フラスコに取り付け、再び常圧下240℃まで3時間かけて昇温した。この間、反応で生成してくる水は200mlナスフラスコに回収した。その後、減圧装置を丸底フラスコに取り付け、2.3kPaまで減圧してから180℃まで10時間かけて昇温し重縮合を行った。その結果、下記式が主成分である淡黄色固体が473g得られた。エステル化合物Hの数平均分子量は1150、酸価は0.05mgKOH/g、水酸基価は9.1mgKOH/gであった。
【0073】
【化5】
【0074】
実施例4
エステル化合物Iの合成
撹拌機、温度計、及び精留装置を備え付けた1Lのガラス製4つ口丸底フラスコに、芳香族モノアルコールとして2−フェノキシエタノール391g(2.8mol)、2価アルコールとして2−メチル−1,3−プロパンジオール302g(3.4mol)、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸279g(2.4mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.07gを仕込んだ後、常圧下240℃まで3時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他低沸分に分けて、水は回収し、その他低沸分はフラスコ内に戻した。ガスの流出が止まるまで冷却した後、精留装置を外して、ト字管、冷却管、及び200mlナスフラスコを丸底フラスコに取り付け、再び常圧下250℃まで3時間かけて昇温した。この間、反応で生成してくる水は200mlナスフラスコに回収した。その後、減圧装置を丸底フラスコに取り付け、2.3kPaまで減圧してから180℃まで6時間かけて昇温し重縮合を行った。その結果、下記式が主成分である黄色透明液体が499g得られた。エステル化合物Iの数平均分子量は1370、酸価は0.02mgKOH/g、水酸基価は13.7mgKOH/gであった。
【0075】
【化6】
【0076】
実施例5
エステル化合物Jの合成
撹拌機、温度計、及び精留装置を備え付けた1Lのガラス製4つ口丸底フラスコに、芳香族モノアルコールとして2−フェノキシエタノール262g(1.9mol)、2価アルコールとして1,2−プロパンジオール247g(3.3mol)、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸299g(2.5mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.07gを仕込んだ後、常圧下245℃まで5時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他低沸分に分けて、水は回収し、その他低沸分はフラスコ内に戻した。ガスの流出が止まるまで冷却した後、精留装置を外して、ト字管、冷却管、200mlナスフラスコ、及び減圧装置を丸底フラスコに取り付け、2.3kPaまで減圧してから180℃まで4.5時間かけて昇温し重縮合を行った。この間、反応で生成してくる水は200mlナスフラスコに回収した。その結果、下記式が主成分である黄色透明液体が487g得られた。エステル化合物Jの数平均分子量は1010、酸価は0.06mgKOH/g、水酸基価は12.7mgKOH/gであった。
【0077】
【化7】
【0078】
比較例1
エステル化合物Cの合成
撹拌機、温度計、及び精留装置を備え付けた1Lのガラス製4つ口丸底フラスコに、芳香族モノアルコールとしてベンジルアルコール190g(1.8mol)、2価アルコールとして1,4−ベンゼンジメタノール211g(1.5mol)、脂肪族ジカルボン酸としてコハク酸232g(2.0mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.07gを仕込んだ後、210℃まで常圧で11時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他に分けて、水は回収し、その他はフラスコ内に戻した。その後、精留装置を外して、ト字管、冷却管、200mlナスフラスコ、及び減圧装置を丸底フラスコに取り付け、13.3kPaの減圧下で160〜190℃を12時間保持した。減圧の間に反応で生成してくる水は200mlナスフラスコに回収した。その後、0.4kPaまで減圧してから180℃まで4.5時間かけて昇温し重縮合を行った。その結果、下記式が主成分である黄褐色固体が423g得られた。エステル化合物Cの数平均分子量は1000、酸価は0.29mgKOH/gであった。
【0079】
【化8】
【0080】
比較例2
エステル化合物Dの合成
撹拌機、温度計、及び精留装置を備え付けた1Lのガラス製4つ口丸底フラスコに、2価アルコールとして1,3−ブタンジオール590g(6.6mol)、2価カルボン酸としてアジピン酸292g(2.0mol)及びテレフタル酸166g(1.0mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.11gを仕込んだ後、230℃まで常圧で10時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他に分けて、水は回収し、その他はフラスコ内に戻した。ガスの流出が止まるまで冷却した後、精留装置を外して、ト字管、冷却管、及び200mlナスフラスコを丸底フラスコに取り付け、再び230℃まで常圧で2時間かけて昇温し、230℃を16時間保持した。この間に反応で生成してくる水は200mlナスフラスコに回収した。その後、減圧装置を丸底フラスコに取り付け、0.4kPaまで減圧してから160℃まで5.5時間かけて昇温し重縮合を行った。冷却後、常圧に戻し、無水酢酸177g(1.7mol)を追加し120℃を4時間保持した。その後、120℃を保持しながら2kPaまで減圧し、低沸分の回収を行った。その結果、下記式が主成分である黄褐色透明液体が727g得られた。エステル化合物Dの数平均分子量は1300、酸価は0.44mgKOH/g、水酸基価は0.24mgKOH/g、アジピン酸残基とテレフタル酸残基とのモル比率は2:1であった。
【0081】
【化9】
【0082】
比較例3
エステル化合物Eの合成
撹拌機、温度計、及び精留装置を備え付けた1Lのガラス製4つ口丸底フラスコに、2価アルコールとして1,2−プロパンジオール367g(4.8mol)、2価カルボン酸としてアジピン酸461g(3.2mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.13gを仕込んだ後、180℃まで常圧で7.5時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他に分けて、水は回収し、その他はフラスコ内に戻した。その後、精留装置を取り外し、ト字管、冷却管、200mlナスフラスコ、及び減圧装置を丸底フラスコに取り付け、15.5時間かけて0.7kPaまで減圧しなから180℃まで昇温し重縮合を行った。冷却後、常圧に戻し、無水酢酸204g(2.0mol)を追加し、120℃を4時間保持した。その後、120℃を保持しながら1.3kPaまで減圧し、低沸分の回収を行った。その結果、下記式が主成分である淡黄色透明液体が697g得られた。エステル化合物Eの数平均分子量は1400、酸価は0.20mgKOH/g、水酸基価は0.10mgKOH/g以下であった。
【0083】
【化10】
【0084】
比較例4
エステル化合物Fの合成
撹拌機、温度計、精留装置を備え付けた1Lのガラス製4つ口丸底フラスコに2価アルコールとして1,2−プロパンジオール365g(4.8mol)、2価カルボン酸としてアジピン酸467g(3.2mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.13gを仕込んだ後、180℃まで常圧で4時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他に分けて、水は回収し、その他はフラスコ内に戻した。ガスの流出が止まるまで冷却した後、精留装置を外して、ト字管、冷却管、及び200mlナスフラスコを丸底フラスコに取り付け、180℃を4時間保持した。その後、減圧装置を丸底フラスコに取り付け、10.6kPaの減圧下で170〜180℃を11時間保持した。この間に反応で生成してくる水は200mlナスフラスコに回収した。その後、11.5時間かけて0.7kPaまで減圧しなから180℃まで昇温し重縮合を行った。その結果、下記式が主成分である無色透明液体が591g得られた。エステル化合物Fの数平均分子量は1500、酸価は0.36mgKOH/g、水酸基価は108mgKOH/gであった。
【0085】
【化11】
【0086】
比較例5
エステル化合物Gの合成
撹拌機、温度計、精留装置を備え付けた500mlのガラス製4つ口丸底フラスコに2価アルコールとして1,2−プロパンジオール301g(4.0mol)、芳香族モノカルボン酸として安息香酸122g(1.0mol)、2価カルボン酸としてアジピン酸8g(0.05mol)及び無水フタル酸24g(0.2mol)、並びに触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.04gを仕込んだ後、200℃まで常圧で6.5時間かけて昇温した。昇温中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水及びその他に分けて、水は回収し、その他はフラスコ内に戻した。その後、精留装置を外して、ト字管、冷却管、200mlナスフラスコ、及び減圧装置を丸底フラスコに取り付け、24.0kPaの減圧下で150〜160℃を18時間保持した。減圧の間に反応で生成してくる水は200mlナスフラスコに回収した。その後、8時間かけて0.7kPaまで減圧しながら180℃まで昇温し重縮合を行った。その結果、下記式が主成分である黄色透明液体が152g得られた。エステル化合物Gの数平均分子量は410、酸価は0.29mgKOH/g、水酸基価は14.1mgKOH/g、アジピン酸残基とフタル酸残基とのモル比率は1:3であった。
【0087】
【化12】
【0088】
比較例6
エステル化合物Kの合成
国際公開第10/087219号記載の方法により、2価アルコールとしてエチレングリコール及び1,2−プロパンジオール、2価カルボン酸としてコハク酸及びテレフタル酸並びに無水酢酸を反応させて、下記式が主成分である淡黄色透明液体を得た。エステル化合物Kの数平均分子量は1030(平均重合度n=5.0)、酸価は0.42mgKOH/g、水酸基価は1.97mgKOH/g、エチレングリコール残基と1,2−プロパンジオール残基とのモル比率は1:1、コハク酸残基とテレフタル酸残基とのモル比率は1:1であった。
【0089】
【化13】
【0090】
<フィルムの作成及び評価>
実施例11
塩化メチレン34.0g、メタノール4.8g及びブタノール1.2gの混合溶媒にセルロースエステル樹脂 2.14g及びエステル化合物A 0.26gを溶解した溶液を直径94mmのシャーレに5g秤取し、ふたをした後、シャーレ全体に流涎させた。その後、室温にて水平を保ちつつ一晩静置した後に50℃にて0.5時間、その後100℃にて1時間乾燥させることで、厚さ25μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0091】
実施例12
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Bを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ27μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0092】
実施例13
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Hを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ26μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0093】
実施例14
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Iを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ28μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0094】
実施例15
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Jを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ25μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0095】
比較例11
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Cを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ28μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0096】
比較例12
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Dを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ26μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0097】
比較例13
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Eを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ26μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0098】
比較例14
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Fを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ25μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0099】
比較例15
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ28μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0100】
比較例16
エステル化合物Aの代わりにリン酸エステル系可塑剤1を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ25μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0101】
比較例17
エステル化合物Aの代わりにリン酸エステル系可塑剤2を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ24μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0102】
比較例18
エステル化合物Aを用いない以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ24μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0103】
比較例19
エステル化合物Aの代わりにエステル化合物Kを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ26μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び透明性を前記方法で測定した結果を表1に記す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例11〜15及び比較例11のように末端を芳香族モノアルコールで封止したエステル化合物を含むフィルムは、比較例12、13及び19のように無水酢酸で封止したエステル化合物、比較例14のように末端封止していないエステル化合物、比較例15のように安息香酸で末端封止したエステル化合物、又は比較例16及び17のように従来用いられていたリン酸エステル系可塑剤を含むフィルムと比較して、明らかに透湿度が低く、耐透湿性が改善されていることがわかる。また、2価アルコールが芳香族の2価アルコールのみであり、末端を芳香族モノアルコールで封止したエステル化合物を含む比較例11のフィルムは、透湿度は低いが、透明性(ヘーズ値)が悪いことがわかる。これらのことから、本発明の組成のエステル化合物を改質剤として含むことで、フィルムの透明性を保ちながら耐透湿性を改善することができることがわかる。