【文献】
小林源裕,コーダ波H/Vスペクトルに基づくS波速度構造の決定,日本地震工学会論文集,日本,日本地震工学会,2011年06月13日,第10巻,第1号,p.1-16
【文献】
林宏一,人工振源を用いた表面波探査の開発とその土木地質調査への適用,応用地質技術年報,日本,応用地質株式会社,2001年12月,第21号,p.9-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面波探査装置を利用して実施された表面波探査方法であって、前記表面波探査装置は表面波探査端末デバイスおよびコンピュータを含み、前記表面波探査端末デバイスは複数の振動収集装置を含み、前記表面波探査方法は、
パッシブ表面波信号を収集する段階において、探査領域にN個の観測ステーションが設置され、前記表面波探査端末デバイスの前記振動収集装置を利用して前記N個の観測ステーションの振動データを収集し、前記振動データは基本モード表面波情報および高次モード表面波情報を含むことと、
地層構造を結像する段階において、コンピュータがベクトル波数変換方法および前記振動データに基づいて分散スペクトルを算出し、そして分散スペクトルから基本モード表面波および高次モード表面波を含む分散曲線を抽出することと、
コンピュータが前記分散スペクトルに基づいて初期地層モデルを確立することと、
コンピュータが初期地層モデルおよび逆解析アルゴリズムによって基本モード表面波および高次モード表面波を含む分散曲線を逆解析し、地層情報および/または地震波の速度情報を取得することと、
コンピュータが地層情報および/または地震波の速度情報に基づいて地層S波(横波)の速度構造を逆解析して地層構造を結像することと、を含むことを特徴とする表面波探査方法。
前記の前記コンピュータが前記観測ステーション対に対応するステーション間隔を算出することの後、前記の前記コンピュータが前記振動データに基づき、前記観測ステーション対に対応する相互相関スペクトルを算出することの前に、
前記コンピュータが各前記観測ステーション対に対応するステーション間隔を比較することと、
前記コンピュータが前記ステーション間隔が同じである観測ステーション対に対応する相互相関スペクトルを重ね合わせ平均処理し、得られた平均値をステーション間隔に対応する相互相関スペクトルとすることと、をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の表面波探査方法。
コンピュータプログラムが格納されているコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムがプロセッサに実行される時は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実現することを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、本発明の実施例を完全に理解するために提供される特定のシステム構造、技術などの詳細は、単なる例示のものに過ぎず、本出願を制限するものではない。しかしながら、当業者であれば、これらの具体的な詳細なしに他の実施例において本出願を実現できることが明らかであろう。その他の場合、本発明の説明を妨害しないために、周知のシステム、装置、回路及び方法の詳細な説明を省略する。
【0015】
本発明の技術案をより明確に説明するために、以下、具体的な実施例によって説明する。
【0016】
図1は本発明実施例によって提供された表面波探査方法のフローチャートであり、詳細的な説明は以下のとおりである。
【0017】
S101において、振動収集装置によって収集された振動データを取得する。
【0018】
本実施例において、振動収集装置は工事用地震計または検波器に限らなく、例えば、複数のケーブルで有線接続された工事用地震計、又は無線接続された独立工事用地震計を用いてもよい。好ましくは、卓越周波数が4Hz以下の広帯域検波器を用いて、取得帯域幅が速いほど、各周波数の表面波の取得に有利である。振動収集装置の数は、予め設定された数以上であり、例えば、検波器の数は12個以上である。振動収集装置のサンプリング周波数は探査の目的に満たす必要があり、工学的探査のサンプリング周波数は一般的に20Hz以上である。振動収集装置の同期取得の時間は、予め設定された時間以上である。
【0019】
S102において、ベクトル波数変換方法(英語名:Vector Wavenumber Transform Method、略称:VWTM)および振動データによって分散スペクトルを算出し、前記分散スペクトルから、基本モード表面波分散曲線および高次モード表面波分散曲線を含む分散曲線を抽出する。
【0020】
従来の空間自己相関法(SPAC法)は、1957年に地球物理学者Akiによって提案されたバックグラウンドノイズ研究方法であり、その計算式は、
【0022】
であり、ここで、ρ(ω,r)は空間自己相関係数、ωは角周波数、ω=2πf、rは任意の2点間の距離、kは波数、k=ω/c、cは波速、J
0は第一種0次のベッセル関数、c(ω)は表面波の位相速度である。上記の式により、空間自己相関係数は、表面波の位相速度、周波数、およびステーション間隔の第一種0次のベッセル関数である。したがって、表面波の位相速度は、算出した空間自己相関係数をフィッティングすることにより、表面波の位相速度を算出できる。
【0023】
既存のSPAC法は次のような短所が存在している。
【0024】
1、SPAC法では、振動収集装置に対応する観測ステーションが、線形、円形、L字状などの特定の規則に従って配置する必要があり(
図2を参照)、現場にも一定の要求がある。
【0025】
2、SPAC法は実際の信号を大幅に近似しており、地上伝播のバックグラウンドノイズ信号は主に表面波で構成されることが想定され、且つ基本モード表面波が支配的であり、算出した空間自己相関係数は基本モード表面波の空間自己相関係数である。
【0026】
3、SPAC法は、パッシブ表面波から基本モード表面波分散曲線のみを抽出でき、高次モード表面波分散曲線を効果的に抽出できない。理論上には、基本モード表面波分散曲線だけによって逆解析された地層構造は大きな不確実性があり、高次モード表面波分散曲線を抽出して逆解析に使われるならば、逆解析の不確実性が大幅に下げられる。
【0027】
本発明実施例で提案されたベクトル波数変換方法(VWTM)は、振動データから基本モード表面波の分散情報および高次モード表面波の分散情報を抽出できるため、逆解析に高次モード表面波の分散情報を加えたゆえ、逆解析の不確実性を低減する。
【0028】
本発明の実施例として、前記ベクトル波数変換方法(VWTM)の計算式は、
【0030】
であり、ここで、
【数3】
は相互相関スペクトル、Aは定数、
【数4】
は2つの観測ステーション間の距離、ωは角周波数ω=2πf、fは周波数、g(ω,k)はグリーン関数の垂直成分のカーネル関数、
【数5】
は波数、k=ω/cである。
【0031】
具体的には、
【数6】
は任意の2つの観測ステーション間の相互相関スペクトルである。
【0032】
以下、提案されたベクトル波数変換方法の算出処理について説明する。
【0033】
水平層状地表の測定点
【数7】
に受信された微動の垂直成分の記録は
【数8】
として表示され、地表のある2つのところ
【数9】
と
【数10】
に配置されたステーションのバックグラウンドノイズ信号の時間領域相互相関は、
【0035】
であるように定義され、ここで、
【数12】
である。また、微動波動場は時空間的に安定している等方性を有するランダムな波動場であるため、任意の2つのステーションの垂直成分の波動場の相互相関係数は空間的に等方性であり、すなわち、
【数13】
となり、
ここで、
【数14】
であり、畳み込み定理により、式(3)をフーリエ変換すると、相互相関スペクトルを表する式は、
【0037】
であり、ここで、
【数16】
および
【数17】
はそれぞれ2つの観測ステーションが受信された微動信号であり、
【数18】
は微動信号のフーリエ変換である。
【0038】
【数19】
は波動方程式のグリーン関数の虚部と正比例することに基づく、すなわち、
【0040】
であり、ここで、Aは定数,G(ω,r)はグリーン関数の垂直成分であり、
【0042】
であるように表すことができ、
【数22】
をベクトル波数変換によって処理して、
【数23】
を使用すると、
【0044】
となり、式(5)、式(6)を
【数25】
に代入してベクトル波数変換を実行すると、中間式
【0046】
となり、ベッセル関数の直交特性
【数27】
により、式(8)は、
【0049】
図7(c)の示すように、k=k
n(ω),n=1,2,3,….はカーネル関数Im{g(ω,k)}の極であり、Im{g(ω,k)}はk
n(ω)(n=1,2,3…)において無限に近い。実際の適用プロセスでは、積分の代わりに有限の合計が使用されるため、k
n(ω)(n=1,2,3…)において極大値が存在する。ここまでは、分散曲線を抽出するための新しい方法が得られ、それをベクトル波数変換方法(VWTM)と呼ぶ。
【0050】
ベクトル波数変換方法(VWTM)の計算式に基づき、任意の2つの観測ステーション間のバックグラウンドノイズデータの相互相関を計算すると、
【数29】
が得られ、さらに式(9)のように処理し、異なる波数kのカーネル関数g(ω,k)の値を計算することにより、異なるモードの表面波の周波数波数領域および周波数速度領域におけるエネルギー分布が得られる。波のエネルギー分布パターンにより、波の特性が判断され、そして高いモードを含む分布曲線を取得できる。実際の検出プロセスでは、バックグラウンドノイズは主に表面波信号であり、実体波信号は個々の場合にのみ現れることに注意すべきである。次は、表面波分散曲線の逆解析を実行し、地下媒質の横波速度構造を取得できる。
【0051】
提案されたベクトル波数変換方法(VWTM)は以下の利点が有する。
【0052】
1、ベクトル波数変換方法(VWTM)が採用されているため、振動収集装置に対応する観測ステーションが特定の規則に従って配置する必要がなく、任意に配置でき、もちろん、線形、円形、L字状などに従って配置してもよく、
図3に示されるように、現場に要求しない。
【0053】
2、実際に受信したバックグラウンドノイズデータは、さまざまな振動によって生じた波で構成されており、表面波だけでなく、実体波も含まれている。さらに、表面波は、不均一な媒質で周波数分散現象が発生され、すなわち、表面波は異なる位相速度を持つモードで構成される。したがって、異なる速度の表面波(基本モードと高次モードを含む)および実体波の成分は、計算で得られた分散スペクトルにより分離できる。
【0054】
本発明の実施例は、S102においてベクトル波数変換方法および前記振動データに基づいて分散スペクトルを算出することは、以下を含む。
【0055】
S401では、振動収集装置に対応する任意2つの観測ステーションを観測ステーション対にまとめ、前記観測ステーション対に含まれた2つの観測ステーション間の間隔であるステーション間隔を算出する。
【0056】
本実施例では、すべての観測ステーションが2つずつで組み合わされ、もし観測ステーションの数はnであれば、ステーション間隔r
1,r
2...r
mの数はmであり、
【数30】
である。
【0057】
S402では、振動データに基づき、観測ステーション対に対応する相互相関スペクトルを算出する。
【0058】
ここで、各観測ステーション対は、1つのステーション間隔に対応し、振動データに基づき、任意1つの組のステーション間隔r
0に対応する観測ステーション対内の2つの観測ステーションが、いずれかの周波数ω
0での相互相関スペクトル
【数31】
が算出できる。
【0059】
S403では、前記ステーション間隔、前記ステーション間隔に対応する相互相関スペクトル、および前記ベクトル波数変換方法(VWTM)に基づき、前記分散スペクトルを算出する。
【0060】
具体的には、予め設定された走査周波数範囲及び予め設定された周波数間隔に基づき、走査周波数シーケンスを生成できる。予め設定された走査速度範囲及び予め設定された速度間隔に基づき、走査速度シーケンスを生成する。走査周波数シーケンスと走査速度シーケンスに基づき、ベクトル波数変換方法(VWTM)を利用し、式(2)によって周波数と速度を走査し、分散スペクトルを算出する。分散スペクトルは、周波数速度分散スペクトルであってもよく、すなわち、f-c分散スペクトルである。
【0061】
本発明の実施例として、S401の後、S402の前に、さらに以下を含む。
【0062】
S501では、各観測ステーション対に対応するステーション間隔を比較する。
【0063】
S502では、前記ステーション間隔が同じである観測ステーション対に対応する相互相関スペクトルを重ね合わせ平均処理し、得られた平均値を前記ステーション間隔に対応する相互相関スペクトルとする。
【0064】
本実施例において、各観測ステーション対に対応するステーション間隔を最大から最小にソートし、ステーション間隔が同じな観測ステーション対に対応する相互相関スペクトルを平均化して、得られた平均値を該ステーション間隔の相互相関スペクトルとすることができ、これによって同じステーション間隔を持つ観測ステーション対の振動データが完全に利用でき、算出された相互相関スペクトルがより正確になり、抽出された分散スペクトルの有効性が高まり、地層探査の精度が改善される。
【0065】
S103では、前記分散スペクトルに基づいて初期地層モデルを確立する。
【0066】
従来、工学的応用における過渡表面波探査法は、周波数−速度分散スペクトルのみにおいてエネルギー最大値を使用して、手動または自動で分散曲線を連結し、分散曲線のジグザグ特徴に基づいて地層の深さおよび厚さを逆解析できる。以上のように高次モード表面波を利用する逆解析を実行するには、利用される高次モード表面波の次数に対して正確に判断する必要がある。しかしながら、地層に低速度層または高速度層が存在する場合、レイリー波の各モードのエネルギー分布が変化するだけでなく、各モードの速度も周波数の変化とともに変化するため、モードキス(mode kissing)という現象が頻繁に発生し、これは高次モードの分散曲線の判断に多くの問題をもたらす。さらに、高周波数範囲内において水平層状地層モデルに軟弱中間層が存在する場合、表面波の高次モードは基本モードよりも大きなエネルギーを持ち、すなわち、一定の周波数範囲では、現在の方法によって基本モード表面波を取得できなく、高次モード表面波のみを取得できる。実際の探査では、本物の地層は理想的な水平方向の層状等方性構造ではないため、レイリー波が分散スペクトルの高次モードにおける結像の品質はよく高くなく、高次モードの分散曲線を利用する逆解析が以上のようなことで制限されている。
【0067】
前述の高次モードの分散曲線を利用して逆解析を実行するときに発生する問題を回避するために、地層に低速または高速の中間層が存在することが発見された場合、中間層の埋没に対応する周波数範囲内のレイリー波エネルギーは、基本モードから1次またはさらに高次モードへのステップ変化があり、それにより、基本モードおよび高次モード表面波分散曲線が特定の周波数範囲でのみ連続するという問題が発生し、実際のデータの結像の品質がさらに低下する可能性がある。周波数−速度スペクトルにおける各モードのエネルギー分布は、地層構造と密接な関係があると考えられる。したがって、本実施例では、周波数範囲は、周波数−速度スペクトルにおける異なる周波数範囲の各モードのエネルギー分布の関係に従って分類されるため、単純な層状地層モデルを迅速に確立でき、後続の精確な逆解析の初期モデルとして採用される。
【0068】
本発明の実施例として、S103は以下を含むことができる。
【0069】
S601では、前記分散スペクトルにおける各周波数範囲の表面波のモードのエネルギー分布に基づき、前記周波数範囲を分類する。
【0070】
S602では、分類された周波数範囲と地層との間の対応関係に従って前記初期地層モデルを確立する。
【0071】
図7の示すように、
図7a)はF−C分散スペクトルであり、この図の点線は、表面波の理論的な分散曲線であり、
図7b)は、分散スペクトルのエネルギーに基づいて抽出された周波数分散点であり、周波数範囲は、分布特性によって4種類に分類されており、
図7c)は、グリーン関数のカーネル関数によって得られた理論的なF−C分散スペクトルである。
【0072】
図8の示すように、半波長理論に従って、周波数速度領域における分散点を深さ−速度領域に変換する。
図8a)は地層モデルである。分散スペクトルにおいて、1号および3号点線における点は、基本モードの分散曲線の点であり、2号および4号点線における点は、高次モードの分散曲線の点である。地層モデルを得られた深さ領域の分散曲線と比較すると、埋没変位が20〜40 mの第3層(低速度層)が、深さ−速度−断面における4号分散点の分布にほぼ一致していることがわかる。埋没変位が0〜10mの第1層が、深さ−速度断面における2号分散点の分布もほぼ一致していることがわかる。したがって、高次モードの分散曲線の分布と地層との間に1対1の対応関係が確実に存在していることがわかる。これで、周波数領域で分散点を分類し、地層の分層を実行し、初期モデルを確立するという考えが正しいであることを証明する。
【0073】
S104では、初期地層モデルおよび逆解析アルゴリズムに基づいて分散曲線を逆解析する。
【0074】
本実施例において、シミュレーテッドアニーリングアルゴリズムおよび遺伝的アルゴリズムなどの逆解析アルゴリズムを使用して分散曲線の逆解析を実行し、地層情報および/または振動波の速度情報を取得することができる。例えば、地層深度情報および速度断面を取得できるため、地層構造の探査を実現する。
【0075】
本発明の実施例によって提案された表面波探査は、以下の利点を有する。
【0076】
1、高次モード表面波の分散情報は、パッシブ表面波信号から抽出できる。
【0077】
2、周波数領域での分類法により地層を分層し、初期地層モデルを確立し、次に逆解析アルゴリズムを使用して地層の逆解析を実行することにより、逆解析アルゴリズムの計算時間を大幅に短縮でき、逆解析の不安定性も大幅に削減される。
【0078】
3、パッシブ表面波信号が収集される場合、観測ステーションは任意に配置でき、現場に対する要求がほぼなく、収集時間は15分から30分の間であり、通常のラップトップ(i5,8GB RAM)に対する後処理の計算時間は約10分であり、逆解析の計算に必要な時間は少ない。さらに、震源は不要であり、環境に影響を与えず、一般的な工学的地震計(たとえば、過渡表面波地震計)を使用してデータを収集でき、高効率と経済性などの利点が統合される。
【0079】
本発明の実施例は、ベクトル波数変換方法を使用して分散スペクトルを取得し、基本モード表面波および高次モード表面波を含む分散曲線を分散スペクトルから抽出し、初期地層モデルを確立し、初期地層モデルおよび逆解析アルゴリズムにより分散曲線を逆解析し、地層の探査を実現し、高次モード表面波の分散情報を振動データから抽出でき、高次モード表面波の分散情報を地層の逆解析操作に加えることにより、逆解析の不確実性が下げられる。初期地層モデルを確立することにより、逆解析アルゴリズムの計算時間を短縮でき、そして逆解析アルゴリズムの不安定性が低減される。振動収集装置を任意に配置することができ、現場のレイアウトに対する要求が軽減され、表面波探査の適応性が向上される。
【0080】
前述の実施例における各ステップのシーケンス番号は、実行順の前後を意味するものではなく、各プロセスの実行順は、機能およびその内在的論理によって決定されるべきであり、本発明の実施例の実施プロセスに対する制限とみなされないことを理解すべきである。
【0081】
前述の実施例で説明された表面波探査方法に対応して、
図9は、本発明の実施例によって提供された表面波探査装置の概略図を示す。説明の便宜上、この実施例に関連する一部のみを説明する。
【0082】
図9に示すように、この装置は、取得モジュール81、抽出モジュール92、構築モジュール93、および逆解析モジュール94を含む。
【0083】
取得モジュール91は、振動収集装置によって収集された振動データを取得するために用いられる。
【0084】
抽出モジュール92は、ベクトル波数変換方法と前記振動データに基づいて分散スペクトルを算出し、前記分散スペクトルから、基本モード表面波分散曲線および高次モード表面波分散曲線を含む分散曲線を抽出するために用いられる。
【0085】
構築モジュール93は、前記分散スペクトルに基づいて初期地層モデルを確立するために用いられる。
【0086】
逆解析モジュール94は、前記初期地層モデルおよび逆解析アルゴリズムに基づいて前記分散曲線を逆解析するために用いられる。
【0087】
好ましくは、前記ベクトル波数変換方法の計算式は、
【0089】
であり、ここで、
【数33】
は相互相関スペクトル、Aは定数、
【数34】
は2つの観測ステーション間の距離、ωは角周波数ω=2πf、fは周波数、g(ω,k)はグリーン関数の垂直成分のカーネル関数、
【数35】
は波数である。
【0090】
好ましくは、前記ベクトル波数変換方法の具体的な計算過程は、相互相関スペクトルを表する式
【0092】
を確立し、ここで、
【数37】
および
【数38】
はそれぞれ2つの観測ステーションが受信された微動信号であり、
【数39】
は微動信号のフーリエ変換であり、
相互相関スペクトルをグリーン関数に近似し、ベクトル波数変換を実行すると、中間式
【0094】
が得られ、ここで、G(ω,r)はグリーン関数の垂直成分であり、
【数41】
は第一種0次のベッセル関数であり、
前記中間式およびベッセル関数の直交特性に基づき、前記ベクトル波数変換方法の計算式
【数42】
が得られる。
【0095】
好ましくは、前記抽出モジュール92は、
振動収集装置に対応する任意2つの観測ステーションを観測ステーション対にまとめ、前記観測ステーション対に含まれた2つの観測ステーション間の間隔であるステーション間隔を算出し、
前記振動データに基づき、前記観測ステーション対に対応する相互相関スペクトルを算出し、
前記ステーション間隔、前記ステーション間隔に対応する相互相関スペクトル、および前記ベクトル波数変換方法に基づき、前記分散スペクトルを算出するために用いられる。
【0096】
好ましくは、前記抽出モジュール92は、さらに、
各前記観測ステーション対に対応するステーション間隔を比較し、
前記ステーション間隔が同じである観測ステーション対に対応する相互相関スペクトルを重ね合わせ平均処理し、得られた平均値をステーション間隔に対応する相互相関スペクトルとするために用いられる。
【0097】
好ましくは、前記構築モジュール93は、
前記分散スペクトルにおける各周波数範囲の表面波のモードのエネルギー分布に基づき、前記周波数範囲を分類し、
分類された周波数範囲と地層との間の対応関係に従って前記初期地層モデルを確立するために用いられる。
【0098】
本発明の実施例は、ベクトル波数変換方法を使用して分散スペクトルを取得し、基本モード表面波および高次モード表面波を含む分散曲線を分散スペクトルから抽出し、初期地層モデルを確立し、初期地層モデルおよび逆解析アルゴリズムにより分散曲線を逆解析し、地層の探査を実現する。高次モード表面波の分散情報を振動データから抽出できるため、高次モード表面波の分散情報を地層の逆解析操作に加えることにより、逆解析の不確実性が下げられる。初期地層モデルを確立することにより、逆解析アルゴリズムの計算時間を短縮でき、そして逆解析アルゴリズムの不安定性が低減される。振動収集装置を任意に配置することができ、現場のレイアウトに対する要求が軽減され、表面波探査の適応性が向上される。
【0099】
図10は、本願の一実施例によって提供される端末デバイスの概略図である。
図10に示すように、本実施例における表面波探査端末デバイス10は、プロセッサ100と、メモリ101と、例えば表面波探査プログラムのような前記メモリ101に格納されて前記プロセッサ100によって実行可能なコンピュータプログラム102とを含む。前記プロセッサ100はコンピュータプログラム102を実行する時に、上記の各表面波探査方法の実施例におけるステップを実現し、例えば
図1の示すようなS101〜S104を実現する。あるいは、前記プロセッサ100はコンピュータプログラム102を実行する時に、上記の各装置の実施例における各モジュールまたはユニットの機能を実現し、例えば
図9の示すようなモジュール91〜94の機能を実現する。
【0100】
例示的に、前記コンピュータプログラム102は、1つまたは複数のモジュールまたはユニットに分割することができ、前記1つまたは複数のモジュールまたはユニットは、前記メモリ101に格納され、前記プロセッサ100によって実行され、本発明を達成する。前記1つまたは複数のモジュールまたはユニットは、特定の機能を達成できる一連のコンピュータプログラム命令セグメントであってもよく、該命令セグメントは、前記表面波探査端末デバイス10において前記コンピュータプログラム102の実行プロセスを記述するために使用される。例えば、前記コンピュータプログラム102は、取得モジュール、抽出モジュール、構築モジュール、および逆解析モジュールに分割することができ、各モジュールの機能は以下の通りである、
取得モジュールは、振動収集装置によって収集された振動データを取得するために用いられる、
抽出モジュールは、ベクトル波数変換方法と前記振動データに基づいて分散スペクトルを算出し、前記分散スペクトルから、基本モード表面波分散曲線および高次モード表面波分散曲線を含む分散曲線を抽出するために用いられる、
構築モジュールは、前記分散スペクトルに基づいて初期地層モデルを確立するために用いられる、
逆解析モジュールは、前記初期地層モデルおよび逆解析アルゴリズムに基づいて前記分散曲線を逆解析するために用いられる。
【0101】
前記表面波探査端末デバイス10は、デスクコンピュータ、ノートブックコンピュータ、パームトップコンピュータ、クラウドサーバなどのコンピューティングデバイスであってもよい。前記表面波探査端末デバイスは、プロセッサ100、メモリ101を含むことができるが、これらに限定されない。当業者であれば、
図10は、表面波探査端末デバイス10の一例に過ぎず、表面波探査端末デバイス10を限定するものではなく、図示されたものよりも多いまたは少ないコンポーネントを含んでもよく、いくつかのコンポーネントの組み合わせまたは異なるコンポーネントであってもよく、例えば、前記表面波探査端末デバイスは、表示装置、入出力装置、ネットワークアクセス装置、バスなどをさらに含むことができることを理解されたい。
【0102】
前記プロセッサ100は中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)であってもよいし、他の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor、DSP)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field−Programmable Gate Array、FPGA)または他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲートやトランジスタロジックデバイス、ディスクリートハードウェアコンポーネントなどであってもよい。汎用プロセッサはマイクロプロセサであり、または当該プロセッサは任意の従来のプロセッサなどであってもよい。
【0103】
前記メモリ101は、例えば表面波探査端末デバイス10のハードディスクやメモリなど、前記表面波探査端末デバイス10の内部記憶ユニットであってもよい。前記メモリ101は、例えば前記表面波探査端末デバイス10に搭載されたプラグインハードディスク、スマートメモリカード(Smart Media(登録商標) Card、SMC)、セキュアデジタル(Secure Digital、 SD)カード、フラッシュカード(Flash Card)など、前記表面波探査端末デバイス10の外部記憶装置であってもよい。さらに、前記メモリ101は、前記表面波探査端末デバイス10の内部記憶ユニットと外部記憶装置の両方を備えてもよい。前記メモリ101は前記コンピュータプログラムおよび前記表面波探査端末デバイスに必要な他のプログラムおよびデータを記憶するために用いられる。前記メモリ101はさらに既に出力されたまたは出力しようとするデータを一時的に記憶するために用いることができる。
【0104】
当業者であれば、説明しやすく及び簡潔にするために、上述の各機能ユニット、モジュールの分割のみが例示されているが、実際に応用される中、必要に応じて上記の機能配分は異なる機能ユニット、モジュールによって達成されて、即ち前記装置の内部構造を異なる機能ユニットやモジュールに分割して上記の機能の全部又は一部を実現できることは明確に理解できるであろう。実施例における各機能ユニット、モジュールは1つの処理ユニットに統合されていてもよく、物理的に別々に存在していてもよく、2つ以上のユニットが1つのユニットに統合されてもよいが、上記統合されたユニットは、ハードウェアの形態を用いて実現してもよいし、ソフトウェア機能ユニットの形態を用いて実現してもよい。また、各機能ユニット、モジュールの具体的な名称は、互いに区別するもののみを目的とし、本出願の保護範囲を制限するものではない。上述のシステムにおけるユニット、モジュールの具体的な作業プロセスについては、前記の方法実施例における対応するプロセスを参照することができ、ここで再度の説明を省略する。
【0105】
前記の実施例において、各実施例についての説明はそれぞれ重要点があり、ある実施例で詳細に記述又は記載しない部分は、他の実施例の関連記述を参照することができる。
【0106】
本明細書で開示される実施例に合わせて説明された様々な例のユニット及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、又はコンピュータソフトウェアと電子ハードウェアの組合せによって実現できることは、当業者が意識すべきである。これらの機能がハードウェア又はソフトウェアの形態で実行されるかどうかは、技術的解決手段の具体的な応用及び設計上の制約条件による。当業者であれば、ぞれぞれの具体的な応用に対して異なる方法を利用して記述される機能を実現することができるが、このような実現は本発明の範囲から逸脱しないものと考えるべきである。
【0107】
本発明によって提供される実施例において、開示された装置または端末デバイス及び方法は、他の方法で実施され得ることを理解すべきである。例えば、以上説明された装置または端末デバイスの実施例は例示に過ぎず、例えば、前記モジュール又はユニットの分けは、論理的な機能分けにすぎず、実際の実施では、例えば複数のユニット又はコンポーネントを組み合わせたり、別のシステムに統合したり、一部の特徴を無視したり、実行しないなど、他の分け方法も用いることができる。一方、図示又は説明した相互カップリング又は直接カップリング又は通信接続は、いくつかのインターフェースを介した装置又はユニットの間接カップリング又は通信接続であってもよく、電気的、機械的又は他の形態を用いることができる。
【0108】
前記の分離部品として記載されたユニットは物理的に分離されてもよく分離されなくてもよいが、ユニットとして表示された部品は物理的ユニットであってもなくてもよいが、つまり、1つの場所に配置することも、複数のネットワークユニットに分散することもできる。本実施例の解決的手段を達成するために、実際の必要に応じてユニットの一部又は全部を選択することができる。
【0109】
また、本発明の各実施例における各機能ユニットは、1つの処理ユニットに統合されていてもよいし、物理的に別々に存在していてもよいし、2つ以上のユニットが1つのユニットに統合されてもよい。上記の統合ユニットは、ハードウェアの形態またはソフトウェア機能ユニットの形態を用いることができる。
【0110】
前記の統合されたモジュールまたはユニットは、ソフトウェア機能ユニットの形態で実現されて独立の製品として販売又は使用される場合、コンピュータの読み取り可能な媒体に記憶することができる。この理解に基づいて、本発明は上記実施例の方法におけるフローの全部又は一部を実現し、関連するハードウェアを命令するためのコンピュータプログラムによって実現されてもよく、前記コンピュータプログラムはコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶することができ、当該コンピュータプログラムはプロセッサによって実行されるとき、前記の各方法実施例のステップを実現することができる。ここで、前記コンピュータプログラムはコンピュータプログラムコードを含み、前記コンピュータプログラムコードはソースコード形態、オブジェクトコード形態、実行可能なファイル又は何らかの中間形態などであってもよい。前記コンピュータ読み取り可能な媒体は、前記コンピュータプログラムコードを運ぶ任意のエンティティ又は装置、記録媒体、USBメモリ、ポータブルハードディスク、磁気ディスク、光ディスク、コンピュータメモリ、読み出し専用メモリ(ROM、Read−Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM、Random Access Memory)、電気搬送波信号、電気通信信号及びソフトウェア配布媒体などを含む。なお、前記コンピュータ読み取り可能な媒体に含まれるコンテンツは、司法管轄区域内の法律及び特許実務の要件に従って適切に増減することができ、例えばいくつかの司法管轄区域では、立法及び特許実務によって、コンピュータ読み取り可能な媒体は電気搬送波信号及び電気通信信号を含まない。
【0111】
上述した実施例は本発明の技術的解決手段を記述するためのものであり、これに限定されるものではない。上記の実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、上記の各実施例に記載された技術的解決手段を変更し、またはその技術特徴の一部を等価置換することができることを理解すべきである。これらの変更や置き換えは、対応する技術的解決手段の本質が本発明の各実施例の技術的解決手段の要旨および範囲から逸脱することなく、本発明の保護の範囲に含まれるべきである。