(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6945897
(24)【登録日】2021年9月17日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】サービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム
(51)【国際特許分類】
H04W 40/12 20090101AFI20210927BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20210927BHJP
H04W 40/20 20090101ALI20210927BHJP
H04W 40/30 20090101ALI20210927BHJP
【FI】
H04W40/12
H04W84/18
H04W40/20
H04W40/30
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-531626(P2020-531626)
(86)(22)【出願日】2018年10月25日
(65)【公表番号】特表2021-506182(P2021-506182A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(86)【国際出願番号】CN2018111909
(87)【国際公開番号】WO2019169874
(87)【国際公開日】20190912
【審査請求日】2020年6月9日
(31)【優先権主張番号】201810193473.6
(32)【優先日】2018年3月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518371489
【氏名又は名称】南京郵電大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY OF POSTS AND TELECOMMUNICATIONS
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】朱 洪波
(72)【発明者】
【氏名】朱 暁栄
(72)【発明者】
【氏名】楊 龍祥
(72)【発明者】
【氏名】趙 海涛
(72)【発明者】
【氏名】倪 介元
(72)【発明者】
【氏名】劉 旭
【審査官】
石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2003/021877(WO,A1)
【文献】
特表2007−518326(JP,A)
【文献】
特開2016−111396(JP,A)
【文献】
特開2013−021738(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第106102119(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線メッシュネットワーク内の各ノードは、周期的に情報を交換して、近隣テーブルを保持及び更新し、次ホップ近隣ノードの状態情報を獲得するステップS1と、
データを転送する必要のあるノードは、ルーティング要求をブロードキャストし、前記ルーティング要求を受け取った近隣ノードは、目的ノードとの間の距離を算出し、前記データを転送する必要のあるノードにルーティング応答を返信するステップS2と、
前記データを転送する必要のあるノードは、受け取った前記ルーティング応答に基づいて、前記ルーティング応答を返信した近隣ノードを使用可能な近隣ノードセットとして構築し、自身と前記目的ノードとの距離と、近隣ノードと前記目的ノードとの距離との差分に応じて、使用可能な次ホップノードとして適切な近隣ノードを選択して、使用可能な次ホップノードセットを構築するステップS3と、
前記データを転送する必要のあるノードは、データに必要なサービス品質要求、及び、前記使用可能な次ホップノードとの間のチャネル容量の推定値に応じて、情報交換遅延に対するチャネル容量の比をメトリック値として設定して候補次ホップノードセットを選択し、前記候補次ホップノードセット内で前記メトリック値に基づいてノードに優先順位を付け、前記優先順位に従って順番にデータを転送するステップS4と、
転送データを受け取った各近隣ノードは、確認文字を返すためのタイマーを前記優先順位に従って設定し、データ転送を開始する時間を決定するステップS5と、
前記データを転送する必要のあるノードは、いずれかの候補次ホップノードから返された前記確認文字を受け取ると、現在のルーティングプロセスを終了するステップS6と、
ルーティングが前記目的ノードに辿り着くまで、上記のステップS1〜S6を繰り返すステップS7と、を含む
ことを特徴とするサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム。
【請求項2】
上記ステップS1において、前記無線メッシュネットワーク内の各ノードは、周期的にHello電文情報を交換して、近隣ノードの前記状態情報であって、前記情報交換遅延と前記チャネル容量の推定値とを含む前記状態情報をリアルタイムに獲得する
ことを特徴とする請求項1に記載のサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム。
【請求項3】
上記チャネル容量の推定値の計算式は、
であり、iは、
前記データを転送する必要のあるノード、jは、隣接ノード、γは、経路損失係数であり、h
ijは、
前記データを転送する必要のあるノードiと近隣ノードjとの間のチャネルゲインを表し、Bは、利用可能な帯域幅、Pは、ノード送信信号パワー、n
0/2は、ホワイトノイズのパワースペクトル密度、Dist(i,j)は、
前記データを転送する必要のあるノードiと近隣ノードjとの間の距離である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム。
【請求項4】
上記ステップS2において、前記データを転送する必要のあるノードは、近隣ノードに前記目的ノードがあるかどうかを最初に判断し、あるのであれば、そのまま転送し、そうでなければ、前記ルーティング要求をブロードキャストする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム。
【請求項5】
上記ステップS3において、
前記データを転送する必要のあるノードと
前記目的ノードとの距離と、近隣ノードと
前記目的ノードとの距離との差分の式は、
であり、Dist(i,d)は、
前記データを転送する必要のあるノードiと
前記目的ノードdとの間の距離、Dist(j,d)は、近隣ノードjと
前記目的ノードdとの間の距離、D
ijは、距離スパン値であり、距離スパン値D
ijが0よりも小さければ、近隣ノードjのほうが
前記目的ノードdから離れており、
前記使用可能な次ホップノードとして適切ではないとし、距離スパン値D
ijが0よりも大きければ、近隣ノードjのほうが
前記目的ノードdに近づいており、
前記使用可能な次ホップノードとして適切であるとし、
前記使用可能な次ホップノードセットを構築する
ことを特徴とする請求項1に記載のサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム。
【請求項6】
上記ステップS4において、
前記使用可能な次ホップノードセットに候補次ホップノードがなければ、前記使用可能な近隣ノードセットから所定数のノードを選択して前記候補次ホップノードセットを構築し、
前記使用可能な次ホップノードセット内のノード数が所定の候補ノード数上限以下であれば、そのまま前記候補次ホップノードセットとして選択し、
前記使用可能な次ホップノードセット内のノード数が前記所定の候補ノード数上限を超えていれば、ヒューリスティックアルゴリズムにより、前記使用可能な次ホップノードセットから、リンク品質及びサービス品質の要求に応じて前記候補次ホップノードセットを選択する
ことを特徴とする請求項1に記載のサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム。
【請求項7】
上記サービス品質は、転送成功確率及び遅延を含み、
前記転送成功確率について、式(1)によって
前記チャネル容量の推定値c
i,jを最初に獲得し、チャネル容量推定値c
i,jがトラフィックに必要な伝送率Rよりも大きい場合に限って、近隣ノードjを介する転送が成功可能であることで、
前記転送成功確率p
i,jは、p
i,j=P(c
i,j≧R)となり、式(1)によれば、c
i,j≧Rは、
と等価し、レイリーフェージングに従うチャネルにおいて、
前記データを転送する必要のあるノードiと近隣ノードjとの間のチャネルゲインh
ij同士は、互いに独立しており、且つ、|h
ij|
2は、パラメータがσ
ij−2となる指数分布に従い、
もし、
とすると、ノードiは、ノードjを介する転送の成功確率が、
となり、ノードiは、近隣ノードjを介するデータ転送のシングルホップ総遅延t
Kが、
となり、T
Cは、
前記データを転送する必要のあるノードiがチャネル媒体を競争する時間、T
Hは、
前記情報交換遅延、T
DATAは、データ伝送の時間、T
SIFSは、短いフレーム間スペース、T
ACKは、ACKを送信するレスポンス時間であり、もし選択した
前記候補次ホップノードセットF(i)にn個の候補ノードある場合、
前記データを転送する必要のあるノードiのデータ転送のシングルホップ平均総遅延E(T(i))、シングルホップ平均チャネル容量E(C(i))の式は、
となり、p
i,Kは、
前記データを転送する必要のあるノードiから
前記優先順位がKとなるノードまでデータ転送が成功する確率を表し、c
i,Kは、
前記データを転送する必要のあるノードiと
前記優先順位がKとなるノードとの間のチャネル容量を表し、もし、
前記データを転送する必要のあるノードiが、分析により、トラフィック遅延への要求がL、データ伝送速率への要求がR、ノード間の通信距離がr
cであるとして決定した場合、
前記候補次ホップノードセットF(i)の選択は、
に変換され、
前記情報交換遅延T
Hに対する
前記チャネル容量の推定値c
i,jの比の大きさに応じて、比が大きいほど、ノードの
前記優先順位が高くなるようにデータ転送の
前記優先順位を決定する
ことを特徴とする請求項1又は6に記載のサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム。
【請求項8】
上記ステップS5において、前記優先順位Kに従って、前記確認文字を返すためのタイマーK(TSIFS+TACK)を設定し、TSIFSは、短いフレーム間スペース、TACKは、前記確認文字を送信するレスポンス時間であり、
前記優先順位がKとなるノードは、そのタイマーが満了になっても、前記優先順位のより高いノードから返されるデータ転送についての前記確認文字に対する確認を受け取れなかった場合、自身を次ホップノードとして、前記確認文字をブロードキャストし、ステップS2〜S5を繰り返してデータを転送し、
前記優先順位がKとなるノードは、そのタイマーが満了になる前に、他のノードによりブロードキャストされる前記確認文字を受け取った場合、転送データを削除してルーティングプロセスを終了する
ことを特徴とする請求項1に記載のサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム。
【請求項9】
上記ステップS6において、前記データを転送する必要のあるノードは、いずれのノードからも、前記確認文字に対する確認情報を受け取れなかった場合、キャッシュリソースを用いて転送すべきデータを一時的にキャッシュし、ステップS2〜S6を繰り返して転送プロセスを継続し、ネットワーク状態が回復した後、適切な候補次ホップノードを見つけてデータ転送を続行する
ことを特徴とする請求項1に記載のサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の技術分野に属し、具体的に、サービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線ローカルエリアネットワーク(Wireless LAN)において、各ユーザは、無線リンクを介して固定アクセスポイント(AP:Access Point)に接続する方式でネットワークにアクセスすることが可能で、これは、シングルホップネットワーク構造に属する。この方式は、有線接続の方式に比べて、ユーザにより利便性を与えている。しかしながら、固定APとユーザとの間の無線通信の範囲が限られており、且つ障害物が両ポイントの間の通信に大きく影響するため、従来の無線ローカルエリアネットワークでは、理想的なカバレッジ及びスケーラビリティを達することは、困難である。
【0003】
無線メッシュネットワーク(WMN:Wireless Mesh Networks)は、典型的な無線マルチホップネットワークの1つであり、自己組織性、柔軟なネットワーキング、複数のアクセス方法との互換性等の優れた点を持って、自己組織無線ネットワークの中でも、最も有望なネットワーキング技術の1つと言われており、現在、緊急通信や軍事応用等に多大な貢献をしており、幅広い応用の見込みがある。従来の無線ローカルエリアネットワークに比べて、無線メッシュネットワークにおいて、各ノードは、アクセスポイントとされてもよいし、ルーターとされてもよく、いずれの場合も、1つ又は複数の他のピアノードと通信して、マルチホップネットワーク構造を形成することができる。このようなマルチホップネットワーク構造により、無線メッシュネットワークは、NLOS伝送をサポートする特性を有し、この特性によって、ネットワークによるデータ伝送時に、障害物を効果的に回避し、シングルホップネットワーク環境内の通信死角を無くすことができる。また、無線メッシュネットワークのマルチホップ伝送構造は、一連の中継ノードを選択することで、遠距離のデータ伝送を達成することができ、そのカバレッジ及びスケーラビリティが、従来の無線ローカルエリアネットワークの方式に比べて大きく向上している。
【0004】
一方で、無線マルチホップネットワークは、ルーティング設計にチャレンジをもたらしている。ネットワーキング方式において、無線メッシュネットワークと、ad−hocネットワークとは、ある程度で似ているが、従来のad−hocネットワークネットワーキングの方式のほうは、通信の実現可能性により重点を置いている。無線メッシュネットワークにとって、データ伝送のサービス品質要求にさらに重点を置くためには、無線マルチホップネットワークで用いられていた従来のルーティングプロトコルは、すでに要求を満たせなくなっており、新しいルーティングアルゴリズムを設計して、データ伝送のサービス品質要求が満たされるようにする必要がある。
【0005】
日和見ルーティング(OP:Opportunity Routing)は、マサチューセッツ工科大学の研究者が提案したルーティング策略であり、無線マルチホップネットワークに適用可能である。従来のルーティング策略と異なり、日和見ルーティングは、データを転送する時に固定の伝送経路を形成しておらず、無線ネットワークのブロードキャスト伝送特性を用いて、データを複数の近隣ノードにブロードキャストし、一定のルーティングメトリックに基づいて、最適な近隣ノードを次ホップとして選択してデータ転送を継続する。このようなルーティング策略は、無線ネットワークの複雑な環境にうまく適応して、リアルタイムなネットワーク状態に応じて、最適な次ホップを選択して伝送することができ、無線マルチホップネットワークのルーティング性能を大幅向上させており、信頼性及び冗長性に一定の優れた点がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、日和見ルーティング思想の元で、ネットワークのリアルタイムな状態及びデータ伝送に必要なサービス品質要求も参照して、ネットワークリソースの利用率及びルーティングの信頼性を効果的に向上させる、サービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズムを提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために、サービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズムは、
無線メッシュネットワー内の各ノードは、周期的に情報を交換して、近隣テーブルを保持及び更新し、次ホップ近隣ノードの状態情報を獲得するステップS1と、
データを転送する必要のあるノードは、ルーティング要求をブロードキャストし、ルーティング要求を受け取った近隣ノードは、目的ノードとの間の距離を算出し、データを転送する必要のあるノードにルーティング応答を返信するステップS2と、
データを転送する必要のあるノードは、受け取ったルーティング応答に基づいて、ルーティング応答を返信した近隣ノードを使用可能な近隣ノードセットとして構築し、自身と目的ノードとの距離と、近隣ノードと目的ノードとの距離との差分に応じて、使用可能な次ホップノードとして適切な近隣ノードを選択して、使用可能な次ホップノードセットを構築するステップS3と、
データを転送する必要のあるノードは、データに必要なサービス品質要求、及び、使用可能な次ホップノードとの間のチャネル容量の推定値に応じて、情報交換遅延に対するチャネル容量の比をメトリック値として設定して候補次ホップノードセットを選択し、候補次ホップノードセット内でメトリック値に基づいてノードに優先順位を付け、優先順位に従って順番にデータを転送するステップS4と、
転送データを受け取った各近隣ノードは、確認文字を返すためのタイマーを優先順位に従って設定し、データ転送を開始する時間を決定するステップS5と、
データを転送する必要のあるノードは、いずれかの候補次ホップノードから返された確認文字を受け取ると、現在のルーティングプロセスを終了するステップS6と、
ルーティングが目的ノードに辿り着くまで、上記のステップS1〜S6を繰り返すステップS7と、を含む。
【0008】
本発明の好ましい案として、ステップS1において、無線メッシュネットワーク内の各ノードは、周期的にHello電文情報を交換して、近隣ノードの状態情報であって、情報交換遅延とチャネル容量の推定値とを含む状態情報をリアルタイムに獲得する。
【0009】
更に好ましくは、チャネル容量の推定値の計算式は、
であり、iは、データを転送する必要のあるノード、jは、隣接ノード、γは、経路損失係数であり、h
ijは、データを転送する必要のあるノードiと近隣ノードjとの間のチャネルゲインを表し、Bは、利用可能な帯域幅、Pは、ノード送信信号パワー、n
0/2は、ホワイトノイズのパワースペクトル密度、Dist(i,j)は、データを転送する必要のあるノードiと近隣ノードjとの間の距離である。
【0010】
好ましくは、ステップS2において、データを転送する必要のあるノードは、近隣ノードに目的ノードがあるかどうかを最初に判断し、あるのであれば、そのまま転送し、そうでなければ、ルーティング要求をブロードキャストする。
【0011】
好ましくは、ステップS3において、データを転送する必要のあるノードと目的ノードとの距離と、近隣ノードと目的ノードとの距離との差分の式は、
であり、Dist(i,d)は、データを転送する必要のあるノードiと目的ノードdとの間の距離、Dist(j,d)は、近隣ノードjと目的ノードdとの間の距離、D
ijは、距離スパン値であり、距離スパン値D
ijが0よりも小さければ、近隣ノードjのほうが目的ノードdから離れており、使用可能な次ホップノードとして適切ではないとし、距離スパン値D
ijが0よりも大きければ、近隣ノードjのほうが目的ノードdに近づいており、使用可能な次ホップノードとして適切であるとし、使用可能な次ホップノードセットを構築する。
【0012】
好ましくは、ステップS4において、
使用可能な次ホップノードセットに候補次ホップノードがなければ、使用可能な近隣ノードセットから所定数のノードを選択して候補次ホップノードセットを構築し、
使用可能な次ホップノードセット内のノード数が所定の候補ノード数上限以下であれば、そのまま候補次ホップノードセットとして選択し、
使用可能な次ホップノードセット内のノード数が所定の候補ノード数上限を超えていれば、ヒューリスティックアルゴリズムにより、使用可能な次ホップノードセットから、リンク品質及びサービス品質の要求に応じて候補次ホップノードセットを選択する。
【0013】
更に好ましくは、サービス品質は、転送成功確率及び遅延を含み、転送成功確率について、式(1)によってチャネル容量の推定値c
i,jを最初に獲得し、チャネル容量推定値c
i,jがトラフィックに必要な伝送率Rよりも大きい場合に限って、近隣ノードjを介する転送が成功可能であることで、転送成功確率p
i,jは、p
i,j=P(c
i,j≧R)となり、
式(1)によれば、c
i,j≧Rは、
と等価し、レイリーフェージングに従うチャネルにおいて、データを転送する必要のあるノードiと近隣ノードjとの間のチャネルゲインh
ij同士は、互いに独立しており、且つ、|h
ij|
2は、パラメータがσ
ij−2となる指数分布に従い、
もし、
とすると、ノードiは、ノードjを介する転送の成功確率が、
となり、ノードiは、近隣ノードjを介するデータ転送のシングルホップ総遅延t
Kが、
となり、T
Cは、データを転送する必要のあるノードiがチャネル媒体を競争する時間、T
Hは、情報交換遅延、T
DATAは、データ伝送の時間、T
SIFSは、短いフレーム間スペース、T
ACKは、ACKを送信するレスポンス時間であり、
もし選択した候補次ホップノードセットF(i)にn個の候補ノードある場合、データを転送する必要のあるノードiのデータ転送のシングルホップ平均総遅延E(T(i))、シングルホップ平均チャネル容量E(C(i))の式は、
となり、p
i,Kは、データを転送する必要のあるノードiから優先順位がKとなるノードまでデータ転送が成功する確率を表し、c
i,Kは、データを転送する必要のあるノードiと優先順位がKとなるノードとの間のチャネル容量を表し、もし、データを転送する必要のあるノードiが、分析により、トラフィック遅延への要求がL、データ伝送速率への要求がR、ノード間の通信距離がr
cであるとして決定した場合、候補次ホップノードセットF(i)の選択は、
に変換され、情報交換遅延T
Hに対するチャネル容量の推定値c
i,jの比の大きさに応じて、比が大きいほど、ノードの優先順位が高くなるようにデータ転送の優先順位を決定する。
【0014】
好ましくは、ステップS5において、優先順位Kに従って、確認文字を返すためのタイマーK(T
SIFS+T
ACK)を設定し、T
SIFSは、短いフレーム間スペース、T
ACKは、確認文字を送信するレスポンス時間であり、
優先順位がKとなるノードは、そのタイマーが満了になっても、優先順位のより高いノードから返されるデータ転送についての確認文字に対する確認を受け取れなかった場合、自身を次ホップノードとして、確認文字をブロードキャストし、ステップS2〜S5を繰り返してデータを転送し、
優先順位がKとなるノードは、そのタイマーが満了になる前に、他のノードによりブロードキャストされる確認文字を受け取った場合、転送データを削除してルーティングプロセスを終了する。
【0015】
好ましくは、ステップS6において、データを転送する必要のあるノードは、いずれのノードからも、確認文字に対する確認情報を受け取れなかった場合、キャッシュリソースを用いて転送すべきデータを一時的にキャッシュし、ステップS2〜S6を繰り返して転送プロセスを継続し、ネットワーク状態が回復した後、適切な候補次ホップノードを見つけてデータ転送を続行する。
【0016】
本発明の有益な効果として、該アルゴリズムは、ネットワークリンクのリアルタイムな状態を参照して、候補次ホップノードを選択してデータを転送する過程において、サービス品質要求を十分に考慮して、候補次ホップノードに優先順位を付け、データ転送の信頼性を保証しているため、ネットワークのリアルタイムな利用效率を向上させた上で、データ転送のサービス品質要求を効果的に保証している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を更に説明する。
【
図1】
図1は、本発明に係るアルゴリズムのフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明に係る実施例の候補次ホップノード選択の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例一
図1を参照して、本実施例によるサービス品質保証に基づく無線メッシュネットワーク日和見ルーティングアルゴリズムは、
無線メッシュネットワー内の各ノードは、周期的に情報を交換して、近隣テーブルを保持及び更新し、次ホップ近隣ノードの状態情報を獲得するステップS1と、
データを転送する必要のあるノードは、ルーティング要求をブロードキャストし、ルーティング要求を受け取った近隣ノードは、目的ノードとの間の距離を算出し、データを転送する必要のあるノードにルーティング応答を返信するステップS2と、
データを転送する必要のあるノードは、受け取ったルーティング応答に基づいて、ルーティング応答を返信した近隣ノードを使用可能な近隣ノードセットとして構築し、自身と目的ノードとの距離と、近隣ノードと目的ノードとの距離との差分に応じて、使用可能な次ホップノードとして適切な近隣ノードを選択して、使用可能な次ホップノードセットを構築するステップS3と、
データを転送する必要のあるノードは、データに必要なサービス品質要求、及び、使用可能な次ホップノードとの間のチャネル容量の推定値に応じて、情報交換遅延に対するチャネル容量の比をメトリック値として設定して候補次ホップノードセットを選択し、候補次ホップノードセット内でメトリック値に基づいてノードに優先順位を付け、優先順位に従って順番にデータを転送するステップS4と、
転送データを受け取った各近隣ノードは、確認文字を返すためのタイマーを優先順位に従って設定し、データ転送を開始する時間を決定するステップS5と、
データを転送する必要のあるノードは、いずれかの候補次ホップノードから返された確認文字を受け取ると、現在のルーティングプロセスを終了するステップS6と、
ルーティングが目的ノードに辿り着くまで、上記のステップS1〜S6を繰り返すステップS7と、を含む。
【0019】
ステップS1において、無線メッシュネットワーク内の各ノードは、周期的にHello電文情報を交換して、近隣ノードの状態情報であって、情報交換遅延とチャネル容量の推定値とを含む状態情報をリアルタイムに獲得する。
【0020】
チャネル容量の推定値の計算式は、
であり、iは、データを転送する必要のあるノード、jは、隣接ノード、γは、経路損失係数であり、h
ijは、データを転送する必要のあるノードiと近隣ノードjとの間のチャネルゲインを表し、Bは、利用可能な帯域幅、Pは、ノード送信信号パワー、n
0/2は、ホワイトノイズのパワースペクトル密度、Dist(i,j)は、データを転送する必要のあるノードiと近隣ノードjとの間の距離である。
【0021】
ステップS2において、データを転送する必要のあるノードは、近隣ノードに目的ノードがあるかどうかを最初に判断し、あるのであれば、そのまま転送し、そうでなければ、ルーティング要求をブロードキャストする。
【0022】
ステップS3において、データを転送する必要のあるノードと目的ノードとの距離と、近隣ノードと目的ノードとの距離との差分の式は、
であり、Dist(i,d)は、データを転送する必要のあるノードiと目的ノードdとの間の距離、Dist(j,d)は、近隣ノードjと目的ノードdとの間の距離、D
ijは、距離スパン値であり、距離スパン値D
ijが0よりも小さければ、近隣ノードjのほうが目的ノードdから離れており、使用可能な次ホップノードとして適切ではないとし、距離スパン値D
ijが0よりも大きければ、近隣ノードjのほうが目的ノードdに近づいており、使用可能な次ホップノードとして適切であるとし、使用可能な次ホップノードセットを構築する。
【0023】
ステップS4において、
使用可能な次ホップノードセットに候補次ホップノードがなければ、使用可能な近隣ノードセットから所定数のノードを選択して候補次ホップノードセットを構築し、
使用可能な次ホップノードセット内のノード数が所定の候補ノード数上限以下であれば、そのまま候補次ホップノードセットとして選択し、
使用可能な次ホップノードセット内のノード数が所定の候補ノード数上限を超えていれば、ヒューリスティックアルゴリズムにより、使用可能な次ホップノードセットから、リンク品質及びサービス品質の要求に応じて候補次ホップノードセットを選択する。
【0024】
サービス品質は、転送成功確率及び遅延を含み、転送成功確率について、式(1)によってチャネル容量の推定値c
i,jを最初に獲得し、チャネル容量推定値c
i,jがトラフィックに必要な伝送率Rよりも大きい場合に限って、近隣ノードjを介する転送が成功可能であることで、転送成功確率p
i,jは、p
i,j=P(c
i,j≧R)となり、
式(1)によれば、c
i,j≧Rは、
と等価し、レイリーフェージングに従うチャネルにおいて、データを転送する必要のあるノードiと近隣ノードjとの間のチャネルゲインh
ij同士は、互いに独立しており、且つ、|h
ij|
2は、パラメータがσ
ij−2となる指数分布に従い、
もし、
とすると、ノードiは、ノードjを介する転送の成功確率が、
となり、ノードiは、近隣ノードjを介するデータ転送のシングルホップ総遅延t
Kが、
となり、T
Cは、データを転送する必要のあるノードiがチャネル媒体を競争する時間、T
Hは、情報交換遅延、T
DATAは、データ伝送の時間、T
SIFSは、短いフレーム間スペース、T
ACKは、ACKを送信するレスポンス時間であり、
もし選択した候補次ホップノードセットF(i)にn個の候補ノードある場合、データを転送する必要のあるノードiのデータ転送のシングルホップ平均総遅延E(T(i))、シングルホップ平均チャネル容量E(C(i))の式は、
となり、p
i,Kは、データを転送する必要のあるノードiから優先順位がKとなるノードまでデータ転送が成功する確率を表し、c
i,Kは、データを転送する必要のあるノードiと優先順位がKとなるノードとの間のチャネル容量を表し、もし、データを転送する必要のあるノードiは、分析により、トラフィック遅延への要求がL、データ伝送速率への要求がR、ノード間の通信距離がr
cであるとして決定した場合、候補次ホップノードセットF(i)の選択は、
に変換され、情報交換遅延T
Hに対するチャネル容量の推定値c
i,jの比の大きさに応じて、比が大きいほど、ノードの優先順位が高くなるようにデータ転送の優先順位を決定する。
【0025】
ステップS5において、優先順位Kに従って、確認文字を返すためのタイマーK(T
SIFS+T
ACK)を設定し、T
SIFSは、短いフレーム間スペース、T
ACKは、確認文字を送信するレスポンス時間であり、
優先順位がKとなるノードは、そのタイマーが満了になっても、優先順位のより高いノードから返されるデータ転送についての確認文字に対する確認を受け取れなかった場合、自身を次ホップノードとして、確認文字をブロードキャストし、ステップS2〜S5を繰り返してデータを転送し、
優先順位がKとなるノードは、そのタイマーが満了になる前に、他のノードによりブロードキャストされる確認文字を受け取った場合、転送データを削除してルーティングプロセスを終了する。
【0026】
ステップS6において、データを転送する必要のあるノードは、いずれのノードからも、確認文字に対する確認情報を受け取れなかった場合、キャッシュリソースを用いて転送すべきデータを一時的にキャッシュし、ステップS2〜S6を繰り返して転送プロセスを継続し、ネットワーク状態が回復した後、適切な候補次ホップノードを見つけてデータ転送を続行する。
【0027】
本実施例において、
図2に示すように、ノードi、h、j、k、l、u、v、dがあり、中では、ノードiは、データを転送しているノード、dは、転送データの目的ノードである。ネットワーク内の各ノードの通信距離は、r
cであるとする。周期的にHello電文情報を交換することで、ノードiは、1ホップ近隣ノードの状態情報であって、情報交換遅延T
Hと使用可能なチャネル容量の推定値cとを含む状態情報を獲得及び更新し、これらの情報を近隣テーブルに保持する。
図2における丸印1に示すように、ノードh、j、k、lは、いずれも、ノードiの1ホップ近隣ノードとなる。
【0028】
ノードiの近隣ノードから、候補次ホップノードを選択する過程は、以下の通りである。
【0029】
(1)ノードiは、近隣ノードに目的ノードdがあるかどうかを最初に判断し、本実施例において、目的ノードdがノードiの近隣ノードではないことで、ノードiは、ルーティング要求(RREQ)をブロードキャストする。ルーティング要求を受け取った近隣ノードjは、地理位置情報に基づいて、目的ノードとの間の距離Dist(j,d)を算出して、目的ノードとの間の距離情報Dist(j,d)が含まれたルーティング応答(RREP)情報をノードiに返信する。
【0030】
(2)ノードiは、受け取ったルーティング応答(RREP)から、近隣ノードと目的ノードとの間の距離情報を抽出して、目的ノードとの距離Dist(i,d)を計算することで、ノードiと目的ノードdとの間の距離と、近隣ノードと目的ノードdとの間の距離との差分である距離スパン値D
ijを定義する。
図2における丸印2に示すように、ノードiとノードjとの距離スパンは、Dist(i,d)とDist(j,d)との差分として定義されている。
図2における丸印3に示すように、ノードiとノードj、k、lとの値が0よりも大きいため、ノードj、k、lは、ノードiの使用可能な次ホップノードとなり、ノードiの使用可能な次ホップノードセットV(i)として構築するが、ノードhは、次ホップとして考慮されない。
【0031】
(3)ノードiは、トラフィックデータを処理及び分析して、トラフィックに対応するQoS要求を決定し、リアルタイムなネットワーク状態情報を参照して使用可能なチャネル品質を推定し、ヒューリスティックアルゴリズムにより、使用可能な次ホップノードセットV(i)から候補次ホップノードセットF(i)を選択する。最初に、候補次ホップノードセットF(i)内のノードの数nを決定し、本実施例では、nの値が2とされることで、ノードkとノードj、ノードkとノードl、ノードjとノードlは、いずれも、F(i)の1つの組み合わせになり得る。ノードj、k、lのいずれも、データ転送サービス品質要求を満たせる場合は、ノードkとノードlは、互いに近隣ノードではなく、即t、Dist(j,d)>r
cであり、式(11)内の第三の制約を満たさないため、互いのACK電文を受け取ることが不可能で、候補次ホップノードセットF(i)を構築するのに適していない。すると、
図2における丸印4に示すように、ノードkとノードj、ノードjとノードlのシングルホップ平均チャネル容量E(C(i))に対するシングルホップ平均総遅延E(T(i))の比の大きさに応じて、ノードjとノードlを選択して候補次ホップノードセットF(i)を構築することになる。そして、F(i)内のノードを一定のメトリック値に従って優先順位を付け、データ及び優先順位をF(i)内のノードjとノードlに転送する。
【0032】
(4)ノードiからの転送データを受け取ったノードjとノードlは、優先順位に従って、ACKを返すためのタイマーを設定する。ノードjのほうは、優先順位が高いため、そのタイマーが(T
SIFS+T
ACK)とされる一方で、ノードlのタイマーが2(T
SIFS+T
ACK)とされ、これにより、データ転送を開始可能な時間が決定され、
1)ノードlは、そのタイマーが満了になっても、優先順位のより高いノードjから返されるデータ転送についてのACKを受け取れなかった場合、自身を次ホップノードとしてACKをブロードキャストし、上記の過程を繰り返してデータ転送を継続し、
2)ノードlは、そのタイマーが満了になるまでに、ノードjからブロードキャストされたACKを受け取った場合、転送データを削除してルーティングプロセスを終了する。
【0033】
(5)ノードiは、ある候補次ホップノード(ノードjとノードlのいずれか)から返されるACK確認情報を受け取った場合、現在のルーティングプロセスを終了し、ノードiは、いずれのノードからも、ACK確認情報を受け取れなかった場合、ストレージリソースを用いて、転送すべきデータを一時的に退避し、上記の過程を繰り返して転送プロセスを継続し、ネットワーク状態が回復した後、適切な近隣ノードを見つけてデータ転送を続行する。
【0034】
(6)上述したルート発見過程に従って、目的ノードdに辿り着くまでルーティングする。
【0035】
上記実施例以外に、本発明は、他の実施形態を有することが可能である。均等的置換や等価的変換により形成された技術案は、全て本発明によって請求される保護範囲内に入る。