【実施例1】
【0014】
まず、本発明である透かしレンガ積み壁材の構造について説明する。なお、レンガのある側を前側または表側とし、下地材のある側を後側または裏側とする。
【0015】
図1は、透かしレンガ積み壁材の構築方法によって構築された外壁の正面図である。
図2(a)は、外壁をA−Aで切断した第1段の横断面図であり、
図2(b)は、外壁をB−Bで切断した第2段の横断面図である。
図3は、外壁をC−Cで切断した縦断面図であり、湿式工法で構築した例である。
図4は、外壁をC−Cで切断した縦断面図であり、乾式工法で構築した例である。
【0016】
図1に示すように、外壁100を複数のレンガ200(200a、200b)を使用した透かしレンガ積み壁材で構築する場合、第1段のレンガ200aの左端側と第2段のレンガ200bの右端側とが上下に重なり、各段において左右に隣接するレンガ200が間欠的に配置されるように、各段を互い違いに積み上げられる。
【0017】
レンガ200は、粘土などを型に入れ、窯で焼き固めた建築材料であり、主に直方体状のものを積み上げて外壁を形成するのに用いられていた。現在では、木造や鉄筋コンクリート造の外壁の表面に、タイルのように仕上材として貼り付ける場合もある。また、古い建物を解体したときに得られたアンティークレンガを板状に切断加工したスライスレンガとして再利用することもある。
【0018】
レンガ200は、横長の直方体状であり、外壁100の下地材110に固定された支持金具に載置される。支持金具は、縦長のダボ用金具400と補助プレート500のセットであり、複数本が横方向に所定の間隔を置いて配置され、縦に複数のレンガ200を載置可能である。
【0019】
レンガ200のうち、第1段のレンガ200aは、1つ目の左端側を第1の支持金具に、右端側を第2の支持金具に載せ、2つ目の左端側を第3の支持金具に、右端側を第4の支持金具に載せ、1つ目と2つ目の間が空けられる。第2段のレンガ200bは、1つ目の左端側を第2の支持金具に、右端側を第3の支持金具に載せ、第1段のレンガ200aとは横に半分ずらす。第3段は、第1段と同様にすると、各段が互い違いになる。
【0020】
第2の支持金具に、第1段のレンガ200aの右端側と、第2段のレンガ200bの左端側が載り、レンガ200aとレンガ200bに上下に重なった部分が生じるので、そこをダボピン600で上下に連結する。
【0021】
図2、3に示すように、レンガ200の上面には、左端側に上ダボ穴210a、右端側に上ダボ穴210bが空けられ、下面には、左端側に下ダボ穴220a、右端側に下ダボ穴220bが空けられる。第1段のレンガ200aの右端側のダボ穴210b、220bと、第2段のレンガ200bの左端側のダボ穴210a、220aとは、一直線上に空くことになる。
【0022】
上ダボ穴210はレンガ200の中央付近まで深く空けられ、下ダボ穴220は上ダボ穴210より浅く空けられる。レンガ200bの上ダボ穴210からその上側のレンガ200aの下ダボ穴220までダボピン600が挿し込まれる。なお、ダボピン600が抜け落ちないように、上ダボ穴210は下ダボ穴220に貫通させない。
【0023】
支持金具は、留具120で下地材110に固定される。留具120は、下地材110にプラグを埋め込み、ビス等をプラグに螺合させる等すれば良い。さらに、支持金具に載置されたレンガ200は、弾性系などの接着剤130で下地材110に貼着される。
【0024】
第2段のレンガ200bと、その上側にある第1段のレンガ200aとの間には、ダボピン600を囲むように目地材300が充填される。
図3に示すように、モルタル等を使用して湿式で施工しても良いし、
図4に示すように、クロロプレンゴム等を使用して乾式で施工しても良い。
【0025】
図5は、透かしレンガ積み壁材の構築方法で使用する支持金具(ダボ用金具および補助プレート)を示す斜視図である。
図6は、透かしレンガ積み壁材の構築方法で使用するダボ用金具を示す(a)平面図(b)正面図(c)右側面図である。
図7は、透かしレンガ積み壁材の構築方法で使用する補助プレートを示す(a)平面図(b)正面図(c)右側面図である。
【0026】
図5に示すように、支持金具は、ダボ用金具400の後側に補助プレート500を配置して前後に重ねたものである。なお、ダボ用金具400の前側に補助プレート500を重ねるように成形しても良いし、ダボ用金具400と補助プレート500を一体成形した支持金具でも良い。
【0027】
支持金具は、下地材110に当接させるダボ用金具400の背板410からレンガ200を載置するための載板430を切り出すことでレンガ200と下地材110を接着するための空部440を設け、さらに空部440に下地材110から浮くように補助プレート500でブリッジ530を形成することで接着剤130を絡ませる。
【0028】
ダボ用金具400と補助プレート500を重ねたとき、補助プレート500のブリッジ530を、ダボ用金具400の空部440に通し、ダボ用金具400の表側に突出させる。レンガ200と下地材110の間の接着剤130の中にブリッジ530が通ることで、接着剤130の剥離が抑制される。
【0029】
また、ダボ用金具400の留孔460と、補助プレート500の通孔540は、支持金具を下地材110に固定するための留具120を通すための孔であり、下地材110まで抜けるように位置を合わせれば良い。
【0030】
図6に示すように、ダボ用金具400は、縦長の背板410の左右両端を前側に折り曲げて垂立させた側板420を設けることで、レンガ200と下地材110の間に空間を確保するとともに、支持金具を下地材110に固定するための留具120の頭部を収容するための空間が確保される。
【0031】
ダボ用金具400の背板410に逆U字状に切り出して、前側へ水平方向に突出させた載板430にピン孔450を空けることで、載板430にレンガ200aを載せたときに、下側のレンガ200bから上方に突出するダボピン600を貫通させ、レンガ200同士を上下に連結可能となる。
【0032】
載板430を切り出すことで形成された空部440は、支持金具が配置された場所において、下地材110からレンガ200まで接着剤130を通すための隙間となる。また、補助プレート500のブリッジ530を通すための隙間にもなる。
【0033】
図7に示すように、補助プレート500は、縦長の後板510に対して、ダボ用金具400の空部440と重なる位置において、ブリッジ530と間隙520が設けられる。間隙520を空ける際に、間欠的に複数(例えば2本)の縦線状の部分を残し、前側に押し上げるようにプレス加工することでブリッジ530を形成すれば良い。
【0034】
図8は、透かしレンガ積み壁材の構築方法で使用するダボピンの斜視図である。
図9は、ダボピンの正面図である。
図10は、透かしレンガ積み壁材の構築方法によって構築された外壁においてレンガを交換する状況を説明する図である。
【0035】
図8、9に示すように、ダボピン600は、軸体610の下に下ダボ穴220の長さ以上に収縮可能なバネ材620が取り付けられる。バネ材620は、ダボピン600の軸体610と同径のコイルバネ等が用いられる。
【0036】
外壁100を新設する場合は、下から順にレンガ200を積み上げていけば良い。ダボ用金具400の載板430にレンガ200を載せ、上側に載せるレンガ200の下ダボ穴220に挿せるように、ピン孔450及び上ダボ穴210にダボピン600を通しておけば良い。
【0037】
図10に示すように、既設の外壁100において途中のレンガ200aを交換する場合は、既に載置されている下側のレンガ200bの上ダボ穴210にダボピン600bを押し込んで、ダボ用金具400の載板430を利用して、ダボピン600bのバネ材620の収縮を維持させる。なお、載板430のピン孔450を開閉式にしても良いし、ピン孔450を塞ぐために板材などのシャッターを介在させても良い。
【0038】
交換対象のレンガ200aの上ダボ穴210にダボピン600aを挿し、既に載置されている上側のレンガ200cを利用して、ダボピン600aのバネ材620の収縮を維持させつつ、レンガ200aを嵌め込む。
【0039】
レンガ200aが嵌め込まれると、ダボピン600aはバネ材620の収縮が解除されて上側のレンガ200cの下ダボ穴220に入り込む。また、レンガ200aが載置された載板430のピン孔450を開放することで、ダボピン600bのバネ材620の収縮が解除され、レンガ200aの下ダボ穴220に入り込む。
【0040】
本発明によれば、積み上げられたレンガが部分的に破損した場合でも、全体的に組み直すことなく、破損したレンガだけを交換することができる。交換対象のレンガのみを破壊する等して取り除き、新たなレンガを上下から支持した状態で嵌め込むことができる。
【0041】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、透かしレンガ積みだけでなく、他のレンガ積みにも適用することができる。また、レンガだけでなく、タイル、樹脂、木材、石材などの壁材にも適用することができる。