【実施例1】
【0013】
本発明の第1の実施例に係るサーボ制御装置を、
図1〜
図10を参照しながら説明する。本発明は種々のタイプのモータに適用可能であるが、以下では、本発明をブラシ付きDCモータに適用した例について、説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る制御精度切替型サーボ制御装置10の構成例を示す図である。
このサーボ制御装置10は、ロータリーエンコーダ100、電源200、モータドライバ400、及び、モータ本体500で構成されている。ロータリーエンコーダ100は、モータ本体500の一部に装着され、モータ本体500の回転・角度情報をデジタル信号として出力する。
ロータリーエンコーダ100は、モータ本体500の回転軸の回転・角度の情報を出力する1個のMRセンサユニット110、主バッテリ210等に電力を供給するバッテリレス対応ユニット120、中精度及び高精度のアブソリュート信号を生成する中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130、中精度及び高精度のインクリメンタル信号を生成する中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140、予め設定された条件に従ってエンコーダの出力を制御するエンコーダ出力制御ユニット160、不揮発性メモリ180、及び、シリアル/パラレル信号送受信ユニット190等を備えている。
【0014】
バッテリレス対応ユニット120は、主バッテリの電源が失われた時に、電源200として機能し、ロータリーエンコーダ100に一時的に電力を供給すると共に、ユーザインタフェース300を介して初期設定された条件に従って、モータ本体500の回転に関する情報を生成し不揮発性メモリ180に記録する機能を有する。
MRセンサユニット110は、その基本的な構成として、モータの回転軸の回転・角度に関して中精度(例えば、4Kパルス/回転)のインクリメンタル信号と高精度(例えば、32Kパルス/回転)のアブソリュート信号の2系統の信号を、アブソリュート/インクリメンタル信号として出力する機能を備えている。
中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130は、MRセンサユニット110の1組のアブソリュート/インクリメンタル信号に基づき、1組の中精度及び高精度のアブソリュート信号を生成する機能を有する。
中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140は、MRセンサユニット110の1組のアブソリュート/インクリメンタル信号に基づき、1組の中精度及び高精度のインクリメンタル信号を生成する機能を有する。
なお、MRセンサユニット110の出力信号の組合わせは、上記の例に限定されるものではなく、サーボ制御装置の用途に応じて、適宜、設定すればよい。例えば、アブソリュート/インクリメンタル信号を、精度の異なる高精度、中精度、低精度の3系統の信号としても良い。また、用途によっては、アブソリュート/インクリメンタル信号に、例えば、32Mパルス/回転程度の超高精度の信号が含まれていても良い。
また、本発明において、高精度と中精度、あるいは、高精度、中精度、低精度等の各精度の関係は、相対的なものであり、ロータリーエンコーダの装着対象となる各種のモータを、低速回転域と高速回転域、あるいは、低速回転域、中速回転域、高速回転域において、各々、最適に制御できるものであればよい。
【0015】
エンコーダ出力制御ユニット160は、ユーザインタフェース300により設定された初期設定条件に従って、バッテリレス対応ユニット120、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130、及び中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140の出力情報を生成し不揮発性メモリ180に記録すると共に、予め設定された条件に従って、これらの信号をモータドライバ400へ出力する機能を備えている。
ユーザインタフェース300は、スマートフォンやタブレット端末に、所定の機能を備えたプログラムを実行する、専用のアプリケーションをインストールすることで、実現できる。ユーザインタフェース300とロータリーエンコーダ100やモータドライバ400は、通信ネットワークを介して相互に通信可能に構成されている。
【0016】
電源200は、ロータリーエンコーダ100やモータドライバ400に、電源ライン230,240を介して、制御された所定の、例えば5Vの直流電源を提供する。電源200は、主バッテリ210とサブバッテリ220で構成されている(
図4参照)。サブバッテリ220は、大バルクハウゼン効果よる電力を蓄え、主バッテリ210の電源が失われた時に、ロータリーエンコーダ100に電力を供給する。サブバッテリ220で、通常運転時にもロータリーエンコーダ100に電力を供給するように構成しても良い。いずれの場合でも、主バッテリ210とサブバッテリ220の電源ラインは、電気的には独立した2系統のラインとして構成されている。
【0017】
シリアル/パラレル信号送受信ユニット190は、ロータリーエンコーダ100とモータドライバ400の間で、各種の情報を、パラレル信号もしくはシリアル信号に変換し、送受信する機能を有している。例えば、パラレル伝送処理により生成されたA相・B相信号、及び、Z相信号が、シリアル伝送通信の規格に適合したシリアル伝送用の送信データ(BUS)に変換され、このBUS信号が通信ケーブルを介してモータドライバ400へ送信される。
【0018】
モータドライバ400は、
図1に示したように、御精度切替予測・制御ユニット410、モータ駆動信号生成ユニット420、バッテリレスモード対応ユニット430、及び、運転指令440を記録したメモリ等を備えており、運転指令440と、ロータリーエンコーダ100の出力に基づいて、モータ本体500の回転を制御する。
すなわち、制御精度切替予測・制御ユニット410は、ロータリーエンコーダ100から出力される、高精度と中精度の2系統の信号を切り替えるタイミングを予測し、運転指令に基づいた、高精度と中精度の2系統の信号のいずれかの信号をモータ駆動信号生成ユニット420に供給する。モータ駆動信号生成ユニット420では、ロータリーエンコーダ100の出力、運転指令440、及び、モータの負荷等に基づき、高精度と中精度の2系統の信号のいずれかの信号によるモータ駆動信号を生成し、モータドライバに出力する。例えば、インバータ駆動用のPWM信号を生成して、モータ500を駆動する。モータドライバ400は、例えば、マイクロコンピュータで実現しても良い。
【0019】
バッテリレスモード対応ユニット430は、ユーザインタフェース300を介して初期設定された条件に従って、主バッテリ210の電源が失われた後の再起動時に、モータドライバ400の出力を制御する機能を有する。
ユーザは、予め、モータ500の種類や仕様に応じて、エンコーダ出力制御ユニット160から送られてくるどのデータを採用するかを決定し、ユーザインタフェース300を介して、バッテリレスモード対応ユニット430のメモリに記録する。
【0020】
なお、
図1に機能ブロックの形で示した、プログラムに基づいて動作する、バッテリレス対応ユニット120、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130、中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140、エンコーダ出力制御ユニット160、シリアル/パラレル信号送受信ユニット190機能の一部又は全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)により構成されている。このFPGAは、I/O部、内部配線、論理回路、クロックネットワーク、メモリ、乗算器等で構成されている。論理回路の基になるプログラム等は外部のEEPROMに記録されている。
FPGAの内部構成、換言すると、バッテリレス対応ユニット120、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130、中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140、及びエンコーダ出力制御ユニット160の具体的な構成は、プログラムの記述の変更等で柔軟に変更できる。そのため、モータの種類や用途等に応じた、初期設定の内容を予め幅広く想定し、バッテリレス対応ユニット120、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130、中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140、及びエンコーダ出力制御ユニット160が有する機能を豊富なものとすることで、モータの種類や用途の如何に拘わらず種々のニーズに応えることができる。
なお、ロータリーエンコーダ100機能をさらに豊富する必要がある場合には、バッテリレス対応ユニット120、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130、中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140、及びエンコーダ出力制御ユニット160を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成しても良い。
【0021】
図2は、
図1のロータリーエンコーダ100が装着されたブラシ付きDCモータ本体500の主要部の構成例を示す、縦断面図である。この例では、ブラシ付きDCモータ500の回転軸510の一方の端面に、MRセンサユニット110の円形の平板状磁石1110が磁石ホルダー1115を介して固定されている。なお、回転軸510の他方の端には、被駆動部材が固定される。
ブラシ付きDCモータ500は、モータハウジング520の内部に固定されたステータとして、界磁鉄心570とこれに絶縁部材を介して巻かれた界磁コイルとを備えている。回転軸510と一体に形成されたロータ560は、ロータヨークと、その外周部に固定された例えば8個の永久磁石562を有する、8極のロータである。回転軸510は、モータハウジング520とエンドブラケット521に設けられた1対の軸受け530により保持されている。
一方、磁性体からなるカップ状カバ−522の内側において、ロータリーエンコーダ100を搭載した絶縁材料からなる基板170が、支持ピン172を介してエンドブラケット521に固定されている。この基板170上の、磁石1110に対向する位置には、1対のMRセンサ1122(1122A,1122B)を含む、MRセンサユニット110が設置されている。157は、磁気シールド用の磁性体の円板であり、エンドブラケット521に固定されている。
【0022】
図3は、ロータリーエンコーダ100の磁気回路の構成例を示す図である。
回転軸510の軸芯を通る軸線O−Oを中心として、回転軸510の端面にMRセンサユニット110の円形の平板状磁石1110が固定されている。平板状磁石1110は、その直径が例えば5.0mm〜10.0mmのフェライト磁石であり、単発着磁された一対のNSの磁極を有している。なお、小型の平板状磁石として、フェライト磁石の代わりに、ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石等の希土類磁石を採用しても良い。平板状磁石が高価になる分、ロータリーエンコーダの価格の上昇要因となるが、より多くの電力を確保できる利点がある。
【0023】
一方、電気絶縁性かつ非磁性の材料からなるプリント基板170は両面基板であり、その一方の面上でかつ磁石1110に対向する位置に、1対のMRセンサ1122が固定されている。プリント基板170の他方の面上で、かつMRセンサの背面となる位置に、複合磁性ワイヤ152及びコイル154を有する大バルクハウゼン効果発電モジュール150が固定されている。複合磁性ワイヤ152は、軸線O−Oを中心とし、かつ、この軸線に直交する方向に配置されている。大バルクハウゼン効果発電モジュール150の具体的な例として、例えば、ウィーガンドワイヤとコイルの組み合わせからなる、ウィーガンドモジュールがある。
【0024】
1対のMRセンサ1122(1122A,1122B)は、回転軸510の回転に伴い平板状磁石1110の磁束Φaを感知してサイン波、コサイン波を出力する。
ロータリーエンコーダ100は、磁気シールド1500、すなわち、磁性体からなるカップ状カバ−522と、磁性体の円板157とで完全に囲まれており、外部から加わる磁界の影響を受けないようにシールドされている。
【0025】
1対のMRセンサ1122は、平板状磁石1110の水平磁場の角度を検知するように構成されている。大バルクハウゼン効果発電モジュール150は、MRセンサに近接して平行に配置されているので、平板状磁石1110の回転に伴い磁束Φbにより電力を発生させる。平板状磁石1110と1対のMRセンサ1122との間の空隙は、モータの変形や振動の影響を考慮して、ある程度の長さ、例えば2.0mm〜4.0mm程度を確保する必要がある。また、モータの回転等に伴う振動に耐える剛性を持たせるために、基板170の厚みdpは、例えば、0.80mm〜1.00mm程度が必要である。
【0026】
本願の発明者は、
図3に示したロータリーエンコーダ100として、ウィーガンドモジュールと市販の安価なフェライト磁石を組み合わせたロータリーエンコーダを製作した。そして、実験により、軸線O−O方向における、ウィーガンドワイヤと平板状磁石の表面との距離を10mm以下とすることにより、所定の期間、10V以上の電力、適切な条件では15Vの電力が得られることを確認した。なお、実験した他の条件の具体例をあげると、磁石は、材料がストロンチウムフェライト、直径が8.0mm、厚さが、2.5mmであり、ウィーガンドモジュールのコイルの直径は5mmであった。
【0027】
図4は、
図1のロータリーエンコーダ100における、MRセンサユニット110、バッテリレス対応ユニット120、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130、中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140、及びエンコーダ出力制御ユニット160の具体的な構成例を示す図である。
MRセンサユニット110は、1対のMRセンサ1122、温度センサ1122C、及び、センサ出力処理回路部1120を備えている。MRセンサユニット110では、モータの回転軸に固定された磁石1110が角度θ(機械角)だけ回転して各MRセンサに作用する磁界の向きが回転すると、この回転に対応してMRセンサの電気抵抗値、換言するとセンサの出力信号の電圧がSIN波、COS波として変動し、回転軸の1回転毎に、各々1周期分のパルス信号が出力される。センサ出力処理回路部1120は、AD変換器11123、軸ずれ補正処理部1124、RAM等のセンサメモリ1125、逆正接演算処理部1126、アブソリュート信号生成部1127、インクリメンタルA相・B相信号生成部1128、及び、回転方向判定部1129を備えている。センサ出力処理回路部1120では、MRセンサ1122AからのSIN波、MRセンサ1122BからのCOS波のアナログ信号を量子化し、電気角の内挿処理により、例えば4Kパルス/回転に、多分割し、各々、A相、B相のデジタル信号に変換する。MRセンサユニット110は、マイクロコンピュータで実現しても良い。
【0028】
大バルクハウゼン効果発電モジュール150の複合磁性ワイヤ152は、その中心線X−Xが、平板状磁石1110のNSの境界(=原点の位置Z0)を通る線Y−Yに対して、直交する関係になるようにして、基板170に固定される。
なお、MRセンサ1122としては、GMRを含む磁気抵抗効果素子(MR:AMR、GMR、TMR等)のいずれの素子を採用しても良い。
【0029】
アブソリュート信号生成部1127では、逆正接演算処理部1126から出力される直線状の信号(
図7参照)を基に、モータの回転・角度(機械角)の絶対値を示すアブソリュート信号のデータが生成され、センサメモリ1125に保持される。インクリメンタルA相・B相信号生成部1128では、逆正接演算処理部1126から出力される直線状の信号を基に、インクリメンタル化されたA相信号及びB相信号のパルスのデータが生成され、センサメモリ1125に保持される。回転軸の1回転毎に現われる角度0(原点)の位置に同期して、Z信号も生成される(以下、A相・B相・Z相信号)。なお、MRセンサ1122の原点の位置(Z0)は、モータの回転軸に固定された磁石1110上の特定の位置、例えば、SIN波のアナログ出力値が0の時点に対応する位置である(
図7参照)。回転方向判定部1129では、A相とB相の位相の関係から、回転軸の回転方向を判定する。これらの情報は、時系列データとして、不揮発性メモリ180のMRセンサデータ記録部に記録される。
【0030】
バッテリレス対応ユニット120は、コイル出力の電流検知部1210、コイル出力の整流・電圧制御・蓄電部1220、及び、角度情報処理部1230を有する。角度情報処理部1230は、軸の回転数・回転方向検出部1232、初期設定部1234、多回転信号生成処理部1235、バッテリレスモード判定部1236、及び、バッテリレスモード情報生成部1238を有する。
【0031】
コイル出力の電流検知部1210は、磁石1110の回転に伴い180度毎に1回だけ、大バルクハウゼン効果発電モジュールで発生するパルス電流(コイルのパルス)を検知する機能を有し、軸の回転数・回転方向検出部1232で、軸の回転数及び回転方向のデータを生成し、これを受けて、多回転信号生成処理部1235において、軸の多回転情報を生成する機能を備えている。コイル出力の整流・電圧制御・蓄電部1220は、パルス電流を全波整流し、電圧を所定の基準電圧Vcc、例えば5Vに制御し、サブバッテリ220に蓄電する機能を有している。
【0032】
バッテリレスモード判定部1236は、主バッテリ210及びサブバッテリ220の電圧を検知し、主バッテリ210の電圧が基準電圧Vccよりも低下した場合、バッテリレスモードと判定する。バッテリレスモード情報生成部1238は、バッテリレスモードの判定に基づき、サブバッテリ220から電力の供給を受けて、バッテリレスモード時におけるロータリーエンコーダ100の出力に関する所定の情報を生成し、不揮発性メモリ180に記録する。
【0033】
中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130は、高精度アブソリュート信号生成部1310と中精度アブソリュート信号生成部1320を備えている。
中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140は、高精度インクリメンタル信号生成部1410と中精度インクリメンタル信号生成部1420を備えている。
【0034】
エンコーダ出力制御ユニット160は、バッテリレス時初期設定部1610、電源状態判定部1620、バッテリレス時出力生成部1630、及び、通常時出力生成部1640を備えている。
バッテリレス時初期設定部1610は、ユーザインタフェース300を介して、ユーザによる、バッテリレスモード時におけるロータリーエンコーダ100の出力条件の設定を受け付ける機能を有する。
バッテリレス時出力生成部1630では、サブバッテリ220の電力が正常な範囲内で、初期設定条件に従って、MRセンサユニット110からの例えば4Kパルス/回転のインクリメンタル値の出力と、大バルクハウゼン効果発電モジュールで発生する2パルス/回転のパルス電流の出力を、バッテリレスモード情報として生成し、不揮発性メモリ180に記録する。
通常時出力生成部1640は、バッテリ電源が正常な通常時における、ロータリーエンコーダ100の出力を制御するものであり、この制御は、ユーザにより初期設定された条件に従って実行される。
【0035】
図5は、ユーザインタフェース300により、ロータリーエンコーダ100やモータドライバ400に対して初期設定を行うための、入力画面3001、3002の一例を示す図である。ユーザは、ユーザインタフェース300を介して、ロータリーエンコーダ100のバッテリレス対応ユニット120、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130、中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140、エンコーダ出力制御ユニット160、及びモータドライバ400に対して、通常運転時におけるロータリーエンコーダの出力条件や、バッテリレスモード時において、記録すべき情報、処理あるいは実行すべき条件を設定できる。
【0036】
例えば、通常運転モードに関して、初期設定画面3001により、以下のような条件を選択して、ロータリーエンコーダ100やモータドライバ400に設定する。
(1)高精度信号と中精度信号等を切り替えるモータの精度切替回転数Nsは、何rpmか。
(2)アブソリュート信号やインクリメンタル信号は、高精度信号と中精度信号等に関して、どのような精度(パルス/回転)で出力すべきか。
(3)インクリメンタル信号の場合には、U,V,W相の有無とそのパルス数等。
(4)駆動対象となるモータのタイプや仕様等。
さらに、バッテリレスモードに関して、初期設定画面3002により、以下のようなものを設定する。
(1)アブソリュート信号、インクリメンタル信号、及び、ウィーガンドモジュール信号は、各々、どのような条件(パルス/回転、回転方向)で出力すべきか。
(2)インクリメンタル信号に関しては、U,V,W相の有無とそのパルス数等。
(3)回転軸の角度情報を記録すべき記録期間の長さ。
(4)再起動の条件はどのようにするか。
ロータリーエンコーダ100やモータドライバ400に、このような、初期設定機能を付与することで、小型で安価な平板状磁石を有するMRセンサユニットを採用しつつ、バッテリレス時には、限られた電力を有効に活用し、次回モータが起動される際に必要・十分な情報を適切に記録できる。
【0037】
図6は、第1の実施例における、ロータリーエンコーダ100の処理のフローを示す図である。
最初に、ユーザインタフェース300により設定された、ロータリーエンコーダ100の機能に関する、初期設定条件を取得する(S600)。ここでは、高精度信号は、32Kパルス/回転のインクリメンタル信号とアブソリュート信号が設定され、中精度信号は、4Kパルス/回転のインクリメンタル信号とアブソリュート信号が設定されたものとする。また、バッテリレスモードでは、記録期間の長さCns=50回転まで、ロータリーエンコーダの動作状態を記録するように、初期設定されたものと仮定する。
次に、エンコーダ出力制御ユニット160が、主バッテリ210の電圧値を取得し(S602)、主バッテリの電圧が正常か否かを判定する。主バッテリの電圧値が正常の場合(S604でYES)、MRセンサユニットから中精度すなわち4Kパルス/回転のインクリメンタルA,B信号を取得し(S606)、さらに、高精度すなわち32Kパルス/回転のアブソリュートA,B,Z信号を取得する(S608)。
次に、中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140において、インクリメンタル信号の位相情報とアブソリュート信号の角度情報とから、4Kパルス/回転及び32Kパルス/回転のインクリメンタル信号を生成し、不揮発性メモリに記録する(S610)。さらに、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130において、インクリメンタル信号の角度情報とアブソリュート信号の位相情報とから、4Kパルス/回転及び32Kパルス/回転のアブソリュート信号を生成し、不揮発性メモリに記録する(S612)。
【0038】
ここで、S606〜S612における、MRセンサユニット110の出力と、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130及び中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140の出力の関係を、
図7を参照して、より詳細に説明する。
MRセンサユニット110では、A相、B相のデジタル信号から、逆正接演算の結果、回転軸の1回転毎の角度0(=360度)の位置に同期して、4Kパルス/回転のインクリメンタル値が直線状に増減を繰り返す直角三角形状の信号が生成される。そして、各A相・B相信号の累積加算値は、次に、回転軸の1回転毎(360度毎)の累積加算値に変換され、さらにEEPROMのアドレスが付与されて、中精度すなわち4Kパルス/回転のインクリメンタル信号が生成される(
図7(A))。
MRセンサユニット110では、この4Kパルス/回転のインクリメンタル値がさらに32Kパルス/回転に多分割され、これに回転軸の原点Z0を基準にしたZ相信号を組み合わせ、さらにEEPROMのアドレスが付与されて、高精度すなわち32Kパルス/回転のアブソリュート信号が生成される(
図7(B))。
【0039】
ロータリーエンコーダ100では、これらの出力を基に、中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140において、4Kパルス/回転のインクリメンタル信号に含まれるA、B相の位相情報と32Kパルス/回転のアブソリュート信号に含まれる角度情報とに基づき、高精度すなわち32Kパルス/回転のインクリメンタル信号(
図7の(a2))が生成される。また、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130において、中精度すなわち4Kパルス/回転のインクリメンタル信号に含まれる角度情報と32Kパルス/回転のアブソリュート信号に含まれるA,B,Z相の位相情報とに基づき、中精度すなわち4Kパルス/回転のアブソリュート信号が生成される(
図7の(b1))。
このようにして、中・高精度インクリメンタル信号生成ユニット140において、中精度のインクリメンタル信号(
図7の(a1))と高精度のインクリメンタル信号(
図7の(a2))が生成され、中・高精度アブソリュート信号生成ユニット130において、中精度のアブソリュート信号(
図7の(b1))と高精度のアブソリュート信号(
図7の(b2))とが生成される。
【0040】
図6に戻り、バッテリレス対応ユニット120から、パルス電流に基づく軸の回転数、回転方向のデータを取得して、不揮発性メモリ180に記録する(S614)。
すなわち、
図7に(C)として示したように、バッテリレス対応ユニット120では、大バルクハウゼン効果発電モジュール150の出力に基づく、2パルス/回転の信号も生成される。
【0041】
図6において、主バッテリの電圧値が異常である場合(S604でNO)は、バッテリレスモードを開始する(S620)。まず、初期設定された所定の計測回転数Cnsを取得する(S622)。次に、MRセンサユニット110から、インクリメンタル信号及びアブソリュート信号を取得する(S624)。そして、4Kパルス/回転のインクリメンタル信号及びアブソリュート信号を生成し、不揮発性メモリに記録する(S626)。さらに、コイルの出力電流の有無により、軸510の回転停止を判定する(S628)。軸510が回転を停止していない場合には、回転数の計測回転数Cnを取得し、このCnを所定の計測回転数Cnsと比較する(S632)。計測回転数Cnが所定の計測回転数Cns=50回転に達していたら、バッテリレスモード情報を作成し(S634)、その情報を不揮発性メモリ180に記録し(S636)、処理を終了する。軸510が回転停止していた場合(S630でYES)も、バッテリレスモード情報の作成(S634)に進む。軸510の回転数が所定の計測回転数Cnsに達していない場合(S632でNO)には、S624に戻る。
【0042】
図8は、第1の実施例における、ブラシ付きDCサーボモータ500の駆動回路の構成例を示す図である。DCモータの駆動回路は、モータドライバ400と、PWM駆動回路450と、トランジスタから成る4つのスイッチング素子SW1〜SW4をH形に組んだHブリッジ回路とを備えている。第1のスイッチング素子SW1は、一端が直流モータの一方のブラシ565Aに接続され他端が直流電源(Vcc)に接続され、第2のスイッチング素子SW2は、一端が直流モータの他方のブラシ565Bに接続され他端が直流電源(Vcc)に接続されている。第3のスイッチング素子SW3は、一端が直流モータの一方のブラシ565Aに接続され他端が接地され、第4のスイッチング素子SW4は、一端が直流モータの他方のブラシ565Bに接続され他端が接地されている。
モータドライバ400の制御精度切替予測・制御ユニット410は、切替時点予測部412、切替準備制御部414、切替実行部416を備えている。モータ駆動信号生成ユニット420は、高速用のインクリメンタルモータ制御信号を生成する中精度駆動信号生成部422と、低速用のインクリメンタルモータ制御信号を生成する高精度駆動信号生成部424とを備えている。
PWM駆動回路450では、モータ駆動信号生成ユニット420で生成された低速用若しくは高速用のインクリメンタルモータ制御信号に基づき、PWM信号が生成され、このPWM信号が各スイッチング素子SW1〜SW4のベースに入力されて、モータ500の回転が制御される。ブラシ付きDCモータの回転速度は、PWM信号のオン期間のデューティ比により任意に制御できる。
【0043】
次に、
図9は、第1の実施例における、ブラシ付きDCモータ500のドライバ400の処理フローを示す図である。
最初に、運転指令のデータを取得する(S902)。ここでは、精度切替回転数Nsは、±40rpmに設定されているものとする。不揮発性メモリから、バッテリレスモード情報を取得し(S904)、バッテリレスモード時にモータが回転していた場合(S906でYES)、バッテリレスモードにおけるモータの回転のデータを取得し(S908)、運転指令の初期データを、バッテリレスモード情報で補正する(S909)。
運転指令の初期データが補正された後、若しくは、バッテリレスモード時にモータが回転していなかった場合、モータ駆動信号生成ユニット420の高精度駆動信号生成部424が起動され、32Kパルス/回転の高精度インクリメンタル駆動信号が生成される。すなわち、ブラシ付きDCモータ500はインクリメンタル信号で駆動されるので、高精度駆動信号生成部424が高精度のインクリメンタル信号を、ロータリーエンコーダ100から取得する(S910)。そして、運転指令とエンコーダで生成された高精度のインクリメンタル信号に基づき、32Kパルス/回転のモータ駆動信号を生成し、PWM駆動回路450へ出力し、モータを制御する(S912)。
【0044】
切替時点予測部412では、次に、モータの回転数Nを取得し(S914)、更に、運転指令とモータ回転数Nとから、モータの回転数が精度切替回転数Nsを超える切替時点を予測する(S916)。切替時点が近くない場合(S918でNO)、運転終了か否かを判定し、終了であれば(S920でYES)運転を停止する(S922)。
切替時点が近いと判定された場合(S918でYES)、例えば、モータの回転数と精度切替回転数Nsとの差が20rpm以内でかつ回転数が切替時点に向かって増加する指令である場合、切替準備制御部414は、「制御の切替準備」モードとなり(S924)、高精度インクリメンタル信号生成部1410に加えて、中精度インクリメンタル信号生成部1420も動作を開始し、4Kパルス/回転の中精度のモータ駆動信号を生成する。切替時点に到達した場合(S926でYES)、切替実行部416では、中精度のモータ駆動信号をPWM駆動回路450へ出力してモータを制御すると共に、高精度のモータ駆動信号の出力を停止する(S928)。モータの回転数がさらに高くなった場合には、「制御の切替準備」モードが解除され、高精度インクリメンタル信号生成部1410における高精度のモータ駆動信号の生成は停止される。
切替準備制御部414及び切替実行部416は、中精度のモータ駆動信号から高精度のモータ駆動信号への切替についても、同様に、「制御の切替準備」モードを介在させた制御を行う。すなわち、モータの回転数が精度切替回転数Ns以下になったら、高精度のモータ駆動信号をPWM駆動回路450へ出力してモータを制御すると共に、中精度のモータ駆動信号の出力を停止する(S930〜S938〜S912)
【0045】
図10は、第1の実施例における、モータ駆動信号の精度切替の具体的な例を示す図である。モータの回転数Nが、精度切替回転数Ns、ここでは±40rpmの近傍にある場合、切替準備制御部414が「制御の切替準備」モードとなり、モータ駆動信号生成ユニット420の中精度駆動信号生成部422と高精度駆動信号生成部424の双方が起動され、32Kパルス/回転の高精度インクリメンタル駆動信号と4Kパルス/回転の中精度インクリメンタル駆動信号の双方が生成される。
そして、モータの回転数Nが±40rpm以内の場合、切替実行部416により、高精度のPWM信号がPWM駆動回路450へ出力され、モータの回転数Nが±40rpm以外の場合、切替実行部416により、中精度のPWM信号がPWM駆動回路450へ出力される。
【0046】
このように、本実施例によれば、低速回転域では高精度インクリメンタル駆動信号でモータを制御し、高速域では中精度のインクリメンタル駆動信号でモータを制御するので、低速回転域では高精度の位置精度を行いつつ、高速回転時にモータが制御信号に追従しなくなるという課題を解消することができる。ロータリーエンコーダは、インクリメンタル/アブソリュート兼用のため、汎用性に富んでいる。また、小型で安価な平板状磁石を有する汎用型の1個のMRセンサユニットを採用しているにも拘わらず、MRセンサユニットの出力に基づき中精度駆動信号及び高精度駆動信号を生成できるため、小型で、安価なロータリーエンコーダ、及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することができる。
また、本実施例によれば、ロータリーエンコーダやモータドライバが初期設定機能を有しているので、モータの種類や用途の如何に拘わらず種々のニーズに応えられる小型で汎用性に富んだ、ロータリーエンコーダ、及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することができる。
【実施例2】
【0047】
次に、本発明をブラシレスDCモータに適用した、第2の実施例について、
図11〜
図14を参照しながら説明する。
図11は、第2の実施例に係る、ブラシレスDCサーボモータの構成例を示す図である。ブラシレスDCモータ500は、モータハウジング520の内部に固定されたステータとして、界磁鉄心541とこれに絶縁部材を介して巻かれた界磁コイル542とを備えている。回転軸510と一体に形成されたロータ543は、ロータヨークと、その外周部に固定された例えば8個の永久磁石を有する、8極のロータである。回転軸510は、モータハウジング520に設けられた1対の軸受け530により保持されている。
このブラシレスDCサーボモータも、第1の実施例で説明したものと同様の構成の、ロータリーエンコーダ100、電源200、ユーザインタフェース300、モータドライバ400を備えている。
ブラシレスDCモータ500は、そのステータを構成する各相の界磁コイル群として、U1,U2,U3の界磁コイルが直列に、V1,V2,V3の界磁コイルが直列に、W1,W2,W3のコイルが直列に、各々結線されている。これらの3つの界磁コイル群は、各々の一端が中性点で接続されている。
【0048】
モータドライバ400のモータ駆動信号生成ユニット420は、通常運転モードにおいて、運転指令440と、モータ制御信号(iu, iv, iw)を基に生成された制御信号と、ロータリーエンコーダ100からのA相・B相・Z相に関するシリアル/パラレル信号に基づいて、インバータを駆動し、ブラシレスDCモータ500の運転、例えば正弦波駆動を継続する。
【0049】
次に、
図12は、第2の実施例における、ブラシレスDCモータ500のドライバ400の処理フローを示す図である。
最初に、運転指令のデータを取得する(S1202)。ここでも、精度切替回転数Nsは、±40rpmに設定されているものと仮定する。また、不揮発性メモリから、バッテリレスモード情報を取得し、必要な処理を行う(S1204〜S1209)。
運転指令の初期データが補正された後、若しくは、バッテリレスモード時にモータが回転していなかった場合、モータ駆動信号生成ユニット420の高精度駆動信号生成部424が起動され、32Kパルス/回転の高精度アブソリュート駆動信号が生成される。
すなわち、ブラシレスDCモータ500はアブソリュート信号で駆動されるので、高精度駆動信号生成部424が高精度のアブソリュート信号を、ロータリーエンコーダ100から取得する(S1210)。そして、運転指令とエンコーダで生成された高精度のアブソリュート信号に基づき、32Kパルス/回転のモータ駆動信号を生成し、PWM駆動回路へ出力し、モータを制御する(S1212)。
切替時点が近いと判定された場合(S1218でYES)、切替準備制御部414は、「制御の切替準備」モードとなり(S1224)、高精度アブソリュート信号生成部1310に加えて、中精度アブソリュート信号生成部1320も動作を開始する。切替時点に到達した場合(S1226でYES)、切替実行部416では、中精度のアブソリュート駆動信号をモータドライバへ出力してモータを制御し、モータの回転数がさらに高くなった場合には、「制御の切替準備」モードが解除され、高精度アブソリュート信号生成部1310における高精度のモータ駆動信号の生成は停止される。
中精度のモータ駆動信号から高精度のモータ駆動信号への切替についても、同様に、「制御の切替準備」モードを介在させた制御を行う(S1230〜S1238〜S1212)
【0050】
図13は、第2の実施例における、モータ駆動信号の精度切替の具体的な例を示す図である。ブラシレスDCモータは、32Kパルス/回転の高精度アブソリュート駆動信号で起動される。そして、モータの回転数Nが、精度切替回転数Nsの近傍にある場合、切替準備制御部414が「制御の切替準備」モードとなり、モータ駆動信号生成ユニット420の中精度駆動信号生成部422と高精度駆動信号生成部424の双方が起動され、32Kパルス/回転の高精度アブソリュート駆動信号と4Kパルス/回転の中精度のアブソリュート駆動信号の双方が生成される。そして、モータの回転数Nがさらに高くなると、中精度の駆動信号に基づくPWM信号がPWM駆動回路450へ出力される。
【0051】
次に、
図14は、ブラシレスDCモータの運転中に停電が発生した場合の、電源200とロータリーエンコーダ100の出力信号と、ブラシレスDCモータ500の駆動信号の関係の一例を示す図である。
電源が正常な場合、
図14の(b)に示したように、エンコーダ出力は、MRセンサユニット110から出力される32Kパルス/回転のA,B,Zアブソリュート信号と、これらの信号に基づいて生成される「(b1)モータ駆動信号」、すなわち、Z相、U相、V相、W相の各信号を含んだ、中精度・高精度信号となっている。この例では、最初のU相信号の立ち上がりと、最初のA相信号の立ち上がりが、マグネット原点位置(Z
0)に同期しており、さらに、回転軸13の1回転360°(機械角)毎に、Z相信号が設定されている。
一方、停電が発生した場合、
図14の(a)電源電圧に示したように、多回転アブソリュート信号の出力(b1)は停止される。「そして、(b2)パルスカウント/MRセンサ」として示すように、バッテリレスモードに移行し、初期設定条件に基づき、コイル出力からのパルス数と回転方向、MRセンサユニットのアブソリュート/アブソリュート信号のいずれかの信号が、中精度信号として出力される。さらに、計測回転数Cnが所定の計測回転数Cnsに達したら、パルスカウント/MRセンサの機能が停止する。
この停電が発生した場合のバッテリレスモード情報は、不揮発性メモリに記録され、次回の運転開始度に取得される。
【0052】
このように、本実施例によれば、低速域では高精度駆動信号でモータを制御し、高速域では中精度の駆動信号でモータを制御するので、低速回転域では高精度の位置精度を行いつつ、高速回転時にモータが制御信号に追従しなくなるという課題を解消することができる。ロータリーエンコーダは、インクリメンタル/アブソリュート兼用のため、汎用性に富んでいる。また、小型で安価な平板状磁石を有する汎用型の1個のMRセンサユニットを採用しているにも拘わらず、MRセンサユニットの出力に基づき中精度駆動信号及び高精度駆動信号を生成できるため、小型で、安価なロータリーエンコーダ、及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することができる。
また、本実施例によれば、ロータリーエンコーダやモータドライバが初期設定機能を有しているので、モータの種類や用途の如何に拘わらず種々のニーズに応えられる小型で汎用性に富んだ、ロータリーエンコーダ、及びそれを用いたサーボ制御装置を提供することができる。